【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究(事業研究一体型)/自立型システムのための熱発電デバイスの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一態様の概要は以下のとおりである。
【0009】
本開示の方法は、パイプ形状の熱発電デバイスを製造する方法であって、以下の工程を具備する:
金属粉末を圧縮することによって、金属からなる第1カップ状部材11を得る工程(a)、ここで、
第1カップ状部材11は第1内面112および第1外面111を具備し、
第1カップ状部材11は下端に第1貫通孔113を具備し、
第1カップ状部材11の断面積は、その下端の方向に減少しており、
第1カップ状部材11は焼結されておらず、
熱電材料の粉末を圧縮することによって、熱電材料からなる第2カップ状部材12を得る工程(b)、ここで、
第2カップ状部材12は第2内面122および第2外面121を具備し、
第2カップ状部材12は下端に第2貫通孔123を具備し、
第2カップ状部材12の断面積は、その下端の方向に減少しており、
第2カップ状部材12は焼結されておらず、
複数の第1カップ状部材11および複数の第2カップ状部材12を交互に繰り返し配置し、内部貫通孔18を具備するパイプを形成する工程(c)、ここで、
各第1カップ状部材11bの第1外面111bが隣接する一方の第2カップ状部材12bの第2内面122bに密着するように、各第1カップ状部材11bは隣接する一方の第2カップ状部材12bに挿入され、
各第1カップ状部材11bの第1内面112bが隣接する他方の第2カップ状部材12aの第2外面121aに密着するように、前記隣接する他方の第2カップ状部材12aは各第1カップ状部材11bに挿入され、
前記内部貫通孔18は、複数の第1貫通孔113および複数の第2貫通孔123から構成され、
第1カップ状部材11は焼結されておらず、
第2カップ状部材12は焼結されておらず、
工程(c)において得られたパイプを焼結させ、パイプ形状の熱発電デバイスを形成する工程(d)、ここで、
前記パイプが焼結される間、前記パイプの長手方向に沿って前記パイプが圧縮される方向に圧力が前記パイプに印加される。
1つの実施態様において、
工程(c)において、
各第1カップ状部材11bの第1外面111bが隣接する一方の第2カップ状部材12bの第2内面122bに接し、かつ
各第1カップ状部材11bの第1内面112bが隣接する他方の第2カップ状部材12aの第2外面121aに接する。
1つの実施態様において、
工程(a)では、圧縮装置によって金属粉末が圧縮され、
工程(a)は、以下の工程を具備する:
圧縮装置を用意する工程(a1)
前記圧縮装置は、中心棒81、筒状外部フレーム91、第1筒状内部フレーム71、および第2筒状内部フレーム61を具備し、
前記中心棒81の長手方向に沿って、前記第1筒状内部フレーム71および第2筒状内部フレーム61は互いに向かい合い、
前記中心棒81および前記筒状外部フレーム91の間に前記第2筒状内部フレーム61が挟まれており、
前記中心棒81の外面は、前記第2筒状内部フレーム61の内面に接しており、
前記筒状外部フレーム91の内面は、前記第2筒状内部フレーム61の外面に接しており、
前記中心棒81は、前記第2筒状内部フレーム61よりも長く、
前記筒状外部フレーム91は、前記第2筒状内部フレーム61よりも長く、
前記中心棒81の長手方向に沿って前記圧縮装置を切断した際に現れる断面視において、前記第2筒状内部フレーム61の一端は傾斜しており、前記一端は第1筒状内部フレーム71に向かい合い、
前記中心棒81の長手方向に沿って前記圧縮装置を切断した際に現れる断面視において、前記第1筒状内部フレーム71の一端は傾斜しており、前記一端は第2筒状内部フレーム61に向かい合い、第1筒状内部フレーム71の傾斜している一端および第2筒状内部フレーム61の傾斜している一端は互いに平行であり、
前記金属粉末が前記中心棒81および前記筒状外部フレーム91の間に挟まれるように前記金属粉末を、前記第2筒状内部フレーム61の一端に配置する工程(a2)、および
前記第1筒状内部フレーム71を前記中心棒81および前記筒状外部フレーム91の間に前記中心棒81の長手方向に沿って挿入して、前記第1筒状内部フレーム71および前記第2筒状内部フレーム61の間で前記金属粉末を圧縮する工程(a3)。
1つの実施態様において、
工程(b)では、圧縮装置を用いて熱電材料の粉末が圧縮され、
工程(b)は、以下の工程を具備する:
圧縮装置を用意する工程(b1)
前記圧縮装置は、中心棒81、筒状外部フレーム91、第1筒状内部フレーム71、および第2筒状内部フレーム61を具備し、
前記中心棒81の長手方向に沿って、前記第1筒状内部フレーム71および第2筒状内部フレーム61は互いに向かい合い、
前記中心棒81および前記筒状外部フレーム91の間に前記第2筒状内部フレーム61が挟まれており、
前記中心棒81の外面は、前記第2筒状内部フレーム61の内面に接しており、
前記筒状外部フレーム91の内面は、前記第2筒状内部フレーム61の外面に接しており、
前記中心棒81は、前記第2筒状内部フレーム61よりも長く、
前記筒状外部フレーム91は、前記第2筒状内部フレーム61よりも長く、
前記中心棒81の長手方向に沿って前記圧縮装置を切断した際に現れる断面視において、前記第2筒状内部フレーム61の一端は傾斜しており、前記一端は第1筒状内部フレーム71に向かい合い、
前記中心棒81の長手方向に沿って前記圧縮装置を切断した際に現れる断面視において、前記第1筒状内部フレーム71の一端は傾斜しており、前記一端は第2筒状内部フレーム61に向かい合い、第1筒状内部フレーム71の傾斜している一端および第2筒状内部フレーム61の傾斜している一端は互いに平行であり、
前記熱電材料の粉末が前記中心棒81および前記筒状外部フレーム91の間に挟まれるように、前記熱電材料の粉末を前記第2筒状内部フレーム61の一端に配置する工程(b2)、および
前記第1筒状内部フレーム71を前記中心棒81および前記筒状外部フレーム91の間に前記中心棒81の長手方向に沿って挿入して、前記第1筒状内部フレーム71および前記第2筒状内部フレーム61の間で前記熱電材料の粉末を圧縮する工程(b3)。
【0010】
以下、実施形態が、図面を参照しながら説明される。
【0011】
(実施形態1)
まず、パイプ形状の熱発電デバイスが説明される。
【0012】
以下、本開示の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態によるパイプ形状の熱発電デバイスを示す。
【0014】
当該パイプ形状の熱発電デバイスは、内部貫通孔18、複数の第1カップ状部材11、複数の第2カップ状部材12、第1電極15、および第2電極16を具備する。
【0015】
内部貫通孔18は、パイプ形状の熱発電デバイスの軸方向に沿って設けられている。当該軸方向は、
図1に描かれた矢印によって指し示される方向である。
【0016】
第1電極15および第2電極16は、それぞれ、パイプ形状の熱発電デバイスの一端および他端に配置されている。
【0017】
各第1カップ状部材11は金属からなる。当該金属の例は、ニッケル、コバルト、銅、アルミ、銀、金、またはこれらの合金である。当該金属がニッケル、コバルト、銅、またはアルミであると有益である。
【0018】
各第2カップ状部材12は熱電変換材料からなる。当該熱電変換材料の例は、Bi、Bi
2Te
3、またはPbTeである。Bi
2Te
3はSbまたはSeを含有し得る。
【0019】
図2は、パイプ形状の熱発電デバイスの部分分解図を示す。
図2に示されるように、3つの第1カップ状部材11a〜11cおよび3つの第2カップ状部材12a〜12cが、軸方向に沿って交互に繰り返し配置されている。各前記第1カップ状部材11a〜11c(11)は同一の形状を有する。各前記第2カップ状部材12a〜12c(12)も、同一の形状を有する。
【0020】
図3は、1つの第1カップ状部材11を示す。
図3に示されるように、第1カップ状部材11は、第1内面112および第1外面111を具備する。第1カップ状部材11は、下端に第1貫通孔113を具備する。カップ状部材11の上端は、開口を有している。第1カップ状部材11の断面積は、その下端の方向に減少している。第1カップ状部材11の形状と同様に、
図4に示されるように、第2カップ状部材12も、第2内面122、第2外面121、および第2貫通孔123を具備している。第2カップ状部材12の断面積もまた、各第2カップ状部材12の下端の方向に減少している。
【0021】
図1〜
図4から明らかなように、内部貫通孔18は、複数の第1貫通孔113および複数の第2貫通孔123から構成される。
【0022】
図2に示されるように、第1カップ状部材11bの第1外面111bが、隣接する一方の第2カップ状部材12bの第2内面122bに密着するように、第1カップ状部材11bは、隣接する一方の第2カップ状部材12bに挿入される。
【0023】
第1カップ状部材11bの第1内面112bは、隣接する他方の第2カップ状部材12aの第2外面121aに密着するように、隣接する他方の第2カップ状部材12aは、第1カップ状部材11bに挿入される。
【0024】
このように、1つの第1カップ状部材11は、隣接する2つの第2カップ状部材12に密着している。同様に、1つの第2カップ状部材12もまた、隣接する2つの第1カップ状部材11に密着している。
【0025】
典型的には、第1カップ状部材11bの第1外面111bは、隣接する一方の第2カップ状部材12bの第2内面122bに接する。これに代えて、第1カップ状部材11bの第1外面111bおよび隣接する一方の第2カップ状部材12bの第2内面122bの間に供給されたハンダによって、これらの面が互いに密着し得る。
【0026】
上記と同様に、典型的には、第1カップ状部材11bの第1内面112bは、隣接する他方の第2カップ状部材12aの第2外面121aに接する。これに代えて、これらの面の間に供給されたハンダによって、これらの面が密着し得る。
【0027】
典型的には、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12の間に隙間はない。なぜなら、後述するように、内部貫通孔18に流体が流される時に、隙間は熱電変換を阻害する可能性があるからである。さらに、隙間から流体が漏れ出す可能性がある。必要に応じて上記のようにハンダが隙間に充填され得る。
【0028】
第1カップ状部材11の数および第2カップ状部材12の数の例は、100個以上1000個以下である。
【0029】
図5は、
図3に描かれたA−A線断面図である。
図6は、
図4に描かれたB−B線断面図である。θ
1およびθ
2は、それぞれ、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12の傾斜角度を表す。すなわち、θ
1は、第1カップ状部材11の断面積がその下端の方向に向けて減少している部分および第1カップ状部材11の軸方向によって形成される角度を表す。同様に、θ
2は、第2カップ状部材12の断面積がその下端の方向に向けて減少している部分および第2カップ状部材12の軸方向によって形成される角度を表す。θ
1の値はθ
2の値に等しい。θ
1およびθ
2の値は、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12の材料に依存して適切に調整される。典型的には、θ
1およびθ
2の値は5度以上45度以下である。
【0030】
内部貫通孔18の断面形状は特に限定されない。パイプ形状の熱発電デバイスの断面形状も特に限定されない。
【0031】
第1カップ状部材11の断面形状が円である場合、
図5に示されるdl
1およびds
1は、それぞれ、第1カップ状部材11の上端および下端の幅を表す。第1カップ状部材11は高さh
1および厚みT
1を有する。
図5の場合と同様に、
図6に示されるdl
2、ds
2、h
2、およびT
2は、それぞれ、第2カップ状部材12の上端の幅、下端の幅、高さ、および厚みを表す。
【0032】
パイプ形状の熱発電デバイスの断面形状は限定されない。パイプ形状の熱発電デバイスの断面の例は、円形、楕円形、または多角形である。パイプ形状の熱発電デバイスの断面は、典型的には、円形である。すなわち、パイプ形状の熱発電デバイスは、典型的には、円筒状である。
【0033】
図7に示されるように、複数の第1カップ状部材11および複数の第2カップ状部材12は交互に繰り返し配置される。その後、
図8および
図9に示されるように、その一端および他端にそれぞれ第1電極15および第2電極16が接合され、パイプ形状の熱発電デバイスを製造する。
図9は
図8の分解図である。
【0034】
図8および
図9に示される手順に代えて、以下のように第1電極15および第2電極16を接合し得る。
図7の後、
図10に示されるように、その一端の一部および他端の一部をカットし、当該一端および他端を平坦にする。その後、
図11に示されるように、板状の第1電極15および板状の第2電極16をそれぞれ一端および他端に接合し、パイプ形状の熱発電デバイスを製造する。
【0035】
以下、パイプ形状の熱発電デバイスを用いて発電する方法を
図12〜
図13を参照しながら説明する。
図12は、パイプ形状の熱発電デバイスを用いて発電する方法の一例を示す。
図13は、
図12に示されるパイプ形状の熱発電デバイスの断面図を示す。
【0036】
図12に示されるように、パイプ形状の熱発電デバイス981は、槽982に貯められた冷たい流体983に浸漬される。典型的には、冷たい流体983は水のような液体である。
図13に示されるように、内部貫通孔18には、例えば暖かい流体984が流れる。典型的には、暖かい流体984は温水のような液体である。暖かい流体984は、ポンプ985により循環され得る。ポンプ985およびパイプ形状の熱発電デバイス981は、例えば2本のシリコーン製のチューブ986によって接続される。このようにして、第1電極15および第2電極16との間に電圧差が生じる。
図12においては、第1電極15および第2電極16には2本の電線987を介して負荷988が電気的に接続されている。冷たい流体983および暖かい流体984の間の温度差は、典型的には、摂氏20度以上摂氏80度以下である。槽982に暖かい流体を貯め、一方、ポンプ985により冷たい流体を内部貫通孔18に循環させ得る。
【0037】
図14および
図15に示されるように、パイプ形状の熱発電デバイス981は、管状のジャケット991の内部に挿入され得る。管状のジャケット991およびパイプ形状の熱発電デバイス981の間に冷たい流体983が流され、暖かい流体984が内部貫通孔18に流され得る。これらの流体の流れに代えて、管状のジャケット991およびパイプ形状の熱発電デバイス981の間に暖かい流体が流され、冷たい流体が内部貫通孔18に流され得る。ジャケット991の材料の例は、ステンレス、アルミニウム、チタン、ハステロイ(登録商標)、またはインコネル(登録商標)である。
【0038】
図16および
図17に示されるように、内部貫通孔18の周囲には絶縁性の内壁961が配置され、流体に含有され得る酸、アルカリ、または塩分のような腐食性成分からパイプ形状の熱発電デバイス981を保護すると有益である。内壁961の材料の例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化シリコン、または窒化シリコンのような無機物、ポリイミド樹脂またはフッ素樹脂のような有機物である。絶縁体によって被覆された金属も用いられ得る。
【0039】
上記と同様に、絶縁性の外壁962がパイプ形状の熱発電デバイス981の外面の周囲に配置されると有益である。外壁962の材料には、例えば内壁961の材料と同じ材料を用い得る。
【0040】
次に、実施形態1のパイプ形状の熱発電デバイスを製造する方法が説明される。
【0041】
(工程a)および(工程b)
まず、工程(a)および工程(b)において、金属粉末及び熱電変換材料の粉末が圧縮され、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12を形成する。金属粉末及び熱電変換材料の粉末は、例えば圧縮装置によって圧縮される。工程(a)でも工程(b)でも、同じ圧縮装置が用いられ得る。
【0042】
図19は、この圧縮装置の断面図を示す。
【0043】
図19に示されるように、この圧縮装置は、中心棒81、筒状外部フレーム91、第1筒状内部フレーム71、および第2筒状内部フレーム61を具備する。
図20は、第2筒状内部フレーム61の断面図および上面図を示す。
図21は、第1筒状内部フレーム71の断面図および上面図を示す。
図22は、中心棒81の断面図および上面図を示す。
図23は、筒状外部フレーム91の断面図および上面図を示す。
【0044】
図19に示されるように、中心棒81の長手方向に沿って、第1筒状内部フレーム71および第2筒状内部フレーム61は互いに向かい合う。中心棒81および筒状外部フレーム91の間に第2筒状内部フレーム61が挟まれている。中心棒81の外面は、第2筒状内部フレーム61の内面に接している。筒状外部フレーム91の内面は、第2筒状内部フレーム61の外面に接している。
【0045】
中心棒81は、第2筒状内部フレーム61よりも長い。言い換えれば、中心棒81の高さは、第2筒状内部フレーム61よりも大きい。
【0046】
筒状外部フレーム91は、第2筒状内部フレーム61よりも長い。言い換えれば、筒状外部フレーム91の高さは、第2筒状内部フレーム61よりも大きい。
【0047】
第2筒状内部フレーム61の上端はθの角度で傾斜している。第1筒状内部フレーム71の下端は傾斜している。これらの上端および下端は、互いに向かい合い、かつ互いに平行である。
【0048】
スペーサ102が、中心棒81の底面、第2筒状内部フレーム61の底面、および筒状外部フレーム91の底面を支持するように設けられている。
【0049】
第1筒状内部フレーム71は、スペーサ102を介して、加圧部101に取り付けられている。
【0050】
加圧部101は、中心棒81の長手方向に沿って駆動し、その一端に取り付けられた第1筒状内部フレーム71を中心棒81の長手方向に沿って移動させる。加圧部101には、例えば油圧プレス法が用いられる。
【0051】
次に、粉末が、第2筒状内部フレーム61の上端に配置される。粉末は、金属粉末または熱電変換材料の粉末のどちらかである。言うまでもないが、この金属粉末は、中心棒81および筒状外部フレーム91の間に挟まれる。この状態では、第1筒状内部フレーム71は、まだ中心棒81および筒状外部フレーム91の間に挿入されていない。
【0052】
その後、
図19に示されるように、加圧部101を駆動させることによって、第1筒状内部フレーム71を中心棒81および筒状外部フレーム91の間に中心棒81の長手方向に沿って挿入する。このようにして、第1筒状内部フレーム71および第2筒状内部フレーム61の間で粉末を圧縮して、金属からなる第1カップ状部材11または熱電材料からなる第2カップ状部材12を得る。
【0053】
第1カップ状部材11の強度を高めるために、金属粉末は、1マイクロメートル以上20マイクロメートル以下の粒径を有することが有益である。同様に、第2カップ状部材12の強度を高めるために、熱電材料の粉末は、1マイクロメートル以上20マイクロメートル以下の粒径を有することが有益である。ただし、上記の粒径範囲は、粉末(金属粉末または熱電材料の粉末)の硬度、形状などによって変化し得る。カップ状の形状に成型可能であれば、粉末の粒径は、上記の粒径範囲内になくても良い。
【0054】
中心棒81、筒状外部フレーム91、第1筒状内部フレーム71、第2筒状内部フレーム61、およびスペーサ102の材料は特に限定されない。高い圧力に抗する耐性の観点から、中心棒81、筒状外部フレーム91、第1筒状内部フレーム71、第2筒状内部フレーム61、およびスペーサ102の材料の例は、グラファイトまたはステンレスである。
【0055】
(工程c)
次に、
図2に示されるように、複数の第1カップ状部材11および複数の第2カップ状部材12を交互に繰り返し配置し、内部貫通孔18を具備するパイプを形成する。
【0056】
各第1カップ状部材11bの第1外面111bが、隣接する一方の第2カップ状部材12bの第2内面122bに密着するように、各第1カップ状部材11bは、隣接する一方の第2カップ状部材12bに挿入される。
【0057】
各第1カップ状部材11bの第1内面112bが、隣接する他方の第2カップ状部材12aの第2外面121aに密着するように、隣接する他方の第2カップ状部材12aは、各第1カップ状部材11bに挿入される。
【0058】
内部貫通孔18は、複数の第1貫通孔113および複数の第2貫通孔123から構成される。
【0059】
工程(c)では、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12は、いずれもまだ焼結されていない。後述される比較例1および2からも明らかなように、工程(d)にパイプが供される前に、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が焼結されないことが有益である。焼結された第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が工程(d)に供される場合には、最大発電電力が低下する。このことは、本開示を特徴付け得る。
【0060】
工程(c)においては、中心棒81が用いられて、複数の第1カップ状部材11および複数の第2カップ状部材12を交互に繰り返し配置し得る。より具体的には、
図19に示される圧縮装置が用いられて、複数の第1カップ状部材11および複数の第2カップ状部材12を交互に繰り返し配置し得る。
図19に示される圧縮装置が用いられる場合には、例えばカーボンペーパーが、パイプおよび中心棒81の間に挟まれて、これらが接着されることが抑制され得る。同様に、例えばカーボンペーパーが、パイプおよび筒状外部フレーム91の間に挟まれ得る。カーボンペーパーに代えて、カーボンフェルト、グラファイトシート、またはカーボンパウダーが用いられ得る。
【0061】
(工程d)
最後に、工程(c)において得られたパイプが焼結される。焼結温度は、典型的には、200℃以上750℃以下である。以下の(a)および(b)は、パイプを焼結する方法の例である:
(a)パイプを加熱しながら、真空中でパイプに圧力を加えるホットプレス法、および
(b)パイプに電圧を印加することによってパイプを加熱しながら、パイプに圧力を印加する放電プラズマ焼結法。
【0062】
図19に示される圧縮装置が、パイプを焼結させるために用いられ得る。言い換えれば、パイプは
図19に示される圧縮装置内において、圧力が印加されながら、加熱されて焼結され得る。
【0063】
工程(d)においてパイプが焼結される間、圧力がパイプに加えられる。圧力は、パイプの長手方向に沿って、パイプを圧縮する方向に加えられる。工程(d)においては、例えば
図19に示されるような圧縮装置が用いられる。パイプに加えられる圧力は、1kN以上9kN以下であると有益である。
【0064】
パイプは、典型的には、真空下で焼結される。
【0065】
(実施例)
以下の実施例は、本開示をより詳細に説明する。
【0066】
(実施例1)
図19に示される圧縮装置を用いて、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が作製された。表1は、実施例1による第1カップ状部材11および第2カップ状部材12の詳細を示す。
【0068】
第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が交互に繰り返し配置され、
図1に示されるようなパイプを、
図19に示される圧縮装置内に得た。カーボンペーパーが、このパイプおよび中心棒の間に挟まれた。同様に、この他のカーボンペーパーが、このパイプおよび筒状外部フレーム91の間に挟まれた。
【0069】
図19に示される圧縮装置を用いて、パイプを放電プラズマ焼結法により焼結した(
図24を見よ)。焼結の条件は、以下の表2に示される。このようにして、パイプ形状の熱発電デバイスが得られた。
【0071】
これが4回繰り返され、4本の熱発電デバイスが得られた。4本の熱発電デバイスが、ハンダを用いて直列に接続された。その後、熱発電デバイスの両端が切断され、およそ110ミリメートルの長さを有するパイプ状の熱発電デバイスを得た。インジウムからなる第1電極15および第2電極16が、このパイプ状の熱発電デバイスの両端に取り付けられた。
【0072】
図12に示されるように、得られたパイプ形状の熱発電デバイス981が、10℃の温度を有する冷水983に浸漬された。90℃の温度を有する温水984が、内部貫通孔18に循環された。温水984は、20リットル/分の流量を有していた。
【0073】
パイプ形状の熱発電デバイス981の最大発電電力が、以下の式により算出された。
最大発電電力の値=((第1電極15および第2電極16の間の開放電圧)/2)
2/(第1電極15および第2電極16の間の電気抵抗値)
ここで、開放電圧は、温度差が印加され、かつ電流が流されない状態において、の第1電極15および第2電極16の間に生じる電圧である。
【0074】
パイプ形状の熱発電デバイス981の電気抵抗値は、以下のように求められる。
【0075】
まず、温度差が印加されない状態で、定電流が第1電極15および第2電極16の間に流され、第1電極15および第2電極16の間に生じる電圧を測定する。
【0076】
次に、測定された電圧が、定電流の値によって除算され、電気抵抗値を算出する。
【0077】
(比較例1)
第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が交互に繰り返し配置され、パイプが形成される前に、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が、表2に示される条件下で焼結されたこと以外は、実施例1と同一の実験が行われた。
【0078】
比較例1では、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12は、2回、焼結されていることに注意せよ。言い換えれば、パイプが形成される前に、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12は焼結された。さらに、パイプが形成された後、再度、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12は焼結された。
【0079】
表3は、実施例1および比較例1の結果を示す。
【0081】
(実施例2)
図19に示される圧縮装置を用いて、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が作製された。表4は、実施例2による第1カップ状部材11および第2カップ状部材12の詳細を示す。
【0083】
実施例1と同様に、
図1に示されるようなパイプを、
図19に示される圧縮装置内に得た。
【0084】
図19に示される圧縮装置を用いて、パイプを放電プラズマ焼結法により焼結した(
図24を見よ)。焼結の条件は、以下の表5に示される。このようにして、パイプ形状の熱発電デバイスが得られた。
【0086】
(比較例2)
第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が交互に繰り返し配置され、パイプが形成される前に、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12が、
表5に示される条件下で焼結されたこと以外は、実施例2と同一の実験が行われた。
【0087】
比較例1と同様、比較例2では、第1カップ状部材11および第2カップ状部材12は、2回、焼結されていることに注意せよ。
【0088】
表6は、実施例2および比較例2の結果を示す。
【0090】
表3および表6から明らかなように、焼結されていない第1カップ状部材11および第2カップ状部材12を用いて形成されたパイプを焼結させることによって得られたパイプ形状の熱発電デバイスは、焼結された第1カップ状部材11および第2カップ状部材12を用いて形成されたパイプを再焼結させることによって得られたパイプ形状の熱発電デバイスよりも、高い最大発電電力値を有する。