特許第5984932号(P5984932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5984932-波長変換部材及び該部材の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984932
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】波長変換部材及び該部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20160823BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20160823BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20160823BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01L33/50
   C09K11/64CQD
   C09K11/80CPP
   H01S5/022
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-523248(P2014-523248)
(86)(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公表番号】特表2014-522116(P2014-522116A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012062245
(87)【国際公開番号】WO2013017339
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2014年2月3日
【審判番号】不服2015-20487(P2015-20487/J1)
【審判請求日】2015年11月17日
(31)【優先権主張番号】102011080179.0
(32)【優先日】2011年8月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512288684
【氏名又は名称】オスラム ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ハートヴィヒ
(72)【発明者】
【氏名】フランク イェアマン
(72)【発明者】
【氏名】ニコ モアゲンブロート
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ベアベン
【合議体】
【審判長】 恩田 春香
【審判官】 近藤 幸浩
【審判官】 小松 徹三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−347263(JP,A)
【文献】 特開2005−136427(JP,A)
【文献】 特表2003−515899(JP,A)
【文献】 特開2010−155729(JP,A)
【文献】 特表2010−514187(JP,A)
【文献】 特開2010−24278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した1次光(P)から波長変換された光(S)を形成するための波長変換部材(111)において、
前記1次光(P)及び前記波長変換された光(S)に対し光透過性のライトガイド部材(212)と、蛍光体を有する少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)とが設けられており、
前記ライトガイド部材(2;12)は、前記少なくとも1つの蛍光体部材を放熱するために、前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)とモノリシックに結合され、
前記ライトガイド部材(2;12)はセラミックライトガイド部材であり、前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)は少なくとも1つのセラミックの蛍光部材を有する
ことを特徴とする、
波長変換部材(1;11)。
【請求項2】
前記ライトガイド部材(2;12)は、前記1次光(P)を入射させるための光入射面(3)と、少なくとも前記波長変換された光(S)を出射させるための光出射面(3)とを有し、
前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)は、前記光入射面(3)に対し光学的に後方に配置されている、
請求項1記載の波長変換部材(1;11)。
【請求項3】
前記光入射面(3)と前記光出射面(3)は少なくとも部分的に一致しており、少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)は前記光入射面(3)と向き合って配置されている、請求項2記載の波長変換部材(1;11)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)は、鏡面反射型又は拡散反射型のカバー(7;17)により覆われている、請求項1から3のいずれか1項記載の波長変換部材(1;11)。
【請求項5】
前記ライトガイド部材(2;12)及び前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)は、ガーネットベースのボディであるか、またはガーネットベースのボディを含む、請求項1から4のいずれか1項記載の波長変換部材(1)。
【請求項6】
前記ライトガイド部材(2;12)と前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)は互いに劈開された部材である、請求項1記載の波長変換部材(1)。
【請求項7】
前記ライトガイド部材(2;12)及び前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)は、窒化物ベースのボディであるか、または窒化物ベースのボディを含む、請求項1又は6記載の波長変換部材(11)。
【請求項8】
少なくとも前記ライトガイド部材(2;12)はサイアロンから成るか、またはサイアロンを含む、請求項記載の波長変換部材(11)。
【請求項9】
前記蛍光体部材(6;16)に含まれる少なくとも1つの蛍光体はEu、Ce、Yb、Mn及び/又はNdを含む、請求項1から9のいずれか1項記載の波長変換部材(1;11)。
【請求項10】
請求項6記載の波長変換部材(1)を製造する方法において、
ライトガイド部材(2;12)を製造するステップと、
少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)を製造するステップと、
前記ライトガイド部材(2;12)と前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)の個々の接触面(4)を平坦化するステップと、
前記ライトガイド部材(2;12)と前記少なくとも1つの蛍光体部材(6;16)を、劈開によって該両部材の平坦化された接触面(4)で、互いに接合するステップ
を少なくとも有することを特徴とする、
波長変換部材(1)を製造する方法。
【請求項11】
請求項7又は8記載の波長変換部材(1;11)を製造する方法において、
前記ライトガイド部材(2;12)または前記蛍光体部材(6;16)のグリーンボディから成るスリップをモールドに注入するステップと、
次に、対応する他方の部材(6,2;16,12)のグリーンボディから成るスリップを前記モールドに注入するステップと、
組み合わせられた前記グリーンボディを焼結するステップと
を少なくとも有することを特徴とする、
波長変換部材(1;11)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材に入射された1次光から波長変換された光を発生させる波長変換部材に関する。本発明はさらに、波長変換部材の製造方法にも関する。
【0002】
LARP (Laser Activated Remote Phosphor レーザ励起型リモート蛍光体)を使用する場合、蛍光体(Phosphor)に対しレーザにより1次光が照射される。この蛍光体により、1次光の少なくとも一部分が波長変換された光に変換され、典型的にはいっそう長い波長の光に変換される(ダウンコンバート)。1次光と波長変換された光のエネルギーの差はストーク熱として送出され、これによって蛍光体が加熱する。そして蛍光体がこのように加熱することによって、波長変換された光の波長又はピーク波長がシフトし(ストークシフト Stokes-Shift)、量子効率が低減し(量子崩壊)、寿命が短くなってしまうおそれがある。
【0003】
蛍光体の加熱低減を向上させる可能性として考えられるのは、レーザにより照射可能であり回転運動するライトホイールの窓に蛍光体を配置することである。レーザ照射によって窓がねじ込まれる方向と緩む方向に周期的に回転することによって、時間に関して平均的な照射が制限され、つまりは熱の発生が制限される。ただし、カラーホイールの使用は比較的煩雑であり効果が少なく、波長変換される光を連続的に発生させることができない。
【0004】
さらに別の可能性として考えられるのは、蛍光体と冷却体との間の熱抵抗を小さくすることで、蛍光体からの放熱を改善することにある。例えば蛍光体を水ガラスに埋め込むことができる。この場合も蛍光体層はできるかぎり薄く構成される。蛍光体層はレーザと冷却体との間に存在し、それ自体は熱のバリアを成す。
【0005】
したがって本発明の課題は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服し、例えば蛍光体の熱の良好な低減を高い発光効率と結び付ける波長変換部材を提供することにある。
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴により解決される。有利な実施形態は殊に従属請求項に記載されている。
【0007】
この課題は、以下の構成を有する波長変換部材(すなわち波長変換部材に入射した1次光から波長変換された光を形成するための部材)によって解決される。すなわちこの波長変換部材には、1次光及び波長変換された光に対し光透過性であるライトガイド部材またはライトガイド領域と、蛍光体を含む少なくとも1つの蛍光体ボディまたは蛍光体領域とが設けられており、ライトガイド部材は蛍光体部材とモノリシックに結合されている。
【0008】
モノリシックな結合により、きわめて安定した波長変換部材が提供され、しかもこの波長変換部材は、ライトガイド部材の側と少なくとも1つの蛍光体部材との側との間でもはや熱抵抗をもたず、あるいはもはや大きな熱抵抗はもたない。ライトガイド部材を熱伝導体または冷却体として用いることができるので、少なくとも1つの蛍光体部材も同じ効果で冷却することができる。ライトガイド部材は1次光に対しても波長変換された光に対しても光透過性であるので、1次光を放射する光源と少なくとも1つの蛍光体部材との間にライトガイド部材を配置することができる。これにより少なくとも1つの蛍光体部材の蛍光体は熱障壁とはならず、このことによって熱の制限がさらに簡単になる。したがって例えば、ライトガイド部材に1次光を入射し、ライトガイド部材から少なくとも1つの蛍光体部材へ1次光を案内することができる。そこにおいて1次光は少なくとも部分的に波長変換され、ついで少なくとも波長変換された光が再びライトガイド部材から出射し、ひいては波長変換部材から出射する。
【0009】
ライトガイドボディは、殊に1次光及び/又は波長変換された光に対し透過性である。
【0010】
少なくとも1つの蛍光体部材は1つまたは複数の蛍光体を含むことができる。殊に複数の蛍光体は1次光を、種々の色を有する(ピーク波長がそれぞれ異なる)波長変換された光に変換することができる。したがって1つの実施形態によれば少なくとも1つの蛍光体部材を殊に、ただ1つの蛍光体だけを含むやはりただ1つの蛍光体部材とすることができる。この実施形態は特に、青色の1次光を部分的に黄色光に変換し、青色と黄色が合わさって白色となる混合光を発生させるのに適している。ただし例えば、それぞれ異なる蛍光体を含む複数の蛍光体部材を設けることもできる。なぜならば、蛍光体の相互作用を抑圧できるからである。
【0011】
以下では蛍光体とは殊に、1つまたは複数の主格子ならびにその中にバインドされた活性体及び場合によっては増感体も含むルミネセンス材料のこととする。蛍光体の構造及び作用はよく知られており、この点についてはこれ以上言及する必要はない。蛍光体部材を形成するために、蛍光体自体に(つまり例えば固有の主格子を有する蛍光体に)ベース材料を添加することができる。活性体を加えることも可能であり、これは蛍光体部材のベース材料の格子に主格子として組み込まれる。以下では蛍光体とは、少なくとも1つの活性体又は活性体元素のことである。殊に蛍光体のコンテキストでは、特に明示しないかぎり、主格子に組み込まれた活性体または活性体自体(もしくはその前駆物質)とする。しかも蛍光体が少なくとも1つの増感体(またはその前駆物質)を含むことができる。
【0012】
一般的には、ライトガイド部材と少なくとも1つの蛍光体部材を、波長変換部材のライトガイド領域もしくは少なくとも1つの蛍光体領域と捉え、そのように称することができる。
【0013】
ライトガイド部材を例えば、内側の全反射に基づき光を案内する部材とすることができる(TIRボディ)。
【0014】
ライトガイド部材を例えば集光器の形状とすることができ、例えばCPC(Compound Parabolic Concentrator 複合放物面集光器)ボディの形状とすることができる。
【0015】
1つの実施形態によればライトガイド部材は、1次光を入射させるための光入射面と、少なくとも波長変換された光を出射させるための光出射面を有しており、少なくとも1つの蛍光体部材が光入射面に対し光学的に後方に配置されている。したがって1次光は最初に光入射面に入り、ライトガイド部材によって少なくとも1つの蛍光体部材に案内され、そこにおいて少なくとも1つの蛍光体によって少なくとも部分的に、波長変換された光に変換され、少なくとも波長変換された光が光出射面から出射される。少なくとも1つの蛍光体部材が光入射面に対し光学的に後方に配置されている、というのは、少なくとも1つの蛍光体部材が光入射面に対し間隔をおいて配置されている、ということを意味する。これによってやはり、効果的な光の出射が支援される。
【0016】
ライトガイド部材がCPC状のボディとして設けられている場合、1つの有利な実施形態によれば、光入射面は2つの頂面のうち大きい方の頂面に対応し、少なくとも1つの蛍光体部材は2つの頂面のうち小さいの方の頂面に配置されている。
【0017】
さらに1つの実施形態によれば、光入射面と光出射面は少なくとも部分的に一致しており、少なくとも1つの蛍光体部材は光入射面と向き合って配置されている。これによって、きわめて単純に構成されたロバストなライトガイド部材ひいては波長変換部材が提供される。光入射面と光出射面の一致した領域を、光透過面と呼ぶこともできる。光出射面と少なくとも1つの蛍光体部材を、例えばライトガイド部材の互いに向き合った端部に設けることができ、このことによって簡単な成形が可能となるし、少なくとも1つの蛍光体部材を1次光によって効果的に照射することができる。
【0018】
ライトガイド部材がCPC状のボディとして設けられている場合に有利な1つの実施形態によれば、光透過面が2つの頂面のうち大きい方の頂面に相応し、少なくとも1つの蛍光体部材が2つの頂面のうち小さい方の頂面またはその一部に配置されている。
【0019】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのライトガイド部材は(外部の)反射性のカバーによって覆われている。これにより、波長変換された光は確実にライトガイドボディにすべて戻されるようになるので、波長変換された光の発光効率が高くなり、殊に高い発光効率で光透過面を通して放射できるようになる。
【0020】
反射型のカバーを鏡面反射性または拡散反射性とすることができる。拡散反射性のカバーによって、無限に続く経路の発生が阻止される、という利点が得られる。この場合、波長変換部材内に閉じた光経路は発生しない。なぜならば、拡散性の反射によってそのような光経路が断たれるからである。しかもこの種の反射器の熱的な結合が重要となることはない。なぜならばこの反射器には光学的に活性の材料は含まれていないからである。
【0021】
1つの実施形態によれば、鏡面反射型の反射器は反射層によって形成される。例えば鏡面反射型の反射器を、金属製または誘電性のミラー層を取り付けることによって、例えば蒸着により取り付けることによって、形成することができる。
【0022】
さらに1つの実施形態によれば、拡散反射型の反射器は結合剤またはマトリックスに埋め込まれ強い拡散を行う材料例えば二酸化チタンを含んでいる。
【0023】
ライトガイド部材と少なくとも1つの蛍光体部材とを機械的に安定しかつ光学的に透過性に結合するために一般的に有利な実施形態は、それぞれの部材が同じベース材料を有することである。例えばライトガイドボディは(蛍光体のない)ベース材料から成るようにし、少なくとも1つの蛍光体部材は蛍光体が混入されたベース材料から成るようにすることができる。この場合、例えばそれぞれのボディ間の界面における材料の不整合を、焼成によって抑えることができ、あるいはそれどころかまったく回避することができる。
【0024】
さらに1つの実施形態によれば、ライトガイド部材(またはライトガイド領域)と少なくとも1つのライトガイド部材(またはライトガイド領域)は、ガーネットベースの部材(または領域)であり、あるいはガーネットベースの部材を含んでいる。ガーネットベースの部材は、光透過性に例えば透明に(拡散性なく)製造することができ、しかも所期のように蛍光体を設けるかまたは混入することができる。殊にガーネットベースの部材に蛍光体の活性体をドーピングすることができ、ベース材料(ガーネットまたはガーネット質)が主格子を提供する。しかもガーネットベースの部材は、熱伝導性が良好である。ガーネットベースの部材は、単結晶成長によって製造可能であるほか、焼結によっても製造することができる。
【0025】
ガーネットベースの部材のベース材料を、例えばYAG、YAGaG、LuAGまたはLuAGaGとすることができる。
【0026】
さらに1つの実施形態によれば、ライトガイド部材は(光透過性の)セラミックのライトガイド部材であり、少なくとも1つの蛍光体部材は少なくとも1つのセラミックの蛍光体部材を有する。セラミックは良好な熱伝導性を有し、剛性である。
【0027】
さらに1つの実施形態によれば、ライトガイド部材と少なくとも1つの蛍光体部材は互いに劈開された部材である。この場合、波長変換部材を例えば以下のようにして製造することができる。すなわちライトガイド部材と少なくとも1つの蛍光体部材とを別個に製造し、各部材の個々の接触面を滑らかにし、ライトガイド部材と少なくとも1つの蛍光体部材とをそれらの接触面で繋ぎ合わせる。
【0028】
1つの実施形態によれば、1つに合わせるべき接触面または切子面が平坦化され、例えば平坦に研磨される。これらの接触面を著しく密接して繋ぎ合わせると、これらの部材どうしはファン・デル・ワールス力に基づき結合される(いわゆる真空溶着)。結合を促進させる目的で、接触面を予め少なくとも部分的に種々の材料でコーティングして、外側に高い密度で水素原子を含む著しく薄い層(理想的には単層ないしは単分子層)を形成することができる。コーティングされたそれらの面どうしを付き合わせてそれらを加熱すると、水素のブリッジが発生する。この方法は「水素結合 hyrodogen bonding」と呼ばれる。両方の事例とも、結合された部材は実質的にモノリシックである。
【0029】
さらに1つの実施形態によれば、少なくとも1つの焼成された蛍光体部材が、単結晶成長させたライトガイド部材上で劈開される。さらに1つの実施形態によれば、少なくとも1つの単結晶成長させた蛍光体部材が、単結晶成長させたライトガイド部材上で劈開される。
【0030】
1つの択一的な実施形態によれば、ライトガイド部材と少なくとも1つの蛍光体部材がいっしょに焼成された焼成体であり、あるいはそのような焼成体を含んでいる。焼成を行う場合には、平坦化を省略することができる。
【0031】
製造には少なくとも以下のステップを含めることができる。すなわち、ライトガイド部材のグリーンボディから成るスリップをモールドに注入するステップと、次にそれぞれ他方の部材のグリーンボディから成るスリップを前記のモールドに注入するステップと、組み合わせられたグリーンボディを焼結するステップとを含めることができる。
【0032】
殊にこの種の波長変換部材を、グリーボディの結合によって焼結前に得ることができる。この目的で、例えばスリップがモールドに注入されると、有利には最初に、蛍光体(主格子のあるまたは主格子のない活性体)または蛍光体前駆材料が混入された少なくとも1つの蛍光体部材のグリーンボディ材料から成る(殊に薄い)層が充填されて乾燥が行われる。ついで残りのモールドに少なくとも部分的に、ドーピングされていないもしくは蛍光体の存在しないグリーンボディ材料を充填することができる。スリップ充填の順序は制約されておらず、とりわけ波長変換部材の形状により決まる。このようにして得られたグリーンボディ(全体)は、ついで密に焼結される。その結果、少なくとも1つの薄い層の蛍光体部材がモノリシックに結合されたライトガイド部材を有する波長変換部材が得られる。
【0033】
さらに別の1つの有利な実施形態によれば、ライトガイド部材と少なくとも1つの蛍光体部材は窒化物ベースの部材であり、あるいは窒化物ベースの部材を含む。窒化物ベースのセラミックは主成分として窒素を有しており、例えばAlN、SiNまたはAlSinである。窒化物ベースのセラミックの有する利点とは、それらを光透過性の形態例えば半透明体として製造可能なことである。
【0034】
1つの格別有利な実施形態によれば、少なくともライトガイド部材はサイアロンから成る。サイアロンは、Si34とAl23とAln(SiAlON)から成る混合セラミックである。サイアロンは単純な窒化物ベースのセラミックによりも良好な焼結特性を有しており、殊に大気圧において焼結温度が低い。サイアロンの様々な変形のうち、この場合にはいわゆるαサイアロンが有利であり、とりわけ光透過性の点で有利である。このようにすれば、グリーンボディを窒素雰囲気中で約1950℃で焼結させると、密な透明なセラミックを製造することができる。殊に有利であるのは、Al23の割合が比較的少ないサイアロンである。
【0035】
グリーンボディに焼結補助物質を含めることができ、例えばアルカリ土類金属及び/又は希土類をベースとする焼結補助物質を含めることができる。
【0036】
さらに1つの実施形態によれば、少なくとも1つの蛍光体は活性体または活性体元素Eu,Ce,Yb,Mn及び/又はNdを含んでいる。これらの活性体は多くのセラミック及びガーネットベースのボディに問題なく組み込むことができ、正確に調量することができる。この場合、典型的には、Euは琥珀色の波長変換光を放出させ、Ceは黄色の波長変換光を放出させる。さらに例えばEu,Yb,Mnからも、黄色の波長変換光を放出させることができる。
【0037】
例えばガーネットベースのボディ自体を主格子として利用し、少なくとも1つの活性体例えばCeを混入させることができ、例えばYAG:CEとなるようドーピングすることができる。
【0038】
蛍光体を焼結されたセラミックボディに組み込むために、一例として適切な前駆物質例えば蛍光体の酸化物、窒化物またはフッ化物をグリーンボディに添加することができる。例えばサイアロンの場合、活性体としてEuを用いるならば、相応の酸化物(Eu23, ...)、フッ化物(EuF3)または窒化物(EuN)等をグリーンボディに添加することができる。焼結過程中、活性体であるEuが還元されるなどして、完成したセラミックボディにEu2+として存在する。同様のやり方で、例えばCe3+,Yb2+,Mn2+等も活性体として組み込むことができる。サイアロン自体も、殊にαサイアロン自体も、波長変換物質としておくことができる。セラミックの場合、活性体をセラミックの格子に主格子として組み込むことができ、あるいはセラミックに、固有の主格子を有するまたは固有の主格子を生成する(完成した)蛍光体を(もしくは焼結などの前の蛍光体、殊に前駆物質であっても)添加することができる。
【0039】
ただし本発明は、ライトガイド部材と少なくとも1つの蛍光体部材がサイアロンとして形成されているシステムに限定されるものではない。つまりライトガイド部材だけがサイクロンから成り、少なくとも1つの蛍光体部材が窒化物ベースの他のセラミックから成るようにしてもよい。この場合、窒化物ベースのセラミックにおける格子不整合はむしろ少ない、ということが利用される。
【0040】
有利であるのは、蛍光体が混入またはドーピングされた窒化物ベースのセラミックの材料が、活性体としてCaが混入されたAlSiNまたはSiAlNを含むようにすることであり、例えばCaAlSiNもしくはCaSiAlNを含むようにすることである。
【0041】
本発明による上述の特性、特徴、利点ならびにそれらを実現するやり方をいっそうはっきりと明確に理解できるよう、以下、図面を参照しながら実施例について詳しく説明する。わりやすくするため、図中、同じ部材又は同等の機能を果たす部材には同じ参照符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1実施例による波長変換部材の側面を示す断面図
図2】第2実施例による波長変換部材の側面を示す断面図
【0043】
図1には、第1実施例による波長変換部材の側面を示す断面図が描かれている。波長変換部材1は、波長変換部材1に入射した1次光Pから波長変換された光を形成するために用いられる。1次光Pを、例えばレーザにより生成されたレーザ光又は発光ダイオードにより生成された狭帯域光とすることができる。ただし、1次光Pを発生する光源の種類は基本的には制約されるものではなく、例えば後段にフィルタが設けられ又は設けられておらず広帯域で照射を行う光源を含むこともできるし、あるいは直線放出又は圧力により広げられた波長放出領域をもつ放電ランプを含むこともできる。また、粒子線放射器(例えば電子放射又はイオン放射)を用いることもできる。
【0044】
波長変換部材1は、1次光Pに対し光透過性のライトガイド部材2例えば透明なライトガイド部材2を有している。この場合、ライトガイド部材2は、大きい頂面3と小さい頂面4と側面5を有する円錐台の形状を有している。大きい頂面3は、1次光Pの入射のための光入射表面として用いられる。ライトガイド部材2はTIR部材として構成されているので、大きい頂面3に入射した1次光Pはそのまま、あるいは内側の全反射によって、小さい頂面4へと導かれる。
【0045】
小さい頂面4は蛍光体部材6によって覆われており、その際、ライトガイド部材2と蛍光体部材6は互いにモノリシックに結合されている。蛍光体部材6は、例えば活性体としてEu又はCeが混入された光透過性の基本材料から成る薄いディスク状の部材として構成されている。したがって1次光Pは蛍光体部材6に入射し、そこにおいて少なくとも部分的に波長変換された(2次)光Sに変換される。蛍光体部材6は、光入射表面として用いられる大きい頂面3に対し光学的に後方に配置されており、つまりここでは大きい頂面3と向き合って配置されている。
【0046】
少なくとも波長変換された光Sを所期のように利用できるようにする目的で、蛍光体部材6は、外側で蛍光体部材6の上に取り付けられた金属層として構成された鏡面反射型のカバー7によって覆われている。波長変換された光S及び場合によっては1次光Pが、蛍光体部材6からライトガイド部材2へと既にそのまま放射されなかった場合に、反射型のカバー7によってそれらの光がライトガイド部材2へ戻されるように反射される。ライトガイド2は、波長変換された光Sに対し光透過性であり、例えば透明である。蛍光体部材6から小さい頂面4を通ってライトガイド2へ到達した光は、大きい頂面3のところでライトガイド2から出射可能となる。したがって大きい頂面3は光出射表面としても用いられ、つまりは組み合わせられた光透過面として用いられることになる。大きい頂面3と蛍光体部材6とが対向して配置されていることから、蛍光体部材6は波長変換部材1からの波長変換光Sの出射を妨げない。
【0047】
ライトガイド部材2と蛍光体部材6は、ここでは単に一例であるがガーネットベースのボディとして形成されており、これらの部材が互いに異なる点は殊に、蛍光体部材6が例えばCe又はEuにより活性化された蛍光体によりドーピングされている又は蛍光体部材6にそのような蛍光体が混入されていることである。ライトガイド部材6と蛍光体部材6を、例えば焼成又は劈開により互いに接合してしまうこともできる。劈開を行う場合、ライトガイド部材の小さい頂面4と蛍光体6のこの頂面4の側が平坦化されて、接触面として互いに接合される。グリーンボディとしてスリップを使用して焼成を行う場合、製造技術的に都合がよいのは、蛍光体部材6を製造するためにスリップを最初に注入することである。
【0048】
図2には、第2実施例による波長変換部材11の側面を示す断面図が描かれている。この波長変換部材11は波長変換部材1と同じように構成されている。ただしここではライトガイド部材12は少なくとも近似的に、大きい頂面13と小さい頂面14と側面15とを備えたCPC形状を有している。蛍光体部材16はこの実施例の場合も、薄いディスク状のボディとして小さい頂面14上に配置され、ライトガイド部材12とモノリシックに結合されている。
【0049】
反射型のカバー17は、この実施例では拡散反射型のカバー17として構成されており、これによって波長変換部材11内に無限の光経路が生じるのが回避される。カバー17は例えば拡散反射性のTiO2を有するように構成することができ、これは例えばシリコーンなど適切なバインド材料中に充填物質として含まれている。
【0050】
ライトガイド部材12と蛍光体部材16はこの実施例ではサイアロンボディとして形成されており、これらの部材が互いに異なる点は、蛍光体部材16には(例えば活性体としてEuを含有する)蛍光体が混入されていることである。ライトガイド部材12と蛍光体部材16を、例えば焼結又は劈開によって接合してしまうこともできる。劈開を行う場合、ライトガイド部材の小さい頂面14と蛍光体部材16のこの頂面14の側が平坦化されて、接触面として互いに接合される。グリーンボディとしてスリップを使用して焼成を行う場合、この実施例においても製造技術的に都合がよいのは、蛍光体ボディ16を製造するためにスリップを最初に注入することである。
【0051】
図示の実施例を参照しながら本発明について詳しく説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、当業者であれば本発明の権利範囲を逸脱することなく他の実施形態を考え出すことができる。
【0052】
したがって波長変換部材1をセラミックから成るように構成し、波長変換部材11をガーネットベースのボディとしてもよい。両方の実施例において、鏡面反射型又は拡散反射型のカバーを用いることもできる。さらにライトガイド部材または波長変換部材の形状は、図示の形状に限定されるものではない。
図1
図2