(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984936
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】離間したクランプ部をもつクランプ穴を有する切削工具および切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23C 5/06 20060101AFI20160823BHJP
B23C 5/08 20060101ALI20160823BHJP
B23C 5/22 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
B23C5/06 A
B23C5/08 A
B23C5/22
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-526599(P2014-526599)
(86)(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公表番号】特表2014-524361(P2014-524361A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】IL2012050273
(87)【国際公開番号】WO2013027211
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】214781
(32)【優先日】2011年8月22日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】306037920
【氏名又は名称】イスカーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エヴゲニー タルキンスキー
(72)【発明者】
【氏名】アミル サトラン
【審査官】
長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−061521(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00599393(EP,A1)
【文献】
特表2008−520447(JP,A)
【文献】
特表2010−502462(JP,A)
【文献】
米国特許第05199828(US,A)
【文献】
特開平09−300110(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/092545(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/097797(WO,A1)
【文献】
特開平06−008011(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3029586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/06
B23C 5/08
B23C 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの着座面(24)を有する工具本体(22)と、少なくとも1つの切削インサート(26、126)と、前記少なくとも1つの切削インサート(26、126)を前記少なくとも1つの着座面(24)に取外し可能に固定するための少なくとも1つの締結部材(28)とを備えた切削工具(20、120)であって、
前記少なくとも1つの切削インサート(26、126)が、外周側面(36)および中心軸(A1)が間に延びる対向する上面(32)および底面(34)と、前記上面(32)にクランプ穴(38)とを備え、
前記外周側面(36)が少なくとも1つのフランク面(40)を備え、少なくとも1つの切刃(42)が、前記少なくとも1つのフランク面(40)と少なくとも前記上面(32)との交差部に形成され、
前記クランプ穴(38)が、周方向に互いに離間しており、第1の水平面(PH1)に交差する少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)と、周方向に互いに離間しており、第2の水平面(PH2)に交差する少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)とを備え、前記クランプ部(UC1、UC2、LC1、LC2)のそれぞれが前記クランプ穴(38)の異なる領域を表し、前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)が、前記中心軸(A1)に垂直であって互いに離間し、
前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)に対して接線であり、前記中心軸(A1)と同一平面上にある上部仮想線(LU1、LU2)が、前記中心軸(A1)と共にゼロまたは鋭角の第1のクランプ角(αl)を形成し、前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)に対して接線であり、前記中心軸(A1)と同一平面上にある下部仮想線(LL1、LL2)が、前記中心軸(A1)と共にゼロまたは鋭角の第2のクランプ角(α2)を形成し、
前記第1のクランプ角(α1)と前記第2のクランプ角(α2)とが異なり、
4つの作動クランプ部(UC1、UC2、LC1、LC2)を表すちょうど2つの上部クランプ部(UC1、UC2)とちょうど2つの下部クランプ部(LC1、LC2)とは、前記締結部材(28)上の同数の対応するクランプゾーン(UZ1、UZ2、LZ1、LZ2)に同時にクランプ接触し、前記クランプ穴(38)と前記締結部材(28)との間の他のクランプ接触点または領域がないことを特徴とする切削工具(20、120)。
【請求項2】
前記第1の水平面(PH1)は前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)を二分し、前記第2の水平面(PH2)は前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)二分し、
前記第1の水平面(PH1)は前記第2の水平面(PH2)よりも前記上面(32)に近く、前記第1のクランプ角(α1)は前記第2のクランプ角(α2)よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項3】
前記4個の作動可能クランプ部(UC1、UC2、LC1、LC2)に関連する前記上部および下部仮想線(LU1、LU2、LL1、LL2)は、前記上面(32)上で前記中心軸(A1)に交差しないことを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項4】
前記4個の作動可能クランプ部のうちの2個(UC1、LC1)に関連する上部および下部仮想線(LU1、LL1)は第1の垂直面(PV1)内に含まれ、前記4個の作動可能クランプ部のうちの他の2個(UC2、LC2)に関連する上部および下部仮想線(LU2、LL2)は第2の垂直面(PV2)内に含まれ、
前記第1の垂直面(PV1)は前記第2の垂直面(PV2)に垂直であり、
前記第1の垂直面(PV1)および前記第2の垂直面(PV2)は前記中心軸(A1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフランク面(40)のそれぞれは、少なくとも1つの当接部(62)を備え、
単一フランク面(40)に関連する前記少なくとも1つの当接部(62)のみが動作可能であり、前記工具本体(22)上の対応する支持面(64)に当接し、
前記中心軸(A1)を含む第3の垂直面(PV3)は前記第1の垂直面(PV1)および前記第2の垂直面(PV2)を二分し、
前記単一作動可能フランク面(40)に関連する前記少なくとも1つの当接部(62)に接する当接面(PA1)は前記第3の垂直面(PV3)に垂直であることを特徴とする請求項4に記載の切削工具(20、120)。
【請求項6】
前記クランプ穴(38)は前記底面(34)に向かって延びて前記底面(34)で開き、前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)に沿った横断面において非円形であり、
前記締結部材(28)は、ねじ軸(A2)を有するクランプねじ(44)の形状であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項7】
外周側面(36)および中心軸(A1)が間に延びる対向する上面(32)および底面(34)と、前記上面(32)のクランプ穴(38)とを備えた切削インサート(26、126)であって、
前記外周側面(36)が少なくとも1つのフランク面(40)を備え、少なくとも1つの切刃(42)が、前記少なくとも1つのフランク面(40)と少なくとも前記上面(32)との交差部に形成され、
前記クランプ穴(38)が、第1の水平面(PH1)に交差する少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)と、第2の水平面(PH2)に交差する少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)とを備え、前記クランプ部(UC1、UC2、LC1、LC2)のそれぞれが前記クランプ穴(38)の異なる領域を表し、前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)が、前記中心軸(A1)に垂直であって互いに離間し、
前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)に対して接線であり、前記中心軸(A1)と同一平面上にある上部仮想線(LU1、LU2)が、前記中心軸(A1)と共に鋭角の第1のクランプ角(α1)を形成し、前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)に対して接線であり、前記中心軸(A1)と同一平面上にある下部仮想線(LL1、LL2)が、前記中心軸(A1)と共に鋭角の第2のクランプ角(α2)を形成し、
前記第1のクランプ角(α1)と前記第2のクランプ角(α2)とが異なり、
前記クランプ穴(38)が、前記底面(34)に向かって延びて前記底面(34)で開き、前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)に沿った横断面において非円形であり、
前記クランプ穴(38)は前記中心軸(A1)に垂直な正中面(M)に対して鏡面対称を呈し、少なくとも1つの切刃(42)は前記少なくとも1つのフランク面(40)と前記底面(34)との交差部に形成されることを特徴とする切削インサート(26、126)。
【請求項8】
前記第1の水平面(PH1)は前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)を二分し、前記第2の水平面(PH2)は前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)を二分し、
前記第1の水平面(PH1)は前記第2の水平面(PH2)よりも前記上面(32)に近く、前記第1のクランプ角(α1)は前記第2のクランプ角(α2)よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の切削インサート(26、126)。
【請求項9】
前記切削インサート(26、126)は、前記中心軸(A1)の周りで割出し可能であり、4個のフランク面(40)と、前記4個のフランク面(40)と前記上面(32)との交差部に形成された4個の切刃(42)と、4個の上部クランプ部(UC1、UC2、UC3、UC4)と、4個の下部クランプ部(LC1、LC2、LC3、LC4)とを有することを特徴とする請求項7に記載の切削インサート(26、126)。
【請求項10】
前記4個の上部および下部クランプ部のうちの第1のクランプ部および第3のクランプ部(UC1、LC1、UC3、LC3)に関連する第1の上部および下部仮想線(LU1、LL1)と第3の上部および下部仮想線(LU3、LL3)とは、第1の垂直面(PV1)内に含まれ、前記4個の上部および下部クランプ部のうちの第2のクランプ部および第4のクランプ部(UC2、LC2、UC4、LC4)に関連する第2の上部および下部仮想線(LU2、LL2)と第4の上部および下部仮想線(LU4、LL4)とは、第2の垂直面(PV2)内に含まれ、
前記第1の垂直面(PV1)は前記第2の垂直面(PV2)に垂直であり、
前記第1の垂直面(PV1)および第2の垂直面(PV2)は前記中心軸(A1)を含むことを特徴とする請求項9に記載の切削インサート(26、126)。
【請求項11】
前記4個のフランク面(40)のそれぞれは少なくとも1つの当接部(62)を備え、
第1のフランク面(40a)および第3のフランク面(40c)上のそれぞれの前記少なくとも1つの当接部(62)の1つに接する第1の当接面(PA1)および第3の当接面(PA3)は第3の垂直面(PV3)に垂直であり、第2のフランク面(40b)および第4のフランク面(40d)上のそれぞれの前記少なくとも1つの当接部(62)の1つに接する第2の当接面(PA2)および第4の当接面(PA4)は第4の垂直面(PV4)に垂直であり、
前記第3の垂直面(PV3)は前記第1の垂直面(PV1)および前記第2の垂直面(PV2)を二分し、前記第4の垂直面(PV4)は前記第3の垂直面(PV3)に垂直であることを特徴とする請求項10に記載の切削インサート(26、126)。
【請求項12】
前記上部および下部仮想線(LU1、LU2、LL1、LL2)は、前記上面(32)上で前記中心軸(A1)に交差しないことを特徴とする請求項7に記載の切削インサート(126)。
【請求項13】
前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)は前記上面(32)と前記正中面(M)との間に位置することを特徴とする請求項7に記載の切削インサート(126)。
【請求項14】
外周側面(36)および中心軸(A1)が間に延びる対向する上面(32)および底面(34)と、前記底面(34)まで延びる前記上面(32)のクランプ穴(38)とを備えた切削インサート(26、126)であって、
前記外周側面(36)が少なくとも1つのフランク面(40)を備え、少なくとも1つの切刃(42)が、前記少なくとも1つのフランク面(40)と少なくとも前記上面(32)との交差部に形成され、
前記クランプ穴(38)が、第1の水平面(PH1)に交差する少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)と、第2の水平面(PH2)に交差する少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)とを備え、前記クランプ部(UC1、UC2、LC1、LC2)のそれぞれが前記クランプ穴(38)の異なる領域を表し、前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)が、前記中心軸(A1)に垂直であって互いに離間し、
前記クランプ穴(38)が前記底面(34)に向かって開き、前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)に沿った横断面において非円形であり、
前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)および前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)が、前記中心軸(A1)を含む、前記少なくとも1つのフランク面(40)に垂直な垂直面(PV3)に対して対称であり、
前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)および前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)が、前記インサート中心軸(A1)に沿った前記インサートの上面視において前記クランプ穴(38)内に見え、
前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)のそれぞれと、前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)のそれぞれとは、前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)のそれぞれに沿った横断面において別個の上部曲線(58)および下部曲線(60)の単一の弧として現れ、
前記上部曲線(58)および前記下部曲線(60)のそれぞれの曲率半径(R1、R2)は、前記第1の水平面(PH1)および前記第2の水平面(PH2)のそれぞれに沿った前記クランプ穴(38)の横断面における内接円の対応する曲率半径(R3、R4)よりも大きいことを特徴とする切削インサート(26、126)。
【請求項15】
前記上部曲線(58)および前記下部曲線(60)はそれぞれ、前記中心軸(A1)を中心に曲率半径(Rl、R2)を有することを特徴とする請求項14に記載の切削インサート(26、126)。
【請求項16】
前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)に対して接線であり、前記中心軸(A1)と同一平面上にある上部仮想線(LU1、LU2)は、前記中心軸(A1)と共に鋭角の第1のクランプ角(αl)を形成し、前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)に対して接線であり、前記中心軸(A1)と同一平面上にある下部仮想線(LL1、LL2)は、前記中心軸(A1)と共に鋭角の第2のクランプ角(α2)を形成し、
前記第1のクランプ角(α1)と第2のクランプ角(α2)とは異なり、
前記上部および下部仮想線(LU1、LU2、LL1、LL2)が、前記上面(32)上で前記中心軸(A1)に交差しないことを特徴とする請求項14に記載の切削インサート(26、126)。
【請求項17】
前記切削インサート(26、126)は、前記中心軸(A1)の周りで割出し可能であり、4個のフランク面(40)と、前記4個のフランク面(40)と前記上面(32)との交差部に形成された4個の切刃(42)と、4個の上部クランプ部(UC1、UC2、UC3、UC4)と、4個の下部クランプ部(LC1、LC2、LC3、LC4)とを有し、
前記4個の上部および下部クランプ部(UC1、LC1、UC3、LC3)のうちの第1番目と第3番目に関連する、第1および第3上部および下部仮想線(LU1、LL1、LU3、LL3)は、第1の垂直面(PV1)内に含まれ、前記4個の上部および下部クランプ部のうちの第2番目と第4番目(UC2、LC2、UC4、LC4)に関連する、第2および第4上部および下部仮想線(LU2、LL2、LU4、LL4)は第2の垂直面(PV2)内に含まれ、
前記第1の垂直面(PV1)は前記第2の垂直面(PV2)に垂直であり、
前記第1および第2の垂直面(PV1、PV2)は、前記中心軸(A1)を含み、
前記4個のフランク面(40)のそれぞれは少なくとも1つの当接部(62)を備え、
第1および第3のフランク面(40a、40c)の前記少なくとも1つの当接部(62)の1つに接する、第1および第3の当接面(PA1、PA3)は、第3の垂直面(PV3)に垂直であり、第2および第4のフランク面(40b、40d)上のそれぞれの前記少なくとも1つの当接部(62)の1つに接する第2および第4の当接面(PA2、PA4)は、第4の垂直面(PV4)に垂直であり、
前記第3の垂直面(PV3)は、前記第1および前記第2の垂直面(PV1、PV2)を二分し、前記第4の垂直面(PV4)は、前記第3の垂直面(PV3)に垂直であることを特徴とする請求項16に記載の切削インサート(26、126)。
【請求項18】
前記少なくとも2つの上部クランプ部(UC1、UC2)は、前記第1の水平面(PH1)において、周方向に互いに離間しており、
前記少なくとも2つの下部クランプ部(LC1、LC2)は、前記第2の水平面(PH2)において、周方向に互いに離間していることを特徴とする請求項14に記載の切削インサート(26、126)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に金属切削プロセス、特にフライス作業に使用するための回転切削工具および取外し可能に固定できる切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
フライス作業で使用される金属切削工具の分野において、切削本体内に取外し可能に固定できる切削インサートは、従来から切刃付近に適切に硬質な材料、すなわち超硬合金を提供してきたが、より硬度の低い材料から製造される切削本体は、摩耗または損傷した切削インサートの廃棄後に再利用することができる。
【0003】
この種の多くの切削インサートは、たとえば、溝フライス作業および面フライス作業を行う切削インサートを軸方向および半径方向の両方に支持する切削本体のインサート受けポケットに着座される。しかし、一部の用途、たとえば延長刃ミルおよびポーキュパインカッターでは、切削本体が切削インサートを軸方向に支持することができない。
【0004】
特許文献1は、複数のインサート受けポケットを有する工具ホルダを備えるフライス工具であって、各インサート受けポケットが、クランプねじによって取外し可能に固定された割出し可能な切削インサートを収容する、フライス工具を開示している。
【0005】
各インサート受けポケットは、クランプねじを受けるためのねじ孔を有する座面と、切削インサートを軸方向および半径方向の両方に支持するための、軸方向および半径方向を向いた当接部を有する側部当接面とを備える。
【0006】
各切削インサートは、非円形のほぼ楕円錐の少なくとも一部を画定するクランプ面のあるクランプ穴を有し、クランプ穴を通って延びる各クランプねじは、2つの接触点でクランプ面に接触するほぼ円錐形のクランプヘッドを備える。
【0007】
これによって生じる2つの接触点に加えられるクランプ力は、半径方向および軸方向の両方を向いた当接部に向けられる。
【0008】
特許文献2は、4個の螺旋クランプ溝を有する工具本体を備えた螺旋歯フライスヘッドであって、正方形または平行四辺形の割出し可能な複数の切削インサートが装着された各螺旋クランプ溝が軸方向に重なる螺旋歯フライスヘッドを開示している。
【0009】
各切削インサートは、クランプねじにより各螺旋クランプ溝に取外し可能に固定され、切削インサートは、半径方向を向いた当接面を有するが、軸方向を向いた当接面を有さないインサート受け座に着座される。
【0010】
各切削インサートは、わずかに凸状に湾曲した円錐端部をもつ基本的に円筒形の穴を有し、各クランプねじは、基本的に円錐形のクランプヘッドと、円筒穴を通って延びる正確に形成された円筒部とを備える。
【0011】
基本的に円錐形のクランプヘッドは、わずかに凸状に湾曲した円錐端部に係合し、正確に形成された円筒部は、インサート受け座の、円筒形の正確に位置決めされた対応嵌合穴に嵌入し、これにより、円筒穴の軸が嵌合穴の軸からずれる。クランプねじ自体は、各切削インサートを軸方向に支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0286692号明細書
【特許文献2】米国特許第5542793号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、切削インサートを軸方向に支持しない工具本体を有する、改良された切削工具およびそのための切削インサートを提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、切削インサートが切削本体に安定して固定され正確に位置決めされる、切削工具およびそのための切削インサートを提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、面フライス作業および溝フライス作業に適した切削工具およびそのための切削インサートを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、切削インサートの切削幅に対して小さい溝幅で溝フライス作業を行うことのできる、切削工具およびそのための切削インサートを提供することである。
【0017】
本発明によれば、少なくとも1つの着座面を有する工具本体と、少なくとも1つの切削インサートと、前記少なくとも1つの切削インサートを前記少なくとも1つの着座面に取外し可能に固定するための少なくとも1つの締結部材とを備えた切削工具であって、
前記少なくとも1つの切削インサートが、外周側面および中心軸が間に延びる対向する上面および底面と、前記上面のクランプ穴とを備え、
前記外周側面が少なくとも1つのフランク面を備え、少なくとも1つの切刃が、前記少なくとも1つのフランク面と少なくとも前記上面との交差部に形成され、
前記クランプ穴が、第1の水平面に交差する少なくとも2つの上部クランプ部と、第2の水平面に交差する少なくとも2つの下部クランプ部とを備え、前記クランプ部のそれぞれが前記クランプ穴の異なる領域を表し、前記第1の水平面および前記第2の水平面が、前記中心軸に垂直であって互いに離間し、
前記少なくとも2つの上部クランプ部に対して接線であり、前記中心軸と同一平面上にある上部仮想線が、前記中心軸と共にゼロまたは鋭角の第1のクランプ角を形成し、前記少なくとも2つの下部クランプ部に対して接線であり、前記中心軸と同一平面上にある下部仮想線が、前記中心軸と共にゼロまたは鋭角の第2のクランプ角を形成し、
前記第1のクランプ角と前記第2のクランプ角とが異なり、
4つの作動クランプ部を表すちょうど2つの上部クランプ部とちょうど2つの下部クランプ部とが、前記締結部材上の同数の対応するクランプゾーンに同時にクランプ接触することを特徴とする切削工具が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、外周側面および中心軸が間に延びる対向する上面および底面と、前記上面のクランプ穴とを備えた切削インサートであって、
前記外周側面が少なくとも1つのフランク面を備え、少なくとも1つの切刃が、前記少なくとも1つのフランク面と少なくとも前記上面との交差部に形成され、
前記クランプ穴が、第1の水平面に交差する少なくとも2つの上部クランプ部と、第2の水平面に交差する少なくとも2つの下部クランプ部とを備え、前記クランプ部のそれぞれが前記クランプ穴の異なる領域を表し、前記第1の水平面および前記第2の水平面が、前記中心軸に垂直であって互いに離間し、
前記少なくとも2つの上部クランプ部に対して接線であり、前記中心軸と同一平面上にある上部仮想線が、前記中心軸と共にゼロまたは鋭角の第1のクランプ角を形成し、前記少なくとも2つの下部クランプ部に対して接線であり、前記中心軸と同一平面上にある下部仮想線が、前記中心軸と共にゼロまたは鋭角の第2のクランプ角を形成し、
前記第1のクランプ角と前記第2のクランプ角とが異なり、
前記クランプ穴が、前記底面に向かって延びて前記底面で開き、前記第1の水平面および前記第2の水平面に沿った横断面において非円形であり、
前記上部および下部仮想線が、前記中心軸に交差せずに前記上面より上の方向に延びることを特徴とする切削インサートが提供される。
【0019】
さらに、本発明によれば、外周側面および中心軸が間に延びる対向する上面および底面と、前記底面まで延びる前記上面のクランプ穴とを備えた切削インサートであって、
前記外周側面が少なくとも1つのフランク面を備え、少なくとも1つの切刃が、前記少なくとも1つのフランク面と少なくとも前記上面との交差部に形成され、
前記クランプ穴が、第1の水平面に交差する少なくとも2つの上部クランプ部と、第2の水平面に交差する少なくとも2つの下部クランプ部とを備え、前記クランプ部のそれぞれが前記クランプ穴の異なる領域を表し、前記第1の水平面および前記第2の水平面が、前記中心軸に垂直であって互いに離間し、
前記クランプ穴が前記底面に向かって開き、前記第1の水平面および前記第2の水平面に沿った横断面において非円形であり、
前記少なくとも2つの上部クランプ部および前記少なくとも2つの下部クランプ部が、前記中心軸を含む、前記少なくとも1つのフランク面に垂直な垂直面に対して対称であり、
前記少なくとも2つの上部クランプ部および前記少なくとも2つの下部クランプ部が、前記インサート中心軸に沿った前記インサートの上面図において前記クランプ穴内に見えることを特徴とする切削インサートが提供される。
【0020】
さらに理解するために、以下で、添付図面を参照しながら、本発明について例としてのみ説明する。図中、鎖線は、部材の部分図についての切断境界を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態による切削工具の斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態による切削インサートの斜視図である。
【
図6】
図5に示す切削工具のVI−VI線に沿って取った横断面図である。
【
図7】
図5に示す切削工具のVII−VII線に沿って取った横断面図である。
【
図8】
図5に示す切削工具のVIII−VIII線に沿って取った横断面図である。
【
図9】
図5に示す切削工具のIX−IX線に沿って取った横断面図である。
【
図10】
図4に示す切削インサートの、
図6および
図7に見られるX−X線に沿って取った水平横断面図であり、平面PH1の横断面を示す図である。
【
図11】
図4に示す切削インサートの、
図6および
図7に見られるXI−XI線に沿って取った水平横断面図であり、平面PH2の横断面を示す図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態による切削工具の斜視図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態による切削インサートの斜視図である。
【
図17】
図16に示す切削工具のXVII−XVII線に沿って取った横断面図である。
【
図18】
図16に示す切削工具のXVIII−XVIII線に沿って取った横断面図である。
【
図19】
図16に示す切削工具のXIX−XIX線に沿って取った横断面図である。
【
図20】
図16に示す切削工具のXX−XX線に沿って取った横断面図である。
【
図21】
図15に示す切削インサートの、
図17および
図18に見られるXXI−XXI線に沿った水平横断面図であり、平面PH1の横断面を示す図である。
【
図22】
図15に示す切削インサートの、
図17および
図18に見られるXXII−XXII線に沿った水平横断面図であり、平面PH2の横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、少なくとも1つの着座面24を有する工具本体22と、少なくとも1つの切削インサート26、126と、少なくとも1つの切削インサート26、126を少なくとも1つの着座面24に取外し可能に固定するための少なくとも1つの締結部材28とを備えた切削工具20、120に関する。
【0023】
本発明の一部の実施形態では、
図1、
図2、
図12および
図13に示すように、切削工具20、120が回転切削工具の形状であってもよく、前向き端面30と同数の切削インサート26、126とに隣接する複数の着座面24を有する工具本体22を備え、各切削インサート26、126が各締結部材28によって各着座面24に取外し可能に固定される。
【0024】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、切削工具が回転切削工具の形状であってもよく、複数の軸方向に延びる、または螺旋状の刃を有する工具本体を備え、各刃が複数の着座面と同数の切削インサートとを有し、各切削インサートが各締結部材によって各着座面に取外し可能に固定される。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、工具本体22を機械加工された鋼から製造することができ、切削インサート26、126を、好ましくは、タングステンカーバイド等の超硬合金を形状押圧および焼結することにより製造してもよい。切削インサート26、126は被覆されていても被覆されていなくてもよい。
【0026】
本発明によれば、
図3、
図4、
図14、
図15に示すように、切削インサート26、126は、外周側面36および中心軸A1が間に延びる対向する上面32および底面34と、上面32のクランプ穴38とを備える。外周側面36は、少なくとも1つのフランク面40を備え、少なくとも1つの切刃42が、少なくとも1つのフランク面40と少なくとも上面32との交差部に形成される。
【0027】
また、本発明によれば、クランプ穴38は中心軸A1と同軸であって、底面34に向かって延びて底面34で開いていてもよい。
【0028】
本発明の第1の実施形態では、
図3および
図4に示すように、外周側面36が4個のフランク面40および4個の切刃42を備えることができ、各切刃42が4個のフランク面40の1つと上面32との交差部に形成される。4個のフランク面40が同一であってもよく、4個の切刃42が同一であってもよい。切削インサート26は、中心軸A1の周りで割出し可能であってもよい。しかしながら、切削インサート26は片面であり、すなわち、不可逆である。
【0029】
本発明の第2の実施形態では、
図14および
図15に示すように、外周側面36は4個のフランク面40および8個の切刃42を備えることができ、4個の切刃42が4個のフランク面40と上面32との交差部に形成され、4個の切刃42が4個のフランク面40と底面34との交差部に形成される。4個のフランク面40が同一であってもよく、8個の切刃42が同一であってもよい。両面(可逆)切削インサート126は、中心軸A1の周りで割出し可能であってもよい。
【0030】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、切削インサートが割出し可能であって、6個または8個のフランク面のそれぞれと上面との交差部に6個または8個の切刃が形成されていてもよい。
【0031】
本発明の第1の実施形態では、
図8および
図9に示すように、切削インサート26を、4個のフランク面40が上面32から離れる方向に内側に傾斜する「正」として説明することができる。
【0032】
本発明の第2の実施形態では、
図19および
図20に示すように、切削インサート126を、4個のフランク面40が上面32および底面34の両方に概ね垂直な「二重負」として説明することができる。
【0033】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、切削インサートを、フランク面が上面から離れる方向に外側に傾斜する「負」として説明することができる。
【0034】
本発明によれば、クランプ穴38は、第1の水平面PH1に交差する少なくとも2つの上部クランプ部UC1、UC2と、第2の水平面PH2に交差する少なくとも2つの下部クランプ部LC1、LC2とを備える。
【0035】
本発明の第1の実施形態では、
図4、
図6および
図7に示すように、クランプ穴38が合計8個のクランプ部UC1、UC2、UC3、UC4、LC1、LC2、LC3、LC4を備えることができ、各クランプ部がクランプ穴38の異なる領域を表す。8個のクランプ部UC1、UC2、UC3、UC4、LC1、LC2、LC3、LC4は、第1の水平面PH1に交差する4個の上部クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4と、第2の水平面PH2に交差する4個の下部クランプ部LC1、LC2、LC3、LC4とを備える。
【0036】
本発明の第2の実施形態では、
図15、
図17および
図18に示すように、クランプ穴38が、中心軸A1に垂直な正中面Mに対して鏡面対称を呈し、正中面Mと上面32との間の8個のクランプ部UC1、UC2、UC3、UC4、LC1、LC2、LC3、LC4と、正中面Mと底面34との間の8個のクランプ部UC1’、UC2’、UC3’、UC4’、LC1’、LC2’、LC3’、LC4’との合計16個のクランプ部を備えることができる。正中面Mと上面32との間の8個のクランプ部UC1、UC2、UC3、UC4、LC1、LC2、LC3、LC4は、第1の水平面PH1に交差する4個の上部クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4と、第2の水平面PH2に交差する4個の下部クランプ部LC1、LC2、LC3、LC4とを備える。
【0037】
本発明によれば、
図6、
図7、
図17および
図18に示すように、第1の水平面PH1および第2の水平面PH2が共に、中心軸A1に垂直であるため互いに平行であり、互いに離間している。
【0038】
本発明の一部の実施形態では、第1の水平面PH1および第2の水平面PH2は、上部クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4および下部クランプ部LC1、LC2、LC3、LC4クランプ部のそれぞれを二分することができ、第1の水平面PH1を第2の水平面PH2よりも上面32に近くして、上部クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4が下部クランプ部LC1、LC2、LC3、LC4よりも常に上面32に近いものと見なすことができるようにする。
【0039】
本発明によれば、
図6、
図7、
図17および
図18に示すように、4個の作動クランプ部UC1、UC2、LC1、LC2を表すちょうど2つの上部クランプ部UC1、UC2およびちょうど2つの下部クランプ部LC1、LC2が、締結部材28上の同数の対応するクランプゾーンUZ1、UZ2、LZ1、LZ2に同時にクランプ接触する。
【0040】
本発明によれば、
図10、
図11、
図21および
図22に示すように、クランプ穴38が、第1の水平面PH1および第2の水平面PH2に沿った横断面において非円形であってもよい。
【0041】
また、本発明の一部の実施形態では、
図8および
図19に示すように、締結部材28が、ねじ切り部46と非ねじ切り部48とをもつ、ねじ軸A2を有する剛性クランプねじ44の形状であってもよい。
【0042】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、締結部材がクランプアームまたはレバーの形状であってもよい。
【0043】
ねじ切り部46は、その関連する着座面24でねじ穴50に係合し、ねじ軸A2は中心軸A1に対して傾斜していてもよい。
【0044】
非ねじ切り部48は、ねじ軸A2に垂直な平面に沿った任意の横断面において円形であってよく、一定の第1の直径D1を有する第1のねじサブ部52と、ねじ切り部46から離れる方向に増加し得る第2の直径D2を有する第2のねじサブ部54とを備える。
【0045】
円筒形の第1のねじサブ部52は、ねじ穴50に同軸の着座孔56に正確に嵌入するように、非常に厳密な第1の直径D1を有していてもよく、ねじヘッドとして説明可能な第2のねじサブ部54は、4個の作動クランプ部UC1、UC2、LC1、LC2とクランプ接触する4個のクランプゾーンUZ1、UZ2、LZ1、LZ2を備えていてもよい。
【0046】
本発明の一部の実施形態では、
図10、
図11、
図21および
図22に示すように、上部クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4のそれぞれ、および下部クランプ部LC1、LC2、LC3、LC4のそれぞれが、第1の水平面PH1および第2の水平面PH2のそれぞれに沿った横断面において別個の上部曲線58および下部曲線60の単一の弧として現れていてもよい。上部クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4は、第1の水平面PH1において互いに周方向に離間していてもよく、下部クランプ部LC1、LC2、LC3、LC4は、第2の水平面PH2において互いに周方向に離間していてもよい。
【0047】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、各上部クランプ部および各下部クランプ部が、別個の上部直線および下部直線のそれぞれの単一の点として現れていてもよい。
【0048】
本発明の一部の実施形態では、
図10、
図11、
図21および
図22に示すように、上部曲線58および下部曲線60が内側に凹状であり、それぞれ中心軸A1を中心に曲率半径R1、R2を有していてもよい。
【0049】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、上部曲線および下部曲線が内側に凸状であってもよい。
【0050】
本発明の一部の実施形態では、上部曲線58および下部曲線60の曲率半径R1、R2が、第1の水平面PH1および第2の水平面PH2のそれぞれに沿ったクランプ穴38の横断面における内接円の半径R3、R4より大きくてもよい。
【0051】
本発明の一部の実施形態では、上部クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4のそれぞれが、下部クランプ部LC1、LC2、LC3、LC4の1つに隣接していてもよい。
【0052】
本発明の第1の実施形態では、
図4、
図6および
図7に示すように、隣接する第1の上部クランプ部UC1および第1の下部クランプ部LC1が、隣接する第3の上部クランプ部UC3および第3の下部クランプ部LC3のそれぞれと概ね正反対であり、隣接する第2の上部クランプ部UC2および第2の下部クランプ部LC2が、隣接する第4の上部クランプ部UC4および第4の下部クランプ部LC4のそれぞれと概ね正反対であってもよい。
【0053】
本発明の第2の実施形態では、
図15、
図17および
図18に示すように、隣接する第1の上部クランプ部UC1および第3の下部クランプ部LC3が、隣接する第3の上部クランプ部UC3および第1の下部クランプ部LC1のそれぞれと概ね正反対であり、隣接する第2の上部クランプ部UC2および第4の下部クランプ部LC4が、隣接する第4の上部クランプ部UC4および第2の下部クランプ部LC2のそれぞれと概ね正反対であってもよい。
【0054】
本発明によれば、
図6、
図7、
図17および
図18に示すように、少なくとも2つの上部クランプ部UC1、UC2に対して接線であり、中心軸A1と同一平面上にある上部仮想線LUl、LU2が、中心軸A1と共にゼロまたは鋭角の第1のクランプ角α1を形成し、少なくとも2つの下部クランプ部LC1、LC2に対して接線であり、中心軸A1と同一平面上にある下部仮想線LLl、LL2が、中心軸A1と共にゼロまたは鋭角の第2のクランプ角α2を形成する。
【0055】
第1のクランプ角α1と第2のクランプ角α2とは異なっていてもよく、上面32に関連する上部および下部仮想線LU1、LU2、LL1、LL2は、中心軸A1に交差せずに上面32より上の方向に延びていてもよい。
【0056】
図4および
図15に示すように、少なくとも2つの上部クランプ部UC1、UC2のそれぞれ、および少なくとも2つの下部クランプ部LC1、LC2のそれぞれが、切削インサート26、126の上面図において見えていてもよい。
【0057】
本発明の一部の実施形態では、第1のクランプ角α1が第2のクランプ角α2より大きくてもよい。
【0058】
本発明の一部の実施形態では、
図5から
図7および
図16から
図18に示すように、第1の上部および下部クランプ部UC1、LC1と第3の上部および下部クランプ部UC3、LC3とのそれぞれに関連する第1の上部および下部仮想線LU1、LL1と第3の上部および下部仮想線LU3、LL3とが、第1の垂直面PV1内に含まれていてもよく、第2の上部および下部クランプ部UC2、LC2と第4の上部および下部クランプ部UC4、LC4とのそれぞれに関連する第2の上部および下部仮想線LU2、LL2と第4の上部および下部仮想線LU4、LL4とが、第2の垂直面PV2内に含まれていてもよい。
【0059】
また、本発明の一部の実施形態では、第1の垂直面PV1が第2の垂直面PV2に垂直であり、第1の垂直面PV1および第2の垂直面PV1、PV2が中心軸A1を含んでいてもよい。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、
図5から
図7および
図16から
図18に示すように、第1の上部クランプ部UC1および第2の上部クランプ部UC2と第1の下部クランプ部LC1および第2の下部クランプ部LC2とのみが動作可能であるように、切削インサート26、126が各着座面24上で方向付けされていてもよい。この構成では、クランプ穴38とクランプねじ44との間の他のクランプ接触点または領域はないことを理解されたい。したがって、離間しているが周方向に隣接する2つの上部クランプ部、および離間しているが周方向に隣接する、対応する2つの下部クランプ部のみを、切削インサート26、126の任意の着座方向において作動させることができる。
【0061】
切削インサート26、126を中心軸A1の周りで180°割出しすることにより、第3の上部クランプ部UC3および第4の上部クランプ部UC4と第3の下部クランプ部LC3および第4の下部クランプ部LC4のみが動作可能になることが容易に理解できる。
【0062】
本発明の一部の実施形態では、各クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4、LC1、LC2、LC3、LC4を切削インサート26、126の2つの割出し位置で利用できるように、クランプ部UC1、UC2、UC3、UC4、LC1、LC2、LC3、LC4がクランプ穴38上に最適に構成され、所与のクランプ部についての2つの割出し位置のうちの第1の位置が、クランプ部についての2つの割出し位置のうちの第2の位置から中心軸A1の周りで90°回転することが理解できる。各割出し位置において、2つの周方向に離間した作動可能上部クランプ部および2つの周方向に離間した作動可能下部クランプ部があり、作動可能上部クランプ部が、対応する作動可能下部クランプ部から中心軸A1に沿って軸方向に離間することがさらに理解できよう。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、4個の作動可能クランプ部UC1、UC2、LC1、LC2が、第1の垂直面PV1および第2の垂直面PV2を二分する第3の垂直面PV3に対して鏡面対称を呈していてもよい。
【0064】
また、本発明の一部の実施形態では、第3の垂直面PV3が、第1の垂直面PV1および第2の垂直面PV2と共に45°までの鋭角を形成することができる。
【0065】
本発明の第1の実施形態では、4個の作動クランプ部UC1、UC2、LC1、LC2が、第4の垂直面PV4の一側に全て位置し、第4の垂直面PV4が第3の垂直面PV3に垂直であってもよい。
【0066】
本発明の一部の実施形態では、各フランク面40が単一の平面当接部62を備えることができる。
【0067】
本発明の他の実施形態(図示せず)では、各フランク面が、2つ以上の平面当接部または非平面当接部を備えることができる。
【0068】
本発明の一部の実施形態では、
図4および
図15に示すように、フランク面40が、第3のフランク面40cと概ね反対の第1のフランク面40aと、第4のフランク面40dと概ね反対の第2のフランク面40bとにより構成され得る。
図5、
図8、
図9、
図16、
図19および
図20に示すように、第1のフランク面40aおよび第3のフランク面40c上のそれぞれの単一当接部62に対して接線である第1の当接面PA1および第3の当接面PA3が、第3の垂直面PV3に垂直であってもよく、第2のフランク面40bおよび第4のフランク面40d上のそれぞれの単一当接部62に対して接線である第2の当接面PA2および第4の当接面PA4が第4の垂直面PV4に垂直であってもよい。したがって、第1の当接面PA1および第3の当接面PA1、PA3は垂直面PV4に対して対称であってもよく、第2の当接面PA2および第4の当接面PA4は、垂直面PV3に対して対称であってもよい。
【0069】
本発明の一部の実施形態では、
図5、
図8、
図16および
図19に示すように、第1のフランク面40aに関連する単一当接部62のみが工具本体22の支持面64に当接して動作可能であると見なされるように、切削インサート26、126が各着座面24上で方向付けされていてもよい。この構成では、外周側面36と切削本体22との間の他の当接点または領域はないことを理解されたい。また、この割出し位置で、中心軸A1に対するねじ軸A2の傾斜により、ねじ軸A2はインサート着座面24下方の点で第1の当接面PA1に交差することができる。
【0070】
切削インサート26、126を中心軸A1の周りで180°割出しすることにより、第3のフランク面40cに関連する単一当接部62のみが動作可能になることが容易に理解できる。
【0071】
本発明の一部の実施形態では、
図5および
図16に示すように、支持面64を2つ以上の支持ゾーン64a、64bに分割することができる。
【0072】
本発明の一部の実施形態では、
図6、
図7、
図17および
図18に示すように、クランプねじ44は、4個の作動クランプ部UC1、UC2、LC1、LC2に4つのクランプ力FU1、FU2、FL1、FL2を同時に加えることができ、このクランプ力は、第1の上部および下部クランプ部UC1、LC1のそれぞれに加えられる第1の上部および下部クランプ力FU1、FL1と、第1の上部および下部クランプ部UC2、LC2のそれぞれに加えられる第2の上部および下部クランプ力FU2、FL2を含む。
【0073】
また、本発明の一部の実施形態では、
図5から
図7および
図16から
図18に示すように、第1の上部および下部クランプ力FU1、FL1を合わせて、第1の垂直面PV1内の単一ベクトルとしての第1の最終クランプ力FF1にすることができ、第2の上部および下部クランプ力FU2、FL2を合わせて、第2の垂直面PV2内の単一ベクトルとしての第2の最終クランプ力FF2にすることができる。第1の最終クランプ力FF1および第2の最終クランプ力FF2は、ほほ同一の大きさとすることができ、第1の最終クランプ力FF1および第2の最終クランプ力FF2に関連するベクトルは、ほぼ平面のインサート着座面24に対して同様の鋭角で傾斜し、支持面64の外側の点で第1の当接面PA1に交差することができる。
【0074】
本発明は、4個の同時クランプ力FU1、FU2、FL1、FL2が高い再現性を有し、2つの最終クランプ力FF1、FF2により、単一フランク面40のみが動作可能である適用について、切削インサート26、126の最適な安定性および正確な位置決めが提供される点が有利である。
【0075】
本発明の一部の実施形態では、
図1、
図5、
図8、
図12、
図16および
図19に示すように、切削工具20、120が、回転縦軸A3を有する回転切削工具の形状であってもよく、第1のフランク面40aに関連する単一当接部62のみが動作可能であり、半径方向外向きの支持面64に当接することができる。ここで、第3のフランク面40cに関連する切刃42が動作可能とすることができる。
【0076】
本発明の一部の実施形態では、切削工具20、120が、面フライス工具または溝フライス工具の形状であってもよく、この場合、切削インサート26、126が半径方向および軸方向の両方の切削力を受ける。本発明は、切削インサート26、126に対する半径方向および軸方向の支持が、半径方向外向きの支持面64とクランプねじ44とにより提供され、工具本体22が軸方向支持面を有する必要をなくし、溝フライス工具が、たとえば、切削インサート26、126の切削幅に対して小さい溝幅を有する溝を作成できるようにする点が有利であり得る。
【0077】
本発明をある程度詳細に説明したが、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることを理解されたい。