特許第5984949号(P5984949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984949
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】組織挙上用移植物
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20160823BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20160823BHJP
   A61B 17/04 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   A61F2/08
   A61L27/00 C
   A61B17/04
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-538689(P2014-538689)
(86)(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公表番号】特表2015-501186(P2015-501186A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】KR2012004421
(87)【国際公開番号】WO2013065923
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2014年4月28日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0112135
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514108034
【氏名又は名称】キム, ジョンウ
【氏名又は名称原語表記】KIM, Jong Woo
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョンウ
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/111407(WO,A1)
【文献】 特表2007−532174(JP,A)
【文献】 特表2008−513132(JP,A)
【文献】 特表2011−502670(JP,A)
【文献】 特表2013−502990(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0027273(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0173887(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0256443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
A61B 17/04
A61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂れ下がったりしわのよった皮膚(S)と、皮下筋肉(m)層との間に挿入され、組織を引っ張ったり引き伸ばしたりすることが可能な組織挙上用移植物において、
前記組織挙上用移植物(2)は、
前記皮膚と前記皮下筋肉層との間に挿入され、前記垂れ下がったりしわのよった皮膚側に設けられる、引っ張りが要求される部位である遠位部と、引っ張る部位である近位部とを有する生体挿入用糸(6)と、
前記生体挿入用糸(6)の前記遠位部側に固定結合されており、多数の空隙(h)が設けられ、前記空隙(h)内に生体組織が成長して充填されるメッシュ部材(4)と、を含み、
前記生体挿入用糸(6)は、前記メッシュ部材(4)の両側から一定距離延長されるように、前記メッシュ部材(4)を貫通しており、記メッシュ部材(4)を貫通して延在する前記生体挿入用糸(6)の部分には複数の突起(8)が形成され、前記突起(8)は前記生体挿入用糸(6)の表面からある方向に突出していることを特徴とする組織挙上用移植物。
【請求項2】
垂れ下がったりしわのよった皮膚(S)と、皮下筋肉(m)層との間に挿入され、組織を引っ張ったり引き伸ばしたりすることが可能な組織挙上用移植物において、
前記組織挙上用移植物(2)は、
前記皮膚と前記皮下筋肉層との間に挿入され、前記垂れ下がったりしわのよった皮膚側に設けられる、引っ張りが要求される部位である遠位部と、引っ張る部位である近位部とを有する生体挿入用糸(6)と、
前記生体挿入用糸(6)の前記遠位部側に、前記生体挿入用糸(6)と一体に一体化されて形成されており、多数の空隙(h)が設けられ、前記空隙(h)内に生体組織が成長して充填されるメッシュ部材(4)と、を含み、
前記生体挿入用糸(6)は、前記メッシュ部材(4)の両側から一定距離延長されるように、前記メッシュ部材(4)を貫通しており、記メッシュ部材(4)を貫通して延在する前記生体挿入用糸(6)の部分には複数の突起(8)が形成され、前記突起(8)は前記生体挿入用糸(6)の表面からある方向に突出していることを特徴とする組織挙上用移植物。
【請求項3】
前記メッシュ部材(4)は、円筒状または平面状からなることを特徴とする請求項1または2に記載の組織挙上用移植物。
【請求項4】
前記メッシュ部材(4)の両側端部が、前記生体挿入用糸(6)に固定結合されることを特徴とする請求項1に記載の組織挙上用移植物。
【請求項5】
前記生体挿入用糸(6)と前記メッシュ部材(4)は、
加熱接着する方式、結び目で結ぶ方式、または医療用接着剤で付着させる方式のうちいずれか1つの方式によって結合されることを特徴とする請求項1に記載の組織挙上用移植物。
【請求項6】
前記生体挿入用糸(6)と前記メッシュ部材(4)は、
射出成形を介して一体化されることを特徴とする請求項2に記載の組織挙上用移植物。
【請求項7】
前記生体挿入用糸(6)は、
施術の安定性を確保しながら、外部に施術痕を出さない太さである0.25mm〜1.5mmを有することを特徴とする請求項1または2に記載の組織挙上用移植物。
【請求項8】
前記生体挿入用糸(6)は、
前記突起(8)を有する突起部(t)と、
前記突起部(t)と一体に連結されながら、突起を省略して筋膜に固定されるように形成される無突起部(r)と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組織挙上用移植物。
【請求項9】
前記突起部(t)は、
前記メッシュ部材(4)が結合された一側に、リフティング調節時、前記皮膚(S)を貫通させて引っ張ることができ、固定後、容易に除去することができる長さである15mm〜25mmほどに、除去部(a)が形成されることを特徴とする請求項8に記載の組織挙上用移植物。
【請求項10】
前記突起部(t)の前記突起(8)は、
各突起の間隔を2〜4mmの範囲にして、切断型突起である場合、切断深みが25%以下の範囲にして、切断角度を10°以下の範囲にすることを特徴とする請求項8に記載の組織挙上用移植物。
【請求項11】
前記突起部(t)の前記突起(8)は、
支持力分散が可能なように、前記生体挿入用糸(6)の表面に、螺旋状に配設されることを特徴とする請求項8に記載の組織挙上用移植物。
【請求項12】
前記メッシュ部材(4)は、編み織りされるか、あるいは射出成形によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の組織挙上用移植物。
【請求項13】
前記メッシュ部材(4)は、引っ張り力を維持するために、熱処理加工されて形成されることを特徴とする請求項12に記載の組織挙上用移植物。
【請求項14】
前記メッシュ部材(4)は、
前記メッシュ部材(4)の引っ張り調整が可能になるように、前記生体挿入用糸(6)の前記除去部(a)の先端から、15mm〜25mm後方に結合されることを特徴とする請求項9に記載の組織挙上用移植物。
【請求項15】
前記メッシュ部材(4)が円筒状である場合、組織の癒着及び支持力が向上するように、前記メッシュ部材(4)の長さが15mm〜60mm、外径が3.0mm〜4.5mmであり、前記メッシュ部材(4)の前記空隙(h)は、大きさが1mm〜2mmであることを特徴とする請求項3に記載の組織挙上用移植物。
【請求項16】
前記メッシュ部材(4)が平面状である場合、前記メッシュ部材(4)の長さが15mm〜60mm、幅が3.0mm〜4.5mmであり、前記メッシュ部材(4)の前記空隙(h)は、大きさが1mm〜2mmであることを特徴とする請求項3に記載の組織挙上用移植物。
【請求項17】
前記組織挙上用移植物(2)は、
人体に無害であり、時経的に生体内吸収されるポリジオキサノン、ポリラクト酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン及びそれらの共重合体である生体吸収性医療用高分子材料、ポリプロピレン、並びにそれらの混合物からなる生体適合性医療用高分子素材から形成されることを特徴とする請求項1に記載の組織挙上用移植物。
【請求項18】
前記組織挙上用移植物(2)は、
一定広さの面状に形成される平面状の前記メッシュ部材(4)と、前記生体挿入用糸(6)とを、前記メッシュ部材(4)の空隙(h)に、前記生体挿入用糸(6)を上部から下部に挿入し、他の空隙(h)に、下部から上部に挿入することを反復し、前記生体挿入用糸(6)を前記メッシュ部材(4)に貫通させることにより結合させることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の組織挙上用移植物。
【請求項19】
前記生体挿入用糸(6)は、その一側に、
挿入管に挿入された前記生体挿入用糸(6)の一部が露出されるように、長さを120mm〜230mmに形成し、前記挿入管に挿入される前記生体挿入用糸(6)の通過を案内するように、無突起で延長される案内部(g)が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の組織挙上用移植物。
【請求項20】
前記組織挙上用移植物(2)は、
長さが140mm〜250mmであり、外径が1.6mm〜2.8mmであり、内径が1.3mm〜2.5mmであり、組織に挿入自在に形成される挿入管(20h)、及び前記挿入管(20h)内で、前記挿入管(20h)の挿入を案内するように、長さが145mm〜255mmであり、直径が1.2mm〜2.4mmに形成される誘導針(22)を具備した挿入部材(20)と、一側または他側に形成された孔を介して、前記生体挿入用糸(6)の前記案内部(g)を掛け、前記挿入管(20h)を通過する糸案内針(23)と、を利用して施術されることを特徴とする請求項19に記載の組織挙上用移植物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織挙上用移植物に係り、さらに詳細には、多数の空隙を有するメッシュ部材を、生体挿入用糸の遠位部側に結合または一体化させ、1つの組織挙上用移植物で垂れ下がったりしわのよった皮膚を容易に引き伸ばすことができる組織挙上用移植物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、身体部位のうち顔や首は、老化やストレスによって皮膚弾力が落ち、顔面及び首の特定部位ないし全般にわたって、皮膚及び皮下組織が垂れ下がってしわが生じる。
【0003】
それにより、美容や、顔面麻痺による非対称矯正などの目的で、垂れ下がった皮膚や皮下組織を引き上げる顔面成形手術を多く行う。
【0004】
顔面や首の垂れ下がった皮膚及び皮下組織を引き上げてしわを伸ばす手術のうち1つである顔面挙上術は、主に、手術痕が目立つ切開を介して、垂れ下がった組織を切除して引き上げる常套的顔面挙上術、すなわち、浸襲的な顔面挙上術と、特殊糸などを利用して、簡単に施術する非浸襲的顔面挙上術と、がある。
【0005】
常套的顔面挙上術は、切開の範囲が耳上部から始まり、耳の前、耳の後ろを切開するので、患者に傷痕が多く残り、手術後、回復期間が長くなるという短所がある。また、浸襲的な手術であるにもかかわらず、鼻唇溝(naso-labial)しわや口元しわを伸ばすために引っ張られる遠位部に及ぼす効果には限界がある。
【0006】
これを補完するために、最近医療用糸またはメッシュなどを利用した簡単な組織挙上術(tissue lifting)が広く実施されてきている。
【0007】
これと係わり、特許文献1ないし8などに、メッシュ形態や多孔性材料に形成されたインプラント、微細気孔または突起が形成された生体挿入用糸などの移植物、及び移植物を施術するための挿入部材などが開示されている。
【0008】
医療用糸を利用した糸挙上術(thread lifting)は、合成糸に微細な突起(cog)あるいはさかとげ(barb)を形成し、その医療用糸を皮膚内に挿入した状態で引っ張る施術方法である。
【0009】
糸挙上術は、面ではない線状(line)で引っ張ることにより、一部分だけ不均一に引っ張り、組織挙上効果が落ちるという短所以外にも、突起が損傷したり、あるいは糸がすり抜けるという問題点がある。そして、前記突起は、施術部位周辺組織まで自然に引っ張ることができず、組織の一点のみを引っ張るので、組織との癒着力が低下して組織が切り裂けるというように組織を損傷させ、自然ではないという問題点がある。
【0010】
また、糸を利用した組織挙上に利用される既存の糸は、突起が組織内から滑り出し、施術後に緩んでしまうこともあり、施術部位の皮膚組織を固定する固定力が弱いために、筋肉を動かせば、組織との癒着を消失させ、施術効果を短期間内に低下させたり、あるいは、施術後に張力が多く加えられれば、突起が損傷され、組織を引っ張る効果が落ちるという問題点がある。
【0011】
また、既存の糸を利用した組織挙上は、実際のしわの主な原因になる遠位部、すなわち、鼻唇溝しわである場合、鼻唇溝しわの真上の近接部位の垂れ下がった組織を引き上げて固定する固定力が早期に消失して垂れ下がりが再発し、しわが再び生ずるという問題点がある。
【0012】
また、帯状メッシュのみを使用した組織挙上は、切開及び二次手術の必要な場合がある施術であり、全体的に施術が複雑であり、施術後に除去するのも困難であり、患者に不都合を与えるという短所があって制限的に施術される。また、帯状メッシュのみを使用した挙上術は、施術過程で組織損傷を与えるというような問題点がある。
【0013】
特に、脱腸や尿失禁に使用されるメッシュは、テンションフリー(tension free)であり、臓器との癒着を最小化しなければならないが、顔面挙上では、老化の進行などにより、持続的に垂れ下がる組織を引き上げなければならなず、筋肉の動き及び外傷に対抗するために、引っ張り力を維持し、組織との癒着が堅固ではなければならないというように、互いに相反した問題点があり、脱腸や尿失禁に使用されるメッシュをそのまま顔面挙上に使用し難いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国公開特許第2010−0134941号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2007−0093256号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2007−0048178号公報
【特許文献4】韓国公開特許第2010−0058650号公報
【特許文献5】韓国登録特許第10−0724706号公報
【特許文献6】韓国登録特許第10−0886757号公報
【特許文献7】韓国登録実用新案第20−0442490号公報
【特許文献8】国際公開番号WO2005/096956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前述の問題点を解決するために創出されたものであり、さらに詳細には、生体適合性材質のメッシュ部材を、生体挿入用糸の遠位部側に結合または一体化させ、1つの組織挙上用移植物でもって、垂れ下がったりしわのよった皮膚を容易に引き伸ばすことができる組織挙上用移植物を提供するところに目的がある。
【0016】
また本発明は、一定形態のメッシュ部材と生体挿入用糸とを結合または一体化させ、組織挙上用移植物を製造することにより、組織を容易であって堅固に挙上するところに他の目的がある。
【0017】
また本発明は、施術部位の組織が成長しながら、遠位部側に位置したメッシュ部材に癒着させることにより、引っ張りが必要な部位である遠位部、すなわち、しわ真上近接部位の垂れ下がった組織を引っ張る引っ張り力が堅固になり、垂れ下がり再発現象を最小化するところにさらに他の目的がある。
【0018】
また本発明は、周辺組織までメッシュ部材に癒着させることにより、組織の引っ張りを自然に形成させ、生体挿入用糸に加えられた張力が上昇しても、突起の損傷を低減させ、突起の破損及び突起周辺組織の損傷を最小化し、メッシュ部材に癒着される組織の固定力を増大させ、組織挙上が効率的に行われるようにするところにさらに他の目的がある。
【0019】
また本発明は、移植物のメッシュ部材が環状になる網状の移植材料でもって、適切な伸張率を有しており、一定のテンションを維持しており、移植後に原型復元が容易に行われ、組織内殖(tissue ingrowth)により、人体の顔面筋肉などの動きによって、自然に共に動くことができ、柔らかくて異物感を最小化させるところにさらに他の目的がある。
【0020】
また本発明は、生体挿入用糸とメッシュ部材とを結合または一体化させた移植物を組織挙上に利用することにより、施術時に患者の不都合を最小化し、やむを得ず除去が必要な場合、既存糸を利用した組織挙上とは異なり、遠位部に位置したメッシュ部材が除去用器具に容易にかかり、除去を容易にするところにさらに他の目的がある。
【0021】
また本発明は、人体に無害な生体適合性素材を使用することにより、施術後の副作用を防止し、異物感が最小化させるところにさらに他の目的がある。
【0022】
また本発明は、メッシュ部材の構造を多様な形態に製作することができるので、施術部位の組織とメッシュ部材との癒着力が所望するほど向上し、メッシュ部材の個数に制限されず、生体挿入用糸に結合させて使用することができ、施術効果を極大化させることができるというところにさらに他の目的がある。
【0023】
また本発明は、生体挿入用糸に結合されたメッシュ部材を顔面部位以外のその他部位において垂れ下がったりしわのよった皮膚と、皮下筋肉層との間に挿入させることにより、組織との癒着を向上させ、垂れ下がったりしわのよった皮膚及び皮下組織の引っ張りと引き伸ばしとが容易に行われるようにするところにさらに他の目的がある。
【0024】
また本発明は、メッシュ部材自体、及び移植後の組織内殖による癒着力、並びに既存糸に比べ、突起が糸の引っ張り力を大きく低下させないほどの個数及び大きさでもって製作されており、一般的な切断型の突起と異なり、糸の引っ張り力を低下させるという問題を克服するところにさらに他の目的がある。
【0025】
また本発明は、移植物に突起が付着され、突起が初期固定力を補助する役割以外にも、突起がメッシュ部材の動きを防止するように一助となし、メッシュ部材に加えられる張力を分散させることにさらに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前述の目的を果たすための本発明の組織挙上用移植物は、垂れ下がったりしわのよった皮膚(S)と、皮下筋肉(m)層との間に挿入され、組織を引っ張ったり引き伸ばしたりすることが可能な組織挙上用移植物において、前記組織挙上用移植物(2)は、前記皮膚と前記皮下筋肉層との間に挿入され、前記垂れ下がったりしわのよった皮膚側に設けられる、引っ張りが要求される部位である遠位部と、引っ張る部位である近位部とを有する生体挿入用糸(6);、及び前記生体挿入用糸(6)の前記遠位部側に固定結合されており、多数の空隙(h)が設けられ、前記空隙(h)内に生体組織が成長して充填されるメッシュ部材(4);を含み、前記生体挿入用糸(6)は、前記メッシュ部材(4)の両側から一定距離延長されるように、前記メッシュ部材(4)を貫通しており、記メッシュ部材(4)を貫通して延在する前記生体挿入用糸(6)の部分には複数の突起(8)が形成され、前記突起(8)は前記生体挿入用糸(6)の表面からある方向に突出している。
【0027】
前述の目的を果たすための本発明の組織挙上用移植物は、垂れ下がったりしわのよった皮膚(S)と、皮下筋肉(m)層との間に挿入され、組織を引っ張ったり引き伸ばしたりすることが可能な組織挙上用移植物において、前記組織挙上用移植物(2)は、前記皮膚と前記皮下筋肉層との間に挿入され、前記垂れ下がったりしわのよった皮膚側に設けられる、引っ張りが要求される部位である遠位部と、引っ張る部位である近位部とを有する生体挿入用糸(6);、及び前記生体挿入用糸(6)の前記遠位部側に、前記生体挿入用糸(6)と一体に一体化されて形成されており、多数の空隙(h)が設けられ、前記空隙(h)内に生体組織が成長して充填されるメッシュ部材(4);を含み、前記生体挿入用糸(6)は、前記メッシュ部材(4)の両側から一定距離延長されるように、前記メッシュ部材(4)を貫通しており、記メッシュ部材(4)を貫通して延在する前記生体挿入用糸(6)の部分には複数の突起(8)が形成され、前記突起(8)は前記生体挿入用糸(6)の表面からある方向に突出している。
【0029】
前記組織挙上用移植物において、前記メッシュ部材(4)は、円筒状または平面形によってなる。
【0031】
前記組織挙上用移植物は、前記メッシュ部材(4)の両側端部が、前記生体挿入用糸(6)に固定結合されてもよい。
【0032】
前記組織挙上用移植物において、前記生体挿入用糸(6)前記メッシュ部材(4)は、加熱接着する方式、結び目で結ぶ方式、または医療用接着剤で付着させる方式のうちいずれか1つの方式によって結合されてもよい。
【0033】
前記組織挙上用移植物において、前記生体挿入用糸(6)とメッシュ部材(4)は、射出成形を介して一体化されてもよい。
【0034】
前記組織挙上用移植物において、前記生体挿入用糸(6)は、施術の安定性を確保しながら、外部に施術痕を出さない太さである0.25mm〜1.5mmを有することができる。
【0035】
前記組織挙上用移植物において、前記生体挿入用糸(6)は、前記突起(8)を有する突起部(t)と、前記突起部(t)と一体に連結されながら、突起を省略して筋膜に固定されるように形成される無突起部(r)と、を含んでもよい。
【0036】
前記組織挙上用移植物において、前記突起部(t)は、前記メッシュ部材(4)が結合された一側に、リフティング調節時、前記皮膚(S)を貫通させて引っ張ることができ、固定後、容易に除去することができる長さである15mm〜25mmほどに、除去部(a)が形成されてもよい。
【0037】
前記組織挙上用移植物において、前記突起部(t)前記突起(8)は、各突起の間隔を2〜4mmの範囲にして、切断型突起である場合、切断深みが25%以下の範囲にして、切断角度を10°以下の範囲にすることができる。
【0038】
前記組織挙上用移植物において、前記突起部(t)前記突起(8)は、支持力を分散させることができるように、前記生体挿入用糸(6)の表面に、螺旋状に配設されてもよい。
【0039】
前記組織挙上用移植物において、前記メッシュ部材(4)は、編み織り(knitting)されるか、あるいは射出成形(injection
molding)によって形成されてもよい。
【0040】
前記組織挙上用移植物において、前記メッシュ部材(4)は、引っ張り力を維持するために、熱処理加工されて形成されてもよい。
【0041】
前記組織挙上用移植物において、前記メッシュ部材(4)は、前記メッシュ部材(4)の引っ張り調整が可能になるように、前記生体挿入用糸(6)前記除去部(a)の先端から、15mm〜25mm後方に結合されてもよい。
【0042】
前記組織挙上用移植物において、前記メッシュ部材(4)が円筒状である場合、組織の癒着及び支持力が向上するように、前記メッシュ部材(4)の長さが15mm〜60mm、外径が3.0mm〜4.5mmであり、前記メッシュ部材(4)の前記空隙(h)は、大きさが1mm〜2mmである。
【0043】
前記組織挙上用移植物において、前記メッシュ部材(4)が平面状である場合、前記メッシュ部材(4)の長さが15mm〜60mm、幅が3.0mm〜4.5mmであり、前記メッシュ部材(4)の前記空隙(h)は、大きさが1mm〜2mmである。
【0044】
前記組織挙上用移植物は、人体に無害であり、時経的に生体内吸収されるポリジオキサノン(polydioxanone)、ポリラクト酸(poly-(l-lactic)acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)及びそれらの共重合体である生体吸収性医療用高分子材料、ポリプロピレン(polypropylene)、並びにそれらの混合物からなる生体適合性医療用高分子素材から形成されてもよい。
【0045】
前記組織挙上用移植物(2)は、一定広さの面状に形成される平面状の前記メッシュ部材(4)と前記生体挿入用糸(6)とを、前記メッシュ部材(4)の空隙(h)に、前記生体挿入用糸(6)を上部から下部に挿入し、他の空(h)に、下部から上部に挿入することを反復し、前記生体挿入用糸(6)前記メッシュ部材(4)に貫通させることにより結合させることにより形成することができる。
【0046】
前記組織挙上用移植物において、前記生体挿入用糸(6)は、その一側に、挿入管に挿入された前記生体挿入用糸(6)の一部が露出されるように、長さを120mm〜230mmに形成し、前記挿入管に挿入される前記生体挿入用糸(6)の通過を案内するように、無突起で延長される案内部(g)が形成されてもよい。
【0047】
前記組織挙上用移植物(2)は、長さが140mm〜250mmであり、外径が1.6mm〜2.8mmであり、内径が1.3mm〜2.5mmであり、組織に挿入自在に形成される挿入管(20h)、及び前記挿入管(20h)内で、前記挿入管(20h)の挿入を案内するように、長さが145mm〜255mmであり、直径が1.2mm〜2.4mmに形成される誘導針(22)を具備した挿入部材(20)と、一側または他側に形成された孔を介して、前記生体挿入用糸(6)前記案内部(g)を掛けて前記挿入管(20h)を通過する糸案内針(23)と、を利用して施術されてもよい。
【発明の効果】
【0048】
本発明の組織挙上用移植物は、生体挿入用糸に一定形状のメッシュ部材を結合させて皮下組織内に施術することにより、施術部位の組織及び周辺組織と癒着が向上する。
【0049】
また、本発明の組織挙上用移植物は、生体挿入用糸に一定形態のメッシュ部材を結合させた組織挙上用移植物を提供することにより、シワ除去及び垂れ下がった組織のリフティングを容易にする。
【0050】
また、本発明の組織挙上用移植物は、垂れ下がった組織及び周辺組織が同時に自然にリフティングされることにより、施術部位のディンプル(dimple)現象のような副作用が防止されることにより、患者及び医師いずれも満足させる施術が可能である。
【0051】
また、本発明の組織挙上用移植物は、遠位部において、メッシュ部材と組織との癒着による固定力増大によって、垂れ下がり再発現象を顕著に低減させる。
【0052】
また、本発明の組織挙上用移植物は、メッシュ部材がポリプロピレンのような人体拒否反応のない生体適合性材質からなることにより、副作用がなく、かつ半永久的に使用することができる。
【0053】
また、本発明の組織挙上用移植物は、メッシュ部材のエッジ部位がループ状またはその他柔軟な曲線に形成され、軽く、かつ適切な伸張力を有しており、移植後、メッシュ空隙での組織内殖(tissue ingrowth )を誘導することにより、顔面筋肉の動きと自然に調和して異物感を最小化させ、患者の満足感を向上させる。
【0054】
また、本発明の組織挙上用移植物は、メッシュ部材がモノフィラメントであり、全ての空隙が大食細胞(macrophage)と好中球(neutrophils)とが十分に通過する大きさを維持するので、感染の危険を低下させる。
【0055】
また、本発明の組織挙上用移植物は、生体挿入用糸が張力のほとんどを担当しており、メッシュ部材を通過する生体挿入用糸が張力を負担しながら、メッシュ部材と一体に結合された形態を有しており、適切な引っ張り力を維持するために、熱処理加工されたメッシュ部材を利用するので、既存移植物に比べ、メッシュ部材の大きさも相対的に小さくなることは言うまでもなく、張力の変化にも、メッシュ部材がカールしたり(rolling)、折れ曲がったり(folding)細くなったり(string formation)するような変形が最小化され、目的とするメッシュ部材の機能が維持される。
【0056】
また、本発明の組織挙上用移植物は、生体挿入用糸がメッシュ部材を通過しながら、張力のほとんどを担当しており、メッシュ空隙変形が最小化されるだけではなく、メッシュ部材の材質が軽くも(light weight)、移植後にも、空隙サイズが少なくとも1mmほどが維持される材質を使用することができ、線維架橋現象(fibrotic bridging)や、それによるメッシュ部材の収縮現象(shrinkage)を最小化することにより、異物感を低減させる。
【0057】
また、本発明の組織挙上用移植物は、移植後、遠位部に位置したメッシュ部材と垂れ下がった組織との適切な癒着が進められ、従来手術では解決し難い遠位部の垂れ下がり再発現象と、それによるしわ再発生とを防止することにより、施術効果を向上させ、かつ施術後、患者の不満を顕著に減らすことができる。
【0058】
また、本発明の組織挙上用移植物は、メッシュ部材を利用して、メッシュ部材に癒着された周辺組織まで引っ張り込むために、生体挿入用糸でのみ引っ張る糸リフティングなどに比べ、組織の引っ張りを自然であって安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の一実施形態による組織挙上用移植物を示す図面である。
図2図1の一部拡大図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4図2のIV−IV断面図である。
図5】本発明の他の実施形態による組織挙上用移植物を示す図面である。
図6図5の一部拡大図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態による組織挙上用移植物を示す図面である。
図8】本発明のさらに他の実施形態による組織挙上用移植物を示す図面である。
図9】本発明のさらに他の実施形態による組織挙上用移植物を示す図面である。
図10】本発明のさらに他の実施形態による組織挙上用移植物を示す図面である。
図11図10のXI−XI断面図である。
図12】本発明のさらに他の実施形態による組織挙上用移植物の断面図である。
図13】本発明のさらに他の実施形態による組織挙上用移植物を示す図面である。
図14図13のXIV−XIV断面図である。
図15】本発明による組織挙上用移植物が、皮膚及び皮下筋肉層の内部に設けられた状態を拡大図示した図面である。
図16】本発明の組織挙上用移植物を施術するための挿入部材を図示した図面である。
図17図16の結合断面図である。
図18】本発明による組織挙上用移植物が、挿入部材に挿入された様子を示す図面である。
図19】本発明による組織挙上用移植物が、挿入部材によって皮膚及び皮下筋肉層の内部に施術された例を図示する図面である。
図20】本発明による組織挙上用移植物が、顔面の側頭筋膜に懸垂固定されて顔面挙上用に施術された例を図示する図面である。
図21】本発明の組織挙上用移植物を案内する糸案内針を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の望ましい実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
【0061】
実施例1
本発明の一実施形態による組織挙上用移植物2は、垂れ下がったりしわのよった皮膚Sと、皮下筋肉m層との間に挿入され、組織を引っ張ったり引き伸ばしたりすることが可能なのである。かような組織挙上用移植物2は、図1ないし図4に図示されているように、突起8が表面に形成される生体挿入用糸6と、前記生体挿入用糸6と結合され、両側に余分の長さを有するように引き出した生体挿入用糸6によって、両端が固設されるメッシュ部材4と、を含む。
【0062】
前記生体挿入用糸6は、皮膚と皮下筋肉層との間に挿入され、引っ張りが要求される部位である遠位部(しわのよった皮膚側に設けられる領域)と、引っ張る部位である近位部(無突起部rの端部側)と、を有することができる。このとき、遠位部は、垂れ下がったりしわのよった皮膚側に設けられる部位をいい、近位部は、遠位部を引っ張っている部位をいう。
【0063】
このとき、生体挿入用糸6は、施術の安定性を確保しながら、外部に施術痕を出さない太さである0.25mm〜1.5mmに形成され、突起8が一定方向を向いて表面から突出する突起部tと、前記突起部tの他側に配置され、突起8を省略して筋膜に固定される無突起部rと、を含む。
【0064】
前記突起部tには、メッシュ部材4が結合された一側に、リフティング調節時、皮膚Sを貫通して引っ張ることができ、メッシュ部材4が、必要な部位に載置または固定されたとき、容易に除去することができる長さである15mm〜25mmの除去部aが形成されている。また、生体挿入用糸6の一側には、挿入管に挿入された糸の一部が露出されるように、長さが120mm〜230mmであり、挿入管に挿入される糸の通過を案内するように、生体挿入用糸6の除去部aから延長される案内部gが設けられる。
【0065】
生体挿入用糸6は、メッシュ部材4の両側に一定距離延長しながら、前記メッシュ部材4を貫通するように構成される。
【0066】
前記突起部tの突起8を、生体挿入用糸6に形成させるために、切断、加熱圧縮、射出成形などの方法を利用することができる。このとき、突起8は、従来の突起付きの生体挿入用糸とは異なり、組織挙上の役割を、メッシュ部材4と分担したり、あるいは補助的な機能を担当することができるので、施術条件によっては、突起8が一部分にしかなかったり、あるいはないことも可能であり、突起8がある場合にも、突起8の大きさを小さくしたり、あるいは突起8の数を少なくすることもできる。一方、突起8は、支持力が容易に分散されるように、生体挿入用糸6の長さ方向に沿って、螺旋形に配置されてもよい。
【0067】
このとき、突起部tの突起8は、各突起8の間隔を2〜4mmの範囲にして、切断型突起である場合、切断深みが生体挿入用糸に対して、25%以下の範囲にして、切断角度を10°以下の範囲にすることが望ましい。
【0068】
前記メッシュ部材4は、前記生体挿入用糸6の遠位部側に固定結合されており、多数の空隙(pore)hが設けられ、前記空隙h内に、生体組織が成長して充填される。メッシュ部材4は、一側及び他側がほぼ三角形状になり、その間には、多数の楕円が互いに付着している形状を有することができる。
【0069】
かようなメッシュ部材4は、人体に無害であり、時経的に生体内吸収されるポリジオキサノン(polydioxanone)、ポリラクト酸(poly-(l-lactic)acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)及びそれらの共重合体である生体吸収性医療用高分子材料、ポリプロピレン(polypropylene)、並びにそれらの混合物からなる生体適合性医療用高分子素材を使用することが望ましい。このとき、メッシュ部材4は、平面状であり、編み織り(knitting)されたり、あるいは射出成形によって形成され、引っ張り力を維持するために、熱処理加工されることも望ましい。
【0070】
メッシュ部材4は、顔面、首、胸、臀部のうち一ヵ所に施術され、施術部位の大小によって、メッシュの大きさを拡大したり、あるいは縮小させることができる。また、メッシュの個数も1個である必要はなく、必要によって、メッシュを追加することができる。
【0071】
前記メッシュ部材4は、15mm〜20mmの長さを有する除去部aの後方に設けられる。すなわち、メッシュ部材4の引っ張り調整を容易にするように、生体挿入用糸6の除去部aの先端から、15〜25mm後方に結合されてもよい。メッシュ部材4は、その長さが15mm〜60mmであり、幅が3.0mm〜4.5mmであり、メッシュ空隙hは、大きさが1mm〜2mmの範囲を有することができる。
【0072】
メッシュ部材4を編み織りで製造すれば、メッシュ部材4の両側を緩慢なラウンド状にすることができる。このように、メッシュ部材4の両側が緩慢なラウンド状にされれば、皮膚内の損傷を最小化することができる。
【0073】
生体挿入用糸6とメッシュ部材4との結合方式としては、メッシュ部材4の両端側は、図3に図示されているように、生体挿入用糸6を、メッシュ空隙hの上部及び下部に代わる代わる挿入させ、ジグザグ状に配置させた後、メッシュ部材4と生体挿入用糸6とを加熱接着、または医療用接着剤5などによって結合させることができる。また、メッシュ部材4の両端間の中央領域は、図4に図示されているように、生体挿入用糸6が、前記メッシュ部材4の一面側に置かれた状態で、加熱接着または接着剤5などによって、互いに結合させることができる。このように、メッシュ部材4の両端と、その間の領域とでの結合方式を異ならせる理由は、メッシュ部材4の両端が中央領域よりも、力をさらに多く受けて固定力がさらに多く必要だからである。
【0074】
実施例2
図5及び図6に開示された組織挙上用移植物2は、実施形態1で述べた構成と、全体的に類似しているが、菱形状が互いに重畳されて一方向に延長された形状を有している。このとき、図5に開示された組織挙上用移植物2も、メッシュ部材4の両端側は、ジグザグ状に生体挿入用糸6が結合され、両端間の中央部分は、生体挿入用糸6のメッシュ部材4の一面に配置される。
【0075】
実施例3
図7に開示された組織挙上用移植物2は、図1ないし図4に開示された組織挙上用移植物とは異なり、生体挿入用糸6に別途の突起が設けられていない。このように、組織挙上用移植物2の生体挿入用糸6に突起がないので、メッシュ部材4の長さが、図1ないし4に開示されたメッシュ部材に比べて長く形成され、メッシュ部材4が十分な支持力を確保することにより、突起がないとしても、全体的な支持力が低下することがない。
【0076】
実施例4
図8に開示された組織挙上用移植物2は、図1ないし図4に開示された組織挙上用移植物とは異なり、メッシュ部材4と生体挿入用糸6とが結び目10(図15)によって結合されている。特に、メッシュ部材4の両端が、生体挿入用糸6に、結び目方式で固定されていることにより、メッシュ部材4が、生体挿入用糸6から離脱されることが確実に防止される。
【0077】
実施例5
図9に開示された組織挙上用移植物2は、図1ないし図4に開示された組織挙上物とは異なり、メッシュ部材4の両端が、生体挿入用糸6の一面に載せられた状態で接着されている。すなわち、生体挿入用糸6が、上下交互にメッシュ部材の空隙hを通過しながら、メッシュ部材4に結合されず、単に接着剤だけによって互いに結合されてもよい。かような組織挙上用移植物2は、生体挿入用糸6が、メッシュ部材4の両端にジグザグ状に結合されていないために、製造が簡便である。
【0078】
実施例6
図10及び図11に開示された組織挙上用移植物2は、メッシュ部材4が円筒状になるものを例示している。かような円筒状メッシュ部材4は、突起8が表面に形成された生体挿入用糸6の挿入方向先端から、15mm〜20mmに形成される除去部aの後方に、結び目10が形成されるように結ばれて設けられる。すなわち、円筒状メッシュ部材4の引っ張り調整を容易にするように、除去部aを生体挿入用糸6の一側に残しておいて生体挿入用糸6に結合される。かような円筒状メッシュ部材4は、組織の癒着及び支持力を容易に発揮させるように、長さが15mm〜60mmであり、外径が3.0mm〜4.5mmであり、空隙hの大きさは1.0mm〜2.0mmに形成される。
【0079】
なお、図12に開示された組織挙上用移植物2では、図10及び図11に開示された組織挙上用移植物とほぼ類似した形状を有しているが、メッシュ部材4と結合された生体挿入用糸6の表面に、突起が形成されていない。
【0080】
実施例7
図13及び図14に図示された組織挙上用移植物2は、図1ないし4に開示された組織挙上用移植物のように、別途に製作された生体メッシュ部材と、生体挿入用糸とを互いに接着剤または結び目などによって結合させて製作するのではなく、メッシュ部材4と生体挿入用糸6とが互いに一体化され、一体になっていることを特徴とする。このとき、メッシュ部材4と生体挿入用糸6は、射出成形によって、単一体に形成される。メッシュ部材4と生体挿入用糸6とが、互いに同一素材からなる一体に形成されることにより、メッシュ部材4と生体挿入用糸6とが互いに分離し難いだけではなく、同一程度に伸張可能であるという長所がある。
【0081】
以上で説明した本発明の組織挙上用移植物2は、図15に図示されているように、皮膚Sと、皮下筋肉m層との間の組織に挿入され、組織をリフティングする。
【0082】
すなわち、施術後、皮膚S及び皮下筋肉組織mは、経時的にメッシュ部材4の空隙h内に増殖していくが、皮膚S及び皮下筋肉組織mが生殖(tissue ingrowth )することにより、メッシュ部材空隙hを充填し、それによって、メッシュ部材4に癒着される。
【0083】
また、図16に図示した挿入部材20は、組織挙上用移植物2の挿入及び施術を容易にするためのものであり、挿入管20h及び誘導針22から構成される。前記挿入管20hは、140mm〜250mmの長さを有し、組織挙上用移植物2が容易に挿入されるように、外径が1.6mm〜2.8mmであり、内径が1.3mm〜2.5mmを有する。
【0084】
前記誘導針22は、挿入管20hが、皮膚及び皮下筋肉組織の内部に容易に挿入されるように、長さが145mm〜255mmを有し、直径が1.2mm〜2.4mmを有し、エッジは、鋭い先端が前記挿入管の端部から突出し、皮膚と筋肉層との間に、挿入管20hが容易に挿入される。かような誘導針22の後端には、取っ手22aが形成されている。
【0085】
また、図17に図示された挿入部材20が、皮膚及び皮下筋肉組織の内部に挿入された後、前記挿入管20hから誘導針22を抜き取り、図18に図示されているように、糸案内針23を、前記挿入管20h内に挿入する。このとき、糸案内針23は、生体挿入用糸の案内部gを掛け、それを挿入管20h内に通過させた後、予定された部位の皮膚を突き抜けて出てくる役割を行う。
【0086】
また、糸6に結合されたメッシュ部材4は、線維化される(fibrotic)組織と堅固に癒着されることにより、しわのよった皮膚は伸ばし、垂れ下がった皮膚はリフティングする。
【0087】
以下、前記のようになる本発明による組織挙上用移植物による顔面施術について、図19及び図20を参照して説明する。
【0088】
まず、挿入部材20を、切開部位を介して、皮膚S及び皮下筋肉m層を通過し、皮膚を突き抜けるまで前進させる。その後、挿入管20hをそのままにし、誘導針22のみを除去し、図19に図示されているように、生体挿入用糸の案内部gを、糸案内針23に掛け、それを挿入管20h内に通過させた後、予定された部位の皮膚を突き抜けて出るようにする。
【0089】
皮膚外に出た案内部gを引っ張り、挿入管20hを介して生体挿入用糸6の除去部aが露出させる。その後、皮膚Sを抜け出た糸6の除去部aを取り、挿入管20hを後退させて抜き取る。そして、突起部tと無突起部rとをそれぞれ取って引っ張り具合を調整し、メッシュ部材4を、垂れ下がった部位に位置させる。垂れ下がったりしわのよった皮膚S及び皮下筋肉m層に挿入させた組織挙上用移植物2を引き上げ、引っ張り具合を調整した後には、図20に図示されているように、糸6の除去部aを一部除去した後、一側に、同一方法で施術された他の組織挙上用移植物2の無突起部rを形成した糸6同士を筋膜などに固定させ、結び目が形成されるように結べば、施術が完了する。
【0090】
皮膚S及び皮下筋肉m層に施術された組織挙上用移植物2は、経時的に成長する組織が、メッシュ空隙hを充填することにより、堅固に癒着される。
【0091】
かようなメッシュ部材4には、施術部位だけではなく、周辺の組織まで癒着されるので、施術時間が経つほど、施術部位全体をリフティングさせ、組織挙上効果を向上させる。
【0092】
なお、糸案内部材23は、図18に開示されているように、近位部(または一側)に掛ける形態以外、図21に図示されているように、遠位部(または他側)に、生体挿入用糸が掛かる孔23aを形成し、その生体挿入用糸が遠位部側に掛かる形態を有するものも可能である。
【0093】
本発明による例示的な構造及び実施形態について、図面及び明細書に記述したが、それらに限定されるものではなく、使用部位によって多様に変更され、糸とメッシュ部材との複合体からなる全ての範疇の組織挙上用移植物を含む。
図1
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