特許第5984967号(P5984967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984967
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】モード混合によるマルチ・モード光通信
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2581 20130101AFI20160823BHJP
   H04J 14/00 20060101ALI20160823BHJP
   H04J 14/04 20060101ALI20160823BHJP
   H04J 14/06 20060101ALI20160823BHJP
   G02B 6/30 20060101ALI20160823BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20160823BHJP
   G02B 6/04 20060101ALI20160823BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20160823BHJP
   G02B 6/28 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H04B9/00 268
   H04B9/00 F
   G02B6/30
   G02B6/26
   G02B6/04 B
   G02B6/122 311
   G02B6/28 T
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-561071(P2014-561071)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公表番号】特表2015-515184(P2015-515184A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】US2013029320
(87)【国際公開番号】WO2013134361
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】61/608,139
(32)【優先日】2012年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/669,612
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/701,646
(32)【優先日】2012年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】リフ,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】エシアンブラ,レネ−ジャン
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ,ニコラス
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/126814(WO,A2)
【文献】 H. Bulow 他,「Coherent Multimode-Fiber MIMO Transmission with Spatial Constellation Modulation」,ECOC 2011,スイス,2011年 9月
【文献】 W. Rosenkranz 他,Optical MIMO-Processing and Mode-multiplexing: Experimental Achievements and Future Perspectives,OECC 2010 Technical Digest,2010年 7月,p. 44 - 45
【文献】 H. S. Chen 他,30Gbit/s 3 × 3 Optical Mode Group Division Multiplexing System with Mode-Selective Spatial Filtering,OFC/NFOEC 2011,2011年 3月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
G02B 6/04
G02B 6/122
G02B 6/26
G02B 6/28
G02B 6/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光データ変調器と、光端面カプラとを有する光送信器を備え、前記複数の光データ変調器の各々が、対応する被データ変調光搬送波を出力するように構成され、前記光端面カプラが、マルチ・モード光ファイバの端面を光スポットのパターンで照明するように前記被データ変調光搬送波を光ビームのパターンに導くように構成される装置であって、
前記光端面カプラは、前記被データ変調光搬送波の各々が前記マルチ・モード光ファイバの1組の正規直交光伝搬モードを励振するように構成され、前記組の前記正規直交光伝搬モードのうちのいくつかが少なからず異なる強度または位相プロファイルを有し、
前記マルチ・モード光ファイバの前記正規直交光伝搬モードの前記組が線形独立である、装置。
【請求項2】
前記光端面カプラは、前記被データ変調光搬送波の各々の光パワーが前記組の前記直交光伝搬モードの全体にわたって実質的に均一に拡散することになるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光端面カプラは、前記光伝搬モードの各々が、前記光伝搬モードの互いと同じように前記光パワーの少なくとも1/2を受け取るように前記被データ変調光搬送波の少なくとも1つの光パワーを前記光伝搬モードの全体にわたって拡散させるように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記光端面カプラが、前記被データ変調光搬送波を受け取るように接続された入力光ファイバと、前記端面を前記光スポットのパターンで照明することができる出力端部とを有するテーパ化ファイバ束を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記光端面カプラが3D導波路デバイスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
一連の全光学的に端部接続されたマルチ・モード光ファイバ・スパンを有する全光マルチ・モード・ファイバ・チャネルをさらに含み、前記マルチ・モード光ファイバが、前記一連のものの前記マルチ・モードファイバ・スパンのうちの最初のもののセグメントであり、前記一連の前記マルチ・モードファイバ・スパンのうちのいくつかが、微分群遅延補償を行うように構築されたハイブリッド光ファイバ・スパンである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記全光マルチ・モード・ファイバ・チャネルから受け取った光の測定値の組にMIMO処理を実行することによって、前記被データ変調光搬送波で搬送されたデータ・ストリームを評価するように構成される光受信器をさらに含む、請求項に記載の装置。
【請求項8】
複数の被データ変調光搬送波を並列に送出し、マルチ・モード光ファイバの端面を光スポットのパターンで照明するように構成された光送信器であり、前記光スポットの各々が前記被データ変調光搬送波のうちの対応するものによって形成される、光送信器を備える装置であって、
前記パターンにおいて、各光スポットが、前記マルチ・モード光ファイバにおいて異なる横方向の強度または位相分布を有する1組の正規直交光伝搬モードの全体にわたって、前記被データ変調光搬送波のうちの前記対応するものの光パワーを拡散させるように相対的に配置され
正規直交光伝搬モードの前記組が線形独立である、装置。
【請求項9】
前記パターンの前記光スポットのサブセットが、円上に配置された中心を有し、前記サブセットの前記光スポットが、前記円上にほぼ等しい円弧離隔を有し、前記サブセットが、3個、5個、7個、または9個の前記光スポットで形成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記パターンの前記光スポットのサブセットが、円上に配置された中心を有し、前記サブセットの前記光スポットが、前記円上にほぼ等しい円弧離隔を有し、前記光送信器が、前記組の各光伝搬モードが、前記組の前記光伝搬モードの互いと同じように前記被データ変調光搬送波のうちの少なくとも1つのパワーの少なくとも1/2を受け取るように前記被データ変調光搬送波の少なくとも1つのパワーを送出するように構成される、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第61/608139号、第61/669612号、および第61/701646号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、マルチ・モード光通信のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この節は、本発明の理解を深めるのを容易にすることができる態様を紹介する。したがって、この節の記述はこの観点から理解されるべきであり、何が先行技術であり、何が先行技術でないかについての承認として理解されるべきではない。
【0004】
近年、光伝搬モード多重化が光通信を行うための方法として研究されている。光伝搬モード多重化では、マルチ・モード光ファイバの1組の正規直交光伝搬モードが、光送信器と光受信器との間でデータを搬送する。この組は、異なる横方向強度および/または位相プロファイルをもつ正規直交モードを含む。異なる光伝搬モードは異なるデータ・ストリームを搬送するのに使用することができるので、データ伝送レートがファイバ当たりおよび波長チャネル当たりで見積もられる場合、マルチ・モード光ファイバはシングル・モード光ファイバよりも高いデータ伝送レートをサポートする可能性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第20110243490号
【特許文献2】米国特許出願公開第20110243574号
【特許文献3】米国特許出願第13/539371号
【特許文献4】米国特許出願第13/632038号
【特許文献5】米国仮特許出願第61/692735号
【特許文献6】米国仮特許出願第第61/701613号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の装置の実施形態は、複数の光データ変調器と、端面カプラとを有する光送信器を含む。光データ変調器の各々は、対応する被データ変調光搬送波を出力するように構成される。光端面カプラは、マルチ・モード光ファイバの端面を光スポットのパターンで照明することができるように被データ変調光搬送波を光ビームのパターンに導くように構成される。光端面カプラは、被データ変調光搬送波の各々がマルチ・モード光ファイバの1組の正規直交光伝搬モードを励振するように構成される。この組の正規直交光伝搬モードのうちのいくつかは、少なからず異なる強度および/または位相プロファイルを有する。
【0007】
第1の装置のいくつかの実施形態では、光カプラは、被データ変調光搬送波の各々の光パワーがこの組の直交光伝搬モードの全体にわたって実質的に均一に拡散することになるように構成することができる。光カプラは、光伝搬モードの各々が、光伝搬モードの互いと同じように光パワーの少なくとも1/2を受け取るように、被データ変調光搬送波の少なくとも1つの光パワーを光伝搬モードの全体にわたって拡散させるように構成することができる。
【0008】
第1の装置の任意の実施形態では、光端面カプラは、実質的に平行にするために被データ変調光搬送波の方向を変えるように位置付けられ、向きを定められた1組の反射器をさらに含む自由空間光デバイスとすることができる。
【0009】
第1の装置の代替実施形態では、光端面カプラは、被データ変調光搬送波を受け取るように接続された入力光ファイバと、光スポットのパターンで端面を照明することができる出力端部とを有するテーパ化ファイバ束を含むことができる。
【0010】
第1の装置の任意の実施形態では、光端面カプラは、被データ変調搬送波の各々が、異なる角運動量固有値をもつ光伝搬モードのうちの少なくとも3つを実質的に励振するように構成することができる。
【0011】
第1の装置の任意の実施形態では、光端面カプラは、マルチ・モード光ファイバの軸のまわりの一群の離散的な回転の下で不変な光スポットのパターンを生成するように構成することができる。そのような実施形態では、光スポットは、各群の光スポットが、光ファイバの端面の中心に中心があるパターンを形成するような第1および第2の群に存在することができる。次に、群の一方の光スポットは、群の他方の1つまたは複数の光スポットよりも端面の中心からより大きい距離にある。
【0012】
第1の装置の任意の実施形態では、第1の装置は、一連の全光学的に端部接続されたマルチ・モード光ファイバ・スパンを有する全光マルチ・モード・ファイバ・チャネルをさらに含むことができる。マルチ・モード光ファイバは、この一連のものの光マルチ・モード・ファイバ・スパンのうちの最初のもののセグメントである。いくつかのそのような実施形態では、この一連のマルチ・モード・ファイバ・スパンのうちのいくつかは、微分群遅延補償を行うように構築されたハイブリッド光ファイバ・スパンとすることができる。いくつかのそのような実施形態は、全光マルチ・モード・ファイバ・チャネルから受け取った光の測定値の組にMIMO処理を実行することによって、被データ変調光搬送波で搬送されたデータ・ストリームを評価するように構成される光受信器をさらに含むことができる。
【0013】
第1の装置のいくつかの実施形態では、光端面カプラは3D導波路デバイスを含むことができる。
【0014】
第2の装置の実施形態は、マルチ・モード光ファイバの端面を光スポットのパターンで照明する方法で複数の被データ変調光搬送波を並列に送出するように構成された光送信器を含む。光スポットの各々は、被データ変調光搬送波のうちの対応するものによって形成される。パターンにおいて、各光スポットは、マルチ・モード光ファイバにおいて異なる横方向の強度および/または位相分布を有する1組の正規直交光伝搬モードの全体にわたって、被データ変調光搬送波のうちの対応するものの光パワーを拡散させるように相対的に配置される。
【0015】
第2の装置のいくつかの実施形態では、サブセットの光スポットが、円上に配置された中心を有する。サブセットの光スポットは、円上にほぼ等しい円弧離隔を有する。いくつかのそのような実施形態では、サブセットは、奇数の光スポット、例えば、3個、5個、7個、または9個の光スポットで形成される。このパターンは、ほぼ円の中心に配置された1つの光スポットを含む。この段落によるいくつかの実施形態では、光スポットの第2のサブセットは、3つ以上の光スポットを含む。第2のサブセットの光スポットは、第2の円に沿って配置された中心を有し、第2の円は、第1の円と同心であり、異なる半径を有する。2つのサブセットは、異なる数の光スポットで形成することができる。
【0016】
第2の装置の任意の実施形態では、光送信器は、この組の各光伝搬モードが、この組の前記光伝搬モードの互いと同じように前記被データ変調光搬送波のうちの少なくとも1つのパワーの少なくとも1/2を受け取るように被データ変調光搬送波の少なくとも1つのパワーを送出するように構成される。
【0017】
第2の装置の任意の実施形態では、光送信器は、テーパ化ファイバ束であって、その入力光ファイバで被データ変調光搬送波を受け取るように接続された、テーパ化ファイバ束を含むことができ、受け取った光をその端面から送出することによってパターンを形成するように構成することができる。
【0018】
第2の装置の代替実施形態では、光カプラは、実質的に平行にするために反射器が被データ変調光搬送波の方向を変える自由空間光デバイスとすることができる。
【0019】
第2の装置の任意の実施形態では、第2の装置は、全光マルチ・モード・ファイバ・チャネルを形成するように連続的に接続されたマルチ・モード光ファイバの一連のスパンをさらに含むことができる。この一連のマルチ・モード光ファイバの最初のものは、光送信器で形成されたパターンによって照明されるように位置付けられた端面を有する。いくつかのそのような実施形態では、第2の装置は、この一連のマルチ・モード光ファイバの最後のものによって放出される光を受け取るように光学的に接続される光受信器をさらに含むことができ、その光伝搬モードのうちの異なるものによって搬送されたデータ・ストリームを復調するように構成することができる。
【0020】
第2の装置のいくつかの実施形態では、光送信器は、3D導波路デバイスであって、その入力光ファイバで被データ変調光搬送波を受け取るように接続され、受け取った光をその端面から送出することによってパターンを形成するように構成される、3D導波路デバイスを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】マルチ・モード光ファイバ(MMF)の一連の伝送スパンを有する光通信システムを示すブロック図である。
図2図1の光送信器を概略的に示すブロック図である。
図3図2の光送信器の実施形態が、光マルチ・モード・ファイバ通信チャネル、例えば、図1の光ファイバ通信チャネルの第1の伝送スパンのMMFの端面に形成する光スポットのパターンの例を示す図である。
図4図1の光送信器のある実施形態が、例えば、MMFの3つの直線偏光(LP)モードの全体にわたって、例えば、角運動量固有値0、+1、および−1を有するLPモードの全体にわたって3つの個々の被データ変調光搬送波の光パワーを実質的に均一に拡散させるために使用することができる3つの光スポットのパターンを示す図である。
図5図1の光送信器のいくつかの実施形態が、例えば、MMFの6つのLPモードの全体にわたって個々の被データ変調光搬送波の光パワーを実質的に均一に拡散させるために使用することができる6つの光スポットのパターンを示す図である。
図6A】光端面カプラが、図4の光スポットのパターンに基づいてMFAの正規直交光伝搬モードの混合の全体にわたって3つの別個の被データ変調光搬送波を拡散させる図2の光送信器の一実施形態を示すブロック図である。
図6B図6Aの光端面カプラの自由空間様式での3つの被データ変調光搬送波の断面のパターンの漸進的変化を示す一続きの断面図である。
図7図2の光端面カプラのテーパ化ファイバ束の実施形態の断面図である。
図8図2の光端面カプラの一実施形態である3次元(3D)導波路デバイスの斜め図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図および本文において、同様の参照番号は機能的におよび/または構造的に類似の要素を示す。
【0023】
図において、いくつかの特徴部の相対的寸法は、図中の装置をより明確に示すために誇張されることがある。
【0024】
本明細書において、様々な実施形態が、図と、発明を実施するための形態とによってより完全に説明される。それにもかかわらず、本発明は様々な形態で具現することができ、図と、発明を実施するための形態とにおいて説明される特定の実施形態に限定されない。
【0025】
上述の米国仮特許出願第61/608139号、第61/669612号および第61/701646号は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本明細書において、マルチ・モードおよびシングル・モード光ファイバは、光通信のC、L、および/またはS波長帯で光を搬送する軸対称形態をもつ光ファイバを指す。そのような光ファイバの例は、ドープおよび/または非ドープ石英ガラス光コアと光クラッドとで構築することができる。いくつかのそのような光ファイバは、ステップ・インデックス(step−index)またはグレーデッド・インデックス(graded−index)構造を有することができる。そのような光ファイバは、例えば、半径方向屈折率プロファイルが単一ステップである光ファイバ、および例えばディプレスト・クラッド屈折率(depressed−cladding−index)光ファイバにおけるように屈折率プロファイルが多数ステップである光ファイバを含む。
【0027】
本明細書において、マルチ・モード光ファイバ(MMF)は、様々な数の光伝搬モードを有することができる。MMFの例は、例えば偏光縮退がない状態で2個から約15個の光伝搬モードを有するように構築されるか、または偏光縮退を伴って4個から約30個の光伝搬モードを有するように構築される少数モード光ファイバ(FMF)を含む。MMFの他の例には、より多くの光伝搬モードを有する光ファイバが含まれる。
【0028】
本明細書において、光ファイバの相対的に直交した光伝搬モードは、少なからず異なる強度または振幅のプロファイルを有する。特に、モードが、光ファイバの断面にわたって、定数を超えて異なる振幅または位相のプロファイルを有する場合、2つのモードのそのようなプロファイルは少なからず異なる。例えば、2つのそのような光伝搬モードは、一般に、異なる角運動量固有値または軸・動径固有値(axial radial eigenvalue)を有することになる。
【0029】
MMFの異なる正規直交光伝搬モードを介した被データ変調光搬送波の伝送は、光伝送が被データ変調光搬送波にもたらす光劣化の量に著しく影響を与えることがある。実際、光減衰、光クロストーク、および非線形光歪みのいずれかまたはすべては、著しくモード依存であることがある。個々の被データ変調光搬送波の各々が、対応しかつ相対的に直交した光伝搬モードで伝送される場合、光伝送中の光劣化のモード依存性は、光受信器での復調にとって被データ変調光搬送波の一部があまりにも劣化した状態になるほど大きくなることがある。
【0030】
モード依存性の上述の望ましくない影響は、単一の光伝搬モードを介する代わりにMMFの1組の正規直交光伝搬モードを介して各被データ変調光搬送波を光学的に伝送することによって低減することができると発明者等は確信している。この組には、MMFの2つ以上の相対的に直交した光伝搬モードが含まれることになり、この組の2つ以上の相対的に正規直交した光伝搬モードは、定数を超えて異なる位相および/または強度プロファイルを有すると発明者等は確信している。特に、1組の相対的に直交した光伝搬モード、例えば、少なからず異なる強度および/または位相プロファイルをもつ2つ以上のそのようなモードの全体にわたって個々の被データ変調光搬送波の各々を実質的に拡散させると、光伝送は光劣化の有益な平均化を生成することができると発明者等は確信している。そのような平均化は、被データ変調光搬送波への光劣化の依存性を低下させることができる。この依存性の低減は、さらに、光受信器における受信した光信号のストリームの等化および/または多入力多出力(MIMO)処理を容易にすることができる。
【0031】
さらに、相対的に直交した光伝搬モードのそのような組のうちの事前選択された組の全体にわたって個々の被データ変調光搬送波の光パワーを実質的に拡散させると、光挿入損を低減させることができる。MMFのそのような事前選択された組の光伝搬モードの全体にわたってそのような被データ変調光搬送波の光パワーを実質的に均一に拡散させるいくつかの光カプラは、非常に低い光挿入損で光搬送波をMMFの端面に挿入することができる。
【0032】
図1は、個々の被データ変調光搬送波の各々の光パワーを事前選択された組の光伝搬モードの全体にわたって実質的に拡散させる光通信システム10を示す。事前選択された組は、強度および/または位相プロファイルが定数を超えて異なる正規直交伝搬モードを有し、例えば、この組は、異なる動径および/または角運動量固有値をもつモードを含むことができる。光通信システム10は、光送信器12と、光受信器14と、光受信器14を光送信器12に光学的に接続する全光マルチ・モード・ファイバ・チャンネル16とを含む。
【0033】
光送信器12は、全光マルチ・モード・ファイバ・チャンネル16の事前選択された組のM個の相対的に直交した空間光伝搬モードを1組の初期の被データ変調光搬送波の各々で励振する。初期の被データ変調光搬送波の組は、別個のデジタル・データ・ストリームで変調されたM個以下の光搬送波からなる。光送信器12は、例えば、その組の初期の被データ変調光搬送波でM個の光伝搬モードの各々を並列に励振することができる。特に、光送信器12は、その組の初期の被データ変調光搬送波と全光マルチ・モード・ファイバ・チャンネル16のM個の空間光伝搬モードとの間に線形独立光結合を生成する。光結合の線形独立性のために、別個の初期の被データ変調光搬送波上に変調された別個のデジタル・データ・ストリームは、光受信器14において、例えばMIMO処理および/または等化法を介して再生することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、光送信器12は、初期の被データ変調光搬送波のエネルギーを、事前選択された組の相対的に直交した空間光伝搬モードの全体にわたって実質的に均一に拡散させることができる。事前選択された組は、強度および/または位相プロファイルが定数を超えて異なる正規直交光伝搬モード、例えば、異なる動径および/または角運動量固有値をもつ光伝搬モードを含む。例えば、光送信器12は、初期の被データ変調光搬送波が全光マルチ・モード・ファイバ・チャンネル16のM個の空間光伝搬モードのうちの異なるものを励振して、事前選択された組の全体にわたって、例えば、3デシベル以下だけ、2デシベル以下だけ、またはさらに1デシベル以下だけ変化するエネルギーを有するように構成することができる。様々な初期の被データ変調光搬送波が、そのように実質的に均一なモード拡散を用いて光送信器12によって伝送される場合、初期の被データ変調光搬送波のうちの異なるものが、全光マルチ・モード・ファイバ・チャンネル16による伝送中に同様の量の光劣化を受けることができる。
【0035】
本明細書において、光送信器が被データ変調光搬送波の光を拡散させるMMFの事前選択された組の光伝搬モードは、光ファイバの光伝搬モードの完全系(complete set)であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、事前選択された組は複数の相対的に直交したモードを含むが、そのような組のモードは、MMFの一方の偏光または両方の偏光のモードに対して完備な基底(complete basis)を形成してもよいし、しなくてもよい。事前選択された組の各々はMMFの少なくとも3つの相対的に直交した光伝搬モードを含み、それは少なからず異なる強度および/または位相プロファイルを有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、光送信器12は波長多重化を組み込むことができる。そのような実施形態では、光送信器12は、例えば、波長チャネルごとに初期の被データ変調光搬送波のモード拡散を実行することができる。
【0037】
光受信器14は、光送信器12によって励振された事前選択された組のM個の個々の光伝搬モードから受け取った一連の光値を選択的にまたは別個に検出することができる。例えば、光受信器14は、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20110243490号および米国特許出願公開第20110243574号のどちらにも説明されているように、個々の空間光伝搬モードから受け取った光を選択的にまたは別個に検出するように構成することができる。
【0038】
加えて、光受信器14は、事前選択された組の相対的に直交した空間光伝搬モードの個々のものから受け取った光値の並列測定に基づいて、光送信器12によって光搬送波上に変調された初期のデジタル・データ・ストリームを評価することができる。光受信器14において、初期のデジタル・データ・ストリームの評価は、並列に測定された光値のストリームの従来のMIMO処理および/または等化を実行することを含むことができる。いくつかの実施形態では、光受信器14は、さらに、そのようなMIMO処理および/または等化を実行する前に微分群速度補償を実行することができる。MIMO処理および/または等化は、例えば、事前選択された組の光伝搬モードのチャネル行列と光送信器12の光結合行列との積を近似的に対角化することができる。光結合行列は、初期の被データ変調光搬送波の組と事前選択された組のM個の空間光伝搬モードとの間の結合を定義する。
【0039】
全光マルチ・モード・ファイバ・チャネル16は、MMFの一連のN個の光伝送スパン18、18、…、18と、伝送スパン18〜18の物理的に隣接する端部を光学的に端接続する(N−1)個の光処理ユニット20、…、20N−1とを含む。数Nは、1以上の任意の整数とすることができる。各光伝送スパン18〜18は、例えば、N個の光伝送スパン18〜18が同じまたは同様の空間光伝搬モードの正規直交の組を有するように同じタイプのMMFとすることができる。
【0040】
光伝送スパン18〜18は、従来のMMFのセグメントで形成することができる。各セグメントは、例えば、従来のステップ・インデックスMMF、従来のグレーデッド・インデックスMMF、または従来のディプレスト・クラッド・インデックスMMFとすることができる。
【0041】
代替として、光伝送スパン18〜18の1つまたは複数は、ハイブリッドMMFのセグメント、例えば、異なるタイプのMMFが端部融着されたセグメントで形成されたMMFのセグメントで形成することができる。実際、そのようなハイブリッドMMFは、事前選択された組の異なる光伝搬モード間に蓄積される微分群遅延(DGD)を、例えば、スパンごとに、減少させるかまたは実質的に補償するように構築することができる。そのようなDGD補償を備えているそのようなハイブリッドMMFスパンを使用すると、光受信器14のMIMO処理および/または等化を容易にすることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、各光伝送スパン18〜18は、少数の空間光伝搬モードしか有しておらず、すなわち、少数モード光ファイバである。一連の光伝送スパン18〜18の直交空間光伝搬モードの数は、データを光学的に搬送する事前選択された組の相対的に直交した光伝搬モードの数以上である。
【0043】
光処理ユニット20〜20N−1は、事前選択された組の光伝搬モード間の光増幅、光分散補償、および蓄積DGD補償のうちの1つまたは複数を実行することができる。いくつかの実施形態では、オプションの最後の光処理ユニット20は、事前選択された組の光伝搬モード間の残留DGDを減少または除去するために、かつ/または増幅を行うために、かつ/または光伝搬モードの残留分散を減少または除去するために使用することができる。
【0044】
MMFの個々の光伝送スパン18〜18および全光処理ユニット20〜20は、任意の好適な形態、例えば、当業者に知られている従来の形態を有することができる。個々の光伝送スパン18〜18および/または全光処理ユニット20〜20は、例えば、2012年6月30日に出願された米国特許出願第13/539371号に説明されているように構築することができる。全光処理ユニット20〜20のうちのいくつかは、2012年9月30日に出願された米国特許出願第13/632038号および/または2012年8月24日に出願された米国仮特許出願第61/692735号に説明されているようなマルチ・モード光増幅器を含むことができる。この段落で列挙した出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
いくつかの実施形態では、光送信器12および/または光受信器14は波長多重化を組み込むことができる。そのような実施形態では、光送信器12は、例えば、光モード拡散を、既に説明したように、波長チャネルごとに実行することができる。同様に、1つまたは複数の波長チャネルについて、光受信器14は、光送信器12において光搬送波上に変調された個々のデータ・ストリームを、既に説明したように、波長チャネルごとに評価するように構成することができる。
【0046】
図2は、図1の光送信器12を示す。光送信器12は、M個の光データ変調器ODM、…、ODMと、M個の光導波路OW、…、OWと、光端面カプラ6とを含む。各光データ変調器ODM〜ODMは、光データ変調器ODM〜ODMで受け取られる電気デジタル・データ・ストリームDATA〜DATAによって変調された光搬送波を出力する。各光導波路OW〜OWは、光データ変調器ODM〜ODMのうちの対応するものを光端面カプラ6に光学的に結合する。光端面カプラ6は、MMF、例えば、図1の第1の光伝送スパン18のMMFの隣接する近傍の端面30にM個の光導波路OW〜OWを光学的に結合する。
【0047】
光端面カプラ6は、各光導波路OW〜OWによって放出される光ビームから、対応する光スポットを隣接する近傍の端面に生成する。例えば、光端面カプラ6は、前記光スポットを生成するように配列された1組の自由空間光デバイス、例えば、反射器、開口部、および合焦および/またはコリメートするレンズおよび/またはミラー・システムを含むことができる。異なる光導波路OW〜OWから生成される光スポットは、多くの場合、MMF30の隣接する端面30で空間的に分離されている中心を有する。光端面カプラ6のいくつかの実施形態では、光スポットは、端面30で完全にまたは実質的に完全に分離されている。そのような実施形態では、光端面カプラ6は、一般に、MMFの隣接する端面30にM個の別個の光スポットを生成する。他の実施形態では、光端面カプラ6は、空間的に重なった光スポット、例えば、照光領域のパターンを生成することができる。様々な実施形態では、パターンの個々の光スポットのうちの異なるものは、MMFの事前選択された組の光伝搬モードの線形的に独立した組合せに結合する。
【0048】
MMFの隣接する端面30において、光スポットの各パターンは、対応する光導波路OW〜OWと、MMFの事前選択された組の光伝搬モードとの間の光結合を規定する。特に、光端面カプラ6は、初期の被データ変調光搬送波の各々の、すなわち、光導波路OW〜OWのうちの1つからの光エネルギーまたはパワーを、事前選択された組の空間光伝搬モードに実質的に均一に拡散させることができる。事前選択された組は、強度および/または位相プロファイルが一定値を超えて異なる正規直交光伝搬モードを含み、例えば、この組は、異なる動径固有値および/または角運動量固有値をもつモードを含むことができる。すなわち、初期の被データ変調光搬送波の各々は、MMFにおいて光伝搬モードの混合によって移送される。例えば、光端面カプラ6は、光変調器ODM〜ODMからのM個の初期の被データ変調光搬送波の各々がMMFのM個の相対的に直交した空間光伝搬モードを励振し、光パワーが事前選択された組のモードの全体にわたって、3デシベル以下だけ、2デシベル以下だけ、またはさらに1デシベル以下だけ変化するように構成することができる。
【0049】
したがって、各光導波路OW〜OWからの光は、MMFの事前選択された組の多数の光伝搬モードに実質的に結合する、すなわち、光伝搬モードの混合に結合する。光結合は、光データ変調器ODM〜ODMによって生成される初期の被データ変調光搬送波と、MMFの事前選択された組の光伝搬モードとの間の光結合行列を規定する。この光結合行列は、一般に、可逆であり、近似的にユニタリである。
【0050】
図3は、光送信器12の代替実施形態が図2のMMFの端面30に形成することができる光スポットのパターンの例を示す。光送信器12の様々な実施形態は、初期の被データ変調光搬送波の組を図2のMMFの光伝搬モードの異なる事前選択された組に光学的に結合させることができる。加えて、光送信器12の様々な実施形態は、この組の初期の被データ変調光搬送波の個々のものの光パワーを事前選択された組の光伝搬モードの全体にわたって実質的に均一に拡散させることができる。特に、パターンの各光スポットは、事前選択された組の光伝搬モードの全体にわたって、例えば、3デシベル以下だけ、2デシベル以下だけ、またはさらに1デシベル以下だけ変化する光パワーを励振することができる。事前選択された組の各々は、強度および/または位相プロファイルが少なからず異なる正規直交光伝搬モードを含み、例えば、事前選択された組は、異なる動径固有値および/または角運動量固有値をもつモードを含むことができる。
【0051】
図3は、それぞれ、3個、6個、8個、10個、12個、および15個の空間的に分離した光スポットを有する代替のパターンA、B、C、DおよびEを示す。各パターンA〜Fにおいて、光スポットは黒丸で示される。図3において、光スポットのうちのいくつかを接続する線はパターンA〜Fの一部ではない。線は様々なパターンA〜Fの形態の視覚化を支援するために含まれている。
【0052】
図2のMMFの適切な形態において、各パターンA〜Fの個々の光スポットは、光コア−光クラッド屈折率差が小さいステップ・インデックス・ファイバであるMMFの光伝搬モードを近似する事前選択された組の直線偏光(LP)モードを励振する。各パターンA〜Fにおいて、光スポットの数は、光スポットの組が励振できる光伝搬モードの独立した組合せの数以上である。3個、6個、10個、12個、および15個の光スポットを有するパターンA〜Fの個々の光スポットは、それぞれ、例えば、以下の事前選択された組のLPモードを励振することができる。
{LP01,LP11 ,LP11 },
{LP01,LP02,LP11 ,LP11 ,LP21 ,LP21 },
{LP01,LP02,LP11 ,LP11 ,LP21 ,LP21 ,LP31 ,LP31 },
{LP01,LP02,LP11 ,LP11 ,LP21 ,LP21 ,LP31 ,LP31 ,LP12 ,LP12 },
{LP01,LP02,LP11 ,LP11 ,LP21 ,LP21 ,LP31 ,LP31 ,LP41 ,LP41 ,LP12 ,LP12 },
および
{LP01,LP02,LP03,LP11 ,LP11 ,LP21 ,LP21 ,LP31 ,LP31 ,LP41 ,LP41 ,LP12 ,LP12b,LP22a,LP22b
各パターンにおいて、光スポットは、MMFの軸に中心がある1つまたは複数のリングに対称的にまたは規則的に配列される。そのような配列のいくつかの非限定の例が図3に示されている。パターンにおいて、リングの数は、事前選択された組のLPmnモードの異なる動径量子数「n」の数値によって与えられる。多重リング・パターンは、動径LPmnモードの線形的に独立した組合せを励振することができる。
【0053】
事前選択された組のLPモードの全体にわたって光搬送波のパワーを実質的に均一に拡散させるために、図2のMMFの端面30に光搬送波によって形成される光スポットは、適切な位置、サイズ、および形状を端面30に有するべきである。そのような光スポットについて、位置、サイズ、および形状の好ましい値は図2の光端面カプラ6において低いモード依存損失、および/または低い挿入損をもたらすと発明者等は確信している。そのような損失の低いモード依存性は、MMFへの伝送の前に光搬送波上に変調されたデータ・ストリームを再生するためのMIMO処理の能力を増強することができると発明者等は確信している。
【0054】
光端面カプラ6は、図2の光端面カプラ6によってMMFの端面30に投影される光スポットと、MMFの光伝搬モードとの間に実効結合行列(effective coupling matrix)Mを定義する。行列Mにおいて、各行列要素は、要素に対応する光スポットの電界と光伝搬モードとの間の重なり積分で与えられる。一般に、行列Mは形態M=UΛVに分解することができ、ここで、UおよびVはユニタリ行列であり、Λは、非ゼロ対角エントリがMの固有値である対角行列である。図2の光端面カプラ6の好ましい実施形態は、対応する行列Λが非ゼロ対角エントリを有しており、非ゼロ対角エントリの比が1に近い大きさである実効結合行列Mを有すると発明者等は確信している。光端面カプラ6のそのような好ましい実施形態は、不必要な実験なしに本出願の本開示に基づいて当業者によって容易に見出され得る。
【0055】
図4および図5は、図2の光端面カプラ6のいくつかの実施形態で実現することができる3−光スポットおよび6−光スポット・パターンの例を示す。これらの例において、図2のMMFの好適な形態では、パターンの個々の光スポットは、それぞれ、その中の光パワーをLPモードの組{LP01,L11 ,LP11 }および{LP01,LP02,LP11 ,LP11 ,LP21 ,LP21 }の全体にわたって実質的に均一に拡散することができる。特に、好適なMMFの端面30にこれらのパターンを生成する光端面カプラは、実質的にユニタリであり、かつ比が1に近い大きさである固有値を有する実効結合行列Mを与えることができる。
【0056】
3つの光スポットの例示のパターン
図4は、ほとんど等しいサイズおよび形状の3つの光スポットが図2のMMFの端面30の中心のまわりに対称的にまたは規則的に配列されるパターンを示す。特に、異なる光スポットの中心は、端面30の中心のまわりに120度回転することによって置き換えられる。加えて、各光スポットは、ほとんどガウス形の強度プロファイルと円形形状とを有することができる。
【0057】
このパターンにおいて、3つの光スポットの各光は、図2の光ファイバの端面30の中心から同じ半径方向距離に配置される。半径方向距離は、各光スポットがほぼ等しいパワーでMMFのLP01モードおよびMMFのLP11 +iLP11 モードを励振するように選択される。ここで、LP11 +iLP11 およびLP11 −iLP11 モードは、MMFの角運動量固有状態である、すなわち、強度がMMFの軸のまわりに軸対称であるモードである。上述の要求条件から、当業者は、図2のMMFの中心からのそのような光スポットの半径方向距離を容易に決定することができることになる。実際、LP01モードは、一般に、MMFの軸で最も高い光強度を有し、LP11 +iLP11 は、一般に、MMFの軸から非ゼロ半径方向距離で最も高い光強度を有するので、LP01モードへのおよびLP11 +iLP11 モードへのそのような光スポットの結合の相対強度は前記半径方向距離に依存することを当業者は理解するであろう。
【0058】
上述のパターンにおいて、各光スポットは、低い挿入損を生成するように構成されたサイズを有することもできる。例えば、近似的なLP01、LP11 、およびLP11 モードのみを有する、ステップ・インデックス少数モード・ファイバまたはグレーデッド・インデックス少数モード・ファイバである例示のMMFの場合、MMFの光コアが約17マイクロメートルの直径を有し、MMFがV=3.92の規格化周波数を有するとすれば、各光スポットは標準のシングル・モード・ファイバのモード・フィールド径に近い直径を有することができる。MMFが少数モード光ファイバである場合、モード・フィールド径は、一般に、MMFの実効面積の平方根に関連する。
【0059】
3つの光スポットのパターンを使用して図1の光送信器12の初期の被データ変調搬送波を図1の全光マルチ・モード・ファイバ・チャンネル16に結合させると、利益を提供することができる。特に、3つの光スポットは、全光マルチ・モード・ファイバ・チャンネル16における2つの群速度のみをもつ1組の光伝搬モードに結合することができる。例えば、組{LP01,LP11 ,LP11 }では、LP11 およびLP11 モードは、一般に、同じ瞬間群速度を有し、その結果、光伝搬モードの組は2つの異なる群速度でのみ伝搬する。このため、微分群遅延(DGD)補償は、スパンごとに、ハイブリッド光ファイバの個々のMMFを形成することによって利用可能とすることができる。例えば、そのようなハイブリッド・ファイバ・スパンは、分散が反対符号を有する第1および第2のMMFセグメントを有することができる。そのようなハイブリッドMMFスパンを使用してDGD補償を行うと、図1の光受信器14における受信光信号のMIMO処理を支援することができる。
【0060】
6つの光スポットの例示のパターン
図5は、図2のMMFの端面30の中心のまわりに配列された6つの光スポットS、S、S、S、S、Sのパターンの一例を概略的に示す。光スポットS〜Sのパターンは、LP様光伝搬モードをもつ少数モード光ファイバ(FMF)の6つの光伝搬モード上へ最大6つの別個の初期の被データ変調光搬送波について光結合をもたらすことができる。そのようなFMFは、両方の偏光が含まれている場合に12個の相対的に正規直交したLPモードを有することができる。一例として、そのようなFMFは、例えば、約17マイクロメートル(μm)の直径をもつ光コアと、約0.5%の光コア対クラッド屈折率対比とを有することができる。
【0061】
このパターンにおいて、中央の光スポットSは直径dsを有し、5つの外側光スポットSは直径dsを有する。5つの外側光スポットSは、半径rの仮想円Cに沿ってほとんど等しい円弧離隔で配置され、仮想円Cは、さらに、端面30の中心に中心がある。外側光スポットSは、直径がdcであるカットアウト円形領域(cut−out circular region)に接触する。カットアウト円形領域は、やはり、中央の光スポットSに中心がある。
【0062】
このパターンでは、各光スポットS〜Sは、例えば、ほとんどガウス形の強度プロファイルおよび円形形状を有することができる。
【0063】
光スポットS〜Sのパターンは、パラメータds、r、ds、および/またはdcに対して好適な値を選択することによって、図2の光モード・カプラ6の結合挿入損および/または損失のモード依存性を低減させるように設計することができる。一例として、上述のMMFへの結合では、光モード・カプラ6は、dsが約5.5μmになるように設定され、rが約6.6μmになるように設定され、dsが約5.1μmになるように設定され、dcが約6.6μmになるように設定される場合、約3dBの結合挿入損および約1dBの損失のモード依存性で形成することができる。結合挿入損のモード依存性は、光伝搬モードがFMFの長さに沿って実質的な混合を受ける場合、さらに緩和され得る。
【0064】
図2の光モード・カプラ6の6つの光スポットのそのようなパターンは、例えば以下で図6A図6Bに示すものと同様の構造に基づく自由空間光学系、テーパ化光ファイバ束もしくはフォトニック・ランタン(photonic lantern)、集積化光デバイス、または3D導波路デバイスを用いて製作することができる。自由空間光学系に基づく光モード・カプラ4のそのような実施形態では、初期の被データ変調光ビームは、例えば、五角形または他の基礎形状(basis)を有するピラミッド形ミラー・デバイスを使用して、6つの光スポットのパターンを形成するように空間的に組み合わせることができる。ピラミッド形ミラー・デバイスの主軸に沿った中央孔を使用して、パターンの中央の光スポットSを生成することができる。テーパ化ファイバ束またはフォトニック・ランタンに基づいた光モード・カプラの一実施形態では、その6つのシングル・モード光ファイバのテーパ化部分は、図5のパターンに形態が類似している溶融・テーパ化(fused and tapered)構造体FTSの断面パターンを形成することができる。
【0065】
3−スポット・モード・カプラをもつ例示の光送信器
図6A図6Bは、図2のMMFの近傍端面30に図4の3−スポット・パターンを生成する図2の光送信器12の例12Aを示す。光送信器12Aは、図2の光端面カプラ6を構築するために自由空間光学系を使用する。
【0066】
図6Aを参照すると、光送信器12Aは、3つの光データ変調器22、22、22と、3つの光導波路OW、OW、OWと、ミラーM1、M2、M3、M4と、レンズL1、L2を含む合焦および/またはコリメート・レンズ・システムとを含む。
【0067】
各光変調器22、22、22は、受け取った初期の電気的なデジタル・データ・ストリームDATA−1、DATA−2、DATA−3を対応する光搬送波上に変調し、結果として生じる初期の被データ変調光搬送波を対応する光導波路OW、OW、OWに出力する。例えば、シングル・モード光ファイバまたは平面光導波路とすることができる各光導波路OW、OW、OWは、その出力端部を介してミラーM1、M2、M3に初期の被データ変調光搬送波を送出する。
【0068】
ミラーM1、M2、M3、M4は、初期の被データ変調光搬送波を図2のMMFの近傍端面に結合させる。3つのミラーM1、M2、M3は、初期の被データ変調光搬送波1、2、3の光ビームの断面によって形成されるパターンを再配列させる。これらの光ビームは、初めは、光導波路OW、OW、OWの端部から同一平面様式で放出される。
【0069】
2つのミラーM1、M2は、3つの被データ変調光搬送波1、2、3の光ビームが図6Aの領域AAで同一平面にあるだけでなく平行であるようにこれらの光ビームのうちの2つの方向を変える。初期のデジタル・データ被変調光搬送波1、2、3の光ビームのこの同一平面で平行な配列が、図6Bの上部部分に断面で示される。
【0070】
次に、残りのミラーM3、M4は、図6Aの領域BBにおいて、他の2つの共通に方向付けられた初期のデジタル・データ被変調光搬送波1、2の光ビームの面の上方または下方に配置されるように中央の初期のデジタル・データ被変調光搬送波3の光ビームを横方向に変位させる。初期のデジタル・データ被変調光搬送波1、2、3の光ビームのこの新しい配列が、図6Bの中央部分に示されている。これらの残りのミラーM3、M4は、図6Aの挿入図に示されるように垂直に配列することができる。
【0071】
レンズL1およびL2は、パターンが図2のMMFの端面30を照明するのに好適なサイズを有するように、ミラーM1〜M4が生成する光ビームのパターンの大きさを変える。例えば、レンズL1は、BB領域からの3つの初期のデジタル・データ被変調光搬送波1、2、3の断面パターンを縮小して、より小さい直径のビーム配列を生成することができる。次に、レンズL2は、3つの初期のデジタル・データ被変調光搬送波1、2、3をコリメートして、MMFの端面30に前記3つの光ビームからの光の3−スポット構成を形成することができる。初期のデジタル・データ被変調光搬送波1、2、3の光ビームのこの新しい配列が、図6Bの下部部分に示されている。
【0072】
ファイバ・デバイスに基づく例示の光送信器
他の実施形態では、図2の光導波路OW〜OWおよび光端面カプラ6は、光ファイバ・デバイス、例えば、各入力光ファイバが初期の被データ変調光搬送波のうちの1つを搬送するテーパ化ファイバ束で形成することができる。ファイバ束において、個々の光ファイバは、既に説明したスポット・パターンのうちの1つ、例えば、図3図5のパターンのうちの1つに応じて、ファイバ束の溶融・テーパ化区間(FTS)に横方向に配列することができる。
【0073】
いくつかのそのような実施形態では、光ファイバ・デバイスは、元の光ファイバ・コアのアレイがより低い屈折率の光クラッド母材で囲まれる溶融・テーパ化光セグメント(FTS)において、M個のシングル・モード・ファイバSMF、…、SMFを断熱的に融合させるフォトニック・ランタンとすることができる。
【0074】
図7は、M個の入力シングル・モード光ファイバSMF、…、SMFをもつ、すなわち、M=3の場合のそのようなフォトニック・ランタン6’の一例を概略的に示す。フォトニック・ランタン6’の溶融・テーパ化セグメントFTSを形成するために、各々の元のシングル・モード・ファイバSMF〜SMFのセグメントを、より低い屈折率をもつ単一のガラス細管GC中に置くことができる。次に、ファイバが充填されたガラス細管を溶融して引っ張り、FTSセグメントの断熱テーパリングを生成することができる。断熱テーパリングにより、M個の分離したシングル・モード光コアの光パターンが、テーパ化され溶融されたセグメントFTSで、パワー損失なしに、新しいビーム・パターンに漸進的に変化することができる。断熱テーパリングにより、M個の局在化したビームの元のパターンは、FTSセグメントにおいて横方向に重なったビームのパターンに漸進的に変化することができ、それにより、本出願の他のところで論じたように、重なった照光領域のパターンをMMFの端面に生成することができる。図2の光モード・カプラ6のフォトニック・ランタン・ベースの実施形態は、例えば、テーパリングにより、M個のシングル・モード・ファイバの元の伝搬モードの光が溶融・テーパ化光セグメントFTSの光クラッド・モードに展開しない場合、低いモード依存損失および/または低い結合/挿入損を提供することができる。
【0075】
集積化デバイスに基づく例示の光送信器
代替として、図2の光導波路OW〜OWおよび光モード・カプラ6は、M個の初期の被データ変調光搬送波から所望の光スポット・パターンを生成するように構成された平面光デバイスを使用して実現することができる。
【0076】
3D導波路デバイスに基づく例示の光送信器
図8は、図2の光端面カプラ6の一実施形態を提供する3D導波路デバイス6”示す。3D導波路デバイス6”は、図2のMMFの近傍端面30に3つの光スポットのパターンを生成するように構成される。3D導波路デバイス6”は、光材料、例えば、石英ガラス・ブロックのブロック2の体積部に形成された3つの光コア3DC、3DC、3DCを含む。ブロック2の左側(LS)とブロック2の右側(RS)との間で、光コア3DC、3DC、3DCによって形成される断面パターンは滑らかに漸進的に変化する。ブロック2の左側(LS)では、このパターンの光コア3DC〜3DCは、3つの光データ変調器(図示せず)につながる光導波路OW、OW、OWへの端部結合にとって都合のよいように広く間隔をあけられる。ブロック2の右側(RS)では、光コア3DC〜3DCは、MMFの近傍端面30に投影されることになる光スポットのパターンの形態の空間パターン(SP)を有する。
【0077】
光コア3DC〜3DCの断面パターンの漸進的変化は、ブロック2のバルク体積部に光コア3DC〜3DCを形成することによって生成される。特に、3D導波路デバイスは、合焦された高強度のレーザで光学材料のブロックに刻み込むことができる。例えば、フェムト秒パルスの高強度レーザは、3D石英ガラス・ブロックの体積部にそのような複雑なパターンの光コアをレーザ書き込みすることができる合焦光ビームを生成するように動作することができる。3Dマイクロ製造レーザ書込みを介してそのような3D導波路デバイスを生成するサービスは、公的に利用可能であり、例えば、そのようなサービスおよび3D導波路デバイスは0/14 Alba Innovation Centre,Alba Campus,Livingston,West Lothian,スコットランド EH54 7GAのOptoscribe Ltd.から公的に入手可能である。
【0078】
図示の光端面カプラ6はMMFの近傍端面30に3つの光スポットのパターンを生成するように構成されているが、図2の光端面カプラ6のための3D導波路デバイスは、3つの光スポットを生成するためのデバイスに限定されない。本開示に基づいて、当業者は、図2のMMFの端面30に光スポットの他のパターンを生成するように構成された3D導波路デバイスの他の実施形態を容易に製作し、使用することができるであろう。実際、そのような他の実施形態は図3に示したような光スポットのパターンA〜Fのうちの任意のものを生成するように構成することができることをそのような当業者は理解するであろう。
【0079】
本出願では、図2の光端面カプラ6のいくつかの実施形態は、光スポットの個々のものが空間的に分離されている光スポットのパターンを生成するように示されているが、本発明はそのような特別なパターンに限定されない。本明細書において、「光スポット」という表現は、光の局在化したスポット、例えば、円形の照光スポットと、より一般的な照光区域との両方を含む。光スポットは、さらに、分断された照光区域の集合とすることさえできる。実際、図7および図8のテーパ化ファイバ束6’および2d導波路デバイス6”のうちのいくつかは、個々の受け取った光ビームからそのような照光領域のパターンを形成するように構築することができる。個々の被データ変調光搬送波を図2のMMFの端面30に結合させるためにそのような照光領域を使用すると、今までどおり、モードのうちのいくつかが少なからず異なる強度および/または位相プロファイルを有するいくつかの事前選択された組の正規直交伝搬モードの全体にわたって個々の被データ変調光搬送波のパワーを実質的に均一に拡散させることができる。
【0080】
図1の光通信システム10のいくつかの実施形態は、例えば、2012年9月15日に出願された米国仮特許出願第第61/701613号に説明されているように微分群遅延補償を実現することもできる。この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明は、説明、図、および特許請求の範囲に照らして当業者とって明白である他の実施形態を含むように意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8