【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るジャーナル軸受装置は、
円筒形状の空間を存してロータ軸のジャーナルを囲繞可能なキャリアリングと、
前記ジャーナルを回転可能に支持するように前記空間にそれぞれ配置され、前記キャリアリングの周方向に配列された少なくとも2つの軸受パッドと、
前記キャリアリングの周方向にて相互に離間して前記空間に配置され、それぞれ前記空間に潤滑油を供給可能な複数のノズルヘッドと、
を備え、
前記軸受パッドは、
複数の溝が開口する表面を有する基材と、
前記基材の表面に前記溝を覆うように積層され、前記ジャーナルの外周面と対向可能な軸受材と、を有し、
前記複数の溝は、前記キャリアリングの軸線の周りを延びる複数の仮想的な螺旋にそれぞれ沿うように延びている。
【0007】
上記構成(1)のジャーナル軸受装置では、基材の表面に仮想的な螺旋に沿う複数の溝が形成され、溝の中に軸受材の一部が入り込んでいる。このため、基材の表面に対する軸受材の密着性が高められ、ジャーナル軸受装置は高い信頼性を有する。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記複数の仮想的な螺旋のリード長をLとし、前記ロータ軸のジャーナルの外径をDとしたとき、次式:
0<D/L≦0.86
で示される関係が満たされている。
【0009】
上記構成(2)の回転機械では、仮想的な螺旋のリード長Lに対するジャーナルの外径Dの比D/Lが0超0.86以下であることによって、キャリアリングの周方向に対して溝が大きく傾斜している。このため、キャリアリングの周方向に荷重が作用したときに、軸受材が溝に対して滑ることが防止され、基材の表面に対する軸受材の密着性を更に高めることができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記構成(1)又は(2)において、
前記キャリアリングの軸線方向での前記複数の溝のピッチをPとし、前記ロータ軸のジャーナルの外径をDとしたとき、次式:
0<P/D≦0.3
で示される関係が満たされている。
【0011】
上記構成(3)では、ジャーナルの外径Dに対するピッチPの比P/Dが0超0.3以下であることによって、基材の表面に十分な数の溝が存在している。このため、基材の表面に対する軸受材の密着性を更に高めることができる。
【0012】
(4)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(3)の何れか1つにおいて、
前記キャリアリングの幅方向での前記複数の溝の各々の開口幅をWとし、前記キャリアリングの径方向での前記複数の溝の各々の深さをHとしたとき、次式:
0.5≦H/W≦4.0
で示される関係が満たされている。
【0013】
上記構成(4)では、溝の開口幅Wに対する深さHの比H/Wが0.5以上4.0以下であることによって、溝から軸受材が抜けづらく、基材の表面に対する軸受材の密着性を更に高めることができる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(4)の何れか1つにおいて、
前記キャリアリングの幅方向での前記複数の溝の各々の開口幅をWとし、前記キャリアリングの幅方向での前記複数の溝の各々の底の幅をwとしたとき、次式:
0≦w/W≦1.0
で示される関係が満たされている。
【0015】
上記構成(5)では、溝の開口幅Wに対する底の幅wの比w/Wが0以上1.0以下であるため、機械加工によって溝を容易に形成することができる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(5)の何れか1つにおいて、
前記複数の溝の各々はV字形の断面形状を有する。
上記構成(6)では、複数の溝の各々はV字形の断面形状を有するので、機械加工によって溝を容易に形成することができる。
【0017】
(7)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(6)の何れか1つにおいて、
前記複数の仮想的な螺旋は、相互に旋回方向が異なる複数の仮想的な螺旋を含んでいる。
上記構成(7)では、複数の溝が、旋回方向が異なる複数の仮想的な螺旋に沿っていることで、基材に対する軸受材の密着性を高めることができる。
【0018】
(8)幾つかの実施形態では、上記構成(7)において、
前記複数の溝は、第1旋回方向の仮想的な螺旋に沿う第1溝と、前記第1旋回方向とは逆の第2旋回方向の仮想的な螺旋に沿う第2溝とを含み、
前記キャリアリングの軸線方向にて、前記第1溝が存在する領域と前記第2溝が存在する領域が相互に重なっている。
上記構成(8)では、旋回方向の異なる第1溝と第2溝が同じ領域に存在することで、溝の密度を高めることができ、基材に対する軸受材の密着性を高めることができる。
【0019】
(9)幾つかの実施形態では、上記構成(7)において、
前記複数の溝は、第1旋回方向の仮想的な螺旋に沿う第1溝と、前記第1旋回方向とは逆の第2旋回方向の仮想的な螺旋に沿う第2溝とを含み、
前記キャリアリングの軸線方向にて、前記第1溝が存在する領域と前記第2溝が存在する領域が相互に重なっていない。
上記構成(9)では、旋回方向の異なる第1溝と第2溝が別々の領域に存在することで、特定の領域に対し特定の方向に負荷が作用する場合に、該負荷が作用する方向に応じて基材に対する軸受材の密着性を高めることができる。
(10)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(9)の何れか1つにおいて、
前記基材の表面の縁部は、前記複数の溝の端が開口する傾斜面によって構成され、
前記軸受材は、前記傾斜面を覆っている
上記構成(10)では、基材の表面の縁部が傾斜面によって構成され、軸受材が傾斜面を覆っていることで、基材の表面の縁部における軸受材の密着性を高めることができる。
【0020】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、
上記構成(1)乃至(10)の何れか1つのジャーナル軸受装置を備える。
上記構成(11)によれば、ジャーナル軸受装置が高い信頼性を有するので、回転機械も高い信頼性を有する。