(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部が、前記アームおよび前記観察部の両湾曲部を略同等の曲率で同一方向に連動して湾曲するように制御する第1の制御モードを実行する請求項4に記載の医療用マニピュレータ。
前記制御部が、前記アーム、前記観察部および前記本体の全ての湾曲部を略同等の曲率で同一方向に連動して湾曲するように制御する第2の制御モードを実行する請求項4または請求項5に記載の医療用マニピュレータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の内視鏡装置は、内視鏡挿入部の先端面に設けられた対物レンズのさらに前方に鉗子アームが配置されているため、挿入部の体内への挿入の際に、鉗子アームが対物レンズの死角を形成してしまい、挿入が困難となるという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、アームによる死角をなくして挿入性を向上することができる医療用マニピュレータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、体内に挿入される長尺の本体と、該本体の先端面から前方に突出状態に設けられたアームと、前記本体の先端面に配置され、前方からの光を集光する対物光学系を備える観察部とを備え、前記対物光学系が、前記アームの先端位置またはそれよりも前方位置と、アームの先端よりも後方位置とに配置されるように、前記アームおよび前記観察部が相対的に移動可能に設けられている医療用マニピュレータを提供する。
【0007】
本態様によれば、長尺の本体の先端面から前方に突出しているアームを備えた本体を体内に挿入する際に、アームまたは観察部の少なくとも一方を移動させて、アームの先端位置またはそれよりも前方位置に観察部の対物光学系を配置することにより、アームによる死角の形成を防止して、体内への挿入性を向上することができる。また、アームによる体内の組織の把持を行う場合には、アームの先端よりも後方位置に観察部の対物光学系を配置することにより、観察部によりアームを見て、より確実に把持を行うことができる。
【0008】
上記態様においては、前記観察部が前後方向に進退可能に設けられていてもよい。
このようにすることで、観察部をアームに対して前進させてアームの先端位置またはそれよりも前方位置に対物光学系を配置することにより、アームによる死角の形成を防止して、体内への挿入性を向上することができる。観察部はアームよりも簡易な形状、例えば、円柱状に構成でき、進退させる場合に本体の先端部形状を複雑にせずに済むという利点がある。
【0009】
また、上記態様においては、前記アームが、前後方向に進退可能に設けられていてもよい。
このようにすることで、アームを観察部に対して後退させてアームの先端位置またはそれよりも前方位置に対物光学系を配置することにより、アームによる死角の形成を防止して、体内への挿入性を向上することができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記本体、前記アームおよび前記観察部にそれぞれ湾曲部が設けられ、該湾曲部の湾曲状態を制御する制御部を備えていてもよい。
このようにすることで、制御部の作動により、本体、アームおよび観察部の各湾曲部の湾曲状態を制御し、各部の曲率を揃えることで挿入性を向上することができる。
【0011】
また、上記態様においては、前記制御部が、前記アームおよび前記観察部の両湾曲部を略同等の曲率で同一方向に連動して湾曲するように制御する第1の制御モードを有していてもよい。
このようにすることで、制御部が第1の制御モードに設定されると、アームあるいは観察部のいずれか一方の湾曲部の曲率を変更すると他方の湾曲部の曲率も同じ曲率で同一方向に連動して湾曲するように制御されるので、アームと観察部を別個に操作せずに済み、操作が簡単になるとともに、曲率が揃えられて挿入性を向上することができる。
【0012】
また、上記態様においては、前記制御部が、前記アーム、前記観察部および前記本体の全ての湾曲部を略同等の曲率で同一方向に連動して湾曲するように制御する第2の制御モードを有していてもよい。
このようにすることで、制御部が第2の制御モードに設定されると、アーム、観察部あるいは本体のいずれかの湾曲部の曲率を変更すると他の湾曲部の曲率も同じ曲率で同一方向に連動して湾曲するように制御されるので、アーム、観察部および本体を別個に操作せずに済み、操作が簡単になるとともに、曲率が揃えられて挿入性を向上することができる。
【0013】
また、上記態様においては、前記制御部が、前記本体の湾曲部を、前記アームおよび前記観察部の両湾曲部とは逆方向に連動して湾曲するように制御する第3の制御モードを有していてもよい。
このようにすることで、アームおよび観察部の両湾曲部と、その基端側に隣接する本体の湾曲部とを全体としてS字状にくねらせることができ、S字状に曲がりくねった体腔等にスムーズに挿入していくことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アームによる死角をなくして挿入性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療用マニピュレータを備えた手術マニピュレータシステムを示す全体構成図である。
【
図2】
図1の医療用マニピュレータの先端の一部を示す斜視図である。
【
図3】
図2の医療用マニピュレータの先端に設けられた観察部を、
図2の状態から前進させた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1の手術マニピュレータシステムを示すブロック図である。
【
図5】
図1の医療用マニピュレータの動作モードを説明する図である。
【
図6】
図5の動作モードにおける挿入モードを説明する図である。
【
図7】
図6の挿入モードにおける非連動モードで作動させられた医療用マニピュレータの一例を示す図である。
【
図8】
図6の挿入モードにおける観察部/アーム連動モードで作動させられた医療用マニピュレータの一例を示す図である。
【
図9】
図6の挿入モードにおける観察部/アーム/本体連動モードで作動させられた医療用マニピュレータの一例を示す図である。
【
図10】2本のアームを有する医療用マニピュレータの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る医療用マニピュレータ1について、図面を参照して以下に説明する。
図1は、本実施形態に係る医療用マニピュレータ1を備えた手術マニピュレータシステム100を概略的に示す全体構成図である。手術マニピュレータシステム100は、
図1に示されるように、患者Xを寝かせるベッド40の周囲に配置される本実施形態に係る医療用マニピュレータ1と、該医療用マニピュレータ1に接続される制御装置60と、制御装置60に対し医療用マニピュレータ1の操作信号を入力する操作装置80とを備えている。
【0017】
医療用マニピュレータ1は、
図1に示されるように、ベッド40の周囲において駆動されるスレーブアーム2と、該スレーブアーム2に取り付けられてハンドリングされ、先端が、患者Xの体腔、例えば、
図1に示す例では、口腔に挿入される挿入部3とを備えている。
図2および
図3は、本実施形態に係る医療用マニピュレータ1の挿入部3の先端を部分的に示している。
【0018】
挿入部3は、
図2に示されるように、先端面4a近傍に湾曲部4bを有する長尺の本体4と、該本体4の先端面4aから前方に突出状態に配置されるアーム5と、本体4の先端面4aから突出させられる観察部6とを備えている。尚、アーム5と観察部6の配置としては、例えば、挿入部3内に設けられたチャネルに挿通され、挿入部3の基端側で、スレーブアーム2に設けられた保持部を介して位置決めされる。
【0019】
アーム5および観察部6も、それぞれ湾曲部5a,6aを有している。各湾曲部4b,5a,6aは、本体4、アーム5および観察部6の所定長さの範囲にわたって、長手軸に交差する2方向に湾曲させ曲率を変化させることができるようになっている。
アーム5はその長手方向の全長にわたって貫通する内孔5bを有し、本体4の基端側から内孔5b内に挿入された処置具7をアーム5の先端5cから出没させることができるようになっている。処置具7は、アーム5の湾曲部5aが湾曲させられるとこれに倣って湾曲し、先端に配置された鉗子等の操作部7aの位置を微調整することができるようになっている。
【0020】
観察部6は、先端に被観察部からの光を集光する対物光学系6bを有している。また、観察部6は、矢印Aに示されるように、本体4の先端面4aに対して前後方向に進退可能に設けられている。進退機構としては、例えば、スレーブアーム2の保持部に設けられた電動の直動機構を挙げることができる。
【0021】
そして、これにより、観察部6は、本体4の先端面4aに対して前進させられたときに、
図3に示されるように、アーム5の先端5cから突出している処置具7の先端位置またはこれよりも前方に対物光学系6bを配置し、後退させられたときには、
図2に示されるように、処置具7の先端位置よりも後方に対物光学系6bを配置することができるようになっている。
【0022】
本体4、アーム5、観察部6および処置具7は、
図4に示されるように、それぞれ本体駆動部8、アーム駆動部9、観察部駆動部10および処置具駆動部11によって独立に駆動されるようになっている。
図4は、スレーブアーム2を省略して示している。
【0023】
操作装置80は、術者Yが操作するマスターアーム81およびフットスイッチ82等の入力部と、医療用マニピュレータ1によって取得された映像を処理する画像コントローラ83と、処理された映像を表示する表示部84とを備えている。
【0024】
制御装置60は、マスタ制御部61とマニピュレータ制御部62とを備えている。マスタ制御部61は、入力部であるフットスイッチ82に接続されたモード管理部63と、マスターアーム81およびモード管理部63に接続された演算部64とを備えている。フットスイッチ82からの動作モードに関する操作入力はモード管理部63に送られ、選択された動作モードを示す信号がモード管理部63から演算部64に送られるようになっている。
【0025】
演算部64は、マスターアーム81からの操作入力と、モード管理部63から送られてきた動作モードを示す信号とに基づいて、医療用マニピュレータ1各部を動作させる信号を生成してマニピュレータ制御部62に送るようになっている。
マニピュレータ制御部62は、本体駆動部8、アーム駆動部9、観察部駆動部10および処置具駆動部11に接続され、各駆動部8〜11に設けられた図示しないエンコーダ等の検出器からの信号がフィードバックされて各部の動作を制御するようになっている。
【0026】
このように構成された本実施形態に係る医療用マニピュレータ1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る医療用マニピュレータ1を体腔内に挿入していくには、術者Yは本体4の先端面4aから観察部6を十分に突出させ、
図3に示されるように、観察部6の先端に配置されている対物光学系6bをアーム5の先端5cから突出している処置具7の先端位置またはそれよりも前方に配置する。
【0027】
これにより、観察部6による視野範囲内にアーム5および処置部7が配置されず、表示部84に表示される映像において、被観察部位の一部がアーム5や処置具7の死角となることが防止される。その結果、術者Yは表示部84上において、被観察部位に存在する障害物や被観察部位に対する医療用マニピュレータ1の進行方向を明確に確認することができ、挿入性を向上することができるという利点がある。
【0028】
また、医療用マニピュレータ1の体腔内への挿入途中において、処置具7、例えば、鉗子によって体腔内壁を把持する必要が生じた場合には、術者Yは本体4の先端面4aに対して観察部6を後退させ、
図2に示されるように、先端の対物光学系6bを処置具7よりも後方に後退させた位置に配置する。これにより、観察部6による視野範囲内に処置具7が配置され、処置具7と体腔内壁との相対位置関係や処置具7の状態を表示部84上で確認しながら正確に操作して体腔内壁を確実に把持することができる。体腔内壁を把持した後には、観察部6を再度前進させて、対物光学系6bをアーム5および処置具7よりも前方に配置することにより、死角のない視野範囲を確保して、挿入を容易に行うことができる。
【0029】
次に、本実施形態に係る医療用マニピュレータ1の動作モードについて、以下に説明する。
図5に示されるように、医療用マニピュレータ1は、待機モードM1、挿入モードM2、処置モードM3および抜去モードM4の4つの動作モードを有している。4つの動作モードは、いずれかの動作モードから他の3つの動作モードにも他の動作モードを経由しないで直接遷移することができるようになっている。
【0030】
待機モードM1は、医療用マニピュレータ1の挿入部3が患者Xの体外に配置されて待機している状態における動作モードである。
処置モードM3は、医療用マニピュレータ1の挿入部3先端の処置具7が患者Xの患部に到着して患部に処置を施す際の動作モードである。
抜去モードM4は、患者Xの体内から医療用マニピュレータ1の挿入部3を抜き出す際の動作モードである。
【0031】
挿入モードM2は、患者Xの体内に医療用マニピュレータ1の挿入部3を挿入する際の動作モードである。挿入モードには、さらに、
図6に示されるように、非連動モードM21、観察部/アーム連動モードM22および観察部/アーム/本体連動モードM23の3つの動作モードがある。挿入モードM2の3つの動作モードも、いずれかの動作モードから他の2つの動作モードにも他の動作モードを経由しないで直接遷移することができるようになっている。
【0032】
非連動モードM21は、
図7に示されるように、本体4、観察部6およびアーム5をマスターアーム81によって独立して操作することができる。この場合、例えば、右のマスターアーム81で観察部6を操作し、左のマスターアーム81でアーム5および本体4を切り替えながら操作すればよい。このようにすることで、観察部6で体腔内の状態を観察し、アーム5先端の処置具7で体腔内壁を掻き分けつつ挿入部3を挿入していくことができる。
【0033】
観察部/アーム連動モードM22は、
図8に示されるように、観察部6とアーム5とが連動し、これらが本体4とは独立に作動させられる動作モードである。この場合、マスターアーム81において観察部6を操作すると、アーム5が観察部6と同じ方向に同じか、若しくはほぼ同一の曲率で湾曲し、観察部6に沿うように追従して作動させられる。例えば、右のマスターアーム81で観察部6を操作し、左のマスターアーム81で本体4を操作すればよい。
【0034】
この動作モードM22では、観察部6がアーム5と連動して一体的に動作させられるので、観察部6とアーム5とを一体的な内視鏡の挿入部のように操作することができる。すなわち、観察部6およびアーム5が一本の挿入部のように動作するので、体内における挿入性を向上することができるとともに、これらを別々に操作して同様の動作をさせる場合と比較して、操作を簡易化することができるという利点がある。また、観察部6およびアーム5とは独立して本体4を湾曲させることできて、全体として挿入部3の先端をS字状にくねらせることができる。その結果、より複雑な形状の体腔に挿入する場合にも適用することができる。
【0035】
また、観察部/アーム/本体連動モードM23は、
図9に示されるように、観察部6とアーム5と本体4とが連動させられる動作モードである。この場合、マスターアーム81において観察部6を操作すると、アーム5および本体4が観察部6と同じ方向に同じか、若しくはほぼ同一の曲率で湾曲し、アーム5が観察部6に沿い、本体4が観察部6の基端側を延長するような形態で追従して作動させられる。例えば、右のマスターアーム81で観察部6を操作するだけで、観察部6、アーム5および本体4の全てを操作することができる。
【0036】
この動作モードM23では、観察部6、アーム5および本体4があたかも一体的な挿入部3のように動作するので、1本の内視鏡の挿入部を操作するように、極めて簡易に操作でき、かつ、高い挿入性を達成することができる。また、観察部6の先端から本体4の基端までの長い範囲にわたって比較的硬い(コシのある)部分が挿入部3の先端に配置されるので、体内の奥部に配される位置において大きな曲率で湾曲している体腔(例えば、肝湾曲部)等においても挿入力を伝えやすく、挿入性を向上することができる。
【0037】
なお、本実施形態に係る医療用マニピュレータ1においては、アーム5が本体4の先端面4aに突出状態に固定され、観察部6が前後方向に進退することで、対物光学系6bをアーム5の処置具7の先端位置またはそれよりも前方に配置可能としたが、これに代えて、観察部6を本体4の先端面4aに突出状態に固定し、アーム5を前後方向に進退させることで、対物光学系6bをアーム5の処置具7の先端位置またはそれよりも前方に配置可能としてもよい。
また、観察部6およびアーム5の両方を前後方向に進退させて、対物光学系6bをアーム5の処置具7の先端位置またはそれよりも前方に配置可能としてもよい。
【0038】
また、上記観察部/アーム連動モードM22では、本体4を独立に作動させることとしたが、これに代えて、本体4は作動させずに駆動部を有しない場合と同様の自由状態としてもよい。すなわち、観察部6およびアーム5のみを湾曲駆動させ、その基端側に隣接する本体4の湾曲部4bは湾曲駆動させないことにしてもよい。このようにすることで、体腔の鋭角な湾曲部位に挿入する場合にコシのある部分を短くして挿入性を向上することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、本体4の先端面4aから前方に1本のアーム5を突出状態に配置した場合を例示したが、これに代えて、
図10に示されるように、アーム5A,5Bを2本あるいはそれ以上備えた場合に適用してもよい。
この場合に、観察部6の対物光学系6bを全てのアーム5A,5Bの処置具7A,7B先端位置またはそれよりも前方に配置することで、アーム5A,5Bによる死角の発生を防止して挿入性を向上することができる。
【0040】
また、観察部/アーム連動モードM22では、全てのアーム5A,5Bを観察部6に連動させることで、挿入性を向上することができる。また、観察部/アーム/本体連動モードM23においても、全てのアーム5A,5B、観察部6および本体4を連動させることで挿入性を向上することができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、観察部/アーム/本体連動モードM23が、観察部6、アーム5および本体4を同一か、若しくはほぼ同一の曲率で同一方向に連動して湾曲させることとしたが、これに代えて、観察部6およびアーム5と本体4とを逆方向に湾曲させて全体としてS字状に連動して作動させることにしてもよい。