特許第5985072号(P5985072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985072
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】挿入機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20160823BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   A61B1/00 300A
   A61B1/00 310G
   G02B23/24 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-546362(P2015-546362)
(86)(22)【出願日】2015年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2015055176
(87)【国際公開番号】WO2015133330
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-41945(P2014-41945)
(32)【優先日】2014年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】小山 礼史
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−234654(JP,A)
【文献】 特開2009−279148(JP,A)
【文献】 特開2006−183827(JP,A)
【文献】 特開平11−076151(JP,A)
【文献】 特開2000−168469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられた湾曲可能な湾曲部と、
前記挿入部に連設され、前記湾曲部を湾曲させるために操作者によって操作される操作部と、
前記操作部内に配設され、前記操作者の操作によって前記操作部内を移動可能な長尺部材と、
前記操作部内において板状に形成され、前記操作部内に配置される各種部材を固定するために前記操作部に固定され、一方の面側に前記長尺部材が配置されるフレームと、
前記長尺部材と前記フレームとの間に配置され、前記フレームの前記一方の面側において前記長尺部材が走行する部分を覆うカバー部材と、
前記操作部内に配設される長尺な内蔵物を保持するための留め具と、
前記フレームに形成されたねじ孔において、前記フレームの前記一方の面側とは反対側の他方の面側に前記留め具を固定するために、先端部が前記一方の面側に向かって配置されるビスと、
前記ねじ孔を有して前記フレームの前記他方の面側に突出して形成される受け部であって、前記受け部とは異なる部分と略同じ板厚になるように前記一方の面側に凹部が形成され、前記ビスの先端部が前記カバー部材に干渉しないように前記ビスの先端部を前記凹部に収納する受け部と、
前記フレームに設けられ、前記留め具と嵌合可能に形成された嵌合部と、
を備えることを特徴とする挿入機器。
【請求項2】
前記嵌合部は、複数の開口部であることを特徴とする請求項1に記載の挿入機器。
【請求項3】
前記留め具には、前記複数の開口部に対応して複数の凸部が形成され、前記複数の凸部は前記複数の開口部に嵌合することを特徴とする請求項2に記載の挿入機器。
【請求項4】
前記ビスは雄ねじ部を有し、
前記受け部は前記ビスの前記雄ねじ部が螺合される雌ねじ部を有することを特徴とする請求項1に記載の挿入機器。
【請求項5】
前記長尺な内蔵物は、前記操作部内に挿通される電気ケーブルであることを特徴とする請求項1に記載の挿入機器。
【請求項6】
前記フレームに、前記電気ケーブルのアース端子を取り付ける端子取付部と、前記アース端子の回転移動を規制する回り止め部とを設けたことを特徴とする請求項5に記載の挿入機器。
【請求項7】
前記留め具は、前記ビスと同じ長さを有する他のビスと、前記ビスとによって前記フレームに対して固定されることを特徴とする請求項1に記載の挿入機器。
【請求項8】
前記長尺な内蔵物は、さらにチューブを含むことを特徴とする請求項5に記載の挿入機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に挿入される挿入部を有する挿入機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体内に挿入される挿入機器、例えば内視鏡は、医療分野及び工業用分野において広く利用されており、細長い挿入部を被検体に挿入することによって、各種観察や処置等を行うことができる。このような挿入機器としての内視鏡の挿入部は、複数方向に湾曲自在な湾曲部を備える構成が周知であり、挿入部に連設される操作部を操作者が把持して操作することにより、挿入部の先端を所望の方向に湾曲動作させることができる。
【0003】
挿入部に設けられる湾曲部は、一般に、複数の湾曲駒を挿入部の長手軸方向に沿ってリベットで連結することにより、例えば上下及び左右の4方向に湾曲自在となるよう構成されている。複数の湾曲駒のうち、最も先端側に位置する湾曲駒には、ワイヤが連結されており、このワイヤをプーリに巻回、或いはワイヤにチェーンを連結してチェーンをスプロケットに巻回し、プーリ或いはスプロケットを回動させてワイヤを牽引操作することにより、挿入部を上下及び左右の何れかの方向に湾曲動作させることができる。
【0004】
このような湾曲用のワイヤを牽引操作するためのプーリ或いはスプロケットを駆動する機構は、日本国特開平9−238895号公報に開示されるように、操作部内に固定されるベースに組み付けられている。ベースは、構造の骨組となるフレームであり、操作部の軽量化のため、従来のアルミニウムのダイカストで形成されるフレームから鋼板のプレス加工によるフレームとされている。
【0005】
操作部の更なる軽量化を図るためには、構造の骨組となるフレームの板厚を可能な限り薄くすることが要求される。
【0006】
しかしながら、フレームには各種部材がネジ部品を用いて固定されるため、フレームの板厚のばらつきや、ネジ部品そのものの全長のばらつきが存在する以上、ネジ部品の長さとフレームの板厚と必要なネジ部品の締結長さを考慮すると、ばらつき具合によってはネジ部品の先端がフレームから突出してしまう可能性がある。
【0007】
このような場合、ネジ部品の先端の一部が、フレームの反対側に配置された他の部材と干渉する部位が生じる可能性がある。
【0008】
この場合、特殊な長さのネジ部品を採用して先端がフレームから常に突出しない設定にすることも考えられるが、特殊なネジ部品によりコスト上昇を招くばかりでなく、ネジの先端が干渉する部位は一部であるため、他の長さのネジ部品との区別を行いつつ作業しなければならず、作業性の悪化、管理の煩雑さを招く。
【0009】
更に、フレームの板厚を調整することによって、特殊な長さではない標準長さのネジ部品を用いる方法も考えられるが、本来の狙いである、フレームの板厚を可能な限り薄くすることにより操作部の更なる軽量化を図ることを実現することが困難となる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、挿入機器の操作部の骨組となるフレームの軽量化を図りつつ、フレームに部材を固定する際に、作業性を悪化させることなく部材を固定することができ、またフレームの反対側に配置された他の部材との干渉を防止することのできる挿入機器を提供することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による挿入機器は、被検体内に挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられた湾曲可能な湾曲部と、前記挿入部に連設され、前記湾曲部を湾曲させるために操作者によって操作される操作部と、前記操作部内に配設され、前記操作者の操作によって前記操作部内を移動可能な長尺部材と、前記操作部内において板状に形成され、前記操作部内に配置される各種部材を固定するために前記操作部に固定され、一方の面側に前記長尺部材が配置されるフレームと、前記長尺部材と前記フレームとの間に配置され、前記フレームの前記一方の面側において前記長尺部材が走行する部分を覆うカバー部材と、前記操作部内に配設される長尺な内蔵物を保持するための留め具と、前記フレームに形成されたねじ孔において、前記フレームの前記一方の面側とは反対側の他方の面側に前記留め具を固定するために、先端部が前記一方の面側に向かって配置されるビスと、前記ねじ孔を有して前記フレームの前記他方の面側に突出して形成される受け部であって、前記受け部とは異なる部分と略同じ板厚になるように前記一方の面側に凹部が形成され、前記ビスの先端部が前記カバー部材に干渉しないように前記ビスの先端部を前記凹部に収納する受け部と、前記フレームに設けられ、前記留め具と嵌合可能に形成された嵌合部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】挿入機器としての内視鏡の外観図
図2】湾曲操作機構の要部斜視図
図3】湾曲操作機構の支軸周辺の断面図
図4】接続板を介した支軸の固定構造を示す説明図
図5図4の支軸の固定作業時における視線方向を示す説明図
図6】プーリを用いた湾曲操作機構の支軸の固定構造を示す説明図
図7】メインフレームの下面側を示す斜視図
図8図7のアース端子周辺を露出させた斜視図
図9】メインフレームとコード留め具との接続を示す説明図
図10図9のX−X線断面図
図11図10のボス部周辺の拡大図
図12】コード留め具のメインフレームへの仮固定構造を示す説明図
図13】コード留め具のメインフレームへの他の仮固定構造を示す説明図
図14】コード留め具のメインフレームへの更に他の仮固定構造を示す説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明は、内視鏡をはじめとして、ガイドチューブ、各種処置具、マニュピレータ等の被検体内に挿入されて湾曲可能な挿入部を有する挿入機器に適用されるものであるが、以下に説明する実施形態においては、挿入機器として内視鏡を例に挙げて説明する。
【0014】
図1において、符号1は内視鏡であり、被検体内に挿入される挿入部2と、該挿入部2の基端に連設された操作部3と、該操作部3から延出されたユニバーサルコード8と、該ユニバーサルコード8の延出端に設けられたコネクタ9とを備えて主要部が構成されている。ユニバーサルコード8のコネクタ9には、図示しない各種口金や各種電気接点が設けられ、ビデオプロセッサや光源装置等の外部装置が電気的に接続される。
【0015】
尚、ユニバーサルコード8は、挿入部2内部から操作部3内部を経て延出される各種信号用電気ケーブル、光源装置からの照明光を導光するライトガイド、送気送水装置から延出される送気送水用チューブ等を挿通する複合ケーブルである。
【0016】
挿入部2は、挿入部2の挿入方向Sに沿って延在する長尺な可撓管部2kと、可撓管部2kよりも挿入方向Sの前方(以下、単に前方と称す)に位置して、例えば上下左右の4方向に湾曲自在な湾曲部2wと、湾曲部2wよりも前方に位置する先端部2sとを備えて主要部が構成されている。先端部2s内には、被検体内を撮像する図示しない撮像ユニットや、被検体内に照明光を供給する図示しない照明ユニット等が設けられている。
【0017】
操作部3は、操作者によって把持される把持部3gと、把持部3gの基端に接続されるとともにユニバーサルコード8が延出される操作部本体3hとを備えて主要部が構成されている。操作部本体3hには、各種の操作部材、例えば、湾曲部2wを上下方向に湾曲させる上下湾曲操作用の湾曲操作ノブ4、湾曲部2wを左右方向に湾曲させる左右湾曲操作用の湾曲操作ノブ6、湾曲操作ノブ4,6の回動位置を固定する固定レバー5,7、先端部2s内に設けられた撮像ユニットのズームレバー10、その他、ビデオプロセッサ等の外部装置を遠隔操作するためのスイッチ類11等が設けられている。
【0018】
次に、操作部3の内部構成について説明する。操作部3内には、図2に示すような湾曲操作機構100が配設されている。湾曲操作機構100は、挿入部2先端の湾曲部2wを湾曲動作させるための機構ユニットであり、機構部を構成する各部材が骨格構造体であるメインフレーム20に固定されている。メインフレーム20は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属材料を板金加工する等して形成され、操作部本体3h,把持部3gの内部においてねじ止め固定されている。
【0019】
本実施の形態においては、湾曲操作機構100は、湾曲部2wを左右方向へと湾曲操作させるための左右湾曲操作機構100Aと、湾曲部2wを上下方向へと湾曲操作させるための上下湾曲操作機構100Bとを備えて構成されている。尚、左右湾曲操作機構100Aと上下湾曲操作機構100Bとは略同様の構成である。また、符号130は、ズームレバー10のリンク機構である。
【0020】
左右湾曲操作機構100Aは、メインフレーム20の上面に板状の下側チェーンカバー30を挟んで配置され、メインフレーム20に立設される支軸111に対して回転自在な回転体である左右湾曲用のスプロケット45(図3参照)と、スプロケット45に巻回される長尺部材である左右湾曲用のチェーン40とを備えている。チェーン40の一方側の先端には、湾曲部2wから延出される右側湾曲用のワイヤ90rが接続され、他方側の先端には、湾曲部2wから延出される左側湾曲用のワイヤ90lが接続されている。
【0021】
メインフレーム20には、メインフレーム20上でチェーン40が走行する部分を覆うカバー部材として、下側チェーンカバー30が取り付けられている。
【0022】
左右湾曲用のスプロケット45は、チェーン40が巻回される歯車であるチェーンホイールを取り付けたボス部を備え、このボス部の端面の一部が、下側チェーンカバー30に形成された開口部から突出している。下側チェーンカバー30から突出したボス部の端面の一部は、メインフレーム20の上面に当接するように配置されている。
【0023】
また、上下湾曲操作機構100Bは、左右湾曲操作機構100Aの上側に、案内部材であるチェーンセパレータ50を挟んで配置され、支軸111に対して回動自在な回転体である上下湾曲用のスプロケット65(図3参照)と、スプロケット65に巻回される長尺部材である上下湾曲用のチェーン60とを備えている。チェーン60の一方側の先端には、湾曲部2wの先端に固定された上側湾曲用のワイヤ90uが接続され、他方側の先端には、湾曲部2wの先端に固定された下側湾曲用のワイヤ90dが接続されている。上下湾曲操作機構100Bの上面には、板状の上側チェーンカバー70が配置されている。
【0024】
図3に示すように、支軸111は、その下端がメインフレーム20に立設され、上端はチェーンセパレータ50,上側チェーンカバー70を貫通して操作部本体3hの外部に突出している。支軸111の外周面上には、筒状の軸体112Aが回転自在に配置され、更に、軸体112Aの外周面上に、筒状の軸体112Bが回転自在に配置されている。
【0025】
これらの2つの軸体112A,112Bは、それぞれが独立して回転自在に配置されている。軸体112Aの上部には、左右湾曲用の湾曲操作ノブ6が固設され、下部には左右湾曲用のスプロケット45が固設されている。一方、軸体112Aの外側の軸体112Bは、上部に上下湾曲用の湾曲操作ノブ4が固設され、下部に上下湾曲用のスプロケット65が固設されている。
【0026】
ここで、支軸111のメインフレーム20への固定は、従来、図4に示すような固定構造が採用されることがある。この従来の固定構造では、支軸111’をメインフレーム20’に固定する場合、支軸111’の端部に平板状の接続板113をカシメ加工によって固定した後、接続板113をメインフレーム20’に、固定具としてのビス114によって締結・固定するようにしている。
【0027】
この場合、軽量化及びコスト低減を図る上では、操作部3の内蔵部品であるメインフレーム20(20’)は必要最小限の厚さとすることが要求され、また、接続板113は最小限の大きさとすることが要求される。しかしながら、メインフレーム20’を必要最小限の厚さとし、また、接続板113を最小限の大きさとしてねじ止めすると、ビス114の先端部がメインフレーム20’から突出してチェーン40’の可動範囲にかかってしまい、チェーン40’の動きを阻害して湾曲操作に悪影響を与える可能性がある。
【0028】
このため、従来の固定構造では、メインフレーム20’への接続板113のねじ止め位置をチェーン40’の可動範囲外としてチェーン40’の動きを阻害しないようにしているが、各部材が大きくなり、重量増とコスト高を招く要因となっている。また、従来の固定構造では、メインフレーム20’に対する支軸111’と接続板113との位置決めのため、図5に示すように、支軸111’の軸端にフランジ部111’aを設け、このフランジ部111’aの所定位置に設けた凹部111’bに、接続板113に設けた突起113aを嵌合することで、周方向の位置決めを行うようにしている。
【0029】
従って、支軸111’をメインフレーム20’に固定する際には、A方向から支軸111’と接続板113の軸方向位置を合わせ、次に、視線を反転してB方向から支軸111’の凹部111’bと接続板113の突起113aとの周方向位置を合わせ、更に、A方向に視線を戻して支軸111’を接続板113にカシメ加工した後、支軸111’を固定した接続板113をビス114でメインフレーム20’に締結固定するといった作業を行うことになる。このような固定作業では、目視する視線方向が反転するため、作業者は組立部品を反転するか、自身の姿勢を変えて組付作業を行う必要があり、作業効率が悪化する。
【0030】
これに対して、本実施の形態における支軸111とメインフレーム20との固定構造では、接続板113の廃止と部材の小型化とにより軽量化及びコスト低減を実現すると共に、簡素な固定作業を可能とする構造として作業効率の向上を図るようにしている。具体的には、図3に戻って説明すると、本実施の形態における支軸111は、軸下端にフランジ部111aを設け、このフランジ部111aを、メインフレーム20の湾曲操作機構100の構成部材が配置される上面側と反対側の下面側に直接、ビス114で締結・固定する構造としている。
【0031】
支軸111のフランジ部111aには、締結用のビス114が挿通される孔部111bと、周方向の位置決め用の孔部111cとが支軸111の外周面に対して近接する位置に設けられている。また、この支軸111のフランジ部111aに対して、メインフレーム20の下面側には、ビス114が締結される雌ねじ部20aが設けられると共に、孔部111cに嵌合する突部20bが周方向の位置決め用として突出されている。
【0032】
このとき、メインフレーム20の上面に配置されるスプロケット45は、ボス部から突出してメインフレーム20の上面に当接する突出部45aの先端側を周方向に切り欠いて小径部45bを形成しており、この小径部45bの軸方向の高さHjがビス114の先端部が当接しない高さに設定されている。また、ビス114の取付け位置は、突出部45aの外周部とチェーン40の連結用ピン40aの回動軌跡とで定まる範囲D内に、ビス114の先端部が収まるように設定されている。
【0033】
このような支軸111とメインフレーム20との固定構造を採用することにより、フランジ部111aの大径化を抑制しつつ、メインフレーム20から突出するビス114の先端と、メインフレーム20の上面に配置される左右湾曲用のスプロケット45及びチェーン40との干渉を回避することができる。その結果、接続板113の廃止と部材の小型化とを実現し、軽量化及びコスト低減を図ることができる。
【0034】
また、支軸111とメインフレーム20との固定作業に際しては、支軸111とメインフレーム20との軸方向の位置決め、周方向の位置決め、ビス114による固定を同一方向からの目視で行うことができる。従って、作業者は作業中に姿勢を変えることも、部品を反転したりすることもなく、容易に組付作業を行うことができ、作業効率を向上することができる。
【0035】
尚、以上の支軸111とメインフレーム20との固定構造は、チェーンを用いることなく湾曲操作ワイヤをプーリに巻回して牽引駆動する湾曲操作機構にも適用することができる。図6に示すように、支軸111”に介装される湾曲操作用のプーリ115は、ワイヤ90’が巻回される巻回部115aと、この巻回部115aの両脇に立設されてワイヤ90’のガイドとなるフランジ部115bとを備えている。
【0036】
プーリ115のフランジ部115bは、ワイヤ90’を巻き付ける部分にのみ設けられていれば良いことから、巻回部115aの内径側に、支軸111”の軸方向に環状の凹部をなす逃げ部115cを設けることができる。逃げ部115cは、支軸111”のフランジ部111a”をビス114でメインフレーム20”に締結固定する際に、ビス114の先端部が収まるように形成する。このような固定構造とすることにより、同様に軽量化及び組付作業の作業性を向上することが可能となる。
【0037】
一方、以上の湾曲操作機構100が配置されるメインフレーム20の下面側には、図7に示すように、ユニバーサルコード8内から延出される各種チューブや電気ケーブル、例えば、送気・送水・吸引等の用途に使用されるチューブ81、撮像ケーブル等の電気ケーブル82,83,84等が内蔵され、更に、操作部本体3hに設けられたスイッチ11と基板ケース85内に収納される制御用回路基板とを接続するフレキシブル基板86等の各種部材が配置されている。
【0038】
これらの内蔵部材は密集して配置されるが、挿入部2の湾曲動作に伴って引っ張りや圧縮の負荷がかかることから、その影響を軽減するため、各部材同士が動けるようなスペースを確保する必要がある。しかしながら、このようなスペースを設けると、各部材同士の隙間に電気ケーブル83をGNDに接続するアース端子87のような薄板状の金属部材が入り込み、引っ張りや圧縮の負荷がかかったときに他の内蔵物を押圧して損傷を与える虞がある。
【0039】
これに対処するため、アース端子87は、チューブ81や電気ケーブル82やフレキシブル基板86等の内蔵部材をよけた奥の位置に配置され、メインフレーム20にビス88で締結・固定されている。このような内蔵部材の奥に配置されるアース端子87をメインフレーム20に固定するには、チューブ81や電気ケーブル82やフレキシブル基板86等を注意しながら片手の指等でかき分けてアース端子87を配置するスペースを確保してその状態を保持し、その上で、もう一方の手でアース端子87をメインフレーム20の所定位置に配置してビス88で締結・固定するといった作業が必要となる。
【0040】
ビス88の締め付けには、組立時間短縮のために電動ドライバを使用することが一般的であり、従来、アース端子87の固定作業は、煩雑であるばかりでなく、電動ドライバでの作業時にアース端子87を手で保持することも容易ではなかった。アース端子87を保持する力が十分でない場合、アース端子87が電動ドライバと共回りしてしまい、周辺の部材を傷つける虞があるため、電動ドライバを用いたアース端子87の固定作業は極めて注意を要する作業となる。
【0041】
このため、図8に示すように、メインフレーム20のアース端子87が取り付けられる端子取付部20cは、アース端子87の外形より広い座面を有し、その近傍に、アース端子87の回転移動を規制する回り止めとして、凸状或いは壁状に突出された回り止め部20dが設けられている。この回り止め部20dは、アース端子87の板厚に対して突出高さが同等以上の高さに形成されており、アース端子87をメインフレーム20に固定する際には、メインフレーム20の回り止め部20dの側面にアース端子87の側面を当接させて作業を行う。
【0042】
これにより、電動ドライバの回転トルクに抗してアース端子87を容易に手で保持することができ、位置決めしながらの組付け作業が可能となり、容易且つ迅速な組付作業とすることができる。また、回り止め部20dの高さがアース端子87の板厚と同等以上であるため、周辺に配置される内蔵部材はアース端子87よりも上方で動くことになり、アース端子87が他の部材の隙間に入り込んで引っかかることがなく、他の部材の損傷を防止することができる。
【0043】
尚、図8に示す回り止め部20dは、アース端子87をビス88で締結する際の回り止めとなる例を示しているが、ねじを締める方向のみならず、ねじを緩める方向にも回り止めを設けるようにしても良い。
【0044】
次に、メインフレーム20の下面側に配置され、ユニバーサルコード8内から延出されるチューブ81や電気ケーブル82,83,84は、図9に示すように、メインフレーム20に固定されるコード留め具150で保持され、操作部本体3h内に挿入されている。コード留め具150は、メインフレーム20とユニバーサルコード8基部の口金8aとを連結するゲート状の部材であり、メインフレーム20下面の手元側に、複数本のビス、本実施の形態においてはビス130,131,132を介してねじ止め固定されている。
【0045】
この場合、前述したように、メインフレーム20は、軽量化及びコスト低減のため、必要最小限の厚さにされている。このため、コード留め具150をビス130〜132で締結・固定すると、ビス130〜132の先端部がメインフレーム20から突出してしまい、一部のビスの先端部と下側チェーンカバー30との干渉が懸念される。下側チェーンカバー30との干渉を避けるため、下側チェーンカバー30に孔をあける等の対策を行うと、下側チェーンカバー30上を摺動移動するチェーン40が孔の縁や突出したビス先端部に引っかかり、動きが阻害される虞がある。
【0046】
これに対処するため、本実施の形態においては、コード留め具150をメインフレーム20に固定するビス130〜132のうち、下側チェーンカバー30と干渉する虞のあるビス130に対して、メインフレーム20の対応する位置に、図10に示すように、メインフレーム20の下面側(コード留め具150側)から突出するビス受け部20eを設け、このビス受け部20eの中央に、ビス130の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を形成したねじ孔を開口している。また、コード留め具150には、メインフレーム20から離間する方向に凹部150aを形成し、この凹部150aにビス受け部20eを収納する。凹部150aの中央には、ビス130が挿通される挿通孔が穿設されている。
【0047】
詳細には、メインフレーム20のビス受け部20eは、板金のバーリング加工等で形成される単なる円筒状の突出部に雌ねじ部を設けるものではなく、図11に示すような突出構造で形成されている。すなわち、バーリング加工による突出構造では、突出高さを均一に管理することが困難であり、雌ねじ部の長さがばらついてしまう。このため、本実施の形態におけるビス受け部20eは、板金材のプレス加工等により、メインフレーム20の下面側(コード留め具150側)から突出させるとともに、メインフレーム20の上面側(下側チェーンカバー30側)から下面側に向かって凹んだカップ状の段付き形状に形成され、各部の寸法精度を確保するようにしている。
【0048】
これにより、ねじ孔が形成されるカップ状の底部を平滑に形成することができ、底部の厚さ、すなわちビス受け部20eの突出高さHと凹部の深さLとの差(H−L)がメインフレーム20の板厚tと同等になるように形成することができ、必要最低限の板厚を保ったまま必要なねじ孔深さを均一且つ精度良く確保することができる。また、ビス受け部20eの凹部の深さLは、使用するビス130の首下長さに対して、ビス130の先端部がメインフレーム20から突出しない深さとなるように形成され、ビス130の先端部と下側チェーンカバー30との干渉を確実に回避することができる。
【0049】
尚、コード留め具150のメインフレーム20への取付作業に際しては、操作部本体3hの内側の深い位置でメインフレーム20の上に乗せておいて、ネジ止め位置を合わせてネジを締める必要がある。さらに、このとき、長いユニバーサルコード8の端部が未だ固定されていない状態であるため、コード留め具150をねじ止めする際に電気ケーブルやチューブ等の内蔵物に押されて不安定となり、作業性が悪化する虞がある。
【0050】
このため、コード留め具150は、メインフレーム20に取り付ける際に、メインフレーム20から突出される凸部20f,20gと、コード留め具150の開口部150b,150cとの嵌合によって位置決めされる。メインフレーム20の凸部20gは、ビス130とビス131との間に設けられるコード留め具150の開口部150cに嵌合され、メインフレーム20の凸部20fは、ビス132の取付け位置近辺に設けられるコード留め具150の開口部150bに嵌合される。
【0051】
また、コード留め具150をねじ止めする際の作業を安定化するため、図12図14に例示するような仮固定構造を採用することにより、組立作業性を改善することができる。尚、これらの仮固定構造は、メインフレーム20の支軸固定に接続板113を使用する場合には、接続板113に適用することも可能である。
【0052】
図12に例示する仮固定構造のコード留め具150_1は、板金や切削加工ではなく、成形加工で製作し、メインフレーム20に厚さ方向で引っかけて仮固定することのできるコの字状断面のフック150_1aを設けている。フック150_1aは、一方向だけでなく、縦と横のように複数方向から形成し、コード留め具150_1をメインフレーム20に差し込むように組み付ける。
【0053】
これにより、コード留め具150_1をメインフレーム20に組み付ければ、コード留め具150_1を位置決めした状態で仮固定することができる。あとは、ねじを締めて本固定すれば良い。この場合、メインフレーム20は変更しなくても、コード留め具150_1の形状に変更するのみで、上記の仮固定が可能である。
【0054】
また、図13に例示するコード留め具150_2は、同じく成形加工によりコード留め具150_2の底面に円筒状の突起150_2aを設けたものである。メインフレーム20の対応する位置には孔を開けておき、コード留め具150_2の突起150_2aを差し込めるようにする。
【0055】
これにより、メインフレーム20の上からコード留め具150_2を差し込むだけで位置決めと仮固定を同時に行うことができる。この場合、コード留め具150_2を樹脂材料で成型することにより、メインフレーム20の孔に適度な抵抗感をもって手ではめ込むことが可能となり、より簡単に仮固定することができる。あとは、同じくねじを締めて本固定すれば良い。
【0056】
さらに、図14に例示するコード留め具150_3は、従来の板金製のコード留め具を一部変更して、上述のコード留め具150_1のフック150_1aと同様のフック150_3aを曲げ加工で形成したものである。このコード留め具150_3では、メインフレーム20を変更しない場合には、形状の制約からフック150_3aは2ヶ所に設けるのが限界になる。
【0057】
コード留め具150_3では、強固な位置決めは困難な場合もあるが、実用上十分な強度で仮固定することができ、また、ユニバーサルコード8側の口金8aも変更しないで対応することができる。この場合、メインフレーム20の形状も変更すれば、コード留め具150_1と同様に差し込んで位置決めすることも可能になる。
【0058】
本出願は、2014年3月4日に日本国に出願された特願2014−041945号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものである。
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