【文献】
豊田利夫,電流徴候解析MCSAによる電動機駆動回転機の診断技術,高田技報,2010年 4月,Vol.20,頁3-頁6
【文献】
河部 佳樹 Y.Kawabe,電流解析による異常検知法 Abnormality Detecting Method Using Electrical Current Analysis,火力原子力発電,2011年 9月27日,頁14-頁19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る回転機械系の異常監視装置10は、回転機械系11の駆動源である三相誘導電動機12の稼働時電流信号の解析結果から、回転機械系11の総合的な状態や、回転機械系11の機械的構造に起因して発生する個別的な状態をそれぞれ定量的に評価する劣化パラメータを求める劣化パラメータ算出部13と、劣化パラメータの値を記録すると共に、求めた劣化パラメータの値と劣化判定基準値を比較する簡易異常診断部14と、簡易異常診断部14で回転機械系11に異常が検知された際に、劣化判定基準値に達した劣化パラメータに基づいて異常の種類と回転機械系11における異常箇所を特定する精密異常診断部15とを有している。以下、詳細に説明する。
【0012】
劣化パラメータ算出部13は、回転機械系11の電気室(制御盤)から三相誘導電動機12に電力を供給する三相毎の電源ケーブ12aに流れる稼働時電流信号を検出する電流検出器16(例えば、クランプ式電流センサー)と、電流検出器16で測定した稼働時電流信号をデジタル信号に変換するA/D変換器17と、A/D変換器17から出力された稼働時電流信号を処理する処理ユニット18とを有している。
【0013】
そして、処理ユニット18には、回転機械系11の状態を総合的に評価する劣化パラメータである電流情報量KIを算出する電流情報量算出手段19と、回転機械系11の負荷変動状況を評価する劣化パラメータである電流実効値I
rmsを算出する電流実効値算出手段20と、電源品質又は三相誘導電動機12の固定子及びインバータの劣化状況を評価する劣化パラメータである稼働時電流信号の3相電流バランスI
ubを算出する3相電流バランス算出手段21と、電源品質又は三相誘導電動機12の固定子及びインバータの劣化状況を評価する劣化パラメータである稼働時電流信号の電流単調波比率i
disを算出する電流単調波比率算出手段22と、電源品質又は三相誘導電動機12の固定子及びインバータの劣化状況を評価する劣化パラメータである稼働時電流信号の電流全調波比率I
disを算出する電流全調波比率算出手段23が設けられている。ここで、処理ユニット18には、更に、A/D変換器17から出力された稼働時電流信号を高速フーリエ変換(周波数解析の一例)する高速フーリエ変換器24が設けられており、電流単調波比率算出手段22と電流全調波比率算出手段23には、高速フーリエ変換器24から出力されるスペクトルデータ(周波数と対数変換した電流スペクトルの関係を示すデータ)が入力される。
なお、電流情報量KI、電流実効値I
rms、3相電流バランスI
ub、電流単調波比率i
dis、及び電流全調波比率I
disの各劣化パラメータ(これらの劣化パラメータを総称して第1種劣化パラメータという)の値は、回転機械系11の劣化の進行に伴って上昇する特徴を有する。
【0014】
ここで、電流情報量算出手段19では、電流情報量KIを、正常状態の稼働時電流信号の波形から求めた振幅確率密度分布を参照分布、監視状態の稼働時電流信号の振幅確率密度分布をテスト分布と定義した場合、振幅xの電流信号の参照分布とテスト分布をそれぞれf
r(x)、f
t(x)として、f
r(x)log[f
r(x)/f
t(x)]からなる評価式を、xに関して−∞から∞の範囲で積分することにより求めている。なお、正常状態の稼働時電流信号には、三相誘導電動機12の定格電流の正弦波信号波形を用いることができる。
電流実効値算出手段20では、電流実効値I
rmsを、iを稼働時電流信号のサンプリング値、Nをサンプリングポイント数として、{(i
12+i
22+・・・+i
N2)/N}
1/2から求めている。
【0015】
また、稼働時電流を3相同時に計測した場合の3相電流バランス算出手段21では、3相電流バランスI
ubを、稼働時電流信号の3相の電流実効値I
u、I
v、I
wの中の最大値と最小値の差max(I
u,I
v,I
w)−min(I
u,I
v,I
w)を、最大値と最小値の和max(I
u,I
v,I
w)+min(I
u,I
v,I
w)で除して求めている。
電流単調波比率算出手段22では、電流単調波比率i
disを、稼働時電流信号の高調波実効値の中で、予め設定した次数n内にある最大値maxi
nを,稼働時電流信号の電源周波数実効値I
1で除して求めている。
電流全調波比率算出手段23では、電流全調波比率I
disを、稼働時電流信号の予め設定した次数nまでの各高調波実効値の二乗和の平方根(I
22+I
32+・・・+I
n2)
1/2を、働時電流信号の電源周波数実効値I
1で除して求めている。
【0016】
また、処理ユニット18には、高速フーリエ変換器24から得られた電流スペクトルを対数変換して形成したスペクトルデータ(周波数と対数変換した電流スペクトルの関係を示すデータ)を用いて回転機械系11の回転機械軸系の負荷状況を評価する劣化パラメータである軸系電流比率L
shaftを算出する軸系電流比率算出手段25と、三相誘導電動機12の回転子の劣化状況を評価するポール通過電流比率L
poleを算出するポール通過電流比率算出手段26と、三相誘導電動機12の負荷トルクと回転子の実回転数の変化を推測する劣化パラメータである回転子すべり電流比率L
rsを算出する回転子すべり電流比率算出手段27と、三相誘導電動機12により駆動される回転機械系11が流体回転機械の場合、流体回転機械に設けられたブレード及びケーシングの摩耗や腐食の発生状況を推測する劣化パラメータであるブレード通過電流比率L
bpを算出するブレード通過電流比率算出手段28とを有している。
【0017】
更に、処理ユニット18には、三相誘導電動機12により駆動される回転機械系11が歯車装置の場合(三相誘導電動機12の回転子の回転軸に取付けられた歯車の一例)、歯車の摩耗、潤滑不良、折損等の異常を推測する劣化パラメータである噛合い電流比率L
gzを算出する噛合い電流比率算出手段29と、歯車の摩耗、潤滑不良、折損等の異常を推測する劣化パラメータであるギアポール電流比率L
gpを算出するギアポール電流比率算出手段29aと、三相誘導電動機12により駆動される回転機械系11がプーリーベルト駆動系の場合(三相誘導電動機12の回転子の回転軸に取付けられたプーリーの一例)、プーリーのミスアラインメントとベルトの張り具合の異常を推測する劣化パラメータであるベルト回転電流比率L
brを算出するベルト回転電流比率算出手段30が設けられている。
なお、軸系電流比率L
shaft、ポール通過電流比率L
pole、回転子すべり電流比率L
rs、ブレード通過電流比率L
bp、噛合い電流比率L
gz、ギアポール電流比率L
gp、及びベルト回転電流比率L
brの各劣化パラメータ(これらの劣化パラメータを総称して第2種劣化パラメータという)の値は、回転機械系11の劣化の進行に伴って低下する特徴を有する。
【0018】
ここで、軸系電流比率算出手段25では、軸系電流比率L
shaftを、スペクトルデータから、電源周波数の電流スペクトルピーク(電源基本周波数の電流スペクトルピーク又は電源高調波周波数の電流スペクトルピーク)の側帯波であって、三相誘導電動機12の実回転周波数に起因する側帯波、即ち、電源周波数の電流スペクトルピークを中心として、実回転周波数分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波のいずれか一方のピーク値、例えば、最大ピーク高さ20logI
shaftと、電源周波数の電流スペクトルピークのピーク高さ20logI
lineを求め、20logI
line−20logI
shaft、即ち、20log(I
line/I
shaft)として評価している。ここで、I
shaft及びI
lineは、それぞれ高速フーリエ変換器24から出力される実回転周波数に起因する側帯波及び電源周波数の電流スペクトルのピーク値である。
【0019】
ポール通過電流比率算出手段26では、ポール通過電流比率L
poleを、スペクトルデータから、電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波であって、三相誘導電動機12のポール通過周波数に起因する側帯波、即ち、電源周波数の電流スペクトルピークを中心として、ポール通過周波数分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波のいずれか一方のピーク値、例えば、最大ピーク値20logI
pole(I
poleは、高速フーリエ変換器24から出力されるポール通過周波数に起因する側帯波の電流スペクトルのピーク値)と、電源周波数の電流スペクトルピークのピーク高さ20logI
lineを求め、20logI
line−20logI
pole、即ち、20log(I
line/I
pole)として評価している。
【0020】
回転子すべり電流比率算出手段27では、回転子すべり電流比率L
rsを、スペクトルデータから、電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波であって、三相誘導電動機12の回転子バーすべり周波数に起因する側帯波、即ち、電源周波数の電流スペクトルピークを中心として、回転子バーすべり周波数分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波のいずれか一方のピーク値、例えば、最大ピーク値20logI
rs(I
rsoleは、高速フーリエ変換器24から出力される回転子バーすべり周波数に起因する側帯波の電流スペクトルのピーク値)と、電源周波数の電流スペクトルピークのピーク高さ20logI
lineを求め、20logI
line−20logI
rs、即ち、20log(I
line/I
rs)として評価している。
【0021】
ブレード通過電流比率算出手段28では、ブレード通過電流比率L
bpを、スペクトルデータから、電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波であって、三相誘導電動機12のブレード通過周波数に起因する側帯波、即ち、電源周波数の電流スペクトルピークを中心として、ブレード通過周波数分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波のいずれか一方のピーク値、例えば、最大ピーク値20logI
bp(I
bpは、高速フーリエ変換器24から出力されるブレード通過周波数に起因する側帯波の電流スペクトルのピーク値)と、電源周波数の電流スペクトルピークのピーク高さ20logI
lineを求め、20logI
line−20logI
bp、即ち、20log(I
line/I
bp)として評価している。
【0022】
噛合い電流比率算出手段29では、噛合い電流比率L
gzを、スペクトルデータから、電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波であって、三相誘導電動機12の噛合い周波数に起因する側帯波、即ち、電源周波数の電流スペクトルピークを中心として、噛合い周波数分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波のいずれか一方のピーク値、例えば、最大ピーク値20logI
gz(I
gzは、高速フーリエ変換器24から出力される噛合い周波数に起因する側帯波の電流スペクトルのピーク値)と、電源周波数の電流スペクトルピークのピーク高さ20logI
lineを求め、20logI
line−20logI
gz、即ち、20log(I
line/I
gz)として評価している。
また、ギアポール電流比率算出手段29aでは、ギアポール電流比率L
gpを、スペクトルデータから、電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波であって、三相誘導電動機12のギアポール周波数に起因する側帯波、即ち、電源周波数の電流スペクトルピークを中心として、三相誘導電動機12のポール通過周波数と、三相誘導電動機12の回転子の回転軸に取付けられた歯車の歯数との積として定義されるギアポール周波数f
gp分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波のいずれか一方のピーク値、例えば、最大ピーク値20logI
gp(I
gpは、高速フーリエ変換器24から出力されるギアポール周波数に起因する側帯波の電流スペクトルのピーク値)と、電源周波数の電流スペクトルピークのピーク高さ20logI
lineを求め、20logI
line−20logI
gp、即ち、20log(I
line/I
gp)として評価している。
【0023】
ベルト回転電流比率算出手段30では、ベルト回転電流比率L
brを、スペクトルデータから、電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波であって、三相誘導電動機12のベルト回転周波数に起因する側帯波、即ち、電源周波数の電流スペクトルピークを中心として、ベルト回転周波数分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波のいずれか一方のピーク値、例えば、最大ピーク値20logI
br(I
brは、高速フーリエ変換器24から出力されるベルト回転周波数に起因する側帯波の電流スペクトルのピーク値)と、電源周波数の電流スペクトルピークのピーク高さ20logI
lineを求め、20logI
line−20logI
br、即ち、20log(I
line/I
br)として評価している。
【0024】
なお、処理ユニット18には、電流情報量算出手段19、電流実効値算出手段20、3相電流バランス算出手段21、電流単調波比率算出手段22、電流全調波比率算出手段23、高速フーリエ変換器24、軸系電流比率算出手段25、ポール通過電流比率算出手段26、回転子すべり電流比率算出手段27、ブレード通過電流比率算出手段28、噛合い電流比率算出手段29、ギアポール電流比率算出手段29a、ベルト回転電流比率算出手段30の中から、回転機械系11の機械的構造に応じて選択された劣化パラメータの算出に必要な算出手段を稼働状態に設定する劣化パラメータ選定手段31が設けられている。
【0025】
簡易異常診断部14は、劣化パラメータの値から回転機械系11の異常を検知(異常が発生したか否かを判定)する際に使用する劣化判定基準値を保存しているデータベース32と、劣化パラメータ算出部13から取得した劣化パラメータの値と劣化パラメータに対応する劣化判定基準値をデータベース32から取得して比較して回転機械系11の状態を診断する簡易診断手段33とを有している。
ここで、劣化判定基準値は、例えば、回転機械系11を想定したモデル回転機械系を用いた破壊試験や、従来の保守管理実績に基づいて設定する。なお、簡易診断手段33では、第1種劣化パラメータに対しては、第1種劣化パラメータの値が設定した劣化判定基準値以上となる場合、異常が発生したと判定する。一方、第2種劣化パラメータに対しては、第2種劣化パラメータの値が設定した劣化判定基準値以下となる場合、異常が発生したと判定する。
【0026】
更に、簡易異常診断部14は、劣化パラメータ算出部13から取得した劣化パラメータの値を時系列的に保存する劣化傾向管理手段34と、劣化傾向管理手段34に保存された劣化パラメータの値(劣化傾向管理データ)の経時変化挙動を示す近似関数を求め、劣化パラメータの値が劣化判定基準値に一致するまでの時間(期待使用寿命)を推定して表示する余寿命予測手段35とを有している。なお、余寿命予測手段35では、劣化パラメータ毎に、劣化判定基準値として危険判定基準値と注意判定基準値を設定している。劣化パラメータの値が、注意判定基準値に達すると当該パラメータに関する異常が発生していると判断し、危険判定基準値に達すると当該パラメータに関する異常により回転機械系
11が停止又は破損の危険があると判断する。劣化パラメータの値が注意判定基準値に対して予め設定した注意範囲に到達した際に、注意範囲内の劣化パラメータの値の経時変化から近似関数を求めている。
図2に3相電流バランスI
ubの劣化傾向管理データと推定した期待使用寿命を、
図3に軸系電流比率L
shaftの劣化傾向管理データと推定した期待使用寿命を示す。
【0027】
ここで、注意判定基準値は、例えば、回転機械系11を想定したモデル回転機械系を用いた破壊試験や、従来の保守管理実績に基づいて設定され、第1種劣化パラメータの注意判定基準値は危険判定基準値より小さく、第2種劣化パラメータ注意判定基準値は危険判定基準値より大きくそれぞれ設定される。これによって、劣化パラメータの値が注意判定基準値に達していない場合は回転機械系11の状態が正常であると、劣化パラメータの値が注意判定基準値と危険判定基準値の間に入る場合は回転機械系11の状態が要注意であると、劣化パラメータの値が危険判定基準値に達した(第1種劣化パラメータでは値が危険判定基準値以上となる、第2種劣化パラメータでは値が危険判定基準値以下となる)場合は回転機械系11の状態が危険であるとそれぞれ判定できる。
【0028】
精密異常診断部15は、簡易異常診断部14において、電流実効値I
rms、3相電流バランスI
ub、電流単調波比率i
dis、及び電流全調波比率I
dis、軸系電流比率L
shaft、ポール通過電流比率L
pole、回転子すべり電流比率L
rs、ブレード通過電流比率L
bp、噛合い電流比率L
gz、ギアポール電流比率L
gp、及びベルト回転電流比率L
brの値の中で少なくとも1つが劣化判定基準値に達した際に、劣化判定基準値に達した劣化パラメータに基づいて異常の種類と回転機械系11における異常箇所を特定する。例えば、劣化判定基準値に達した劣化パラメータが電流実効値I
rmsの場合は回転機械系11に負荷変動が生じたと判定し、劣化判定基準値に達した劣化パラメータが3相電流バランスI
ub、電流単調波比率i
dis、又は電流全調波比率I
disの場合は回転機械系11に供給される電源品質又は三相誘導電動機12の固定子に劣化が生じたと判定する。
【0029】
また、劣化判定基準値に達した劣化パラメータが軸系電流比率L
shaftの場合は、回転機械系11の回転機械軸系の負荷に変化が生じたと推定され、軸系のミスアラインメント、アンバランス等の異常が考えられる。
劣化判定基準値に達した劣化パラメータがポール通過電流比率L
poleの場合は、三相誘導電動機12の回転子に劣化が生じたと推定され、回転子バーの損傷等の異常が考えられる。劣化判定基準値に達した劣化パラメータが回転子すべり電流比率L
rsの場合は、三相誘導電動機12の負荷トルクと回転子の実回転数が変化したと推測される。
【0030】
劣化判定基準値に達した劣化パラメータがブレード通過電流比率L
bpの場合は、三相誘導電動機12により駆動される流体回転機械に設けられたブレード及びケーシングの摩耗や腐食の発生が推測される。
劣化判定基準値に達した劣化パラメータが噛合い電流比率L
gz又はギアポール電流比率L
gpの場合は、三相誘導電動機12により駆動される歯車装置の歯車の摩耗、潤滑不良、折損等の異常が推測される。劣化判定基準値に達した劣化パラメータがベルト回転電流比率L
brの場合は、三相誘導電動機12により駆動されるプーリーベルト駆動系のプーリーのミスアラインメントとベルトの張り具合の異常が推測される。
【0031】
本発明の一実施の形態に係る回転機械系の異常監視装置10を用いた回転機械系の異常監視方法は、例えば、回転機械系11の総合的な状態を評価する劣化パラメータの値を求め、劣化パラメータの値が予め設定した第1の劣化判定基準値(注意判定基準値)に達した際に回転機械系11の異常を検知する簡易診断を行う回転機械系の異常検知方法と、回転機械系11の機械的構造に起因して発生する個別的な状態をそれぞれ定量的に評価する劣化パラメータの値を求め、劣化パラメータの値が予め設定した第1の劣化判定基準値(注意判定基準値)に達した際に回転機械系11の異常を検知する簡易診断を行う複数の回転機械系の異常検知方法を組み合わせた回転機械系11の異常監視方法であって、
図4に示すように、複数の簡易診断を繰り返す劣化傾向管理工程と、複数の簡易診断の少なくとも一つで回転機械系11の異常が検知され、劣化パラメータの値が予め設定した第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達した際に、当該パラメータに基づいて異常の種類と回転機械系における異常箇所を特定する精密異常診断工程とを有する。以下、詳細に説明する。
【0032】
(劣化傾向管理工程)
回転機械系11の総合的な状態を評価する劣化パラメータによる簡易診断を行う回転機械系の異常検知方法では、先ず、三相誘導電動機12の稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部13の電流検出器16で検出し、A/D変換器17によりデジタル化した稼働時電流信号を得る(S−1)。次いで、デジタル化した稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部13の処理ユニット18の電流情報量算出手段19に入力して電流情報量KIを算出する(S−2)。電流情報量KIを、簡易異常診断部14に入力し、電流情報量KIの第1、第2の劣化判定基準値(注意判定基準値、危険判定基準値)と比較する。また、電流情報量KIを劣化傾向管理手段34に保存し、余寿命予測手段35では保存した電流情報量KIを用いて電流情報量KIの経時変化挙動を監視する(以上、S−3)。そして、電流情報量KIが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達していない場合は簡易診断を繰り返す(S−4)。
【0033】
回転機械系11の機械的構造に起因して発生する個別的な状態を評価する劣化パラメータによる簡易診断を行う回転機械系の異常検知方法では、先ず、回転機械系11の機械的構造に基づいて劣化パラメータの選定を行う。例えば、回転機械系11が三相誘導電動機12により駆動される流体回転機械である場合、劣化パラメータとして、回転機械系11の回転機械軸系の負荷状況を評価する軸系電流比率L
shaft、三相誘導電動機12の回転子の劣化状況を評価するポール通過電流比率L
pole、三相誘導電動機12の負荷トルクと実回転数の変化を推測する回転子すべり電流比率L
rs、及び流体回転機械に設けられたブレード及びケーシングの摩耗や腐食の発生状況を推測するブレード通過電流比率L
bpを選択する。
【0034】
(軸系電流比率L
shaftによる簡易診断を行う回転機械系の異常検知方法)
第1工程では、
図4に示すように、劣化パラメータ算出部13の電流検出器16で三相誘導電動機12の稼働時電流信号を計測し、A/D変換器17によりデジタル化した稼働時電流信号を得る(S−1)。次いで、デジタル化した稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部13の処理ユニット18の高速フーリエ変換器24に入力して高速フーリエ変換を行って電流スペクトルを求める(S−5)。
【0035】
第2工程では、得られた電流スペクトルを軸系電流比率算出手段25に入力し、電流スペクトルの中から、三相誘導電動機12の電源周波数の電流スペクトルピークを中心とし、三相誘導電動機12の実回転周波数(特徴周波数の一例)分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波を抽出し、ピークの高い側帯波のピーク値20logI
shaftを求め、第3工程では、ピーク値20logI
shaft及び電源周波数の電流スペクトルピークのピーク値20logI
lineを用いて、軸系電流比率L
shaftを20log(I
line/I
shaft)として算出する(S−6)。
【0036】
第4工程では、得られた軸系電流比率L
shaftを劣化パラメータとして劣化傾向管理手段34に記録すると共に、軸系電流比率L
shaftの値と軸系電流比率L
shaftの第1、第2の劣化判定基準値(注意判定基準値、危険判定基準値)とを比較する。また、余寿命予測手段35では保存した軸系電流比率L
shaftを用いて軸系電流比率L
shaftの経時変化挙動を監視する(以上、S−3)。そして、軸系電流比率L
shaftが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達していない場合は軸系電流比率L
shaftによる簡易診断を繰り返し、軸系電流比率L
shaftが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達した場合は、軸系電流比率L
shaftで異常が検知されたことを精密異常診断部15に入力する(S−4)。
【0037】
(ポール通過電流比率L
poleによる簡易診断を行う回転機械系の異常検知方法)
第1工程では、
図4に示すように、劣化パラメータ算出部13の電流検出器16で三相誘導電動機12の稼働時電流信号を計測し、A/D変換器17によりデジタル化した稼働時電流信号を得る(S−1)。次いで、デジタル化した稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部13の処理ユニット18の高速フーリエ変換器24に入力して電流スペクトルを求める(S−5)。
【0038】
第2工程では、得られた電流スペクトルをポール通過電流比率算出手段26に入力し、電流スペクトルの中から、三相誘導電動機12の電源周波数の電流スペクトルピークを中心とし、三相誘導電動機12のポール通過周波数(特徴周波数の一例)分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波を抽出し、ピークの高い側帯波のピーク値20logI
poleを求め、第3工程では、ピーク値20logI
pole及び電源周波数の電流スペクトルピークのピーク値20logI
lineを用いて、ポール通過電流比率L
poleを20log(I
line/I
pole)として算出する(S−6)。
【0039】
第4工程では、得られたポール通過電流比率L
poleを劣化傾向管理手段34に記録すると共に、ポール通過電流比率L
poleの値とポール通過電流比率L
poleの第1、第2の劣化判定基準値(注意判定基準値、危険判定基準値)とを比較する。また、余寿命予測手段35では保存した軸系電流比率L
poleを用いてポール通過電流比率L
poleの経時変化挙動を監視する(以上、S−3)。そして、ポール通過電流比率L
poleが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達していない場合はポール通過電流比率L
poleによる簡易診断を繰り返し、ポール通過電流比率L
poleが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達した場合は、ポール通過電流比率L
poleで異常が検知されたことを精密異常診断部15に入力する(S−4)。
【0040】
(回転子すべり電流比率L
rsによる簡易診断を行う回転機械系の異常検知方法)
第1工程では、
図4に示すように、劣化パラメータ算出部13の電流検出器16で三相誘導電動機12の稼働時電流信号を計測し、A/D変換器17によりデジタル化した稼働時電流信号を得る(S−1)。次いで、デジタル化した稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部13の処理ユニット18の高速フーリエ変換器24に入力して電流スペクトルを求める(S−5)。
【0041】
第2工程では、得られた電流スペクトルを回転子すべり電流比率算出手段27に入力し、電流スペクトルの中から、三相誘導電動機12の電源周波数の電流スペクトルピークを中心とし、三相誘導電動機12の回転子バーすべり周波数(特徴周波数の一例)分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波を抽出し、ピークの高い側帯波のピーク値I
rsを求め、第3工程では、ピーク値20logI
rs及び電源周波数の電流スペクトルピークのピーク値20logI
lineを用いて、回転子すべり電流比率L
rsを20log(I
line/I
rs)として算出する(S−6)。
ここで、第2工程において、回転子バーすべり周波数は、三相誘導電動機12の回転子バーの本数hと、三相誘導電動機12のすべり周波数f
s(三相誘導電動機12の同期回転周波数f
xと実回転周波数f
rの差f
x−f
rとして求める)との積hf
sとして定義される。
【0042】
第4工程では、得られた回転子すべり電流比率L
rsを劣化傾向管理手段34に記録すると共に、回転子すべり電流比率L
rsの値と回転子すべり電流比率L
rsの第1、第2の劣化判定基準値(注意判定基準値、危険判定基準値)とを比較する。また、余寿命予測手段35では保存した回転子すべり電流比率L
rsを用いて回転子すべり電流比率L
rsの経時変化挙動を監視する(以上、S−3)。そして、回転子すべり電流比率L
rsが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達していない場合は回転子すべり電流比率L
rsによる簡易診断を繰り返し、回転子すべり電流比率L
rsが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達した場合は、回転子すべり電流比率L
rsで異常が検知されたことを精密異常診断部15に入力する(S−4)。
【0043】
(ブレード通過電流比率L
bpによる簡易診断を行う回転機械系の異常検知方法)
第1工程では、
図4に示すように、劣化パラメータ算出部13の電流検出器16で三相誘導電動機12の稼働時電流信号を計測し、A/D変換器17によりデジタル化した稼働時電流信号を得る(S−1)。次いで、デジタル化した稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部13の処理ユニット18の高速フーリエ変換器24に入力して電流スペクトルを求める(S−5)。
【0044】
第2工程では、得られた電流スペクトルをブレード通過電流比率算出手段28に入力し、電流スペクトルの中から、三相誘導電動機12の電源周波数の電流スペクトルピークを中心とし、三相誘導電動機12のブレード通過周波数(特徴周波数の一例)分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波を抽出し、ピークの高い側帯波のピーク値I
bpを求め、第3工程では、ピーク値20logI
bp及び電源周波数の電流スペクトルピークのピーク値20logI
lineを用いて、回転子すべり電流比率L
rsを20log(I
line/I
bp)として算出する(S−6)。
ここで、第2工程において、ブレード通過周波数は、流体回転機械に設けられたブレード数mと、三相誘導電動機12の実回転周波数f
rの積mf
rとして定義される。
【0045】
第4工程では、得られたブレード通過電流比率L
bpを劣化傾向管理手段34に記録すると共に、ブレード通過電流比率L
bpの値とブレード通過電流比率L
bpの第1、第2の劣化判定基準値(注意判定基準値、危険判定基準値)とを比較する。また、余寿命予測手段35では保存したブレード通過電流比率L
bpを用いてブレード通過電流比率L
bpの経時変化挙動を監視する(以上、S−3)。そして、ブレード通過電流比率L
bpが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達していない場合はブレード通過電流比率L
bpによる簡易診断を繰り返し、ブレード通過電流比率L
bpが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達した場合は、ブレード通過電流比率L
bpで異常が検知されたことを精密異常診断部15に入力する(S−4)。
【0046】
(精密異常診断工程)
精密異常診断部15には、簡易異常診断部14において異常が検知された劣化パラメータの情報が入力されるので、入力された劣化パラメータの種類から、回転機械系11で発生した異常の種類と回転機械系11における異常箇所を特定し(S−7)、その結果を、例えば、表示器に表示する(S−8)。
【0047】
ここで、精密異常診断部15に入力された劣化パラメータが軸系電流比率L
shaftの場合は、回転機械系11の回転機械軸系の負荷に変化が生じたと推定され、軸系のミスアラインメント、アンバランス等の異常が考えられる。劣化パラメータがポール通過電流比率L
poleの場合は、三相誘導電動機12の回転子に劣化が生じたと推定され、回転子バーの損傷等の異常が考えられる。劣化パラメータが回転子すべり電流比率L
rsの場合は、三相誘導電動機12の負荷トルクと回転子の実回転数が変化したと推測される。劣化パラメータがブレード通過電流比率L
bpの場合は、三相誘導電動機12により駆動される流体回転機械に設けられたブレード及びケーシングの摩耗や腐食の発生が推測される。
【0048】
(劣化傾向管理工程)
なお、回転機械系11が三相誘導電動機12と接続する減速機の場合、ブレード通過電流比率L
bpの代わりに噛合い電流比率L
gzを選定し、回転機械系の異常検知方法として噛合い電流比率L
gzによる簡易診断を行う。即ち、第1工程では、
図4に示すように、劣化パラメータ算出部13の電流検出器16で三相誘導電動機12の稼働時電流信号を計測し、A/D変換器17によりデジタル化した稼働時電流信号を得る(S−1)。次いで、デジタル化した稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部13の処理ユニット18の高速フーリエ変換器24に入力して電流スペクトルを求める(S−5)。
【0049】
第2工程では、得られた電流スペクトルを噛合い電流比率算出手段29に入力し、電流スペクトルの中から、三相誘導電動機12の電源周波数の電流スペクトルピークを中心とし、三相誘導電動機12の歯車噛合い周波数(特徴周波数の一例)分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波を抽出し、ピークの高い側帯波のピーク値I
gzを求め、第3工程では、ピーク値20logI
gz及び電源周波数の電流スペクトルピークのピーク値20logI
lineを用いて、噛合い電流比率L
gzを20log(I
line/I
gz)として算出する(S−6)。
ここで、第2工程において、歯車噛合い周波数は、三相誘導電動機12の回転子の回転軸に取付けられた歯車の歯数zと、三相誘導電動機12の実回転周波数f
rとの積zf
rとして定義される。
【0050】
第4工程では、得られた噛合い電流比率L
gzを劣化傾向管理手段34に記録すると共に、噛合い電流比率L
gzの値と噛合い電流比率L
gzの第1、第2の劣化判定基準値(注意判定基準値、危険判定基準値)とを比較する。また、余寿命予測手段35では保存した噛合い電流比率L
gzを用いて噛合い電流比率L
gzの経時変化挙動を監視する(以上、S−3)。そして、噛合い電流比率L
gzが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達していない場合は噛合い電流比率L
gzによる簡易診断を繰り返し、噛合い電流比率L
gzが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達した場合は、噛合い電流比率L
gzで異常が検知されたことを精密異常診断部15に入力する(S−4)。
【0051】
(精密異常診断工程)
精密異常診断部15には、簡易異常診断部14において異常が検知された劣化パラメータの情報が入力されるので、入力された劣化パラメータの種類から、回転機械系11で発生した異常の種類と回転機械系11における異常箇所を特定し(S−7)、その結果を、例えば、表示器に表示する(S−8)。
精密異常診断部15に入力された劣化パラメータが噛合い電流比率L
gzの場合は、三相誘導電動機12により駆動される歯車装置の歯車の摩耗、潤滑不良、折損等の異常が推測できる。
【0052】
(劣化傾向管理工程)
また、回転機械系11が三相誘導電動機12により駆動されるベルト駆動回転機械の場合、ブレード通過電流比率L
bpの代わりにベルト回転電流比率L
brを選定し、回転機械系の異常検知方法としてベルト回転電流比率L
brによる簡易診断を行う。
即ち、第1工程では、
図4に示すように、劣化パラメータ算出部13の電流検出器16で三相誘導電動機12の稼働時電流信号を計測し、A/D変換器17によりデジタル化した稼働時電流信号を得る(S−1)。次いで、デジタル化した稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部13の処理ユニット18の高速フーリエ変換器24に入力して電流スペクトルを求める(S−5)。
【0053】
第2工程では、得られた電流スペクトルをベルト回転電流比率算出
手段30に入力し、電流スペクトルの中から、三相誘導電動機12の電源周波数の電流スペクトルピークを中心とし、三相誘導電動機12のベルト回転周波数(特徴周波数の一例)分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する側帯波を抽出し、ピークの高い側帯波のピーク値I
brを求め、第3工程では、ピーク値20logI
br及び電源周波数の電流スペクトルピークのピーク値20logI
lineを用いて、ベルト回転電流比率L
brを20log(I
line/I
br)として算出する(S−6)。
ここで、第2工程において、ベルト回転周波数は、三相誘導電動機12の回転子の回転軸に設けられたプーリーの1回転に伴うベルト移動量のベルト全長に対する移動比率と、三相誘導電動機12の実回転周波数の積として定義される。
【0054】
第4工程では、得られたベルト回転電流比率L
brを劣化傾向管理手段34に記録すると共に、ベルト回転電流比率L
brの値とベルト回転電流比率L
brの第1、第2の劣化判定基準値(注意判定基準値、危険判定基準値)とを比較する。また、余寿命予測手段35では保存したベルト回転電流比率L
brを用いてベルト回転電流比率L
brの経時変化挙動を監視する(以上、S−3)。そして、ベルト回転電流比率L
brが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達していない場合はベルト回転電流比率L
brによる簡易診断を繰り返し、ベルト回転電流比率L
brが第2の劣化判定基準値(危険判定基準値)に達した場合は、ベルト回転電流比率L
brで異常が検知されたことを精密異常診断部15に入力する(S−4)。
【0055】
(精密異常診断工程)
精密異常診断部15には、簡易異常診断部14において異常が検知された劣化パラメータの情報が入力されるので、入力された劣化パラメータの種類から、回転機械系11で発生した異常の種類と回転機械系11における異常箇所を特定し(S−7)、その結果を、例えば、表示器に表示する(S−8)。
精密異常診断部15に入力された劣化パラメータがベルト回転電流比率L
brの場合は、三相誘導電動機12により駆動されるプーリーベルト駆動系のプーリーのミスアラインメントとベルトの張り具合及び摩耗の異常が推測できる。
【0056】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、三相誘導電動機の稼働時電流信号を、劣化パラメータ算出部の電流検出器で検出し、A/D変換器によりデジタル化した後に劣化パラメータ算出部に入力するオンラインによる回転機械系の異常検知方法を用いた回転機械系の異常監視方法について説明したが、三相誘導電動機の稼働時電流信号を計測して保存した後、劣化パラメータ算出部に入力するオフラインによる回転機械系の異常検知方法を用いた回転機械系の異常監視方法も可能である。
【0057】
回転機械系の異常検知方法では、回転機械系の機械的構造に起因して発生する個別的な状態を評価する劣化パラメータによる簡易診断を複数同時に実行したが、一つの劣化パラメータを選択して実行することもできる。
また、特徴周波数である歯車噛合い周波数を、三相誘導電動機の回転子の回転軸に取付けられた歯車の歯数と、三相誘導電動機の実回転周波数との積として定義する場合について説明したが、特徴周波数を三相誘導電動機の回転子の回転軸に取付けられた歯車の歯数と、三相誘導電動機のポール通過周波数との積として定義されるギアポール周波数としてもよく、特徴周波数として歯車噛合い周波数とギアポール周波数の両方を採用することもできる。
また、回転機械系の機械的構造に起因して発生する個別的な状態を評価する劣化パラメータとして、電流実効値I
rms、稼働時電流信号の3相電流バランスI
ub、稼働時電流信号の電流単調波比率i
dis、及び電流全調波比率I
disのいずれか1又は任意の2以上の組み合わせを加えることもできる。
電流実効値I
rmsで異常が検知されると、回転機械系の負荷に異常が、3相電流バランスI
ub、電流単調波比率i
dis、又は電流全調波比率I
disで異常が検知されると、電源品質又は三相誘導電動機の固定子で異常が生じていると推測できる。
更に、電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波の両方の電流スペクトルピーク値を求める場合は、電流スペクトルピーク値の平均値を側帯波の電流スペクトルピーク値とする。
なお、三相誘導電動機の電源は、インバータ電源であっても本発明は適用できる。
【解決手段】回転機械系の異常検知方法では、三相誘導電動機12の稼働時電流信号の高速フーリエ変換を行う第1工程と、得られた電流スペクトルの中から、電源周波数の電流スペクトルピークを中心とし、回転機械系11の異常に関連する特徴周波数分だけ低周波数側及び高周波数側にそれぞれ離れた周波数位置に存在する電源周波数の電流スペクトルピークの側帯波を抽出し、側帯波のどちらか一方又は両方の電流スペクトルピーク値を求める第2工程と、側帯波及び電源周波数の電流スペクトルピーク値から回転機械系11の劣化パラメータを算出する第3工程と、劣化パラメータの値を記録すると共に劣化判定基準値とを比較して回転機械系11の異常を検知する第4工程とを有する簡易診断を行う。