特許第5985114号(P5985114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5985114生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5985114
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20160823BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20160823BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
   C12N1/00 A
   C12P1/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-512162(P2016-512162)
(86)(22)【出願日】2016年3月4日
(86)【国際出願番号】JP2016056775
【審査請求日】2016年3月29日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2015/073260
(32)【優先日】2015年8月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176763
【氏名又は名称】三菱化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(74)【代理人】
【識別番号】100091948
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 武男
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(72)【発明者】
【氏名】熊田 和矩
(72)【発明者】
【氏名】国友 信秀
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 正守
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸宏
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−312689(JP,A)
【文献】 特開2010−104902(JP,A)
【文献】 特開2011−120535(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146920(WO,A1)
【文献】 特開平07−177873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C02F 3/00−3/34
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地又は反応原料及び微生物又は細胞を含有する生物培養液を収容する培養槽、該培養槽から抜き出した生物培養液をろ過液とろ過液を除いた生物培養液とに分離するろ過器、該ろ過液を回収する管路、及び該ろ過液を除いた生物培養液を前記培養槽に還流する管路を備えた生物反応装置であって、
前記ろ過器に供給される生物培養液を、マイクロナノバブルを含有するものとするマイクロナノバブル発生装置を備え、
該マイクロナノバブル発生装置が、生物培養液を前記培養槽から抜き出し前記ろ過器に供給する経路に設けられることを特徴とする、微生物若しくは細胞による反応生成物の生成、又は、微生物若しくは細胞の増殖若しくは濃縮を行う生物反応装置。
【請求項2】
前記生物反応装置が、さらに、前記ろ過液を前記培養槽に還流する管路を備えることを特徴とする、請求項1に記載の生物反応装置。
【請求項3】
前記マイクロナノバブル発生装置が、
生物培養液を前記培養槽から抜き出し前記ろ過器に供給する経路、並びに前記培地又は反応原料を前記培養槽に供給する経路、前記培養槽、前記ろ過液を除いた生物培養液を前記培養槽に還流する管路の少なくとも1箇所に設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生物反応装置。
【請求項4】
前記マイクロナノバブルが、酸素濃度を高めた空気から形成されたマイクロナノバブルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の生物反応装置。
【請求項5】
前記酸素濃度を高めた空気の酸素含有率が25〜40%であることを特徴とする、請求項4に記載の生物反応装置。
【請求項6】
前記酸素濃度を高めた空気が、空気を酸素富化膜に通過させることにより得られたものであることを特徴とする、請求項4又は5に記載の生物反応装置。
【請求項7】
前記酸素濃度を高めた空気が、PSA法、VSA法及び化学吸着法のいずれかにより生成した酸素と、空気とを混合させることにより得られたものであることを特徴とする、請求項4又は5に記載の生物反応装置。
【請求項8】
前記微生物又は細胞を含有する生物培養液を搬送するポンプとして、容積式ポンプを用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の生物反応装置。
【請求項9】
前記容積式ポンプがチューブポンプであることを特徴とする、請求項8に記載の生物反応装置。
【請求項10】
前記ろ過液を前記培養槽に還流する管路に、pH調整剤を添加する手段を備えることを特徴とする、請求項2〜9のいずれかに記載の生物反応装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の生物反応装置により、微生物若しくは細胞による反応生成物の生成、又は、微生物若しくは細胞の増殖若しくは濃縮を行うことを特徴とする、生物反応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物若しくは細胞(以下、「微生物等」という。)による反応生成物の生成(発酵・醸造)、又は、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を行う生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法に関し、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、マイクロナノバブル(以下、「マイクロナノバブル」を「MNB」、「マイクロバブル」を「MB」、「ナノバブル」を「NB」という場合がある。)を含有するものとするマイクロナノバブル発生装置を備え、この生物培養液をろ過し、ろ過液を回収すると共にろ過液を除いた生物培養液(以下、「微生物等濃縮液」という。)を培養槽に還流することを特徴とするものである。
【背景技術】
【0002】
生物反応は、化学反応と異なり、反応自体は遅いが、多大なエネルギーや多くの化学物質を使用しないので、環境にとって温和で有意義な反応である。
しかしながら、生物反応は、一般的に反応が温和で遅いという問題があった。すなわち、化学反応には、1時間以内の反応で十分な場合が多いのに対して、生物反応の場合は、数時間から長い場合は数日又は特に長い場合は数週間以上の反応時間を要する場合もある。このため、生物反応を効率的、経済的に行うことが求められている。
【0003】
微生物等による生物反応(発酵・醸造、培養)を行う方法としては、通常、(1)回分法(Batch法)及び流加法(Fed-Batch法)と(2)連続法が用いられるが、工業的には、長時間にわたり安定して高収率かつ高生産性を維持できる、特許文献1に開示されるような連続法が採用されている。
【0004】
特許文献1には、図10に示すように、連続発酵法において、装置内の発酵培養液を、発酵培養液循環ポンプ111によって発酵反応槽101と膜分離槽112の間を循環させ、分離膜エレメント102によって微生物や培養細胞を分離膜でろ過し、ろ液から生産物を回収すると同時にろ過された微生物や培養細胞を発酵培養液に還流させ、発酵培養液中の微生物や培養細胞濃度を高く維持することにより、高い物質生産性を得ることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、微生物等の培養における生物反応を効率化するために、培養液に、空気から形成されたMNBあるいはNBを含有させることにより、微生物等の活性化を促進し、生物反応の反応効率、反応時間の短縮等を図ることが開示されている。
【0006】
具体的には、図11に示すように、培養槽207から培養液を抜き出し、菌体ろ過器210でろ過してろ過液を得、このろ過液にMNB発生槽215で、MNB発生機216により空気のMNBを発生・混合して培養槽207に還流する方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された、培養槽から生物培養液を抜き出し、微生物等濃縮液を培養槽に還流する方法では、培養槽中の生物培養液の微生物等の濃度を高く維持し生産性を高めることができるが、その反面、微生物等の濃度の高い生物培養液をろ過するため、ろ過膜に目詰まりが生じやすく、ろ過膜の洗浄あるいは交換を頻繁に行う必要がある。また、膜内の循環流速を上げることによりろ過膜の目詰まりを抑制できるが、膜内の循環流速を上げると、微生物等が受けるストレス・ダメージが大きくなってしまう。
【0008】
また、微生物等の濃度の高い生物培養液を培養槽外に循環させるため、この経路において微生物等の呼吸に必要な酸素が十分に供給されず、微生物等がストレス・ダメージを受けることとなる。
【0009】
また、上記特許文献2に記載された、培養槽から生物培養液を抜き出し、このろ過液に空気のMNBを含有させる方法では、培養槽から抜き出す生物培養液量に比べ、この生物培養液をろ過して得られるろ過液の量がかなり少ない(ろ過液の量は、通常、培養槽から抜き出した生物培養液の量の1/10〜1/100程度)ため、ろ過液を含有させたMNBにより、培養槽中の生物培養液が含有するMNBの量を高く維持することは難しい。また、ろ過液の量を増加するため、培養槽から抜き出す生物培養液量を増やしたり、ろ過圧力を高めると、微生物等が受けるストレス・ダメージを増加させてしまう。
【0010】
さらに、発酵・醸造、培養といった生物反応とは技術分野を異にするが、特許文献3には、水浄化システムにおける膜モジュールの目詰まりを抑制するために、膜モジュールに供給する前の水中に超微細気泡を発生させ、超微細気泡を含有する水を膜モジュールに供給することが開示されている。
【0011】
具体的には、図12に示すように、原水供給ライン304から供給される原水及び/又は濃縮循環水ライン317から供給される膜モジュール311からの濃縮循環水を、水供給ポンプ306によって加圧した後、水中に超微細気泡を発生させ、この超微細気泡を含有する水を膜モジュール311に供給して膜ろ過を行う水浄化方法が記載されている。
【0012】
しかしながら、上記特許文献3に記載されるような水浄化方法においては、膜モジュール等のろ過膜により、河川水のような原水から濁質物質、細菌等を単に除去するものであって、ろ過した微生物等を培養槽に戻し再利用する生物反応のように、微生物等が受けるストレス・ダメージを全く考慮する必要がないものである。
【0013】
さらに、特許文献3で用いられる「超微細気泡」とは、気泡径が2〜50μm程度のものであり、これはMBに相当し、直径100nm以下の極微小気泡であるNBを含まないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第5092487号公報
【特許文献2】特許第4146476号公報
【特許文献3】特開2011−83764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法の課題は、培養槽中の生物培養液が含有するMNBの量を高く維持し、ろ過膜の目詰まりを抑制し、さらに、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減し、これにより、微生物等を用いた生物反応及び微生物等の分離を効率的かつ経済的に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法では、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、マイクロナノバブルを含有するものとするマイクロナノバブル発生装置を備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、生物培養液にMNBを含有させる手段として上記以外の手段を併用すること、MNBとして酸素濃度を高めた空気から形成されたMNBを用いること、微生物等を含有する液体を搬送するポンプとして容積式ポンプを用いること及び培養槽に還流するろ過液にpH調整剤を添加することにより、上記課題の解決を一層図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、培養槽中の生物培養液が含有するMNBの量を高く維持でき、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、さらに、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減でき、これにより、微生物等を用いた生物反応及び微生物等の分離を効率的かつ経済的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の生物反応装置の第1実施形態を示す模式図である。
図2】本発明の生物反応装置の第2実施形態を示す模式図である。
図3】本発明の生物反応装置の第3実施形態を示す模式図である。
図4】本発明の生物反応装置の第4実施形態を示す模式図である。
図5】本発明の生物反応装置の参考実施形態1を示す模式図である。
図6】本発明の生物反応装置の参考実施形態2を示す模式図である。
図7】本発明の生物反応装置の参考実施形態3を示す模式図である。
図8】本発明の生物反応装置の第5実施形態を示す模式図である。
図9】本発明の生物反応装置の参考実施形態4を示す模式図である。
図10】従来例である、特許文献1(特許第5092487号公報)の図1である。
図11】従来例である、特許文献2(特許第4146476号公報)の図1である。
図12】従来例である、特許文献3(特開2011−83764号公報)の図1である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面も参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
まず、本発明の生物反応装置及び生物反応方法の一般的な事項について説明する。
本発明の生物反応装置は、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。また、本発明の生物反応装置は、回分法(Batch法)、流加法(Fed-Batch法)、連続法のいずれにも用いることができるが、長時間にわたり安定して高収率かつ高生産性を維持できる連続法において好適に用いることができる。
【0022】
微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応においては、反応生成物がろ過液と共に連続して回収され、また、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする生物反応においては、微生物等を増殖、濃縮して微生物等が回収される。
【0023】
本発明の生物反応は、醸造、発酵等による食品、薬品、化学品等の製造、バイオマスを利用したバイオエタノールの製造等の微生物等による反応生成物の製造のみならず、微生物等の増殖若しくは濃縮にも適用できる有用なものである。
【0024】
本発明の生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法においては、ろ過器により、培養槽から抜き出した生物培養液をろ過液と微生物等濃縮液に分離するが、ろ過方式としては、中空糸膜モジュールを用いたクロスフローろ過を好適に用いることができる。
【0025】
本発明の「マイクロナノバブル」とは、「マイクロバブル」及び/又は「ナノバブル」を意味する。「通常の気泡」は水中を急速に上昇して表面で破裂して消えるのに対し、「マイクロバブル」といわれる直径50μm以下の微小気泡は、水中で縮小していって消滅し、この際に、フリーラジカルと共に、直径100nm以下の極微小気泡である「ナノバブル」を発生し、この「ナノバブル」はある程度の長時間水中に残存する。
【0026】
本発明においては、個数平均直径が100μm以下の気泡を「マイクロバブル」といい、個数平均直径が1μm以下の気泡を「ナノバブル」という。マイクロバブルの気泡径を測定する方法としては、画像解析法、レーザー回折散乱法、電気的検知帯法、共振式質量測定法、光ファイバープローブ法等が一般に用いられ、ナノバブルの気泡径を測定する方法としては、動的光散乱法、ブラウン運動トラッキング法、電気的検知帯法、共振式質量測定法等が一般に用いられている。
【0027】
極微小気泡である「ナノバブル」は、「ウルトラファインバブル」とも呼ばれる。なお、現在、ISO(国際標準化機構)において、ファインバブル技術に関する国際標準の作成が検討されており、国際標準が作成されれば、現在一般的に用いられている「ナノバブル」との呼称が、「ウルトラファインバブル」に統一される可能性もある。
【0028】
マイクロナノバブル発生装置としては、公知あるいは市販されている装置を用いることができ、例えば、ある程度の高圧で十分な量の気体を水中に溶解させた後、その圧力を解放してやることで溶解した気体の過飽和条件を作り出す「加圧溶解型マイクロバブル発生装置」、水流を起こして渦を発生させ、渦内に大きな気泡を巻き込み、この渦を崩壊させたときに気泡がバラバラに細分化する現象を利用した「気液二相流旋回型マイクロバブル発生装置」等を用いることができる。
【0029】
また、ナノバブル発生装置としては、例えば、特開2007−312690号公報、特開2006−289183号公報、特開2005−245817号公報、特開2007−136255号公報、特開2009−39600号公報に記載されたもの等を用いることができる。
【0030】
マイクロナノバブル発生装置として、水流を用いて駆動する方式(ノズル方式)のものを用いると、多量のMNBを経済的に発生でき、微生物等に与えるストレス・ダメージを低減でき、目詰まりが抑制できるので好ましい。
【0031】
本発明の生物反応は、培養槽に収容した微生物等を含有する生物培養液中において、微生物等に反応生成物を生成させたり、微生物等を増殖若しくは濃縮させるものである。
生物培養液中の栄養源としては、糖類、窒素源が含有されたものを用いる。糖類としては、通常、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、これらの混合物等の糖類が用いられ、生物培養液における糖類の濃度は、特に限定されないものの、0.1〜10w/v%に設定するのが好ましい。また、窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム又はコーンスティープリカー、酵母エキス、肉エキス、ペプトン等が用いられ、0.1〜10w/v%に設定するのが好ましい。さらに、生物培養液には糖類、窒素源以外にも、必要に応じて、ビタミン、無機塩類等を添加することが好ましい。
【0032】
本発明における微生物としては、醸造、発酵等の技術分野で従来用いられている、アスペルギルス菌等の麹菌、納豆菌、酢酸菌、酵母菌、乳酸菌等の好気性及び通性嫌気性の微生物のほか、遺伝子組み換え技術で創り出される各種好気性及び通性嫌気性の微生物を用いることができる。また、細胞としては、例えば、抗体医薬として使用される生理活性ペプチド又は蛋白質を製造するための動物細胞、とりわけ遺伝子組換え動物細胞等が挙げられる。
【0033】
微生物又は細胞の生物培養液への添加濃度は、特に限定されないものの、0.5〜10.0g/Lとするのが好ましく、3.0〜6.0g/Lにするのがより好ましい。
【0034】
つぎに、本発明の生物反応装置及び生物反応方法の特徴について説明する。
本発明の第1の特徴点は、前述のように、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとするMNB発生装置を備えることである。
【0035】
本発明者らは、微生物等による反応生成物の生成(発酵・醸造)、又は、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を行う生物反応において、
(1)培地又は反応原料、微生物等を含有する生物培養液を収容する培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとし、
(2)このMNBを含有する生物培養液を、ろ過器により、ろ過液と微生物等濃縮液とに分離し、
(3)このろ過液を回収すると共に、この微生物等濃縮液を培養槽に還流する
ことにより、
驚くべきことに、培養槽中の生物培養液が含有するMNBの量を高く維持でき、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、さらに、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減でき、これにより、微生物等を用いた生物反応を効率的かつ経済的に行うことができることを見出し、本発明を成したものである。
【0036】
上で述べたように、特許文献1に記載されるような、培養槽から生物培養液を抜き出し、微生物等濃縮液を培養槽に還流する連続発酵法では、微生物等の濃度の高い生物培養液を培養槽外に循環させてろ過するため、ろ過膜に目詰まりが生じやすい、循環経路において微生物等に酸素が十分に供給されないという問題が生じるが、本発明のように、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液をMNBを含有するものとし、このMNBを含有する生物培養液をろ過器に供給して、ろ過液と微生物等濃縮液とに分離し、ろ過液を回収すると共に、微生物等濃縮液を培養槽に還流することにより、このような問題を解決することができる。
【0037】
すなわち、本発明では、MNBを含有する生物培養液をろ過器でろ過することにより、MNBが、ろ過膜と生物培養液が含有する物質(微生物等、濁質物質など)との間に介在し、該物質がろ過膜に付着するのを妨げるように作用をするため、ろ過膜の目詰まりを抑制することができるものと考えられる。
【0038】
これにより、例えば、中空糸膜を用いたクロスフローろ過を行う場合、中空糸膜表面に付着する物質をその膜表面からはぎ取りながらろ過を行うためには、通常、ろ過流量を膜断面積に対して1m/s以上とする必要があるが、本発明のようにMNBを含有させた生物培養液をろ過する場合には、ろ過流量を0.5m/s以下としても、中空糸膜の目詰まりを抑制しながらろ過を行うことができるので、ろ過工程において微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0039】
さらに、これによりろ過効率が向上するため、ろ過装置を小型化でき、また、ろ過装置への生物培養液の供給量を低減できるので、生物反応装置の設備費・運転費を低減することができ、また、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0040】
さらに、本発明では、生物培養液を収容する培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとすることにより、循環経路を通じて循環される生物培養液中の微生物等に、酸素を十分に供給できるので、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0041】
このようなMNBを含有させる手法は、生物培養液のクロスフローろ過に限らず、水の浄化、食品の濃縮、研磨剤粒子の精製等に用いられる一般的なクロスフローろ過に適用した場合にも、同様の優れた作用効果が発揮される。すなわち、一般的なクロスフローろ過においても、ろ過する液体にMNBを含有させることにより、液体が含有する固体物質等による中空糸膜の目詰まりを抑制しながらろ過を行うことができるので、装置の設備費・運転費を低減することができる。
【0042】
また、上で述べたように、特許文献2に記載されるような、培養槽から抜き出した生物培養液のろ過液にMNBを含有させる方法では、培養槽から抜き出す生物培養液量に比べ、この生物培養液をろ過して得られるろ過液の量がかなり少ない(ろ過液の量は、通常、培養槽から抜き出した生物培養液の量の1/10〜1/100程度)ため、培養槽中の生物培養液が含有するMNBの量を高く維持するのが難しいという問題があり、また、この問題を解決するために、培養槽から抜き出す生物培養液量を増やしたり、ろ過圧力を高めたりすると、微生物等が受けるストレス・ダメージが増加するという新たな問題が生じるが、本発明では、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、マイクロナノバブルを含有するものとするマイクロナノバブル発生装置を備えるため、このような問題を解決することができる。
【0043】
すなわち、本発明では、培養槽から抜き出した生物培養液にMNBを含有させ、このMNBを含有させた生物培養液をろ過器に供給することにより、微生物等に余分なストレス・ダメージを与えることなく、循環経路を通じて循環される生物培養液に十分にMNBを含有させることができ、培養槽中の生物培養液が含有するMNBの量を高く維持することができる。
【0044】
培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとする手段としては、生物培養液を培養槽から抜き出しろ過器に供給する経路にMNB発生装置を設け、生物培養液にMNBを含有させる手段(以下、「第1手段」という。)を用いるのが好ましい。第1手段を用いた場合には、ろ過器に供給され、循環経路を循環する生物培養液に十分にMNBを含有させることができるため、上記のように、ろ過膜の目詰まり抑制、微生物等が受けるストレス・ダメージの低減等の効果を十分に発揮することができる。
【0045】
また、第1手段に代えて、培地又は反応原料を培養槽に供給する経路にMNB発生装置を設け、生物培養液にMNBを含有させる手段(以下、「第2手段」という。)、培養槽にMNB発生装置を設け、生物培養液にMNBを含有させる手段(以下、「第3手段」という。)、及び
微生物等濃縮液をろ過器から培養槽に還流する管路にMNB発生装置を設け、培養槽に還流する微生物等濃縮液にMNBを含有させる手段(以下、「第4手段」という。)の1つ又は複数の手段を用いることによっても、ろ過膜の目詰まり抑制、微生物等が受けるストレス・ダメージの低減等の効果を発揮することができる。
【0046】
さらに、第1手段と、第2手段乃至第4手段の1つ又は複数の手段とを併用することもできる。例えば、第1手段を単独で用いた場合には、培養槽中の生物培養液のMNBの含有量を適正な値とするのに時間を要し、この時間を短縮する必要がある場合には、第2手段乃至第4手段の1つ又は複数の手段を併用することが有効である。特に、第2手段は、MNBの吹き込みによって、微生物等がストレス・ダメージを受けることがないので、第1手段と併用する手段として好ましい。
【0047】
本発明の第2の特徴点は、生物培養液に含有させるMNBとして、酸素濃度を高めたMNBを用いることである。
これにより、培養槽から抜き出す生物培養液の量を減少させ、生物培養液が含有するMNBの量を減少させても、MNB状態の、吸収されやすい高濃度の酸素を、培養槽中の微生物等に供給でき微生物等の活性を維持できる。さらに、培養槽から抜き出す生物培養液の量を減少させることにより、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減できると共に、生物培養液の循環に要するエネルギーを減じることができる。さらに、生物培養液が含有するMNBの量を減少させることにより、MNB発生装置の駆動に要するエネルギーを減じることができる。
【0048】
酸素濃度を高めた空気を得るためには、吸着剤を用いたPSA法、VSA法等、水の電気分解法、深冷分離法、膜分離法、化学吸着法等の公知の酸素富化手段を用いることができるが、経済的観点からは、酸素富化膜を用い、空気を酸素富化膜に通過させることにより酸素濃度を高めた空気を得ることが好ましい。また、PSA法、VSA法及び化学吸着法を用いる場合には、これらの方法により生成した酸素と、空気とをラインミキサー等で混合させることにより、酸素濃度を高めた空気を得ることが好ましい。
【0049】
酸素富化MNBの酸素濃度は、25〜40%とするのが好ましく、35〜40%とするのがより好ましい。酸素濃度が25%以上であると、微生物等の呼吸作用を促進でき、微生物等の活性を高めることができる。酸素濃度が40%以下であると、微生物等が酸化によるダメージを受けにくくなる。
【0050】
本発明の第3の特徴点は、上記培養槽から生物培養液を抜き出すためのポンプ等の微生物等を含有する生物培養液を搬送するポンプとして、ダイアフラムポンプ、チューブポンプ、スクリューポンプ、ロータリーポンプ等の容積式ポンプを用いることである。
【0051】
このような容積式ポンプを用いて、微生物等を含有する生物培養液を搬送することによって、微生物等が受けるストレス・ダメージをより一層低減することができる。
【0052】
本発明の第4の特徴点は、ろ過液を培養槽に還流する管路に、pH調整剤を添加する手段を備えることである。
微生物等は、培養槽中で生物反応において有機酸等の副生物を生じるが、これにより培養槽中の生物培養液のpHが変化するような場合には、これを微生物等に適した範囲に調整する必要がある。
【0053】
一般的なpH調整手段としては、培養槽中の生物培養液に直接酸、アルカリ等のpH調整剤が添加されるが、この手段では局所的に酸/アルカリの濃度が高くなり、微生物等にストレス・ダメージを与えることとなる。
【0054】
本発明では、培養槽に還流するろ過液に、酸、アルカリ等のpH調整剤を添加するようにしたため、生物培養液に直接pH調整剤を添加する場合に比べ、培養槽中の微生物等に濃度差に伴うストレス・ダメージを与えずに、培養槽中の生物培養液のpHを調整することができる。
【0055】
<第1実施形態(図1)>
まず、図1を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の生物反応装置は、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとする手段として、第1手段を用いたものである。
【0056】
第1実施形態の生物反応装置は、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。反応生成物の生成を目的とする場合には、反応生成物を連続してろ過液と共に回収し、また、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする場合には、微生物等を増殖させた後に、培養槽の生物培養液を濃縮して微生物等を回収する。
【0057】
まず、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
a)培養槽撹拌機7で撹拌しながら、培養槽2に収納した、培地又は反応原料1及び微生物等を含有する生物培養液3において生物反応を行わせる。
b)上記a)の反応を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、MNB発生装置6aに供給して空気AのMNBを含有させる。
c)この空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、反応生成物を含むろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
e)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0058】
つぎに、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
第1段階として、微生物等が適正量に増殖するまでの間は、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様の工程で操作を行う。ろ過液Bを分離・回収することにより、微生物等の生物反応により生じる有機酸等の副生物をろ過液Bと共に回収することができる。
【0059】
第2段階として、微生物等が適正量に増殖した後は、培地又は反応原料1の培養槽2への供給を停止して、次のような工程により微生物等の濃縮・回収を行う。
a)微生物等の増殖を行いながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、MNB発生装置6aに供給して空気AのMNBを含有させる。
b)この空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、ろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
c)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0060】
このように、第2段階では、微生物等の濃度が高くなった生物培養液を、MNB発生装置6a及びろ過器4を介して培養槽2の外に循環させることとなるが、本発明では培養槽2から抜き出した生物培養液3にMNBを含有させるため、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、また、循環経路において微生物等に酸素を十分に供給することができ、ひいては微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0061】
第1実施形態では、MNB発生装置6aをポンプ8とろ過器4を接続する管路に設けているが、このMNB発生装置6aを培養槽2とポンプ8を接続する管路に設ける態様を採ることもでき、この態様も第1実施形態に包含される。これは、以下の第2実施形態乃至第5実施形態、参考実施形態1乃至参考実施形態4においても同様である。
【0062】
ろ過器4は、ろ過膜と該ろ過膜を収容する容器とからなる。ろ過膜は、有機膜、無機膜を問わない。ろ過膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などいずれの形状のものも採用することができるが、中でも、中空糸膜モジュールが好ましく、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式のいずれの形状のものも採用することができる。
【0063】
ろ過方式としては、中空糸膜モジュールを用いたクロスフローろ過が好ましい。このろ過方式は、反応生成物、微生物等を含有する培養液を中空糸膜の内部に供給しつつろ過して、その外部からろ過液を取り出すものであり、中空糸膜の内部に堆積する微生物等の膜汚れが上記培養液の平行流による剪断力によって掻き取られるので、安定したろ過状態を長期にわたって維持することができる。
【0064】
中空糸膜モジュールを用いたクロスフローろ過を行う場合には、膜汚れを掻き取るために、ろ過の対象となる液体をある程度以上の流速で中空糸膜内に流す必要があるが、本発明では、ろ過の対象となる、微生物等を含有する生物培養液がMNBを含んでいるため、通常より低い流速で流しても、膜汚れを十分に掻き取ることができ、微生物等に与えるストレスやダメージを大幅に低減することができる。
【0065】
具体的には、一般的なクロスフローろ過においては、循環流速が、有機膜を用いた場合には1〜2m/s程度、セラミック膜を用いた場合には1〜3m/s程度で定常運転されるが、生物培養液にMNBを含有させることにより、膜汚れを少なく、ろ過抵抗を小さく維持できるため、同じフラックス(単位時間・単位膜面積あたりの膜ろ過水量)を得るために必要な循環流速を0.2〜1.5m/s程度まで低減することができる。また、同じ循環流速で運転する場合、フラックスを1.2〜2.0倍程度増加することができる。
【0066】
ろ過膜としては、分離性能及び透水性能、さらには耐汚れ性の観点から、有機高分子化合物を好適に使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂及びセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂及びポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂又はそれを主成分とする樹脂が、化学的強度(特に耐薬品性)と物理的強度を併せ有する特徴をもつためより好ましく用いられる。
【0067】
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いても構わない。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及び三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
【0068】
ろ過膜の平均細孔径は、使用する目的や状況に応じて適宜決定することができるが、ある程度小さい方が好ましく、通常は0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。中空糸膜の平均細孔径が0.01μm未満であると、微生物等、糖や蛋白質などの成分やその凝集体などの膜汚れ成分が細孔を閉塞して、安定運転ができなくなる。透水性能とのバランスを考慮した場合、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.03μm以上である。また、1μmを超える場合、膜表面の平滑性と膜面の流れによる剪断力や、逆洗やエアースクラビングなどの物理洗浄による細孔からの汚れの成分の剥離が不十分となり、安定運転ができなくなる。
【0069】
また、平均細孔径が微生物等の大きさに近づくと、これらが直接細孔を塞いでしまう場合がある。さらに微生物等の一部が死滅することによりその破砕物が生成する場合があり、これらの破砕物によって細孔の閉塞を回避するために、平均細孔径は0.4μm以下が好ましく、0.2μm以下が好適である。
【0070】
ここで、ろ過膜の平均細孔径は、倍率10,000倍以上の走査型電子顕微鏡観察で観察される複数の細孔の直径を測定し、平均することにより求めることができる。10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることが好ましい。細孔が円状でない場合などは画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円、すなわち等価円を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることも好ましく採用できる。
【0071】
<第2実施形態(図2)>
図2を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の生物反応装置は、第1実施形態の生物反応装置にろ過液を培養槽に還流する、バルブを備えた管路を設けたものである。この管路を通じて培養槽に還流するろ過液の量を調整することにより、培養槽中の培地又は反応原料及び微生物等の濃度を調整することができる。
【0072】
第2実施形態の生物反応装置は、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。反応生成物の生成を目的とする場合には、反応生成物を連続してろ過液と共に回収し、また、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする場合には、微生物等を増殖させた後に、培養槽の生物培養液を濃縮して微生物等を回収する。
【0073】
まず、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
通常は、バルブ10を閉、バルブ11を開とし、次のような工程により生物反応を行う。
a)培養槽撹拌機7で撹拌しながら、培養槽2に収納した、培地又は反応原料1及び微生物等を含有する生物培養液3において生物反応を行わせる。
b)上記a)の反応を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、MNB発生装置6aに供給して空気AのMNBを含有させる。
c)この空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、反応生成物を含むろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
e)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0074】
また、培養槽2中の培地又は反応原料及び微生物等の量あるいは濃度を一定に保つために、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整したり、新たに培地又は反応原料1、微生物等を培養槽2に供給する等の操作を適宜行うことができる。
【0075】
つぎに、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
第1段階として、微生物等が適正量に増殖するまでの間は、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様の工程で操作を行う。ろ過液Bを分離・回収することにより、微生物等の生物反応により生じる有機酸等の副生物をろ過液Bと共に回収することができる。この第1段階では、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様に、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整することができる。
【0076】
第2段階として、微生物等が適正量に増殖した後は、培地又は反応原料1の培養槽2への供給を停止すると共に、バルブ10を閉として、ろ過液Bの培養槽2への還流を停止して、次のような工程により微生物等の濃縮・回収を行う。
a)微生物等の増殖を行いながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、MNB発生装置6aに供給して空気AのMNBを含有させる。
b)この空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、ろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
c)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0077】
このように、第2段階では、微生物等の濃度が高くなった生物培養液を、MNB発生装置6a及びろ過器4を介して培養槽2の外に循環させることとなるが、本発明では培養槽2から抜き出した生物培養液3にMNBを含有させるため、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、また、循環経路において微生物等に酸素を十分に供給することができ、ひいては微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0078】
<第3実施形態(図3)>
図3を参照しながら、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の生物反応装置は、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとする手段として、第1手段と第2手段とを併用したものである。第3実施形態も、第1実施形態乃至第2実施形態と同様に、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。
【0079】
まず、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
通常は、バルブ10を閉、バルブ11を開とし、次のような工程により生物反応を行う。
a)培地又は反応原料1をMNB発生装置6bに供給して空気AのMNBを含有させ、この空気AのMNBを含有させた培地又は反応原料Dを培養槽2に供給する。
b)培養槽撹拌機7で撹拌しながら、培養槽2に収納した、培地又は反応原料1及び微生物等を含有する生物培養液3において生物反応を行わせる。
c)上記b)の反応を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、MNB発生装置6aに供給して空気AのMNBを含有させる。
d)この空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、反応生成物を含むろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
e)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0080】
また、培養槽2中の培養液及び微生物等の量あるいは濃度を一定に保つために、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整したり、新たに培地又は反応原料1、微生物等を培養槽2に供給する等の操作を適宜行うことができる。
【0081】
つぎに、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
第1段階として、微生物等が適正量に増殖するまでの間は、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様の工程で操作を行う。ろ過液Bを分離・回収することにより、微生物等の生物反応により生じる有機酸等の副生物をろ過液Bと共に回収することができる。この第1段階では、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様に、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整することができる。
【0082】
第2段階として、微生物等が適正量に増殖した後は、培地又は反応原料1の培養槽2への供給を停止すると共に、バルブ10を閉として、ろ過液Bの培養槽2への還流を停止して、次のような工程により微生物等の濃縮・回収を行う。
a)微生物等の増殖を行いながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、MNB発生装置6aに供給して空気AのMNBを含有させる。
b)この空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、ろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
c)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0083】
このように、第2段階では、微生物等の濃度が高くなった生物培養液を、MNB発生装置6a及びろ過器4を介して培養槽2の外に循環させることとなるが、本発明では培養槽2から抜き出した生物培養液3にMNBを含有させるため、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、また、循環経路において微生物等に酸素を十分に供給することができ、ひいては微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0084】
<第4実施形態(図4)>
図4を参照しながら、本発明の第4実施形態について説明する。
第4実施形態の生物反応装置は、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとする手段として、第1手段に第2手段及び第3手段を併用したものである。
【0085】
第4実施形態も、第1実施形態乃至第3実施形態と同様に、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。
【0086】
まず、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
通常は、バルブ10を閉、バルブ11を開とし、次のような工程により生物反応を行う。
a)培地又は反応原料1をMNB発生装置6bに供給して空気AのMNBを含有させ、この空気AのMNBを含有させた培地又は反応原料Dを培養槽2に供給する。
b)培養槽撹拌機7で撹拌し、MNB発生装置6cで空気AのMNBを含有させた生物培養液Eを培養槽2に供給しながら、培養槽2に収納した、培地又は反応原料1及び微生物等を含有する生物培養液3において生物反応を行わせる。MNB発生装置6cへの生物培養液3の供給は、ポンプ9により培養槽2から生物培養液3を抜き出して行う。
c)上記b)の反応を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、MNB発生装置6aに供給して空気AのMNBを含有させる。
d)この空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、反応生成物を含むろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
e)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0087】
また、培養槽2中の培養液及び微生物等の量あるいは濃度を一定に保つために、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整したり、新たに培地又は反応原料1、微生物等を培養槽2に供給する等の操作を適宜行うことができる。
【0088】
つぎに、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
第1段階として、微生物等が適正量に増殖するまでの間は、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様の工程で操作を行う。ろ過液Bを分離・回収することにより、微生物等の生物反応により生じる有機酸等の副生物をろ過液Bと共に回収することができる。
【0089】
第2段階として、微生物等が適正量に増殖した後は、バルブ10を閉として、ろ過液Bの培養槽2への還流を止め、次のような工程により微生物等の濃縮・回収を行う。
a)増殖を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から生物培養液3を連続して抜き出し、MNB発生装置6aに供給して空気AのMNBを含有させた後、ろ過器4に供給する。
b)ろ過器4において、生物培養液を、ろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
c)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0090】
このように、第2段階では、微生物等の濃度が高い生物培養液を、ろ過器4を介して培養槽2の外に循環させることとなるが、本発明では培養槽2から抜き出した生物培養液3にMNBを含有させるため、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、循環経路において微生物等に酸素を十分に供給することができ、ひいては微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0091】
参考実施形態1図5)>
図5を参照しながら本発明の参考実施形態1について説明する。
参考実施形態1の生物反応装置は、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとする手段として、第2手段を単独で用いたものである。
【0092】
参考実施形態1も、第1実施形態乃至第4実施形態と同様に、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。
【0093】
まず、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
通常は、バルブ10を閉、バルブ11を開とし、次のような工程により生物反応を行う。
a)培地又は反応原料1をMNB発生装置6bに供給して空気AのMNBを含有させ、この空気AのMNBを含有する培地又は反応原料Dを培養槽2に供給する。
b)培養槽撹拌機7で撹拌しながら、培養槽2に収納した、培地又は反応原料1及び微生物等を含有する生物培養液3において生物反応を行わせる。
c)上記b)の反応を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、反応生成物を含むろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
e)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0094】
また、培養槽2中の培養液及び微生物等の量あるいは濃度を一定に保つために、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整したり、新たに培地又は反応原料1、微生物等を培養槽2に供給する等の操作を適宜行うことができる。
【0095】
つぎに、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
第1段階として、微生物等が適正量に増殖するまでの間は、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様の工程で操作を行う。ろ過液Bを分離・回収することにより、微生物等の生物反応により生じる有機酸等の副生物をろ過液Bと共に回収することができる。
【0096】
第2段階として、微生物等が適正量に増殖した後は、バルブ10を閉として、ろ過液Bの培養槽2への還流を止め、次のような工程により微生物等の濃縮・回収を行う。
a)増殖を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から生物培養液3を連続して抜き出し、ろ過器4に供給する。
b)ろ過器4において、生物培養液を、ろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
c)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0097】
このように、第2段階では、微生物等の濃度が高い生物培養液を、ろ過器4を介して培養槽2の外に循環させることとなるが、本発明では培養槽2から抜き出した生物培養液3がMNBを含有しているため、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、循環経路において微生物等に酸素を十分に供給することができ、ひいては微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0098】
参考実施形態2図6)>
図6を参照しながら本発明の参考実施形態2について説明する。
参考実施形態2の生物反応装置は、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとする手段として、第2手段及び第3手段を併用したものである。
【0099】
参考実施形態2も、第1実施形態乃至第実施形態、参考実施形態1と同様に、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。
【0100】
まず、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
通常は、バルブ10を閉、バルブ11を開とし、次のような工程により生物反応を行う。
a)培地又は反応原料1をMNB発生装置6bに供給して空気AのMNBを含有させ、この空気AのMNBを含有する培地又は反応原料Dを培養槽2に供給する。
b)培養槽撹拌機7で撹拌し、MNB発生装置6cで空気AのMNBを含有させた生物培養液Eを培養槽2に供給しながら、培養槽2に収納した、培地又は反応原料1及び微生物等を含有する生物培養液3において生物反応を行わせる。MNB発生装置6cへの生物培養液3の供給は、ポンプ9により培養槽2から生物培養液3を抜き出して行う。
c)上記b)の反応を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出し、空気AのMNBを含有する生物培養液をろ過器4に供給し、反応生成物を含むろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
e)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0101】
また、培養槽2中の培養液及び微生物等の量あるいは濃度を一定に保つために、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整したり、新たに培地又は反応原料1、微生物等を培養槽2に供給する等の操作を適宜行うことができる。
【0102】
つぎに、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
第1段階として、微生物等が適正量に増殖するまでの間は、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様の工程で操作を行う。ろ過液Bを分離・回収することにより、微生物等の生物反応により生じる有機酸等の副生物をろ過液Bと共に回収することができる。
【0103】
第2段階として、微生物等が適正量に増殖した後は、バルブ10を閉として、ろ過液Bの培養槽2への還流を止め、次のような工程により微生物等の濃縮・回収を行う。
a)増殖を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から生物培養液3を連続して抜き出し、ろ過器4に供給する。この際には、MNB発生装置6cにより、培養槽2中の生物培養液3に空気AのMNBを含有させる。
b)ろ過器4において、生物培養液を、ろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
c)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNBを含有する微生物等濃縮液Cを培養槽2に還流する。
【0104】
このように、第2段階では、微生物等の濃度が高い生物培養液を、ろ過器4を介して培養槽2の外に循環させることとなるが、本発明では培養槽2から抜き出した生物培養液3がMNBを含有しているため、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、循環経路において微生物等に酸素を十分に供給することができ、ひいては微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0105】
参考実施形態3図7)>
図7を参照しながら本発明の参考実施形態3について説明する。
参考実施形態3の生物反応装置は、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、MNBを含有するものとする手段として、第4手段を用いたものである。
【0106】
参考実施形態3も、第1実施形態乃至第実施形態、参考実施形態1乃至参考実施形態2と同様に、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。
【0107】
まず、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
通常は、バルブ10を閉、バルブ11を開とし、次のような工程により生物反応を行う。
a)培養槽撹拌機7で撹拌しながら、培養槽2に収納した、培地又は反応原料1及び微生物等を含有する生物培養液3において生物反応を行わせる。
b)上記a)の反応を行わせながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出して、ろ過器4に供給し、反応生成物を含むろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
c)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNB発生装置6dで空気AのMNBを含有させた微生物等濃縮液Fを培養槽2に還流する。
【0108】
また、培養槽2中の培養液及び微生物等の量あるいは濃度を一定に保つために、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整したり、新たに培地又は反応原料1、微生物等を培養槽2に供給する等の操作を適宜行うことができる。
【0109】
つぎに、微生物等の増殖若しくは濃縮を目的とする生物反応を行う場合について説明する。
第1段階として、微生物等が適正量に増殖するまでの間は、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様の工程で操作を行う。ろ過液Bを分離・回収することにより、微生物等の生物反応により生じる有機酸等の副生物をろ過液Bと共に回収することができる。この第1段階では、上記微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応と同様に、バルブ10及びバルブ11の開閉を調整して培養槽2に還流するろ過液Bの量を調整することができる。
【0110】
第2段階として、微生物等が適正量に増殖した後は、培地又は反応原料1の培養槽2への供給を停止すると共に、バルブ10を閉として、ろ過液Bの培養槽2への還流を停止して、次のような工程により微生物等の濃縮・回収を行う。
a)微生物等の増殖を行いながら、ポンプ8を駆動して培養槽2から反応後の生物培養液3を連続して抜き出して、ろ過器4に供給し、ろ過液Bと微生物等濃縮液Cとに分離する。
b)ろ過液Bをろ過液貯槽5に回収すると共に、MNB発生装置6dで空気AのMNBを含有させた微生物等濃縮液Fを培養槽2に還流する。
【0111】
このように、第2段階では、微生物等の濃度が高くなった生物培養液を、ろ過器4及びMNB発生装置6dを介して培養槽2の外に循環させることとなるが、本発明では、ろ過器4おいて分離された微生物等濃縮液CにMNB発生装置6dで空気AのMNBを含有させた微生物等濃縮液Fを培養槽2に還流するため、ろ過膜の目詰まりを抑制でき、また、循環経路において微生物等に酸素を十分に供給することができ、ひいては微生物等が受けるストレス・ダメージを低減することができる。
【0112】
第5実施形態図8)>
図8を参照しながら、本発明の第5実施形態について説明する。
第5実施形態の生物反応装置は、本発明の第2実施形態において、培養槽2に還流するろ過液BにpH調整剤12を添加する手段を設けたものである。pH調整剤12の添加量を調整することにより、培養槽2中の生物培養液3のpHを微生物等に適した範囲に調整することができる。
【0113】
第5実施形態も、第2実施形態と同様に、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。
【0114】
実施形態においては、通常、バルブ10を閉、バルブ11を開とし、生物反応が行われるが、培養槽2中の生物培養液3及び微生物等の量あるいは濃度を一定に保つために、バルブ10を開として、ろ過器4で分離されたろ過液Bの一部又は全部を培養槽2に還流することが行われる。
【0115】
その際、第5実施形態では、次のような工程によりpH調整剤12の添加を行う。
a)バルブ10を閉、バルブ11を開として生物反応が行われている状態から、バルブ10を開として、ろ過器4で分離されたろ過液Bの一部又は全部をpH調整剤混合槽13に供給する。
b)pH調整剤混合槽13中のろ過液Bに、培養槽2中の生物培養液3のpHを微生物等に適した範囲に調整するために必要な量のpH調整剤12(酸、アルカリ等)を添加する。
c)pH調整剤12が添加されたろ過液Bを、培養槽2に還流する。
【0116】
培養槽2中の生物培養液3に直接酸、アルカリ等のpH調整剤を添加した場合には、局所的に酸/アルカリの濃度が高くなるため、微生物等にストレス・ダメージを与えることとなるが、上記のようにpH調整剤の添加を行うことにより、培養槽2中の微生物等に濃度差に伴うストレス・ダメージを与えずに、培養槽2中の生物培養液3のpHを調整することができる。
【0117】
参考実施形態4図9)>
図9を参照しながら、本発明の参考実施形態4について説明する。
参考実施形態4の生物反応装置は、本発明の参考実施形態2において、培養槽2に還流するろ過液BにpH調整剤12を添加する手段を設けたものである。pH調整剤12の添加量を調整することにより、培養槽2中の生物培養液3のpHを微生物等に適した範囲に調整することができる。
【0118】
参考実施形態4も、参考実施形態2と同様に、微生物等による反応生成物の生成を目的とする生物反応(発酵・醸造)、微生物等の増殖若しくは濃縮(培養)を目的とする生物反応のいずれにも用いることができる。
【0119】
参考実施形態4においては、通常、バルブ10を閉、バルブ11を開とし、生物反応が行われるが、培養槽2中の生物培養液3及び微生物等の量あるいは濃度を一定に保つために、バルブ10を開として、ろ過器4で分離されたろ過液Bの一部又は全部を培養槽2に還流することが行われる。
【0120】
その際、参考実施形態4では、次のような工程によりpH調整剤12の添加を行う。
a)バルブ10を閉、バルブ11を開として生物反応が行われている状態から、バルブ10を開として、ろ過器4で分離されたろ過液Bの一部又は全部をpH調整剤混合槽13に供給する。
b)pH調整剤混合槽13中のろ過液Bに、培養槽2中の生物培養液3のpHを微生物等に適した範囲に調整するために必要な量のpH調整剤12(酸、アルカリ等)を添加する。
c)pH調整剤12が添加されたろ過液Bを、培養槽2に還流する。
【0121】
培養槽2中の生物培養液3に直接酸、アルカリ等のpH調整剤を添加した場合には、局所的に酸/アルカリの濃度が高くなるため、微生物等にストレス・ダメージを与えることとなるが、上記のようにpH調整剤の添加を行うことにより、培養槽2中の微生物等に濃度差に伴うストレス・ダメージを与えずに、培養槽2中の生物培養液3のpHを調整することができる。
【0122】
以上に説明したように、本発明の生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法では、MNBを含有させた生物培養液をろ過器でろ過することにより、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減しつつ、培養槽中の生物培養液が含有するMNBの量を高く維持でき、生物培養液のろ過及び循環を適切に行うことができ、これにより、微生物等を用いた生物反応を効率的かつ経済的に行うことができる優れたものである。
【0123】
また、本発明では、生物培養液にMNBを含有させる手段として、第1手段と共に、第2手段乃至第4手段に1つ又は複数の手段を併用することにより、短時間で、培養槽中の生物培養液のMNBの含有量を適正な値とすることができる。
【0124】
また、本発明では、生物培養液に含有させるMNBとして、酸素濃度を高めた空気から形成されたMNBを用いることにより、培養槽から抜き出す生物培養液の量を減少させ、生物培養液が含有するMNBの量を減少させても、MNB状態の、吸収されやすい高濃度の酸素を、培養槽中の微生物等に供給できるため、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減し微生物等の活性を維持することができると共に、生物培養液の循環に要するエネルギー、MNB発生装置の駆動に要するエネルギーを減じることができる。
【0125】
また、本発明では、1)培養槽から生物培養液を抜き出すためのポンプ、2)MNB発生装置からろ過器にMNBを含有させた生物培養液を供給するためのポンプ、及び3)培養槽にろ過液を除いた生物培養液を還流するためのポンプといった微生物等を含有する液体を搬送するポンプとして、微生物等に与えるストレス・ダメージが比較的少ないダイアフラムポンプ、チューブポンプ、スクリューポンプ、ロータリーポンプ等の容積式ポンプを用いることにより、微生物等が受けるストレス・ダメージをより一層低減し微生物等の活性を一層維持することができる。
【0126】
また、本発明では、ろ過液を培養槽に還流する管路に、pH調整剤を添加する手段を備え、培養槽に還流するろ過液に、酸、アルカリ等のpH調整剤を添加することにより、培養槽中の微生物等に濃度差に伴うストレス・ダメージを与えずに、培養槽中の生物培養液のpHを調整することができる。
【0127】
次に、本発明の特徴である、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液にMNBを含有させるとの特徴により発揮される、ろ過膜の目詰まりが抑制できる等の作用効果について実験例・比較実験例を用いて説明するが、本発明はこれら実験例・比較実験例により限定されるものではない。
【0128】
<実験例1〜5及び比較実験例1〜5>
ろ過器として、多数の中空糸膜を束ねて筒状のカートリッジに収納したろ過器(旭化成社製、商品名「マイクローザMF USP−343」)を用い、このろ過器に培養液[微生物等としてコリネ型細菌(コリネバクテリウムグルタミカム)の標準株を濁度(OD660の値):60で含有]を供給し、このろ過器に供給する培養液の圧力及び流量を調整することにより、各中空糸膜の内部と外部との平均圧力差(以下、「膜間差圧」という。)、各中空糸膜の内部を流れる培養液の平均流速(以下、「循環流速」という。)を所定の値に調整して、ろ過器によるろ過速度を測定した。
【0129】
実験例1〜3及び比較実験例1〜3では、膜間差圧を0.1MPaに設定し、循環流速を変化させてろ過速度を測定した。また、実験例4〜5及び比較実験例4〜5では、膜間差圧を0.2MPaに設定し、循環流速を変化させてろ過速度を測定した。
【0130】
ろ過速度は、ろ過開始当初はコリネ型細菌等が中空糸膜の細孔に詰まる作用により徐々に低下していくが、やがて、この詰まる作用と培養液の流れによる詰まりを剥がす作用とが平衡状態となり、ろ過速度が安定する(以下、この状態を「第1安定状態」といい、またこの状態でのろ過速度を「MNB無ろ過速度」という。)。つぎに、この第1安定状態において、ろ過器に供給される培養液に、MNB発生装置(OKエンジニアリング社製、商品名:OKE−25L)を用いMNBを吹き込むと、ろ過速度が徐々に上昇した後、上記2つの作用が再び平衡状態となり、ろ過速度は再び安定する(以下、この状態を「第2安定状態」といい、またこの状態でのろ過速度を「MNB有ろ過速度」という。)。
【0131】
なお、実験例1〜5及び比較実験例1〜5において使用したMNB発生装置はノズル方式のものであり、ろ過器に供給される培養液の流速と、この培養液が含有するMNBの濃度とは正の相関関係を有する。
【0132】
<実験例1>
膜間差圧が0.1Mpa、循環流速が0.19m/sとなるようにろ過器に培養液を供給したところ、MNB有ろ過速度は50.3L/m/hであった。
【0133】
<比較実験例1>
実施例1と同じ膜間差圧及び循環流速でろ過器に培養液を供給したところ、MNB無ろ過速度は27.4L/m/hであった。
【0134】
<実験例2>
膜間差圧が0.1Mpa、循環流速が0.33m/sとなるようにろ過器に培養液を供給したところ、MNB有ろ過速度は59.2L/m/hであった。
【0135】
<比較実験例2>
実施例2と同じ膜間差圧及び循環流速でろ過器に培養液を供給したところ、MNB無ろ過速度は43.0L/m/hであった。
【0136】
<実験例3>
膜間差圧が0.1Mpa、循環流速が0.51m/sとなるようにろ過器に培養液を供給したところ、MNB有ろ過速度は73.6L/m/hであった。
【0137】
<比較実験例3>
実施例3と同じ膜間差圧及び循環流速でろ過器に培養液を供給したところ、MNB無ろ過速度は67.0L/m/hであった。
【0138】
実験例1〜3及び比較実験例1〜3の結果を、表1に整理して示す。
【表1】
【0139】
<実験例4>
膜間差圧が0.2Mpa、循環流速が0.33m/sとなるようにろ過器に培養液を供給したところ、MNB有ろ過速度は79.5L/m/hであった。
【0140】
<比較実験例4>
実施例4と同じ膜間差圧及び循環流速でろ過器に培養液を供給したところ、MNB無ろ過速度は43.6L/m/hであった。
【0141】
<実験例5>
膜間差圧が0.2Mpa、循環流速が0.51m/sとなるようにろ過器に培養液を供給したところ、MNB有ろ過速度は102.8L/m/hであった。
【0142】
<比較実験例5>
実施例5と同じ膜間差圧及び循環流速でろ過器に培養液を供給したところ、MNB無ろ過速度は77.7L/m/hであった。
【0143】
実験例4〜5及び比較実験例4〜5の結果を、表2に整理して示す。
【表2】
【0144】
実験例1〜5及び比較実験例1〜5の結果から明らかなように、ろ過器に供給する培養液にMNBを含有させることにより、中空糸膜の目詰まりが抑制でき、ろ過速度を高く維持できることがわかる。
【0145】
また、表3は、実験例1〜3及び比較実験例1〜3の結果を、循環流速(m/s)を横軸、ろ過速度(L/m/h)を縦軸としてプロットしたものである。上側の折れ線(実験例1→2→3)及び下側の折れ線(比較実験例1→2→3)で示されるように、ろ過器に供給される培養液にMNBを含有させることにより発揮されるろ過膜の目詰まり抑制効果は、循環流速が低い(微生物等に与えるストレス・ダメージが少ない)ほど、顕著に発現することがわかる。
【0146】
【表3】
【符号の説明】
【0147】
1 培地又は反応原料
2 培養槽
3 生物培養液
4 ろ過器
5 ろ過液貯槽
6a〜6d MNB発生装置
7 培養槽撹拌機
8、9 ポンプ
10、11 バルブ
12 pH調整剤
13 pH調整剤混合槽
A 空気
B ろ過液
C 微生物等濃縮液
D 空気AのMNBを含有させた培地又は反応原料
E 空気AのMNBを含有させた生物培養液
F 空気AのMNBを含有させた微生物等濃縮液
101 発酵反応槽
102 分離膜エレメント
111 発酵培養液循環ポンプ
112 膜分離槽
207 培養槽
210 菌体ろ過器
215 MNB発生槽
216 MNB発生機
304 原水供給ライン
306 水供給ポンプ
311 膜モジュール
317 原水及び/又は濃縮循環水ライン
【要約】
本発明の生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法では、マイクロナノバブルを含有する生物培養液をろ過器によりろ過液と微生物等濃縮液とに分離し、ろ過液を回収すると共に、微生物等濃縮液を培養槽に還流することすることにより、微生物等が受けるストレス・ダメージを低減しつつ、培養槽中の生物培養液が含有するマイクロナノバブルの量を高く維持でき、生物培養液のろ過及び循環を適切に行い、これにより、微生物等を用いた生物反応を効率的かつ経済的に行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12