(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の解剖学的目標が、前記第1の解剖学的目標と前記第2の解剖学的目標との間に延在した前記線に平行な線が通過する点であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
f.前記人工装具要素用の骨切除のための平面が前記第1〜第4の解剖学的目標の少なくとも1つに対し相対的に設定されるように、前記人工装具要素の前記輪郭の配置を終了するステップと、
g.前記切断案内の切断表面が骨切断を少なくとも1つの前記骨切断用平面に沿って構成されるように、前記切断案内をカスタマイズするステップと
をさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
肢の第1の相対的角度状態において前記第1〜第4の解剖学的目標の少なくとも1つが選択され、前記肢の第2の相対的角度状態において前記第1〜第4の解剖学的目標の他の少なくとも1つが選択され、前記第1および前記第2の相対的角度状態は互いに異なっていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
前頭面内のヒト肢の機械的軸は、大腿骨頭の中心から足関節の中心へ引かれた線として定義される。前頭面内では、機械的軸は一般に前頭面内の膝関節中心のちょうど内側を通過する。この線は、大腿骨頭内の球形および距骨下複関節内の正常な生体構造を前提とする。矢状面内では、正常な機械的軸は重力中心から足関節の中心へ走る。したがって、正常な機械的軸は、大腿骨頭のすぐ後(大腿頚部が一般に約15°前傾しているため)かつ膝の真正面を走る。
【0004】
図1は不全な下肢および正常な下肢の機械的軸を示している。
図1aは不全な下肢を説明しており、大腿骨の機械的軸(14)と脛骨の機械的軸(16)との間に全体的な不整(12)が見える。当然、肢の機械的軸(18)は膝関節の中心(20)を通過しない。
図1bは、正常な下肢を説明しており、大腿骨の機械的軸(14)および頸骨(16)の機械的軸(16)は一般に整列し、膝関節の中心(20)を通過する。横軸(22)は大腿骨接点遠位と整列し、一般に大腿骨および頸骨の機械的軸(14、16)に垂直である。機械的軸は一般に大腿骨の機械的軸(14)および頸骨の機械的軸(16)と整列する。
【0005】
一般に、標準の膝用人工装具を集団内の広範なヒトに適合するよう設計することが慣例であった。しかし、全ての患者がこの部分集団に入るとは限らず、全ての患者が汎用または標準のインプラントで同じ性能を実現できるとも限らない。例えば、患者に重度の内反または外反変形、矮性顆、過度な大腿骨湾曲、または骨腫瘍が存在する場合がある。他の例では、患者が異常に小さいまたは大きい骨構造を有する場合がある。これらの状況では、外科医にとって専用インプラントが望ましい場合がある。しかし、専用インプラントを製造する現行方法は一般に高価であり、外科医からの特別な情報を必要とし、時間が掛かる行為である。
【0006】
医療装置、具体的には大腿骨切断ブロックが、人工膝関節全置換術(TKA)における大腿骨遠位部の処置に用いられてきた。かかる切断ブロックは一般に、少なくとも最初の切除が行われた後に大腿骨に取り付けられ、前記少なくとも最初の切除は、髄内ロッドまたは髄外ロッドを基準にしかつそれから伸びる調整可能な器具によって促進される。この器具は、患者間で汎用的に使用できるように調整式に作られている。調整式器具には多くの利点がある一方、多くの欠点もある。欠点のいくつかには、間接費が高い、器具一式およびコンテナが大きい、不要または余剰な器具がある、試行の数および異なる寸法の数が多い、手術時間が増える、手術間の滅菌時間が増える、および委託販売に多くの資産を確保する装具製造メーカの費用リスクが増えるなどが含まれる。
【0007】
近年、手術工程を円滑にし、標準切除器具の前記欠点を回避する試みが行われてきた。かかる方法は、患者の膝関節の部分CT/MRI走査から得られる解剖学的情報を用いて形成された専用切断ブロックを採用している。OtisMed Corp.およびConforMlS, Incのような企業がかかる方法を利用している。しかし、この目的のためには、従来の専用切断ブロックおよびそれに関連する大腿骨遠位切除の方法では、少なくとも1つの骨切除が確実に患者の正しい3次元の機械的軸に垂直に行われないと考えられる。それどころか、従来技術は、膝関節の部分的走査で見える小さな解剖学的軸部から固定角度を外挿することによって機械的軸を近似すると考えられる。
【0008】
例えば、患者の部分的膝CT走査またはX線が術前の解剖学的軸を7°またはその付近であると示している場合、従来技術の専用切断ブロックは一般に、前記解剖学的軸から関節中心に対し相対的に特定角度すなわち数度だけ内側へずれた軸に垂直な大腿骨遠位切除を提供するよう形成される。この特定角度すなわち数度は、大きな集団の解剖学的軸と機械的軸との間の平均偏差を反映するよう選択されるべきであると考えられる。前記平均偏差は一般に、医療分野では5〜6°と受け入れられてきた。したがって従来技術のこの方法を用いると、上記例における機械的軸は、垂直から1°すなわち約「7°-6°」に近似される。解剖学的軸と機械的軸との間の関係は患者間で大きく異なるため、本方法の実行は大腿骨切除を正しい機械的軸に対し垂直に正しく配置しないと考えられる。さらに、脛骨遠位または大腿骨遠位に何らかの看過された変形が存在する場合、かかる仮定は重篤な影響を伴う可能性がある。最後に、正しい機械的軸は3次元で定義されるため、切除平面を矢状面内の前後斜面に合わせず単純に冠状面内の解剖学的軸から所定の度数内側に回転させることは、前記切除平面を正しい3次元の機械的軸に垂直に配置しない可能性がある。
【0009】
一般に大多数のヒトでは、下肢の機械的軸は大腿骨の解剖学的軸から内側に平均5°〜6°であり、膝における大腿骨と頸骨の機械的軸の交点は、平均1.3°の内反(±2°)の範囲で、関節中心のすぐ内側を交差すると受け入れられている一方、これらの見解は事実として信頼できず、つまり適切な切除を決めるときどのような種類のアルゴリズムでも使用することができない。実際、大腿骨の解剖学的軸と機械的軸との間のかかる関係は2〜11°におよぶ可能性があることが調査によって測定されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】冠状面内の解剖学的目標のいくつかの例を示している膝関節の前方正面図である。
【
図3】矢状面内の解剖学的目標のいくつかの例を示している膝関節の側面図である。
【
図4】横断平面内の解剖学的目標のいくつかの例を示している大腿骨の遠位端図である。
【
図5】横断平面内の解剖学的目標のいくつかの例を示している脛骨の近位端斜視図である。
【
図6a】少なくとも第1の解剖学的目標の一例を示している大腿骨遠位の内側図である。
【
図6b】少なくとも第2の解剖学的目標の一例を示している大腿骨遠位の側面図である。
【
図7a】第1と第2の解剖学的目標の間の第1の空間的関係を示している大腿骨遠位の内側図である。
【
図8a】第2の空間的関係を規定する少なくとも第3の解剖学的目標をさらに示す大腿骨の遠位端図である。
【
図9a】少なくとも第4の解剖学的目標をさらに示す大腿骨遠位の前方正面図である。
【
図10a】その上に重畳された輪郭を示す大腿骨遠位の前方正面図である。
【
図11】
図10aの重畳された輪郭に沿って切除され、インプラントによって置換された大腿骨遠位の内側図である。
【
図12】非浸襲的手段を用いて機械的軸を決定する第1の方法を示している図である。
【
図13】非浸襲的手段を用いて機械的軸を決定する第2の方法を示している図である。
【
図14】非浸襲的手段を用いて機械的軸を決定する第3の方法を示している図である。
【
図15】遠位切除深さの代替実施形態を示す図である。
【
図16】非浸襲的手段を用いて機械的軸を決定する第5の方法を示している図である。
【
図17】非浸襲的手段を用いて機械的軸を決定する第6の方法を示している図である。
【
図18a】いくつかの実施形態による専用手術装置をその上に有する脛骨の近位端図である。
【
図19a】他の実施形態による専用手術装置をその上に有する大腿骨の遠位正面斜視図である。
【
図20】いくつかの実施形態による専用手術装置をそれぞれその上に有する大腿骨および脛骨の前方正面図である。
【
図21a】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図21b】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図21c】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図21d】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図21e】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図21f】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図21g】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図21h】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図21i】専用手術装置によって実現可能な骨切除を示している図である。
【
図22】
図21dに示した骨切除を行うよう構成された専用手術装置の一例を示している図である。
【
図23】
図21dに示した骨切除を行うよう構成された専用手術装置の別の例を示している図である。
【
図24】患者の肢の近似された正しい3次元の機械的軸に垂直に骨切除を行うよう構成された専用手術装置を提供する方法ステップを示している図である。
【
図25】患者の肢の近似された正しい3次元の機械的軸に垂直に骨切除を行うよう構成された専用手術装置を提供する方法ステップを示している図である。
【
図26】患者の肢の近似された正しい3次元の機械的軸に垂直に骨切除を行うよう構成された専用手術装置を提供する方法ステップを示している図である。
【
図27】肢上の任意の点または肢の解剖学的目標で用いることができる空間基準座標系を示している図である。
【
図28a】解剖学的特徴間の主要な関係を示している正常な下肢の正面図である。
【
図28b】解剖学的特徴間の主要な関係を示している正常な下肢の矢状面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
機械的軸が膝関節の中心を通過する場合、膝関節内の応力は一般に均等でよくバランスが取れている。しかし多くの膝関節疾患では、機械的軸は乱れ、関節の中心を通過しない。かかる外乱は膝関節部を過負荷にし、ついには健康な組織および軟骨さえ損傷する結果となる。例えば、1つの顆が劣化を経験すると、膝蓋骨が大腿骨上の膝蓋溝内を対称に辿らないことがある。これがQ角に悪影響をおよぼし、膝前部の痛みを引き起こすことがある。患者は、膝痛を低減するために彼らの歩行パターンを修正または調整することによって不整列の機械的軸を補正することができる。しかし、そうすることは、腰、足関節、または背中の痛みなど、他の長期的問題に繋がる可能性がある。
【0024】
したがって、機械的軸が修復され新しい膝関節の中心を通過するように、全置換または部分置換手術の間に膝関節の機械的軸を修復することが、通常外科医の仕事である。これは一般に膝関節の「リアライニング(realigning)」と呼ばれる。正しくリアライニングされた位置では、膝蓋骨がその大腿骨溝内を滑らかかつ対称に滑り、軟性組織のバランスが取れて均等に機能し、各顆の支持表面の負荷が均一になり、患者は痛みの少ない健康かつ活動的な生活に戻ることができる。
【0025】
しかし膝人工装具が不正確に装着された場合、その性能は大きく低下することがある。膝人工装具の不正確な装着は、大きな摩耗、違和感、および膝痛の可能性の他、重篤かつ最悪な結果を招くことがある。例えば、人工膝関節の大腿骨要素が患者の正しい機械的軸と正しく整列しないように装着された場合、過度の剪断力が骨表面と前記人工膝関節との間のインタフェースに存在することがある。この剪断力は時間と共に接着結合を弱め、人工装具の脱落または位置変化を引き起こし、インプラント要素の微小構造を疲労させ、関節の運動学および生体力学を悪化させ、軟性組織要素上の張力を増加させ、膝蓋骨など他の膝要素上の剪断負荷を増やし、および/または関節の総合性能を低下させる可能性がある。一般に、機械的軸と不正に整列している人工膝関節全体またはその一部は過負荷であり、膝蓋骨(またはその人工装具要素)の位置ずれの可能性があり、最終的には修正する必要がある。
【0026】
現在外科医が機械的軸を決定するために使用する方法は、一般に近似法である。ドロップロッド(drop rod)を用いて機械的軸を大まかに決定することが可能であり、または冠状面内の部分的膝X線によって目視的に近似することができる。外科医は大腿骨頭の感触および膝関節に対して足関節を調査することによって機械的軸を近似することができる。下肢全体のX線を使用する場合、外科医ができることは単一平面(すなわち2次元)内の機械的軸を推定することだけである。コンピュータ支援手術(CAS)法は患者の肢の機械的軸の決定を正確に支援するが、この方法は高価で最新技術を必要とし一般に手術時間が長くなるため、多くの外科医はこの方法を使用しない。
【0027】
好ましい実施形態の以下の説明は単に例示的なものであり、本発明、その応用、または使用をなんら限定しない。
【0028】
本方法は1つには専用手術装置を提供するための方法を提供する。専用手術装置は一般に、患者固有の解剖学的情報を用いて設計開発される。専用手術装置は、例えば関節の全体または一部の置換術式に利用される切断案内器具である。前記切断案内器具は再使用可能でよいが、経済的目的のため、使い捨てで安価なプラスチックまたは他の適切な生体適合材料で作られるのが好ましい。術前非浸襲的手段(例えばコンピュータ制御の断層撮影法)を用いて術前に患者の生体構造を適切に寸法測定および解析するので、外科手術中の不必要な試行錯誤的ステップを排除することができる。さらなる利点は、感染症への暴露とリスクの低さを含む。さらに術前の計画により、事前に寸法が決定された標準または専用インプラントを前記切断案内器具と一まとめにすることが可能になる。
【0029】
専用手術装置は、患者の肢の正しい3次元の機械的軸に垂直な少なくとも1つの骨切除を容易にするよう構成されるのが好ましい。
【0030】
専用手術装置は人工膝関節全置換術(TKA)での使用に特に良く適しているが、その実用性は下肢および/またはその先端のみに限定されない。それどころか、本方法は上肢およびその先端(例えば肘、肩、手首、および指)への使用にも同様に適するであろう。
【0031】
図1aは不揃いの機械的軸(18)を有する下肢(10)を示している。大腿骨の機械的軸(14)は頸骨の機械的軸(16)に変位角(12)でつながっている。下肢の機械的軸(18)は膝関節(20)の中心を通過しないため、大きな応力が軟性組織ならびに関節(20)の支持面に存在する。具体的には、過度の横剪断応力が
図1aに示した構成の中の関節要素上に作用する。
【0032】
図1bは、適正に整列した機械的軸を有する下肢(10)を示している。大腿骨の機械的軸(14)は頸骨の機械的軸(16)にわずかの変位角で、または変位角無しでつながる。下肢(10)の機械的軸は膝関節(20)の中心を通過するため、関節(20)内の軟性組織および支持面の応力は均一でバランスが取れている。
【0033】
図2は、冠状面内の解剖学的目標のいくつかの例を示した膝関節の前方正面図である。膝関節は大腿骨(30)および脛骨(40)を含む。大腿骨(30)は、上前部(31a)、下前部(31b)、外側上顆(32a)、内側上顆(32b)、上顆間軸(39a)、溝底(34)、外側顆遠位(36a)、内側顆遠位(36b)、外側顆質量中心(38a)、内側顆質量中心(38b)、および内外顆遠位軸(39b)など、多くの異なる解剖学的目標を含むがこれらに限定されない。脛骨(40)は、頸骨粗面(46)、外側溝底(42a)、内側溝底(42b)、および顆間隆起尖(44)など、多くの異なる解剖学的目標を含むがこれらに限定されない。
【0034】
図3は、矢状面内の解剖学的目標のいくつかの例を示した膝関節の側面図である。大腿骨(30)上に示すのは多くの異なる解剖学的目標であり、上前部(31a)、下前部(31b)、外側上顆(32a)、外側顆遠位(36a)、外側顆質量中心(38a)、後外側円弧中心(33a)、および後外側顆(35a)を含むがこれらに限定されない。脛骨(40)上に示すのは多くの異なる解剖学的目標であり、頸骨粗面(46)、前頸骨プラトー(48)、外側溝底(42a)、後頸骨プラトー(45)、および顆間隆起尖(44)を含むがこれらに限定されない。
【0035】
図4は、横断平面内の解剖学的目標のいくつかの例を示した大腿骨の遠位端図である。大腿骨(30)上に示すのは多くの異なる解剖学的目標であり、上前部(31a)、下前部(31b)、ホワイトサイズ(Whitesides)線(39d)、外側上顆(32a)、内側上顆(32b)、上顆間軸(39a)、溝底(34)、外側顆遠位(36a)、内側顆遠位(36b)、顆遠位軸(39b)、外側顆質量中心(38a)、内側顆質量中心(38b)、後外側円弧中心(33a)、後内側円弧中心(33b)、後円弧中心軸(39c)、後外側顆(35a)、後内側顆(35b)、および内外顆遠位軸(39b)を含むがこれらに限定されない。
【0036】
図5は、横断平面内の解剖学的目標のいくつかの例を示した脛骨および腓骨の近位端斜視図である。脛骨(40)上に示すのは多くの異なる解剖学的目標であり、頸骨粗面(46)、前頸骨プラトー(48)、顆間隆起尖(44)、頸骨A-P軸(49b)、外側溝底(42a)、内側溝底(42b)、後外側頸骨プラトー(45)、頸骨M-L軸(49a)、および頸骨粗面(46)を前頸骨プラトー(48)と連結する軸(49c)を含むがこれらに限定されない。腓骨(50)上に示されているのは腓骨頭稜(52)である。
【0037】
図2〜5に示され且つ本明細書で議論する解剖学的目標は、例示的なものであり、解剖学的目標の画成をなんら限定しないことを理解すべきである。むしろ、解剖学的目標の用語は本明細書では肢内または肢上の容易に特定可能な特徴として画成される。例えば、肢は腕または脚でよい。例えば、解剖学的目標は尺骨または上腕骨の目立つ部分(例えば上腕骨頭重心)を含むことができる。他の例では、解剖学的目標は、大腿骨頭重心または内外果間の距骨最頂部を含むことができる。
【0038】
他の好ましい実施形態では、患者の肢に対応する解剖学的情報が術前に非浸襲的手段(100)を用いて集められる。
図12に示すように、かかる手段は例えば放射線撮像、コンピュータ制御断層撮影法、MRI走査、CT/CAT走査、X線、造影MRI、超音波手段、および/または他の従来手段を含むことができる。前記手段によって集められた患者固有の解剖学的情報は前処理されて3次元CADモデル形式に変換され、または変換されない形態のまま使用されて患者の肢内の注目する主要解剖学的目標(110、112)を確認することができる。好ましい実施形態では、解剖学的データ(100)を用いて、特定患者の肢の正しい3次元の機械的軸(114)を、前記患者の専用手術装置を設計する前に決定する。最初に患者の肢の近位部(110)が確認される。患者の脚の正しい3次元の機械的軸を決定する場合、例えば近位部(110)は
図12に示した大腿骨頭重心でよい。2番目に、患者の肢のさらに遠位部(112)が決定される。例えば、前記さらに遠位部(112)は距骨最頂部、測定された足関節中心、または内外果を連結する軸上にあるいくつかの点でよい。それらの代わりに、前記さらに遠位部(112)は、
図12に示したように顆間溝/滑車溝でよい。前記近位部(110)および遠位部(112)のそれぞれは画成された3次元空間座標を有すること、および各部分(110、112)が特定される順序は特に重要ではないことに注意すべきである。3番目に、患者の正しい3次元の機械的軸(114)が、共通座標系内で患者の肢の前記近位部(110)と前記遠位部(112)との間に仮想線を引き延長することによって決定される。最後に、専用手術装置が提供され、前記専用手術装置は、切断ツールを前記正しい3次元の機械的軸(114)に対し何らかの方法で垂直に案内するよう有利に構成されている。簡略化のため、前記正しい3次元の機械的軸(114)を3軸の1つ(例えばY軸)として使用する新しい座標系内で、専用手術装置の設計を行うことができる。
【0039】
あるいは
図12に示すように肢全体を走査することもでき、その場合、近位部(110)と遠位部(112)との間の肢全体の走査の軸方向分解能は、それぞれ近位部(110)および遠位部(112)の近傍の領域(120、140)において、近位部(110)および遠位部(112)の注目点から離れた肢部(130)より高い。肢軸に沿った走査の分解能の変化は瞬時、漸次的、または段階的に機能してよい。そのようにして、より数の少ない中央の走査(130)がエネルギ効率の高い手段を提供して近位部(110)および遠位部(112)を互いに相対的に一層精度良く位置決めすると同時に、患者を放射線および過度なストレスに長時間曝すことなしに解剖学的軸に関するいくつかの情報を得る。
【0040】
図13に示すように経済的目的のため、
図12に示した肢全体の走査(100)の代わりに、患者の肢の1つまたは複数の部分的走査(100a、100b)を利用することができる。患者の肢のそのような部分的走査(100a、100b)を用いるとき、患者の肢に対する相対的な各走査の正しい位置に十分注意して、機械的軸(114)を推定する前に走査(100a、100b)が全ての方向で確実に正しく相隔たるようにすることができる。上記とほぼ同じ方法で、肢の近位部(110)および遠位部(112)が決定される。近位部(110)および遠位部(112)のそれぞれは独自の3次元空間座標を有し、CTデータによって得られた座標系上の関係内で相隔てられている。例えば、前記1つまたは複数の部分的走査(100a、100b)の間の正確な距離(120)を知って、肢の正しい3次元の機械的軸(114)を正確に決定することが必要な場合がある。好ましくは、部分的走査(100a、100b)は連続的または同時に同じ装置かつ共通座標系上で実行されるため、近位部(110)と遠位部(112)およびそれらに関連した走査(100a、100b)の相対的空間位置を決定するステップを困難無く容易に達成できる。第3および第4の部分的走査(図示せず)を近位部(110)と遠位部(112)との間の所定の点で間欠的に行って変形を確認することができ、および/または空間内の正しい3次元の機械的軸ならびに解剖学的軸のさらに精度の良い位置を決めることができる。
【0041】
例えば
図14に示すように、肢中央部(216)ならびに近位部(210)および遠位部(212)で、中央部の部分的走査(200c)を行うことができる。いくつかの実施形態では、近位部(210)は大腿骨頭の重心でよく、遠位部(212)は距骨近傍の脛骨遠位上の果中央部でよい。近位走査(200a)と遠位走査(200b)との間の距離(220)および/または相対的空間位置を決定した後、近位部(210)と遠位部(212)との間に仮想線を引くことによって空間内に肢(214)の正しい3次元の機械的軸を決定することができる。肢中央部(216)で行った部分的走査(200c)を用いて、専用手術装置を提供する前に空間内の機械的軸(214)を微調整することができ、および/または専用手術装置内にどのような調整を組み込む必要があるかを知るための基準点とすることができる。また中央部(216)を用いて、機械的軸(214)が関節の中心を横切るかどうかを調べることもできる。
【0042】
上記方法に影響する従来技術の1つの問題は、患者が放射線撮像中に動く可能性があることである。MRIまたはCT走査の時間が45分またはそれ以上にもおよぶことがあるため、これは特にCT走査およびMRI走査にも共通の問題である。患者が撮像中に少しでも動くと、走査内に不自然な結果が現れ、その走査が使用不能になることがある。さらに、患者が走査中に動くと、解剖学的目標の相対的位置が障害を受ける可能性がある。この問題は保健医療組織の費用を増大させ、および/または結果的に患者を誤診することがある。
【0043】
したがって、いくつかの実施形態によれば、患者の生体構造のデジタル画像を得るステップの前またはその途中に患者の肢を固定するまたは正しい位置に向けることが望ましい。またいくつかの例では、関節(例えば膝関節)の正確な位置および/または向きを残りの肢に対し相対的に決定して、骨切除が患者の肢の正しい3次元の機械的軸に垂直になるように骨切除の場所を正確に決定することも望ましい。そうするとき、望ましい生体内装填条件が実現されるようにインプラントの理想的配置が決定される。固定は、以下に示している任意の1つまたは複数の方法で実現することができる。
【0044】
いくつかの例では、放射線撮像、磁気共鳴撮像、またはコンピュータ制御断層撮影法(CT)を実施中に、ジグを用いて患者の肢を固定することができる。走査テーブル上に配置された線、稜、または他の特徴を含む「テーブルテンプレート(table template)」を単独でまたは他の方法と併用して、走査中に患者の肢を特定方向に保持することができる。MR画像のどのような傾斜も患者の公称からのずれによるものであるように、撮像機器を前記テーブルテンプレートに整列および配向することができる。
【0045】
いくつかの実施形態は、脚固定具または外側固定枠を備える少なくとも1つのジグを組み込むことができる。ジグは腰、骨盤、膝、足、または足関節の他、肩、肘、手首、および手関節に汎用的に構成することができ、または疾患がある肢の特定部位専用でもよい。ジグは、患者の肢を屈曲および伸展の多数のリラックス状態に保持するように構成することができ、または患者の肢を正しいまたは他の整列および向きに強制してもよい。ジグは基本的に、確実に走査中に動かないようにする。しかしジグの大きな目的は肢を固定することであるが、例えば必要な肢情報が直接画像化できない場合、ジグは患者固有の重要な肢情報(例えば、正しい3次元の機械的軸)を伝える手段として有利に役目を果たすことができる。
【0046】
従来の3D撮像のもう1つの問題は、薄いまたは劣化した軟骨を有する関節間の骨の融合である。いくつかの例では、関節骨間のX線写真で透明の軟骨が摩耗し、そのためX線写真では関節面がその間に隙間が無いように1つに見える。したがって、いくつかの実施形態によるジグは、クランプ、バイス、ウォームネジ、ピストンなど関節引き離し用の手段を採用して、関節骨を撮像前に所定の量だけ離すことができる。関節骨を引き離すことによって、関節面が一意的に結像し、表示がより鮮明かつ正確になる。さらに、患者の肢の正しい3次元の機械的軸のより良い決定が可能になる。
【0047】
経皮的介入は必要とすべきではないが、いくつかの実施形態によるジグは、患者の肢の部分を把持および配向する経皮的手段および/または牽引用の経皮的手段を備えることができる。より好ましくは、浸襲性の低い外部接触手段を代わりに採用することができ、前記浸襲性の低い外部接触手段は、外皮、筋肉、骨、靱帯、および/または軟性組織に接触して配置することができる肌触りが柔らかな点を含む。その後、穏やかな圧力を前記肌触りが柔らかな点に加えて、デジタル走査の前および/またはその間、肢の複数の自由度をしっかり支えおよび固定することができる。X線写真で透明なまたは透明な詰め物を有利に採用することができる。ジグまたは支持具の材質は一般に、撮像を邪魔せずベッド材料と本質的に同類であるようなものである。他に適した材料が予期されるが、プラスチック材料が一般に好ましい。
【0048】
小さな標識をジグに組み込むことができ、そのような方法で提供されて前記画像標識によって患者の正しい3次元の機械的軸を示す。かかる標識を、前記経皮的ピン、前記外部接触手段、または患者の肢の周りに配置されたバンドなど他の取付け装置部を含むがこれらに限定されないジグ上またはその中に配置することができる。あるいは、ジグの既知の位置の1つまたは複数の基準標識による三角測量によって、空間内に標識を重畳することができる。例えば、患者の腰中心の空間的位置が容易に空間内で決定される方法で、ジグを患者に合わせて調節することができる。本方法によりデジタル走査を実施する技術者は、レーザ線、張り出しアセンブリ、または目視検査を利用して、ジグを腰、膝中心、および足関節中心に適切に整列させることができる。撮像されたときに、これらの標識が患者固有の1つまたは複数の正しい3次元の肢軸を画成するように、これらの標識を構成することができる。前記1つまたは複数の患者固有の肢軸は、任意の1つまたは複数の大腿骨の機械的軸、頸骨の機械的軸、脚の機械的軸、腕の機械的軸、上腕の機械的軸、および/または尺骨の機械的軸として画成することができるがこれらに限定されない。
【0049】
いくつかの実施形態によるジグは、患者の肢の均質な瞬間成形によって組み立てることができる(例えば、熱成形、金型成形、従来の鋳物材料、または他の方法)。あるいは、他の実施形態によるジグの製作は1つまたは複数の部片を含む構造体を含むことができる。ジグの構成要素の材料には非常に多くの種類があり、求められる固定の程度または望ましい配向によって選択可能である。程度の異なる硬さを用いて、患者の快適さを選択的に最適化すると共に前記患者の肢の理想的な配向を実現することができる。
【0050】
好ましい実施形態では、インプラント上の過度な横剪断力を避けるために、肢の少なくとも1つの骨切除を、正しい3次元の機械的軸に垂直に配置することが望ましい。言い換えれば、インプラントの少なくとも1つの骨インタフェース部が正しい3次元の機械的軸に垂直であるように、インプラントを配置するのが望ましいが、その理由は、患者の肢に加えられた負荷の全てまたは大部分が、インプラントを通って均等かつ一様に伝わり、それによって、接着剤割れおよび最終的にインプラントの緩みを引き起こす可能性がある横剪断を確実に防ぐからである。インプラントの緩みは痛みの増加、性能低下、軟性組織の衝突に繋がる可能性があり、最終的には突発的障害および浸襲的修正治療に繋がる可能性がある。
【0051】
しかし、上記の非浸襲的手段(100、100a、100b、100c、120、130、140)を用いて正しい3次元の機械的軸を決定することは経済的に常に可能であるとは限らない。その代わりに、単一の部分的走査のみを用いて患者の正しい3次元の機械的軸を近似する代替方法を使用することが必要な場合があり、前記方法は上記従来技術の方法を改良している。
図6a〜11は、かかる実施形態を示している。
図6a〜11は、いくつかの実施形態により専用手術装置を提供するときに用いられる種々のステップのいくつかを示す。具体的には
図6a〜11は、脚全体の走査ができないまたは現実的でない場合の人工膝関節全置換術に使用する実施形態を示している。
【0052】
図6aおよび6bは専用手術装置を提供する第1のステップを説明し、前記第1のステップは少なくとも第1および第2の解剖学的目標を確認するステップを含む。
図6aに示すように、大腿骨遠位(30)の内側上顆の目立つ部分を確認することによって第1の解剖学的目標(32b)を選択することができる。
図6bに示すように、大腿骨遠位(30)の外側上顆の目立つ部分を確認することによって第2の解剖学的目標(32a)を選択することができる。
【0053】
図7aおよび7bは、専用手術装置を提供する第2のステップを説明し、前記第2のステップは少なくとも第1の解剖学的目標(32b)および第2の解剖学的目標(32a)から第1の空間的関係(39a)を定めるステップを含む。具体的には、
図7aおよび7bは、第1の解剖学的目標(32b)と第2の解剖学的目標(32a)を連結する線を含む第1の空間的関係(39a)を示している。図示した線(39a)は、例えば大腿骨(30)の上顆間軸または点、線、平面など他の任意の空間的関係でよい。
【0054】
図8a〜8cは専用手術装置を提供する第3のステップを説明し、前記第3のステップは少なくとも第3の解剖学的目標(34)を確認して、第2の空間的関係(34a)を定めるステップを含む。具体的には、
図8a〜8cは、第3の解剖学的目標(34)を通過し、前記第1の空間的関係(39a)と平行な線を含む第2の空間的関係(34a)示している。
図8a〜8cに示すように、第3の解剖学的目標(34)は例えば大腿骨(30)の顆間溝/滑車溝でよい。
【0055】
ここで
図9aおよび9bを参照すると、専用手術装置を提供する第4のステップが説明されており、前記第4のステップは、患者の肢上に少なくとも第4の解剖学的目標(31a)を確認するステップを含む。第4の解剖学的目標(31a)は
図9aおよび9bに示すように、例えば大腿骨遠位(30)の最前部でよく、これにより人工膝関節の大腿骨要素用の前方平面切除を行うときに大腿骨を切欠いてしまうことがない(例えば、前部皮質)。
【0056】
図10aおよび10bを参照すると、専用手術装置を提供する第5のステップが説明されており、前記第5のステップは、前記肢の輪郭(60)を1つの自由度(62)を除く全ての自由度内で位置決めするステップを含む。人工膝関節全置換術の場合、前記輪郭(60)は大腿骨遠位(30)に対する箱形切断輪郭でよい。箱形切断輪郭(60)は、例えば前方切断(61)、前方面取り切断(63)、遠位切断(65)、後方面取り切断(67)、および後方切断(69)を含むことができる。輪郭(60)の各切断間の相対角度は、特定患者の最適な骨温存および/または求められる性能に応じて、異なっても、標準でも、一般的でも、または専用でもよい。あるいは、輪郭(60)は、輪郭(60)の少なくとも1つの部分が第1の空間的関係(39a)に平行である限り、丸い切断を含んでもよい。輪郭(60)は以下の自由度、すなわち内反/外反、回内/回外、A/P、M/L、およびSup./Inf.内で固定されるのが好ましい。輪郭(60)は少なくとも残りの1つの自由度の中で動くことができるのが好ましい(例えば、屈曲角度回転(62))。次に輪郭(60)は、前記輪郭(60)の一部が第4の解剖学的目標(31a)を通過するよう、前記最後の自由度内で固定される。あるいは輪郭(60)の遠位切断部(65)を上下軸内で移動して、骨を必要なだけ除去または温存してもよい。残りの自由度は、屈曲/伸展角内の回転(62)以外の1つでよいことに注意すべきである。むしろ、残りの自由度は上記自由度の任意の1つを含むことができる。最後に専用手術装置が提供され、前記専用手術装置は輪郭(60)の少なくとも一部に沿って切断ツールを案内するよう構成されている。
【0057】
上記アルゴリズムに提供された方法ステップに従うことによって、肢の正しい3次元の機械的軸に合わせたインプラントの位置決めがより一層やり易いと考えられる。
【0058】
図11に示すように、関節に対する自然な運動学、生体力学、および動力学を回復するために、インプラントが切除箇所に取り付けられる。
図11に示すのは、切除された大腿骨遠位(30)に取り付けられた人工膝関節の大腿骨要素(70)である。大腿骨(30)と大腿骨要素(70)との間のインタフェースは一般に、
図10aおよび10bに示された前記輪郭(60)の形状を共有する。大腿骨(30)と大腿骨要素(70)との間の遠位インタフェースは前記輪郭(60)の遠位切断平面(65)に関係し、一般に正しい3次元の機械的軸に垂直である。したがって、インプラント(70)は回避可能な横剪断負荷の影響を受けにくい。
【0059】
いくつかの実施形態では、切除平面の位置決めを繰り返し変更して、性能の最適化、骨温存の最大化、軟性組織との衝突回避を行い、および/または「中間」寸法である標準人工装具を患者に正しく合わせることが必要な場合がある。かかる反復操作はコンピュータ支援プログラムの中で有限要素解析法(FEM)によって実行することができる。実用的なプログラムの例には、Orthopaedic Research Laboratories, IncによるLifeMODおよびKneeSIMがある。
【0060】
いくつかの実施形態では、
図18aおよび18bに示すように、専用手術装置(550)によって、下肢の正しい3次元の機械的軸に垂直な頸骨近位切除を容易にすることができる。専用手術装置(550)は、切断ツール(例えば、外科用振動鋸刃)を下肢の正しい3次元の機械的軸に垂直に案内するための切断溝(560)、または他の等価な手段を備えることができる。いくつかの例では、前記専用手術装置(550)は、単一の平坦面を利用して前記切断ツールを案内することができる。切断溝(560)は、使用する場合は、その一端を開放してもまたは閉じてもよく、切除を制御または制限する(例えば、顆間隆起近傍のACL/PCL取付け骨の切断を避ける)よう構成された側部稜線を有しても有さなくてもよい。
図18a〜18bに示すのは、個人の肢の骨表面に少なくともある程度適合する専用手術装置(550)の一例であるがこれに限定されない。示された専用手術装置は、内側の少なくとも一部の頸骨切除を容易にするよう構成されており、前記切除は患者の下肢の正しい3次元の機械的軸に垂直である。この種類の直交切除は、頸骨トレイおよび/またはインサート上に作用する力が横方向剪断ではなく主に機械的軸に沿った圧縮に確実に集中するように、1区画置換、2区画置換、または膝関節全置換に有利に使用できる。図示した専用手術装置は全部または部分頸骨切除の実施に適するが、他の専用手術装置を、上肢または末端(例えば、肘または手首)における切除などの他の肢骨の全切除または部分切除を容易にするよう構成することができる。
【0061】
専用手術装置は、骨の一部幅または全幅に沿って骨の異なる部分を横断して延びることができる。前記装置は、
図21a〜21iに示す種々の方法で切断ツールを肢の正しい3次元の機械的軸に垂直に案内するために、1つまたは複数の切断溝または平坦面を採用することができる。専用手術装置(550)は、生体適合金属材料または生体適合プラスチック材料で作ることができ、利便性目的で使い捨てにすることができ、さらに表示(558)を備えることができる。表示(558)は、ロゴ、商標、装置製造番号、氏名、DOB、患者番号または社会保険番号などの患者固有のデータ、および/または正しい配置を示す他の指示(例えば、「右-内側-頸骨」)のいずれか1つまたは複数を含むことができるがこれらに限定されない。専用手術装置(550)は、内側、外側、前側、後側または全骨切除を容易にするよう構成することができ、前記専用手術装置(550)の位置が切断ツール使用中および/または切断ツールの振動中に変化しないように、一時的な骨固定用の1つまたは複数の手段(562、564)を備えることができる。かかる手段(562、564)は、例えば図示したようなピン用孔でよい。孔は互いに相対的に任意の位置でよい(例えば、並行、傾斜、直角、ねじれ、オフセットなど)。専用手術装置(550)を患者の自然骨上に一層正確に配置するため、1つまたは複数のボディ部(552、554、556)を存在させて一層広い接触領域を形成し、専用手術装置(550)を空間内の複数方向で安定させることができる。骨表面と前記専用手術装置(550)との間の摩擦接触を増やす一方、軟性組織との過度の接触を防ぐよう、ボディ部(552、554、556)を構成することができる。ボディ部(552、554、556)の実際の形状および寸法は患者間で異なり、特定の骨構造に最適化するための形状および寸法は種々の肢およびそれらの部位の骨切除によって異なることが、当業者には容易に理解されよう。
【0062】
専用手術装置(550)は、標準寸法または形状のテンプレートブロックから作ることができ、その後、患者個人固有の内側骨インタフェース輪郭、および前記患者個人固有の正しい3次元の機械的軸に垂直に切断ツールを案内するよう構成された切断溝または平坦表面のような専用案内手段を備えるよう変更することができる。
【0063】
他の非限定の実施形態では、専用手術装置を、下肢の他の部位に使用するように提供することができる。
図19aと19bは、大腿骨に使用するための専用手術装置(570)を説明しており、前記装置(570)は切断ツールを下肢の正しい3次元の機械的軸に垂直に案内するための手段(580)を備える。図示の例では、専用手術装置は一般に個人の大腿骨遠位の骨表面に少なくともある程度適合する。専用手術装置(570)は一般に、少なくとも内側大腿骨部分切除、側部大腿骨部分切除、または骨の全幅にわたる完全大腿骨切除を容易にするよう構成されており、前記切除は正しい3次元の機械的軸に垂直である。切断ツールを下肢の正しい3次元の機械的軸に垂直に案内するための切断溝または他の等価手段(580)を採用することができる。いくつかの例では、前記専用手術装置(570)は平坦面を利用して前記切断ツールを案内することができる。切断溝は、使用する場合は、その一端を開放してもまたは閉じてもよく、切除を制御または制限するよう構成された側部稜線を有してもまたは有さなくてもよい。専用手術装置(570)は、前記専用手術装置の位置が使用中および/または振動中に変化しないように、一時的な骨固定用の1つまたは複数の手段(582、584)を有することができる。かかる手段(582、584)は、例えば図示したようなピン用孔でよい。孔は互いに相対的に任意の位置でよい(例えば、並行、傾斜、直角、ねじれ、オフセットなど)。専用手術装置(570)を患者の自然骨上に一層正確に配置するため、1つまたは複数のボディ部(572、574、576)を存在させて一層広い接触領域を形成し、専用手術装置(570)を空間の複数方向で安定させることができる。骨表面と前記専用手術装置(570)との間の接触を最大または最適にする一方、軟性組織との過度の接触を防ぐよう、ボディ部(572、574、576)を構成することができる。ボディ部(572、574、576)の実際の形状および寸法は患者間で異なり、特定の骨構造に最適化するための形状および寸法は種々の肢およびそれらの部位の骨切除によって異なることが、当業者には容易に理解できよう。
【0064】
図20は、複数の専用手術装置(550、570)を採用して、患者の肢上で複数の骨切除(555、575)を行う一例を示し、前記複数の骨切除(555、575)のそれぞれは患者の肢の正しい3次元の機械的軸(590)に垂直である。図示した例では、大腿骨切除(575)および頸骨切除(555)が行われ、それぞれが患者の肢の正しい3次元の機械的軸に直交する平面を成す。これによって、取り付けられた人工膝関節の各部位(すなわち、大腿骨要素、および頸骨要素)は、最終的な位置ずれ、内部成長の低下、接着剤劣化、痛み、および性能低下を引き起こす可能性がある過度な横剪断力を確実に経験しなくなる。
【0065】
図21a〜21iは、骨切除のいくつかの例を示している。各切除は、肢の正しい3次元の機械的軸に垂直な少なくとも1つの骨表面(600)を含む。正しい3次元の機械的軸は正しく整列された自然な、または修復された機械的軸であり、本明細書に開示された新規の方法の1つによって決定されていることが好ましい。
図22は、いくつかの実施形態による専用手術装置(700)の一例を示しているがこれに限定されない。専用手術装置(700)は一般に、患者の肢の骨表面に少なくともある程度適合し、
図21dに示した骨切除と同様の骨切除を生成するよう構成されている。装置(700)は、特定患者の下肢の正しい3次元の機械的軸(720)に垂直に切断ツールを案内するための基準手段(710)を有する。かかる切断ツールは、ミル、ミルガイド、ルータ、またはそのようなもの(図示せず)を含むことができる。切断ツールを案内するための手段(710)は、患者の正しい3次元の機械的軸(720)に垂直な基準平面を定める役目を果たすのが好ましい。前記手段(710)は前記切断ツール(図示せず)用の取付け手段(740)として2重の役目を果たすことができる。取付け手段(750)は、連結技術で既知のさね継ぎ機構、ネジ孔、1/4回転ファスナ、バネ式ロック、または任意の他の瞬間連結/離脱機能を含むことができるがこれらに限定されない。専用手術装置(700)を患者の肢の骨部に取り付けるための固定手段(750)を利用して、切断ツールによる振動下の位置変化を防止することができる。かかる固定手段(750)は例えば、保持ピン用傾斜孔(図示せず)を含むことができる。専用手術装置(700)は、ミルタイプおよび平刃タイプ両方の切断ツールに対応するため、1つまたは複数の切断溝(図示せず)など、切断ツールを案内する追加の手段を備えることができる。
【0066】
図23は、
図22に示したものに代わる専用手術装置(800)を示す。装置(800)は、特定患者の下肢の正しい3次元の機械的軸(820)に垂直に切断ツールを案内するための基準手段(810)を有する。前記切断ツールは、ミル、ミルガイド、ルータ、またはそのようなもの(図示せず)を含むことができる。切断ツールを案内するための手段(810)は、患者の正しい3次元の機械的軸(820)に垂直な基準平面を定める役目を果たすのが好ましい。前記手段(810)は前記切断ツール(図示せず)用の取付け手段(840)として2重の役目を果たすことができる。取付け手段(850)は、連結技術で既知のさね継ぎ機構、ネジ孔、1/4回転ファスナ、バネ式ロック、または任意の他の瞬間連結/離脱機能を含むがこれらに限定されない。専用手術装置(800)を患者の肢の骨部に取り付けるための固定手段(850)を利用して、切断ツールによる振動下の位置変化を防止することもできる。かかる固定手段(850)は例えば、保持ピン用傾斜孔(図示せず)を含むことができる。専用手術装置(800)は、平刃(図示せず)など他の種類の切断ツールに対応するため、切断溝(図示せず)など切断ツール(810)を案内するための他の手段を採用することができることを理解すべきである。専用手術装置(800)は、ミルタイプおよび平刃タイプ両方の切断ツールに対応するため、1つまたは複数の切断溝(図示せず)など、切断ツールを案内する追加の手段を備えることができる。
【0067】
本発明の範囲から逸脱することなく、対応する図面を参照し本明細書に説明したように、例示的実施形態に対して種々の修正を行うことが可能であるので、上記説明に含まれ添付図面に示した全ての事項は、限定ではなく例文と解釈されるものとすることを目的としている。すなわち、本発明の幅および範囲は、上記のどの例示的実施形態によっても限定されるべきではなく、本明細書に添付された以下の特許請求の範囲およびその同等物によってのみ定義されるべきである。
【0068】
作成および実施が可能な多くの種々の例示的実施形態がある。例えばいくつかの実施形態では、
図15に示したように、下肢の正しい3次元の機械的軸(314)に垂直に、顆間溝/滑車溝の溝底遠位(312)を通過する大腿骨遠位切除(316)を提供するよう構成された専用手術装置を提供することが有利な場合がある。または、患者の要求を満足させるよう、前記大腿骨遠位切除(318)を前記機械的軸(314)に沿って移動させることが望ましい場合がある。例えば青年患者の場合、骨蓄積(bone stock)が良好な場合があり、より温存的な大腿骨遠位切除(316)が行われることがある。高齢患者または修正症例など他の例の場合、より積極的な一層近位位置の大腿骨遠位切除(318)が行われることがある。前の最初のインプラントまたは人工装具を修正する症例の場合、前に切断した骨、既存インプラントの表面、またはそれらの組合せに適合するように、専用手術装置を作ることができる。多くの異なる解剖学的特性を参照することによって、正しい3次元の機械的軸に垂直な任意の切除深さを決定することができる。いくつかの例では、
図15に示した切除深さを、内側顆遠位表面、外側顆遠位表面、または内側顆遠位および外側顆遠位両方の表面上の骨目標によって決定することができる。他の例では、デジタル画像(例えば、MR、CT、X線、蛍光透視、超音波、その他)上で決定された軟骨/骨インタフェースから所定の固定距離に切除ライン(318)を配置することによって、切除深さを決定することができる。さらに他の例では、切除ライン(318)を、前記デジタル画像上で決定したように、皮質骨/海綿骨インタフェースから所定の固定距離に配置することができる。さらに他の例では、切除ライン(318)を解剖学的目標または特徴から所定の距離補正することによって切除深さを決定することができる。解剖学的目標または特徴は、デジタル画像内に容易に見える目立つ特徴でよく、一般には、患者間でその位置に一貫性があるのが好ましい。かかる解剖学的目標は、上顆(32a、32b)、滑車溝(34)、脛骨近位(48)、腓骨近位(52)、膝蓋骨(例えば、関節ラインからXmmの膝蓋骨の下極で、一般にXは2cm程度)、前十字靱帯(ACL)挿入ポイント、ACL長さ、後十字靱帯(PCL)挿入ポイント、PCL長さ、頸骨粗面
/結節(46)、およびその他の任意の1つまたは複数を含むことができるがそれらに限定されない。
【0069】
他の実施形態では、コンピュータ制御断層撮影法などの非浸襲的手段を用いて、大腿骨頭重心および上顆間軸の中点を決定することができる。正しい3次元の機械的軸は大腿骨頭の前記重心および上顆間軸の前記中点を連結する理論的な線として正確に画成することができる。次に専用手術装置が提供され、前記専用手術装置は、切断ツールを、前記正しい3次元の機械的軸に一般に垂直で、大腿骨頭の前記重心および/または上顆間軸から所定の距離の平面に沿って案内するよう構成されている。前記平面は、最大骨温存のために顆間溝/滑車溝の溝底遠位を通過、または大腿骨頭の重心のより近位に位置決めされて、肉厚インプラントまたは修正要素のための余裕を作ることができる。
【0070】
あるいは、前記非浸襲的放射線手段を用いて大腿骨頭重心および大腿骨遠位の上顆間軸を決定することによって、正しい3次元の機械的軸を決定することができる。上顆間軸は、少なくとも第1および第2の解剖学的目標を配置することによって見つけることが可能であり、前記第1および第2の解剖学的目標は内側上顆および外側上顆のそれぞれ目立つ部位である。理論的な線は、大腿骨頭の前記重心から前記上顆間軸へ上顆間軸を直角に横切るように引かれる。前記理論的な線は一般に、正しい3次元の機械的軸として画成される。次に専用手術装置が提供され、前記専用手術装置は少なくとも1つの骨切除を前記正しい3次元の機械的軸に垂直にするよう構成されている。
【0071】
図16に示すように、いくつかの実施形態では、特定患者の肢の正しい3次元の機械的軸を決定するために「仮想髄内棒」が作られる。最初に大腿骨近位の部分的走査が行われ、それによって大腿骨頭重心が空間内に位置決めされる。2番目に、膝関節の部分的走査が行われ、それによって大腿骨遠位の解剖学的軸(420)が正確に決定される。大腿骨遠位の解剖学的軸(420)は、空間内で遠位へ(すなわち、大腿骨頭から遠ざかる方向)、内側顆遠位と外側顆遠位との間の空間内の点へ引かれる。空間内の点(418)は、内側顆(412)および外側顆(416)のそれぞれ最遠位部分を連結する線内の線(422)または平面の最も近傍が好ましい。正しい3次元の機械的軸(414)は一般に、前記空間内の点(418)を大腿骨頭重心(図示せず)に連結する仮想線として画成される。解剖学的軸(420)上の前記空間内の点(418)は、前記線(422)が引かれるとき必ずしもその上にあるわけではないが、当業者は、引かれた解剖学的軸(420)上に空間内で線(422)に一番近い点を容易に配置して、空間内の点(418)を定めることができる。次に専用手術装置が提供され、前記専用手術装置は、少なくとも1つの骨切除を前記正しい3次元の機械的軸(414)に垂直にするよう構成されている。
【0072】
ここで
図17を参照すると、いくつかの実施形態では、最初に大腿骨近位の部分的走査を行うことによって特定患者の肢の正しい3次元の機械的軸を決定し、それによって大腿骨頭重心を空間内で位置決めすることができる。2番目に、膝関節の部分的走査を行い、それによって内側顆(512)および外側顆(516)の最遠位部が確認される。中点(518)が内側顆(512)および外側顆(516)それぞれの上の最遠位点を連結する線(522)上に画成される。中点(518)は、前記最遠位点(512、516)間の空間の中央に置かれるのが好ましい。正しい3次元の機械的軸(514)は一般に、前記中点(518)を大腿骨頭の前記重心(図示せず)と連結する仮想線として画成される。次に専用手術装置が提供され、前記専用手術装置は、少なくとも1つの骨切除を前記正しい3次元の機械的軸に垂直にするよう構成されている。
【0073】
図24〜26は、いくつかの実施形態による膝関節用の専用手術装置を提供する方法を示している。これらの方法は、部分的3Dデジタル走査のみが利用でき、コンピュータ制御断層撮影(CT)撮像によって空間内の正しい大腿骨頭中心が決定できず、および/または上顆間軸が外傷または全体的変形のために損傷しているときに有利に使用可能である。
【0074】
図24に示す方法は多くの状況において使用可能であるが、部分的膝走査のみが利用でき、上顆間軸が精度良く決定できない、および/または顆遠位が損傷しているときに特に有利である。本明細書に記載の任意の手段を用いて、患者の疾患膝関節の部分的3Dモデルが得られる。後顆円弧中心がコンピュータソフトウェアプログラムを用いて見つけられ、理論的な第1の線が空間内に作られ、前記第1の線は後外側顆円弧中心および後内側顆円弧中心を連結する。大腿骨遠位部上の滑車溝内の溝底が次に確認される。溝底は一般に、内側顆と外側顆との間の顆間溝/滑車溝内の最遠位点として定義することができる。次に前部皮質が確認される。前部皮質は一般に、大腿骨遠位上の前部移行部として定義することができる。前部皮質を最も良く近似するために、1つまたは複数の解剖学的目標を確認することが必要な場合がある。また、前部皮質で基準座標系を用いて、溝底を決定することが必要な場合もある。これによって、屈曲および伸展の全ての角度に対し溝底が確実に一致する。次に、理論的な第2の線が前記溝底を通って空間内に引かれ、前記第2の線は一般に、後顆円弧中心を連結する前記第1の線に平行である。前記溝底を原点とする座標系が画成される。座標系は一般に
図27に示される。第2の線は上下軸の周りを所定度数回内される(すなわち、S-I回内)。所定度数は患者間でわずかに変わることがあるが、一般には0〜7°で、3°前後が好ましい。この所定の角度は一般に、生体構造が比較的一般的な患者では差が見られず、上顆間軸と平行な線を近似する修正を反映している。次に、少なくとも1つの3Dまたは突き出た2Dの輪郭を、1つまたは複数の標準人工装具装置または専用人工装具装置から選択する。少なくとも1つの輪郭を、1つまたは複数のインプラント製造メーカの1つまたは複数の製品品目から得ることができる。前記少なくとも1つの輪郭は一般に、特定の標準または専用人工装具装置を適合させるのに必要な骨切除を表す(例えば、一般的に「ボックス」切断または「面取り」切断と呼ばれる)。少なくとも1つの輪郭を選択した後、輪郭を前記第2の線および前部皮質に接して通過するよう、疾患関節骨の3Dモデル上に重畳することができる。少なくとも1つの輪郭の寸法を、最良の範囲、屈曲間隙安定性、膝蓋骨トラッキング、および大腿骨前部を切り欠かない配置を目標に決定し、適切に適合させることができる。複数の輪郭を利用できる場合は、輪郭(すなわちインプラント)を使用する最良の選択を、骨温存策および他の入力に基づいて決定することができる。少なくとも1つの輪郭が全自由度内で一旦設定されると、専用手術装置を作り提供することができる。専用手術装置は、患者の骨になんらかの方法で適合するのが好ましく、一般に前記患者に固有である。前記専用手術装置の骨接触表面は、その上に患者の骨に酷似した輪郭を有する大きな領域表面、または単に、前記患者の骨上の全自由度内で前記専用装置を固定する特別に配置された少数の接触点を備えてもよい。錠前の鍵のように、専用手術装置は患者の疾患肢の骨部に唯一の空間的配向で適合するのが好ましい。専用手術装置は
図18a〜19bに示すように、切断ツールによって引き起こされる振動下で動くことを防止する一時的な骨固定(562、564)用の1つまたは複数の手段、および前記少なくとも1つの輪郭に沿って切断ツールを案内する1つまたは複数の手段を備えることができる。上記方法ステップに従うことによって、輪郭の少なくとも1部は一般に患者の下肢の正しい3次元の機械的軸に垂直であると考えられる。
【0075】
図24と同様、
図25は、部分的膝走査のみが利用でき、上顆間軸が精度良く決定できない、および/または顆遠位が損傷しているときに有利に使用できる他の方法を示す。本明細書で議論された任意の手段を用いて、患者の疾患膝関節の部分的3Dモデルが得られる。内側顆と外側顆のそれぞれの上に最遠位点が次に見つけられる。最遠位点を、コンピュータソフトウェアプログラムを用いることによって決定することができる。次に、理論的な第1の線が空間内に作られ、前記第1の線は内側顆上の最遠位点および外側顆上の最遠位を連結する。大腿骨遠位部上の滑車溝内の溝底が次に確認される。溝底は一般に、内側顆と外側顆との間の顆間溝/滑車溝内の最遠位点として定義することができる。次に前部皮質が確認される。前部皮質は一般に、大腿骨遠位上の前部移行部として定義することができる。前部皮質最も良く近似するために、1つまたは複数の解剖学的目標を特定することが必要な場合がある。また、前部皮質で基準座標系を用いて、溝底を決定することが必要な場合もある。これによって、溝底が曲げおよび伸展の全ての角度に対し確実に一致する。次に、理論的な第2の線が前記溝底を通って空間内に引かれ、前記第2の線は一般に、内側顆および外側顆上の最遠位点を連結する前記第2の線に平行である。前記溝底を原点とする座標系が画成される。座標系は一般に
図27に示される。第2の線は上下軸の周りを所定度数回外して(すなわち、反回内a-p方向)、自然の傾斜した関節ラインに合わせて補正する。所定度数は患者間でわずかに変わることがあるが、一般には0〜7°で、3°前後が好ましい。この所定の角度は一般に、生体構造が比較的一般的な患者では差が見られず、自然に傾斜した関節ライン(水平から約3°)と正しい3次元の機械的軸(ほぼ垂直)との間の相対関係を反映している。次に、少なくとも1つの3Dまたは突き出た2Dの輪郭を、1つまたは複数の標準人工装具装置または専用人工装具装置から選択する。少なくとも1つの輪郭を、1つまたは複数のインプラント製造メーカの1つまたは複数の製品品目から得ることができる。前記少なくとも1つの輪郭は一般に、特定の標準または専用人工装具装置を適合させるのに必要な骨切除を表す(例えば、一般的に「ボックス」切断または「面取り」切断と呼ばれる)。少なくとも1つの輪郭を選択した後、輪郭を前記第2の線および前部皮質に接して通過するよう、疾患関節骨の3Dモデル上に重畳することができる。少なくとも1つの輪郭の寸法を、最良の範囲、屈曲間隙安定性、膝蓋骨トラッキング、および大腿骨前部を切り欠かない配置を目標に決定し、適切に適合させることができる。複数の輪郭が利用できる場合は、輪郭(すなわちインプラント)が使用される最良の選択を、骨温存策および他の入力に基づいて決定することができる。少なくとも1つの輪郭が全自由度内で一旦設定されると、専用手術装置を作り提供することができる。専用手術装置は、患者の骨に何らかの方法で適合するのが好ましく、一般に前記患者に固有である。前記専用手術装置の骨接触表面は、その上に患者の骨に酷似した輪郭を有する大きな領域表面、または単に、前記患者の骨上の全自由度内で前記専用装置を固定する特別に配置された少数の接触点を備えてもよい。錠前の鍵のように、専用手術装置は患者の疾患肢の骨部に唯一の空間的配向で適合するのが好ましい。専用手術装置は
図18a〜19bに示すように、切断ツールによって引き起こされる振動下で動くことを防止する一時的な骨固定(562、564)用の1つまたは複数の手段、および前記少なくとも1つの輪郭に沿って切断ツールを案内する1つまたは複数の手段を備えることができる。上記方法ステップに従うことによって、輪郭の少なくとも1部は一般に患者の下肢の正しい3次元の機械的軸に垂直であると考えられる。
【0076】
図26に示す方法は、部分的膝走査のみが利用でき、上顆間軸が精度良く決定できない、および後顆円弧中心が精度良く決定できないときに使用できる。本明細書で議論された任意の手段を用いて、患者の疾患膝関節の部分的3Dモデルが得られる。内側顆と外側顆のそれぞれの上に最後部かつ最遠位点が次に見つけられる。これらの点は、コンピュータソフトウェアプログラムを用いることによって決定することができる。次に、理論的な第1の線が空間内に作られ、前記第1の線は内側顆上の最後部および外側顆上の最後部を連結する。大腿骨遠位部上の滑車溝内の溝底も確認される。溝底は一般に、内側顆と外側顆との間の顆間溝/滑車溝内の最遠位点として定義することができる。次に前部皮質が確認される。前部皮質は一般に、大腿骨遠位上の前部移行部として定義することができる。前部皮質を最も良く近似するために、1つまたは複数の解剖学的目標を確認することが必要な場合がある。また、前部皮質で基準座標系を用いて、溝底を決定することが必要な場合もある。これによって、溝底が屈曲および伸展の全ての角度に対し確実に一致する。次に、少なくとも1つの3Dまたは突き出た2Dの輪郭を、1つまたは複数の標準人工装具装置または専用人工装具装置から選択する。少なくとも1つの輪郭を、1つまたは複数のインプラント製造メーカの1つまたは複数の製品品目から得ることができる。前記少なくとも1つの輪郭は一般に、特定の標準または専用人工装具装置を適合させるのに必要な骨切除を表す(例えば、一般的に「ボックス」切断または「面取り」切断と呼ばれる)。少なくとも1つの輪郭を選択した後、疾患関節骨の3Dモデル上に重畳し寸法を決めることができる。寸法決めは、前記第1の線から前部皮質へ垂直に測定することによって行われる。非標準人工装具装置の場合、特定患者が中間寸法の場合がある。この場合、前記輪郭は、後基準、前基準、またはその両方の基準を参照することによって前後に位置決めすることができる。後基準を参照する場合、選択された大腿骨インプラントの内側および外側顆支持表面上の最後部点が、患者の自然骨上の最後部点の近傍またはそれに交差するように、輪郭のA-P位置が決められる。前基準を参照する場合、輪郭の前部が大腿骨を切り欠くことなく前部皮質と交差するように、輪郭のA-P位置が決められる。これら2つの方法の組合せを利用して、深屈曲時の最適膝蓋骨トラッキングと修復術前関節生体力学との間の最良妥協点を見つけることができる。しかしどの場合も、輪郭は、一般に全ての切断が顆後部を連結する第1の線に平行になるように整列される。次に輪郭深さが内側顆および外側顆上の2つの最遠位点から評価される。輪郭は大腿骨に沿って上下に移動され、内側顆および外側顆上の前記最遠位点からインプラント厚みを近似する距離にセットされる。大腿骨の切り欠きが生じず、屈曲間隙が最適であるように、全ての残りの自由度(M/L、屈曲/伸展)が設定される。少なくとも1つの輪郭の寸法を、最良の範囲、屈曲間隙安定性、膝蓋骨トラッキング、および大腿骨前部を切り欠かない配置を目標に決定し、適切に適合させることができる。コンピュータ支援「仮想追跡」で複数の輪郭が使用される場合は、輪郭(すなわちインプラント)が使用される最良の選択を、骨温存策および他の入力に基づいて決定することができる。少なくとも1つの輪郭が全自由度内で一旦設定されると、専用手術装置を作り提供することができる。専用手術装置は、患者の骨に何らかの方法で適合するのが好ましく、一般に前記患者に固有である。前記専用手術装置の骨接触表面は、その上に患者の骨に酷似した輪郭を有する大きな領域表面、または単に、前記患者の骨上の全自由度内で前記専用装置を固定する特別に配置された少数の接触点を備えてもよい。錠前の鍵のように、専用手術装置は患者の疾患肢の骨部に唯一の空間的配向で適合するのが好ましい。専用手術装置は
図18a〜19bに示すように、切断ツールによって引き起こされる振動下で動くことを防止する一時的な骨固定(562、564)用の1つまたは複数の手段、および前記少なくとも1つの輪郭に沿って切断ツールを案内する1つまたは複数の手段を備えることができる。上記方法ステップに従うことによって、輪郭の少なくとも1部は一般に患者の下肢の正しい3次元の機械的軸に垂直であると考えられる。
【0077】
図24〜26に説明された上記の全方法は、コンピュータ支援設計(CAD)を任意選択で採用することができ、有限要素解析(FEM)ソフトウェアを組み込んで、与えられたインプラントの性能を仮想的に試験することができる。例えば、輪郭が患者の肢の3Dモデル上の空間内で一旦決まると、骨インタフェースと同じ輪郭を有するインプラントを3Dモデル上で重畳することができる。ソフトウェアは反復試験を実行して、性能の最適化のために輪郭位置決めの微調整が必要かどうか予測することができる。
【0078】
上記実施形態ならびに添付図面は例示的なものであって、本発明をなんら限定または定義しない。開示された本方法ステップは任意の順序で実施することができる。
【0079】
手術装置をカスタマイズする従来方法は、患者の肢の正しい3次元の機械的軸を正確に決定するステップを含まないと考えられるため、本方法は、専用手術装置を提供する従来方法を改良する。あるいは、従来技術の方法は、解剖学的軸、具体的には膝関節の部分的走査のみから画成された解剖学的軸を、全ての骨切断の基準にすると考えられる。従来技術は、機械的軸が解剖学的軸から内側へ所定角度の所に配置されていると「仮定」している。この方法は、患者間の生体構造の特異性(上記のように2〜11°におよぶ)を考慮しないため、不完全であると考えられる。また従来技術の方法は、大きな集団の全体的な観察に完全に頼っているため非効率であり不正確であると考えられる。本方法によって、各固有の患者に対しその患者用の正しい3次元の機械的軸が確実に決定され、前記患者の肢の少なくとも1つの骨切除を前記正しい3次元の機械的軸に垂直にして、インプラント上の横剪断応力を確実に避けることができる。そうすることによって、インプラントは1軸の(すなわち、機械的軸に沿った)圧縮のみを受け、横剪断応力を経験する可能性が低くなる。加重下におけるインプラント上の過度の横剪断応力は摩耗速度を速め、緩みを引き起こし、骨インタフェースの接着剤を破壊し、軟性組織衝突のリスクを生じ、性能を低下させ、痛みを引き起こす可能性がある。
【0080】
上記を考慮すれば、本発明の種々の長所が実現され達成されたことが理解されよう。
【0081】
当業者が本発明を最大に利用できるようにするため、種々の実施形態および意図された具体的使用にふさわしい種々の変更形態と共に、実施形態を選び本発明の原理およびその現実的アプリケーションを最も良く説明した。
【0082】
本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に説明され図示された構造および方法内で種々の修正を行うことが可能であるので、上記説明に含まれるまたは添付図面に示された全ての事項は、限定ではなく例示と解釈されるものとすることを目的としている。すなわち、本発明の幅および範囲は、上記のどの例示的実施形態によっても限定されるべきではなく、本明細書に添付された以下の請求の範囲およびその同等物によってのみ定義されるべきである。