(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985173
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】車両用高電圧分配装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
B60R16/02 650J
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-241073(P2011-241073)
(22)【出願日】2011年11月2日
(65)【公開番号】特開2013-52854(P2013-52854A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0088939
(32)【優先日】2011年9月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 然 在
(72)【発明者】
【氏名】張 光 洙
(72)【発明者】
【氏名】金 錫
(72)【発明者】
【氏名】朴 泰 炯
【審査官】
佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−234404(JP,A)
【文献】
特開2003−160008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電部、第1インターロックコネクタ、スイッチング部、インターロック回路部、およびスイッチング制御部で構成される車両用高電圧分配装置であって、
前記配電部は、バッテリマネージメントシステム(BMS)の制御によって車両に装着された主バッテリから提供される主電源を利用して複数の電子機器のそれぞれに対応する分配電源を供給し、
前記配電部で配電された配電電源は、電子機器ごとに前記第1インターロックコネクタを通じてそれぞれの電子機器に連結し、
遮断された電子機器を確認するためのインターロック回路部が前記第1インターロックコネクタとそれぞれの電子機器との間に配置され、
配電電源を前記第1インターロックコネクタに連結するかをスイッチングするスイッチング素子を備えたスイッチング部がそれぞれ前記配電部と前記第1インターロックコネクタの間に配置され、
前記スイッチング制御部は、1つの電子機器を連結するインターロック回路部が遮断された場合、遮断された電子機器に供給される配電電源のみを遮断する
ことを特徴とする車両用高電圧分配装置。
【請求項2】
前記配電部および前記スイッチング部を収納する本体をさらに含み、
前記第1インターロックコネクタは、前記本体に結合して前記スイッチング素子と連結する固定モジュールと、前記固定モジュールに着脱可能に結合され、前記固定モジュールを通じて伝達される配電電源を外部に出力する着脱モジュールとを備え、
前記インターロック回路部は、前記着脱モジュールが前記固定モジュールから脱離することにより、前記ケーブルの接点が分離される前に前記インターロック回路部の回路が先に遮断されることを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧分配装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子のそれぞれはリレー素子で設けられ、前記リレー素子のコイルアースは前記配電部の共通アースを用いることを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧分配装置。
【請求項4】
前記第1インターロックコネクタを通じて伝達された配電電源を該当する前記電子機器のそれぞれにケーブルを通じて伝達する第2インターロックコネクタをさらに含み、
前記インターロック回路部は、前記第1インターロックコネクタと前記第2インターロックコネクタの間に配置され、前記第1インターロックコネクタおよび第2インターロックコネクタのうちのいずれか1つまたは2つすべてが分離または破損した場合、この分離または破損に対応して前記ケーブルの接点が分離される前にインターロック回路部の回路が先に遮断されることを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧分配装置。
【請求項5】
前記配電部の陽極端子と前記スイッチング部の間に配電電源に対応するヒューズが配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用高電圧分配装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用高電圧分配装置に係り、より詳しくは、接点の分離によって発生するアークによる損傷を予防することができるインターロックコネクタを分配ラインに適用した車両用高電圧分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の電源供給システムは、バッテリの高電圧電源供給端子とこの電源供給端子から高電圧の電源が供給される電子機器の間にインターロックコネクタを備える。インターロックコネクタは、電源が印加された状態で機械的接点が解除されるときに発生するスパークまたはアークなどからシステムを保護するためのものである。
【0003】
従来の車両の電源供給システムは、上述したインターロックコネクタのうちの1つが分離または破損した場合、バッテリ管理システム(BMS:Battery Management System)によって高電圧電源の供給全体が遮断される。
このように、従来の車両の電源供給システムは、軽微な衝撃または部品不良によって車両の走行と直接的に関連のないインターロックコネクタのうちの1つが分離または破損した場合、走行に関連する機器に供給される電源も一括して遮断され、車両の走行が不可能になり、走行状況によっては大事故を引き起こす恐れがある。(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
例えば、ハイブリッド車両や電気自動車において、走行と直接に関連のない空気加熱式ヒータ(例えば、PTCヒータ)に連結したインターロックコネクタの分離または破損が発生して主電源が遮断されると、インバータが駆動モータを稼働することができなくなり、走行中の場合には事故の原因となる恐れがある。
さらに、従来の車両の電源供給システムは、インターロックコネクタのうちの1つだけが分離しても電源供給全体が遮断されるため、インターロックコネクタの1つ1つを分離してテストすることができず、車両整備および部品の影響評価することが困難であるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−112902号公報
【特許文献2】特開2008−037211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、車両の電源供給に利用される一部のインターロックコネクタの分離または破損によって主電源全体が遮断されることを防ぐことができ、高電圧供給ライン別に独立した車両整備および部品の影響評価を容易に実行することができる車両用高電圧分配装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明による車両用高電圧分配装置は、車両用高電圧分配装置であって、外部から入力された主電源を電子機器それぞれに対応して配電する配電部、配電部によって配電された配電電源をケーブルを通じて電子機器のそれぞれに連結する第1インターロックコネクタ、配電部と第1インターロックコネクタの間にそれぞれ配置され、配電電源それぞれを第1インターロックコネクタに連結するかをスイッチングするスイッチング素子を備えたスイッチング部、第1インターロックコネクタおよび電子機器のそれぞれに連結され、第1インターロックコネクタが分離または破損したことに対応して配電電源を伝達するケーブルの接点が分離する前にその回路が先に遮断されるインターロック回路部、および電子機器と連動し、連動した電子機器のうちでインターロック回路部の回路が遮断された電子機器を確認し、遮断が確認された電子機器に配電電源が供給されないようにスイッチング部を制御するスイッチング制御部を含むことを特徴とする。
【0008】
車両用高電圧分配装置は、配電部およびスイッチング部を収納する本体をさらに含み、第1インターロックコネクタは、本体に結合してスイッチング素子と連結する固定モジュールと、固定モジュールに着脱可能に結合され、固定モジュールを通じて伝達される配電電源を外部に出力する着脱モジュールとを備え、インターロック回路部は、着脱モジュールが固定モジュールから脱離することにより、ケーブルの接点が分離される前にインターロック回路部の回路が先に遮断されることが好ましい。
スイッチング素子のそれぞれはリレー素子で設けられ、リレー素子のコイルアースは配電部の共通アースを用いることが好ましい。
【0009】
車両用高電圧分配装置は、第1インターロックコネクタを通じて伝達された配電電源を該当する電子機器のそれぞれにケーブルを通じて伝達する第2インターロックコネクタをさらに含み、インターロック回路部は、第1インターロックコネクタと第2インターロックコネクタの間に配置され、第1のインターロックコネクタおよび第2インターロックコネクタのうちのいずれか1つまたは2つすべてが分離または破損した場合、この分離または破損に対応してケーブルの接点が分離される前にインターロック回路部140の回路が先に遮断されることが好ましい。
また、配電部の陽極端子とスイッチング部の間に、配電電源に対応するヒューズが配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、本発明の車両用高電圧分配装置は、インターロックコネクタと配電部のスイッチング素子を利用することにより、一部のインターロックコネクタの分離または破損によって主電源が全体的に遮断されることを防ぐことができ、高電圧供給ライン別に独立した車両整備および部品の影響評価(分析)を容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用高電圧分配装置のブロック図である。
【
図2】本発明のさらに他の実施形態に係る車両用高電圧分配装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両用高電圧分配装置の実施例について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用高電圧分配装置のブロック図である。車両用高電圧分配装置100は、バッテリ管理システム(以下、BMSと略す)の制御によって提供される主電源の供給を受け、空気加熱ヒータ(PTC)、エアコンコンポーネント(A−CON)、車両内部装着充電器(OBC)、低電圧直流変換装置(LDC)、または車両駆動用モータを駆動するインバータに分配する装置である。
【0013】
図1に示したとおり、車両用高電圧分配装置100は、配電部110、第1インターロックコネクタ120、第2インターロックコネクタ125、スイッチング部130、インターロック回路部140、およびスイッチング制御部150で構成される。
車両用高電圧分配装置100は、インターロック回路部140が遮断された場合、従来の車両用高電圧分配装置のように主電源全体を遮断するのではなく、インターロック回路部140が遮断された電子機器に供給される配電電源のみを遮断する。
【0014】
配電部110は、BMSの制御によって車両に装着された主バッテリから提供される主電源を利用して電子機器、例えば、空気加熱ヒータ(PTC)、エアコンコンポーネント(A−CON)、車両内部装着充電器(OBC)、低電圧直流変換装置(LDC)、または車両駆動用モータを駆動するインバータにそれぞれ対応する分配電源を供給する。配電部110の陽極端子(+BUS BAR)とスイッチング素子1305の間にヒューズ1102が配置される。
図1に示したとおり、配電部110で配電された配電電源は、第1インターロックコネクタ120および第2インターロックコネクタ125を通じて空気加熱ヒータ(PTC)、エアコンコンポーネント(A−CON)、車両内部装着充電器(OBC)、および低電圧直流変換装置(LDC)にそれぞれ伝達される。
【0015】
第1インターロックコネクタ120は、配電部110によって配電された配電電源が電子機器に対応して出力されるように、本体160の一側に結合される。本体160は、配電部110およびスイッチング部130を収納する。
すなわち、第1インターロックコネクタ120は、本体160に結合してスイッチング素子1305に連結する固定モジュール1202と、固定モジュール1202に着脱可能に結合する着脱モジュール1204とで構成される。着脱モジュール1204は、ケーブルを通じて第2インターロックコネクタ125に連結され、配電電源を第2インターロックコネクタ125に伝達する。
着脱モジュール1204が固定モジュール1202から脱離することにより、ケーブルの接点が分離される。
【0016】
第2インターロックコネクタ125は、ケーブルを通じて該当する電子機器と連結され、第1インターロックコネクタ120を通じて伝達された配電電源を伝達する。
第2インターロックコネクタ125は、第1インターロックコネクタ120とケーブルを通じてそれぞれ配電部110と連結され、第1インターロックコネクタ120を通じて出力された配電電源を、電子機器それぞれに伝達する。
スイッチング部130は、配電部110と第1インターロックコネクタ120の間にそれぞれ配置されたスイッチング素子1305を備える。各スイッチング素子1305は、スイッチング制御部150の制御により、配電部110によって配電された配電電源をそれぞれ該当する第1インターロックコネクタ120に連結するか遮断する。
【0017】
スイッチング素子1305はリレー素子で設けられ、
図1に示したとおり、配電部110の共通アース(−BUS BAR)は、リレー素子のコイルアースとして用いられる。リレーコイルを駆動する信号は、本体160の一側に貫通して結合されたリレーコイルコネクタ170を通じて伝達される。従って、リレーコイルを駆動する信号は、スイッチング制御部150によって生成される。
インターロック回路部140は、
図1に示したとおり、第1インターロックコネクタ120と第2インターロックコネクタ125の間に配置され、該当する電子機器とも連結される。インターロック回路部140は、第1インターロックコネクタ120および/または第2インターロックコネクタ125が分離または破損して
配電電源を電子機器に伝達するケーブルが機械的接点で分離される場合、このケーブルの接点が分離される前にその回路が先に遮断される。
【0018】
スイッチング制御部150は電子機器と連動し、インターロック回路部140が遮断された電子機器を確認し、遮断されたと確認された電子機器に配電電源が供給されないようにスイッチング部130を制御する。例えば、インターロック回路部140が遮断されたと確認された電子機器が空気加熱ヒータ(PTC)である場合、スイッチング部130のうちで空気加熱ヒータ(PTC)に該当するスイッチング素子1305である「A」の接点を開放し、空気加熱ヒータ(PTC)に対応する配電電源を遮断する。すなわち、スイッチング制御部150は、スイッチング素子「A」のリレー素子のコイルを駆動する制御信号を印加する。このような制御信号は、本体160の一側に貫通結合したリレーコイルコネクタ170を通じてスイッチング素子1305に伝達される。
第1インターロックコネクタ120が固定モジュール1202と着脱モジュール1204とで構成される場合、インターロック回路部140は、固定モジュール1202から着脱モジュール1204が脱離された場合にも遮断される。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態に係る車両用高電圧分配装置200は、
図2に示したとおり、インターロックコネクタが1つだけ配置される。すなわち、
図1から第2インターロックコネクタ125が削除された形態である。
本実施形態に係る第1インターロックコネクタ220は、配電部210に配電された配電電源をケーブルを通じて電子機器と連結される。インターロック回路部240は、
図2に示したとおり、第1インターロックコネクタ220と対応する電子機器の間に配置され、第1インターロックコネクタ220が分離または破損して配電電源を伝達するケーブルの接点が分離される前にインターロック回路部140の回路が先に遮断される。
【0020】
すなわち、インターロック回路部240は、
図2に示したとおり、第1インターロックコネクタ220が分離または破損された場合、この分離または破損に対応して電子機器に供給される配電電源を伝達するケーブルの接点が分離される前にインターロック回路部140の回路が先に遮断される。
スイッチング制御部250は、連動した電子機器のうちのインターロック回路部240が遮断された電子機器を確認し、遮断が確認された電子機器に供給される配電電源が遮断されるようにスイッチング部230を制御する。
上記のとおり、本発明のさらに他の実施形態に係る車両用高電圧分配装置200は、高電圧分配ラインが配置される車両の構造に応じて、インターロックコネクタが1つだけ用いられた場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
100、200 車両用高電圧分配装置
110、210 配電部
120、220 第1インターロックコネクタ
125 第2インターロックコネクタ
130、230 スイッチング部
140、240 インターロック回路部
150、250 スイッチング制御部
160、260 本体
170、270 リレーコイルコネクタ
1102 ヒューズ
1202 固定モジュール
1204 着脱モジュール
1305 スイッチング素子
A 空気加熱ヒータ(PTC)に該当するスイッチング素子
A−CON エアコンコンポーネント
+BUS BAR 配電部の陽極端子
−BUS BAR 配電部の陰極端子(共通アース)
LDC 低電圧直流変換装置
BMS バッテリ管理システム
OBC 車両内部装着充電器
PTC 空気加熱ヒータ