(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダおよびピストンを有するシリンジアセンブリが着脱自在に装着され、装着された前記シリンジアセンブリを操作することによって前記シリンジアセンブリから被験者へ薬液を注入する薬液注入装置であって、
前記シリンジアセンブリが載せられるシリンジ載置部と、
前記シリンジ載置部の一部を構成し、前記シリンジアセンブリのフランジが載せられるベース部材と、開放位置と閉止位置との間で回動自在に前記ベース部材に支持されたフランジ押え部材と、前記フランジ押え部材を前記閉止位置でロックする係合構造とを有し、前記フランジを全周にわたって包囲することによって前記シリンジアセンブリを固定するクランパと、
前記シリンジアセンブリが前記クランパにより周方向において特定の向きで回転が防止された状態で前記シリンジ載置部に載置されたことを検出する第1の検出器と、
前記フランジ押え部材が前記閉止位置でロックされたことを検出する第2の検出器と、
前記薬液注入装置の動作を制御する制御部と、
前記シリンジアセンブリのピストンを前進および後退させるピストン駆動機構と、
を有し、
前記シリンジ載置部に載せられたシリンジアセンブリが空シリンジである場合のみ、前記制御部は、前記シリンジアセンブリが前記シリンジ載置部に載置されたことが前記第1の検出器によって検出され、かつ、前記フランジ押え部材が前記閉止位置でロックされたことが前記第2の検出器によって検出されると、前記ピストンが前記シリンダの内部最先端に押し込まれるように前記ピストン駆動機構を動作させる薬液注入装置。
前記第2の検出器は、前記ベース部材に設置された近接センサであり、前記フランジ押え部材には、前記フランジ押え部材が前記閉止位置にあるときに前記近接センサによって検出される被検出物が配置されている請求項1または2に記載の薬液注入装置。
前記近接センサおよび前記被検出物は、前記フランジ押え部材が前記閉止位置にあるときに前記近接センサと前記被検出物との距離が最小となるように配置されている請求項3に記載の薬液注入装置。
前記近接センサは、交流磁界を検出媒体として金属を非接触で検出するセンサであり、前記被検出物は、前記近接センサで検出される金属を含んでいる請求項3または4に記載の薬液注入装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、透視撮像装置であるCTアンギオ装置300と薬液注入システムとを有する、本発明の一実施形態による透視撮像システム1000が示される。薬液注入システムは、薬液注入装置100と、
図1では示していないが、薬液注入装置100に装着されるシリンジアセンブリ200(
図3参照)とを有している。CTアンギオ装置300は、撮像動作を実行する撮像ユニット301と、撮像ユニット301の動作を制御する撮像制御ユニット302とを有しており、これらは通信ネットワークを介して接続されている。
【0023】
薬液注入装置100は、例えば
図2に示すように、スタンド111の上部にアーム112を介して旋回可能に取り付けられた注入ヘッド110と、ケーブル102で注入ヘッド110と電気的に接続された注入制御ユニット101とを有している。注入制御ユニット101は、メイン操作パネル103、表示手段と入力手段を兼ねたタッチパネル104、およびケーブル108で注入制御ユニット101の本体に電気的に接続された、補助的な入力手段であるハンドユニット107等を備えている。
【0024】
注入ヘッド110は、
図3に示すように、2組のシリンジアセンブリ200を並列に着脱自在に装着する(
図3では、簡略化のために1組のシリンジアセンブリ200のみを示している)。
【0025】
シリンジアセンブリ200は、シリンジ220と、シリンジ220が挿入される保護カバー270とを有する。シリンジ220は、一般にロッドレスシリンジと呼ばれるシリンジ220であり、末端にフランジ221aが形成されるとともに先端にノズル部221bが形成されたシリンダ221と、シリンダ221内に進退移動可能に挿入されたピストン222とを有している。ピストン222は、その末端に、後述するピストン駆動機構130が係合する係合突起(不図示)が一体に形成されている。
【0026】
ピストン222がシリンダ221の先端へ向けて移動することで、充填されている薬液が、ノズル部221bを介してシリンジ220から押し出される。先端に注入針またはカテーテルが接続された延長チューブ(不図示)をノズル部221bに連結すれば、注入針またはカテーテルを被験者の血管に穿刺または挿入して、シリンジ220に充填されている薬液を被験者に注入することができる。シリンジ220に充填される薬液としては、造影剤、生理食塩水および抗ガン剤などが挙げられ、例えば、一方のシリンジ220に造影剤を充填し、もう一方に生理食塩水を充填することができる。あるいは、両方のシリンジに抗ガン剤を充填することもできる。
【0027】
このように、薬液注入システムにおいては、造影剤のように粘度の高い薬液を用いることが多い。造影剤の中でも特に、被験者の血管画像を撮像するアンギオ装置に用いる造影剤は粘度が高い。粘度の高い薬液を被験者に注入するとき、シリンダ221の内圧が非常に高くなる。この高い内圧は、シリンダ221を膨張させ、これによって薬液の注入に種々の不具合が生じることがある。
【0028】
保護カバー270は、薬液注入時のシリンダ221の内圧上昇による膨張を抑制するものであり、シリンダ221の外周面がほぼ隙間なく挿入されるように円筒状に構成された部品である。この保護カバー270の役割を果たすため、保護カバー270は、薬液注入中にシリンダ221に作用する内圧に十分に耐え得る機械的強度を有する肉厚で形成されている。
【0029】
保護カバー270の先端には開口部が形成されており、シリンダ221は、この開口部からノズル部221bを突出させた状態で保護カバー270に保持される。保護カバー270の末端には、シリンダ221のフランジ221aを受け入れる凹部が形成されたカバーフランジ271が形成されている。
【0030】
注入ヘッド110には、装着された2組のシリンジアセンブリ200のピストン222を前進/後退操作するために互いに駆動される2つのピストン駆動機構130が、各シリンジアセンブリ200が装着される位置に対応して設けられている。ピストン駆動機構130は、ピストン222の末端に形成された係合突起を保持するピストン保持機構と、ピストン保持機構を前進および後退移動させる、モータ等の駆動源と連結されたロッド部材とを有する。ピストン保持機構は、ロッド部材の先端に位置しており、例えば、ピストン222の係合突起に係合し、それによって係合突起を保持するように構成されたフックとして設計することができる。
【0031】
注入ヘッド110に装着されたシリンジアセンブリ200は、ピストン駆動機構130によってピストン222が前進させられることによって、シリンジ220内に充填されている薬液を、別々に、または同時に被験者に注入することができる。ピストン駆動機構130については、この種の注入装置に一般に用いられている公知の機構を採用することができる。
【0032】
注入ヘッド110の先端部には、シリンジアセンブリ200が載せられるシリンジ載置部を構成するシリンジ受け120およびクランパ140が備えられている。クランパ140は、各シリンジアセンブリ200のカバーフランジ271を個別に保持するように構成されている。シリンジ受け120は、クランパ140よりも先端側に位置しており、各シリンダアセンブリ200の外周面を個々に受け入れる2つの凹部121を有している。各シリンダアセンブリ200は、ノズル部221bを先端側に向けた状態で凹部121内に位置され、カバーフランジ271がクランパ140によって保持されることで注入ヘッド110に固定される。
【0033】
以下に、クランパ140について、
図4〜6等を参照して説明する。構成をわかりやすくするため、
図5および
図6は、シリンジ受け120を取り外した状態で示している。
【0034】
クランパ140は、互いに間隔をあけて並列に配置された3本のシャフト150a、150b、150cと、ベース部材141と、2つのフランジ押え部材142とを有する。
【0035】
シャフト150a〜150cは、注入ヘッド110のフレーム構造の一部を兼用しており、その先端部でクランパ140を支持している。各シャフト150a〜150cの間隔は、クランパ140が保持するシリンジアセンブリ200の部分であるカバーフランジ271の直径よりも大きい。
【0036】
ベース部材141は、シャフト150a〜150cの間に位置している2つのフランジ受け凹部141aを有している。フランジ受け凹部141aは、カバーフランジ271の一部を受け入れることができるように、カバーフランジ271のフランジ受け凹部141aが受け入れる部分の外形とほぼ等しい円弧状に形成されている。
【0037】
2つのフランジ押え部材142は、フランジ受け凹部141aが受け入れないカバーフランジ271の残りの部分を受け入れ、各フランジ受け凹部141aと組み合わせられることによってカバーフランジ271を全周にわたって包囲するように形成された円弧状の部品である。そのため、フランジ押え部材142の内面は、フランジ受け凹部141aと同様、カバーフランジ271のフランジ押え部材142が受け入れる部分の外形とほぼ等しい円弧状の溝部を有している。
【0038】
各フランジ押え部材142は、フランジ受け凹部141aに対して開閉するようにそれぞれ一端部が外側のシャフト150a、150cに回動自在に支持され、カバーフランジ271の着脱を可能とする開放位置とカバーフランジ271を保持する閉止位置とをとることができる。フランジ押え部材142の、シャフト150a、150cによって支持された端部と反対側の端部である自由端部には、フランジ押え部材142を閉止位置で固定するために中央のシャフト150bと係合する係合構造が備えられている。
【0039】
この係合構造は、フランジ押え部材142の係合および解除が可能な構造であれば、任意の構造であってよい。本形態では、この係合構造として、フランジ押え部材142の自由端部の外側面に配置された凹部143およびボールプランジャ144を有している。凹部143は、フランジ押え部材142が閉止位置にあるときに中央のシャフト150bの外周面に掛かる形状に形成されている。ボールプランジャ144は、ボールと、ボールをその一部が突出可能に収容するケーシングと、ボールをケーシングから突出させる方向に付勢するバネとを有しており、凹部143に隣接して、ボールが突出するようにフランジ押え部材142に埋め込まれている。
【0040】
ボールプランジャ144の位置は、フランジ押え部材142が開放位置から閉止位置へと回動する過程で、ボールプランジャ144のボールが、シャフト150bと当接してケーシングの中に向かって押し込まれながらシャフト150bを通過し、通過した直後に凹部143がシャフト150bに係合する位置とされることが好ましい。こうすることにより、フランジ押え部材142を良好に閉止位置に保持させることが可能となる。加えて、ボールがシャフト150bを通過したときにクリック感が得られるので、操作者はフランジ押え部材142が閉止位置に達したことを容易に認識することができる。
【0041】
また、係合構造としてボールプランジャ144を用いることにより、閉止位置にあるフランジ押え部材142のシャフト150bとの係合を解除する場合は、単にフランジ押え部材142を解放位置へ向けて回動させるだけでよい。そこで本形態では、フランジ押え部材142の回動を容易に行なえるようにするために、フランジ押え部材142は自由端部に摘み145を有している。
【0042】
各フランジ押え部材142が閉止位置にあることを検出するために、本形態では、ベース部材141は、各フランジ押え部材142に対応する位置に、物体の有無や位置を非接触で検出する2つの近接センサ146を、第2の検出器として有している。また、各フランジ押え部材142には、各フランジ押え部材142が閉止位置にあるときに、対応する近接センサ146で検出される被検出物147が配置されている。本形態では、近接センサ146および被検出物147は、フランジ押え部材142の回動中心の近くにおいて、フランジ押え部材142が閉止位置にあるときに互いに対向する位置に配置されている。
【0043】
近接センサ146は、被検出物147との距離が所定の距離以下になることによって被検出物147を検出する。よって、フランジ押え部材142が閉止位置にないときには、近接センサ146と被検出物147との距離が所定の距離よりも大きいが、フランジ押え部材142が閉止位置にあるときには近接センサ146と被検出物147との距離が所定の距離以下になるように、近接センサ146および被検出物147が配置される。
【0044】
上記の近接センサ146および被検出物147の配置を確実にするため、本形態ではこれらを
図6のA−A断面図である
図7に示すように配置している。
【0045】
図7を参照すると、ベース部材141およびフランジ押え部材142には、それぞれフランジ押え部材142の回動軸と平行な貫通穴141b、142bが、フランジ押え部材142が閉止位置にあるときに同一直線上に並ぶ位置に形成されている。近接センサ146は、ベース部材141の貫通穴141bに挿入されて固定されている。被検出物147は、フランジ押え部材142の貫通穴142bに挿入されて固定されている。
【0046】
このように近接センサ146および被検出物147を配置することで、両者の距離は、フランジ押え部材142を開放位置から閉止位置へ向けて回動するに従って小さくなっていき、フランジ押え部材142が閉止位置にあるときに最小となる。よって、貫通穴141b内での近接センサ146の位置を、フランジ押え部材142が閉止位置にないときには上記の所定の距離よりも大きいが、フランジ押え部材142が閉止位置にあるときには所定の距離以下となる位置に設定することによって、フランジ押え部材142が閉止位置にあることの検出を、極めて簡単な構造で達成することができる。
【0047】
一般的に、近接センサは磁気を検出媒体として物体の有無や位置を検出する。近接センサが検出する磁気の種類としては直流静磁界および交流磁界があり、本発明ではどちらも利用可能である。
【0048】
検出媒体が直流静磁界である場合、被検出物147としては磁石または電磁石が用いられ、近接センサ146としては磁気抵抗素子やホール素子などの半導体磁気センサ、およびフラックスゲート型センサ、MR(Magneto−Resisutive)素子、MI(Magneto−Impedance)素子などの強磁性体磁気センサを用いることができる。
【0049】
直流静磁界を検出する近接センサ146は、上記のように、被検出物147として磁石または電磁石を用いる。磁石は、フランジ押え部材142に取り付ける際に極性を逆にして取り付ける作業ミスが懸念される。一方、電磁石は、近接センサ147のための検出回路とは別に電磁石のための動作回路が必要となる。
【0050】
そこで、本発明においては、被検出物147として金属を用いることができ、それによって上記のような問題が生じない、交流磁界を検出媒体とする近接センサ146を用いることが好ましい。また、交流磁界を検出媒体とする近接センサ146は、ホール素子のような直流静磁界を検出媒体とする近接センサと比べて、被検出物147を検出できる距離が小さいためフランジ押え部材142が閉止位置にあることをより正確に検出することができる。
【0051】
交流磁界を検出媒体とする近接センサ146は、コイルを有し、このコイルに交流電源から一定の交流電流を流して金属(被検出物147)に交流磁場を与えるとその金属に渦電流が発生することを利用する。金属に発生した渦電流は磁界を生じ、コイルに誘起電圧が発生する。結果的に、コイルに金属を接近させると、コイルに流した電流に対するコイルに生じた電圧の比であるコイルのインピーダンスが変化し、近接センサ146はこのインピーダンスの変化を利用して金属を検出する。
【0052】
この種の近接センサ146は、1つのコイルが、被検出物147に交流磁界を与える励磁コイルとしての機能と同時に、被検出物147から発生した渦電流磁界を検出する検出コイルとしての機能を併せ持つシングルコイル式と、複数のコイルを有するマルチコイル式とに大別することができる。
【0053】
シングルコイル式の近接センサ146の種類としては、高周波発振型およびフィルタ型が挙げられる。高周波発振型の近接センサ146は、検出コイルを発振回路の一部に組み込み、そのインピーダンス変化に応じて発振振幅や発振周波数の変化を検出する。フィルタ型の近接センサ146は、検出コイルをLCまたはLRのフィルタ回路の一部に組み込み、検出コイルのインピーダンス変化によってフィルタ特性が変化することを利用する。
【0054】
マルチコイル式の近接センサ146の種類としては、ダブルコイル型、差動コイル型およびホークコイル型が挙げられる。
【0055】
ダブルコイル型の近接センサ146は、同じ構造の2つのコイルを用い、一方を検出コイルとして被検出物147に接近させ、他方を基準コイルにして被検出物147の影響を受けないように配置する。2つのコイルを同じ条件で励磁して誘起電圧の差を比較すれば、検出コイルは被検出物147の接近の影響を受けるため、両者の誘起電圧の差が、被検出物147の接近によるものであるということになる。検出回路の方式としては、2つのコイルでインピーダンスブリッジを構成し、これを固定発振器で励磁して、不平衡電圧の振幅や励磁電流に対する位相を検出する方法が一般的である。あるいは、ブリッジ回路から得られた不平衡電圧を増幅してブリッジ回路の励磁側に帰還し、回路を発振させてその振幅を検出する方法もある。
【0056】
差動コイル型の近接センサ146は、一般的には、励磁コイルの両側に検出コイルを対称の位置に配置し、検出コイルの端子を直列逆極性に接続して検出出力端とする。励磁磁束は検出コイルに等しい誘起電圧を発生するため、励磁磁束による誘起電圧はキャンセルされ、ダブルコイル型と同様、渦電流が作る磁束による誘起電圧だけを取り出すことができる。あとは、ダブルコイル型と同様に、検出コイルの端子の出力電圧の振幅や位相を検出したり、検出コイルの端子の電圧を増幅して励磁コイルに帰還し、発振させたりすればよい。
【0057】
ホークコイル型の近接センサ146は、励磁コイルと検出コイルを対向配置して磁気結合を作っておき、その間に被検出物147を挿入することによって検出コイルに生じた誘起電圧の振幅や位相の変化を検出する。
【0058】
以上、交流磁界を検出媒体として非接触で金属を検出することのできる近接センサ146について説明した。本発明ではこれらのいずれも利用可能であり、それらの中でも特に、高周波発振型のシングルコイル式近接センサ、例えばオムロン株式会社製E2E-X1C1を好ましく用いることができる。金属を検出することのできる近接センサ146を用いた場合、被検出物147は、全体が金属で構成されていてもよいし、一部が金属で構成されていてもよい。
【0059】
被検出物147のサイズおよび形状は、フランジ押え部材142の開閉動作の妨げにならなければ任意とすることができる。好ましくは、被検出物147はボールプランジャであってよい。被検出物147として用いるボールプランジャには、フランジ押え部材142を閉止位置に固定するためにフランジ押え部材142に備えられたボールプランジャ144(
図5参照)と同様のボールプランジャを用いることができる。
【0060】
被検出物147としてボールプランジャを用いる場合、ボールプランジャは、そのボールの一部を、フランジ押え部材142のベース部材141との対向面から突出させてフランジ押え部材142に固定される。この突出したボールの一部は、フランジ押え部材142が閉止位置にあるときに、近接センサ146を保持する貫通穴141bに係合する。これにより、フランジ押え部材142を閉止位置にロックするボールプランジャ144の補助的な機能を被検出物147に持たせることができる。
【0061】
近接センサ146および被検出物147は、それぞれ位置ずれが生じないように貫通穴141b、142b内に固定される。そのために、近接センサ146および被検出物147を貫通穴141b、142bに圧入することができる。あるいは、近接センサ146はねじ込み式としてもよい。これにより、貫通穴141b内での近接センサ146の位置調整、および近接センサ146の交換のための取り外しを容易に行なうことができるようになる。また、貫通穴141bは、樹脂で充填されることが好ましい。これにより、近接センサ146の防水性が高まり、薬液等がクランパ140に付着した場合に近接センサ146が故障するおそれを低減することができる。
【0062】
前述したように、本形態ではフランジ押え部材142を閉止位置にロックするための係合構造にボールプランジャ144を用いているが、その場合、近接センサ147を、フランジ押え部材142が閉止位置にあるときにボールプランジャ144と対向するベース部材141の部分に配置することもできる。こうすることにより、係合構造を構成するボールプランジャ144を被検出物としても利用することができ、クランパ140の構成をより簡単にすることができる。
【0063】
再び
図6を参照すると、クランパ140は、シリンジアセンブリ200(
図3参照)がクランパ140に装着されたことを検出するために、クランパ140への各シリンジアセンブリ200の装着位置に関連した位置に配置された2つの近接センサを有している。これに対応して、各シリンジアセンブリ200には、
図3に示すように、近接センサ148が非接触で検出することのできる被検出物272が設置されている。
【0064】
図3を参照すると、保護カバー270のカバーフランジ271は、カバーフランジ271からさらに半径方向に突出している凸部271aを、その周方向の一部に有しており、被検出物272は、この凸部271aに設置されている。
【0065】
一方、
図5に示すように、クランパ140の各フランジ受け凹部141aにはそれぞれ溝部141cが形成されている。溝部141cは、シリンジアセンブリ200がクランパ140に装着されるときに保護カバー270の凸部271aを受け入れ、これによって、シリンジアセンブリ200の周方向への回転が防止される。近接センサ148は、保護カバー270の凸部271aがクランパ140の溝部141cに正常に受け入れられたときに被検出物272を検出する位置に配置される。
【0066】
使用可能な近接センサ148および被検出物272は、フランジ押え部材142が閉止位置にあることを検出するための近接センサ146および被検出物147と同様である。なお、保護カバー270の凸部271aがクランパ140の溝部141cに正常に受け入れられたことを検出する近接センサ148は、シリンジ220の種々のサイズに対応する保護カバー270の種類も検出できるように構成されていてもよい。そのためには、この近接センサ148として、直流静磁界を検出媒体とする半導体磁気センサなどの近接センサは、N極とS極の組み合わせから複数のパターンを検出できるため、交流磁界を検出媒体とする近接センサと同様に好ましく用いることができる。
【0067】
また、クランパ140への近接センサ148の取り付けおよび保護カバー270への被検出物272の取り付けも、フランジ押え部材142の開閉を検出するための近接センサ146および被検出物147と同様、各部材に穴を形成し、その穴の中にそれぞれ近接センサ148および被検出物272を固定することによって行なうことができる。これらの固定方法についても、近接センサ146および被検出物147の固定方法と同様であってよい。
【0068】
図8に、本形態の薬液注入装置の主要な電気的構成のブロック図を示す。なお、
図8に示す各ブロックは、
図1〜7で説明した構成の少なくとも一部、または少なくとも一部の組み合わせとして存在しており、ハードウェアとして構成されていてもよいし、論理回路として構成されていてもよい。
【0069】
図8に示すように、注入制御ユニット101は、制御部161、入力部162、表示部163およびインターフェース(I/F)164を有している。
【0070】
入力部162は、
図2に示したメイン操作パネル103およびタッチパネル104に相当し、操作者による薬液注入装置100の様々な設定および薬液の注入条件の決定に必要なデータなどの入力を受け付ける。表示部163は、
図2に示したタッチパネル104に相当し、薬液注入装置100の動作状態を表す画面およびデータ入力用の画面などを表示する。以上のように本形態では、タッチパネル104は、入力部162の一部としての機能および表示部163の機能を併せ持っている。
【0071】
制御部161は、入力部162からの入力に基づいて薬液の注入条件を算出したり、必要な情報を表示部163に表示させたり、算出した注入条件に従ってピストン駆動機構130を駆動させたりするなど、薬液注入装置100の動作全般を制御する。さらに、制御部161は、注入ヘッド110の近接センサ146、148およびピストン駆動機構130と接続され、これら近接センサ146、148やその他のセンサ(不図示)などからの信号に基づいて、必要な情報を表示部163に表示させたり、ピストン駆動機構130の動作の制御を行なったりもする。制御部161は、CPU、RAMおよびROMを含むコンピュータユニットで構成することができる。
【0072】
制御部161から発せられるピストン駆動機構130の動作のための制御信号や、制御部161で算出された薬液の注入条件の一部などは、インターフェース164を介してアンギオ装置300へ送られ、これによって、薬液注入装置100とアンギオ装置300とを連動させることができる。
【0073】
次に、本形態の薬液注入装置100の動作について説明する。
【0074】
まず、操作者は、薬液注入装置100の電源をオンし、その後、被験者に注入すべき薬液が充填されたシリンジアセンブリ200を注入ヘッド110に装着する。または、薬液が充填されていない空のシリンジアセンブリ200を注入ヘッド110に装着した後、ノズル部221bにチューブまたは吸引管を介して薬液容器(不図示)を接続し、その状態でピストン222を後退させてシリンジアセンブリ200に薬液を充填し、薬液が充填されたシリンジアセンブリ200が注入ヘッドに装着された状態としてもよい。シリンジアセンブリ200について、本明細書では、前者のタイプをプレフィルドタイプと呼び、後者のタイプを後充填タイプとも呼ぶ。
【0075】
シリンジアセンブリ200を注入ヘッド110に装着する際は、
図9に示すように、フランジ押え部材142を開放位置にした状態で、フランジ受け凹部141a(
図5参照)上にカバーフランジ271が位置し、かつ、溝141c(
図5参照)内に凸部271a(
図3参照)が挿入されるように、シリンジ受け120にシリンジアセンブリ200を載せる。
【0076】
ここで、未使用のシリンジアセンブリ200は、シリンダ221内でのピストン222の位置が所定の位置に定められている。薬液注入装置100は、電源がオンされたときにピストン保持機構130のイニシャライズ動作を行なうが、このイニシャライズ動作では、シリンジアセンブリ200をシリンジ受け120に載せた状態のときにピストン保持機構がシリンジアセンブリ200のピストン222の係合突起に係合する初期位置となるように、ピストン駆動機構を動作させる。通常、このピストン保持機構の初期位置は、ピストン保持機構の移動範囲の最後端であり、ピストン保持機構の位置は、センサ(不図示)によって検出することができる。
【0077】
このセンサとしては任意のセンサを用いることができるが、透過型フォトセンサ(フォトインタラプタ)および反射型フォトセンサなどの光学センサを好ましく用いることができる。透過型フォトセンサを用いる場合、透過型フォトセンサを、ピストン保持機構と連動して直線移動または回転するように支持されたスリット板と組み合わせて、リニアエンコーダまたはロータリーエンコーダとして使用してもよいし、ピストン保持機構と連動して直線移動するように支持されたプレート部材と組み合わせて、ピストン保持機構が初期位置にあるときにプレート板が透過型フォトセンサの発光素子と受光素子との間に位置して発光素子からの光を遮断するように構成したリミットセンサとして使用してもよい。反射型フォトセンサを用いる場合も、上記のスリット板およびプレート部材が発光素子からの光を遮断するか受光素子に向けて反射させるかの違いがあるだけで基本的には上記と同様、エンコーダとして使用することもできるしリミットセンサとして使用することもできる。さらには、複数の光学センサを用いてエンコーダとリミットセンサの両方を備えた構成とすることもできる。
【0078】
ピストン駆動機構130のイニシャライズ動作により、ピストン保持機構は上記の初期位置で待機している。よって、シリンジアセンブリ200をシリンジ受け120に載せると、それと同時に、ピストン保持機構がピストン222の係合突起に係合する。
【0079】
ピストン保持機構とピストン222の係合突起との係合は、センサ(不図示)によって検出できるようにすることが好ましい。薬液注入装置では通常、被験者への薬液の注入量およびシリンジ220への薬液の吸引量は、ピストン222の移動量とピストン保持機構の移動量が等しいという前提に立って、ピストン保持機構の移動量に基づいて算出される。初期状態でピストン222の係合突起とピストン保持機構が離れていると、ピストン保持機構が係合突起と当接するまでピストン222は移動せず両者の移動量にずれが生じることから、正確な注入量を算出することができなくなる。場合によっては、ピストン222が必要以上に押し込まれ、シリンジ220を破損させてしまうおそれもある。よって、ピストン保持機構とピストン222の係合突起との係合を検出できるようにし、その検出結果を操作者に表示や音声などによって示したり、あるいは係合したことが検出されるまで次の動作に進めないようにしたりすることで、上記のような不具合を防止することができる。
【0080】
ピストン保持機構とピストン222の係合突起との係合は、例えば、ひずみセンサ、赤外線センサ、色認識CCDセンサ、色識別センサおよび機械的スイッチによって検出することができる。
【0081】
操作者は、シリンジアセンブリ200をシリンジ受け120に載せた後、フランジ押え部材142を回動させてその係合構造を中央のシャフト150bに係合させることによって、
図10に示すように、フランジ押え部材142を閉止位置にロックさせる。フランジ押え部材142が閉止位置にロックされることによって、カバーフランジ271がシリンジホルダ140に固定されて、シリンジアセンブリ200が注入ヘッド110に装着される。シリンジアセンブリ200には、延長チューブを介して注入針またはカテーテルが連結されており、この注入針またはカテーテルが被験者の血管に穿刺または挿入されることで、シリンジアセンブリ200に充填されている薬液を被験者に注入する準備が整うことになる。
【0082】
注入針またはカテーテルの穿刺または挿入は、プレフィルドタイプのシリンジアセンブリ200の場合は、シリンジアセンブリ200を注入ヘッド110に装着する前でも装着した後でもよいが、空のシリンジアセンブリ200の場合は、シリンジアセンブリ200内に薬液が充填された後とされる。ただし、適宜の弁装置を備えた分岐チューブ(不図示)等によって、シリンジアセンブリ200から注入針またはカテーテルまでの経路と、シリンジアセンブリ200から薬液容器までの経路とを任意に切り替えられるようにした場合は、シリンジアセンブリ200内に薬液を充填する前に注入針またはカテーテルを穿刺または挿入することもできる。
【0083】
以上のようにしてシリンジアセンブリ200が注入ヘッド110に装着されると、近接センサ148がシリンジアセンブリ200の被検出物272を検出し、これによって、注入ヘッド110にシリンジアセンブリ200が装着されたことが検出される。さらに、フランジ押え部材142が閉止位置にロックされると、近接センサ146がフランジ押え部材142の被検出物147を検出し、これによって、フランジ押え部材142が閉止位置にロックされたことが検出される。
【0084】
ここで、近接センサ146は、実際には、フランジ押え部材142が閉止位置にあることを検出し、フランジ押え部材142が閉止位置にロックされたことを検出するのではない。しかし、フランジ押え部材142は、閉止位置に達すると係合構造によってその位置にロックされるので、実質的には、近接センサ146はフランジ押え部材142が閉止位置にロックされたことを検出すると考えてよい。
【0085】
フランジ押え部材142は、閉止位置では、フランジ受け凹部141aと協働してカバーフランジ271を全周にわたって受け入れることによってシリンジアセンブリ200を保持する。よって、フランジ押え部材142が閉止位置にロックされた状態では、シリンジアセンブリ200は正しい位置および姿勢でクランパ140に固定されて注入ヘッド110に装着されていることになる。
【0086】
本形態によれば、シリンジアセンブリ200をカバーフランジ271の全周にわたって包囲することによって保持するようにクランパ140を構成することにより、シリンジアセンブリ200がクランパ140に装着されていることを検出する近接センサ148、およびクランパ140が閉止位置でロックされたことを検出する近接センサ146の2つのセンサで、シリンジアセンブリ200が注入ヘッド110に正しい姿勢で装着されたことを検出することができる。その結果、従来のように各シリンジについてXYZの3方向からシリンジを検出する必要がなくなり、シリンジが正しい姿勢で装着されたことを検出するための構成をより簡単にすることができる。
【0087】
以上のようにしてシリンジアセンブリ200が注入ヘッド110に装着されると、近接センサ146、148から検出信号が制御部161へ送られる。制御部161は、近接センサ146、148から検出信号を受け取ると、装着されたシリンジアセンブリ200がプレフィルドタイプか後充填タイプか、別の観点から言えば、薬液が充填されているシリンジアセンブリ200であるか、薬液が充填されていない空のシリンジアセンブリ200であるかに応じて以下の処理を実行する。なお、ピストン保持機構の初期位置をセンサによって検出できるように構成されている場合は、上記の近接センサ146、148からの検出信号に加えて、ピストン保持機構が初期位置にあることを検出するセンサからの出力信号が制御部161に送られ、これら3つの検出信号を制御部161が受け取ることによって、制御部161は以下の処理を実行する。
【0088】
装着されたシリンジアセンブリ200がどのタイプであるかは、装着されたシリンジアセンブリ200のタイプを操作者が例えば入力部162を通じで入力し、その入力結果から制御部161が判断するようにすることもできるし、あるいは、シリンジアセンブリ200がRFIDチップ(不図示)を備えるとともに薬液注入装置100がRFIDリーダ(不図示)を備えるように構成し、RFIDリーダによるRFIDチップの読み出し結果に基づいて制御部161がシリンジアセンブリ200のタイプを判断するようにすることもできる。この場合、RFIDチップに記録される情報は、そのシリンジがプレフィルドタイプであるか後充填タイプであるかについての情報を少なくとも含む。
【0089】
シリンジアセンブリ200のタイプの判断結果、後充填タイプである場合には、シリンジアセンブリ200内に薬液を充填する必要がある。シリンジアセンブリ200内への薬液の充填は、シリンジアセンブリ200の先端を薬液容器(不図示)に接続し、その状態でピストン駆動機構130によってピストン222を後退させ、薬液容器内の薬液をシリンジアセンブリ200内に吸引することによって行なうことができる。制御部161は、この吸引動作の前に、ピストン駆動機構130に以下に述べる吸引準備動作を実施させる。
【0090】
吸引準備動作では、制御部161は、ピストン222がシリンジアセンブリ200の先端に向かって押し込まれてシリンダ221の内部最先端の位置である前進端位置に位置するようにピストン駆動機構130を動作させ、シリンジ220内のエアを全て押し出す。もちろんこの段階では、注入針またはカテーテルは被験者に穿刺または挿入されていないか、または、シリンジ220から注入針またはカテーテルまでの経路は遮断されており、シリンジ220と被験者の血管とは流体連通していない。
【0091】
上記前進端位置は、ピストン保持機構の前進端位置とすることができ、このピストン保持機構の前進端位置は、ピストン保持機構の初期位置を検出するセンサと同様のセンサによって検出するようにしてもよい。すなわち、ピストン保持機構の初期位置を検出するセンサがロータリーエンコーダまたはリニアエンコーダである場合は、このエンコーダを、ピストン保持機構の前進端位置を検出するセンサとしても利用することができる。また、ピストン保持機構の初期位置を検出するセンサがリミットセンサでありピストン保持機構と連動して直線移動するプレート部材を有している場合は、このリミットセンサとは別に、透過型あるいは反射型フォトセンサを、ピストン保持機構が前進端位置にあるときにプレート部材が透過型あるいは反射型フォトセンサと作用する(フォトセンサが透過型の場合は、プレート部材が発光素子からの光を遮断し、フォトセンサが反射型の場合は、プレート部材が発光素子からの光を受光素子に向けて反射される)ように配置する。もちろん、ピストン保持機構の前進端位置をエンコーダによって検出する構成とした場合であっても、さらにリミットセンサを付加し、このリミットセンサによってもピストン保持機構の前進端位置を検出できるようにしてもよい。
【0092】
このように、近接センサ146、148からの検出信号を受けて、ピストン222が自動的にシリンダ221の内部最先端に位置するように、制御部161がピストン駆動機構130を動作させることで、例えば、操作者が、まだ薬液が充填されていないシリンジ220を薬液が充填されたものと勘違いして薬液注入装置に薬液注入動作を実行させたような場合であっても、ピストン222はそれ以上前進することができない。よって、被験者の血管内にエアを注入してしまうという医療事故を確実に防止することができる。
【0093】
制御部161は、上記の吸引準備動作ととともに、シリンジアセンブリ200が正しく装着されたこと、すなわちシリンジアセンブリ200の装着が完了したことを表す情報を表示部163に表示させることもできる。これにより、操作者は、シリンジアセンブリ200の装着が完了したことを容易に確認することができる。なお、装着されたシリンジアセンブリ200がプレフィルドタイプの場合など、上記の準備動作を実行しない場合は、シリンジアセンブリ200の装着が完了したことを表す情報の表示は単独で実行することもできる。
【0094】
表示部163に表示されるこの情報は、文字によるメッセージであってもよいし、記号により表される情報であってもよい。また、表示部163は発光ランプ(不図示)を有しており、この発光ランプを点灯させることによって、シリンジアセンブリ200の装着が完了したことを表してもよい。発光ランプの点灯によって表示する場合、発光ランプは注入ヘッド110に配置されていてもよい。
【0095】
あるいは、薬液注入装置100にスピーカ(不図示)をさらに付加し、このスピーカから、シリンジアセンブリ200が正しく装着されたことを音声によって知らせたり、表示と音声を組み合わせたりしてもよい。
【0096】
制御部161が、シリンジアセンブリ200の被検出物272を検出する近接センサ148のみから検出信号を受け取った場合は、制御部161はシリンジアセンブリ200が装着されていないと判断し、そのことを表示部163に表示させて操作者に注意を促す。あるいは、制御部161が、フランジ押え部材142の被検出物147を検出する近接センサ146のみから検出信号を受け取った場合は、制御部161はシリンジアセンブリ200が正常に保持されていないと判断し、そのことを表示部163に表示させて操作者に注意を促す。
【0097】
操作者は、シリンジアセンブリ200が正しく装着されたことを確認し、その旨が入力部162を介して入力されると、制御部161は、薬液の注入のための動作を開始する。より詳しくは、制御部161は、表示部163に薬液注入装置100の動作モード選択用の画面および/または注入条件設定用の画面を表示させるとともに、入力部162に対して動作モードの選択および/または注入条件設定のための入力操作を可能にさせる。薬液の注入のための動作は、薬液注入に直接関わる動作だけでなく、薬液注入の前段階としてシリンジ220内に薬液を吸引する動作も含み、シリンジアセンブリ200が後充填タイプである場合は、動作モードとして吸引モードが含まれる。したがって、装着されたシリンジアセンブリ200が後充填タイプ(空シリンジ)である場合は、操作者は、シリンジ220と被験者の血管とが流体連通状態でないことを確認した後、薬液注入装置100に吸引動作を実行させ、その後、被験者への注入動作を実行させる。
【0098】
表示部163に動作モード選択用の画面および/または注入条件設定用の画面が表示されたら、操作者は、必要に応じて動作モードを選択したりデータを入力したりする。制御部161は、この入力に基づいて、必要な処理を行ない、ピストン駆動機構130を制御してシリンジアセンブリ200から被験者に薬液を注入する。これらの動作は、通常の薬液注入装置と同様でよいので、その詳細な説明は省略する。
【0099】
以上のように、両方の近接センサ146、148からの検出信号を制御部161が受け取らない限り次のステップに進まないようにすることで、シリンジアセンブリ200が装着されないまま、または正しく装着されないまま薬液注入動作が実行されるのを防止することができる。シリンジアセンブリ200が正しく装着されないまま薬液注入動作が実行されると、薬液注入中にシリンジアセンブリ200が外れるなどの事故が発生するおそれがある。よって、本形態のようにシリンジアセンブリ200が正しく装着されたことを検出できるようにすることで、そのような事故を防止することができる。
【0100】
また、クランパ140は、カバーフランジ271の全周を包囲した状態でシリンジアセンブリ200を保持するので、薬液の注入時にカバーフランジ271は全周で力を受けることができる。その結果、薬液の注入時にカバーフランジ271が受ける力がカバーフランジ271の全周に分散され、高圧で薬液が注入される場合であっても、カバーフランジ271が損傷する可能性は極めて低くなる。
【0101】
以上、好ましい実施形態によって本発明を説明した。本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0102】
例えば、近接センサとして、交流磁界を検出媒体として金属を検出するセンサを用いる場合、検出対象となる金属の種類に応じてセンサからの出力を変化させることが可能であるので、シリンジアセンブリ200の種類ごとに、被検出物272として異なる種類の金属を用いれば、シリンジアセンブリ200が装着されていることだけでなく、装着されているシリンジアセンブリ200の種類まで判別することができる。ここで、シリンジアセンブリ200の種類は、例えば、充填されている薬液の有効成分の濃度(代表的には、造影剤におけるヨード濃度)、シリンジ220の容量、サイズおよびこれらの組み合わせなどで分類することができる。
【0103】
また、上述した実施形態では、シリンジアセンブ200が載置部に載置されたことを検出する第1の検出器として近接センサ148を用いたが、以下に述べる特定の薬液注入システムにおいては、シリンジアセンブリを検出するための近接センサは不要である。
【0104】
近年の薬液注入システムの中には、RFIDチップをシリンジに備えるとともに、RFIDチップからデータを取得するRFIDリーダを薬液注入装置に備えたものがある。RFIDチップには、充填されている薬液に関するデータや被験者に関するデータなど、様々なデータが必要に応じて記録されている。薬液注入装置は、RFIDチップから取得したデータを利用して、薬液の注入条件を算出したり、シリンジの使用履歴を記録したり、被験者の薬液注入履歴を記録したりすることができる。
【0105】
このような薬液注入装置では、シリンジが装着された状態でRFIDチップからデータを取得できる位置にRFIDリーダが設置されている。よって、RFIDリーダがRFIDチップからデータを取得できれば、それは薬液注入装置にシリンジが装着されていることを意味する。つまり、RFIDリーダは第1の検出器としても働くことができ、この場合は、近接センサ148は不要である。
【0106】
RFIDリーダは、近接センサと比べて検出可能範囲が広く、カバーフランジ271をクランパ140のフランジ受け凹部141aに載せたときに位置ずれがあっても、シリンジアセンブリ200を検出してしまうことがある。しかし、シリンジアセンブリ200は、最終的にはフランジ押え部材412を閉止位置にロックすることによって正しい姿勢および位置で固定されるので、シリンダアセンブリ200の検出にはそれ程高い位置精度は要求されず、この位置ずれが問題となることはない。よって、第1の検出器としては、上述した近接センサ148およびRFIDリーダに限らず任意の検出器を用いることができ、また、第1の検出器の位置についても任意である。
【0107】
上記のようにシリンジアセンブリ200がRFIDチップを備えている場合、RFIDチップは、シリンダ221に搭載されていてもよいし、保護カバー270に装着されていてもよいし、両方に搭載されていてもよい。RFIDリーダは、RFIDチップの位置に応じて、シリンジアセンブリが注入ヘッドに装着されたときにRFIDチップを読み取ることのできる位置に設置される。
【0108】
さらに、上述した実施形態では、シリンジアセンブリ200が保護カバー270を有している例を述べたが、保護カバー270は本発明では必須ではない。例えば、粘度がそれ程高くない薬液を充填するシリンジアセンブリは、保護カバーが装着されないことが多い。シリンジアセンブリが保護カバーを有していない場合、クランパはシリンダの末端に形成されたフランジを保持するように構成される。また、シリンジアセンブリが、保護カバーを有しておらず、かつRFIDチップを供えている場合、RFIDチップはシリンダに搭載される。
【0109】
また、上述した実施形態では、シリンジアセンブリの装着を検出できるように構成されているが、さらに、シリンジ載置部に重量センサを設け、この重量センサによって、シリンジ載置部に際されているシリンジアセンブリに薬液が充填されているかどうかを検出できるようにしてもよい。この場合、シリンジアセンブリに薬液が充填されていなければ操作者に表示および/または音声で警告を発するようにすることが好ましい。
以上、実施形態により本発明を説明したが、本明細書は、以下に記載する発明を開示する。
[1] シリンダおよびピストンを有するシリンジアセンブリが着脱自在に装着され、装着された前記シリンジアセンブリを操作することによって前記シリンジアセンブリから被験者へ薬液を注入する薬液注入装置であって、
前記シリンジアセンブリが載せられるシリンジ載置部と、
前記シリンジ載置部の一部を構成し、前記シリンジアセンブリのフランジが載せられるベース部材と、開放位置と閉止位置との間で回動自在に前記ベース部材に支持されたフランジ押え部材と、前記フランジ押え部材を前記閉止位置でロックする係合構造とを有し、前記フランジを全周にわたって包囲することによって前記シリンジアセンブリを固定するクランパと、
前記シリンジアセンブリが前記シリンジ載置部に載置されたことを検出する第1の検出器と、
前記フランジ押え部材が前記閉止位置でロックされたことを検出する第2の検出器と、
を有する薬液注入装置。
[2] 前記ベース部材および前記フランジ押え部材は、前記フランジを受け入れる凹部を有する上記[1]に記載の薬液注入装置。
[3] 前記第2の検出器は、前記ベース部材に設置された近接センサであり、前記フランジ押え部材には、前記フランジ押え部材が前記閉止位置にあるときに前記近接センサによって検出される被検出物が配置されている上記[1]または[2]に記載の薬液注入装置。
[4] 前記近接センサおよび前記被検出物は、前記フランジ押え部材が前記閉止位置にあるときに前記近接センサと前記被検出物との距離が最小となるように配置されている上記[3]に記載の薬液注入装置。
[5] 前記近接センサは、交流磁界を検出媒体として金属を非接触で検出するセンサであり、前記被検出物は、前記近接センサで検出される金属を含んでいる上記[3]または[4]に記載の薬液注入装置。
[6] 前記薬液注入装置の動作全般を制御する制御部と、
情報を表示する表示部と、
をさらに有し、
前記制御部は、前記第1の検出器によって、前記シリンジアセンブリが前記シリンジ載置部に載置されたことが検出され、かつ、前記第2の検出器によって、前記フランジ押え部材が前記閉止位置でロックされたことが検出されると、前記シリンジアセンブリの装着が完了したことを表す情報を前記表示部に表示させる上記[1]から[5]のいずれかに記載の薬液注入装置。
[7] 前記制御部は、前記情報の表示に基づく操作者の所定の操作によって、薬液の注入のための動作を開始する上記[6]に記載の薬液注入装置。
[8] 前記ピストンを前進および後退させるピストン駆動機構をさらに有し、
前記シリンジ載置部に載せられたシリンジアセンブリが、薬液が充填されていない空シリンジである場合、前記制御部は、前記第1の検出器によって、前記シリンジアセンブリが前記シリンジ載置部に載置されたことが検出され、かつ、前記第2の検出器によって、前記フランジ押え部材が前記閉止位置でロックされたことが検出されると、前記ピストンが前記シリンダの内部最先端に位置するように前記ピストン駆動機構を動作させる上記[1]から[7]のいずれかに記載の薬液注入装置。
[9] 上記[1]から[8]のいずれかに記載の薬液注入装置と、
前記薬液注入装置に着脱自在に装着されるシリンジアセンブリと、
を有する薬液注入システム。
[10] 前記薬液注入装置の第1の検出器は近接センサであり、
前記シリンジアセンブリには、前記シリンジアセンブリが前記薬液注入装置のシリンジ載置部に載せられているときに、前記第1の検出器である近接センサによって検出される被検出物が配置されている上記[9]に記載の薬液注入システム。
[11] 種類の異なる複数の前記シリンジアセンブリを有し、
前記近接センサは、交流磁界を検出媒体として非接触で金属を検出するセンサであり、
前記被検出物は、前記シリンジアセンブリの種類ごとに異なる種類の金属を有している上記[10]に記載の薬液注入システム。
[12] 前記シリンジアセンブリは、データが記録されたRFIDチップをさらに有し、
前記薬液注入装置は、前記シリンジアセンブリが前記シリンジ載置部上に載せられた状態で前記RFIDチップから前記データを取得するRFIDリーダをさらに有し、
前記RFIDリーダが、前記第1の検出器としても働く上記[9]に記載の薬液注入システム。
[13] 前記シリンジアセンブリは、
薬液が充填された、シリンダおよびピストンを備えたシリンジと、
薬液注入時の前記シリンダの内圧上昇による膨張を抑制するために前記シリンジが挿入される保護カバーと、
を有し、
前記フランジは前記保護カバーに形成されている上記[9]から[12]のいずれかに記載の薬液注入システム。