特許第5985191号(P5985191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5985191ガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985191
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/18 20060101AFI20160823BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20160823BHJP
   F23R 3/14 20060101ALI20160823BHJP
   F23R 3/06 20060101ALI20160823BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F23R3/18
   F23R3/30
   F23R3/14
   F23R3/06
   F02C7/24 A
【請求項の数】24
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-10601(P2012-10601)
(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2012-154618(P2012-154618A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年9月22日
(31)【優先権主張番号】13/014,434
(32)【優先日】2011年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ジョンタオ ダイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エム.コーエン
(72)【発明者】
【氏名】カタリン ジー.フォタッシェ
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−196831(JP,A)
【文献】 特開2010−255944(JP,A)
【文献】 特開2005−69675(JP,A)
【文献】 特表平6−507231(JP,A)
【文献】 特開2008−180495(JP,A)
【文献】 特開2003−4232(JP,A)
【文献】 米国特許第6418726(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0308135(US,A1)
【文献】 特開2004−226051(JP,A)
【文献】 特開2010−281483(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0173076(US,A1)
【文献】 特開2008−196830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/18
F02C 7/24
F23R 3/06
F23R 3/14
F23R 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔て、かつキャビティを画定する環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状のハウジングと、
環状ハウジングの前方部分によって囲まれた燃料ノズルと、
燃料ノズルの下流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、
環状ハウジングの後方部分の内側面上に設けられた断熱コーティングと、
を備え、
隔壁は、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、該後方部分と隔壁との間にコーナー部を画定することを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項2】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔て、かつキャビティを画定する環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状のハウジングと、
環状ハウジングの前方部分によって囲まれた燃料ノズルと、
燃料ノズルの下流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、
隔壁の下流側面上に設けられた断熱コーティングと、
を備え、
隔壁は、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、該後方部分と隔壁との間にコーナー部を画定することを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項3】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔て、かつキャビティを画定する環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状のハウジングと、
環状ハウジングの前方部分によって囲まれた燃料ノズルと、
燃料ノズルの下流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、
隔壁の前方面の上流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分とを接続する前方壁部と、
前記前方壁部を横断方向に貫通して該壁部に周方向に配設される複数の第2の開口部と、
を備え、
隔壁は、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、該後方部分と隔壁との間にコーナー部を画定し、
前記前方壁部と隔壁との間にスペースが画定されることを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項4】
環状ハウジングの前方部分は、
隔壁の上流に位置し、燃料ノズルの少なくとも一部を取り囲む第1のスワラと、
隔壁の上流で、かつ第1のスワラの下流で該スワラに隣接して位置し、燃料ノズルの少なくとも一部を取り囲む第2のスワラと、
第1および第2のスワラを隔てるスワラ内側コーンと、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項5】
第1のスワラは、複数の第1の空気通路を画定する複数の第1のベーンを有し、該第1のベーンは、第1のスワラの軸に対して第1の角度をなして位置づけられ、
第2のスワラは、複数の第2の空気通路を画定する複数の第2のベーンを有し、該第2のベーンは、第2のスワラの軸に対して第2の角度をなして位置づけられることを特徴とする請求項に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項6】
第1のスワラの軸は、第2のスワラの軸と同じであり、該軸は、ミキサーアッセンブリの中心軸に対して実質的に半径方向に延びることを特徴とする請求項に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項7】
前記第1の角度は前記第2の角度と異なることを特徴とする請求項に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項8】
環状ハウジングの後方部分を長手方向に貫通する複数の第1の開口部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項9】
第1の開口部から環状ハウジングの後方部分の内側面へと延びる複数の通路をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項10】
環状ハウジングの後方部分の内側面に近接し、前記隔壁を横断方向に貫通して該隔壁に周方向に配設される複数の第3の開口部をさらに備えることを特徴とする請求項に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項11】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔てる環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状ハウジングと、
環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、かつ環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、
環状ハウジングの後方部分を長手方向に貫通する複数の第1の開口部と、
環状ハウジングの後方部分の内側面上に設けられた断熱コーティングと、
を備えることを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項12】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔てる環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状ハウジングと、
環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、かつ環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、
環状ハウジングの後方部分を長手方向に貫通する複数の第1の開口部と、
隔壁の下流側面上に設けられた断熱コーティングと、
を備えることを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項13】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔てる環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状ハウジングと、
環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、かつ環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、
環状ハウジングの後方部分を長手方向に貫通する複数の第1の開口部と、
隔壁の前方面の上流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分とを接続する前方壁部と、
前記前方壁部を横断方向に貫通して該壁部に周方向に配設される複数の第2の開口部と、
を備え
前記前方壁部と隔壁との間にスペースが画定されることを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項14】
第1の開口部から環状ハウジングの後方部分の内側面へと延びる複数の通路をさらに備えることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項15】
環状ハウジングの後方部分の内側面に近接し、前記隔壁を横断方向に貫通して該隔壁に周方向に配設される複数の第3の開口部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項16】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔てる環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状ハウジングと、
環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、かつ環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、
隔壁の前方面の上流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分とを接続する前方壁部と、
前記前方壁部を横断方向に貫通して該壁部に周方向に配設される複数の第1の開口部と、
を備え、
前記前方壁部と隔壁との間にスペースが画定されることを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項17】
環状ハウジングの後方部分を長手方向に貫通する複数の第2の開口部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項18】
環状ハウジングの後方部分の内側面に近接し、前記隔壁を横断方向に貫通して該隔壁に周方向に配設される複数の第3の開口部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項19】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔て、かつキャビティを画定する環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きく、後方部分の下流端部が環状の端部プレートを有する、環状のハウジングと、
後方部分および環状の端部プレートを貫通する、周方向の第1の組の長手方向の開口部と、
環状ハウジングの前方部分によって囲まれた燃料ノズルと、
燃料ノズルの下流で、環状の端部プレートの上流かつ半径方向内側に位置し、環状ハウジングの前方部分の半径方向外側面と後方部分の半径方向内側面を接続する隔壁であって、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、該後方部分と隔壁との間にコーナー部を画定する隔壁と、
環状ハウジングの後方部分の内側面に近接し、隔壁を横断方向に貫通し該隔壁に配設された、周方向の第2の組の長手方向の開口部と、
を備えることを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項20】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔てる環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きく、後方部分の下流端部が環状の端部プレートを有する、環状ハウジングと、
環状の端部プレートの上流かつ半径方向内側に位置し、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、かつ環状ハウジングの前方部分の半径方向外側面と後方部分の半径方向内側面を接続する隔壁と、
環状ハウジングの後方部分および環状の端部プレートを貫通する、周方向の第1の組の長手方向の開口部と、
環状ハウジングの後方部分の内側面に近接し、隔壁を横断方向に貫通し該隔壁に配設された、周方向の第2の組の長手方向の開口部と、
環状ハウジングの後方部分の半径方向内側面から周方向の第1の組の長手方向の開口部へと延びる複数の通路と、
を備えることを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項21】
メインミキサーと、
メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、
を備えるガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリであって、
メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、
パイロットミキサーは、
メインミキサーからパイロットミキサーを隔てる環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きく、後方部分の下流端部が環状の端部プレートを有する、環状ハウジングと、
環状の端部プレートの上流かつ半径方向内側に位置し、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、かつ環状ハウジングの前方部分の半径方向外側面と後方部分の半径方向内側面を接続する隔壁であって、該隔壁と環状の端部プレートのそれぞれが周方向の一組の長手方向の開口部を有する、隔壁と、
隔壁の前方面の上流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分とを接続する前方壁部であって、該前方壁部と隔壁との間にスペースが画定される、前方壁部と、
前記前方壁部を横断方向に貫通して該壁部に周方向に配設される複数の開口部と、
を備えることを特徴とするミキサーアッセンブリ。
【請求項22】
環状ハウジングの後方部分の内側面上に断熱コーティングを含むことを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項23】
隔壁の下流側面上に断熱コーティングを含むことを特徴とする請求項22に記載のミキサーアッセンブリ。
【請求項24】
隔壁の下流側面上に断熱コーティングを含むことを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のミキサーアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンの燃焼器に関し、特に、ガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリに関する。
【0002】
本発明は、航空宇宙局(NASA)によって授与され、政府支援の下(契約番号NNC08CA92C)でなされたものである。本発明については米国政府が一定の権利を有する。
【0003】
本願は、同一出願人に譲渡され、本願と同時に出願され同時係属中の米国特許出願番号第13/014388号(UTCドケット番号PA−0012674−US)、発明の名称「ガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリ」に関連する。
【背景技術】
【0004】
ガスタービンエンジンは、例えば、現代の航空機や船舶に動力を供給するため又は電力を生成するため、あるいは産業上の用途等に用いられものであり、供給吸気を圧縮する圧縮機と、圧縮された空気の存在下で炭化水素燃料を燃焼させる燃焼器と、結果として生じた燃焼ガスからエネルギーを抽出するタービンと、を備える。通常、圧縮機、燃焼器及びタービンは、エンジンの中心軸を中心として配設され、圧縮機は燃焼器の軸方向上流つまり前方に配され、タービンは燃焼器の軸方向下流に配される。ガスタービンエンジンの運転時、圧縮機からの圧縮空気とともに、燃焼器に燃料が噴射されて燃焼される、これにより高温の燃焼ガスが生じ、このガスがタービンを通流して回転軸動力をもたらす。軸動力は、圧縮機を駆動するために用いられて、空気が燃焼プロセスに導かれ、高エネルギーガスが生じる。さらに、軸動力は、例えば、電気を生成するジェネレータを駆動するため、あるいは、推力をもたらす高運動量のガスを生じさせるために用いられる。
【0005】
例示的な燃焼器は、環状の燃焼室を有し、該燃焼室は前方隔壁から後方へと延在する半径方向内側ライナと半径方向外側ライナとの間に画定される。半径方向外側ライナは、内側ライナから半径方向に離間し該ライナに沿って周方向に延在し、燃焼室はライナ間において前方から後方へと延在する。周方向に配された複数の燃料インジェクタが前方隔壁に取り付けられ、燃焼される燃料を供給するように環状の燃焼室の前方端部へと突出している。燃料インジェクタに近接して配された空気スワラは、隔壁において燃焼室の前方端部に流入する入口空気を旋回させ、燃料及び入口空気の急速な混合をもたらす。
【0006】
ガスタービンにおける空気中の炭化水素燃料の燃焼により、窒素酸化物(NOX)、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(UHC)や煙等、その発生を避けることができない排気物質が生じてしまう。これらの物質は排気ガスとしてガスタービンエンジンから大気に排出されることとなる。このため、これらの排気物質を抑制するための規制がより厳しくなってきている。同時に、エネルギー効率の向上、特定燃料の消費の減少、二酸化炭素(CO2)の排出量の減少のためエンジンの圧力比はますます高くなっており、その結果、排気物質を減少させつつ、燃焼器の入口圧力、温度及び燃料/空気比を高める燃焼器を設計しなければならないという問題が生じる。過濃燃焼急混合希薄燃焼(RQL:rich burn, quick quench, lean burn)型の燃焼器による排気物質の減少の限界のため、排気物質をさらに減少すべく、半径方向に燃料ステージを有する希薄燃焼型燃焼器(radially fuel staged lean burn combustors)がより頻繁に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の半径方向に燃料ステージを有する希薄燃焼型燃焼器のミキサーアッセンブリは、通常、メインミキサーにより囲まれたパイロットミキサーを有し、2つのミキサー間に燃料マニホールドが設けられ、燃料排出口を通してメインミキサーのキャビティへと半径方向に燃料が供給される。パイロットミキサー及びメインミキサーは、通常、空気スワラを用いて、ミキサーに流入する空気を旋回させ、空気及び燃料の急速な混合をもたらす。半径方向に燃料ステージを有する燃焼器の改良に伴う主要な問題の一つとして、低出力運転時において、燃焼効率、排気物質、安定性、リーンブロウアウト(希薄吹きとび)及び燃焼器のダイナミックスなど、パイロットミキサーの性能に悪影響を及ぼすことなくメインミキサーにおける混合を改善することが挙げられる。例えば、メインミキサーからの燃焼空気は、パイロットミキサーと相互作用して、パイロットミキサーの火炎を吹き消してリーンブロウアウトを生じさせる場合がある。同様に、パイロットミキサーの安定性が燃焼器全体の安定性に依存している場合には、パイロットミキサーの火炎のリーンブロウアウトが生じ得る。低出力運転時におけるメインミキサーからの低温の空気により、パイロットミキサー付近の燃焼器における火炎の温度が低下し、不適切又は不完全な燃焼によりCO及びUHCが発生する可能性が増してしまう。さらに、他の主要な設計上の問題は、ミキサーアッセンブリに悪影響を及ぼし得る過度の熱を回避すべく、パイロットミキサーを十分に冷却することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリを提供する。ミキサーアッセンブリは、メインミキサーと、環状ハウジング及び隔壁を有するパイロットミキサーと、を備える。環状ハウジングの後方部分と隔壁との間にコーナー部が画定される。さらに、パイロットミキサーの火炎を安定化させるコーナー再循環領域が設けられる。さらに、パイロットミキサーは、コーナー再循環領域の領域等に環状ハウジングを冷却する特徴部を有する。
【0009】
一実施例では、ガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリが提供され、該ミキサーアッセンブリは、メインミキサーと、メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、を備え、メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、パイロットミキサーは、メインミキサーからパイロットミキサーを隔て、かつキャビティを画定する環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状のハウジングと、環状ハウジングの前方部分によって囲まれた燃料ノズルと、燃料ノズルの下流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、を備え、隔壁は、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、該後方部分と隔壁との間にコーナー部を画定する。
【0010】
他の実施例では、ガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリが提供され、該ミキサーアッセンブリは、メインミキサーと、メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、を備え、メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、パイロットミキサーは、メインミキサーからパイロットミキサーを隔てる環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状ハウジングと、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、かつ環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、環状ハウジングの後方部分を長手方向に貫通する複数の第1の開口部と、を備える。
【0011】
さらに別の実施例では、ガスタービンエンジンのミキサーアッセンブリが提供され、該ミキサーアッセンブリは、メインミキサーと、メインミキサーと同心円状に配設されたパイロットミキサーと、を備え、メインミキサーは、パイロットミキサーの少なくとも一部を取り囲み、パイロットミキサーは、メインミキサーからパイロットミキサーを隔てる環状のハウジングであって、前方部分及び後方部分を有し、後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい、環状ハウジングと、環状ハウジングの後方部分と実質的に直交し、かつ環状ハウジングの前方部分と後方部分を接続する隔壁と、隔壁の前方面の上流に位置し、環状ハウジングの前方部分と後方部分とを接続する前方壁部と、前記前方壁部を横断方向に貫通して該壁部に周方向に配設される複数の第1の開口部と、を備え、前記前方壁部と隔壁との間にスペースが画定される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】例示的なガスタービンエンジンの実施例の概略図。
図2】例示的なガスタービンエンジンの燃焼器を部分的に示す概略図。
図3図2の例示的な燃焼器のミキサーアッセンブリの例示的な実施例を示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、ガスタービンエンジン10の例示的な実施例の概略図である。ガスタービンエンジン10は、ファンセクション20、圧縮セクション30、燃焼セクション40及びタービンセクション50を含むターボファン型として図示されている。燃焼セクション40は、複数の燃料インジェクタ150を有する燃焼器100を含み、該燃料インジェクタ150は、タービン52,54の上流で、エンジン10の中心線2を中心として環状に配されている。本願において用いる用語である「前方」又は「上流」として示す方向及び位置は、「後方」又は「下流」として示す方向及び位置に比べて、燃焼システムの燃料/空気取込み側に対してより軸方向に近接することを意味する。燃料インジェクタ150は、1つまたは複数の燃焼室に挿入され、混合又は点火のため燃焼室に燃料を供給する。本明細書に開示する燃焼器100及び燃料インジェクタ150は、ガスタービンエンジン10について示した実施例の用途に限定されず、最新の航空機や船舶に動力を供給するため又は電力を生成するために用いるガスタービンエンジン、あるいは工業用のガスタービンエンジンなど、他の種類のガスタービンエンジンにも適用され得ることを理解されたい。
【0014】
図2は、ガスタービンエンジン10における燃焼器100の例示的な実施例を部分的に示す斜視図である。燃焼器100は、ガスタービンエンジン10の圧縮セクション30とタービンセクション50との間に位置する。例示的な燃焼器100は、環状の圧縮室130を有し、該圧縮室130は、内側(インボード)壁13、外側(アウトボード)壁13及び燃焼器100の前方端部において壁132,134の間に延在する前方隔壁136によって境界づけられる。燃焼器100の前方隔壁136は、複数のミキサーアッセンブリ200を支持し、該アッセンブリは、燃料ノズル152、メインミキサー220及びパイロットミキサー210を含む。図2には、説明を目的とするため単一のミキサーアッセンブリ200のみを図示しているが、燃焼器100は、燃焼器100の前方端に取り付けられ、周方向に配置された複数のミキサーアッセンブリ200を有し得ることを理解されたい。燃料及び空気混合物の燃焼を開始するため、複数のスパークプラグ(図示せず)が圧縮室130の前方部分に沿った作業端に配置される。燃焼混合物は、燃焼器100内を主流路170に沿ってエンジン10のタービンセクション50へと下流方向に流れる。パイロットミキサー210に供給される燃料及び空気は、圧縮室130の中心部分内に第1の燃焼領域110をもたらす。メインミキサー220に供給される燃料及び空気は、圧縮室130内に第2の燃焼領域120をもたらす。この第2の燃焼領域120は、第1の燃焼領域110から半径方向外側に離間し、かつ該領域110を同心円状に取り囲む。
【0015】
図3は、図2に示した例示的な燃焼器100におけるミキサーアッセンブリ200の例示的な実施例を部分的に示す拡大斜視図である。例示的なミキサーアッセンブリ200は、メインミキサー220及びパイロットミキサー210を含む。パイロットミキサー210及びメインミキサー220は同心円状に配設され、パイロットミキサー210はメインミキサー220の中央に位置し、メインミキサー220はパイロットミキサー210の一部を取り囲む。ミキサーアッセンブリ200は、中心軸218を有する。パイロットミキサー210は、環状のパイロットミキサーハウジング212を有する。該ハウジング212は、メインミキサー220からパイロットミキサー210を隔てかつ保護するとともに、パイロットミキサーキャビティ208を画定する。パイロットミキサーハウジング212は、前方部分202及び後方部分204を有しており、後方部分204の直径は前方部分202の直径より大きい。パイロットミキサーハウジング212の前方部分202は、燃料ノズル152の一部を取り囲む。環状のパイロットミキサーハウジング212の前方部分202及び後方部分204は、燃料ノズル152の下流に位置し後方部分204に実質的に直交するパイロットミキサー隔壁214によって接続され、このパイロットミキサー隔壁214と後方部分204との間にコーナー部206が画定される。さらに、メインミキサー220は、環状のメインミキサー半径方向外側壁部222及びメインミキサー前方壁部224を有する。環状のメインミキサー半径方向外側壁部222は、環状のパイロットミキサーハウジング212の一部を半径方向において取り囲み、パイロットミキサーハウジング212の外側面は、環状のメインミキサー半径方向内側壁部219を画定する。メインミキサー前方壁部224は、メインミキサー半径方向外側壁部222及びメインミキサー半径方向内側壁部219に対して実質的に直交して該外側壁部222及び内側壁部219を接続し、メインミキサー環状キャビティ228を画定する。さらに、メインミキサー半径方向外側壁部222には、複数の半径方向スワラ(旋回器)290が組み込まれる。さらに、メインミキサー前方壁部224には、軸方向スワラ280及び複数の燃料噴射口226が組み込まれる。燃料噴射口226は、半径方向スワラ290と軸方向スワラ280の間でメインミキサー前方壁部224に沿って周方向に配設される。燃料噴射口226は、燃料マニホールド(図示せず)と流体連通し、該マニホールドは燃料供給源と流体連通する。燃料ノズル152は、パイロットミキサーキャビティ208内に燃料を供給する。液体燃料について開示しているが、ミキサーアッセンブリ200の例示的な実施例は気体燃料や部分的に気化した燃料とともに使用してもよい。
【0016】
環状のパイロットミキサーハウジング212の前方部分202は、第1のスワラ230を組み込み、該スワラ230は、パイロットミキサー隔壁214の上流に位置し、燃料ノズル152の一部を半径方向に取り囲む。第1のスワラ230の下流方向に隣接した第2のスワラ240がパイロットミキサーハウジング212の前方部分202に組み込まれる。第2のスワラ240は、パイロットミキサー隔壁214の上流に位置し、燃料ノズル152の一部を半径方向に取り囲む。第1のスワラ230及び第2のスワラ240は、ミキサーアッセンブリ200の中心線218から実質的に半径方向(放射状)に延びる軸248をそれぞれ有する。スワラ内側コーン252により第1のスワラ230と第2のスワラ240が隔てられる。一実施例では、パイロットミキサー210から流れる燃料/空気混合物は、メインミキサー220から流れる燃料/空気混合物と一緒に回転して、特に、メインミキサー220からの低温の空気がパイロットミキサー210の火炎を消す恐れのある低出力運転時において、パイロットミキサーハウジング212の後方部分204とともに、2つの空気流間の望ましくない混合を最小限にする。
【0017】
図3に示すように、第1のスワラ230は、第2のスワラ240より幅広くなっている。第1および第2のスワラ230,240は、スワラを通流する空気を旋回させる複数のベーンをそれぞれ有し、空気と燃料ノズル152から供給される燃料とを混合させる。第1のスワラ230は、複数の第1のベーン232を有し、該ベーン232間に複数の第1の空気流路234を画定する。ベーン232は、軸248に対して第1の角度をなして位置づけられ、パイロットミキサーキャビティ208に第1の方向(例えば、時計回り)において空気を回転させる。第2のスワラ240は、複数のベーン242を有し、該ベーン242間に複数の第2の空気流路244が画定される。ベーン242は、軸248に対して第2の角度をなして位置づけられ、パイロットミキサーキャビティ208において異なる角度で第1の方向(例えば、時計回り)に空気を回転させる。2つのスワラ230,234が異なる角度を有することにより、高いせん断が生じ、燃料フィルムを霧化してスワラ内側コーン252上に供給することが助長される。燃料フィルムは、旋回する空気流間でせん断され、フィルムにおける不安定性及びせん断により燃料フィルムが小さな液滴(飛沫)となり微細な液滴が生じる。開示した旋回方向は例示的なものであり、これに限定されない。通流する空気の旋回方向を変えるように、スワラにおけるベーンの形態を変更してもよい。
【0018】
霧化され供給されると、燃料/空気混合物は点火されて、環状のパイロットミキサーハウジング212の後方部分204とパイロットミキサー隔壁214との間のコーナー部206でかつパイロットミキサーキャビティ208に凹をなすコーナー再循環領域250が生じる。このコーナー再循環領域250は、パイロットミキサーハウジング212の後方部分204によりメインミキサー220から効果的に保護される。コーナー再循環領域250は、狭い第2のスワラ240から流れる空気が急速に膨張することにより生じ、空気はパイロットミキサーキャビティ208内のコーナー部206へと素早く広がる。コーナー再循環領域250は、パイロットミキサーキャビティ208のコーナー部206において高温の生成物を効果的に再循環させ、燃焼器100の残部から独立して、パイロットミキサー210の安定性を維持し、これにより、パイロットミキサー210の火炎の保護及び安定性が向上する自立型の高温ガス源がもたらされる。コーナー再循環領域250により、パイロットミキサー210のパイロットミキサーハウジング212から流出して圧縮室130(図2)に流入する前に燃料が完全燃焼し、これにより、望ましくない不完全燃焼によるCO(一酸化炭素)及びUHC(未燃炭化水素)の生成が最小限に抑えられる。燃焼器100の中央の再循環領域はパイロットミキサー210を安定化させるように機能する一方で、パイロットミキサー210は独自の離間し独立した安定性の源を有する。
【0019】
図3を参照すると、パイロットミキサー210、特に、コーナー再循環領域250が位置する環状のパイロットミキサーハウジング212のコーナー部206を過度の熱から保護するため、該ハウジング212の後方部分204の内側面及びパイロットミキサー隔壁214の下流側面に断熱コーティングが施される。メインミキサー半径方向内側壁部219を画定するパイロットミキサーハウジング212の後方部分204の外側面は、メインミキサー環状キャビティ228を通る高速でかつ乱流の激しい空気流によって冷却され、後方の対流冷却をもたらす。さらに、複数の第1の開口部213が、パイロットミキサーハウジング212の後方部分204を貫通して長手方向に延びて周方向に配設され、該開口部を通る冷却空気によりパイロットミキサーハウジング212が冷却される。また、パイロットミキサーハウジング212の後方部分204を長手方向に貫通する第1の開口部213を通流する冷却空気によって、パイロットミキサーハウジング212の先端部が冷却される。第1の開口部213を通流する冷却空気は、第1の開口部213からパイロットミキサーハウジング212の後方部分204の内側面まで延びている通路203を通って流れ、パイロットミキサーハウジング212にしみ出し(effusion)冷却をもたらす。パイロットミキサー210は、パイロットミキサー隔壁214の前方面の上流側にパイロットミキサー前方壁216を有し、パイロットミキサーハウジング212の前方部分202と後方部分204とを接続する。パイロットミキサー前方壁216とパイロットミキサー隔壁214の前方面との間にスペース207が画定される。複数の第2の開口部217がパイロットミキサー前方壁216を横断方向に延びて周方向に配設され、該開口部を冷却空気が通流してパイロットミキサー隔壁214の前方面を冷却して、パイロットミキサーハウジング212に後方のインピンジメント冷却をもたらす。複数の第3の開口部215が、パイロットミキサーハウジング212の後方部分204の内側面に近接するパイロットミキサー隔壁214を横断方向に延びて周方向に配設され、パイロットミキサー前方壁216における第2の開口部217を通流する空気の少なくとも一部が第3の開口部215を通って流れてパイロットミキサーハウジング212の内側面にフィルム冷却をもたらす。
【0020】
例示的な実施例を参照して本発明について説明してきたが、開示した実施例は例示的なものであり、限定的なものではない。当業者であれば本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更や修正を加えることが可能であることを理解されるであろう。
【符号の説明】
【0021】
10 ガスタービンエンジン
20 ファンセクション
30 圧縮セクション
40 燃焼セクション
50 タービンセクション
52,54 タービン
100 燃焼器
110 第1の燃焼領域
120 第2の燃焼領域
130 圧縮室
132 側壁
134 側壁
136 前方隔壁
150 燃料インジェクタ
200 ミキサーアッセンブリ
204 後方部分
206 コーナー部
208 パイロットミキサーキャビティ
210 パイロットミキサー
212 パイロットミキサーハウジング
214 パイロットミキサー隔壁
220 メインミキサー
230 第1のスワラ
232 第1のベーン
234 第1の空気流路
240 第2のスワラ
242 ベーン
244 第2の空気流路
250 コーナー再循環領域
252 スワラ内側コーン
図3
図1
図2