(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタにおいては、インクヘッドから吐出される各色のインクを記録媒体上で重ね合わせて所望の色を印刷するので、インクヘッド間の特性のばらつき、インクノズルの目詰まり、インク滴の飛行曲がり、インクのミスト化等の問題により、記録媒体上で色ブレや色ムラが生じる。また、特にインクジェットプリンタにより布帛に捺染する場合には、布帛の網目の影響によりモアレが発生しやすい。
【0005】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタによれば、モアレの発生を抑えるために、布帛上に生じたモアレの確認、インクドロップの付着位置の変更等の処理が必要になるため、装置の複雑化及び作業の煩雑化の問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置を複雑化及び作業を煩雑化することなく、記録媒体上における色ブレ及び色ムラの発生を抑えたインクジェット印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインクジェット印刷装置は、記録媒体に印刷する色に予め混合した混合インクを吐出する混合インクヘッドを備え、上記混合インクヘッドは、上記記録媒体上に着弾した上記混合インクのインク滴が、上記記録媒体上において隣接するインク滴と重なるように、上記混合インクを吐出するものであり、上記混合インクは、上記記録媒体上に所定の濃度の色が印刷されるように、上記記録媒体上におけるインク滴の重なり量に応じてその濃度が調製されていることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、印刷する画像を構成する色を記録媒体上で再現するために、記録媒体に印刷する色に予め混合した混合インクを用い、単一のインクヘッドから吐出するので、インクヘッド間の特性のばらつき、インクヘッドの目詰まり、飛行曲がり、インクのミスト化によるインクの吐出量の変動等が生じたとしても、印刷される画像に色ブレが生じない。したがって、装置を複雑化及び作業を煩雑化することなく、記録媒体上における色ブレ及び色ムラの発生を抑えることができる。
【0009】
また、隣接するインク滴が重なり合うので、記録媒体上において隣接するインク滴間にドット抜けが生じず、プリントパス間の送りムラにより発生するモアレによる色ムラ、記録媒体の搬送ムラによる色ムラ、混合インクの飛行曲がりによる筋状の色ムラ等の発生も防ぐことができる。さらに、例えば記録媒体として布帛を用いる場合であっても、印刷された画像に繊維の網目の影響によるモアレが生じない。すなわち、布帛における繊維の網目の周期と印刷解像度の周期とのずれにより生じていたモアレの発生を防ぐことができる。
【0010】
さらに、隣接するインク滴の重なり量に応じてインクの濃度を調製しているので、より色ムラの発生を抑えることが可能であり、画像を構成する色を記録媒体上においてより好適に再現することができる。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置は、上記混合インクヘッドから上記記録媒体に吐出される上記混合インクの吐出位置及び吐出量を制御する吐出制御手段を備えていることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、混合インクヘッドからのインクの吐出位置及び吐出量を制御することによって、プリントパス間の送りムラにより発生するモアレによる色ムラ、記録媒体の搬送ムラによる色ムラ、混合インクの飛行曲がりによる筋状の色ムラ等の発生を防ぐことができる。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置において、上記吐出制御手段は、同一色の上記混合インクにより印刷される印刷領域内において、上記インク滴の着弾径が、上記記録媒体に印刷される上記画像の解像度に対応するドットピッチの1.8〜5倍となるように、上記混合インクヘッドからの上記混合インクの吐出量を制御することが好ましい。これにより、混合インクヘッドから吐出された混合インクに飛行曲がりが生じ、着弾位置がずれても、隣接するドットによりドット抜けが補われ、筋状の色ムラが生じない。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置において、上記吐出制御手段は、同一色の上記混合インクにより印刷される印刷領域内が、当該混合インクによってベタに塗りつぶされるように、上記混合インクヘッドに上記混合インクを吐出させることが好ましい。これにより、プリントパス間の送りムラにより発生するモアレによる色ムラ、記録媒体の搬送ムラによる色ムラ、混合インクの飛行曲がりによる筋状の色ムラ等の発生をより確実に防ぐことができる。
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置において、上記吐出制御手段は、互いに異なる上記混合インクにより印刷する2つの印刷領域の境界において、先に印刷された印刷領域に後から印刷された印刷領域が重なるように、上記混合インクヘッドからの上記混合インクの吐出量を制御することが好ましい。これにより、隣接する印刷領域が互いの端部において重なり合うので、印刷領域間の境界における色抜けの発生を抑えることができる。
【0016】
本発明に係るインクジェット印刷装置において、上記記録媒体は布帛であることが好ましい。これにより、色ブレ及び色ムラの発生を抑えたテキスタイル印刷を実現することができる。
【0017】
本発明に係るインクジェット印刷装置は、複数のインクを色毎にそれぞれ吐出するインクヘッドをさらに備え、上記吐出制御手段は、上記記録媒体上に印刷する画像を構成する色が所定の色数よりも多いとき、上記インクヘッドから吐出されたインク滴を上記記録媒体上において重ね合わせて、上記記録媒体上に上記画像を構成する色が印刷されるように、上記インクヘッドからの上記インクの吐出位置及び吐出量を制御することが好ましい。これにより、画像に含まれる色数が多い領域や、フルカラープリントする領域の印刷も良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るインクジェット印刷装置は、記録媒体に印刷する色に予め混合した混合インクを吐出する混合インクヘッドを備え、混合インクヘッドは、記録媒体上に着弾した混合インクのインク滴が、記録媒体上において隣接するインク滴と重なるように、混合インクを吐出するものであり、混合インクは、記録媒体上に所定の濃度の色が印刷されるように、記録媒体上におけるインク滴の重なり量に応じてその濃度が調製されているているので、装置を複雑化及び作業を煩雑化することなく、記録媒体上における色ブレ及び色ムラの発生や、モアレの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置の概要について、
図1を参照して以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置の部分概略図である。
図1に示すように、インクジェット印刷装置10は、混合インクを吐出する第1混合インクヘッド(H1)11を備えている。インクジェット印刷装置10は、この混合インクを吐出する混合インクヘッドを、印刷に使用する混合インクの数と同数備えている。すなわち、インクジェット印刷装置10は、印刷に使用する混合インクの数がn個の場合混合インクヘッドをn個備えている。
【0021】
図1では、説明の便宜上、第2混合インクヘッド(H2)12、第3混合インクヘッド(H3)13、及び第n混合インクヘッド(Hn)1nを記載している。これらの混合インクヘッドは、インクヘッドセット1に設けられており、インクヘッドセット1が記録媒体2に対向する位置において、記録媒体2に対して略平行に、
図1に示す矢印方向に移動するのに伴って移動し、記録媒体2に対してインクを吐出するようになっている。
【0022】
各混合インクヘッドが吐出する混合インクは、記録媒体2に印刷する色に予め混合したものである。インクジェット印刷においては、従来、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の基本4色のインクか、これらにライトマゼンダ及びライトシアンを加えた6色のインクを用いて、これらのインクのインク滴を記録媒体2上において適宜重ね合わせることによって、カラー印刷している。インクジェット印刷装置10においては、これらのインクを混合して予め印刷に使用する混合インクを準備しておき、当該混合インクを記録媒体2に吐出することによって、記録媒体2上に所望の画像をカラー印刷する。
【0023】
各混合インクヘッドに導入される混合インクは、記録媒体2に印刷する画像を構成する色を予め特定し、例えば当該画像中において出現頻度の高い順に混合して、各混合インクヘッドのインクタンク(図示せず)内に色毎に導入して印刷に使用すればよい。
【0024】
混合インクとして、例えば、画像中において出現頻度の最も高い第1の色T1は、YMCKの基本4色のインクを、Y1対M1対C1対K1の比率で混合した第1混合インクIt1により再現される色であるとすると、以下の式(a)で表される第1混合インクインクIt1をYMCKの基本4色のインクを用いて予め混合し、準備する。
【0025】
It1=Y1+M1+C1+K1 (a)
同様に、画像中において次に出現頻度の高い色を準備し、n番目に出現頻度の高い第nの色Tnを再現する第n混合インクItnを、以下の式(b)で表されるように混合し、準備する。
【0026】
Itn=Yn+Mn+Cn+Kn (b)
なお、記録媒体2に印刷される画像を構成する色を再現する再現色と、混合インクにおけるYMCKの基本4色インクの混合比率との関係は、予め色表プリント、発色処理後の測色、及びインクの組成の関係を、実験及び測定により算出して得られたデータに基づいて決定される。
【0027】
混合インクにおけるインクの混合比率は、例えば、以下のように決定することができる。ここでは、例として、Y、M及びCの3色を混合する場合のインクの混合比率の決定方法を説明する。
【0028】
まず、インクジェットプリンタを用いて、1色の混合比率を固定し、他の2色の混合比率を、例えばインクの量を0、1、2、・・・、k、・・、nとn段階に変化させた全ての組み合わせについて、
図7の(a)〜(c)に示すようなカラーチャート(色表)をプリントする。
図7は、混合インクの混合比率の決定に用いるカラーチャートの例を示す図である。nは大きいほど正確な色の再現が可能であるが、ここでは説明の便宜上、n=6の場合を例として示している。
【0029】
図7中(a)は、C=0に固定して、YとMとをそれぞれ0、20、40、60、80及び100%の比率で混合した再現色表を示している。
図7中(b)は、M=0に固定して、YとCとをそれぞれ0、20、40、60、80及び100%の比率で混合した再現色表を示している。
図7中(c)は、Y=0に固定して、MとCとをそれぞれ0、20、40、60、80及び100%の比率で混合した再現色表を示している。
【0030】
そして、
図7の(a)〜(c)のカラーチャートに示すように、すべての色の混合比率をそれぞれ20%間隔で変化させたインクをプリントした時の色を測色し、測色結果を印刷媒体上における色再現結果として、インクの混合比率と関連づけてデータ保存しておく。
【0031】
印刷媒体上にプリントしたい色の混合比率を決定するとき、
図7の(a)〜(c)に示すカラーチャートからプリントしたい色を探し、保存したデータからその色の混合比率X1を抽出する。プリントしたい色にぴったりの色が見つからない場合には、最も似た色からプリントしたい色までの距離を算出し、近似計算やグラフ化等により、プリントしたい色により近い混合比率を算出する。
【0032】
得られた混合比率X1になるように、Y、M及びCの各インクを混合し、混合インクMI1を調製する。他の再現色が必要な場合には、同様に混合インクMI2、MI3、・・・、MInと必要な数だけ作製する。
【0033】
そして、混合したインクをインクジェット印刷装置10に搭載してプリントし、所望の再現色の印刷物を得る。必要であれば、印刷物に再現された色を測色し、プリントしたい色が希望通りに再現されたか否かを確認する。印刷物に再現された色が希望する色と異なる場合には、混合インクの混合比率を再調製する。
【0034】
インクジェット印刷装置10は、上述したように調製した第1混合インク〜第n混合インクを、インクヘッドセット1の第1混合インクヘッド11〜第n混合インクヘッド1nにそれぞれ導入し、記録媒体1に対して吐出されるようになっている。
【0035】
また、インクヘッドセット1には、YMCKの基本4色をそれぞれ吐出する、イエローインクヘッド(HY)21、マゼンダインクヘッド(HM)22、シアンインクヘッド(HC)23、及びブラックインクヘッド(HK)24を備えていてもよい。したがって、インクジェット装置10は、記録媒体2に印刷される画像を構成する色に予め混合した各混合インクと、基本4色のインクとにより、画像を印刷することができる。なお、インクヘッドセット1に設けられた各混合インク用の混合インクヘッドと基本4色用のインクヘッドとは、導入されるインクの種類が異なるのみで、同様に構成することができる。
【0036】
次に、
図2を参照して、インクジェット印刷装置10による印刷形態について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置10により印刷した記録媒体2の例を示す図である。
図2に示すように、例えば、記録媒体2に印刷された画像は、領域(a)〜(f)の印刷領域に区分される。
【0037】
図2において、領域(a)は、記録媒体2全体の背景となる地色であり、均一に同一色(明度、彩度及び色相)に印刷された領域である。領域(b)及び(c)は、比較的大きな面積に亘って、均一に同一色のみを用いて印刷された領域である。領域(d)は、比較的大きな面積に亘って、単色の地模様、小さな柄等が、同一色のインクのみを用いて印刷された領域である。領域(e)は、比較的小さな面積の文字、記号、細線、模様、地模様等が、多色印刷された領域である。領域(f)は、自然画、写真等のようなフルカラー画像が印刷された領域である。
【0038】
インクジェット印刷装置10において、領域(a)〜(d)は、当該領域を構成する色を再現するように予め調製された混合インクを、それぞれ混合インクヘッドから吐出して印刷される。なお、印刷の高速化及び高濃度化が必要な場合には、同一の混合インクを複数の混合インクヘッドから吐出して印刷してもよい。
【0039】
このように、単一の色により構成された画像を印刷するとき、当該色を再現するように予め混合した混合インクを用い、単一のインクヘッドから吐出するので、インクヘッド間の特性のばらつき、インクヘッドの目詰まり、飛行曲がり、インクのミスト化によるインクの吐出量の変動等が生じたとしても、印刷される画像に色ブレが生じない。
【0040】
領域(e)は、基本4色用のインクヘッドから吐出したインクにより、記録媒体2上において、領域(e)を構成する色を再現する。具体的には、従来のインクジェット印刷と同様に、基本4色用のインクヘッドから吐出されたインクにより記録媒体2を印刷し、これらのインクのインク滴を記録媒体2上において適宜重ね合わせることによって、記録媒体2上に領域(e)を構成する色のドットを印刷する。
【0041】
なお、領域(e)のように、複数の色により構成された画像を印刷するとき、予め準備した混合インクとは異なる色が必要な場合には、基本4色用のインクヘッドから吐出されたインクにより記録媒体2を印刷し、予め準備した混合インクにより再現される色の場合は、予め混合した混合インクを用いて記録媒体2を印刷すればよい。例えば、対象領域内の画像に含まれる色数が30色以下、より好ましくは16色以下の場合には、予め準備する混合インクの数が多すぎないため、領域(a)〜(d)と同様に、当該色を再現するインクを予め混合して混合インクを準備し、印刷に用いてもよい。
【0042】
領域(f)は、フルカラープリントする領域であり、これらの色を全て混合インクとして準備すると、混合インクの色が多くなりすぎるため、従来のインクジェット印刷と同様に、基本4色用のインクヘッドから吐出されたインクにより印刷すればよい。
【0043】
上述したように、特に色ブレが生じやすい背景や淡色の模様等を印刷する領域においては、当該色を再現するように予め混合した混合インクを用いて印刷し、同一の混合インクを単一の混合インクヘッドから吐出するので、インクヘッド間の特性のばらつき、インクヘッドの目詰まり、飛行曲がり、インクのミスト化によるインクの吐出量の色間における変動等が生じたとしても、印刷される画像に色ブレが生じない。したがって、印刷画像の再現性が高い。
【0044】
また、インクジェット印刷装置10は、混合インクヘッドから吐出され記録媒体2上に着弾した混合インクのインク滴が、記録媒体2上において隣接するインク滴と重なるように、混合インクヘッドから記録媒体2へと吐出される混合インクの吐出位置及び吐出量を制御する吐出制御部(吐出制御手段)(図示せず)を備えていてもよい。
【0045】
混合インクのインク滴が隣接するインク滴と重なるように、混合インクの吐出位置及び吐出量を制御することによって、例えば記録媒体2として布帛を用いる場合であっても、印刷された画像に繊維の網目の影響によるモアレが生じない。すなわち、布帛における繊維の網目の周期と印刷解像度の周期とのずれにより生じていたモアレの発生を防ぐことができる。また、プリントパス間の送りムラにより発生するモアレによる色ムラの発生、記録媒体2の搬送ムラによる色ムラの発生等も防ぐことができる。
【0046】
また、モアレの発生をより確実に防ぐために、吐出制御部は、同一色の上記混合インクにより印刷される印刷領域内が、当該混合インクによってベタに塗りつぶされるように、上記混合インクヘッドに上記混合インクを吐出させることが好ましい。
【0047】
隣接するインク滴同士が重なるように混合インクヘッドから混合インクを吐出するとき、吐出制御部は、例えば混合インクの吐出量を制御して、記録媒体2の送りピッチに対して混合インクの着弾径を大きくすればよい。従来の基本4色のインクを用いたインクジェット印刷では、インクの着弾径を大きくすると再現できる色数が大幅に低減し、吐出するインク量が多くなりすぎてインクの滲みが生じやすかった。一方、インクジェット印刷装置10においては、混合インクを用いるため、インクの着弾径を大きくしても上述の問題は生じない。
【0048】
また、
図3に示すように、記録媒体2上に先に印刷した領域31と後に印刷した領域32との間のように、混合インクの吐出位置ずれにより、隙間が生じることがある。この印刷領域間に生じた隙間において、記録媒体2の地色がそのまま見えるために、印刷画像が粗くなってしまう。
【0049】
そこで、
図4に示すように、記録媒体2上に先に印刷した領域41と後に印刷した領域42との間のように、領域間の境界が重なるように、例えば領域42のエッジを1〜数ドット分広げて印刷すればよい。特に、隣接する2つの印刷領域間において、互いに異なる混合インクにより印刷する場合、背景領域に用いられるような淡い色の混合インクにより印刷される領域41を、図形又は文字描画領域に用いられるような濃い色の混合インクにより印刷される領域42よりも先に印刷し、淡い色の領域41上に濃い色の領域42が重なるようにすれば、印刷画像全体に及ぼす濃度の変化の度合いが小さくなり、境界における色抜けの修正が目立たないため好ましい。なお、混合インクの濃淡については、使用する混合インクの種類に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
ここで、印刷画像における筋状の色ムラやモアレは、インクヘッドから吐出されたインクが記録媒体2に着弾するまでの飛行曲がりによって生じることもある。インクジェット印刷装置10においては、上述したように、吐出制御部により、隣接するインク滴が重なるように混合インクヘッドから混合インクを吐出するので、このような飛行曲がりによる色ムラ及びモアレの発生を防ぐことができる。
【0051】
具体的には、同一色の混合インクにより印刷される領域内において、インク滴の着弾径が、記録媒体2に印刷される画像の解像度に対応するドットピッチ(解像度ピッチ)の1.8〜5倍となるように、混合インクヘッドからの混合インクの吐出量を制御する。インク滴の着弾径は、画像の解像度に対応するドットピッチの1.8〜5倍であることが好ましく、2〜4倍であることがより好ましく、2.24〜3倍であることが最も好ましい。
【0052】
このように混合インクの吐出量を制御することによって、1ドットが抜けるようにインク滴の着弾位置がずれたとしても、隣接するドットにより抜けた箇所が二次元的にカバーされる。例えば、インク滴の着弾径が解像度ピッチの1.8倍以上であれば、解像度ピッチの1/2分の着弾位置のずれや飛行曲がりがあっても、隣接するドット間にインクがのらない筋状の空白が生じない。
【0053】
ここで、飛行曲がりによる筋状の色ムラを発生させない条件の一実施例について、
図5及び6を参照して説明する。
図5及び6は、インクヘッドから吐出されたインク滴の着弾ずれ量とドット半径との関係を示す図である。まず、2つのインク滴のドット間距離をXとしたとき、2つのドットの真中において2Pの幅で重なり合う条件は、以下の式(1)により表される。
【0054】
{(1/2)X}
2+(1/2P)
2=R
2 (1)
式(1)より、
図5中のB点の1ドットに飛行曲がりが発生しても、A及びC点のドットが繋がって抜けを完全に埋め合う条件Rは、以下の式(2)により求められる。
【0055】
R=[{(1/2)X}
2+(1/2P)
2]
1/2 (2)
X=2Pであるとき、Rは以下の式(3)のように算出される。
【0056】
R={P
2+(1/2P)
2}
1/2=1.25
1/2P≒1.118P(直径は2.2
36P) (3)
また、最大1/2ドットピッチだけ離れる方向にドットがずれるとき、隣接するドット間に隙間を生じさせない条件は、上記式(2)において、X=1.5Pとして、以下の式(4)のように求められる。
【0057】
R=[{(1/2)1.5P}
2+(1/2P)
2]
1/2=(0.8125)
1/2P≒0.9014P(直径は1.8028P) (4)
また、最大1/4ドットピッチだけ離れる方向にドットがずれるとき、隣接するドット間に隙間を生じさせない条件は、上記式(2)において、X=1.25Pとして、以下の式(5)のように求められる。
【0058】
R=[{(1/2)1.25P}
2+(1/2P)
2]
1/2={0.390625P
2+0.25P
2}
1/2≒0.8004P (5)
また、最大0ドットピッチだけ離れる方向にドットがずれるとき、隣接するドット間に隙間を生じさせない条件は、上記式(2)において、X=1.0Pとして、以下の式(6)のように求められる。
【0059】
R=[0.25P
2+0.25P
2]
1/2=(0.5)
1/2P≒0.7071P (6)
このようなドットの着弾位置のずれ量と筋状の色ムラを発生させないドット半径との関係は、
図6のように示される。上述したように算出すれば、
図5に示すように、ドット半径が1.414P=(2)1/2Pになると、X=2Pとなり、隣接するドットがさらにその隣の位置(2P)までずれても、ドットが繋がるため筋状の色ムラが生じない。
【0060】
なお、インク滴の着弾径を解像度ピッチよりも大きくすると、隣接するインク滴間に重なりが生じるため、使用する混合インクを、記録媒体2上に所定の濃度の色が印刷されるように、インク滴の重なり量に応じてその濃度を調製していてもよい。
【0061】
インク滴の重なり量に応じた混合インクの濃度は、例えば、以下のように、予め重なり量と混合インクの濃度との関係を算出し、算出結果に基づいて調整することができる。
【0062】
まず、
図8に示すように、ドットの解像度ピッチPv(縦)とPh(横)から単位解像度あたりの面積S
0を算出する。
図8は、インク滴の重なり量に応じてインク濃度を調製する方法を説明する図である。
図8に示すように、面積S
0=Pv×Phを算出する。
【0063】
次に、ドットの半径をrとして、ドット面積Sp=πr
2を算出する。そして、ドットの重なり面積Sd=Sp−S
0を算出し、ドットの重なり率K=Sd÷S
0を算出する。このように算出したKと、混合インクの印刷平均濃度との関係を、解像度ピッチP
0又はドットサイズ(r)を変えて測定する。例えば、印刷平均濃度が10%増加した場合には、混合インクの濃度を1÷1.05に低下させればよい。
【0064】
インクジェット印刷装置10より印刷する記録媒体2として、布帛を好適に用いることができる。布帛に印刷する画像は、背景全体が淡色で塗りつぶされ、文様自体も色の薄い柄であるものが多い。したがって、インクジェット印刷装置10の混合インクヘッドから吐出された混合インクにより上述したように印刷することによって、同一の混合インクにより印刷される領域内において、ドットが形成されずベタに印刷されるので、色間のドットずれやノズル間の着弾ずれによる色ムラが生じない。
【0065】
インクジェット印刷装置10において用いられるインクとしては特に限定されないが、酸性インク、反応性インク、分散(昇華)インク及び水性顔料インクのような捺染インク、ラテックスインク、レジンインク、エマルジョンインク、UV硬化型インク、水性UV硬化型インク、溶剤希釈UVインク、ソルベントインク等を好適に使用可能である。
【0066】
混合インクは、必ずしも複数のインクを混合したインクである必要はなく、基本4色のみにより構成される領域、すなわち例えばシアン色の背景領域を印刷するような場合には、シアンインクを用いればよい。また、混合インクによる印刷領域を分けずに、例えば背景色の混合インク画像に、他の混合インク画像やフルカラー画像を重ねて印刷してもよい。さらに、印刷するドットサイズが、解像度ピッチの1.8〜5倍以上であるという条件を満たせば、インクに白、金、銀、特色等を混合せずに使用するインクであってもよい。
【0067】
インクジェット印刷装置10は、インクヘッドセット1がY軸上を移動し、記録媒体2がX軸上を移動する一般的な縦型プリンタ、インクヘッドセット1がX軸上を移動し、記録媒体2がY軸上を移動する一般的な横型プリンタ、記録媒体2自体ではなく、記録媒体2の架台を移動させるフラットベットタイプのプリンタ、記録媒体2をベルト移動させるベルト移動タイプのプリンタ、インクヘッドセット1又は記録媒体2の少なくとも一方がXYZの3つの軸上を移動する三次元プリンタ等であってもよく、その印刷方式は限定されない。
【0068】
記録媒体2としては、上述した布帛に限定されず、種々の記録媒体を色ブレ及び色ムラの発生を低減した印刷を行う目的で使用することができる。
【0069】
このように、インクジェット印刷装置10によれば、各インクヘッドから吐出されたインクを記録媒体2上において混色してカラー印刷せずに、予め混合した混合インクを用いて印刷するので、色ブレが生じない。このように、インクジェット印刷装置10においては、スクリーン捺染と同様に印刷する画像に含まれる色の数だけ混合インクを準備し、インクジェット印刷するので、スクリーン捺染のように色毎に版を作製する必要がなく、かつ自由に中間調色を再現することができる。
【0070】
また、隣接するインク滴が重なるように混合インクヘッドからの混合インクの吐出位置及び吐出量を制御するので、印刷領域内がベタ印刷され、ドット間及びプリントパス間の送りピッチ等の空間周波数成分と干渉し、モアレによる色ムラの原因となる空間周波数成分が、印刷画像中に生じなくなる。さらに、モアレによる色ムラは、インクヘッド間及び記録媒体2として布帛を用いた場合の繊維の網目間においても発生しない。
【0071】
(付記事項)
上記の課題を解決するために、インクジェット印刷装置10は、記録媒体2に印刷する色に予め混合した混合インクを吐出する混合インクヘッドを備え、混合インクヘッドは、記録媒体2上に着弾した混合インクのインク滴が、記録媒体2上において隣接するインク滴と重なるように、混合インクを吐出するものであり、混合インクは、記録媒体2上に所定の濃度の色が印刷されるように、記録媒体2上におけるインク滴の重なり量に応じてその濃度が調製されている。
【0072】
上記の構成によれば、印刷する画像を構成する色を記録媒体2上で再現するために、記録媒体2に印刷する色に予め混合した混合インクを用い、単一のインクヘッドから吐出するので、インクヘッド間の特性のばらつき、インクヘッドの目詰まり、飛行曲がり、インクのミスト化によるインクの吐出量の変動等が生じたとしても、印刷される画像に色ブレが生じない。したがって、装置を複雑化及び作業を煩雑化することなく、記録媒体2上における色ブレ及び色ムラの発生を抑えることができる。
【0073】
また、隣接するインク滴が重なり合うので、記録媒体2上において隣接するインク滴間にドット抜けが生じず、プリントパス間の送りムラにより発生するモアレによる色ムラ、記録媒体2の搬送ムラによる色ムラ、混合インクの飛行曲がりによる筋状の色ムラ等の発生も防ぐことができる。さらに、例えば記録媒体2として布帛を用いる場合であっても、印刷された画像に繊維の網目の影響によるモアレが生じない。すなわち、布帛における繊維の網目の周期と印刷解像度の周期とのずれにより生じていたモアレの発生を防ぐことができる。
【0074】
さらに、隣接するインク滴の重なり量に応じてインクの濃度を調製しているので、より色ムラの発生を抑えることが可能であり、画像を構成する色を記録媒体上においてより好適に再現することができる。
【0075】
インクジェット印刷装置10は、混合インクヘッドから記録媒体2へと吐出される混合インクの吐出位置及び吐出量を制御する吐出制御部を備えている。
【0076】
上記の構成によれば、混合インクヘッドからのインクの吐出位置及び吐出量を制御することによって、プリントパス間の送りムラにより発生するモアレによる色ムラ、記録媒体2の搬送ムラによる色ムラ、混合インクの飛行曲がりによる筋状の色ムラ等の発生を防ぐことができる。
【0077】
インクジェット印刷装置10において、吐出制御部は、同一色の混合インクにより印刷される印刷領域内において、インク滴の着弾径が、記録媒体2に印刷される画像の解像度に対応するドットピッチの1.8〜5倍となるように、混合インクヘッドからの混合インクの吐出量を制御することが好ましい。これにより、混合インクヘッドから吐出された混合インクに飛行曲がりが生じ、着弾位置がずれても、隣接するドットによりドット抜けが補われ、筋状の色ムラが生じない。
【0078】
インクジェット印刷装置10において、吐出制御部は、同一色の混合インクにより印刷される印刷領域内が、当該混合インクによってベタに塗りつぶされるように、混合インクヘッドに上記混合インクを吐出させる。これにより、プリントパス間の送りムラにより発生するモアレによる色ムラ、記録媒体2の搬送ムラによる色ムラ、混合インクの飛行曲がりによる筋状の色ムラ等の発生をより確実に防ぐことができる。
【0079】
インクジェット印刷装置10において、吐出制御部は、互いに異なる混合インクにより印刷する2つの印刷領域の境界において、先に印刷された印刷領域に後から印刷された印刷領域が重なるように、上記混合インクヘッドからの上記混合インクの吐出量を制御することが好ましい。これにより、隣接する印刷領域が互いの端部において重なり合うので、印刷領域間の境界における色抜けの発生を抑えることができる。
【0080】
インクジェット印刷装置10において、記録媒体2は布帛であることが好ましい。これにより、色ブレ及び色ムラの発生を抑えたテキスタイル印刷を実現することができる。
【0081】
インクジェット印刷装置10は、複数のインクを色毎にそれぞれ吐出するインクヘッドをさらに備え、吐出制御部は、記録媒体2上に印刷する画像を構成する色が所定の色数よりも多いとき、インクヘッドから吐出されたインク滴を記録媒体2上において重ね合わせて、記録媒体2上に画像を構成する色のドットが印刷されるように、インクヘッドからのインクの吐出位置及び吐出量を制御することが好ましい。これにより、画像に含まれる色数が多い領域や、フルカラープリントする領域の印刷も良好に行うことができる。
【0082】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。