特許第5985253号(P5985253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985253
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】粘性流体の分配器
(51)【国際特許分類】
   F17D 1/14 20060101AFI20160823BHJP
   A23G 3/50 20060101ALN20160823BHJP
【FI】
   F17D1/14
   !A23G3/00 102
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-117156(P2012-117156)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-242026(P2013-242026A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502134546
【氏名又は名称】株式会社アオバ
(74)【代理人】
【識別番号】100066728
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100141841
【弁理士】
【氏名又は名称】久徳 高寛
(74)【代理人】
【識別番号】100119596
【弁理士】
【氏名又は名称】長塚 俊也
(74)【代理人】
【識別番号】100100099
【弁理士】
【氏名又は名称】宮野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100114
【弁理士】
【氏名又は名称】西岡 伸泰
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆重
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−049907(JP,A)
【文献】 特開平11−301794(JP,A)
【文献】 特開2008−224326(JP,A)
【文献】 特開2003−311270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 1/00 − 5/08
A23G 1/00 − 9/30
B01J 4/00 − 7/02
B65B 37/00 − 39/14
B67D 1/00 − 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体を押し出す供給器に接続される粘性流体の分配器であって、
前記粘性流体を略均等に分配する分配空間を有し、該分配空間に円周上に複数の接続孔を配置し、前記各接続孔に内径が等しく、長さの等しい配管を夫々着脱可能に接続し、該配管は、夫々屈曲しつつ先端が等間隔に略直線上に並ぶように配置されており、
前記分配空間は、円盤状の分配板と該分配板を上側から塞ぐ蓋部を具え、前記分配板の中央に円錐状のコーンが形成され
前記蓋部には、前記接続孔への前記粘性流体の流量を調整する流量調整部材であって、下方に向けて先端が錐状に尖った流量調整部材を具え、
前記接続孔は、前記分配板の上面から下面に向けて縮径している、
ことを特徴とする分配器。
【請求項2】
前記コーンの傾斜面が前記分配板となすテーパ角は、前記蓋部の内面テーパ角と等しい、
請求項1に記載の分配器。
【請求項3】
前記分配板には前記接続孔が連通し、前記蓋部は前記供給器に接続可能となっている請求項1又は請求項2に記載の分配器。
【請求項4】
前記配管には、前記配管を通過する前記粘性流体の流量を調整する流量調整部材を具える請求項1乃至請求項の何れかに記載の分配器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体を均等に分配する分配器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品加工ラインにて、食用の餡やクリーム、魚のすり身などの粘性流体を均等に分配するために分配器が使用されることがある。また、食品以外の分野においても発泡ウレタン樹脂、塗料、接着剤等の粘性流体にも分配器が使用されることがある。
【0003】
この種の粘性流体の分配器として、特許文献1では、粘性流体の通る配管を順次分岐してなる所謂トーナメント形態の分配管が提案されている。
特許文献1の分配管は、粘性流体の供給器に接続された直管に分岐管を連結し、さらに分岐管に屈曲管を繰り返し連結して構成され、最も下流側の屈曲管の下端を複数直線上に並べたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−154932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記分配器は、上流側から下流側に至るまでに、複数の配管を接続して構成されており、例えば配管を洗浄する際、連結させた配管各々を分解し、洗浄終了後は再度配管を組み立て直す必要がある。
また、分岐管は逆T字型となっており、清掃用具を用いて洗浄する場合、折れ曲がり部分を十分に洗浄できない虞がある。特に食品の分配器においては、配管の洗浄頻度は高いから、このような作業負担が大きくなる。
【0006】
そこで、解体や組立て、洗浄等を簡略化するために、配管中で分岐するのではなく、供給器に複数の直線状の配管を直接連結することも考えられる。しかしながら、この場合、配管どうしで流路抵抗が変わってしまうから、供給器から供給された粘性流体は、配管毎に送出量が異なることとなり、均等な分配を行なうことは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、簡単に分解及び組立てを行なうことができ、粘性流体を均等に分配することのできる分配器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る粘性流体の分配器は、
粘性流体を押し出す供給器に接続される粘性流体の分配器であって、
粘性流体を略均等に分配する分配空間を有し、該分配空間に円周上に複数の接続孔を配置し、各接続孔に内径が等しく、長さの等しい配管を夫々着脱可能に接続し、該配管は、夫々屈曲しつつ先端が等間隔に略直線上に並ぶように配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分配器によれば、配管は屈曲した一本のパイプとすることができるので、洗浄時には配管を簡単に解体又は組直しすることができる。例えば、配管は分岐していない一本のパイプなので、細長い清掃用具を容易に挿通させて内部を洗浄できる。このため、洗浄作業の負担が軽減されると共に、作業を効率化でき、また、作業時間の短縮を図ることができる。
配管が分岐していないから、洗い残しを防止でき、特に食品用途に好適である。
【0010】
また、本発明に係る分配器によれば、複数の配管は、接続している接続孔が分配空間に円周上に配置されているので、分配空間から略均等に分配された粘性流体を略均等に受け入れ、そして屈曲させて内径及び長さを互いに等しくしているので、配管間の流路抵抗は等しく、従って複数の配管から略均等な量の粘性流体を分配することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態である分配器を利用した焼き菓子製造装置を示す概略図である。
図2図2は、蓋部を取り外して上側から見た分配器の斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態である分配器の上面図である。
図4図4は、分配器の蓋部を裏返した状態の斜視図である。
図5図5は、図3に示されるV−V線に沿う分配器の断面図である。
図6図6は、配管から焼き機に粘性流体を送出する前の状態を示す図である。
図7図7は、配管から焼き機に粘性流体を送出している状態を示す図である。
図8図8は、配管から焼き機に粘性流体を送出した後、切断器で切断した状態を示す図である。
図9図9は、バナナ型焼き菓子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、粘性流体を均等に分配する分配器に関するものである。
本明細書中に記載される粘性流体として、自重での流動性が低く、外力を加えることで流動する程度の粘度を有する流体を例示できる。具体的には、食品では、餡、乳脂素材、魚のすり身等、非食品では、シリコン、ゴム等の樹脂組成物を例示できる。
【0013】
以下の説明では、粘性流体として餡(91)を挙げ、該餡(91)をカステラ生地(93)(93)に包んで焼き上げてなる焼き菓子(95)を製造する焼き菓子製造装置(1)に本発明を適用した実施例について図面に沿って説明する。
【0014】
[焼き菓子製造装置(1)]
焼き菓子製造装置(1)は、図1に示すように、上流側から順に、餡(91)を投入して押し出す供給器(2)と、該供給器(2)に接続され、餡(91)を均等に分配する分配器(3)を有する。また、分配器(3)の先端には、分配器(3)から押し出された餡(91)を切り落とす切断器(7)の切断部材(71)が往復可能に配備されており、その下方には、餡(91)が載るカステラ生地を焼き上げる焼き型(81)を具える焼き機(8)が設けられている。
【0015】
[供給器(2)]
供給器(2)は、粘性流体である餡(91)が投入され、下流側の分配器(3)に一定量ずつ押し出す装置である。
【0016】
より具体的には、供給器(2)は、図1に示すように、餡(91)が投入されるタンク(21)を有し、該タンク(21)には、管路(23)の基端が接続されている。管路(23)中には、タンク(21)内の餡(91)を下流側へ押し出すポンプ(25)と、該ポンプ(25)の下流側にバルブ(29)が設けられている。管路(23)の先端は、次に説明する分配器(3)に接続される。
【0017】
供給器(2)は、餡(91)をタンク(21)に投入し、ポンプ(25)を作動させることで一定の圧力で餡(91)を管路(23)の下流側に押し出し、バルブ(29)を所定時間毎に開閉させることで、一定量の餡(91)を一定の圧力で分配器(3)に供給する。
【0018】
[分配器(3)]
分配器(3)は、供給器(2)から一定圧力、一定量の餡(91)の供給を受けて、餡(91)を均等に分配し、押し出す装置である。
【0019】
分配器(3)は、図1乃至図3及び図5に示すように、供給器(2)の管路(23)の先端に接続される蓋部(30)(図1参照)と、該蓋部(30)が上側から被さる分配板(50)と、該分配板(50)に接続された複数の配管(60)(60)を具え、蓋部(30)と分配板(50)との間に形成される分配空間(45)(図5参照)に餡(91)が供給されて、複数の配管(60)(60)に夫々一定量の餡(91)を分配する。
【0020】
分配器(3)は、円盤形状とすることができ、複数の配管(60)(60)は、分配板(50)の中央を中心とする円周上に配置することができる。
【0021】
[蓋部(30)(分配器(3))]
具体的実施形態として、蓋部(30)は、図2乃至図5に示すように、円筒状の蓋筒部(31)と、該蓋筒部(31)の上端近傍を塞ぐ円環状の蓋板(32)を具え、蓋板(32)の中央には円錐台状の凸面(33)が形成された構成とすることができる。凸面(33)の頂部には、前記供給器(2)の管路(23)へ分配器(3)を接続する接続管(34)が取り付けられている。
【0022】
蓋部(30)の内面側は、図4及び図5に示すように、接続管(34)から連通する凸面(33)の内面の円錐台状の空間と、蓋筒部(31)の内面の円筒状の空間が連続して構成され、分配板(50)との間に前記分配空間(45)をなす。
【0023】
蓋板(32)には、蓋板(32)の中央を中心とする円周上に等間隔に複数のネジ穴(36)(36)が開設されており、各ネジ穴(36)(36)には、下方に向けて先端が錐状に尖ったボルト形状のニードル(38)(38)が嵌められており、後述する第2流量調整部材(37)となっている。
なお、ネジ穴(36)(36)の数は、次に説明する分配板(50)に接続される配管(60)(60)の数に対応する。
【0024】
[分配板(50)(分配器(3))]
分配板(50)は、図1図2及び図5に示すように、円板状に形成することができ、上側から前記蓋部(30)が装着可能となっている。
分配板(50)の中央には、分配器(3)の内部にて餡(91)を均等に分配して押し流す分配手段(55)が形成されている。図示の分配手段(55)は、円錐状のコーン(56)であり、該コーン(56)の傾斜面が分配板(50)となすテーパ角は、前記蓋部(30)の凸面(33)の内面テーパ角と等しくなるようにしている。
【0025】
コーン(56)の外周には、分配板(50)の中央を中心とする円周上に等間隔に複数の接続孔(58)(58)が形成されている。図示の接続孔(58)(58)は、分配板(50)の上面から下面に向けて徐々に縮径し、分配板(50)の下面側に取り付けられた接続筒(59)の内孔に連通している。接続筒(59)は、外周にネジが切られている。
【0026】
接続孔(58)(58)の数及びその配置は、前記蓋部(30)のニードル(38)(38)が嵌められるネジ穴(36)(36)の数及びその配置と対応しており、図示の例では、接続孔(58)(58)を9個としている。
【0027】
また、分配板(50)の外周は、フランジ(52)を有し、前記蓋部(30)のフランジ(35)とボルト(41)締めにより、分配板(50)は、蓋部(30)と締結して、分配器(3)を構成する。なお、分配器(3)からの粘性流体の漏れを防止するために、図に示すようにフランジ(35)(52)の内周側に溝(39)(57)を凹設し、パッキン(47)を配備することが望ましい。
【0028】
なお、分配手段(55)は、餡(11)を分配して複数の接続孔(58)(58)へ略均等に向かわせるものであれば、コーン(56)の他に円錐台や半球体等のテーパ状に突出している突起を例示できる。
【0029】
また、分配器(3)には、夫々接続孔(58)(58)を流れる餡(91)の量を調整するためのニードル(38)(38)が第2流量調整部材(37)(37)として配備されており、餡(91)の粘性、温度、湿度等に起因する、接続孔(58)(58)を通る餡(91)の流量のばらつきを調整することができる。具体的には、ボルト形状のニードル(38)を締める、又は緩めることで、先端が蓋部(60)のネジ穴(36)と分配板(50)の接続孔(58)との間を進退して接続孔(58)の絞りを調整し、餡(91)の流量を調整する。
【0030】
[配管(60)(分配器(3))]
配管(60)は、前記分配空間(45)から一定圧、一定量で押し出された餡(91)を焼き機(8)に供給する管である。
本発明では、すべての配管(60)(60)について、接続孔(58)(58)に接続筒(59)を介して接続された基端側から、先端側となる焼き機(8)側のノズル(61)(61)まで同じ内径、同じ長さとし、屈曲の度合いにより流動抵抗が異ならないように曲率を設定することにより、各接続孔(58)(58)から押し出された粘性流体である餡(91)の流動抵抗を等しくし、ノズル(61)(61)から押し出される餡(91)の量を均一化するようにしている。
これにより、配管(60)(60)の流動抵抗の違いによって生じる餡(91)の多寡を防止することができる。
【0031】
配管(60)(60)は、基端が円周上に配置された接続孔(58)(58)に連結され、先端側のノズル(61)(61)は、図1乃至図3に示すように杆状のノズルフレーム(62)に等間隔に設けられたノズル取付孔(64)(64)に一列に並ぶよう取り付けられている。
【0032】
即ち、接続孔(58)(58)の開口と、ノズル取付孔(64)(64)までの距離は夫々異なっている。従って、本発明では、同じ長さの配管(60)(60)でこれらを繋ぐために、図1乃至図3に示すように、各配管(60)(60)を交差させず、流動抵抗が異ならない曲率となるように屈曲させている。
【0033】
図3に示すように、各配管(60)(60)は、ノズルがノズルフレーム(62)の中心により近い配管(60)ほど、接続孔(58)とノズル取付孔(64)までの距離が短いから大きく屈曲することとなる。なお、配管(60)(60)を屈曲させる際の曲率は、できるだけ小さくすることが望ましい。
【0034】
上記のように、配管(60)(60)を夫々流動抵抗が異ならない曲率となるように屈曲させることで、同じ内径及び長さの配管(60)(60)を用いて接続孔(58)(58)の開口と、ノズル取付孔(64)(64)とを繋ぐことができるため、配管(60)(60)の長さの違いによる流動抵抗の差異をなくすことができ、分配空間(45)から均等に分配された餡(91)を配管(60)(60)内で等量ずつ押し出すことができる。
【0035】
なお、配管(60)(60)は、図5に示すように、基端側にフランジ(66)が突設されており、ユニオンナット(49)を用いて接続筒(59)に接続することができる。
【0036】
また、先端側のノズル(61)は、ボルト等(図示せず)によりノズルフレーム(62)に取り付けることができる。
【0037】
配管(60)(60)は、基端が接続孔(58)(58)に接続され、先端がノズルフレーム(62)に直線上に等間隔で夫々接続されており、内径及び長さが同じであり、屈曲の度合いにより流動抵抗が異ならないように曲率を設定しているから、各接続孔(58)(58)を通して供給される同じ量の餡(91)を同じ流動抵抗でノズル(61)(61)から押し出すことができる。
【0038】
また、一本のパイプにより配管(60)を構成することで、例えば配管(60)を洗浄する際、ユニオンナット(49)及びボルトを外すことで、配管(60)を簡単に分配器(3)及びノズルフレーム(62)から分解したり組み立てることができ、細長い清掃具を挿通させて内部洗浄でき、さらに加熱殺菌も可能であるので、洗浄作業の負担を軽減できる。
【0039】
ノズル(61)は、要求される餡(91)の太さに応じた口径とすることができ、本実施形態では、ノズル(61)の先端をテーパ状としている。
【0040】
なお、餡(91)を直線ではなく、後述するように曲がった形状で押し出すには、ノズル(61)(61)を幅方向に移動させる揺動手段(図示せず)に連繋し、ノズル(61)(61)を幅方向に移動可能とすればよい。また、供給器(2)よりも下流側を幅方向に移動したり、配管(60)(60)より下流側、又はノズルフレーム(62)を幅方向に移動可能としてもよい。
【0041】
また、配管(60)(60)には、夫々配管(60)を流れる餡(91)の流量を調整するための第1流量調整部材(67)を配備することもできる。図1及び図5では、第1流量調整部材(67)(67)として、配管(60)の基端側と先端側に配管(60)の内側まで到達するネジ部材(68)(68)を例示している。このように配管(60)に第1流量調整部材(67)を配備することで、餡(91)の粘性、温度、湿度等、また、各配管(60)(60)の屈曲度合いの違いや配置による温度差等に起因する流動抵抗を調整することができる。
【0042】
第1流量調整部材(67)の設置位置は上記に限定されるものではなく、例えば、配管(60)の基端側又は先端側にのみ設けたり、複数箇所に設けることもできる。
【0043】
分配器(3)は、供給器(2)から接続管(34)を通じて粘性流体である餡(91)を一定圧、一定量で供給され、餡(91)が分配空間(45)で凸面(33)の内面とコーン(56)との間に進入する。このとき、餡(91)は、分配手段(55)であるコーン(56)の頂点に当たって分配されて、コーン(56)の傾斜面と蓋部(30)の凸面(33)の内面との間を略均等に押し流され、さらに、分配板(50)の円周上に等間隔に形成された複数の接続孔(58)(58)から一定圧、一定量で押し出される。
そして、一定圧、一定量で送出された餡(91)(91)は、配管(60)(60)内部において互いに等しい流動抵抗を受けながら、同じ距離を移動し、ノズル(61)(61)から一列に並んで押し出される。
【0044】
[切断器(7)]
ノズル(61)(61)から押し出された餡(91)は、切断器(7)によって所定長さ毎に切断される。切断器(7)は、図1乃至図3図6乃至図8に示すように、ノズル(61)(61)の開口に近接して切断部材(71)が往復移動可能な構成を例示することができる。切断部材(71)としてワイヤを挙げることができる。
【0045】
切断部材(71)であるワイヤは、図示省略する駆動機構により所定時間毎にノズル(61)(61)の開口近傍を往復し、ノズル(61)(61)から押し出された餡(91)を切断する。これにより、1つの切断部材(71)で各ノズル(61)(61)から押し出される餡(91)を一括して切断することができる。
【0046】
[焼き機(8)]
ノズル(61)から押し出され、切断部材(71)で切断された餡(91)は、図1図6乃至図8に示すように、ノズル(61)の鉛直下に配備された焼き機(8)に落下する。
【0047】
焼き機(8)は、図示のように、一対を1組としてヒンジ接続され(86)、開閉可能な焼き型(81)(83)を具える。焼き型(81)(83)には、夫々配管(60)(60)の数に一致した型穴(82)(84)が夫々形成されている。型穴(82)(84)は、例えば、バナナ型の焼き菓子(95)を製造する場合には、中央で曲がった形状とすることができ、閉じたときに図9に示すバナナ型焼き菓子(95)の形状と対応する型穴空間を形成する。
焼き型(81)(83)は、複数組とし、開いた状態でベルトコンベア(図示せず)等に等間隔に載置されてノズル(61)の下を水平方向に搬送される。
【0048】
焼き型(81)(83)には、開いた状態でカステラ生地(93)(93)などが流し込まれ、ガスバーナ等のヒータで加熱可能となっている。焼き型(81)(83)はまた、閉じた状態で外側両面から加熱可能となっている。
【0049】
焼き型(81)(83)は、開いた状態で搬送されながら、カステラ生地(93)(93)を型穴(82)(84)に受け入れて加熱された後、ノズル(61)の鉛直下にて所定量の餡(98)を一方の型穴(84)に受け入れ、閉じて型穴(82)(84)が重ね合わせられ、さらに加熱される。最終的に、図9に示すバナナ型焼き菓子(85)が焼き上がる。
【0050】
焼き菓子製造装置(1)において、供給器(2)、分配器(3)、切断器(7)、及び焼き機(8)のうち、餡(91)と接触する構成要素は、ステンレス製とすることが好ましい。
例えば、管路(23)や配管(60)をステンレス製とすることで、餡(91)に加えたポンプ(25)の圧力が管路(23)や配管(60)の膨張によって逃げることがなく、バルブ(29)の開放と餡(91)の送出を同期させやすい効果がある。
その他、ステンレス製とすることで、強度があり破損しにくい、錆びにくい、加熱殺菌できる、などの利点がある。
【0051】
このような構成の焼き菓子製造装置(1)においてバナナ型焼き菓子(95)を焼き上げる工程は、先ず、餡(91)を供給器(2)のタンク(21)に投入し、ポンプ(25)を作動させ、バルブ(29)を所定時間毎に開閉することで、一定量の餡(91)を一定の圧力で分配器(3)に供給する。
分配器(3)は、分配手段(55)によって餡(91)を分配し、餡(91)を一定圧、一定量で複数の接続孔(58)(58)から複数の配管(60)(60)内へ押し出す。そして、分配器(3)は、複数の配管(60)(60)が互いに同じ内径及び長さを有し、屈曲の度合いにより流動抵抗が異ならないように曲率を設定しているので、流動抵抗も等しくなり、一定圧、一定量で餡(91)をノズル(61)(61)から押し出す。
ノズル(61)からの餡(91)の押出時間間隔は、バルブ(29)の開閉によって調整することができる。
【0052】
焼き機(8)は、ベルトコンベア(図示せず)等で搬送されるが、ノズル(61)の鉛直下に配備される前に、予め搬送方向上流側で型穴(82)(84)にカステラ生地(93)(93)が流し込まれており、図示しないガスバーナ等のヒータによってある程度カステラ生地(93)(93)が焼き上げられている。
焼き機(8)がノズル(61)の鉛直下を通過する頃、一列に並ぶノズル(61)(61)から押し出された餡(91)(91)は、ノズル(61)(61)の開口に近接する切断器(7)により切断され、焼き型(83)の型穴(84)(84)に落とされる。
【0053】
より詳細には、図6に示すように、型板(91)(93)が搬送方向下流側に向かう矢印Aに沿って搬送される過程において、上記配管(60)のノズル(61)から餡(91)を押し出しつつ、揺動手段(図示せず)により管路(23)等を撓ませて、ノズルフレーム(62)を型穴(82)(84)に併せて幅方向に移動させることで(図7の矢印B、及び図8の矢印C)、型穴(84)内のカステラ生地(93)に餡(91)を沿わせ、その後、バルブ(29)により餡(91)の押し出しを止めると共に、切断器(7)の往復移動により餡(91)を一括して所定長さに切断(図8の矢印D)して落下させる。
【0054】
餡(91)を一方の型穴(84)内のカステラ生地(95)に載せた後、焼き型(81)(83)をさらに下流に移動させて、焼き型(81)(83)どうしを閉じ、重ね合わされた焼き型(81)(83)をさらにヒータによって過不足なく均等に熱することで、図9に示すようなバナナ型焼き菓子(95)を得ることができる。
【0055】
以上の焼き上げ工程が繰り返され、バナナ型焼き菓子(95)が連続的に生産される。
【0056】
なお、粘性流体である餡(91)には、カットしたバナナ果実等の小型の固形物を混ぜることもできる。この場合に、餡(91)の流量の微調整が必要であれば、固形物が接続孔(58)に詰まらないように第2流量調整部材(37)(37)を開放したまま、第1流量調整部材(67)(67)を開閉して餡(91)の流量を微調整することが望ましい。
【0057】
第1流量調整部材(67)(67)及び/又は第2流量調整部材(37)(37)の開閉によって、餡(91)の押出し量を配管(60)(60)間でより正確に均等なものとすることができるだけでなく、餡(91)の押出し量を配管(60)(60)毎に変えることもできる。
【0058】
供給器(2)は、例えば、バルブ(29)の開閉によるだけでなく、ポンプ(25)の寸動の正逆運転によって、餡(91)の送り量や押出時間間隔を調整することができる。また、餡(91)の切断は、ワイヤによらずとも、例えば、ポンプ(25)により逆転の陰圧をかけて餡(91)を引き戻すことなどで行なうこともできる。
【0059】
上記のように、本発明の分配器(3)を、粘性流体を加圧して供給する供給器(2)に接続すると、複数の配管(60)から均等な量の粘性流体を送出することができる。また、配管(60)を簡単に取り外したり組み立てたりでき、細長い清掃具等を配管(60)に挿通させて内部洗浄できるので、分配器(3)の洗浄作業の負担は軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、簡単に解体又は組立てできつつ、均等な量の粘性流体を分配する粘性流体分配器として有用である。
【符号の説明】
【0061】
(1) 焼き菓子製造装置
(2) 供給器
(3) 分配器
(7) 切断器
(8) 焼き機
(30) 蓋部
(45) 分配空間
(50) 分配板
(55) 分配手段
(60) 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9