特許第5985287号(P5985287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985287
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】積層研磨パッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/22 20120101AFI20160823BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B24B37/00 W
   H01L21/304 622F
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-163652(P2012-163652)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-24123(P2014-24123A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】木村 毅
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−190107(JP,A)
【文献】 特開2012−101339(JP,A)
【文献】 特開2002−371258(JP,A)
【文献】 特表2007−518277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/22
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続ライン上で連続する支持層を搬送しながら、研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材を介して積層した積層体を一対のラミネートロール間を通過させ、研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材で貼り合せて積層研磨シートを作製する工程を含む積層研磨パッドの製造方法において、
前記積層体は、研磨層のTD方向の長さ(TD1)と支持層のTD方向の長さ(TD2)との比(TD1/TD2)が、常に0.3以上に調整されており、
さらに、作製した積層研磨シートの表面に溝加工を施す工程を含むことを特徴とする積層研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記積層研磨シートを円形に切断する工程を含む請求項1記載の積層研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
前記ホットメルト型接着部材は、ポリエステル系ホットメルト接着剤を含む接着剤層、又は基材の両面に前記接着剤層を有する両面テープであり、前記ポリエステル系ホットメルト接着剤は、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部含有する、請求項1又は2に記載の積層研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂である請求項記載の積層研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定、かつ高い研磨効率で行うことが可能な積層研磨パッド及びその製造方法に関するものである。本発明の積層研磨パッドは、特にシリコンウエハ並びにその上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを、さらにこれらの酸化物層や金属層を積層・形成する前に平坦化する工程に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際には、ウエハ表面に導電性膜を形成し、フォトリソグラフィー、エッチング等をすることにより配線層を形成する形成する工程や、配線層の上に層間絶縁膜を形成する工程等が行われ、これらの工程によってウエハ表面に金属等の導電体や絶縁体からなる凹凸が生じる。近年、半導体集積回路の高密度化を目的として配線の微細化や多層配線化が進んでいるが、これに伴い、ウエハ表面の凹凸を平坦化する技術が重要となってきた。
【0003】
ウエハ表面の凹凸を平坦化する方法としては、一般的にケミカルメカニカルポリシング(以下、CMPという)が採用されている。CMPは、ウエハの被研磨面を研磨パッドの研磨面に押し付けた状態で、砥粒が分散されたスラリー状の研磨剤(以下、スラリーという)を用いて研磨する技術である。CMPで一般的に使用する研磨装置は、例えば、図1に示すように、研磨パッド1を支持する研磨定盤2と、被研磨材(半導体ウエハ)4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤の供給機構を備えている。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された研磨パッド1と被研磨材4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、被研磨材4を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。
【0004】
従来、高精度の研磨に使用される研磨パッドとしては、一般的にポリウレタン樹脂発泡体シートが使用されている。しかし、ポリウレタン樹脂発泡体シートは、局部的な平坦化能力には優れているが、クッション性が不足しているためにウエハ全面に均一な圧力を与えることが難しい。このため、通常、ポリウレタン樹脂発泡体シートの背面に柔らかいクッション層が別途設けられ、積層研磨パッドとして研磨加工に使用されている。
【0005】
しかし、従来の積層研磨パッドは、一般に研磨層とクッション層とを両面テープで貼り合わせているが、研磨中に研磨層とクッション層との間にスラリーが侵入して両面テープの耐久性が低下し、研磨層とクッション層とが剥離しやすくなるという問題がある。
【0006】
上記問題を解決する方法として、例えば、以下の技術が提案されている。
【0007】
特許文献1には、プラスチックフィルムと研磨パッドとを反応性ホットメルト接着剤を用いて接着することが開示されている。
【0008】
特許文献2には、ベース層と研磨層とがホットメルト接着剤層により接着された研磨パッドが開示されている。
【0009】
特許文献3には、基材の片面に硬質パッド本体を積層するためのホットメルト型接着剤層が形成されており、他面にクッション性サブパッドを積層するための感圧性粘着剤層が形成されている複層研磨パッド用両面粘着テープの前記ホットメルト型接着剤層を加熱して、硬質パッド本体を前記ホットメルト型接着剤層を介して基材の片面に積層した後、前記感圧性粘着剤層にクッション性サブパッドを加圧して、クッション性サブパッドを前記感圧性粘着剤層を介して基材の他面に積層する、複層研磨パッドの製造方法が開示されている。
【0010】
特許文献4には、研磨層と下地層とが、両面テープによって接着される研磨パッドであって、研磨層の裏面と両面テープとの間に、ホットメルト接着剤からなり、研磨スラリーを遮断する止水層を設ける技術が開示されている。
【0011】
特許文献5には、研磨層と下層とが、EVAを含むホットメルト接着剤により接合された研磨パッドが開示されている。
【0012】
特許文献6には、研磨層を提供し;
上面および底面を有するサブパッド層を提供し;
未硬化の反応性ホットメルト接着剤を提供し;
未硬化の反応性ホットメルト接着剤をサブパッド層の上面に平行線パターンで適用し;
未硬化の反応性ホットメルト接着剤の平行線パターン上に研磨層を配置して、研磨パッド積層物を形成し;
研磨層とサブパッド層とを押しつけるように研磨パッド積層物に力を加え;並びに
未硬化の反応性ホットメルト接着剤を硬化させて、研磨層とサブパッド層との間に反応性ホットメルト接着剤結合を形成する;
ことを含む、複数層化学機械研磨パッドを製造する方法が開示されている。
【0013】
ホットメルト接着剤を用いれば層間剥離を防止することができる。しかし、連続ライン上でラミネートロールを用いて研磨層とクッション層とをホットメルト接着剤を介して貼り合せると、クッション層にシワが生じやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−224944号公報
【特許文献2】特開2005−167200号公報
【特許文献3】特開2006−265410号公報
【特許文献4】特開2009−95945号公報
【特許文献5】特表2010−525956号公報
【特許文献6】特開2010−28113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、長時間の研磨により高温になる場合であっても研磨層と支持層との間で剥離しにくく、しかも支持層にシワが生じにくい積層研磨パッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す積層研磨パッドの製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材を介して積層した積層体を一対のラミネートロール間を通過させ、研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材で貼り合せて積層研磨シートを作製する工程を含む積層研磨パッドの製造方法において、
前記積層体は、研磨層のTD方向の長さ(TD1)と支持層のTD方向の長さ(TD2)との比(TD1/TD2)が、常に0.3以上に調整されていることを特徴とする積層研磨パッドの製造方法、に関する。
【0018】
連続ライン上でラミネートロールを用いて研磨層と支持層(例えば、クッション層)とをホットメルト型接着剤で貼り合せる場合、従来は、図2に示すように、支持層8上に溶融させたホットメルト型接着剤(図示せず)を設け、その後、ホットメルト型接着剤上に円形の研磨層9を積層し、得られた積層体を一対のラミネートロール10間を通過させて研磨層9と支持層8とをホットメルト型接着剤で貼り合せていた。
【0019】
前記従来の製造方法の場合、積層体がラミネートロール10に搬入される際に、研磨層9が積層された支持層部分(図2の斜線部分)のみに線圧が掛かり、研磨層9が積層されていない支持層部分には線圧が掛からない。また、支持層8上には溶融させたホットメルト型接着剤が設けられているため、支持層8は柔らかく変形しやすい状態である。そして、連続ライン上では支持層8は搬送方向に引っ張られているが、支持層8の線圧が掛かる部分(図2の斜線部分)は線圧が掛からない部分に比べて引っ張りに対する抵抗力が大きいため、線圧が掛かる部分と線圧が掛からない部分とで移動速度に僅かな差が生じる。その結果、貼り合せ後の支持層8にシワが生じやすくなると考えられる。
【0020】
本発明者は、図3及び図4に示すように、研磨層9のTD方向の長さ(TD1)と支持層8のTD方向の長さ(TD2)との比(TD1/TD2)を常に0.3以上に調整し、研磨層9が積層された支持層部分(図3及び図4の斜線部分)に均一に線圧を掛けることにより、貼り合せ後の支持層8にシワが生じにくくなることを見出した。図2に示すように円形の研磨層9を用いた場合、又はTD1/TD2が0.3未満となる場合には、シワの発生を防止することが難しくなる。
【0021】
本発明の積層研磨パッドの製造方法は、前記積層研磨シートを円形に切断する工程を含んでもよい。円形の積層研磨パッドを製造する場合には、積層研磨シートを作製した後に円形に切断する必要がある。
【0022】
また、本発明の積層研磨パッドの製造方法は、前記積層研磨シートの表面に溝加工を施す工程を含んでもよい。研磨表面に溝を有する積層研磨パッドを製造する場合には、積層研磨シートを作製した後に研磨層の表面に溝加工を行うことが好ましい。予め溝加工を施した研磨層を用いて積層研磨シートを作製すると、上記で述べたように、ラミネート時に溝がある部分と溝がない部分とで線圧に違いが生じて、貼り合せ後の支持層にシワが生じやすくなる。また、溝がある部分に圧力が掛かりにくくなるため、当該部分での接着が不十分になり、エア噛みが生じやすくなる。
【0023】
前記ホットメルト型接着部材は、ポリエステル系ホットメルト接着剤を含む接着剤層、又は基材の両面に前記接着剤層を有する両面テープであり、前記ポリエステル系ホットメルト接着剤は、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部含有するものであることが好ましい。
【0024】
ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂を2〜10重量部添加して、ポリエステル樹脂を架橋させることにより、長時間の研磨により高温になる場合であっても、研磨時に生じる「ずり」に対する接着部材の耐久性が向上し、研磨層と支持層との間で剥離しにくい積層研磨パッドが得られる。
【0025】
エポキシ樹脂の添加量が2重量部未満の場合には、長時間の研磨により高温になった際に、研磨時に生じる「ずり」に対する接着部材の耐久性が不十分になるため、研磨層と支持層との間で剥離しやすくなる。一方、10重量部を超える場合には、接着剤層の硬度が高くなりすぎて接着性が低下するため、研磨層と支持層との間で剥離しやすくなる。
【0026】
また、ベースポリマーであるポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、スラリーに対する耐薬品性が向上し、接着剤層の接着力が低下しにくくなる。
【0027】
さらに本発明は、前記製造方法によって得られる積層研磨パッド、及び前記積層研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の製造方法によると、連続ライン上でラミネートロールを用いて研磨層と支持層とをホットメルト接着部材を介して貼り合せた場合であっても、支持層にシワがない積層研磨パッドを得ることができる。また、本発明の積層研磨パッドは、研磨層と支持層とが特定のポリエステル系ホットメルト接着剤を含む接着部材を介して積層されているため、長時間の研磨により高温になる場合であっても、研磨層と支持層との間で剥離しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】CMP研磨で使用する研磨装置の一例を示す概略構成図
図2】従来の積層研磨パッドの製造方法の一例を示す概略図
図3】本発明の積層研磨パッドの製造方法の一例を示す概略図
図4】本発明の積層研磨パッドの製造方法の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の積層研磨パッドの製造方法は、研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材を介して積層した積層体を一対のラミネートロール間を通過させ、研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材で貼り合せて積層研磨シートを作製する工程を含む。
【0031】
前記研磨層は、微細気泡を有する発泡体であれば特に限定されるものではない。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハロゲン系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、ポリスチレン、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、エポキシ樹脂、感光性樹脂などの1種または2種以上の混合物が挙げられる。ポリウレタン樹脂は耐摩耗性に優れ、原料組成を種々変えることにより所望の物性を有するポリマーを容易に得ることができるため、研磨層の形成材料として特に好ましい材料である。以下、前記発泡体を代表してポリウレタン樹脂について説明する。
【0032】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート成分、ポリオール成分(高分子量ポリオール、低分子量ポリオール)、及び鎖延長剤からなるものである。
【0033】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。イソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0034】
高分子量ポリオールとしては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
ポリオール成分として上述した高分子量ポリオールの他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオールを併用することができる。また、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミンを併用することもできる。また、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンを併用することもできる。これら低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。低分子量ポリオールや低分子量ポリアミン等の配合量は特に限定されず、製造される研磨パッド(研磨層)に要求される特性により適宜決定される。
【0036】
ポリウレタン樹脂発泡体をプレポリマー法により製造する場合において、プレポリマーの硬化には鎖延長剤を使用する。鎖延長剤は、少なくとも2個以上の活性水素基を有する有機化合物であり、活性水素基としては、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)等が例示できる。具体的には、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類、あるいは、上述した低分子量ポリオールや低分子量ポリアミンを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0037】
ポリウレタン樹脂発泡体は、溶融法、溶液法など公知のウレタン化技術を応用して製造することができるが、コスト、作業環境などを考慮した場合、溶融法で製造することが好ましい。
【0038】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造は、プレポリマー法、ワンショット法のどちらでも可能であるが、事前にイソシアネート成分とポリオール成分からイソシアネート末端プレポリマーを合成しておき、これに鎖延長剤を反応させるプレポリマー法が、得られるポリウレタン樹脂の物理的特性が優れており好適である。
【0039】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造方法としては、中空ビーズを添加させる方法、機械的発泡法、化学的発泡法などが挙げられる。
【0040】
特に、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルの共重合体であって活性水素基を有しないシリコン系界面活性剤を使用した機械的発泡法が好ましい。
【0041】
なお、必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0042】
ポリウレタン樹脂発泡体は独立気泡タイプであってもよく、連続気泡タイプであってもよい。
【0043】
ポリウレタン樹脂発泡体の平均気泡径は、30〜80μmであることが好ましく、より好ましくは30〜60μmである。この範囲から逸脱する場合は、研磨速度が低下したり、研磨後の被研磨材(ウエハ)のプラナリティ(平坦性)が低下する傾向にある。
【0044】
ポリウレタン樹脂発泡体の比重は、0.5〜1.3であることが好ましい。比重が0.5未満の場合、研磨層の表面強度が低下し、被研磨材のプラナリティが低下する傾向にある。また、1.3より大きい場合は、研磨層表面の気泡数が少なくなり、プラナリティは良好であるが、研磨速度が低下する傾向にある。
【0045】
ポリウレタン樹脂発泡体の硬度は、アスカーD硬度計にて、40〜75度であることが好ましい。アスカーD硬度が40度未満の場合には、被研磨材のプラナリティが低下し、また、75度より大きい場合は、プラナリティは良好であるが、被研磨材のユニフォーミティ(均一性)が低下する傾向にある。
【0046】
研磨層の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.8〜4mm程度であり、1.2〜2.5mmであることが好ましい。
【0047】
前記支持層は、研磨層の特性を補うものである。支持層としては、研磨層より弾性率が低い層(クッション層)を用いてもよく、研磨層より弾性率が高い層(高弾性層)を用いてもよい。クッション層は、CMPにおいて、トレードオフの関係にあるプラナリティとユニフォーミティの両者を両立させるために必要なものである。プラナリティとは、パターン形成時に発生する微小凹凸のある被研磨材を研磨した時のパターン部の平坦性をいい、ユニフォーミティとは、被研磨材全体の均一性をいう。研磨層の特性によって、プラナリティを改善し、クッション層の特性によってユニフォーミティを改善する。高弾性層は、CMPにおいて、スクラッチの発生を抑制するために柔らかい研磨層を用いた場合に、研磨パッドの平坦化特性を向上させるために用いられる。また、高弾性層を用いることにより、被研磨材のエッジ部の削り過ぎを抑制することが可能である。
【0048】
クッション層としては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、及びアクリル不織布などの繊維不織布;ポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布;ポリウレタンフォーム及びポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体;ブタジエンゴム及びイソプレンゴムなどのゴム性樹脂;感光性樹脂などが挙げられる。
【0049】
クッション層の厚みは特に制限されないが、300〜1800μmであることが好ましく、より好ましくは700〜1400μmである。
【0050】
高弾性層としては、例えば、金属シート、樹脂フィルムなどが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム;ナイロンフィルム;ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
【0051】
高弾性層の厚みは特に制限されないが、剛性、及び加熱時の寸法安定性等の観点から10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは15〜55μmである。
【0052】
前記積層体は、研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材を介して積層することにより作製する。
【0053】
ホットメルト型接着部材としては、一般的なホットメルト接着剤を含む接着剤層を用いることができるが、特にポリエステル系ホットメルト接着剤を含む接着剤層を用いることが好ましい。
【0054】
前記ポリエステル系ホットメルト接着剤は、少なくともベースポリマーであるポリエステル樹脂と、架橋成分である1分子中にグリシジル基を2つ以上有するエポキシ樹脂とを含有する。
【0055】
前記ポリエステル樹脂としては、酸成分及びポリオール成分の縮重合等により得られる公知のものを用いることができるが、特に結晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0056】
酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、α−ナフタレンジカルボン酸、β−ナフタレンジカルボン酸、及びそのエステル形成体等が挙げられる。
【0058】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデシレン酸、ドデカン二酸、及びそのエステル形成体等が挙げられる。
【0059】
脂環族ジカルボン酸の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0060】
また、酸成分として、マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸等の不飽和酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸等を併用してもよい。
【0061】
ポリオール成分としては、脂肪族グリコール、脂環族グリコール等の2価アルコール及び多価アルコールが挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0062】
脂肪族グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、2,2,3−トリメチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0063】
脂環族グリコールの具体例としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0064】
多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0065】
結晶性ポリエステル樹脂は、公知の方法により合成することができる。例えば、原料及び触媒を仕込み、生成物の融点以上の温度で加熱する溶融重合法、生成物の融点以下で重合する固相重合法、溶媒を使用する溶液重合法等があり、いずれの方法を採用してもよい。
【0066】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は100〜200℃であることが好ましい。融点が100℃未満の場合は、研磨時の発熱によってホットメルト接着剤の接着力が低下し、200℃を超える場合には、ホットメルト接着剤を溶融させる際の温度が高くなるため、積層研磨パッドに反りが生じて研磨特性に悪影響を与える傾向にある。
【0067】
また、結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量は5000〜50000であることが好ましい。数平均分子量が5000未満の場合は、ホットメルト接着剤の機械的特性が低下するため、十分な接着性及び耐久性が得られず、50000を超える場合には、結晶性ポリエステル樹脂を合成する際にゲル化が生じる等の製造上の不具合が発生したり、ホットメルト接着剤としての性能が低下する傾向にある。
【0068】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースなどのポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、複素芳香環(例えば、トリアジン環など)を含有するエポキシ樹脂などの芳香族エポキシ樹脂;脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂などの非芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
これらのうち、研磨時における研磨層との接着性の観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0070】
前記エポキシ樹脂は、ベースポリマーであるポリエステル樹脂100重量部に対して、2〜10重量部添加することが必要であり、好ましくは3〜7重量部である。
【0071】
ポリエステル系ホットメルト接着剤は、オレフィン系樹脂等の軟化剤、粘着付与剤、充填剤、安定剤、及びカップリング剤などの公知の添加剤を含有していてもよい。また、タルクなどの公知の無機フィラーも含有していてもよい。
【0072】
ポリエステル系ホットメルト接着剤は、少なくとも前記ポリエステル樹脂、及び前記エポキシ樹脂等を任意の方法により混合して調製する。例えば、単軸押出機、噛合い形同方向平行軸二軸押出機、噛合い形異方向平行軸二軸押出機、噛合い形異方向斜軸二軸押出機、非噛合い形二軸押出機、不完全噛合い形二軸押出機、コニーダー形押出機、プラネタリギヤ形押出機、トランスファミックス押出機、ラム押出機、ローラ押出機等の押出成形機又はニーダー等により、各原料を混合して調製する。
【0073】
ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は、100〜200℃であることが好ましい。
【0074】
また、ポリエステル系ホットメルト接着剤の比重は、1.1〜1.3であることが好ましい。
【0075】
また、ポリエステル系ホットメルト接着剤のメルトフローインデックス(MI)は、150℃、荷重2.16kgの条件にて、16〜26g/10minであることが好ましい。
【0076】
前記接着剤層の厚みは10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは25〜125μmである。
【0077】
研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材を介して積層する方法は特に制限されず、例えば、(1)ウェブ状の支持層を搬送させながら、当該支持層上にホットメルト接着剤からなる接着剤層を積層し、ヒーターにより接着剤層を加熱溶融させ、その後、溶融した接着剤層上に研磨層を積層する方法、(2)ウェブ状の支持層を搬送させながら、当該支持層上に溶融したホットメルト接着剤を塗布し、その後、溶融した接着剤上に研磨層を積層する方法、が挙げられる。なお、積層する研磨層は、ウェブ状であってもよく、個別ピースであってもよいが、ウェブ状の研磨層を用いることにより、支持層のシワの発生をさらに確実に防止することができる。
【0078】
積層体を作製する際には、研磨層のTD方向の長さ(TD1)と支持層のTD方向の長さ(TD2)との比(TD1/TD2)が常に0.3以上になるように調整することが必要である。TD1/TD2は0.3〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1である。TD1/TD2が1.2を超えると製造コストの面で不利になったり、エア噛みが発生しやすくなる。
【0079】
前記接着剤層の代わりに、基材の両面に前記接着剤層を有する両面テープを用いてもよい。基材により支持層側へのスラリーの浸透を防止し、支持層と接着部材との間での剥離を防止することができる。
【0080】
基材としては樹脂フィルムなどが挙げられ、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム;ナイロンフィルム;ポリイミドフィルムなどが挙げられる。これらのうち、水の透過を防ぐ性質に優れるポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0081】
基材の表面には、コロナ処理、プラズマ処理などの易接着処理を施してもよい。
【0082】
基材の厚みは特に制限されないが、透明性、柔軟性、剛性、及び加熱時の寸法安定性等の観点から10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは15〜55μmである。
【0083】
両面テープを用いる場合、前記接着剤層の厚みは10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μmである。
【0084】
その後、前記積層体を一対のラミネートロール間を通過させ、研磨層と支持層とをホットメルト型接着部材で貼り合せて積層研磨シートを作製する。積層体を一対のラミネートロール間に通過させる際には、研磨層の始端がラミネートロールの回転軸に対して平行になるように積層体を搬送することが好ましい。研磨層が積層された支持層部分に均一に線圧を掛けることにより、貼り合せ後の支持層にシワが生じにくくなる。
【0085】
円形の積層研磨パッドを製造する場合には、積層研磨シートを作製した後に円形に切断する。
【0086】
また、研磨表面にスラリーを保持・更新するための溝を有する積層研磨パッドを製造する場合には、積層研磨シートを作製した後に研磨表面に溝加工を施すことが好ましい。溝は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの溝は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を向上させるために、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させてもよい。
【0087】
本発明の積層研磨パッドは、プラテン(研磨定盤)と接着する面に両面テープが設けられていてもよい。
【0088】
半導体デバイスは、前記積層研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を経て製造される。半導体ウエハとは、一般にシリコンウエハ上に配線金属及び酸化膜を積層したものである。半導体ウエハの研磨方法、研磨装置は特に制限されず、例えば、図1に示すように積層研磨パッド1を支持する研磨定盤2と、半導体ウエハ4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハへの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤3の供給機構を備えた研磨装置などを用いて行われる。積層研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された積層研磨パッド1と半導体ウエハ4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、半導体ウエハ4を積層研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。研磨に際しては、研磨定盤2と支持台5とを回転させつつ半導体ウエハ4を積層研磨パッド1に押し付け、スラリーを供給しながら研磨を行う。スラリーの流量、研磨荷重、研磨定盤回転数、及びウエハ回転数は特に制限されず、適宜調整して行う。
【0089】
これにより半導体ウエハ4の表面の突出した部分が除去されて平坦状に研磨される。その後、ダイシング、ボンディング、パッケージング等することにより半導体デバイスが製造される。半導体デバイスは、演算処理装置やメモリー等に用いられる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
[測定、評価方法]
(融点の測定)
ポリエステル系ホットメルト接着剤の融点は、TOLEDO DSC822(METTLER社製)を用い、昇温速度20℃/minにて測定した。
【0092】
(比重の測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。ポリエステル系ホットメルト接着剤からなる接着剤層を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものを比重測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0093】
(メルトフローインデックス(MI)の測定)
ASTM−D−1238に準じて150℃、2.16kgの条件で、ポリエステル系ホットメルト接着剤のメルトフローインデックスを測定した。
【0094】
(剥離試験)
作製した積層研磨パッドから幅25mm×長さ200mmのサンプルを切り取り、サンプルの研磨層と支持層を引張り角度180°、引張り速度300mm/minで引張り、その時のサンプルの剥離状態を観察した。
【0095】
製造例1
(研磨層の作製)
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)1229重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート272重量部、数平均分子量1018のポリテトラメチレンエーテルグリコール1901重量部、ジエチレングリコール198重量部を入れ、70℃で4時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーを得た。
該プレポリマー100重量部及びシリコン系界面活性剤(東レダウコーニングシリコン製、SH−192)3重量部を重合容器内に加えて混合し、80℃に調整して減圧脱泡した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように激しく約4分間撹拌を行った。そこへ予め120℃に温度調整したMOCA(イハラケミカル社製、キュアミンMT)26重量部を添加した。該混合液を約1分間撹拌した後、四角形のパン型オープンモールド(注型容器)へ流し込んだ。この混合液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、100℃で16時間ポストキュアを行い、ポリウレタン樹脂発泡体ブロックを得た。
約80℃に加熱した前記ポリウレタン樹脂発泡体ブロックをスライサー(アミテック社製、VGW−125)を使用してスライスし、ポリウレタン樹脂発泡体シート(平均気泡径:50μm、比重:0.86、硬度:52度)を得た。次に、バフ機(アミテック社製)を使用して、ポリウレタン樹脂発泡体シートの表面を#120番、#240番、及び#400番のサンドペパーにて順次切削加工して厚み精度を整えて研磨層(厚さ2mm、幅550mm、長さ1200mm)を作製した。
【0096】
製造例2
(研磨層の作製)
四角形のパン型オープンモールドの代わりに八角形のパン型オープンモールドを用いた以外は製造例1と同様の方法で研磨層(厚さ2mm、最小幅200mm、最大幅550mm、長さ1200mm)を作製した。
【0097】
製造例3
(研磨層の作製)
四角形のパン型オープンモールドの代わりに八角形のパン型オープンモールドを用いた以外は製造例1と同様の方法で研磨層(厚さ2mm、最小幅150mm、最大幅550mm、長さ1200mm)を作製した。
【0098】
実施例1
発泡ウレタンからなる支持層(日本発条社製、ニッパレイEXT、幅550mm)を搬送しつつ、その上に、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)5重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤(融点:142℃、比重:1.22、メルトフローインデックス:21g/10min)からなる接着剤層(厚み50μm)を積層し、赤外ヒーターを用いて接着剤層表面を150℃に加熱して接着剤層を溶融させた。その後、溶融させた接着剤層上にラミネート機を用いて製造例1で作製した研磨層を積層して積層体を得た。なお、TD1/TD2=550mm/550mm=1である。その後、研磨層の始端がラミネートロールの回転軸に対して平行になるように、積層体を一対のラミネートロール間を通過させて、研磨層と支持層とを接着剤層で貼り合せて積層研磨シートを作製した。作製した積層研磨シートにシワ及びエア噛みは生じていなかった。その後、積層研磨シートの支持層にラミネート機を使用して感圧式両面テープ(3M社製、442JA)を貼り合わせ、積層研磨シートを直径508mmの大きさに裁断した。その後、溝加工機(テクノ社製)を用いて研磨層の表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.5mm、溝深さ0.6mmの同心円状の溝を形成して積層研磨パッドを作製した。
作製した積層研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨したが、半導体ウエハを斑なく研磨することができた。また、上記方法で剥離試験を行ったところ、サンプルの剥離状態は材料破壊であった。
【0099】
実施例2
実施例1と同様の方法で積層研磨シートを作製した。その後、溝加工機(テクノ社製)を用いて研磨層の表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.5mm、溝深さ0.6mmの同心円状の溝を形成し、さらに積層研磨シートを直径508mmの大きさに裁断した。作製した積層研磨シートにシワ及びエア噛みは生じていなかった。その後、積層研磨シートの支持層にラミネート機を使用して感圧式両面テープ(3M社製、442JA)を貼り合わせて積層研磨パッドを作製した。
作製した積層研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨したが、半導体ウエハを斑なく研磨することができた。また、上記方法で剥離試験を行ったところ、サンプルの剥離状態は材料破壊であった。
【0100】
実施例3
製造例1で作製した研磨層の代わりに製造例2で作製した研磨層を用いた以外は実施例2と同様の方法で積層研磨パッドを作製した(図4参照)。なお、TD1/TD2の最小値は、0.36(200mm/550mm)である。また、作製した積層研磨シートにシワ及びエア噛みは生じていなかった。
作製した積層研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨したが、半導体ウエハを斑なく研磨することができた。また、上記方法で剥離試験を行ったところ、サンプルの剥離状態は材料破壊であった。
【0101】
実施例4
発泡ウレタンからなる支持層(日本発条社製、ニッパレイEXT、幅550mm)を搬送しつつ、その上に、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)2重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤(融点:140℃、比重:1.24、メルトフローインデックス:26g/10min)からなる接着剤層(厚み50μm)を積層し、赤外ヒーターを用いて接着剤層表面を150℃に加熱して接着剤層を溶融させた。その後、実施例1と同様の方法で積層研磨パッドを作製した。
作製した積層研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨したが、半導体ウエハを斑なく研磨することができた。また、上記方法で剥離試験を行ったところ、サンプルの剥離状態は材料破壊であった。
【0102】
実施例5
発泡ウレタンからなる支持層(日本発条社製、ニッパレイEXT、幅550mm)を搬送しつつ、その上に、結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)社製、バイロンGM420)100重量部、及び1分子中にグリシジル基を2つ以上有するo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製、EOCN4400)10重量部を含むポリエステル系ホットメルト接着剤(融点:145℃、比重:1.19、メルトフローインデックス:16g/10min)からなる接着剤層(厚み50μm)を積層し、赤外ヒーターを用いて接着剤層表面を150℃に加熱して接着剤層を溶融させた。その後、実施例1と同様の方法で積層研磨パッドを作製した。
作製した積層研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨したが、半導体ウエハを斑なく研磨することができた。また、上記方法で剥離試験を行ったところ、サンプルの剥離状態は材料破壊であった。
【0103】
比較例1
製造例1で作製した研磨層を直径508mmの大きさに裁断した。
発泡ウレタンからなる支持層(日本発条社製、ニッパレイEXT、幅550mm)を搬送しつつ、その上に、実施例1で用いた接着剤層(厚み50μm)を積層し、赤外ヒーターを用いて接着剤層表面を150℃に加熱して接着剤層を溶融させた。その後、溶融させた接着剤層上にラミネート機を用いて直径508mmの研磨層を積層して積層体を得た。その後、積層体を一対のラミネートロール間を通過させて、研磨層と支持層とを接着剤層で貼り合せて積層研磨シートを作製した。作製した積層研磨シートにはシワ及びエア噛みが生じていた。その後、積層研磨シートの支持層にラミネート機を使用して感圧式両面テープ(3M社製、442JA)を貼り合わせ、積層研磨シートを直径508mmの大きさに裁断した。その後、溝加工機(テクノ社製)を用いて研磨層の表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.5mm、溝深さ0.6mmの同心円状の溝を形成して積層研磨パッドを作製した。
作製した積層研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨したが、半導体ウエハに研磨斑が生じた。また、上記方法で剥離試験を行ったところ、サンプルの剥離状態は界面剥離であった。シワ及びエア噛みが、研磨斑及び界面剥離の原因と考えられる。
【0104】
比較例2
製造例1で作製した研磨層の代わりに製造例3で作製した研磨層を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層研磨パッドを作製した(図4参照)。なお、TD1/TD2の最小値は、0.27(150mm/550mm)である。また、作製した積層研磨シートにはシワ及びエア噛みが生じていた。
作製した積層研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨したが、半導体ウエハに研磨斑が生じた。また、上記方法で剥離試験を行ったところ、サンプルの剥離状態は界面剥離であった。シワ及びエア噛みが、研磨斑及び界面剥離の原因と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の積層研磨パッドはレンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定、かつ高い研磨効率で行うことができる。本発明の積層研磨パッドは、特にシリコンウエハ並びにその上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを、さらにこれらの酸化物層や金属層を積層・形成する前に平坦化する工程に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0106】
1:積層研磨パッド
2:研磨定盤
3:研磨剤(スラリー)
4:被研磨材(半導体ウエハ)
5:支持台(ポリシングヘッド)
6、7:回転軸
8:支持層
9:研磨層
10:ラミネートロール
図1
図2
図3
図4