特許第5985295号(P5985295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人電気通信大学の特許一覧

特許5985295車室内状況観察装置及び車室内事故予防装置
<>
  • 特許5985295-車室内状況観察装置及び車室内事故予防装置 図000002
  • 特許5985295-車室内状況観察装置及び車室内事故予防装置 図000003
  • 特許5985295-車室内状況観察装置及び車室内事故予防装置 図000004
  • 特許5985295-車室内状況観察装置及び車室内事故予防装置 図000005
  • 特許5985295-車室内状況観察装置及び車室内事故予防装置 図000006
  • 特許5985295-車室内状況観察装置及び車室内事故予防装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985295
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】車室内状況観察装置及び車室内事故予防装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20160823BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20160823BHJP
   G01S 13/50 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   G08B21/02
   G08B21/00 U
   G01S13/50
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-174344(P2012-174344)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-32625(P2014-32625A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100134212
【弁理士】
【氏名又は名称】提中 清彦
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 敬之
(72)【発明者】
【氏名】田近 秀騎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亮衛
【審査官】 中村 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−149767(JP,A)
【文献】 特開2007−033156(JP,A)
【文献】 特開平10−239426(JP,A)
【文献】 特開2003−248053(JP,A)
【文献】 特開平10−039009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12− 8/96
G01S 7/00−13/95
G08B 19/00−21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の測定対象の動きを観察する車室内状況観察装置であって、
CWドップラセンサを備え、ドップラ効果を利用して測定対象の移動速度を検出することにより、車室内の測定対象の動きを観察可能に構成する一方、
CWドップラセンサにより取得される情報に対して、測定対象の移動速度の取り得る値以外の帯域を一定時間積分し、その積分値に基づいて、測定対象の動きを判定する閾値を設定すると共に、
一定時間経過する毎に、前記積分値を更新することで、前記積分値に基づく前記閾値を車両走行条件の変化に追従させて変更する
ことを特徴とする車室内状況観察装置。
【請求項2】
車室内の測定対象の動きを観察する車室内状況観察装置であって、
2出力CWドップラセンサを備え、ドップラ効果を利用して測定対象の移動速度を検出すると共に、2つの出力の位相差から測定対象の動きの方向を区別して、車室内の測定対象の動きを観察可能に構成する一方、
2出力CWドップラセンサにより取得される情報に対して、測定対象の移動速度の取り得る値以外の帯域を一定時間積分し、その積分値に基づいて、測定対象の動きを判定する閾値を設定すると共に、
一定時間経過する毎に、前記積分値を更新することで、前記積分値に基づく前記閾値を車両走行条件の変化に追従させて変更する
ことを特徴とする車室内状況観察装置。
【請求項3】
2出力CWドップラセンサにより取得される測定対象の移動速度及び位相差を積算することで、車両走行に起因する揺れを除去しつつ、測定対象の動きを観察することを特徴とする請求項2に記載の車室内状況観察装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項の何れか1つに記載の車室内状況観察装置を含んで構成され、該車室内状況観察装置による測定対象の動きの観察結果が車室内事故を招くおそれがある場合に、車両運転者若しくは乗客の少なくとも一方へ報知することを特徴とする車室内事故予防装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンマンバスなどにおいて車室内における乗客の動きを観察するための車室内状況観察装置(システム)及び該装置を利用した車室内事故予防装置(システム)に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでは、この種の車室内状況観察装置(システム)の一例として、例えば、ワンマンバスなどの車室内の乗客等の状況確認を行い易くするため、反射ミラーを車室内に設置したり、見え難い箇所にはCCDカメラ等を利用したモニタ装置など車室内に設置し、運転席にいる運転者は、反射ミラーやモニタ装置を介して乗客等の動きなどを確認し、車両停止前の乗客の立ち上がりや走行中の通路移動などに注意を払ったり、乗客の着座前の車両発進操作などを回避して、安全な運行に務めるようにすることが行われている。
【0003】
しかし、反射ミラーやモニタ装置を運転者が観察するには、見間違い、見落としなども想定され、相応の熟練が必要となるなど、更に安全性を高めていくためには更なる改善の余地が残されているものと考えられる。
【0004】
また、例えばCCDカメラから取得された画像情報に対して画像処理することで、移動体の動きを検出する移動体検出技術も種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−34458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車室内の状況観察装置(システム)として車両に搭載するためには、処理負荷が大きいプログラムを実装する必要があり、乗客の動きに対して応答性良く比較的高速に処理するために、CPUの演算速度やメモリの読み書き速度を高速化したり記憶領域を大容量化することなどが要求されるため、コストアップに繋がり費用対効果が良くないとった実情がある。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたものであり、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、ワンマンバスなどの車室内における乗客の動きを応答性良く正確に観察することができ、以って乗客の危険な動きを見落とすことなく迅速に察知して注意を促したり、乗客の動きを考慮しない危険な車両発進操作などを回避して、安全な運行を実現することができる車室内状況観察装置(システム)延いては車室内事故予防装置(システム)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明に係る車室内状況観察装置は、
車室内の測定対象の動きを観察する車室内状況観察装置であって、
CWドップラセンサを備え、ドップラ効果を利用して測定対象の移動速度を検出することにより、車室内の測定対象の動きを観察可能に構成する一方、
CWドップラセンサにより取得される情報に対して、測定対象の移動速度の取り得る値以外の帯域を一定時間積分し、その積分値に基づいて、測定対象の動きを判定する閾値を設定すると共に、
一定時間経過する毎に、前記積分値を更新することで、前記積分値に基づく前記閾値を車両走行条件の変化に追従させて変更する
ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る車室内状況観察装置は、
車室内の測定対象の動きを観察する車室内状況観察装置であって、
2出力CWドップラセンサを備え、ドップラ効果を利用して測定対象の移動速度を検出すると共に、2つの出力の位相差から測定対象の動きの方向を区別して、車室内の測定対象の動きを観察可能に構成する一方、
2出力CWドップラセンサにより取得される情報に対して、測定対象の移動速度の取り得る値以外の帯域を一定時間積分し、その積分値に基づいて、測定対象の動きを判定する閾値を設定すると共に、
一定時間経過する毎に、前記積分値を更新することで、前記積分値に基づく前記閾値を車両走行条件の変化に追従させて変更する
ことを特徴とする。
【0010】
本発明において、2出力CWドップラセンサにより取得される測定対象の移動速度及び位相差を積算することで、車両走行に起因する揺れを除去しつつ、測定対象の動きを観察することを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る車室内事故予防装置は、上述した本発明に係る車室内状況観察装置を含んで構成され、該車室内状況観察装置による測定対象の動きの観察結果が車室内事故を招くおそれがある場合に、車両運転者若しくは乗客の少なくとも一方へ報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、ワンマンバスなどの車室内における乗客の動きを応答性良く正確に観察することができ、以って乗客の危険な動きを見落とすことなく迅速に察知して注意を促したり、乗客の動きを考慮しない危険な車両発進操作などを回避して、安全な運行を実現することに貢献可能な車室内状況観察装置(システム)延いては車室内事故予防装置(システム)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る車室内状況観察装置(システム)及び車室内事故予防装置(システム)を概略的に説明するシステム図である。
図2】同上実施の形態に係る2出力CWドップラセンサ(2周波数CWドップラレーダ)の内部回路の一例を示すブロック図である。
図3】同上実施の形態に係る2出力CWドップラセンサ(2周波数CWドップラレーダ)の出力波形の一例を示すタイムチャートである。
図4】同上実施の形態に係る車室内状況観察装置(システム)及び車室内事故予防装置(システム)における移動体の動静判定ロジック(車両走行中の揺れによる振動と区別して、歩行者等の移動体(測定対象)の動きを検出する場合)の一例を説明するブロック図である。
図5】同上実施の形態に係る車室内状況観察装置(システム)における波形データの一例を示すタイムチャートであり、(A)は閾値、(B)は座席からの立ち上がり波形の特徴(図中矢印が波形の特徴的変化の開始周波数)、(C)は座席から歩行開始一歩の波形の特徴(図中矢印が波形の特徴的変化の開始周波数)を示す図である。
図6】同上実施の形態に係る車室内状況観察装置(システム)及び車室内事故予防装置(システム)における移動体の動静判定ロジック(動静判定の閾値を車両走行状態に応じて可変に設定する場合)の一例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る車室内事故予防装置(システム)1は、図1に示すように、車両200の車室内に設けられる車室内状況観察(検出)装置(システム)100を含んで構成され、乗客等の動きを検出するセンサ(レーダ)から取得される情報に対して、電子制御装置(ECU)300内の動静判定ロジックなどに基づいて各種の演算処理を実行して、車室内状況を観察(検出)し、危険度合いなどの状況に応じて、その結果を、運転席付近に設けた支援装置400を介して、運転者に報知したり、乗客等に知らせるなどすることで、車室内での乗客の転倒などの事故発生を予防することができるように構成されている。
【0017】
本実施の形態において利用される車室内状況観察装置(システム)100は、比較的低コストな2出力CWドップラセンサ(Continuous Wave Doppler Sensor)110を含んで構成されている。なお、2出力CWドップラセンサは、2出力CWドップラレーダとも称する。
【0018】
CWドップラセンサ(Continuous Wave Doppler Sensor)は、ドップラ効果を利用して、対象物との相対速度を検出することができるセンサで、2出力CWドップラセンサ110では、2つの出力(例えば、24.15GHzと24.55GHzの2周波の出力)の位相差から対象物の動きの方向(接近或いは離隔(離脱、遠退く))を区別することができるようになっている。なお、CWドップラセンサによる移動体の測距方法などについては、例えば、特開2005−201774号公報などを参照することができる。
【0019】
2出力CWドップラセンサ110の内部回路は、一例であるが、図2に示すような構成となっている。
ここで、IF1及びIF2の出力波形の一例を、図3に示す。
測定対象(移動体)の動きとの関係:
移動速度:IF1、IF2の周波数と比例関係にある。
移動方向:IF1とIF2の位相差に基づいて区別可能。
センサに対して移動体が接近している時:IF1の位相がIF2より早い
センサに対して移動体が遠退いていく時:IF2の位相がIF1より早い
【0020】
本実施の形態では、このような2出力CWドップラセンサ110を、図1に示したように、ワンマンバス等の車両200の車室内の前方付近に後方を向いて設置した構成としている。
【0021】
2出力CWドップラセンサ110により取得される情報は、CPU、ROM,RAM、各種I/Fなどを含んで構成される電子制御装置(ECU)300に入力され、ここで各種のプログラム処理が施されるようになっている。
【0022】
図1に示したように、例えば、乗客A、Bなどの動き、具体的には、例えば、車両停止前に席から立ち上がったり、走行中に通路210を移動すると、2出力CWドップラセンサ110を備えた車室内状況観察装置(システム)100は、電子制御装置(ECU)300にて動静判定ロジックなどに基づいて各種の演算処理を実行して、これを検出し、車室内事故予防装置(システム)1は、運転席付近に設けた支援装置400を介して、その旨をランプ等を点灯させたり警報音を鳴らすなどして、運転者に報知することができるように構成されている。
【0023】
このような場合、運転者は、乗客が転倒等しないように、できるだけブレーキを強く掛けないようにすることで、安全な運行の実現が可能となる。
【0024】
また、車室内状況観察装置(システム)100延いては車室内事故予防装置(システム)1では、例えば乗客A、Bの動きの危険度合い(例えば激しさ)に応じて、危険度合いの高い(激しい)動きを検出した場合には、例えば、支援装置400を介して、自動放送装置などを自動的に起動して、音声等により、乗客に対して危険な立ち歩きなどをしないように注意を喚起するように構成することも可能である。
【0025】
更に、例えば、乗客がバス停などにおいて乗車した後、まだ車室内を移動中である場合には、2出力CWドップラセンサ110を備えた車室内状況観察装置(システム)100延いては車室内事故予防装置(システム)1は、電子制御装置(ECU)300によりこれを検出して、運転席付近に設けた支援装置400を介して、運転者に、その旨をランプ等を点灯させたり警報音を鳴らすなどして報知するような構成とすることができる。
【0026】
これにより、運転者は、乗客が着座したり手摺りや吊革等を掴んで停止するまで、車両の発進を行わないようにするなど、乗客が転倒等しないような安全な運行の実現が可能となる。
【0027】
このように、本実施の形態に係る車室内状況観察装置(システム)100によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、ワンマンバスなどの車室内における乗客の動きを応答性良く正確に観察することができ、以って乗客の危険な動きを見落とすことなく迅速に察知して注意を促したり、乗客の動きを考慮しない危険な車両発進操作などを回避して、安全な運行を実現することに貢献可能な車室内状況観察装置(システム)延いては車室内事故予防装置(システム)を提供することができる。
【0028】
なお、上述した実施の形態においては、2出力CWドップラセンサ110を備え、測定対象(移動体)の移動速度と移動方向を検出して、測定対象の動きを観察する構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1出力CWドップラセンサ(例えば24GHz帯の出力波IF1のみを出力)を備え、この1出力CWドップラセンサによりドップラ効果を利用して測定対象(移動体)の移動速度を検出して、車室内の測定対象の動きを観察可能に構成することも可能である。
【0029】
ここで、上述した本実施の形態のように、2出力CWドップラセンサ110をバスなどの車両に搭載した場合、車両走行中の揺れによる振動と、歩行者等の移動体(測定対象)の動きと、の区別(分離)して歩行者等の移動体(測定対象)の動きを検出することができれば、歩行者等の移動体(測定対象)の動きの検出精度を高めることができる。
【0030】
このため、本実施の形態では、2出力CWドップラセンサ110により取得される位相差の情報から移動体の動きの方向の符号(接近或は離脱(離隔)の情報)を得て、相対速度を積分し、車両走行に起因する規則的な振動を除去するような処理を行うようになっている。
【0031】
図4に、動静判定ロジックの一例として示したように、本実施の形態では、
ブロック(Bと記す)301にて、2出力CWドップラセンサ110により取得されるIF1、IF2に対してFFT処理(高速フーリエ変換処理)を施す。
【0032】
B302では、B301を通過したIF1,IF2に対してクラッタ処理を施すことで、閾値を求める(図5(A)参照)。
【0033】
B303では、ピーク周波数を検出する。すなわち、図5(B)、図5(C)から理解されるように、ピーク周波数に応じて、移動体の動きの種類を区別することができる。
【0034】
B304では、LF1とLF2の相対速度を検出する。
すなわち、2出力CWドップラセンサ110延いては車両200に対する移動体の移動速度を検出する。
【0035】
B305では、LF1とLF2の位相差を検出する。
すなわち、2出力CWドップラセンサ110延いては車両200に対する移動体の移動方向を検出する。
【0036】
続いて、B306では、B304及びB305からの出力に対して積算処理(積分処理)を実行する。積算処理(積分処理)を実行することで、その場で揺れているような物体或は人間の動きは、移動方向が交互に対向するため相殺(キャンセル)されて、積算処理を行っても、その値が増加或は減少する傾向を持たない。
【0037】
よって、乗客等の移動体(測定対象)が、2出力CWドップラセンサ110に対して接近している場合や離脱していく(遠退いていく)場合と、その場で何かが振動しているような場合と、を区別して、高精度に、乗客等の移動体(測定対象)が、2出力CWドップラセンサ110に対して接近している場合や離脱していく(遠退いていく)場合を検出することができる。
【0038】
続いて、B307では、B302で設定した閾値(或いは予め実験等により求めた閾値など)と比較して、乗客等の移動体(測定対象)の動静判定を行う。
【0039】
なお、この判定結果(閾値との偏差の大きさなど)に応じて、上述したように、運転席付近に設けた支援装置400を介して、自動放送装置などを介して乗客に注意を喚起したり、運転者に、ランプ等を点灯させたり警報音を鳴らすなどして報知するようにして、乗客が転倒等しないような安全な運行の実現を可能としている。
【0040】
ところで、上述したB307で用いる閾値が一定値であると、車両走行条件(路面の状態や車速変化などの車両走行状態)や車室内の混雑度合いなどの車室内の状況により、閾値が不適合となり、判定精度が低下して、誤判定を招いてしまうことも想定される。
【0041】
このため、本実施の形態では、測定対象である移動体の移動速度(乗客の歩行速度)の取り得る値以外の帯域を一定時間(例えば、1分間)、積分する。この一定時間は、適宜に変更することができる。
【0042】
なお、一定時間経過する毎に、積分値を更新する構成とすることができる。これにより、取得される積分値を、車両走行条件(路面の状態や車速変化などの車両走行状態)の変化に追従させて変更することができる。
【0043】
具体的には、図6に示すように、
B308にて、B301、B302を通過してFFT処理されたIF1、IF2に対して、ノイズ成分を除去し、その後、B309にて積算処理を実行する。
B308の帯域消去フィルタの周波数特性は、人間の歩行速度に相当するドップラ周波数範囲を減衰するように設定する。
想定歩行速度:例えば、0.8〜1.3m/s
対応するドップラ周波数:130〜210Hz(24GHzセンサの場合)
【0044】
そして、B309にて得られる積分値は、測定対象である移動体の移動(乗客の歩行)以外の要因により発生したノイズ(すなわち、乗客の歩行といった特異な変化以外の動きを、車両走行条件(路面の状態や車速変化などの車両走行状態)によって生じる乗客や車室内の物体などの周期的な揺れ)とみなし、この値を基準に判定のための閾値を設定する。
【0045】
すなわち、B309にて、予め定められている定数(初期閾値)に対して、B308で得られた積分値を乗算することで、実際の車両走行条件(路面の状態や車速変化などの車両走行状態)によって生じる乗客や車室内の物体などの周期的な揺れを排除可能な新たな閾値を設定し、これを、B307で用いる閾値として利用するようになっている。
【0046】
従って、本実施の形態によれば、測定対象である移動体の移動速度(乗客の歩行速度)の取り得る値以外の帯域情報をノイズと考え、このノイズを考慮した値を閾値として利用するようにしたので、乗客等の移動体(測定対象)の動静判定を、より一層高精度に行うことができる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、ワンマンバスなどの車室内における乗客の動きを応答性良く正確に観察することができ、以って乗客の危険な動きを見落とすことなく迅速に察知して注意を促したり、乗客の動きを考慮しない危険な車両発進操作などを回避して、安全な運行を実現することに貢献可能な車室内状況観察装置(システム)延いては車室内事故予防装置(システム)を提供することができる。
【0048】
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 車室内事故予防装置(システム)
100 車室内状況観察装置(システム)
110 2出力CWドップラセンサ(2出力CWドップラレーダ)
200 車両(バスなど)
300 電子制御装置(ECU)
400 支援装置(警報ランプ、自動放送装置など)
図1
図2
図3
図4
図5
図6