(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0011】
[実施形態1]
実施形態1を説明する。
図1は燃料フィルタ装置を示す正面図、
図2は同じく下面図、
図3は
図2のIII−III線矢視断面図、
図4はフィルタ部材の一部を示す平面図である。
図3に示すように、燃料フィルタ装置10は、燃料タンク12内の底部すなわち平面状の底壁部13上に配置されかつ燃料を吸入する燃料吸入口14に接続され、図示しない燃料ポンプによって燃料吸入口14から吸入される燃料タンク12内の燃料を濾過すなわち異物を捕捉するものである。燃料ポンプは、燃料タンク12内の燃料を燃料フィルタ装置10を介して吸入しかつ昇圧して図示しないエンジン(内燃機関)に供給する。
【0012】
前記燃料フィルタ装置10は、フィルタ部材16と、フィルタ部材16を収容するケース部材18とから構成されている。フィルタ部材16は、中空部21を形成する扁平な四角形袋状に形成されたフィルタ材20と、フィルタ材20の中空部21に装入されている内骨部材22と、内骨部材22上に立設されかつフィルタ材20の上側のフィルタ材20をシール状態で貫通する接続管24とを備えている。本実施形態において、フィルタ部材16は、上下2枚のフィルタ材20A,20Bの外周部20aを全周に亘って溶着等によりシール状態に接合することによって構成されている。なお、フィルタ材20は、1枚のフィルタ材を二つ折りにしてその外周部を溶着等によりシール状態に接合することによっても構成してもよい。
【0013】
前記両フィルタ材20A,20Bは、積層された複数枚の面状の濾材が複数のドット溶着部26により一体化されてなる。複数枚の面状の濾材は樹脂製である。また、複数枚の面状の濾材は、同一樹脂材料でもよいし、異なる樹脂材料の組合せでもよいし、樹脂材料と樹脂以外の材料との組合せでもよく、複数のドット溶着部26により一体化されるものであればよい。また、ドット溶着部26は、複数枚の面状の濾材に対してドット状に加熱を施すことにより、その濾材の一部を溶融させた後、冷却して固化されてなる溶着部いわゆる点溶着部によって形成されている。また、複数のドット溶着部26は、両フィルタ材20A,20Bに分散的に配置されている。
【0014】
前記内骨部材22は、前記フィルタ材20の中空部21に配置されている。内骨部材22は、樹脂製で、格子状の格子板部28を有する。格子板部28は、四角形枠状の枠部29と、枠部29内を前後方向に斜めに横切るとともに相互に交差する桟部30(
図4参照)とを有する。桟部30同士の交差部分及び枠部29と桟部30との交差部分を交差部31という。また、桟部30同士、及び、桟部30と枠部29とにより板厚方向(
図3において上下方向)に開口する四角(菱形)形状又は三角形状の開口部32が形成されている。格子板部28は、前記上側のフィルタ材20A(詳しくは内面(
図3において下面))に面しており、相互に面接触状に当接可能となっている。また、交差部31には、下方へ向けて突出する複数の脚部33が形成されている。各脚部33の先端部(下端部)と、前記下側のフィルタ材20B(詳しくは内面(上面))とは相互に当接可能となっている。また、格子板部28と脚部33とにより、中空部21すなわち上側のフィルタ材20Aと下側のフィルタ材20Bとの対向面間に所定の間隔を形成する間隔形成部34が構成されている(
図3参照)。
【0015】
前記格子板部28の中央部には、上方に向けて突出されかつ上下方向に貫通する中空円筒状の接続口36が形成されている。接続口36には、前記上側のフィルタ材20Aの中央部に形成された取付孔37が嵌合されている。また、接続口36には、前記接続管24が嵌合されかつ溶着等によりシール状態に接続されている。接続管24は樹脂製である。また、格子板部28と接続管24との間において、上側のフィルタ材20Aの取付孔37の孔縁部が挟持されかつ溶着等によりシール状態に接合されている。また、接続管24の管内が接続口36を介してフィルタ部材16の中空部21に連通されている。接続口36と接続管24とにより、前記燃料吸入口14に対する接続部40が構成されている。なお、内骨部材22は本明細書でいう「間隔形成部材」、「内側部材」に相当する。
【0016】
ところで、前記上側のフィルタ材20A及び前記内骨部材22の間隔形成部34の積層方向上方(
図3において上方)から見て、上側のフィルタ材20Aのドット溶着部26の相互間に間隔形成部34の桟部30がドット溶着部26と離間する位置関係をもって配置されている(
図4参照)。また、間隔形成部34の開口部32の中央部には、上側のフィルタ材20Aのドット溶着部26が1個ずつ配置されている。また、前記下側のフィルタ材20Bは、前記接続部40に対向する領域(接続部40の真下付近の領域が相当する)を有する。また、接続部40の軸線方向上方(
図3において上方)から見て、接続部40に対向する下側のフィルタ材20Bの領域内に下側のフィルタ材20Bのドット溶着部26(符号、(A)を付す)が1個配置されている(
図4参照)。
【0017】
図1〜
図3に示すように、前記ケース部材18は、扁平な四角形箱状に形成されている。ケース部材18は、上下に分割された蓋体44とケース本体42とから構成されている。ケース本体42は、上面を開口する浅い有底四角形箱状に形成されている。ケース本体42内には、前記フィルタ部材16が収容されている(
図3参照)。すなわち、ケース本体42はフィルタ部材16の外側に配置されている。ケース本体42の底板部43は格子状に形成されている。すなわち、
図2に示すように、底板部43は、四角形枠状の枠部46と、枠部46内を前後方向に斜めに横切るとともに相互に交差する桟部47とを有する。桟部47同士の交差部分及び枠部46と桟部47との交差部分を交差部48という。また、桟部47同士、及び、桟部47と枠部46とにより板厚方向(
図3において上下方向)に開口する四角(菱形)形状又は三角形状の開口部49が形成されている。底板部43は、フィルタ部材16の下側のフィルタ材20B(詳しくは
外面(下面))に面しており、相互に面接触状に当接可能となっている。また、枠部46の四隅部の下面には、半球状の支持突起50が突出されている。各支持突起50が前記燃料タンク12の底壁部13上に当接することにより、ケース本体42の底板部43と燃料タンク12の底壁部13との間に燃料が流通する隙間51が形成されている(
図3参照)。また、底板部43と支持突起50とにより、ケース本体42の底板部43と燃料タンク12の底壁部13との対向面間に所定の間隔を形成する間隔形成部52が構成されている。
【0018】
図3に示すように、前記ケース本体42の各側板部54には、それぞれ係止爪55が形成されている。また、前記蓋体44は、下面を開口する浅い有天四角形箱状に形成されている。蓋体44の上板部57は、各側板部58に連続する枠状に形成されている。蓋体44の各側板部58には、それぞれ係合孔59が形成されている。ケース本体42の各係止爪55に蓋体44の各係合孔59をスナップフィットを利用して係合することにより、ケース本体42に蓋体44が装着されている(
図1〜
図3参照)。また、ケース本体42の各側板部54と蓋体44の各側板部58との間に前記フィルタ材20の外周部20aが挟持されている(
図3参照)。また、フィルタ部材16の接続管24の上端部は、蓋体44の上板部57の開口部を通して上方へ延びている。また、上側のフィルタ材20Aと蓋体44の上板部57との間の空間部には、所定の間隔が設定されている。これにより、上側のフィルタ材20A上の空間部において蓋体44内に燃料が貯留可能とされている。なお、ケース本体42は本明細書でいう「間隔形成部材」、「外側部材」に相当する。
【0019】
ところで、前記下側のフィルタ材20B及び前記ケース本体42の間隔形成部52の積層方向下方(
図3において下方)から見て、下側のフィルタ材20Bのドット溶着部26の相互間に間隔形成部52の桟部47がドット溶着部26と離間する位置関係をもって配置されている(
図2参照)。また、間隔形成部52の開口部49の中央部には、下側のフィルタ材20Bのドット溶着部26が1個ずつ配置されている。
【0020】
前記燃料フィルタ装置10は、前記燃料タンク12内の底壁部13上に配置される(
図3参照)。また、接続管24には、燃料タンク12内に配置される燃料吸入口14が接続される。図示しない燃料ポンプによりフィルタ部材16のフィルタ材20の中空部21に負圧が作用すると、燃料タンク12内の燃料がフィルタ材20により濾過された後、フィルタ材20の中空部21、接続口36及び接続管24を通じてエンジンに供給される。
【0021】
前記燃料フィルタ装置10によると、フィルタ部材16(
図3参照)において、フィルタ材20が袋状に形成され、フィルタ材20の中空部21に内骨部材22が配置されている。したがって、内骨部材22の間隔形成部34によって、フィルタ材20の中空部21に所定の間隔を確保することができる。これにより、フィルタ材20の中空部21の通路面積の減少を防止して、圧損の増大を防止することができる。
【0022】
また、フィルタ部材16において、上側のフィルタ材20A及び内骨部材22の間隔形成部34の積層方向上方から見て、上側のフィルタ材20Aのドット溶着部26の相互間に間隔形成部34の桟部30がドット溶着部26と離間する位置関係をもって配置されている(
図4参照)。これにより、間隔形成部34の開口部32に対応する上側のフィルタ材20Aの開放部分において桟部30と離間する位置関係をもって配置されるドット溶着部26によって、上側のフィルタ材20Aの開放部分の燃料による膨潤を抑制することができる。このことは、上側のフィルタ材20Aの開放部分の燃料の吸入による撓みを防止し、フィルタ材20の中空部21の通路面積の減少、及び、圧損の増大の防止に有効である。また、間隔形成部34の桟部30によって、上側のフィルタ材20Aのドット溶着部26の相互間の中間部分の燃料による膨潤を抑制することができる。
【0023】
また、ケース部材18(
図3参照)において、ケース本体42がフィルタ部材16の外側に配置され、燃料タンク12の底壁部13とフィルタ部材16の下側のフィルタ材20Bとの対向面間にケース本体42の間隔形成部52が配置されている。したがって、ケース本体42の間隔形成部52によって、燃料タンク12の底壁部13とフィルタ部材16の下側のフィルタ材20Bとの対向面間に所定の間隔を確保することができる。これにより、燃料タンク12の底壁部13に対する下側のフィルタ材20Bの接触を防止して、下側のフィルタ材20Bの穴あき、破れ等の破損を防止することができる。
【0024】
また、ケース部材18において、下側のフィルタ材20B及びケース本体42の間隔形成部52の積層方向下方から見て、下側のフィルタ材20Bのドット溶着部26の相互間に間隔形成部52の桟部47がドット溶着部26と離間する位置関係をもって配置されている(
図2参照)。これにより、間隔形成部52の開口部49に対応する下側のフィルタ材20Bの開放部分において桟部47と離間する位置関係をもって配置されるドット溶着部26によって、下側のフィルタ材20Bの開放部分の燃料による膨潤を抑制することができる。このことは、燃料タンク12の底壁部13に対する下側のフィルタ材20Bの開放部分の接触を防止し、下側のフィルタ材20Bの穴あき、破れ等の破損の防止に有効である。また、間隔形成部52の桟部47によって、下側のフィルタ材20Bのドット溶着部26の相互間の中間部分の燃料による膨潤を抑制することができる。
【0025】
また、フィルタ部材16(
図3及び
図4参照)において、接続部40に対向する下側のフィルタ材20Bの領域内に配置されるドット溶着部26(A)によって、接続部40に対向するフィルタ材20の領域における膨潤及び燃料の吸入による撓みを防止することができる。これにより、フィルタ材の中空部の通路面積の減少、及び、フィルタ材20の領域の撓みによる燃料吸入口14の閉塞を防止して、圧損の増大を防止することができる。
【0026】
[実施形態2]
実施形態2を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。
図5はフィルタ部材の一部を示す平面図である。
図5に示すように、本実施形態は、実施形態1(
図4参照)における上側のフィルタ材20Aに、間隔形成部34の格子板部28の開口部32内に位置する複数個(
図5では4個を示す)のドット溶着部26を設定したものである。これにより、上側のフィルタ材20Aの開放部分の燃料による膨潤を一層抑制することができる。
【0027】
[実施形態3]
実施形態3を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。
図6はフィルタ部材の一部を示す平面図である。
図6に示すように、本実施形態は、実施形態1(
図4参照)における上側のフィルタ材20Aに、間隔形成部34の格子板部28の交差部31に重なるドット溶着部26(符号、(B)を付す)を設定したものである。これにより、間隔形成部34の格子板部28の交差部31に重なる上側のフィルタ材20Aの部分の燃料による膨潤を抑制することができる。
【0028】
[実施形態4]
実施形態4を説明する。本実施形態は、前記実施形態2に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。
図7はフィルタ部材の一部を示す平面図である。
図7に示すように、本実施形態は、実施形態2(
図5参照)における上側のフィルタ材20Aに、前記実施形態3(
図6参照)と同様に、間隔形成部34の格子板部28の交差部31に重なるドット溶着部26(B)を設定したものである。
【0029】
[実施形態5]
実施形態5を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。
図8はケース部材の一部を示す底面図である。
図8に示すように、本実施形態は、実施形態1(
図2参照)における下側のフィルタ材20Bに、間隔形成部52の底板部43の開口部49内に位置する複数個(
図5では5個を示す)のドット溶着部26を設定したものである。これにより、下側のフィルタ材20Bの開放部分の燃料による膨潤を一層抑制することができる。
また、接続部40に対向する下側のフィルタ材20の領域内には、複数個(
図5では5個を示す)のドット溶着部26(A)が配置されている。これにより、接続部40に対向するフィルタ材20の領域における膨潤及び燃料の吸入による撓みを一層防止することができる。
【0030】
[実施形態6]
実施形態6を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。
図9はケース部材の一部を示す底面図である。
図9に示すように、本実施形態は、実施形態1(
図2参照)における下側のフィルタ材20Bに、間隔形成部52の底板部43の交差部48に重なるドット溶着部26(符号、(B)を付す)を設定したものである。これにより、間隔形成部52の底板部43の交差部48に重なる下側のフィルタ材20Bの部分の燃料による膨潤を抑制することができる。
【0031】
[実施形態7]
実施形態7を説明する。本実施形態は、前記実施形態5に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。
図10はケース部材の一部を示す底面図である。
図10に示すように、本実施形態は、実施形態5(
図8参照)における下側のフィルタ材20Bに、前記実施形態6(
図9参照)と同様に、間隔形成部52の底板部43の交差部48に重なるドット溶着部26(B)を設定したものである。
【0032】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、燃料フィルタ装置10においてケース部材18は省略することもできる。また、フィルタ材20のドット溶着部26の形状は、円形に限定されるものではなく、例えば三角形、四角形等の多角形、+(プラス)形、−(マイナス)形、楕円形等でもよい。また、フィルタ部材20の一部は、燃料を濾過しない非透過性材料で形成される場合もある。また、内骨部材22は、下側のフィルタ材20Bに面する格子板部28を有するものでもよい。また、フィルタ部材16の外形は、四角形状に限定されるものではなく、例えば三角形、六角形等の多角形状、円形形状、楕円形状等でもよい。また、内骨部材22の間隔形成部34の開口部32及び/又はケース本体42の間隔形成部52の開口部49は、四角(菱形)形状に限定されるものではなく、例えば三角形、平行四辺形、六角形等の多角形状、円形形状、楕円形状等でもよい。
【0033】
また、上側のフィルタ材20Aのドット溶着部26の相互間が多数存在する場合には、その相互間のうちの一部に、内骨部材22の間隔形成部34の桟部30が配置されない場合もある。また、下側のフィルタ材20Bのドット溶着部26の相互間が多数存在する場合には、その相互間のうちの一部に、ケース本体42の底板部43における開口部49の相互間の桟部47が配置されない場合もある。また、内骨部材22の間隔形成部34の開口部32が多数存在する場合には、その開口部32のうちの一部に、上側のフィルタ材20Aのドット溶着部26が配置されない場合もある。また、ケース本体42の間隔形成部52の開口部49が多数存在する場合には、その開口部49のうちの一部に、下側のフィルタ材20Bのドット溶着部26が配置されない場合もある。また、上側のフィルタ材20Aに、間隔形成部34の枠部29及び/又は桟部30に重なるドット溶着部26を設定してもよい。また、下側のフィルタ材20Aに、間隔形成部52の枠部46及び/又は桟部47に重なるドット溶着部26を設定してもよい。