(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
矩形の本体底面板と、該本体底面板の長辺に立設された本体前面板及び本体後面板と、前記本体底面板の短辺に立設された本体左側面板及び本体右側面板と、を有し、前記本体前面板の上端辺、前記本体後面板の上端辺、前記本体左側面板の上端辺及び前記本体右側面板の上端辺が上面開口部を形成し、長尺物がロール状に巻回されたロール体を収容する容器本体と、
前記本体後面板の上端辺に回動可能に連接され、前記容器本体の上面開口部を閉鎖時に覆う天面板と、該天面板に連接され、前記本体前面板の外側に重ねて配置される蓋前面板と、を有する蓋体と、
前記ロール体から繰り出され、前記本体前面板と前記蓋前面板との間から引き出された長尺物を切断する切断手段と、
を備える包装容器において、
前記蓋前面板の下端辺は、中央部が両端部よりも前記容器本体底面板側に位置する凸形状であり、
前記切断手段の刃部が、前記蓋前面板の下端辺のうち、前記凸形状の頂点を含む領域に設けられ、
前記容器本体又は前記蓋体の少なくともいずれか一方が、前記長尺物の切断時に、該長尺物の動きを制御する補助手段を有し、
前記補助手段は、
(3)前記蓋前面板の下端辺のうち前記刃部が設けられていない下端辺に接する又は挿し込まれる、前記本体前面板に設けた段差部であるか、又は
(3)前記段差部と、(1)前記上面開口部の少なくとも長手方向の中央部に設けた押え板及び(2)滑り防止手段のいずれか一方又は両方とであり、
前記滑り防止手段が、前記本体前面板の上方部、前記本体前面板の上端辺又は前記本体前面板に設置したフラップの少なくともいずれか一つに設けられ、
前記段差部が、前記蓋前面板に切込線を介して連接し、かつ、該切込線に沿って切断することにより形成されることを特徴とする包装容器。
前記押え板が、前記本体前面板の上端辺に連接し、かつ、該連接する辺に対向する辺に連接する差込片を有し、該差込片を前記本体後面板の内側に差込んで係止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の包装容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋸歯状の刃部で切断した長尺物の切断端の形状は、鋸歯状となる。このため、鋸歯の刻み目を起点として長尺物がMD(Machine Direction)方向(縦方向ともいう。)に裂ける、所謂縦裂けが起こる場合がある。縦裂けがロール体側に残った長尺物で発生すると、切断端が容器内に巻き戻り、再度使用する時に切断端を探して引き出す動作は煩雑なものとなる。また、縦裂けがロール体から分離した長尺物で発生すると、適切な包装ができない。縦裂けの問題は、特許文献1又は2のように、刃部を蓋前面板の下端辺に部分的に設けることで改善できる。しかし、特許文献1のように、刃部を、蓋前面板の下端辺の両端部だけに設けただけでは、切断時に長尺物の切断方向が定まらず、斜めに切断されると、切断端が容器内に引き込まれる場合がある。また、特許文献2では、使用できる長尺物が、横方向に裂け易い特性を有するものに限られる。
【0006】
本発明の目的は、長尺物の切断方向を安定して切断でき、長尺物が縦裂けしにくい切断端を形成できる包装容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装容器は、矩形の本体底面板と、該本体底面板の長辺に立設された本体前面板及び本体後面板と、前記本体底面板の短辺に立設された本体左側面板及び本体右側面板と、を有し、前記本体前面板の上端辺、前記本体後面板の上端辺、前記本体左側面板の上端辺及び前記本体右側面板の上端辺が上面開口部を形成し、長尺物がロール状に巻回されたロール体を収容する容器本体と、前記本体後面板の上端辺に回動可能に連接され、前記容器本体の上面開口部を閉鎖時に覆う天面板と、該天面板に連接され、前記本体前面板の外側に重ねて配置される蓋前面板と、を有する蓋体と、前記ロール体から繰り出され、前記本体前面板と前記蓋前面板との間から引き出された長尺物を切断する切断手段と、を備える包装容器において、前記蓋前面板の下端辺は、中央部が両端部よりも前記容器本体底面板側に位置する凸形状であり、前記切断手段の刃部が、前記蓋前面板の下端辺のうち、前記凸形状の頂点を含む領域に設けられ、前記容器本体又は前記蓋体の少なくともいずれか一方が、前記長尺物の切断時に、該長尺物の動きを制御する補助手段を有
し、前記補助手段は、(3)前記蓋前面板の下端辺のうち前記刃部が設けられていない下端辺に接する又は挿し込まれる、前記本体前面板に設けた段差部であるか、又は(3)前記段差部と、(1)前記上面開口部の少なくとも長手方向の中央部に設けた押え板及び(2)滑り防止手段のいずれか一方又は両方とであり、前記滑り防止手段が、前記本体前面板の上方部、前記本体前面板の上端辺又は前記本体前面板に設置したフラップの少なくともいずれか一つに設けられ、前記段差部が、前記蓋前面板に切込線を介して連接し、かつ、該切込線に沿って切断することにより形成されることを特徴とする。
特定の補助手段を有することで、長尺物をより安定して切断することができる。また、大幅な設計変更を必要とせず、既存の製作ラインを活用できる。滑り防止手段を本体前面板の上方部、本体前面板の上端辺又は本体前面板に設置したフラップに設けることで、長尺物の引き出し操作を容易にしつつ、かつ、切断時の長尺物の動きを抑制し、より安定して切断することができる。段差部が切込線に沿って切断することにより形成されることで、包装容器の開封と同時に段差部を形成できる。また、包装容器の簡素化が可能となる。
【0011】
本発明に係る包装容器では、前記補助手段として、(2)滑り防止手段、及び、
(3)前記蓋前面板の下端辺のうち前記刃部が設けられていない下端辺に接する又は挿し込まれる、前記本体前面板に設けた段差部を有するか、又は(2)滑り防止手段、(1)前記上面開口部の少なくとも長手方向の中央部に設けた押え板
及び(3)前記蓋前面板の下端辺のうち前記刃部が設けられていない下端辺に接する又は挿し込まれる、前記本体前面板に設けた段差
部を有することが好ましい。長尺物の切断方向がより安定する。
【0012】
本発明に係る包装容器では、前記押え板は、前記上面開口部を形成する辺のうち少なくとも2辺に連接又は係止されていることが好ましい。切断時の長尺物の動きを抑制し、より安定して切断することができる。
【0013】
本発明に係る包装容器では、前記押え板が、前記本体前面板の上端辺に連接し、かつ、該連接する辺に対向する辺に連接する差込片を有し、該差込片を前記本体後面板の内側に差込んで係止することが好ましい。切断時の長尺物の動きを抑制し、より安定して切断することができる。
【0014】
本発明に係る包装容器では、前記長尺物が、ラップフィルムである形態を包含する。
【0015】
本発明に係る包装容器では、前記ラップフィルムが、ポリ塩化ビニリデンフィルムであることが好ましい。ポリ塩化ビニリデンフィルムは縦裂けが起こりやすいが、それを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、長尺物の切断方向を安定して切断でき、長尺物が縦裂けしにくい切断端を形成できる包装容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0019】
図1は、本実施形態に係る包装容器の第一例を示す斜視図である。
図2は、
図1の容器の蓋体を閉めた状態を示す斜視図である。本実施形態に係る包装容器100は、矩形の本体底面板11と、本体底面板11の長辺に立設された本体前面板12及び本体後面板13と、本体底面板11の短辺に立設された本体左側面板14及び本体右側面板15と、を有し、本体前面板12の上端辺12a、本体後面板13の上端辺13a、本体左側面板14の上端辺14a及び本体右側面板15の上端辺15aが上面開口部16を形成し、長尺物1がロール状に巻回されたロール体40を収容する容器本体10と、本体後面板13の上端辺13aに回動可能に連接され、
図2に示すように、容器本体10の上面開口部16を閉鎖時に覆う天面板21と、天面板21に連接され、本体前面板12の外側に重ねて配置される蓋前面板22と、を有する蓋体20と、ロール体40から繰り出され、本体前面板12と蓋前面板22との間から引き出された長尺物1を切断する切断手段30と、を備える包装容器において、蓋前面板22の下端辺22bは、中央部が両端部よりも容器本体底面板11側に位置する凸形状であり、切断手段30の刃部31が、蓋前面板22の下端辺22bのうち、凸形状の頂点を含む領域に設けられ、容器本体10又は蓋体20の少なくともいずれか一方が、長尺物1の切断時に、長尺物1の動きを制御する補助手段50(51,52,54)を有する。
【0020】
長尺物1は、例えば、ラップフィルム、アルミニウム箔、加熱調理用の紙シートである。ラップフィルムは、例えば、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエステルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルムである。このうち、ポリ塩化ビニリデンフィルムであることがより好ましい。ポリ塩化ビニリデンフィルムは縦裂けが起こりやすいが、それを防止することができる。また、ラップフィルムには、可塑剤、安定化剤などの各種助剤を含有する形態を包含する。加熱調理用の紙シートは、紙基材の片面又は両面にシリコン樹脂加工又はフッ素樹脂加工を施したシートである。長尺物1は、単層であるか、又は積層であるかを問わない。長尺物1の厚さは、特に限定されないが、ラップフィルムの場合には、一般に、5〜20μmである。
【0021】
包装容器100は、厚紙、プラスチックなどの板材で形成されている。板材の厚さは、特に限定されないが、一般に0.45〜0.70mmである。容器本体10は、矩形の本体底面板11の各辺に立設された本体前面板12、本体後面板13、本体左側面板14及び本体右側面板15によって形成された上面開口部16を有する横長の略直方体形状の箱である。蓋体20は、本体後面板13の上端辺13aに回動可能に一体に設けられる。閉鎖時には、天面板21が上面開口部16を覆い、蓋前面板22が本体前面板12の外側に重ねて配置される。蓋前面板22の下端辺22bは、
図1又は
図2に示すように、中央部が両端部よりも容器本体底面板11側に位置する凸形状である。
図1又は
図2では、一例として凸形状が蓋前面板22の下端辺22bが形成するV字形状である形態を示したが、これに限定されない。凸形状は、V字形状の他、例えば、U字形状、円弧形状である。凸形状の頂点は、蓋前面板22の長手方向(
図1のW−W´方向)における中心を通る直線(以降、中心線という)C上にあることが好ましい。また、蓋前面板22の下端辺22bは、中心線Cを対称軸とする線対称に形成することが好ましい。蓋体20は、閉鎖時に、本体左側面板14又は本体右側面板15の外側にそれぞれ配置される、蓋左側面板24及び蓋右側面板25を有していてもよい。
【0022】
切断手段30は、刃部31を有する切断刃である。切断手段30の材質は、特に限定されないが、例えば、厚紙、プラスチック、金属である。本実施形態では、刃部31で長尺物1の中央部に裂け目を入れ、その後の切断は引き裂け伝播で行う。刃部31は、
図1又は
図2に示すように、鋸歯状であることが好ましい。刃部31は、蓋前面板22の下端辺22bのうち、凸形状の頂点を含む領域に設けられる。刃部31は、中心線Cを対称軸とする線対称に形成することが好ましい。刃部31の幅は、5〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましい。この範囲にすることで、刃部31で長尺物1の中央部に裂け目を入れた後の、引き裂け伝播による切断をより良好に行うことができる。切断手段30は、
図1又は
図2に示すように、短い切断刃を設置するか、又は蓋前面板22の下端辺22bの全幅に相当する長さを有し、刃部を中央部だけに設けた切断刃(不図示)を設置してもよい。
【0023】
補助手段50は、(1)上面開口部16の少なくとも長手方向の中央部に設けた押え板51、(2)滑り防止手段52、又は(3)蓋前面板22の下端辺22bのうち刃部31が設けられていない下端辺に接する又は挿し込まれる、本体前面板12に設けた段差部54の(1)〜(3)の少なくとも1種であることが好ましい。これらの補助手段50は、従来の包装容器に対して、大幅な設計変更を必要としないため、既存の製作ラインを活用できる。補助手段50は、長尺物1の切断時に、長尺物1の動きを制御する手段であり、作用面から、切断時に長尺物1の動きを抑える抑制型と、切断時の長尺物1の引き裂き方向をTD(Transverse Direction)方向(以降、横方向ということもある。)に誘導する誘導型とに分類できる。いずれの型も、長尺物1の横方向への引き裂け伝播を助長して縦裂けを防止する効果を奏する。(1)押え板51は抑制型に属する。(2)滑り防止手段52は抑制型に属する。(3)段差部54は抑制型及び誘導型の両方に属する。
【0024】
図1又は
図2では、一例として(1)〜(3)のすべてを有する形態を示したが、これに制限されず、(1)だけ、(2)だけ若しくは(3)だけを有する形態としてもよい。また、本実施形態に係る包装容器100は、補助手段50を2種以上有することが好ましい。2種以上の補助手段50を組み合わせることで、1種だけを有する場合よりも切断方向の安定性が向上する。補助手段50の組合せは、例えば、(1)+(2)、(1)+(3)、(2)+(3)、(1)+(2)+(3)である。ただし、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらのみに限定されるものではない。このうち、(2)滑り防止手段52と他の補助手段51,54との組合せである(1)+(2)、(2)+(3)、(1)+(2)+(3)がより安定した切断が可能であり好ましい。
【0025】
次に、各補助手段50(51,52,54)について説明する。
【0026】
(1)押え板
図3は、
図2のX−X断面図である。押え板51は、少なくとも上面開口部16の長手方向(
図1のW−W´方向)の中央部に設けられる。より好ましくは、
図1又は
図2に示すように、上面開口部16の長手方向(
図1のW−W´方向)の全幅にわたって設ける。押え板51を有することで、
図3に示すように、長尺物1は押え板51と天面板21との間を経由して、本体前面板12と蓋前面板22との間から引き出される。このため、押え板51を設けない場合と比較して、長尺物1が包装容器の外に引き出されるまでの包装容器内での経路が延長されるため、切断時に長尺物1がずり出しにくくなり、切断方向の安定性を高めることができる。
【0027】
図1又は
図2では、一例として押え板51が本体前面板12の上端辺12aに連接する形態(
図3を参照。)を示したが、本発明はこれに制限されない。例えば、押え板は、押え板の端辺に連接する係止片(不図示)を設け、この係止片(不図示)を、本体前面板12に係止して取り付けてもよい。また、押え板51は、上面開口部16を形成する辺のうち、本体前面板12の上端辺12a以外の辺、すなわち、本体後面板13の上端辺13a、本体左側面板14の上端辺14a又は本体右側面板15の上端辺15aに連接又は係止してもよい。より好ましい形態としては、押え板51が、上面開口部16を形成する辺のうち少なくとも2辺に連接又は係止されている形態である。押え板51自体の動きが固定されるため、切断時の長尺物1の動きをより確実に抑制することができ、切断方向の安定性を高めることができる。
【0028】
図4は、別形態の押え板を有する包装容器の断面図である。
図4は、
図2のX−Xに相当する位置の断面図である。押え板510は、
図4に示すように、本体前面板12の上端辺12aに連接し、かつ、連接する辺に対向する辺に連接する差込片511を有し、差込片511を本体後面板13の内側に差込んで係止することが好ましい。この押え板510は上面開口部16を覆い、長尺物1は押え板510を切り抜いて形成したスリット状の穴sを通り、押え板510と天面板21との間を経由して、本体前面板12と蓋前面板22との間から引き出される。長尺物1が包装容器の外に引き出されるまでの包装容器内での経路が更に延長されるため、切断時に長尺物1が更にずり出しにくくなり、切断方向の安定性をより高めることができる。スリット状の穴sの形状は、例えば、上面開口部16の長手方向(
図1のW−W´方向)にわたって幅を一定とした長方形とするか、又は変形形状としてもよい。変形形状は、例えば、上面開口部16の長手方向(
図1のW−W´方向)の中央部に幅広な部分を設けた形態である。
【0029】
押え板51,510の表面の一部又は全面に、長尺物1に密着又は粘着して動きを抑制する防滑部(不図示)を設けてもよい。防滑部は、例えば、粘着剤、防滑ニスなどの塗布層、最表層として粘着剤、防滑ニスなどからなる防滑層を有するラベルである。また、長尺物1がポリ塩化ビニリデンフィルムである場合、ポリ塩化ビニリデンフィルムのもつ自己密着性を利用して、防滑部が、最表層としてポリ塩化ビニリデンフィルム層を有するラベルであってもよい。
【0030】
(2)滑り防止手段
滑り防止手段52は、長尺物1に密着又は粘着して、動きを抑制するものであり、例えば、粘着剤、防滑ニスなどの塗布層、最表層として粘着剤、防滑ニスなどからなる防滑層を有するラベルである。また、長尺物1がポリ塩化ビニリデンフィルムである場合、ポリ塩化ビニリデンフィルムのもつ自己密着性を利用して、滑り防止手段52が、最表層としてポリ塩化ビニリデンフィルム層を有するラベルであってもよい。
【0031】
滑り防止手段52は、本体前面板12の上方部、本体前面板12の上端辺12a又は本体前面板12に設置したフラップ(不図示)の少なくともいずれか一つに設けられることが好ましい。滑り防止手段52を、これらの少なくともいずれか一つに設けることで、長尺物1を引き出し時には長尺物1の動きを阻害することなく、長尺物1を切断時には長尺物1の動きを抑制して、より安定して切断することができる。本体前面板12の上方部は、本体前面板12の表面のうち、蓋前面板22と重なる領域である。本体前面板12に設置したフラップ(不図示)は、本体前面板12に連接し、容器本体10の外側に突出させた部分である。
図1又は
図2では、一例として本体前面板12の上方部の一部に設けた形態を示したが、これに限定されない。例えば、滑り防止手段52を、本体前面板12の上方部の全面に設ける、本体前面板12の上端辺12aだけに設ける、本体前面板12に設置したフラップ(不図示)だけに設ける、又は本体前面板12の上方部及び上端辺12aの両方に設けてもよい。本体前面板12の長手方向(
図1のW−W´方向)における、滑り防止手段52を設ける領域は、少なくとも長尺物1の幅方向(
図1のW−W´方向)の中央部が接する領域であることが好ましい。より好ましくは、
図1又は
図2に示すように、長尺物1の幅方向(
図1のW−W´方向)の全体が接する領域である。
【0032】
(3)段差部
段差部54は、少なくとも本体前面板12の長手方向(
図1のW−W´方向)の中央部に設けられる。より好ましくは、
図1又は
図2に示すように、本体前面板12の長手方向(
図1のW−W´方向)の全幅にわたって設ける。段差部54は、蓋体20を閉鎖時に刃部31が位置する部分に、切欠部54bを有することが好ましい。
【0033】
段差部54が蓋前面板22の下端辺22bのうち刃部31が設けられていない下端辺に接する場合、段差部54は、蓋前面板22に切込線を介して連接し、かつ、切込線に沿って切断することにより形成されることが好ましい。この形態では、包装容器100を開封前は、蓋前面板22と段差部54とは一体であり、本体前面板12の外側に重ねて配置される。そして、開封時に、切込線に沿って切断すると、蓋前面板22と段差部54とが分離して、
図1に示す状態になる。長尺物1を引き出して、
図2に示すように、蓋体20を閉めると、
図3に示すように、長尺物1が段差部54の上端辺54aと蓋前面板22の下端辺22bとの間に挟持される。このため、切断時に長尺物1の動きを抑制し、かつ、長尺物1の引き裂き方向を横方向に誘導して、切断方向の安定性を高めることができる。段差部54が蓋前面板22の下端辺22bに接する場合の別形態としては、本体前面板12に、段差部54として外側に凸のエンボス加工をして設けてもよい。
【0034】
図5は、別形態の段差部を有する包装容器の断面図である。
図5は、
図2のX−Xに相当する位置の断面図である。段差部540は、蓋前面板22の下端辺22bのうち刃部31が設けられていない下端辺が挿し込まれる場合、例えば、本体前面板12の外側に板状部材を固定して設けることが好ましい。板状部材の材質は、特に限定されないが、例えば厚紙である。段差部540は、
図5に示すように、蓋体20を閉じた時に蓋前面板22の下端辺22bのうち刃部31が設けられていない下端辺よりも上方に延出する延出片541を更に有することが好ましい。延出片541は、
図5に示すように、罫線542を設けて外側に折り曲げて形成するか、又は罫線を設けずに連続的に設けてもよい。蓋体20を閉じた時、蓋前面板22を本体前面板12と延出片541との間に差込むことで、長尺物1を延出片541と蓋前面板22の下端辺22bとの間で安定的に挟持することができ、切断時に長尺物1の動きをより確実に抑制することができる。また、長尺物1の引き裂き方向を横方向により確実に誘導することができる。
【0035】
図2に示す包装容器を参照して、切断方法について説明する。まず、一方の手で包装容器100を把持し、他方の手で所望の長さの長尺物1を引き出し、蓋体20を閉める。長尺物1を持つ手は固定したまま、包装容器100の中央部に設けた切断手段30の刃部31を、引き出した長尺物1に当てて長尺物1の中央部に裂け目を入れ、長尺物1を中央から両端に向けて、引き裂け伝播で順次切断する。包装容器100側に残った長尺物1の切断端1aの位置は、切断時の抵抗を小さくすることができる点で、蓋体20を閉じた状態で蓋前面板22の下端辺22bよりも本体底面板11側にあることが好ましい。このうち、蓋体20を閉じた状態で、蓋前面板22の下端辺22bのうち、凸形状の頂点を通り、本体底面板11に平行で、本体前面板12上に引いた仮想線を基準線Oとしたとき、包装容器100側に残った長尺物1の切断端1aの位置は、基準線O上にあることがより好ましい。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0037】
図6は、切断性評価に用いる基本の包装容器を示す斜視図である。基本の包装容器900として、
図6に示す包装容器を用意した。この基本の包装容器900は、厚さ0.7mmの厚紙からなり、外形が、幅w1が315mm、奥行きd1が44mm及び高さh1が44mmの略直方体形状である。蓋前面板22の下端辺22bは、V字形状とし、中心線Cを対称軸とした。V字形状の頂点と両端との高低差t1は10mmとした。そして、切断手段30として幅w2が18mmの鋸歯状の刃部31を有する切断刃が、蓋前面板22の下端辺22bの中央部に取り付けられている。長尺物1としては、厚さ10μm、幅w3が30cmのポリ塩化ビニリデンフィルムを用いた。基本の包装容器900に、表1に示す1つ又は2つ以上の補助手段を取り付けた包装容器を実施例1〜7とした。
【0038】
各補助手段は、次のものを用いた。
【0039】
(1)押え板は、313mm×20mmの長方形の厚紙(厚さ0.7mm)を、包装容器900の本体前面板12の上端辺12aに沿わせて配置し、本体左側面板14の上端辺14a及び本体右側面板15の上端辺15aに固定した。
【0040】
(2)滑り防止手段は、310mm×20mmの長方形で、最表層に防滑層を有するラベル(ストッパーラベル)を、包装容器900の本体前面板12の上端辺12aに沿って貼り付けた。
【0041】
(3)段差部は、蓋前面板22に切込線を介して連接し、かつ、切込線に沿って切断することにより形成した。
【0042】
(切断性評価)
実施例1〜7の包装容器及び補助手段を取り付けていない基本の包装容器900(比較例1)について、次に示す方法で、長尺物の切断性評価を行った。まず、一方の手で包装容器を把持し、他方の手で長尺物を30cm引き出し、蓋体を閉めた。長尺物を水平方向へ引きながら、容器を把持した手で容器を内側に捻る。この動作によって、切断手段の刃部によって長尺物の中央部に裂け目を入れる。さらに、そのまま長尺物を水平方向へ引き、長尺物を中央から両端に向けて引き裂け伝播で順次切断する。長尺物を切断後、蓋体を開き、包装容器側に残った長尺物の切断端について、基準線Oからの変位量のうち、最大値を記録した。変位量は、基準線O上を0とし、基準線Oよりも本体底面板11側であるときを+の変位量、上面開口部16側であるときを−の変位量で示した。切断操作を20回行い、各回の変位量の最大値の平均値を表1に示す。
【0043】
切断性評価の評価基準は、評価が高い方から順に次のとおりである。評価の順位が高いほど、切断時の抵抗が小さい傾向にある。
1.変位量が0mmである(実用レベル)。
2.変位量が0mmを超え+10mm以下である(実用レベル)。
3.変位量が−10mm以上0mm未満である(実用レベル)。
4.変位量が+10mmを超え+20mm以下である(実用下限レベル)。
5.変位量が+20mmを超える(実用不適レベル)。
6.変位量が−10mm未満である(実用不適レベル)。
【0044】
【表1】
【0045】
表1より、実施例1〜7と比較例1とを比較すると、補助手段(1)〜(3)の少なくともいずれか一つを有することで、補助手段を一つも有さない場合と比較して、切断端の基準線Oに対する変位量が小さくなることが確認できた。また、実施例1〜3と実施例4〜6とを比較すると、補助手段(1)+(2)、(2)+(3)又は(1)+(2)+(3)を組み合わせることで、補助手段を一つだけ有する場合と比較して、切断端の基準線Oに対する変位量をより小さくできることが確認できた。