特許第5985309号(P5985309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985309
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20160823BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H02G3/04
   B60R16/02 623T
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-189158(P2012-189158)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-50152(P2014-50152A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼谷 茂訓
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−055822(JP,A)
【文献】 特開平08−140237(JP,A)
【文献】 特開2007−104828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線が同一平面上に載置される底板部と、
前記複数の電線を挟んで互いに離間して前記底板部に立設され、前記電線のクランク状屈曲部に対応する幅が前記クランク状屈曲部の前後直線部に対応する幅よりも広い一対の側部と、
前記一対の側部の中間部にて前記底板部に立設され、前記一対の側部の間におけるそれぞれの前記電線の収容空間を長手方向に沿って仕切る隔壁部と、
併設された前記クランク状屈曲部の間に位置するように前記隔壁部を分断して前記底板部に設けられたプロテクタ固定部と、
を備えることを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
請求項1記載のプロテクタであって、
前記電線が高圧ケーブルであることを特徴とするプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスの配索に用いて好適なプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の電気系統の車内配線にワイヤーハーネス(電線)が多用されている。ワイヤーハーネスは、ハーネスクランプ等の固定具により車体に固定されるとともに、車体の所定位置に配設されるプロテクタ内にその一部を収容されて、車体に配索されることがある。プロテクタには様々な形態があり、例えば特許文献1に開示されるプロテクタは、底壁の両側に側壁を立設した長尺状のものであって、その長手方向中間が屈曲されている。底壁上には、その屈曲部分において長手方向に沿って延びる区画壁が設けられている。区画壁によって、この屈曲したプロテクタに、内周側配索経路と外周側配索経路とが区画されている。
【0003】
ところで、例えば図3に示すように、プロテクタ501は、本体503に設けられたプロテクタ固定部505の固定孔507に、ボルト等の締結手段が挿入されて車体に固定される。従来、プロテクタ固定部505は、電線509の屈曲部511の内側(電線並び方向の一端側)に形成される本体503の凹状スペース513を利用して設けられることで、本体最外形幅Wの寸法を小さく抑え、本体503の肥大化を抑止している。仮にプロテクタ固定部505が屈曲部511の凸状部515の外側に設けられれば、本体最外形幅Wの寸法は増大する。また、プロテクタ501内で電線509が通る電線収容空間517は、部品ばらつきを加味して電線509が収まる最小の収容幅dとし、直線部も屈曲部511も同じ収容幅dで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−140237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとを併用して走行するハイブリッド自動車などでは、インバータとモータとを接続する高圧ケーブル等に大径の電線509(太物電線)が用いられることが多い。大径の電線509は、剛性が高く、特に電線509の曲げ量が大きいと(曲率が大きいと)、配索作業がしづらくなる。また、剛性が高いと、電線切断時や配索時に発生した余長を電線509のたるみや折り返しなどで吸収できないため、これによっても作業者の配索負担が増大する。これに対し、電線収容空間517の収容幅dを単に広げれば、本体最外形幅Wの寸法が増大し、本体503が肥大化する。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、電線の配索作業を容易にできるプロテクタの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 複数の電線が同一平面上に載置される底板部と、
前記複数の電線を挟んで互いに離間して前記底板部に立設され、前記電線のクランク状屈曲部に対応する幅が前記クランク状屈曲部の前後直線部に対応する幅よりも広い一対の側部と、
前記一対の側部の中間部にて前記底板部に立設され、前記一対の側部の間におけるそれぞれの前記電線の収容空間を長手方向に沿って仕切る隔壁部と、
併設された前記クランク状屈曲部の間に位置するように前記隔壁部を分断して前記底板部に設けられたプロテクタ固定部と、
を備えることを特徴とするプロテクタ。
【0008】
上記(1)の構成のプロテクタによれば、併設された複数の電線のクランク状屈曲部に対応する一対の側部の幅が、このクランク状屈曲部の前後直線部に対応する幅よりも広くされ、プロテクタ固定部が、併設された電線のクランク状屈曲部の間に配置される。そこで、同等の本体最外形幅を有するプロテクタとしながら、プロテクタ固定部が電線並び方向の一端側に配置される従来のプロテクタに比べ、電線のクランク状屈曲部において電線収容空間となる一対の側部の離間スペースが拡大される。クランク状屈曲部に対応する電線収容空間は、一対の側部の離間スペースが拡大される分、幅広となって大きくなるため、電線の曲げ量が少なくなり(曲率が小さくなり)、電線を配索する場合の配索作業が容易となる。また、電線切断時や配索時に発生した電線余長が、クランク状屈曲部に対応する電線収容空間で吸収可能となり、作業者の配索負担が軽減される。
【0009】
(2) 上記(1)の構成のプロテクタであって、前記電線が高圧ケーブルであることを特徴とするプロテクタ。
【0010】
上記(2)の構成のプロテクタによれば、通常の電線に比べて径が太く剛性が高い高圧ケーブルの配索が容易となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るプロテクタによれば、電線の配索作業を容易にできる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るプロテクタに電線を配索した状態の平面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】従来のプロテクタに電線を配索した状態の要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るプロテクタ11は、互いに組み合わされて電線である高圧ケーブル13を収納可能な筒体を形成する本体15および蓋体(不図示)を有する。本体15は、併設された2本の高圧ケーブル13が同一平面上に載置される底板部19と、2本の高圧ケーブル13を挟んで互いに離間して底板部19に立設される一対の側部17とを有する。これら一対の側部17は、高圧ケーブル13に沿って長尺の底板部19の長手方向に沿う両側縁から起立している。即ち、本体15は、長手方向に直交する断面形状が、上方を開放されたコ字形状となる。この上方の開放部分は、本体内方の電線収容空間21を開放する本体開口部23となる。
【0015】
本実施形態において、本体15には2本の高圧ケーブル13が収容される。底板部19には一対の側部17の中間部に隔壁部25が起立して設けられ、隔壁部25は電線収容空間21を長手方向に沿って二分割している。本実施形態において、本体15には2本の高圧ケーブル13が収容されるが、本発明に係るプロテクタ11は、1本の高圧ケーブル13、或いは3本以上の高圧ケーブル13が収容されるものであってもよい。また、電線としての高圧ケーブル13は、複数の電線を束状に纏めた電線束であってもよい。
【0016】
本体15の長手方向一端側には一端側電線導出入部27が形成され、本体15の長手方向他端側には他端側電線導出入部29が形成される。本体15には、一端側電線導出入部27の外側に、車体固定用ブラケット部31が設けられている。車体固定用ブラケット部31には、車体固定用係止孔33が形成されている。
【0017】
図示しない蓋体は、本体15の平面視の形状、即ち、本体開口部23に倣った形状に形成される。蓋体は、高圧ケーブル13に沿う両側に、蓋体縁部が形成されている。この蓋体縁部は、本体15における一対の側部17の内側に挿入される。
【0018】
本体15および蓋体には、双方の長手方向に沿って複数のロック部が設けられている。ロック部は、本体15の両側部17および蓋体の両側縁を相互に係合する。ロック部は、本体15および蓋体の長手方向に沿って所定間隔で配置されている。ロック部は、両側部17の外側に設けられるそれぞれの受け部35と、蓋体の両側縁のそれぞれに設けられ受け部35に挿入係合される不図示の係合片と、からなる。受け部35は、一対の側部17の外側面に設けられている。
【0019】
本体15の底板部19には、結束バンド37のバンド部39を挿通可能とする一対のバンド挿通孔が穿設されている。これらバンド挿通孔は、本体15に収容された高圧ケーブル13と交差する方向(本実施形態では、直交する方向)に並んで本体15に配置される。結束バンド37は帯状で、両端部が本体15のバンド挿通孔を介して内部に挿通され、内部に配設される高圧ケーブル13を本体15に結束する。バンド部39のバンド後端にはバックル部41が備えられ、このバックル部41にロック孔を形成した構成になっている。ロック孔の内部には爪が設けられており、バンド部39のバンド先端をロック孔に差し込むと、バンド部39の表面に形成された凹凸に爪が係合することにより、バンド部39がロックされる構造になっている。
【0020】
プロテクタ11には、一方のバンド挿通孔を含んで本体15にバンド結束用空間部43が画成されている。バックル部41を収容したバンド結束用空間部43は、蓋体を本体15に取り付けたときに、蓋体に膨出形成されている不図示の結束空間閉鎖板部によって閉塞される。
【0021】
本実施形態のプロテクタ11に収容される併設された2本の高圧ケーブル13の長手方向には、曲げ方向が逆の二つの屈曲部45が所定の間隔で設けられたクランク状屈曲部47が形成されている。
そこで、図1に示すように、併設された2本の高圧ケーブル13を同一平面上に載置する底板部19は、クランク状に湾曲して形成されており、2本の高圧ケーブル13を挟んで互いに離間して底板部19の両側縁に立設される一対の側部17は、高圧ケーブル13のクランク状屈曲部47に対応する幅D1がクランク状屈曲部47の前後直線部44,46に対応する幅D2よりも広く形成されている。
【0022】
更に、隔壁部25は、高圧ケーブル13のクランク状屈曲部47に沿って底板部19に立設された両側部17に挟まれ、両側部17の間を2つの電線収容空間21に仕切っている。
これにより、両側部17及び隔壁部25は、高圧ケーブル13のクランク状屈曲部47に沿って形成されている。
【0023】
本体15の長手方向略中央部の底板部19には、矩形状に開放される筒状のプロテクタ固定部49が、収容された2本の高圧ケーブル13のクランク状屈曲部47の間に位置するように隔壁部25を分断して形成されている。蓋体には、このプロテクタ固定部49に一致する矩形穴が形成されている。矩形穴は、蓋体が本体15に取り付けられることでプロテクタ固定部49に一致し、プロテクタ固定部49の内方を閉鎖することなく外方へ開放する。プロテクタ固定部49には底板部19を貫通する固定孔51が穿設されている。プロテクタ11は、プロテクタ固定部49の固定孔51にボルト等の締結手段が挿入されて、車体に固定される。
【0024】
次に、上記構成を有するプロテクタ11の作用を説明する。
図2に示すように、本実施形態に係るプロテクタ11では、併設された2本の高圧ケーブル13のクランク状屈曲部47に対応する一対の側部17の幅D1が、このクランク状屈曲部47の前後直線部44,46に対応する幅D2よりも広くされ、プロテクタ固定部49が、併設された高圧ケーブル13のクランク状屈曲部47の間に配置される。そこで、同等の本体最外形幅Wを有するプロテクタ11としながら、プロテクタ固定部505が電線並び方向の一端側に配置される従来のプロテクタ501(図3参照)に比べ、高圧ケーブル13のクランク状屈曲部47において電線収容空間21となる一対の側部17の離間スペース53が拡大される。
【0025】
即ち、従来の本体最外形幅Wの寸法を変えず、一対の側部17の離間スペース53が拡大されることで、スペース拡大部55が生まれ、高圧ケーブル13のクランク状屈曲部47に対応する電線収容空間21収容幅eとなって拡がる。
【0026】
クランク状屈曲部47に対応する電線収容空間21は、一対の側部17の離間スペース53が拡大される分、幅広となって大きくなるため、高圧ケーブル13の曲げ量が少なくなり(曲率が小さくなり)、特に曲げ剛性の高い太物電線である高圧ケーブル13の配索作業が容易となる。また、電線切断時や配索時に発生した電線余長が、クランク状屈曲部47に対応して幅広となる電線収容空間21で吸収可能となり、作業者の配索負担が軽減される。
【0027】
なお、本実施形態のプロテクタ11は、通常の電線に比べて径が太く剛性が高い高圧ケーブル13に適用したことで、作業者の配索負担を軽減する効果が顕著となったが、本発明に係る電線はこれに限定されず、通常の電線や複数の電線を束状に纏めた電線束等の種々の電線に適用できることは云うまでもない。
【0028】
従って、本実施形態に係るプロテクタ11の構造によれば、太物電線の配索作業を容易にできる。
なお、本発明のプロテクタの構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0029】
11…プロテクタ
13…高圧ケーブル(電線)
17…側部
19…底板部
21…電線収容空間
25…隔壁部
44…前直線部
46…後直線部
45…屈曲部
47…クランク状屈曲部
49…プロテクタ固定部
D1…クランク状屈曲部に対応する一対の側部の幅
D2…クランク状屈曲部の前後直線部に対応する幅
図1
図2
図3