(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態に係る配属先決定支援システムは、各組織毎の求められるスキルや定員数の情報及び配置対象となる各社員毎のスキル値の情報を用いて、複数の社員を一括して最適な組織に配置するための演算及び人材配置決定の処理を行うことによって、人事部等による各社員の最終的な配属決定の人事を支援するものである。
【0008】
すなわち、会社などの各種組織において、社員が持つスキルを活かすため、「適材適所」の人員配属が求められている。また、人材は限られているため、スキルを活かすだけでなく、未熟なスキルを伸ばすことも重要視されている。これに関し、組織が求める高いスキルを有する人材を抽出するシステム、或いは組織が求める人材を把握するために、社員のスキルが組織の要求に対してどの程度不足するかを確認するシステムなどが知られている。しかしながら、こうした従来技術は、一つの組織に注目し、その組織が求める条件に合致する社員を抽出することを主眼としているため、例えば新入社員の配属決定のように、複数組織に対する人材配置は考慮されておらず、複数(さらには多数)の社員を一括して最適な組織に配置することができない。また、従来技術は、社員の不足スキルを把握することに重点が置かれ、不足スキルを伸ばすという観点が相対的に軽視されていた。このような状況に鑑みて、実施形態の配属先決定支援システムは、複数の組織に対して複数の社員を一括して最適な組織に配置するための人材配置の決定を行い、かつ、より積極的に「社員の不足スキルを伸ばす」という視点から、スキルアップを目的とした社員の配属先決定の処理を行うものである。すなわち、実施形態の配属先決定支援システムは、従来技術とは逆に、一社員のスキルに注目し、その社員のスキルアップが図れる組織を配属先として抽出する処理を行う。以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、配属先決定支援システムの機能ブロック図である。配属先決定支援システム1は、キーボードやマウスなどの入力手段からなる入力部11、LCDやCRTなどの各種表示デバイスからなる表示部12、各種データを記憶するHDDなどの記憶部13、本システム全体の制御を司るとともに配属先決定部として機能するCPUなどの制御部14、入力部11及び表示部12と制御部14とを接続する入出力インタフェース(IF)10、外部端末とのデータ送受信を行うための送受信部15を有する。
【0010】
配属先決定支援システム1は、本実施形態では、LANなどの通信回線3を介して、システム管理者が使用する管理者用端末2と接続され、管理者用端末2で各種操作ができるようになっている。管理者用端末2は、キーボードやマウスなどの入力手段からなる入力部21、LCDやCRTなどの各種表示デバイスからなる表示部22、通信回線3を介して配属先決定支援システム1とデータの送受信を行うための送受信部25、管理者用端末2全体の制御を司るCPU24を有する。
【0011】
配属先決定支援システム1は、本実施形態では1台のコンピュータで構成されているが、複数台のコンピュータで構成することもでき、例えば記憶部13内のデータを1又は複数の他のコンピュータ(データデースサーバなど)に保持させてもよい。
【0012】
記憶部13は、配属先すなわち人材配置の対象となる組織の情報が登録される組織情報データベース31と、配属対象となる社員の情報が登録される社員情報データベース32と、を保持する。組織情報データベース31は、組織の情報として、組織の名称(組織コード)、組織の定員数、所在地や連絡先などの種々のデータを個々の組織の組織コードに対応付けて登録する。社員情報データベース32は、社員の情報として、社員の氏名(社員コード)、住所、生年月日、性別などの当該社員の種々の個人情報を各々の社員コードに対応付けて登録する。
【0013】
さらに、記憶部13は、各々の組織で要求され及び各社員が有するスキルに関する情報を記憶する。ここで、スキルに関する情報を記憶する記憶部13の機能として、
図3で後述するスキルマスタを記憶するスキルマスタ記憶部130と、
図5で後述する組織スキルマスタを記憶する組織スキルマスタ記憶部131と、
図7で後述する社員スキル情報を記憶する社員スキル記憶部132と、に大別される。
【0014】
本システムでの設定及び処理の概略を説明すると、
図2に示すように、スキルマスタの設定段階(ステップS1)、組織スキルマスタの設定段階(ステップS2)、社員スキル情報の設定段階(ステップS3)、組織定員情報の設定段階(ステップS4)、及び配属先決定処理(ステップS5)に大別される。この内、ステップS1からステップS4までが、配属先決定処理(ステップS5)に先立ってシステム管理者等により各種情報をデータベースにデータ入力及び登録し、各種設定を行う段階であり、配属先決定処理(ステップS5)は、登録及び設定された情報に基づいて、後述する各種の演算及び各社員の配属先決定を自動で遂行する段階である。
【0015】
ステップS1乃至S4の各段階では、制御部14の制御により、図示しない設定入力画面を表示部12に表示して、システム管理者等が入力部11の操作で各種データを設定入力し、入力データを上述した記憶部(130,131,132)に記憶させる。かかる設定入力は、管理者用端末2を使用して配属先決定支援システム1とデータ通信しながら行うことも可能であり、この場合には、制御部14の制御により、上記設定入力画面のデータを通信回線3を通じて管理者用端末2に送信し、かかる設定入力画面を表示部22に表示させて、システム管理者等が入力部21を操作して各種データの設定入力を行う。
【0016】
図3は、スキルマスタの設定段階(ステップS1)でスキルマスタ記憶部130に記憶されるスキルマスタの一例を示す図である。スキルマスタ記憶部130は、評価パラメータとして配属先決定の判断に使用するスキルの項目を、スキルマスタの要素として記憶する。この実施形態では、スキルマスタ記憶部130に記憶されるスキルマスタは、スキル番号(No.)のデータとスキル項目(スキル名)とを対応付けて記憶(設定登録)するデータベースである。このスキルマスタに設定登録されたデータは、各組織及び各社員間で共通に使われる。
【0017】
図3の例では、スキルマスタへの設定登録内容として、「英語力」のスキルをスキル番号「1」に、「プログラミング能力」のスキルをスキル番号「2」に、「計算力」のスキルをスキル番号「3」に、「発想力」のスキルをスキル番号「4」に、それぞれ割り当てている。本実施形態ではシステムの動作を簡明に説明するために、かかる4つのスキル番号及びスキル名が登録される場合を例示するが、実際にはより多くの数のスキル番号及びスキル名を登録できることは勿論である。
【0018】
図4及び
図5は、組織スキルマスタの設定段階(ステップS2)で組織スキルマスタ記憶部131に記憶されるデータの一例を示す図である。組織スキルマスタ記憶部131は、上述したスキルマスタに登録したスキルの必要度を組織毎に記憶するものであり、記憶する内容としては、
図4に示す「組織スキル必要度マスタ」と
図5に示す「組織スキルマスタ」とに大別される。
【0019】
ここで、組織スキル必要度マスタは、各組織で共用するスキルの必要度指数を登録するものであり、
図4の例では、当該スキルが「必要である」旨の指数を必要度「3」に、当該スキルを有していても有していなくても「どちらでもよい」旨の指数を必要度「2」に、当該スキルを有していることが「必要である」旨の指数を必要度「1」に、それぞれ割り当てている。
【0020】
一方、組織スキルマスタは、設定した上記スキルマスタ及び組織スキル必要度マスタの内容を、各組織毎に評価して設定登録するものであり、
図5の例では、組織名を示すデータと、上述したスキル番号(No.)のデータと、上述した当該スキルの必要度の値と、が対応付けて記憶(登録)される。
【0021】
ここで、組織名を示すデータは、複数の組織につき各組織毎にユニークとなるデータであり、組織名称や組織IDなどを使用することができる。
図5の例では、一の会社における複数の部署(組織名称)として、「システム部」、「人事部」、「海外事業部」が登録される。本実施形態ではシステムの動作を簡明に記述するために、かかる3つの組織の情報が登録される場合を例示するが、実際にはより多くの数の組織名を登録できることは勿論である。
【0022】
図6及び
図7は、社員スキル情報の設定段階(ステップS3)で社員スキル記憶部132に記憶されるデータの一例を示す図である。社員スキル記憶部132は、各社員に対して上述したスキルマスタに登録したスキルの評価値を登録するものである。社員スキル記憶部132に登録される情報としては、
図6に示す社員スキル評価値マスタと
図7に示す社員スキル情報とに大別される。
【0023】
ここで、社員スキル評価値マスタは、スキルの評価指標値を登録するものであり、
図6の例では、評価値「1」が「悪い」(すなわち当該スキル能力が低い、平均より劣っていること)を、評価値「2」が「普通」(すなわち当該スキル能力が中程度、平均レベルであること)を、評価値「3」が「良い」(すなわち当該スキル能力が高い、平均より優れていること)を、それぞれ示す3段階評価の値を使用している。
【0024】
本実施形態では、社員スキル評価値マスタで使用する評価値を、上述した組織スキル必要度マスタで使用する必要度の値と同じ値(すなわち3,2,1)にすることによって、算出効率の向上が図られる。
【0025】
なお、他の実施形態として、社員スキル評価値マスタで使用する評価値及び評価指数を、2段階評価(例えば2=「良い」、1=「悪い」)としたり、4段階評価(例えば4=「大変良い」、3=「良い」、2=「普通」、1=「悪い」)とすることもできる。この場合も、社員スキル評価値マスタで使用する評価値を、上述した組織スキル必要度マスタで使用する必要度の値と同じ値(2段階評価の場合は2=「必要」、1=「不要」、4段階評価の場合は4=「より高いスキル必要」、3=「必要」、2=「どちらでもよい」、1=「不要」、など)にする。
【0026】
一方、社員スキル情報は、設定したスキルマスタ及び社員スキル評価値マスタの内容を各社員毎に当てはめて(すなわち第三者が評価して)設定するものである。この実施形態では、社員スキル情報は、
図7に示すように、社員名のデータと、上述したスキル番号(No.)のデータと、当該スキルの評価値と、が対応付けて社員スキル記憶部32に記憶(登録)される。
【0027】
社員名のデータは、配属対象となる各社員毎にユニークとなるデータであり、社員情報データベースの社員の氏名や社員IDなどを使用することができる。ここでは理解容易化のため、社員1,社員2,社員3,社員4の4名が配属対象として登録されている例を
図7に示している。また、実際にはより多くの社員(名)が配属対象として登録され得るものであり、後述する第2の実施形態では、21人の社員の情報が登録された場合について述べる。
【0028】
スキル番号(No.)のデータは、上述した組織スキルマスタ記憶部31に記憶されるスキル番号(No.)と同一であり、各社員間においても共通に使われるデータである。社員スキル情報の評価値は、当該社員の当該スキル(能力)の程度について第三者(例えば上司など)によって評価された数値が登録される。
【0029】
図8は、組織定員情報の設定段階(ステップS4)で登録される組織定員情報を例示する図である。
図8では、システム部が定員2名、人事部が定員1名、海外事業部が定員1名の場合を例示している。ここでは理解容易化のため、定員数も少人数に設定しているが、より多くの定員数に設定することもできる。また、ステップS4の設定段階は、所謂手入力設定における最終段階であり、
図8に示す組織定員情報の設定の他に、後述するグループ(ランク)分けの「K」の値や、評価関数における「w」の値などを、不図示の設定画面を通じて設定、変更等することができる。
【0030】
次に、本システムの配属先決定処理(ステップS5)の動作等について、ステップS5のサブルーチンである
図9のフローチャートを参照しながら説明する。以下は簡明のため、管理者用端末2を使用せずに配属先決定支援システム1の入力部11及び表示部12を使用した場合について説明する。
【0031】
(社員ランク決定処理)
上述した各情報の入力及び設定が完了すると、表示部12に表示された配属先決定処理ボタン(図示せず)を入力部11で選択することで、制御部(以下、配属先決定部という)14によるステップS51以下の処理が開始される。先ず、ステップS51で、配属先決定部14は、社員のランクを決定する処理(以下、社員ランク決定処理と称する)を行う。この社員ランク決定処理は、配属先決定の対象となる全ての社員を、スキル評価値の合計により、K個のグループにランク分けする処理である。ここで、Kは、任意の整数(1,2,...,K)であり、社員ランク決定処理に先立って設定ないし変更することができる。具体的には、Kの値は、上述したステップS4での不図示の設定画面を通じて、対象となる社員数や組織数を考慮して入力部11で入力することにより、設定・変更することができる。
【0032】
但し、後述する組織割当の処理(ステップS55)でいずれの組織にも割当てられない社員の発生を可及的に回避する観点からは、Kは、社員スキル記憶部132に登録された対象となる社員の社員数MをKで除した値(すなわちM/Kの値)が、割当て対象となる組織の数以下の数となるように設定されることが好ましい。第1の実施形態では、Kの値を2に設定したと仮定して説明する。
【0033】
社員ランク決定処理は、以下のように遂行される。まず、配属先決定部14は、社員スキル記憶部132に登録された社員の社員数Mを上述のグループ数Kで除算し、1グループ当たりの社員数を算出する。例えば、登録された社員数Mが4でKが2の場合、1グループ当たりの社員数は2(人)になる。
【0034】
次に、配属先決定部14は、社員スキル記憶部132を参照して、社員スキル記憶部132に登録された社員のスキル評価値の合計値(以下「スキル評価合計値」という)を社員毎に算出する。
図7の例では、スキル評価合計値として、社員1は1+2+1+1=「4」、社員2は2+2+2+1=7、社員3は3+3+2+3=11、社員4は2+1+2+1=6、が各々算出される。
【0035】
さらに、配属先決定部14は、かかるスキル評価合計値の低い社員から順に、グループ番号の小さいグループへと割り当てる。この際に、配属先決定部14は、グループ内の順位(i)をスキル評価合計値の低い方から付与する。したがって、グループ内の順位iは、(i=1,2,...,M/K)で表すことができる。
【0036】
上記例の場合、スキル評価合計値の低い社員から並べると、社員1(合計値4),社員4(合計値6),社員2(合計値7),社員3(合計値11)となる。したがって、社員1と社員4がグループ1、社員2と社員3がグループ2に割り当てられ、グループ1内での順位(iの値)として社員1に「1」、社員4に「2」が付与され、グループ2内での順位(iの値)として社員2に「1」、社員3に「2」が付与される。なお、スキル評価合計値が複数社員間で同点となる場合(例えば2人が合計値6のような場合)も発生し得るが、この場合、配属先決定部14は、さらに、上述した社員情報データベース32の生年月日のデータを参照して、生年月日の遅い(すなわち若い)社員を優先的に処理するように、グループ内順位やグループ番号を付与する。
【0037】
本実施形態では、スキル評価合計値の低い社員ほどグループ番号が小さいグループに割り当てられることから、以下はグループを「ランク」とも呼び、ランクをk(k=1,2,...,K)とする。以上のような割当てを行っておくことにより、後述する各組織への割当ての際に、組織に割当てられる社員のスキルレベルにばらつきを持たせ、スキル評価合計値の低い社員がひとつの組織に集中する事態を回避することが可能となる。
図10に、上記例により社員ランク決定処理を行った結果を示す。
【0038】
(組織割当処理)
次に、配属先決定部14は、ステップS52でランクkのカウンタに初期値1を設定し、ステップS53でランク内順位iのカウンタに初期値1を設定し、1社員ずつ配属組織を決定していく組織割当処理を遂行する(ステップS54乃至S59)。この組織割当処理では、スキル評価合計値の低い社員がスキル必要度の高い組織に配属されることを防ぐため、下記社員順に処理を行う。
(1)ランクkの昇順
(2)同ランク内順位iの昇順
【0039】
すなわち、配属先決定部14は、最初にランク1の順位1の社員についての適応度導出(ステップS54)及び組織割当(ステップS55)を行った後に、ステップS56でランク内順位iのカウンタに1を加算し、当該iの値が同ランク内順位(すなわち社員数M/グループ数Kの値)の範囲内であるかを判定する(ステップS57)。かかる判定により、iの値がランク内順位(M/K)の値以下であれば(ステップS57でYES)、配属先決定部14は、当該順位の社員について適応度導出(ステップS54)及び組織割当(ステップS55)を行い、ステップS53乃至ステップS57の処理を繰り返す。一方、ステップS57の判定でNOすなわちiの値がランク内順位(M/K)の値を超えた場合には、配属先決定部14は、ランクkのカウンタに1を加算し(ステップS58)、当該kの値がグループ数Kの値以下であるかを判定する(ステップS59)。かかる判定により、kがK以下であれば(ステップS59でYES)、配属先決定部14は、次のランクの社員について初期値設定(ステップS53)、適応度導出(ステップS54)及び組織割当(ステップS55)を行い、上述したステップS53乃至ステップS59の処理を繰り返す。一方、ステップS59の判定でNOすなわちランクkの値がグループ数Kの値を超えた場合には、配属先決定部14は、処理を終了する。
【0040】
かかる一連の処理によって、配属先決定部14は、ランク1の順位1の社員から最後の順位(順位i)の社員まで割当ての処理を行い、次にランク2の順位1の社員から順位iの社員まで割当ての処理を行い、これを繰り返して、最後に、ランクkの順位1の社員から順位iの社員まで割当ての処理を行う。この社員の割当ての処理は、スキル評価合計値が低い順となるので(
図10参照)、上述したスキル評価合計値の算出の際に判明することになる。
【0041】
次に、配属先決定部14が行うステップS54(適応度導出)とステップS55(組織割当)の処理について説明する。
【0042】
(a)適応度導出
ステップS54で、配属先決定部14は、当該社員につき、下記条件(1)及び(2)を満たす全ての組織に対する適応度を導出する。
条件(1) 配属が決定した社員が定員に達していない組織であること
条件(2) 同ランクの他の社員が未だ割当てられていない組織であること
【0043】
かかる条件(1)及び(2)を満たしている組織であるか否かは、例えばステップS55で組織割当てを決定する際に、配属先決定部14が、当該割り当てた組織につき、その定員数(
図8参照)を示すカウンタ(R)から1を減算するとともに、当該割り当てた社員のランクを一次記憶しておくことにより、次回のステップS54の処理の際に判定することができる。
【0044】
本実施形態では、条件(1)及び(2)を設けることにより、処理順の後の社員になるほどステップS54及びS55の処理対象の組織が少なくなるので、ステップS5の処理時間の短縮化及び処理負担の軽減化を図ることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、条件(2)を設けることにより、スキル評価合計値の低い社員が一つの組織に集中して配属されることを回避することが可能になる。さらに、配属先決定部14は、一つのランク内で既に配属が決定している社員が存在する組織に関しては、上述したステップS58の処理を経て次のランクの社員の処理に移るまでは、ステップS54及びステップS55の処理の対象とはしないので、ステップS5(特にステップS43)の処理時間の短縮化及び処理負担の軽減化に大幅に寄与する。
【0046】
配属先決定部14は、ステップS54の適応度導出処理において、組織スキルマスタ記憶部131及び社員スキル記憶部132の登録データを参照し、下記評価関数を用いて一の組織に対する適応度を導出する。
評価関数 = (スキル評価値とスキル必要度の差) -w*((スキルmの必要度−スキルmの評価値)の最大値)
但し、mは設定されたn個のスキル番号(1,2,…,n)の内のいずれかの番号である。また、wはウェイト(重み付けの数値)であり、上述したステップS4の段階で任意の値を設定することができるが、以下は簡明のためw=1(重み付けなし)に設定されたと仮定して説明する。
【0047】
上記評価関数の第1項すなわち「スキル評価値とスキル必要度の差」は、最小二乗法に従い以下のように導出する。
スキル必要度とスキル評価値の差
=√(スキル1の必要度 − スキル1の評価値)
2+…+(スキルnの必要度 − スキルnの評価値)
2
但し、nは、設定されたn個のスキル番号(1,2,…n)の内の最大値の番号である。
【0048】
ここで、「スキルの必要度」は、当該組織につき組織スキルマスタ記憶部131に記憶された組織スキルマスタの「必要度」欄(
図5参照)の数値であり、「スキル評価値」は、当該社員につき社員スキル記憶部132に記憶された社員スキル情報の「評価値」欄(
図7参照)の数値である。
【0049】
そして、評価関数の第1項である「スキル評価値とスキル必要度の差」は、当該社員の持つスキルが組織に適合しているかを表す項である。すなわち、かかる第1項は、組織が求めるスキルレベルと当該社員が持つスキルレベルが近いほど、当該組織に対する適応度が高くなり、この場合は理想値0により近い値が導出される。逆に、当該社員の持つスキルが、当該組織が求めるスキルレベルに達していない場合は、その度合いに応じて適応度が低くなり、この場合は理想値0より大きい値が導出される。同様に、組織が求めるスキルレベル以上のスキルを当該社員が持っている場合も、その度合いに応じて適応度が低くなり、この場合も理想値0より大きい値が導出される。
【0050】
また、上記評価関数の第2項における「(スキルmの必要度 − スキルmの評価値)の最大値」は、これから育成するスキルの伸びしろを表す値である。すなわち、組織が求めるスキルレベルと、当該社員の持つスキルレベルの差が大きいほど、大きな正の数が導出され、この場合はスキルアップの可能性が高く、この意味での当該組織への適応度が高いと評価することができる。逆に、当該社員が、全てのスキルにおいて当該組織が求めるスキルレベル以上のスキルを持っている場合は、0あるいは0に近い負の数が導出され、この場合はスキルアップの可能性がないことになり、この意味での当該組織への適応度が低いと評価することができる。
【0051】
上述した各図記載の例について説明すると、ステップS54で配属先決定部14は、処理順が1である社員1について、各組織への評価値を、上述の評価関数を使用して以下のように導出する。すなわち、社員1のシステム部への評価値は、
√(1−1)
2 +(3−2)
2+(2−1)
2+(1−1)
2
−1=0.41を導出し、
社員1の人事部への評価値は、
√(1−1)
2 +(2−2)
2+(1−1)
2+(3−1)
2
−2=0.00を導出し、
社員1の海外事業部への評価値は、
√(3−1)
2 +(3−2)
2+(2−1)
2+(3−1)
2
−2=1.61を導出する。
【0052】
上述の評価関数を使用する場合には、導出された評価値の数値が低いほど、その組織への適応度が高いと判断することができる。したがって、配属先決定部14は、ステップS55の組織割当て処理において、当該社員の配属先を、ステップS54で最も低い値が導出された組織に割り当てる。
【0053】
上述した各図記載の例について説明すると、ステップS55で配属先決定部14は、処理順が1である社員1について、ステップS54で導出された各値すなわち0.41、0.00、1.61のうち、最も低い値である「0.00」が導出された「人事部」に配属先を割り当てる。
【0054】
続いて配属先決定部14は、ステップS56及びS57の処理を経て、同ランク内の処理順が2である社員4について、ステップS54の評価値導出処理を行うが、「人事部」の定員数が1であり(
図8参照)、人事部への社員1の配属が既に決定されてしまったため、人事部以外の各組織への評価値を導出する。すなわち、配属先決定部14は、社員4のシステム部への評価値として、
√(1−2)
2 +(3−1)
2+(2−2)
2+(1−1)
2
−2=0.23を導出し、
社員4の海外事業部への評価値として、
√(3−2)
2 +(3−1)
2+(2−2)
2+(3−1)
2
−2=1.00を導出する。続くステップS55で、配属先決定部14は、最も低い値である0.23が導出された「システム部」に、社員4の配属先を割り当てる。
【0055】
続いて配属先決定部14は、ステップS56及びS57、さらにはステップS58、S59及びS53の処理を経て、次ランク(ランク2)の処理順が1である社員2についてステップS54の評価値導出処理を行うが、上述のように定員数が1である「人事部」への社員1の配属が決定既であり、他方、他の組織については定員に空きがあるため、人事部以外の各組織への評価値を導出する。すなわち、配属先決定部14は、社員2のシステム部への評価値として、
√(1−2)
2 +(3−2)
2+(2−2)
2+(1−1)
2
−1=0.41を導出し、
社員2の海外事業部への評価値として、
√(3−2)
2 +(3−2)
2+(2−2)
2+(3−1)
2
−2=0.44を導出する。続くステップS55で、配属先決定部14は、最も低い値である0.41が導出された「システム部」に、社員2の配属先を割り当てる。
【0056】
続いて配属先決定部14は、ステップS56及びS57の処理を経て、同ランク(ランク2)内の処理順が2である社員3について、ステップS54の評価値導出処理を行うが、上述のように定員数が1である「人事部」への社員1の配属が決定既であり、さらに、定員数が2である「システム部」についても社員4及び社員2の2名の配属が決まっている。したがって、配属先決定部14は、人事部及びシステム部以外の各組織への社員3の評価値を導出する。すなわち、配属先決定部14は、社員3の海外事業部への評価値として、
√(3−3)
2 +(3−3)
2+(2−2)
2+(3−3)
2
−0=0.00を導出する。続くステップS55で、配属先決定部14は、最も低い値である0.00が導出された「海外事業部」に、社員3の配属先を割り当てる。この後、配属先決定部14は、ステップS56乃至S59の処理を経て、ステップS5の配属先決定処理を終了し、かかる終了時に割当て結果を表示部12に画面表示する。
図12に、本例における社員1乃至社員4を各組織に割り当てた結果の出力例(表示部12に表示される表示画面の例)を示す。
【0057】
このように、本実施形態の配属先決定支援システム1によれば、各社員に対し、そのスキルを活かしつつ、未熟なスキルを伸ばすことができる組織への割当を実現することが可能となる。より具体的には、本実施形態の配属先決定支援システム1では、各社員に対するスキルアップを目的とした最適組織決定法に、複数組織、複数社員に対する人材配置法を加えたことで、複数社員に対し下記2つの条件を満たす組織を一括で割当てることが可能となる。
条件《1》:自己の持っているスキルを活かすことができる組織であること。
条件《2》:組織に適合しない弱点が1点のみ存在する(その弱点を集中して伸ばすことでスキルアップすることができる)組織であること。
すなわち、本実施形態では、上述した評価関数の第1項の導出値が条件《1》に対応し、上述した評価関数の第2項の導出値が条件《2》に対応する。
【0058】
さらに、従来技術では複数組織に対する配属決定法が考えられていなかったため、複数社員について一括で最適組織を決定することができなかったが、本実施形態の配属先決定支援システム1によれば、複数の社員の配属組織を一括して決定することが可能になる。
【0059】
なお、本実施形態では、配属先決定処理(ステップS5)において、コンピュータの処理時間の短縮化及び処理負担軽減のため、条件(1)及び(2)のいずれかを満たしていない組織に対する適合性の値を導出しない構成としているが、人材配置における各種支援のため、具体的には、人事業務の参考のため、システム動作の確認や上述したグループ数Kやウエイトwの値の調整のため、さらには社員本人への説明のため、等の目的で、各組織の定員数や各社員の処理順及びランク等に関わらず、全ての組織に対する全ての社員の適合性の値を導出し、導出結果を記憶及び表示部12に表示する構成とすることもできる。上述した例では、社員4,社員2,社員3の人事部への適合性、社員3のシステム部への適合性の値について導出していないが、仮に導出した場合には、
社員4の人事部への評価値は、
√(1−2)
2 +(2−1)
2+(1−2)
2+(3−1)
2
−2=0.64となり、実際に配属決定したシステム部への評価値0.23より高い数値であることが分かる(
図12参照)。
同様に、社員2の人事部への評価値は、
√(1−2)
2 +(2−2)
2+(1−2)
2+(3−1)
2
−2=0.44
社員3の人事部への評価値は、
√(1−3)
2 +(2−3)
2+(1−2)
2+(3−3)
2
−0=2.44
社員3のシステム部への評価値は、
√(1−3)
2 +(3−3)
2+(2−2)
2+(1−3)
2
−0=2.82
となり、いずれも実際に配属決定された組織への評価値より高い数値であることが分かる(
図12参照)。
【0060】
(評価関数の変形例)
ステップS54の適応度導出処理において、配属先決定部14が使用する評価関数の第2項を下記のように変更することができ、この場合には、スキルアップを目指すスキルの数を1つからp個(但し、1≦p≦N)に変更することが可能になる。
評価関数 = (スキル評価値とスキル必要度の差)
− w*((スキルmの必要度−スキルmの評価値)の最大値)
− w*((スキルmの必要度−スキルmの評価値)の2番目に大きい値)
- ・・・
- w*((スキルmの必要度−スキルmの評価値)のp番目に大きい値)
【0061】
(第2実施形態)
以下に、配属先決定支援システムの第2の実施の形態について説明する。第2の実施形態の配属先決定支援システムでは、ステップS54の適応度導出処理において、上述した条件(1)及び(2)、すなわち「配属が決定した社員が定員に達していない組織であり」且つ「同ランクの他の社員が未だ割当てられていない組織である」との条件を満たす組織が存在しない場合があり得ること、換言すると、組織が割当てられない社員が発生し得ることを考慮し、この場合に組織の再割当てを実行する構成とする。
【0062】
まず、組織が割当てられない社員が発生する場合の具体例を説明する。ここでは、21人の社員を上述した3つの組織(システム部、人事部、海外事業部)に割当てるものとし、システム部が定員9名、人事部が定員9名、海外事業部が定員3名であるとし、グループの数Kを7に設定した場合について考える。また、この例では評価対象となるスキル項目が第1の実施形態よりも多い場合(例えば12項目)を仮定する。なお、説明の煩雑さを避けるため、スキル項目や各社員の各評価値の詳細等については考慮せず、出来るだけ単純化させた例について説明する。
【0063】
この場合には、ステップS51のランク決定の処理により、
図13に示すように、スキル評価合計値の少ない順から3人ずつランク分けされることになる。そして、ステップS55の組織割当て処理により、例えば
図14に示すような割当て結果となり得る。
【0064】
すなわち、この例では、各組織の定員数が(9+9+3=)21名すなわち社員分だけ確保されているのにも関わらず、社員12、社員15、社員18、社員21の4名が、いずれの組織にも割当てられない社員となることが分かる。これは、当該4名の社員は各々ランク4,5,6,7の最後すなわち3番目の割当順であり、かつ、ランク3の割当段階で海外事業部の定員が埋まってしまったため(
図14参照)、ランク4以降の割当段階では配属先の対象となる組織が2つに減ってしまったことによる。
【0065】
このような場合を考慮して、第2の実施形態では、以下のような再割当て処理を行う。
図15に第2実施形態の概要フローチャートを示す。かかる
図15において、ステップS1乃至ステップS5は第1の実施形態と同じであり、第2実施形態では、上述したステップS5の配属先決定処理を行った後にステップS6の再割当て処理を実行する。
【0066】
ステップS6の再割当て処理の詳細を、
図16を参照して説明する。ここで、
図16のステップS60乃至ステップS67は、ステップS6のサブルーチンである。配属先決定処理(ステップS5)の後のステップS60で、配属先決定部14は、配属先決定処理において割当てがされなかった社員が発生したかを判定し、YESすなわちどの組織にも割り当てられなかった社員がいる場合にはステップS61に進み、NOすなわち全ての社員が何れかの組織に割り当てられた場合には処理を終了する。
【0067】
ステップS61で、配属先決定部14は、割当てがされなかった全ての社員に対し、スキル評価合計値の低い社員から順に新たな処理順位を割り当てる。この例では、
図17に示すように、社員12,社員15,社員18,社員21の順で再割当ての処理が行われることになる。
【0068】
配属先決定部14は、続くステップS62で新たな処理順位iのカウンタに初期値1を設定し、1社員ずつ配属組織を決定していく組織再割当処理を遂行する(ステップS63乃至S68)。ここで、ステップS62,S65,S66,S67,S68は、上述したステップS53,S54,S55,S56,S59に対応する処理であるため、適宜その説明を省略する。
【0069】
ステップS63で、配属先決定部14は、定員に満たない組織が1つだけであるかを判定し、YESすなわち定員に満たない組織が1つだけの場合には、適応度導出等の処理を行うことなく、配属先が未決定の社員を全て当該1つの組織に割当てて(ステップS64)、処理を終了する。一方、判定結果がNOすなわち定員に満たない組織が2つ以上ある場合には、ステップS65以下の処理を実行する。
【0070】
(a’)適応度導出
ステップS65で、配属先決定部14は、当該社員につき、下記条件(1)及び(2’)を満たす全ての組織に対する適応度を導出する。
条件(1) 配属が決定した社員が定員に達していない組織であること
条件(2’) 再割当てを行う社員をスキル評価合計値が低い順に並べたとき、一つ前の社員が割当てられていない組織であること
【0071】
かかる条件(1)及び(2’)を満たしている組織であるか否かは、ステップS66の割り当ての際に、配属先決定部14が、当該割り当てた組織につき、その定員数(
図8及び
図14参照)を示すカウンタ(R)から1を減算するとともに、当該割り当てた社員の処理順位の値(
図17参照)を一次記憶しておくことにより、判定することができる。
【0072】
再割当ての処理においても、上記条件(2’)を設定しておくことにより、スキル評価合計値の低い社員が一つの組織に集中することを可及的に避けることが可能となる。
【0073】
配属先決定部14は、ステップS65の適応度導出処理において、組織スキルマスタ記憶部131及び社員スキル記憶部132の登録データを参照し、上述した評価関数を用いて定員に満たない組織に対する当該社員の適応度を導出し、最も低い値が導出された組織へ割り当てる(ステップS66)。かかる処理内容は第1の実施形態と同様であるため、詳細説明を省略する。
【0074】
図18及び
図19に、配属先未決定の社員が再割当てされる例を示す。この例では、社員12がステップS65及びS66の処理でシステム部に配属(再割当て)されたと仮定する(
図18参照)。この場合、次の社員15の再割当て段階では、システム部の空きが1名、人事部の空きが2名の状態であるが、一つ前の社員12にシステム部が割り当てられているため、システム部は条件(2’)を満たさない。したがって、配属先決定部14は、ステップS66で社員15の配属先を人事部に決定する。本実施形態では、このような場合でも、ステップS65で組織(人事部)に対する当該社員の適応度を導出しているが、処理時間の短縮化のため、ステップS65で適応度を導出しない設定とすることもできる。
【0075】
同様に、次の社員18の再割当て段階では、システム部の空きが1名、人事部の空きが1名の状態であるが、一つ前の社員15に人事部が割り当てられたため、人事部は条件(2’)を満たさない。したがって、配属先決定部14は、ステップS66で社員18の配属先をシステム部に決定する。さらに、最後の社員21の再割当て段階では、システム部の空きが無くなり、人事部の空きが1名の状態となる。したがって、配属先決定部14は、ステップS63で、定員に満たない組織が1つ(すなわち人事部)だけであると判定し、ステップS64で社員21の配属先を人事部に決定し(
図19参照)、処理を終了する。
【0076】
なお、本発明の実施形態を説明したが、当該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。