(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985318
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 11/02 20160101AFI20160823BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20160823BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20160823BHJP
H02K 5/18 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H02K11/02
H02M7/48 Z
H02K5/22
H02K5/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-200442(P2012-200442)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-57426(P2014-57426A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼貫 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宣長
(72)【発明者】
【氏名】田島 清巳
(72)【発明者】
【氏名】及川 邦彦
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−165466(JP,A)
【文献】
特開2003−324903(JP,A)
【文献】
実開平05−074168(JP,U)
【文献】
特開昭57−001617(JP,A)
【文献】
特開2003−170724(JP,A)
【文献】
特開2006−078390(JP,A)
【文献】
米国特許第05491370(US,A)
【文献】
実開平03−010423(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/02
H02K 5/18
H02K 5/22
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置からの所定電力で駆動制御される電動機であって、
前記電力変換装置は、少なくともインバータ部を有する制御ユニットと、上記インバータ部の直流部分に接続される平滑コンデンサ部からなり、前記制御ユニットと前記平滑コンデンサ部は電動機の外周部に離間して取付けられ、これら両者を接続する接続線は、細い電線を網状に編んで形成した網線で構成し、同心円状に内外に網線を重ね合わせて間に絶縁物を挟んだ構造を有することを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機において、
前記電動機は外周に冷却フィンを有し、前記接続線は前記冷却フィンを迂回して電動機の外周に取付けられたことを特徴とする電動機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機において、
前記制御ユニットと前記平滑コンデンサ部は電動機の外周に均等に距離を置いて取付けられたことを特徴とする電動機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動機において、
前記平滑コンデンサ部は複数の平滑コンデンサ部からなり、電動機の外周に離間して取付けられたことを特徴とする電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置を一体に構成した電動機に係り、特にコンパクトな構成を図った電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平10−191688号公報(特許文献1)が挙げられる。この特許文献には、順変換部と逆変換部の直流部分に平滑コンデンサを有するインバータ装置を用い、該インバータ装置により誘導電動機を駆動する方式の電動機システムにおいて、前記逆変換部を、前記順変換部とは独立したユニットとして誘導電動機に取付け、前記順変換部の直流側と前記逆変換部の直流側を2本の電線で接続した上で、前記平滑コンデンサを、前記2本の電線の前記順変換部側の端部に並列に接続させ、前記2本の電線の前記逆変換部側の端部には該2本の電線による誘導リアクタンス分に等しい静電リアクタンス分を有するコンデンサを並列に接続させたことを特徴とする電動機システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−191688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動機と電力変換装置を一体に構成するとコンパクトな駆動システムが構成される。しかし、電力変換装置には、少なくともコンバータ部(順変換部)、インバータ部(インバータ部)、平滑コンデンサ部(平滑部)が存在しており、電動機と一体に構成する場合、これらの電気部品をどのように配置するかが問題となる。例えば、コンパクト化を指向するには、各電機部品の大きさに応じて電動機の外周部に配置することが必要になる。
【0005】
このとき、インバータ部とコンバータ部とが電動機外周部で離れて配置されたとき、両者を電気的に接続することになるが、その電線長が長くなるとインダクタンスが増加して、スイッチングによりインバータ部の電圧の跳ね上がりが懸念される。そして、一般にこのような課題に対処するには大容量のスナバコンデンサが必要となる。
【0006】
しかし、電力変換装置を電動機の外周部に配置してコンパクト化を指向しているにも関わらず、その配置の自由度の限界からスナバコンデンサの設置が必要となり、結果としてコンパクト化が難しくなっている。
【0007】
特許文献1ではインバータ部とコンバータ部の間の接続に「給電用ケーブル3」を用い、この「給電用ケーブル3」として同軸ケーブルや並行電線ケーブルを用いている。しかしながら、これらのケーブルは相互インダクタンスを多少打ち消す働きをするが、自己インダクタンスは依然として低減しない。
【0008】
本発明は、このようなコンデンサへの依存を軽減して、スナバコンデンサの容量を少なくするか省略することで、コンパクトに構成可能な電動機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、電力変換装置からの所定電力で駆動制御される電動機であって、前記電力変換装置は
、少なくともインバータ部を有する制御ユニットと、上記インバータ部の直流部分に接続される平滑コンデンサ部からなり、前記制御ユニットと前記平滑コンデンサ部は電動機の外周部に離間して取付けられ、これら両者を接続する接続線は
、細い電線を網状に編んで形成した網線で構成
し、同心円状に内外に網線を重ね合わせて間に絶縁物を挟んだ構造を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記に記載の電動機において、前記電動機は外周に冷却フィンを有し、前記接続線は前記冷却フィンを迂回して電動機の外周に取付けられたことを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の電動機において、前記制御ユニットと前記平滑コンデンサ部は電動機の外周に均等に距離を置いて取付けられたことを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の電動機において、前記平滑コンデンサ部は複数の平滑コンデンサ部からなり、電動機の外周に均等に離間して取付けられたことを特徴とする。
【0015】
その結果、網線を使用することで自己インダクタンスの低減及び、重ね合わせることで相互インダクタンスの低減ができ、スイッチング時にインバータ部の電圧の跳ね上がりを抑制することができることからスナバコンデンサの小容量化もしくは、削除が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スナバコンデンサを小型にするか、無くすことにより、電動機の外周に設置する制御ユニットが小型化できるので、電動機をコンパクトに構成できる。また接続線を長くできるので、制御ユニットと平滑コンデンサ部の電動機の外周への設置箇所の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電動機駆動システム一体型ポンプの構造図である。
【
図2】本発明実施例の電力変換装置一体型電動機の構成図である。
【
図4】本発明実施例の電力変換装置の接続構成図である。
【
図7】本発明実施例の電力変換装置の他の接続構成図である。
【
図8】同じく電力変換装置のさらに他の接続構成図である。
【
図9】電動機筐体ユニットの取付に係る一つの例を示す説明図である。
【
図10】電動機筐体ユニットの他の取付説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に電動機駆動システム一体型ポンプの構造図を示す。実施形態は電動機駆動システム11と電動機駆動システム11を用いたポンプ12とが一体に形成される。すなわち、ポンプ12を駆動する為の電動機駆動システム11がポンプ12に組み付けられており、電動機駆動システム一体型ポンプを構成している。電動機駆動システム11は、電力変換装置(図示せず)が電動機9のケーシングの外周に取付けられた電力変換装置一体型の電動機で構成される。
【0019】
図2に本発明実施例の電動機の構造図を示す。本実施例に関わる電動機は電力変換装置と電動機9とが一体に形成される。電力変換装置は、コンバータ部とインバータ部から構成される制御ユニット18と、制御ユニット18の直流部分に接続される平滑コンデンサ部19で構成される。電力変換装置は、電動機9の筐体の外周10への取り付け時は、前記制御ユニット18と、平滑コンデンサ部19とに分けて取付けられる。
【0020】
これは、筐体の外周10には冷却のための放熱フィン21が多数形成されているが、放熱フィン21の削除枚数を少なくするためと、電動機のコンパクト化のために、電力変換装置を小分けして離れた場所に分散配置しているものである。
【0021】
また、制御ユニット18と平滑コンデンサ部19が離れた場所に配置されているため、両者を接続する接続線は長さが長くなる。そして接続線20は、放熱フィン21を避けて迂回して筐体の外周10に配置される。
【0022】
図3に示すように一般の電力変換装置は、コンバータ部13で直流電源に整流し、平滑コンデンサ14にて直流電圧の平滑を行い、インバータ部15で交流電源に変換する。しかし、インバータ部15のスイッチング時にインバータ部の電圧が跳ね上がる為、スナバコンデンサ16でこの跳ね上がりを抑制している。平滑コンデンサ14とインバータ部15を接続する接続線17として、一般には銅バーや、基板パターンを用いる場合が多いが、接続線の長さが長くなると、接続線の自己インダクタンスが増加して、スナバコンデンサ16の大容量化が必須となる。
【0023】
本発明実施例では、
図2の電力変換装置一体型の電動機の構造を有し、
図4に示されるように、電力変換装置を、コンバータ部13とインバータ部15を1つにまとめた制御ユニット18と、平滑コンデンサ部19とで構成し、電動機9の外周10部の上下に均等に離間して取付けられる。制御ユニット18と平滑コンデンサ部19は接続線20で接続し、接続線20は冷却フィン21を迂回して電動機9の外周面10に取付けられる。
【0024】
図4で、平滑コンデンサ部を2個用いる場合は、平滑コンデンサ部19に並列接続させた平滑コンデンサ部19−2を用いる。この場合、両平滑コンデンサ部19と、19−2とは別個のユニットとして、合計3個のユニットを電動機9ケーシングの外周10部に均等に離間して取付ける。3個のユニットの間は、接続線20で接続され、接続線20は冷却フィン21を迂回して電動機9の外周面10に取付けられる。
【0025】
このように、電力変換装置を複数のユニットに分けることにより、各ユニットの小型化を図って取付け面積を小さくできるので、取付け部を確保するための冷却フィン21の削除数を少なくでき、放熱面積を犠牲にすることが少ない。また、接続線は冷却フィン21を避けて迂回して取付けられるので、放熱面積を犠牲にすることがない。
【0026】
次にこの接続線20について説明する。本発明実施例では、前記接続線20に網線22を使用する。網線は大量の細い電線を網状に編んで形成した接続線で、自己インダクタンスの増加が少なくなる。すなわち、網線22を構成する各細い電線に電流が流れるため、電流が網状に複雑に流れて各細線の発生する磁束が互いに打消し合って全体として自己インダクタンスの増加が抑えられる。
【0027】
また、電力変換装置では、インバータ部15での高周波スイッチングによって、制御ユニット18と平滑コンデンサ部19を接続している接続線20には高周波電流が流れている。一般の電線では、電線の表面に高周波電流が集中する表皮効果が発生することにより高周波電流による損失が発生する。しかし、接続線20に細い線を網状に編んだ網線を用いることで、高周波電流による表皮効果が発生しづらく、高周波電流密度が均一化することから高周波電流による損失低減が図れる。その為、一般電線に比べ損失低減が可能となることから電線径を小さくすることができ、電線材料の削減も可能となることから製品重量の軽量化が可能となる。
【0028】
さらに、前述のように制御ユニット18と平滑コンデンサ部19が離間して配置されるので、接続線の長さが長くなって接続線のインダクタンスが大きくなる傾向にあるが、本発明実施例では、前記接続線20に網線22を使用するので、前述のように、自己インダクタンスの増加が少なくなる。
【0029】
図5に網線の構成図を示す。この網線は、間に絶縁物23を挟んで板状(バー状)の網線22を密着させて重ね合わせたものである。これを接続線20に使用することにより、相互インダクタンスの低減が図れる。すなわち、重ね合された上下の網線22で電流の往路と復路を構成し、両網線の電流が逆方向に流れるので、発生磁束を互いに打消し合ってインダクタンスの低減が図れる。
図5の構造の網線によれば、網線を単に並行に配置した場合と比べて、相互インダクタンスの低減が図れる。
【0030】
図6に他の構造の網線の構成図を示す。この網線は
図5に示す網線を円筒形状とし、間に絶縁物23を挟み同軸形状としたものである。絶縁物23は外周にも設けられている。この網線22は、
図5に示す網線と同じ理由により、相互インダクタンスの低減が図れるが、
図5の網線に比べて、三次元に網状に形成されているので、効果が一層大きくなる。
【0031】
このように、本実施例の電力変換装置では、インダクタンスの抑制によりスイッチング時にインバータ部の電圧の跳ね上がりを抑えることができることから、
図4のスナバコンデンサ16の小容量化、もしくは除外による省スペース化が可能となり、電力変換装置一体型の電動機の小型化が可能となる。また、インダクタンスの抑制により接続線を長くできるので、制御ユニットと平滑コンデンサ部の電動機の外周への設置場所の自由度が向上する。
【0032】
なお、本実施例は、
図4に示す電力変換装置の平滑コンデンサ部の接続の構成に限らない。
図7に、電力変換装置の他の接続構成を示す。この接続構成は、コンバータ部13と平滑コンデンサ14から構成される部分を平滑コンデンサ部19−1とし、この平滑コンデンサ部19−1と制御ユニット(インバータ部のみ)18とを、接続線20aで接続している。この接続線20aには、
図5の接続線と
図6の接続線のいずれかが使用される。
図7に示す構成では、平滑コンデンサ部19−1と制御ユニット(インバータ部のみ)18の2個のユニットとして、電動機9の外周10に離間して取付けられる。
【0033】
図8に電力変換装置の更に他の接続構成を示す。この構成では、整流部13と、平滑コンデンサ部19と、制御ユニット(インバータ部)18と、接続線20bから構成されている。平滑コンデンサ部19は、整流部13と制御ユニット(インバータ部)18との間に接続線20bを介して接続される。この接続線20bには、
図5の接続線と
図6の接続線のいずれかが使用される。この構成では、整流部13と、平滑コンデンサ部19と、制御ユニット(インバータ部)18とが3個のユニットとして、電動機9の外周10に離間して取付けられる。
【0034】
最後に、電力変換装置の電動機筐体ユニットにおける取付例を説明する。上述のように本実施例の電力変換装置は複数ユニットに分割されるため、電動機の筐体ユニット上に分散して配置が可能となっている。電力変換装置一体型の電動機では電力変換装置の電動機筐体ユニット上の配置もコンパクトとするのが好適である。以下、図面を用いて2つの取付例を示す。但し、これらの配置に限られるものでないことはいうまでもない。
【0035】
図9は電動機筐体ユニットの取付に係る一つの例を示す説明図である。
図2に示すように、電力変換装置を、前記制御ユニット18と、平滑コンデンサ部19との2個のユニットに分けて取付けられる。この場合の2個のユニットは、電動機9の筐体の外周10に離間して取付けられる。このように、2個のユニットを離間して取り付けることにより、発熱源を分散することができ、冷却性能を向上することができる。
【0036】
2個のユニットは、上記した前記制御ユニット18と、平滑コンデンサ19に限ることはなく、
図7に示す平滑コンデンサ19−1と制御ユニット(インバータ部)18の2個を、
図9のように取付けることができる。
【0037】
図10は、電動機筐体ユニットの他の取付説明図である。
図4に示すように、電力変換装置を、前記制御ユニット18と、平滑コンデンサ部19と19−2との3個ユニットに分けて取付けられる。この場合の3個のユニットは、電動機9の筐体の外周10に離間して取付けられる。このように、3個のユニットを離間して取り付けることにより、発熱源を分散することができ、冷却性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0038】
9…電動機、10…電動機の外周部、11…電動機駆動システム、12…ポンプ、13…コンバータ部、14…平滑コンデンサ、15…インバータ部、16…スナバコンデンサ、18…制御ユニット、19、19−1、19−2…平滑コンデンサ部、20…接続線、電線、21…冷却フィン、22、20a、20b…接続線、網線、23…絶縁物。