特許第5985324号(P5985324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985324
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20160823BHJP
   F04D 29/44 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F02B39/00 G
   F04D29/44 R
   F04D29/44 U
   F04D29/44 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-203759(P2012-203759)
(22)【出願日】2012年9月17日
(65)【公開番号】特開2014-58884(P2014-58884A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 知之
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−331653(JP,A)
【文献】 特許第4778097(JP,B1)
【文献】 特開2011−094618(JP,A)
【文献】 特開2002−180841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00 − 41/10
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラが配された空気流路を内側に有するコンプレッサハウジングと、上記インペラを連結するロータシャフトを回転自在に支持する軸受ハウジングとを備えたターボチャージャであって、
上記空気流路は、上記インペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、上記インペラの外周側において周方向に形成され、上記インペラから吐出される圧縮空気を吐出ポートへ導く吐出スクロール室とを有し、該吐出スクロール室は、周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって徐々に断面積が大きくなる形状を備え、
上記コンプレッサハウジングは、互いに組み付けられたスクロールピースとシュラウドピースとからなり、
上記スクロールピースは、上記吸気口を形成する筒状の吸気口形成部と、上記吐出スクロール室における吸気側の壁面を構成する吸気側凹面と、上記吐出スクロール室の外周側に配されるスクロール外周部とを有し、
上記シュラウドピースは、上記スクロールピースに嵌入される筒状のシュラウド嵌入部と、上記吐出スクロール室における内周側の壁面を構成する内周側凹面と、上記インペラに対向するシュラウド面と、該シュラウド面から上記吐出スクロール室に向かって延びるディフューザ面とを有し、
上記軸受ハウジングは、上記ディフューザ面に対向する対向面と、上記スクロールピースの上記スクロール外周部内に嵌入される外周環状嵌入部と、上記吐出スクロール室における外周側の壁面を構成する外周側凹面とを備え、
上記吐出スクロール室は、上記軸受ハウジングの上記外周側凹面と、上記スクロールピースの上記スクロール外周部と、上記シュラウドピースの上記内周側凹面とによって形成されており、
上記軸受ハウジングの上記外周側凹面は、上記インペラの回転軸を含む平面による断面形状が周方向に沿って徐々に変化した形状を有することを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
請求項1に記載のターボチャージャにおいて、上記外周側凹面の上記断面形状は、周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって徐々に曲率半径が大きくなるように形成されていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のターボチャージャにおいて、上記外周側凹面は、周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって、軸方向の寸法が徐々に大きくなるように形成されていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボチャージャにおいて、上記外周側凹面は、周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって、径方向の寸法が徐々に大きくなるように形成されていることを特徴とするターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサハウジングと軸受ハウジングとを備えたターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるターボチャージャは、コンプレッサにおいて吸入した空気を圧縮して内燃機関へ向かって吐出するよう構成されている。すなわち、コンプレッサハウジングの内側に形成された空気流路には、インペラから吐出された圧縮空気が流れ込む吐出スクロール室があり、該吐出スクロール室は圧縮空気を吐出ポートへ導き、吐出ポートから圧縮空気を内燃機関側へ吐出するよう構成されている。そして、特に吐出スクロール室の形状はコンプレッサの性能に大きく影響し、要求性能に応じて適切な形状に仕上げることが求められる。
【0003】
ここで、コンプレッサハウジングを製造する方法としては、例えば、重力鋳造による方法がある。この場合には、いわゆる中子を用いて鋳造を行うことができるため、形状自由度が高く、複雑な形状にも対応することができる。しかしながら、鋳造サイクルが長いため生産性が悪く、コストも高い。また、砂型等を用いると面粗度が大きくなるため、コンプレッサの効率が低下してしまうという問題もある。
【0004】
これに対し、コンプレッサハウジングをダイキャストにより成形する方法がある。この場合には、重力鋳造に比べて鋳造サイクルが短いため生産性が良く、コストも安い。しかしながら、型抜き可能な形状でなければ成形することができないため、形状自由度が低く、複雑な形状に対応することができない。そこで、特許文献1に開示されているように、3つのピース、すなわち、スクロールピースとシュラウドピースと外周環状ピースとを互いに組み付けることにより構成したコンプレッサハウジングがある。これにより、各ピースをダイキャストによって成形しやすい形状としつつ、コンプレッサハウジングの吐出スクロール室の形状自由度を確保している。
【0005】
また、特許文献2に記載のターボチャージャにおいては、コンプレッサハウジングを、スクロールピースとシュラウドピースとの2ピースによって構成している。そして、コンプレッサハウジングにおける吸気側と反対側に配されるバックプレートの外周部に曲面を設け、この曲面を吐出スクロール室の内壁面の一部としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4778097号公報
【特許文献2】特開2002−180841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のコンプレッサハウジングは、部品点数が多くなると共に、製造工数も多くなり、製造コストが高くなる。また、外周環状ピースの位置精度を極めて高精度にしないと、その内側端部における継ぎ目において、ディフューザ部から吐出スクロール室へ吐出される圧縮空気の円滑な流れを阻害するおそれがある。
また、特許文献2に記載のターボチャージャにおいては、バックプレートに形成した曲面部分の形状が、周方向にわたって一定となっている。そのため、吐出スクロール室の形状自由度が制限され、理想的な形状とすることには限界が生じることとなる。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、コスト低減、性能向上を図ることができるターボチャージャを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、インペラが配された空気流路を内側に有するコンプレッサハウジングと、上記インペラを連結するロータシャフトを回転自在に支持する軸受ハウジングとを備えたターボチャージャであって、
上記空気流路は、上記インペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、上記インペラの外周側において周方向に形成され、上記インペラから吐出される圧縮空気を吐出ポートへ導く吐出スクロール室とを有し、該吐出スクロール室は、周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって徐々に断面積が大きくなる形状を備え、
上記コンプレッサハウジングは、互いに組み付けられたスクロールピースとシュラウドピースとからなり、
上記スクロールピースは、上記吸気口を形成する筒状の吸気口形成部と、上記吐出スクロール室における吸気側の壁面を構成する吸気側凹面と、上記吐出スクロール室の外周側に配されるスクロール外周部とを有し、
上記シュラウドピースは、上記スクロールピースに嵌入される筒状のシュラウド嵌入部と、上記吐出スクロール室における内周側の壁面を構成する内周側凹面と、上記インペラに対向するシュラウド面と、該シュラウド面から上記吐出スクロール室に向かって延びるディフューザ面とを有し、
上記軸受ハウジングは、上記ディフューザ面に対向する対向面と、上記スクロールピースの上記スクロール外周部内に嵌入される外周環状嵌入部と、上記吐出スクロール室における外周側の壁面を構成する外周側凹面とを備え、
上記吐出スクロール室は、上記軸受ハウジングの上記外周側凹面と、上記スクロールピースの上記スクロール外周部と、上記シュラウドピースの上記内周側凹面とによって形成されており、
上記軸受ハウジングの上記外周側凹面は、上記インペラの回転軸を含む平面による断面形状が周方向に沿って徐々に変化した形状を有することを特徴とするターボチャージャにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記ターボチャージャにおいては、上記スクロールピースと上記シュラウドピースとの2つのピースによってコンプレッサハウジングを構成することができるため、コンプレッサハウジングの部品点数を比較的少なくすることができる。その結果、ターボチャージャの製造工数を低減することができ、製造コストを低減することができる。
【0011】
また、上記軸受ハウジングの上記外周側凹面によって、吐出スクロール室の壁面の一部を構成することができる。すなわち、ターボチャージャにおいて元々必要である軸受ハウジングの一部を利用して、吐出スクロール室の壁面の一部を凹状に形成することとなる。そのため、部品点数を多くしなくても、吐出スクロール室の形状自由度を向上させることができる。
【0012】
そして、外周側凹面は、上記インペラの回転軸を含む平面による断面形状が周方向に沿って徐々に変化した形状を有する。そのため、吐出スクロール室における外周側の壁面の形状を、周方向に沿って徐々に変化させることができる。これにより、吐出スクロール室の形状を理想的な形状とすることが可能となり、コンプレッサ内における理想的な空気の流れを実現することができる。その結果、ターボチャージャの性能向上を図ることができる。
【0013】
また、上記外周側凹面は、上記ディフューザ面に対向する対向面と共に、軸受ハウジングに形成されている。そのため、対向面と外周側凹面との間に継ぎ目が形成されることもない。したがって、上記ディフューザ面と上記対向面との間の空間(ディフューザ部)から吐出スクロール室へ吐出される圧縮空気の円滑な流れを容易かつ確実に実現することができる。かかる観点からも、ターボチャージャの性能向上を確保することができる。
【0014】
以上のごとく、本発明によれば、コスト低減、性能向上を図ることができるターボチャージャを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1における、コンプレッサ部分の断面図であって、図3のA−A線矢視断面相当図。
図2】実施例1における、コンプレッサ部分の他の断面図であって、図3のB−B線矢視断面相当図。
図3】実施例1における、吸気側から見たコンプレッサハウジングの平面図。
図4】実施例1における、コンプレッサハウジングの断面図。
図5】実施例1における、軸受ハウジングの一部の断面図。
図6】実施例1における、スクロール室の全体形状を示す説明図。
図7】実施例1における、コンプレッサハウジングの斜視図。
図8】実施例1における、軸受ハウジングの斜視図。
図9】実施例1における、軸受ハウジングの側面図。
図10】実施例1における、コンプレッサ側から見た軸受ハウジングの正面図。
図11】(A)図10のC−C線矢視断面図、(B)図10のD−D線矢視断面図、(C)図10のE−E線矢視断面図、(D)図10のF−F線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記ターボチャージャにおいて、「周方向」とは上記インペラの回転方向、「軸方向」とは上記インペラの回転軸の方向を意味する。
また、上記外周側凹面の上記断面形状は、周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって徐々に曲率半径が大きくなるように形成されていることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記吐出スクロール室の形状を一層容易に理想的な形状とすることができる。すなわち、吐出スクロール室の壁面の一部を構成する外周側凹面が、上記のような形状を備えることにより、吐出スクロール室の「周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって徐々に断面積が大きくなる形状」において、その各部の断面形状を理想的な形状に形成しやすくなる。なお、上記曲率半径は、上記外周側凹面の断面形状が円弧である場合にはその曲率半径であるが、円弧以外の場合には、上記断面形状の全体にわたる平均の曲率半径を意味するものとする。
【0017】
また、上記外周側凹面は、周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって、軸方向の寸法が徐々に大きくなるように形成されていることが好ましい(請求項3)。この場合にも、上記と同様に、上記吐出スクロール室の形状を一層容易に理想的な形状とすることができる。
【0018】
また、上記外周側凹面は、周方向において上記吐出ポートへ向かうにしたがって、径方向の寸法が徐々に大きくなるように形成されていることが好ましい(請求項4)。この場合にも、上記と同様に、上記吐出スクロール室の形状を一層容易に理想的な形状とすることができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
上記ターボチャージャの実施例につき、図1図11を用いて説明する。
本例のターボチャージャ1は、図1に示すごとく、インペラ13が配された空気流路10を内側に有するコンプレッサハウジング2と、インペラ13を連結するロータシャフト14を回転自在に支持する軸受ハウジング3とを備えている。
【0020】
空気流路10は、インペラ13に向けて空気を吸い込む吸気口11と、インペラ13の外周側において周方向に形成され、インペラ13から吐出される圧縮空気を吐出ポート15へ導く吐出スクロール室12とを有する。吐出スクロール室12は、図6に示すごとく、周方向における吐出ポート15側と反対側から吐出ポート15側へ向かって徐々に断面積が大きくなる形状を備えている。
【0021】
コンプレッサハウジング2は、図1図2図4図7に示すごとく、互いに組み付けられたスクロールピース4とシュラウドピース5とからなる。
スクロールピース4は、吸気口11を形成する筒状の吸気口形成部41と、吐出スクロール室12における吸気側の壁面を構成する吸気側凹面42と、吐出スクロール室12の外周側に配されるスクロール外周部43とを有する。
シュラウドピース5は、スクロールピース4に嵌入される筒状のシュラウド嵌入部51と、吐出スクロール室12における内周側の壁面を構成する内周側凹面52と、インペラ13に対向するシュラウド面53と、シュラウド面53から吐出スクロール室12に向かって延びるディフューザ面54とを有する。
【0022】
軸受ハウジング3は、図1図2図5に示すごとく、ディフューザ面54に対向する対向面31と、スクロールピース4のスクロール外周部43内に嵌入される外周環状嵌入部32と、吐出スクロール室12における外周側の壁面を構成する外周側凹面33とを備えている。
【0023】
そして、図1図2図10図11に示すごとく、外周側凹面33は、インペラ13の回転軸を含む平面による断面形状(以下において、単に「断面形状」というときは、特に示さない限り、この平面による断面形状をいうものとする。)が周方向に沿って徐々に変化した形状を有する。
より具体的には、外周側凹面33の上記断面形状は、周方向において吐出ポート15へ向かうにしたがって徐々に曲率半径が大きくなるように形成されている。
【0024】
また、外周側凹面33は、周方向において吐出ポート15へ向かうにしたがって、軸方向の寸法hが徐々に大きくなるように形成されている。また、外周側凹面33は、径方向の寸法wも、周方向において吐出ポート15へ向かうにしたがって徐々に大きくなるように形成されている。なお、図11(A)、(B)、(C)、(D)における符号3a、3b、3c、3dは、この順に圧縮空気の経路として吐出ポート15から遠い位置における軸受ハウジング3の部分の断面を示す。つまり、図11に表した符号3a、3b、3c、3dは、それぞれ図1図2に表した吐出スクロール室12の断面12a、12b、12c、12dの一部を形成する、軸受ハウジング3の部分の断面である。
【0025】
また、スクロールピース4の吸気側凹面42は、断面形状が周方向に沿って徐々に変化した形状を有する。また、シュラウドピース5の内周側凹面52は、断面形状が周方向に沿って徐々に変化した形状を有する。これら、吸気側凹面42及び内周側凹面52も、上記断面形状が、周方向に、吐出ポート15側へ行くほど徐々に曲率半径が大きくなるように形成されている。
【0026】
ターボチャージャ1は、自動車等の内燃機関から排出される排気ガスによってタービンを回転させ、その回転力を利用してコンプレッサにおいて吸入空気を圧縮し、その圧縮空気を吐出ポート15から内燃機関に送り込むよう構成されている。したがって、ターボチャージャ1は、図示を省略してあるが、軸方向において、コンプレッサの外殻を構成するコンプレッサハウジング2と反対側に、タービンハウジングを備えている。タービンハウジングの内側には、タービンインペラが配された排気ガス流路が形成されている。タービンインペラは、ロータシャフト14に固定されている。すなわち、ロータシャフト14によって、コンプレッサのインペラ13とタービンインペラとが連結されている。これにより、タービンインペラの回転に伴い、コンプレッサのインペラ13が回転するよう構成されている。
【0027】
そして、ロータシャフト14を回転自在に軸支する軸受ハウジング3が、コンプレッサハウジング2とタービンハウジングとの間に配置されている。この軸受ハウジング3は、図1図2図8図9に示すごとく、軸方向の一端に略円板状のフランジ部34を設けてなり、このフランジ部34におけるコンプレッサ側の面に、対向面31と外周側凹面33とが、それぞれ円環状に形成されている。
軸受ハウジング3は、鋳鉄からなり、対向面31及び外周側凹面33は、例えばマシニングセンタによるボールエンドミル等の機械加工によって切削加工されている。
【0028】
対向面31と外周側凹面33とは、互いに連続して形成されている。すなわち、対向面31は、軸方向に対して直交する平坦面として形成されているが、その外周端から連続的に、すなわち段差等を介さずに、外周側凹面33が、コンプレッサ側へ湾曲するように形成されている。そして、外周側凹面33は、上述のように、その断面形状が周方向において徐々に変化するように、形成されている。
【0029】
このように形成された軸受ハウジング3の外周側凹面33と、同じく周方向において徐々に断面形状が変化するように形成されたスクロールピース4のスクロール外周部43及びシュラウドピース5の内周側凹面52とによって、吐出スクロール室12が形成されている(図1図2)。
【0030】
吐出スクロール室12は、図6に示すごとく、略円周状に形成されており、吐出ポート15は、吐出スクロール室12から、周方向の接線方向に突出している。そして、吐出スクロール室12は、周方向に沿って、吐出ポート15へ向かうにしたがって徐々に断面積が大きくなるように形成されている。なお、図1図2における符号12a、12b、12c、12dは、この順に圧縮空気の経路として吐出ポート15から遠い位置における吐出スクロール室12の断面を示す。
【0031】
そのため、吐出スクロール室12を形成する、スクロールピース4の吸気側凹面42と、シュラウドピース5の内周側凹面52と、軸受ハウジング3の外周側凹面33とは、それぞれ、回転対称ではなく、周方向に沿って徐々にその断面形状が変化している。そして、図1図2図10図11に示すごとく、軸受ハウジング3は、外周側凹面33の上記断面形状の寸法(軸方向の寸法h及び径方向の寸法w)及び平均曲率半径が周方向に沿って徐々に大きくなる形状を有する。すなわち、周方向に吐出ポート15へ向かうにしたがって、徐々に上記寸法h、w及び上記平均曲率半径が大きくなっている。
【0032】
また、図10に示すごとく、軸受ハウジング3のフランジ部34における周方向の一部には、吐出スクロール室12と吐出ポート15との間をつなぐように形成された吐出連通凹部35が形成されている。吐出連通凹部35は、外周側凹面33の軸方向寸法hが最も大きくなる部分と最も小さくなる部分との間において、吐出ポート15と平行となるように形成されている。つまり、軸受ハウジング3における吐出連通凹部35が形成された部分を除く略全周にわたって、図10に示した吐出連通凹部35に対する第一隣接部位351から第二隣接部位352まで、周方向に徐々に外周側凹面33の各寸法h、w及び曲率半径が大きくなっている。
【0033】
また、図8図10に示すごとく、外周側凹面33の外周側であって吐出連通凹部35に周方向に隣接する位置に、軸受ハウジング3とコンプレッサハウジング2との周方向位置を決める位置決め段部36が形成されている。すなわち、コンプレッサハウジング2にも、軸受ハウジング3の位置決め段部36と対応する位置に、図7に示すごとく、位置決め段部46が形成されている。
【0034】
コンプレッサハウジング2を構成するスクロールピース4及びシュラウドピース5は、いずれもアルミニウム製のダイキャスト品により構成されている。図4に示すごとく、スクロールピース4は、吸気口形成部41を、インペラ13の回転軸を中心とする円筒形状に形成してある。そして、吸気口形成部41における吸気側と反対側の端部(以下において、吸気側を適宜「先端側」といい、その反対側を適宜「基端側」という。)から、外周側に広がるように、吸気側凹面42を有するスクロール壁面形成部420が形成されている。そして、スクロール壁面形成部420の外周部分に、基端側へ延びるように、スクロール外周部43が設けてある。
【0035】
シュラウドピース5は、シュラウド嵌入部51を、インペラ13の回転軸を中心とする円筒形状に形成してあり、シュラウド嵌入部51内には、吸気口11と連通する吸気通路が形成されている。そして、シュラウド嵌入部51は、スクロールピース4の吸気口形成部41の内側に嵌合してある。
【0036】
シュラウド嵌入部51の内側面がその基端側から外側へ向かって広がるように形成されることにより、シュラウド面53が形成されている。そして、シュラウド面53は、その外周側において軸方向と直交する方向に広がるディフューザ面54に繋がっている。
【0037】
また、図1図2に示すごとく、インペラ13は、シュラウドピース5の内周側に配置されている。インペラ13は、ハブの外周面から周方向に並ぶ複数のブレードを突出させて形成したものである。複数のブレードは、シュラウドピース5のシュラウド面53に対向して配置されている。
【0038】
ターボチャージャ1のコンプレッサ部を組み立てるにあたっては、まず、吸気口形成部41の内側にシュラウド嵌入部51を圧入することで、スクロールピース4にシュラウドピース5を組み付けて、図4図7に示すコンプレッサハウジング2を形成する。そして、図1図2に示すごとく、コンプレッサハウジング2の内側にインペラ13が配置されるように、軸受ハウジング3の外周環状嵌入部32を、コンプレッサハウジング2を構成するスクロールピース4のスクロール外周部43の内側に圧入する。このとき、軸受ハウジング3の位置決め段部36に、スクロールピース4の位置決め段部46を周方向に当接させることで、軸受ハウジング3とコンプレッサハウジング2との周方向位置を決める。
【0039】
これにより、シュラウドピース5のディフューザ面54と軸受ハウジング3の対向面31とが、互いに所定の間隔を設けた状態で対向配置されることで、両者の間にディフーザ部16が形成される。そして、その外周側において、スクロールピース4の吸気側凹面42とシュラウドピース5の内周側凹面52と軸受ハウジング3の外周側凹面33とによって、吐出スクロール室12が形成される。
【0040】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記ターボチャージャ1においては、スクロールピース4とシュラウドピース5との2つのピースによってコンプレッサハウジング2を構成することができるため、コンプレッサハウジング2の部品点数を比較的少なくすることができる。その結果、ターボチャージャ1の製造工数を低減することができ、製造コストを低減することができる。
【0041】
また、軸受ハウジング3の外周側凹面33によって、吐出スクロール室12の壁面の一部を構成することができる。すなわち、ターボチャージャ1において元々必要である軸受ハウジング3の一部を利用して、吐出スクロール室12の壁面の一部を凹状に形成することとなる。そのため、部品点数を多くしなくても、吐出スクロール室12の形状自由度を向上させることができる。
【0042】
そして、外周側凹面33は、インペラ13の回転軸を含む平面による断面形状が周方向に沿って徐々に変化した形状を有する。そのため、吐出スクロール室12における外周側の壁面の形状を、周方向に沿って徐々に変化させることができる。これにより、吐出スクロール室12の形状を理想的な形状とすることが可能となり、コンプレッサ内における理想的な空気の流れを実現することができる。その結果、ターボチャージャ1の性能向上を図ることができる。
【0043】
また、外周側凹面33は、ディフューザ面54に対向する対向面31と共に、軸受ハウジング3に形成されている。そのため、対向面31と外周側凹面33との間に継ぎ目が形成されることもない。したがって、ディフューザ部16から吐出スクロール室12へ吐出される圧縮空気の円滑な流れを容易かつ確実に実現することができる。かかる観点からも、ターボチャージャ1の性能向上を確保することができる。
【0044】
また、外周側凹面33の上記断面形状は、周方向において吐出ポート15へ向かうにしたがって徐々に曲率半径が大きくなり、軸方向の寸法h及び径方向の寸法wが徐々に大きくなるように形成されている。これにより、吐出スクロール室12の形状を一層容易に理想的な形状とすることができる。すなわち、吐出スクロール室12の壁面の一部を構成する外周側凹面33が、上記のような形状を備えることにより、吐出スクロール室12の「周方向において吐出ポート15へ向かうにしたがって徐々に断面積が大きくなる形状」において、その各部の断面形状を理想的な形状に形成しやすくなる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、コスト低減、性能向上を図ることができるターボチャージャを提供することができる。
【0046】
なお、上記実施例においては、スクロールピース及びシュラウドピースを、アルミニウムのダイキャスト製とした例を示したが、これに限らず、他の材料、他の製法によってこれらのピースを形成することもできる。例えば、シュラウドピースを樹脂成形品等によって形成してもよい。
また、上記実施例においては、軸受ハウジングを鋳鉄製としたが、必ずしもこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 ターボチャージャ
10 空気流路
11 吸気口
12 吐出スクロール室
13 インペラ
14 ロータシャフト
15 吐出ポート
2 コンプレッサハウジング
3 軸受ハウジング
31 対向面
32 外周環状嵌入部
33 外周側凹面
4 スクロールピース
41 吸気口形成部
42 吸気側凹面
43 スクロール外周部
5 シュラウドピース
51 シュラウド嵌入部
52 内周側凹面
53 シュラウド面
54 ディフューザ面
図1
図2
図3
図4
図5
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図11