(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、旋盤等の工作機械に用いられる心押台について種々の開発がなされており、心押台の先行技術として特許文献1に示すものがある。そして、先行技術に係る心押台の構成等について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
旋盤のベッドには、心押台ブロック(心押台本体)が旋盤の主軸台とZ軸方向に対向しかつZ軸方向へ移動可能に設けられている。また、心押台ブロックには、可動スリーブがZ軸方向へ移動可能に設けられており、この可動スリーブは、主軸台側(Z軸方向の一方側)に、センタの基端部とテーパ嵌合可能なセンタ保持部を有している。更に、心押台ブロックの主軸台側の反対側(Z軸方向の他方側)には、可動スリーブをZ軸方向へ移動させるスリーブ用油圧シリンダが設けられており、このスリーブ用油圧シリンダの一端側から他端側にかけて、挿通穴がZ軸方向に沿って形成(貫通形成)されてあって、この挿通穴は、可動スリーブ内に連通してある。
【0004】
従って、主軸によってワークの一端部を把持しかつセンタの基部を可動スリーブのセンタ保持部にテーパ嵌合させた後に、適宜のブロック用電動モータの駆動により心押台ブロックを主軸台側へ移動させる。これにより、センタをワークの他端部の端面に接近させることができる。
【0005】
続いて、スリーブ用油圧シリンダの駆動により可動スリーブを主軸台側へ移動させる。これにより、センタによってワークの他端部の端面を押圧支持することができ、旋盤による切削加工の準備が完了する。
【0006】
ワークに対して切削加工を行った後に、スリーブ用油圧シリンダの駆動により可動スリーブを主軸台側の反対側へ移動させると共に、適宜のブロック用電動モータの駆動により心押台ブロックを主軸台側の反対側へ移動させる。これにより、センタを加工済みのワークの他端部の端面から離反させることができ、主軸の把持状態を解除して、加工済みのワークを主軸から取り出すことができる。
【0007】
特許文献1に記載されていないが、センタを可動スリーブのセンタ保持部から取り外す場合には、適宜の押棒を用い、スリーブ用油圧シリンダの側方(Z軸方向の側方)、換言すれば、心押台の側方から押棒をスリーブ用油圧シリンダの挿通穴に挿通させる。これにより、押棒によってセンタの基端部の端面を主軸台側へ押圧することができ、センタの基部と可動スリーブのセンタ保持部とのテーパ嵌合状態を解除して、センタを可動スリーブのセンタ保持部から取り外すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述のように、センタを可動スリーブのセンタ保持部から取り外す場合には、心押台の側方で押棒を用いた作業を行わなければならず、センタの取り外しの作業スペースとして少なくとも押棒の長さに応じた大きさのスペースが必要になる。そのため、旋盤を工場内に設置する際に、旋盤の設置スペースの他に、心押台の側方に押棒の長さに応じた大きさのセンタの取り外しの作業スペースを確保しなければならず、工場のスペースの有効利用を図ることが困難であるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の心押台等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の特徴は、工作機械の主軸によってワークの一端部を把持した状態で、センタによってワークの他端部の端面を押圧支持する心押台において、前記工作機械のベッドに前記工作機械の主軸台とZ軸方向に対向して設けられ、前記主軸台に対して相対的にZ軸方向へ移動可能な心押台ブロック(心押台本体)と、前記心押台ブロックにZ軸方向に移動可能に設けられ、前記主軸台側(Z軸方向の一方側)に前記センタの基端部とテーパ嵌合可能なセンタ保持部を有し、前記センタを前記センタ保持部から取り外す場合以外の通常の場合に予め設定されたストローク(移動範囲)内でZ軸方向へ移動するように構成された可動スリーブと、前記心押台ブロックに設けられ、前記可動スリーブをZ軸方向へ移動させるスリーブ用アクチュエータと、前記可動スリーブ内に設けられ、Z軸方向へ延びてあって、前記通常の場合に前記可動スリーブと一体的にZ軸方向に移動可能であって、前記センタを前記可動スリーブの前記センタ保持部から取り外す場合に前記センタを前記主軸台側へ押し出すための押圧ロッドと、を具備し、前記可動スリーブが前記ストローク(前記ストロークのストローク端)を越えて前記主軸台側の反対側(Z軸方向の他方側)へ移動すると、前記押圧ロッドが前記可動スリーブに対して相対的に前記主軸台側へ移動して、前記センタの基端部の端面を前記主軸台側へ押圧するように構成されたことを要旨とする。
【0012】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「Z軸方向」とは、主軸の軸心に対して平行な方向をいう。また、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。更に、「主軸台とZ軸方向に対向して設けられ」とは、ワークに対して切削加工又は研削加工を行うときに主軸台とZ軸方向に対向するように設けられていることを含む意である。
【0013】
第1の特徴によると、前記主軸によってワークの一端部を把持しかつ前記センタの基部を前記可動スリーブの前記センタ保持部にテーパ嵌合させた後に、前記心押台ブロックを前記主軸台側へ移動させる。これにより、前記センタをワークの他端部の端面に接近させることができる。
【0014】
続いて、前記スリーブ用アクチュエータの駆動により前記可動スリーブを前記ストローク内で前記主軸台側へ移動させる。これにより、前記センタによってワークの他端部の端面を押圧支持することができ、前記工作機械による切削加工又は研削加工の準備が完了する。
【0015】
ワークに対して切削加工又は研削加工を行った後に、前記スリーブ用アクチュエータの駆動により前記可動スリーブを前記ストローク内で前記主軸台側の反対側へ移動させると共に、前記心押台ブロックを前記主軸台側の反対側へ移動させる。これにより、前記センタを加工済みのワークの他端部の端面から離反させることができ、前記主軸の把持状態を解除して、加工済みのワークを前記主軸から取り出すことができる。
【0016】
前記センタを前記可動スリーブの前記センタ保持部から取り外す場合には、前記スリーブ用アクチュエータの駆動により前記可動スリーブを前記ストロークを越えて前記主軸台側の反対側へ移動させる。これにより、前記押圧ロッドが前記可動スリーブに対して相対的に前記主軸台側へ移動して、前記センタの基端部の端面を前記主軸台側へ押圧することができ、前記センタの基部と前記可動スリーブの前記センタ保持部とのテーパ嵌合状態を解除して、前記センタを取り外すことができる。換言すれば、前記心押台の側方(Z軸方向の他方側)で押棒を用いた作業を行うことなく、前記センタの基部と前記可動スリーブの前記センタ保持部とのテーパ嵌合状態を解除して、前記センタを前記可動スリーブの前記センタ保持部から取り外すことができる。
【0017】
本発明の第2の特徴は、ワークに対して切削加工又は研削加工を行う工作機械において、第1の特徴からなる心押台を具備したことを要旨とする。
【0018】
第2の特徴によると、第1の特徴と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前記心押台の側方で押棒を用いた作業を行うことなく、前記センタを前記可動スリーブの前記センタ保持部から取り外すことができるため、前記工作機械を工場内に設置する際に、前記心押台の側方に前記センタの取り外しの作業スペースを確保する必要がなくなり、工場のスペースの有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1から
図3を参照して説明する。
【0022】
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る工作機械1は、ワークWに対して切削加工又は研削加工を行うものであって、ベッド3をベースとして具備している。また、ベッド3のZ軸方向の一方側には、主軸台5が設けられており、この主軸台5には、主軸7がその軸心周りに回転可能に設けられており、この主軸台5は、先端側に、ワークWの一端部を把持するチャック9を有している。更に、主軸台5には、主軸7をその軸心周りに回転させる主軸用電動モータ11が設けられている。なお、図示は省略するが、ベッド3における主軸台5のX軸方向の一方側には、切削加工又は研削加工を行うためのタレット刃物台等の加工ヘッドがX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向へ移動可能に設けられている。
【0023】
ベッド3のZ軸方向の他方側には、心押台13が主軸台5とZ軸方向に対向して設けられており、この心押台13は、主軸7のチャック9によってワークWの一端部を把持した状態で、センタ15によってワークWの他端部の端面(端面に形成されたセンタ穴)を押圧支持するものである。そして、心押台13の具体的な構成は、以下のようになる。
【0024】
図1及び
図3に示すように、ベッド3のZ軸方向の他方側には、心押台ブロック(心押台本体)17が主軸台5とZ軸方向に対向しかつ複数(1つのみ図示)のガイドレール19を介してZ軸方向へ移動可能に設けられており、この心押台ブロック17には、ガイド穴21がZ軸方向に沿って形成(貫通形成)されている。また、ベッド3の適宜位置には、心押台ブロック17をZ軸方向へ移動させるブロック用電動モータ23が設けられている。
【0025】
図1及び
図2(a)に示すように、心押台ブロック17のガイド穴21には、Z軸方向へ延びた可動スリーブ25がZ軸方向へ移動可能に設けられている。また、可動スリーブ25は、筒状の可動スリーブ本体27と、可動スリーブ本体27内における主軸台5側(Z軸方向の一方側)に可動スリーブ本体27と同心状に設けられかつセンタ15の基端部を嵌合保持可能なセンタ保持部としての筒状のセンタホルダ29と、このセンタホルダ29の先端部(Z軸方向の他方側の端部)に可動スリーブ本体27と同心状に設けられた段付きの支持パイプ31とを備えている。更に、可動スリーブ25は、センタ15をセンタホルダ29から取り外す場合以外の通常の場合に予め設定されたストローク(移動範囲)S内でZ軸方向へ移動するように構成されている。なお、可動スリーブ25が心押台ブロック17にZ軸方向へ移動可能に設けられていれば、心押台ブロック17からガイド穴21を省略しても構わない。
【0026】
心押台ブロック17のZ軸方向の他方側には、可動スリーブ25をZ軸方向へ移動させるスリーブ用電動モータ33がプーリボックス35を介して設けられている。また、可動スリーブ本体27内には、Z軸方向へ延びたねじ部材としてのボールねじ37が可動スリーブ本体27(可動スリーブ25)と同心状に設けられており、このボールねじ37は、主動プーリ39、タイミングベルト41、及び従動プーリ43を介してスリーブ用電動モータ33の出力軸に連動連結してある。更に、ボールねじ37の基端側(Z軸方向の他方側)は、心押台ブロック17にラジアルベアリング45を介して回転可能に支持されており、主動プーリ39、タイミングベルト41、及び従動プーリ43は、プーリボックス35内に位置している。そして、可動スリーブ本体27におけるZ軸方向の他方側の端部には、ボールねじ37に螺合したナット部材47が設けられている。なお、ボールねじ37が主動プーリ39等の代わりにカップリング(図示省略)を介してスリーブ用電動モータ33の出力軸に連動連結しても構わない。
【0027】
支持パイプ31内には、Z軸方向へ延びた段付きの押圧ロッド49がキーボルト51及びキー溝53を介してZ軸方向へ移動可能かつ回転不能に設けられており、この押圧ロッド49は、センタ15をセンタホルダ29から取り外す場合にセンタ15を主軸台5側へ押し出すためのものである。また、押圧ロッド49の基端部の端面(Z軸方向の他方側の端面)の中央には、窪み55が形成されている。
【0028】
図2(a)に示すように、支持パイプ31内には、前記通常の場合に押圧ロッド49を支持パイプ31(可動スリーブ25)に対する基準の相対位置に位置させるように主軸台5側の反対側(Z軸方向の他方側)へ付勢する付勢部材としてのスプリング57が設けられている。ここで、基準の相対位置とは、押圧ロッド49の先端部の端面とセンタ15の基端部の端面との非接触状態を保つための支持パイプ31に対する相対位置であって、具体的には、キー溝53のZ軸方向の一方側の壁面をキーボルト51に当接させたときにおける支持パイプ31に対する相対位置のことをいう。また、前記通常の場合に押圧ロッド49を支持パイプ31に対する基準の相対位置に位置させることによって、押圧ロッド49は可動スリーブ25と一体的にZ軸方向に移動可能になっている。
【0029】
ボールねじ37の先端部には、鋼球受け部材59が一体的に設けられており、この鋼球受け部材59には、押圧ロッド49の窪み55に回転可能に接触する鋼球61が設けられている。なお、ボールねじ37の先端部に鋼球受け部材59等が設けられる代わりに、押圧ロッド49の基端部の端面に回転可能に接触するスラストベアリング(図示省略)が設けられるようにしても構わない。
【0030】
そして、
図2(b)に示すように、心押台13は、可動スリーブ25がストロークS(ストロークSのストローク端)を超えて主軸台5側の反対側へ移動すると、ボールねじ37によって押圧ロッド49の心押台ブロック17に対する主軸台5側の反対側の移動が規制され、押圧ロッド49がスプリング57の付勢力に抗しつつ基準の相対位置から支持パイプ31に対して相対的に主軸台5側へ移動して、センタ15の基端部の端面を主軸台5側へ押圧するように構成されている。
【0031】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
主軸7のチャック9によってワークWの一端部を把持しかつセンタ15の基部をセンタホルダ29にテーパ嵌合させた後に、ブロック用電動モータ23の駆動により心押台ブロック17を主軸台5側へ移動させる。これにより、センタ15をワークWの他端部の端面に接近させることができる。
【0033】
続いて、スリーブ用電動モータ33の駆動によりボールねじ37を正方向へ回転させることにより、ボールねじ37とナット部材47の螺合作用も相まって、可動スリーブ25をストロークS内で主軸台5側へ移動させる。これにより、センタ15によってワークWの他端部の端面を押圧支持することができ、工作機械1による切削加工又は研削加工の準備が完了する。
【0034】
切削加工等の準備が完了した後に、主軸用電動モータ11の駆動によりワークWをその軸心周りに主軸7と一体的に回転させつつ、加工ヘッドをX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のうちの少なくともいずれかの方向へ移動させる。これにより、ワークWに対して切削加工又は研削加工を行うことができる。
【0035】
ワークWに対して切削加工又は研削加工を行った後に、スリーブ用電動モータ33の駆動によりボールねじ37を逆方向へ回転させることにより、ボールねじ37とナット部材47の螺合作用も相まって、可動スリーブ25をストロークS内で主軸台5側の反対側へ移動させる。また、ブロック用電動モータ23の駆動により心押台ブロック17を主軸台5側の反対側へ移動させる。これにより、センタ15を加工済みのワークWの他端部の端面から離反させることができ、主軸7のチャック9の把持状態を解除して、加工済みのワークWを主軸7から取り出すことができる。
【0036】
センタ15をセンタホルダ29から取り外す場合には、スリーブ用電動モータ33の駆動によりボールねじ37を逆方向へ僅かに回転させることにより、可動スリーブ25をストロークSを越えて主軸台5側の反対側へ移動させる。これにより、ボールねじ37によって押圧ロッド49の心押台ブロック17に対する主軸台5側の反対側の移動が規制され、押圧ロッド49がスプリング57の付勢力に抗しつつ可動スリーブ25に対して相対的に主軸台5側へ移動して、センタ15の基端部の端面を主軸台5側へ押圧することができ、センタ15の基部とセンタホルダ29とのテーパ嵌合状態を解除して、センタ15を取り外すことができる。換言すれば、心押台13の側方(Z軸方向の他方側)で押棒([背景技術]の説明参照)を用いた作業を行うことなく、センタ15の基部とセンタホルダ29とのテーパ嵌合状態を解除して、センタ15をセンタホルダ29から取り外すことができる。
【0037】
以上のごとき、本発明の第1実施形態によれば、心押台13の側方で押棒を用いた作業を行うことなく、センタ15をセンタホルダ29から取り外すことができるため、工作機械1を工場内に設置する際に、心押台13の側方にセンタ15の取り外しの作業スペースを確保する必要がなくなり、工場のスペースの有効利用を図ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について
図4から
図6を参照して説明する。
【0039】
図6に示すように、本発明の第2実施形態に係る工作機械63は、本発明の第1実施形態に係る工作機械1(
図5参照)と同様に、ワークWに対して切削加工又は研削加工を行うものであって、心押台13(
図1参照)と異なる構成の心押台65を具備している。以下、工作機械63の構成のうち、工作機械1の構成と異なる構成(心押台65の構成)ついてのみ説明する。なお、工作機械63における複数の構成要素のうち、工作機械1における構成要素と対応するものについては、図面中に同一番号を付してある。
【0040】
心押台65は、主軸7のチャック9によってワークWの一端部を把持した状態で、センタ67によってワークWの他端部の端面(端面に形成されたセンタ穴)を押圧支持するものである。そして、心押台65の具体的な構成は、以下のようになる。
【0041】
図4及び
図6に示すように、ベッド3のZ軸方向の他方側には、心押台ブロック(心押台本体)69が主軸台5とZ軸方向に対向しかつ複数(1つのみ図示)のガイドレール71を介してZ軸方向へ移動可能に設けられており、この心押台ブロック69には、ガイド穴73がZ軸方向に沿って形成(貫通形成)されている。また、ベッド3の適宜位置には、心押台ブロック69をZ軸方向へ移動させるブロック用電動モータ75が設けられている。
【0042】
図4及び
図5(a)に示すように、心押台ブロック69のガイド穴73には、Z軸方向へ延びた可動スリーブ77がZ軸方向へ移動可能に設けられており、この可動スリーブ77は、主軸台5側(Z軸方向の一方側)に、センタ67の基端部とテーパ嵌合可能なセンタ保持部79を有している。また、可動スリーブ77は、センタ67をセンタ保持部79から取り外す場合以外の通常の場合に予め設定されたストロークS内でZ軸方向へ移動するように構成されている。
【0043】
心押台ブロック69のZ軸方向の他方側には、可動スリーブ77をZ軸方向へ移動させるスリーブ用油圧シリンダ81が一体的に設けられており、このスリーブ用油圧シリンダ81の構成の詳細について説明すると、次のようになる。
【0044】
スリーブ用油圧シリンダ81は、心押台ブロック69に一体的に設けられた筒状のシリンダ本体83を備えており、このシリンダ本体83は、Z軸方向の他方側に、リング状のシリンダキャップ85を有している。また、シリンダ本体83内には、第1ピストン87がZ軸方向へ液密摺動可能に設けられており、シリンダ本体83内における第1ピストン87よりも主軸台5側の反対側(Z軸方向の他方側)には、第2ピストン89がZ軸方向へ液密摺動可能に設けられている。なお、シリンダ本体83の大部分は、心押台ブロック69と同一の部材により構成されているが、シリンダ本体83の全部を心押台ブロック69と別の部材により構成されるようにしても構わない。
【0045】
第1ピストン87には、Z軸方向へ延びた筒状の第1作動ロッド91の基端部が一体的に連結されており、この第1作動ロッド91の先端部は、可動スリーブ77のZ軸方向の他方側の端部に一体的に連結されている。また、第1作動ロッド91内には、Z軸方向へ延びた第2作動ロッド93が第1作動ロッド91に対して相対的にZ軸方向へ液密摺動可能に貫通支持されており、この第2作動ロッド93の基端部は、第2ピストン89に一体的に連結されている。更に、シリンダキャップ85には、Z軸方向へ延びたガイドロッド95がZ軸方向へ液密摺動可能に貫通支持されており、このガイドロッド95の基端部は、第2ピストン89に一体的に連結されている。
【0046】
第1ピストン87とシリンダ本体83の内壁面(Z軸方向の一方側の内壁面)との間に、第1油圧室97が区画形成されており、シリンダ本体83のZ軸方向の一方側には、第1油圧室97の加圧及び加圧状態の解除を行うための第1圧油ポート99が第1油圧室97に連通して形成されている。また、第2ピストン89とシリンダ本体83の内壁面(Z軸方向の他方側の内壁面)との間に、第2油圧室101が区画形成されており、シリンダ本体83のZ軸方向の他方側には、第2油圧室101の加圧及び加圧状態の解除を行うための第2圧油ポート103が第2油圧室101に連通して形成されている。更に、第1ピストン87と第2ピストン89との間に、第3油圧室105が区画形成されており、ガイドロッド95の先端部の端面には、第3油圧室105の加圧及び加圧状態の解除を行うための第3圧油ポート107が第3油圧室105に連通して形成されている。
【0047】
可動スリーブ77内には、Z軸方向へ延びた押圧ロッド109がZ軸方向へ移動可能に設けられており、この押圧ロッド109は、センタ67を可動スリーブ77のセンタ保持部79から取り外す場合にセンタ67を主軸台5側へ押し出すためのものである。また、押圧ロッド109の基端部は、第2作動ロッド93の先端部に一体的に連結されている。なお、押圧ロッド109は、第2作動ロッド93と同一の部材により構成されているが、第2作動ロッド93と別の部材により構成されるようにしても構わない。
【0048】
図5(a)に示すように、第2作動ロッド93の先端側には、第1作動ロッド91の第2作動ロッド93に対する相対的な主軸台5側への移動を規制するストッパ部材としてのストッパリング111が設けられている。また、心押台65は、センタ67を可動スリーブ77のセンタ保持部79から取り外す場合以外の通常の場合に、第3油圧室105を加圧することによって第1作動ロッド91の先端部の端面をストッパリング111に当接させて、押圧ロッド109の先端部の端面とセンタ67の基端部の端面との非接触状態を保つように構成されている。更に、押圧ロッド109は、前記通常の場合に第1作動ロッド91の先端部の端面とストッパリング111との当接状態を保つことによって、可動スリーブ77と一体的にZ軸方向に移動可能になっている。
【0049】
そして、
図5(b)に示すように、心押台65は、第2油圧室101及び第3油圧室105の加圧状態を解除しかつ第1油圧室97を加圧することによって可動スリーブ77がストロークSを超えて主軸台5側の反対側(Z軸方向の他方側)へ移動すると、第1作動ロッドの先端部の端面とストッパリングとの当接状態が解除され、押圧ロッド109が可動スリーブ77に対して相対的に主軸台5側へ移動して、センタ67の基端部の端面を主軸台5側へ押圧するように構成されている。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0051】
主軸7のチャック9によってワークWの一端部を把持しかつセンタ67の基部を可動スリーブ77のセンタ保持部79にテーパ嵌合させた後に、第2油圧室103の加圧状態を解除しかつ第1油圧室97及び第3油圧室105を加圧しながら、ブロック用電動モータ75の駆動により心押台ブロック69を主軸台5側へ移動させる。これにより、センタ67をワークWの他端部の端面に接近させることができる。
【0052】
続いて、第1油圧室97の加圧状態を解除しかつ第2油圧室101及び第3油圧室105を加圧することによって可動スリーブ77をストロークS内で主軸台5側へ移動させる。これにより、センタ67によってワークWの他端部の端面を押圧支持することができ、工作機械1による切削加工又は研削加工の準備が完了する。
【0053】
切削加工等の準備が完了した後に、主軸用電動モータ11の駆動によりワークWをその軸心周りに主軸7と一体的に回転させつつ、加工ヘッドをX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のうちの少なくともいずれかの方向へ移動させる。これにより、ワークWに対して切削加工又は研削加工を行うことができる。
【0054】
ワークWに対して切削加工又は研削加工を行った後に、第2油圧室101の加圧状態を解除しかつ第1油圧室97及び第3油圧室105を加圧することによって可動スリーブ77をストロークS内で主軸台5側の反対側へ移動させる。また、ブロック用電動モータ75の駆動により心押台ブロック69を主軸台5側の反対側へ移動させる。これにより、センタ67を加工済みのワークWの他端部の端面から離反させることができ、主軸7のチャック9の把持状態を解除して、加工済みのワークWを主軸7から取り出すことができる。
【0055】
センタ67を可動スリーブ77のセンタ保持部79から取り外す場合には、第2油圧室101及び第3油圧室105の加圧状態を解除しかつ第1油圧室97を加圧することによって可動スリーブ77をストロークSを越えて主軸台5側の反対側へ移動させる。これにより、第1作動ロッド91の先端部の端面とストッパリング111との当接状態が解除され、押圧ロッド109が可動スリーブ77に対して相対的に主軸台5側へ移動して、センタ67の基端部の端面を主軸台5側へ押圧することができ、センタ67の基部と可動スリーブ77のセンタ保持部79とのテーパ嵌合状態を解除して、センタ67を取り外すことができる。換言すれば、心押台65の側方(Z軸方向の他方側)で押棒を用いた作業を行うことなく、センタ67の基部と可動スリーブ77のセンタ保持部79とのテーパ嵌合状態を解除して、センタ67を可動スリーブ77のセンタ保持部79から取り外すことができる。
【0056】
以上のごとき、本発明の第2実施形態によれば、心押台65の側方で押棒を用いた作業を行うことなく、センタ67を可動スリーブ77のセンタ保持部79から取り外すことができるため、工作機械63を工場内に設置する際に、心押台65の側方にセンタ67の取り外しの作業スペースを確保する必要がなくなり、工場のスペースの有効利用を図ることができる。
【0057】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、次のように種々の態様で実施可能である。また、そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。