特許第5985368号(P5985368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 四国化成工業株式会社の特許一覧

特許5985368銅または銅合金の表面処理液及びその利用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985368
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】銅または銅合金の表面処理液及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/52 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   C23C22/52
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-254760(P2012-254760)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-101554(P2014-101554A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山地 範明
(72)【発明者】
【氏名】中西 正人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 浩彦
(72)【発明者】
【氏名】村井 孝行
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−054169(JP,A)
【文献】 特開平07−166381(JP,A)
【文献】 特開平09−293954(JP,A)
【文献】 特開平09−291372(JP,A)
【文献】 特開2012−241251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00−30/00
C23F 11/00−11/18
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で示されるイミダゾール化合物と、鉄イオンと、ホスホン酸系キレート剤を含有することを特徴とする銅または銅合金の表面処理液。
【化1】
【請求項2】
銅または銅合金の表面に、請求項1記載の表面処理液を接触させることを特徴とする銅または銅合金の表面処理方法。
【請求項3】
銅または銅合金の表面を、請求項1記載の表面処理液で接触させた後に半田付けを行うことを特徴とする半田付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の銅または銅合金の表面処理液およびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時プリント配線板の実装方法として、実装密度を向上させた表面実装が広く採用されている。このような表面実装方法は、チップ部品をクリーム半田で接合する両面表面実装、チップ部品のクリーム半田による表面実装とディスクリート部品のスルホール実装を組み合わせた混載実装等に分けられる。いずれの実装方法においても、プリント配線板は複数回の半田付けが行われるので、その度に高温に曝されて厳しい熱履歴を受ける。
その結果、プリント配線板の回路部を構成する銅または銅合金の表面は、加熱されることにより酸化皮膜の形成が促進されるので、該回路部表面の半田付け性を良好に保つことができない。
【0003】
このようなプリント配線板の銅回路部を空気酸化から保護するために、表面処理液を使用して該回路部表面に化成皮膜を形成させる処理が広く行われているが、銅回路部が複数回の熱履歴を受けた後も化成皮膜が変成(劣化)することなく銅回路部を保護し、これによって半田付け性を良好なものに保つことが要求されている。
【0004】
このような表面処理液の有効成分として、種々のイミダゾール化合物が提案されている。例えば、特許文献1には、2−ウンデシルイミダゾールの如き2−アルキルイミダゾール化合物が、特許文献2には、2−フェニルイミダゾールや2−フェニル−4−メチルイミダゾールの如き2−アリールイミダゾール化合物が、特許文献3には、2−ノニルベンズイミダゾールの如き2−アルキルベンズイミダゾール化合物が、特許文献4には、2−(4−クロロフェニルメチル)ベンズイミダゾールの如き2−アラルキルベンズイミダゾール化合物が、特許文献5には、2−(4−クロロフェニルメチル)イミダゾールや2−(2,4−ジクロロフェニルメチル)−4,5−ジフェニルイミダゾールの如き2−アラルキルイミダゾール化合物が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのイミダゾール化合物を含有する表面処理液を使用した場合には、銅表面に形成される化成皮膜の耐熱性が未だ満足すべきものではなかった。また、半田付けを行う際にも、半田の濡れ性が不十分であり、良好な半田付け性を得ることができない。特に共晶半田に代えて、無鉛半田を使用して半田付けを行う場合には、前記の表面処理液は実用に供し難いものであった。
【0006】
一方、プリント配線板には、銅回路部に金、銀、アルミニウム、錫、はんだ等の銅以外の金属(以下、異種金属と云うことがある)が共存している場合がある。このような異種金属が共存しているプリント配線板を、前記のイミダゾール化合物を含む表面処理液で処理すると、異種金属上にも化成皮膜が形成されて変色等の不具合が生じるという問題があった。
異種金属上に化成皮膜が形成される理由として、プリント配線板を表面処理液に接触させた際に、銅回路部から表面処理液中に銅イオンが溶出し蓄積され、この銅イオンとイミダゾール化合物が反応して化成皮膜が形成されることが考えられる。
【0007】
前記問題を解決するため、銅回路部から表面処理液中に溶出した銅イオンをキレート化(捕捉)して、異種金属上への化成皮膜の形成を抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献6には、2−アルキルベンズイミダゾール誘導体を主成分とした表面処理液に、銅イオンと反応するキレート剤として、ジエチレントリアミン五酢酸などのようなアミノカルボン酸やこれらの金属塩を添加する銅及び銅合金の表面処理液が開示されている。特許文献7には、イミダゾール化合物あるいはベンズイミダゾール化合物と、コンプレクサン化合物及び鉄イオンを必須成分として含有する水溶液からなる銅及び銅合金の表面処理液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭46−17046号公報
【特許文献2】特開平4−206681号公報
【特許文献3】特開平5−25407号公報
【特許文献4】特開平5−186888号公報
【特許文献5】特開平7−243054号公報
【特許文献6】特開平6−81161号公報
【特許文献7】特開平9−291372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、銅または銅合金(以下、単に銅と云うことがある)の表面に、耐熱性および半田付け性に優れた化成皮膜を形成し、且つ、異種金属上への化成皮膜の形成を抑制して変色を抑える表面処理液ならびに表面処理方法を提供し、また、前記の表面処理液を適応した半田付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、化学式(I)で示されるイミダゾール化合物と共に、鉄イオンおよびホスホン酸系キレート剤を表面処理液に含有させることにより、所期の目的を達成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、第1の発明は、化学式(I)で示されるイミダゾール化合物と、鉄イオンと、ホスホン酸系キレート剤を含有することを特徴とする銅または銅合金の表面処理液である。第2の発明は、銅または銅合金の表面に、第1の発明の表面処理液を接触させることを特徴とする銅または銅合金の表面処理方法である。第3の発明は、銅または銅合金の表面を、第1の発明の表面処理液で接触させた後に半田付けを行うことを特徴とする半田付け方法である。
【0011】
【化1】
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面処理液は、銅または銅合金の表面に、耐熱性および半田付け性に優れた化成皮膜を形成し、且つ、異種金属上への化成皮膜の形成を抑制して変色を抑えることができる。
また、本発明の半田付け方法は、有害金属である鉛を含まない半田の使用を可能とするので、環境保護の観点において有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明における銅合金としては、銅を含む合金であれば特に制限されず、例えば、Cu−Ag系、Cu−Te系、Cu−Mg系、Cu−Sn系、Cu−Si系、Cu−Mn系、Cu−Be−Co系、Cu−Ti系、Cu−Ni−Si系、Cu−Cr系、Cu−Zr系、Cu−Fe系、Cu−Al系、Cu−Zn系、Cu−Co系等の合金を挙げることができる。
【0014】
本発明の実施において使用されるイミダゾール化合物は、前記の化学式(I)で示されるものであり、イミダゾール環の2位にチエニル基またはチエニルメチル基が結合し、同4(5)位にフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基またはナフチル基が結合し、同5(4)位には、水素原子、メチル基またはフェニル基が結合した構造を有するイミダゾール化合物である。
【0015】
前記のイミダゾール化合物の内、化学式(I)において、Rが水素原子であって、Rが2−チエニル基であるイミダゾール化合物は、
4−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(1−ナフチル)−2−(2−チエニル)イミダゾールおよび
4−(2−ナフチル)−2−(2−チエニル)イミダゾールである。
【0016】
化学式(I)において、Rがメチル基であって、Rが2−チエニル基であるイミダゾール化合物は、
5−メチル−4−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
5−メチル−4−(1−ナフチル)−2−(2−チエニル)イミダゾールおよび
5−メチル−4−(2−ナフチル)−2−(2−チエニル)イミダゾールである。
【0017】
化学式(I)において、Rがフェニル基であって、Rが2−チエニル基であるイミダゾール化合物は、
4,5−ジフェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、
4−(1−ナフチル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾールおよび
4−(2−ナフチル)−5−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾールである。
【0018】
化学式(I)において、Rが水素原子であって、Rが3−チエニル基であるイミダゾール化合物は、
4−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(1−ナフチル)−2−(3−チエニル)イミダゾールおよび
4−(2−ナフチル)−2−(3−チエニル)イミダゾールである。
【0019】
化学式(I)において、Rがメチル基であって、Rが3−チエニル基であるイミダゾール化合物は、
5−メチル−4−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
5−メチル−4−(1−ナフチル)−2−(3−チエニル)イミダゾールおよび
5−メチル−4−(2−ナフチル)−2−(3−チエニル)イミダゾールである。
【0020】
化学式(I)において、Rがフェニル基であって、Rが3−チエニル基であるイミダゾール化合物は、
4,5−ジフェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾール、
4−(1−ナフチル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾールおよび
4−(2−ナフチル)−5−フェニル−2−(3−チエニル)イミダゾールである。
【0021】
化学式(I)において、Rが水素原子であって、Rが2−チエニルメチル基であるイミダゾール化合物は、
4−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(1−ナフチル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾールおよび
4−(2−ナフチル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾールである。
【0022】
化学式(I)において、Rがメチル基であって、Rが2−チエニルメチル基であるイミダゾール化合物は、
5−メチル−4−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
5−メチル−4−(1−ナフチル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾールおよび
5−メチル−4−(2−ナフチル)−2−(2−チエニルメチル)イミダゾールである。
【0023】
化学式(I)において、Rがフェニル基であって、Rが2−チエニルメチル基であるイミダゾール化合物は、
4,5−ジフェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(1−ナフチル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾールおよび
4−(2−ナフチル)−5−フェニル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾールである。
【0024】
化学式(I)において、Rが水素原子であって、Rが3−チエニルメチル基であるイミダゾール化合物は、
4−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(1−ナフチル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾールおよび
4−(2−ナフチル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾールである。
【0025】
化学式(I)において、Rがメチル基であって、Rが3−チエニルメチル基であるイミダゾール化合物は、
5−メチル−4−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
5−メチル−4−(1−ナフチル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾールおよび
5−メチル−4−(2−ナフチル)−2−(3−チエニルメチル)イミダゾールである。
【0026】
化学式(I)において、Rがフェニル基であって、Rが3−チエニルメチル基であるイミダゾール化合物は、
4,5−ジフェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(4−クロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,3−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,5−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(2,6−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(3,5−ジクロロフェニル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾール、
4−(1−ナフチル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾールおよび
4−(2−ナフチル)−5−フェニル−2−(3−チエニルメチル)イミダゾールである。
【0027】
これらのイミダゾール化合物は、単独または組み合わせて使用することが可能である。
本発明の表面処理液は、前記のイミダゾール化合物を、後述する鉄イオンを供給する鉄化合物、ホスホン酸系キレート剤および可溶化剤や助剤と共に、水に溶解させることにより調製される。
この表面処理液中のイミダゾール化合物の含有量は、0.01〜10重量%の割合が好ましく、0.1〜5重量%の割合がより好ましい。イミダゾール化合物の含有量が0.01重量%より少ないと、銅表面に形成される化成皮膜の膜厚が薄くなり、銅表面の酸化を十分に防止することができない虞がある。また、10重量%より多い場合には表面処理液中にイミダゾール化合物が溶け残ったり、あるいは完溶したとしても再析出する虞があり好ましくない。
【0028】
前記のイミダゾール化合物は、例えば、反応スキーム(1)で示される合成法を採用することにより合成することができる。なお、アミジン化合物としては、アミジン塩酸塩化合物を好適に使用することができる。
【0029】
【化2】
(但し、式中のR、RおよびRは前記と同様であり、Xは塩素原子、臭素原子または沃素原子を表す。)
【0030】
本発明の実施において使用される鉄イオンを供給するのに好適な鉄化合物としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、過塩素酸鉄(II)、過塩素酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(III)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、蓚酸鉄(III)アンモニウム、クエン酸鉄(III)、2−エチルヘキサン鉄(III)、フマル酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、蓚酸鉄(II)等が挙げられる。即ち、表面処理液中に溶解して鉄イオンを生じる化合物であれば良い。
表面処理液中の鉄イオンの含有量は、0.0001〜1重量%の割合が好ましく、0.001〜0.5重量%の割合がより好ましい。
【0031】
本発明の実施において使用されるホスホン酸系キレート剤は、分子構造中にホスホン酸基[−P(O)(OH)2]を必須構造として含有した化合物であり、例えば、メチレンジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、1,3−プロパンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、テトラエチレンペンタアミンヘプタ(メチレンホスホン酸)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等と、これらの塩類が挙げられる。これらのキレート剤は単独または組み合わせて使用することが可能である。
前記のキレート剤の含有量(モル濃度)は、表面処理液中の鉄イオンの含有量(モル濃度)に対して、0.5〜20倍モルの割合が好ましく、0.5〜10倍モルの割合がより好ましい。
【0032】
本発明の表面処理液の調製においては、イミダゾール化合物を水に溶解(水溶液化)させるに当たっては、通常、可溶化剤として有機酸または無機酸を使用する。
この際に使用される代表的な有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、オレイン酸、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、グルコン酸、グリセリン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、ブトキシ酢酸、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−{2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸、3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸、3−プロポキシプロピオン酸、3−ブトキシプロピオン酸、レブリン酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、パラニトロ安息香酸、ピクリン酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、スルファミン酸等が挙げられ、無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
これらの酸は、単独または組み合わせて使用することが可能であり、表面処理液中に好ましくは0.1〜50重量%の割合、より好ましくは1〜30重量%の割合で含有される。
【0033】
また、前記の可溶化剤と共に、有機溶剤を併用することができる。
この有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のセロソルブ類、あるいはアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセチルアセトン等の水と自由に混和するものが好ましい。
これらの有機溶剤は、単独または組み合わせて使用することが可能であり、表面処理液中に好ましくは0.1〜50重量%の割合、より好ましくは1〜40重量%の割合で含有される。
【0034】
本発明の表面処理液の調製においては、形成された化成皮膜の耐熱性を更に向上させるために、助剤としてハロゲン化合物を使用することができる。
このハロゲン化合物としては、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、塩化ナトリム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、2−ブロモプロピオン酸、3−ブロモプロピオン酸、ヨウ化ナトリム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、2−ヨードプロピオン酸、3−ヨードプロピオン酸等が挙げられる。
これらのハロゲン化合物は、単独または組み合わせて使用することが可能であり、表面処理液中に好ましくは0.001〜1重量%の割合、より好ましくは0.01〜0.1重量%の割合で含有される。
【0035】
また、前述のハロゲン化合物以外にも、化成皮膜の耐熱性の向上を目的として、亜鉛化合物を助剤として使用することができる。
この亜鉛化合物としては、例えば酸化亜鉛、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。
これらの亜鉛化合物は、単独または組み合わせて使用することが可能であり、表面処理液中に好ましくは0.01〜5重量%の割合、より好ましくは0.02〜3重量%の割合で含有される。
【0036】
本発明の表面処理液を用いて銅の表面を処理する際には、表面処理液のpHを調整することが好ましい。このpHは、表面処理液の組成(成分の種類と含有量)や後述する処理温度と処理時間に応じて適宜設定される。
pHを下げる場合には、前述の有機酸または無機酸を使用することができ、pHを上げる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化バリウムの他、アンモニアあるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類等の緩衝作用を有する物質が好ましく使用できる。
【0037】
本発明の実施において銅の表面を処理するには、ソフトエッチングや酸洗等の常法に従って前処理を行った後、表面処理液を銅の表面に接触させればよい。このような処理により、銅の表面にはイミダゾール化合物に由来する化成皮膜が形成される。
表面処理液を銅の表面に接触させる方法としては、浸漬、噴霧、塗布等の手段を採用することができる。
【0038】
表面処理液を銅の表面に接触させる際の液温(処理温度)については、10〜70℃が好ましいが、30〜50℃がより好ましい。
また、表面処理液と銅を接触させる時間については、1秒〜10分とすることが好ましいが、処理温度との関係において、銅表面に所望の厚さの化成皮膜が形成されるように、適宜設定すればよい。
なお、銅の表面に形成する化成皮膜の厚さは、0.1〜0.5μmであることが好ましい。
【0039】
本発明の実施に適する半田としては、従来知られたSn−Pb系の共晶半田の他、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi系、Sn−Bi系、Sn−Ag−Bi−In系、Sn−Zn系、Sn−Cu系等の無鉛半田が挙げられる。
【0040】
また本発明の半田付け方法は、加熱溶融した液体状の半田が入っている半田槽の上を、プリント配線板を流し、電子部品とプリント配線板の接合部に半田付けを行なうフロー法または、予めプリント配線板にペースト状のクリーム半田を回路パターンに合わせて印刷し、そこに電子部品を実装し、プリント配線板を加熱して半田を溶融させ、半田付けを行うリフロー法等に適応し得るものである。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で使用したイミダゾール化合物ならびに評価試験方法は次のとおりである。
【0042】
[イミダゾール化合物]
・4−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール(参考例1参照)
・4−(1−ナフチル)−2−(2−チエニル)イミダゾール(参考例2参照)
・5−メチル−4−(2−ナフチル)−2−(2−チエニル)イミダゾール(参考例3参照)
・4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾール(参考例4参照)
・4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾール(参考例5参照)
・2−フェニルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名「2PZ」)
・2−ノニルベンズイミダゾール(「J.Am.Chem.Soc.,59,178(1937)」に記載の方法に準拠して合成した。)
・2−ベンジルベンズイミダゾール(「Science of Synthesis,12,529(2002)」に記載の方法に準拠して合成した。)
【0043】
〔参考例1〕
<4−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾールの合成>
2−シアノチオフェン51.0g(0.467mol)および脱水エタノール22.6g(0.491mol)を脱水ジクロロメタン25gに溶解し、氷冷下4〜10℃にて、塩化水素ガス27.4g(0.752mol)を2時間かけて吹き込んだ。同温度にて撹拌を続けると、約2時間後に結晶が析出した。
この反応液を5℃に温調した冷蔵庫内に3日間放置した後、溶媒を減圧留去して、暗赤色結晶性塊状の2−チオフェンイミド酸エチル塩酸塩89.0g(0.464mol、収率99.4%)を得た。
この2−チオフェンイミド酸エチル塩酸塩を粉砕した後、脱水エタノール80gにアンモニア13.6g(0.799mol)を吸収させたエタノール溶液を、氷冷下にて少量ずつ注ぎ加えた後に4時間撹拌し、更に室温に戻して一晩撹拌した。
反応懸濁液から溶媒を減圧留去し、固体濃縮物をヘキサン−ジクロロメタン(2:1体積比)混合液300mlにて洗浄後、減圧下にて乾燥し、微暗桃色粉末状の2−チオフェンカルボキサミジン塩酸塩72.0g(0.443mol、収率94.8%対2−シアノチオフェン)を得た。
この2−チオフェンカルボキサミジン塩酸塩24.4g(0.150mol)、炭酸カリウム54.0g(0.391mol)とN,N−ジメチルアセトアミド81gからなる懸濁液を50℃にて15分間撹拌後、2−ブロモアセトフェノン29.9g(0.150mol)とトルエン75gからなる溶液を、50〜55℃にて40分間かけて滴下し、70℃にて3.5時間撹拌した。
この反応懸濁液を冷却後、水500mlにて2回洗浄し、トルエン層に析出した固形分を濾取した。取り出したケーキをトルエンと水で順次洗浄し、減圧下にて乾燥して黄褐色粉末18.1g(粗収率53.3%)を得た。
この粉末をアセトニトリルより再結晶して、クリーム色結晶状の標題のイミダゾール化合物12.8g(0.0566mol、収率37.7%)を得た。
【0044】
〔参考例2〕
<4−(1−ナフチル)−2−(2−チエニル)イミダゾールの合成>
参考例1の2−ブロモアセトフェノンを2−ブロモ−1′−アセトナフトンに代えて、参考例1の方法に準拠して標題のイミダゾール化合物を合成した。
【0045】
〔参考例3〕
<5−メチル−4−(2−ナフチル)−2−(2−チエニル)イミダゾールの合成>
参考例1の2−ブロモアセトフェノンを2−ブロモ−2′−プロピオナフトンに代えて、参考例1の方法に準拠して標題のイミダゾール化合物を合成した。
【0046】
〔参考例4〕
<4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニル)イミダゾールの合成>
参考例1の2−ブロモアセトフェノンを2−ブロモ−3′,4′−ジクロロプロピオフェノンに代えて、参考例1の方法に準拠して標題のイミダゾール化合物を合成した。
【0047】
〔参考例5〕
<4−(3,4−ジクロロフェニル)−5−メチル−2−(2−チエニルメチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1の2−シアノチオフェンを2−チオフェンアセトニトリルに代えて、参考例1の方法に準拠して2−チエニルアセトアミジン塩酸塩を合成した。
次いで、参考例1の2−チオフェンカルボキサミジン塩酸塩を2−チエニルアセトアミジン塩酸塩に代えて、2−ブロモアセトフェノンを2−ブロモ−3′,4′−ジクロロプロピオフェノンに代えて、参考例1の方法に準拠して標題のイミダゾール化合物を合成した。
【0048】
実施例および比較例で採用した評価試験方法は、以下のとおりである。
【0049】
[金表面の外観の評価試験]
試験片として、10mm×30mmのサイズの銅と、40mm×30mmのサイズの金(注:銅表面に4μmのニッケルメッキを形成し、その上に0.07μmの金メッキを形成したもの)とを有し、前記銅と金が銅回路により導通したパターンを有する65mm×50mm×1.6mm厚のガラスエポキシ樹脂製のプリント配線板を使用した。
この試験片を脱脂した後、ソフトエッチング、水洗、水切りを行った。次いで、試験片を所定の液温に保持した表面処理液に所定時間揺動浸漬した後、水洗、水切り、乾燥して、銅表面に厚さ約0.1〜0.4μmの化成皮膜を形成させた。この際、表面処理液に酢酸銅を銅イオン濃度が10ppmとなるように添加した(注:プリント配線板からの銅イオンの溶出を想定)。
この表面処理を行った試験片について、目視により金表面を観察して、金表面の変色の程度を評価した。
金表面の変色の程度は、下記の基準で評価した。
○:変色していない。
×:変色している。
金表面の変色が少ない程、金表面への化成皮膜の形成が抑制されていると判定される。
【0050】
[半田上がり性の評価試験]
試験片として、内径0.80mmの銅スルホールを300穴有する120mm(縦)×150mm(横)×1.6mm(厚み)のガラスエポキシ樹脂製のプリント配線板を使用した。
この試験片を脱脂した後、ソフトエッチング、水洗、水切りを行った。次いで、試験片を所定の液温に保持した表面処理液に所定時間揺動浸漬した後、水洗、水切り、乾燥して、銅表面に厚さ約0.1〜0.4μmの化成皮膜を形成させた。
この表面処理を行った試験片について、赤外線リフロー装置(製品名:MSAR−200N2H、弘輝テック社製)を用いて、ピーク温度が245℃であるリフロー加熱を3回行った。その後、フロー半田付け装置(コンベア速度:1.0m/分)を用いて半田付けを行った。
なお、使用した半田は、96.5Sn-3.0Ag-0.5Cu(重量%)の組成を有する無鉛半田(商品名:M705「エコソルダー」、千住金属工業製)であり、半田付けに際して使用したフラックスはJS−E−09(弘輝製)である。また、半田温度は245℃とした。
得られた試験片について、銅スルーホールの上部ランド部分まで半田が上がった(半田付けされた)スルーホール数を計測し、全スルーホール数(300穴)に対する割合(%)を算出した。
銅の表面に対して半田の濡れ性が大きい程、溶融した半田が銅スルーホール内を浸透し該スルーホールの上部ランド部分まで上がり易くなる。即ち、全スルーホール数に対する上部ランド部分まで半田が上がったスルーホール数の割合が大きい程、銅に対する半田濡れ性が優れ、半田付け性が良好なものと判定される。
【0051】
[半田広がり性の評価試験]
試験片として、50mm(縦)×50mm(横)×1.2mm(厚み)のガラスエポキシ樹脂製のプリント配線板(回路パターンとして、銅箔からなる導体幅0.80mm、長さ20mmの回路部を、1.0mmの間隔にて幅方向に10本形成させたもの)を使用した。
この試験片を脱脂した後、ソフトエッチング、水洗、水切りを行った。次いで、試験片を所定の液温に保持した表面処理液に所定時間揺動浸漬した後、水洗、水切り、乾燥して、銅表面に厚さ約0.1〜0.4μmの化成皮膜を形成させた。
この表面処理を行った試験片について、赤外線リフロー装置(製品名:MSAR−200N2H、弘輝テック社製)を用いて、ピーク温度が245℃であるリフロー加熱を1回行った。その後、開口径1.2mm、厚み150μmのメタルマスクを使用して銅回路部の中央に、96.5Sn-3.0Ag-0.5Cu(重量%)からなる組成の無鉛半田系クリーム半田(商品名:M705−221BM5−42−11、千住金属工業製)を印刷し、前記条件でリフロー加熱を行い、半田付けを行った。
得られた試験片について、銅回路部上に濡れ広がった半田の長さ(mm)を測定した。
この長さが大きい程、半田濡れ性が優れ、半田付け性が良好なものと判定される。
【0052】
〔実施例1〕
イミダゾール化合物として4−フェニル−2−(2−チエニル)イミダゾール、鉄化合物として塩化鉄(II)・4水和物、キレート剤として1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、酸として酢酸、ハロゲン化合物として塩化アンモニウムおよびヨウ化アンモニウムを、表1記載の組成になるようにイオン交換水に溶解させた後、アンモニア水でpH4.0に調整して、表面処理液を調製した。
次いで、各試験片を40℃に設定した表面処理液に60秒間揺動浸漬したのち、水洗、水切り、乾燥し、金表面の外観、半田上がり性および半田広がり性の評価試験を行った。これらの試験結果は表1に示したとおりであった。
【0053】
〔実施例2〜5〕
実施例1と同様にして、表1記載の組成を有する表面処理液を調製し、表1に記載の処理条件にて表面処理を行った。得られた試験片について、金表面の外観、半田上がり性および半田広がり性の評価試験を行った。これらの試験結果は表1に示したとおりであった。
【0054】
【表1】
【0055】
〔比較例1〜5〕
実施例1と同様にして、表1記載の組成を有する表面処理液を調製し、表1に記載の処理条件にて表面処理を行った。得られた試験片について、金表面の外観、半田上がり性および半田広がり性を測定した。これらの試験結果は表1に示したとおりであった。
【0056】
本発明の表面処理液は、銅の表面に、耐熱性および半田付け性に優れた化成皮膜を形成し、且つ、異種金属上への化成皮膜の形成を抑制して変色を抑えることができる。
また、無鉛半田を用いた半田付けの際に好適に使用し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、半田を使用して電子部品等をプリント配線板に接合する際に、プリント配線板の回路部等を構成する銅または銅合金の表面に、耐熱性および半田との濡れ性に優れた化成皮膜を形成させることによって、半田付け性を良好なものとする表面処理液、表面処理方法ならびに半田付け方法を提供することができる。