特許第5985380号(P5985380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985380
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】継足し用治具装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   F16H19/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-274933(P2012-274933)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-119041(P2014-119041A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124188
【氏名又は名称】加茂精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(72)【発明者】
【氏名】福岡 佑介
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−028259(JP,A)
【文献】 特開2012−202421(JP,A)
【文献】 特開2004−114865(JP,A)
【文献】 実開昭53−055201(JP,U)
【文献】 米国特許第05347880(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/02
F16H 19/04
F16H 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する部分に雌ねじ部を形成した複数の分割歯車をベース台に沿って並べて継足す際に用いる継足し用治具装置において、
前記複数の分割歯車のうち、隣接する一方の分割歯車に噛合する第1噛合突子および他方の分割歯車に噛合する第2噛合突子を有するとともに、前記一方の分割歯車の前記雌ねじ部および前記他方の分割歯車の前記雌ねじ部にそれぞれ対応し、前記第1噛合突子および前記第2噛合突子と平行となるように貫通形成された挿通孔を有する治具本体と、
前記挿通孔に余剰間隙が生じるように遊嵌状態に挿入されて、外側周部が前記雌ねじ部に仮止め状態に螺合する雄ねじ部を有する取付ボルトと、
前記治具本体の前記分割歯車に近接する外側面で前記挿通孔に対して垂直となる方向から連通するように形成された雌ねじ孔に螺進退可能に螺合させた螺子とを備え、
前記隣接する分割歯車を前記ベース台に本止めする前に、前記治具本体を前記隣接する分割歯車の外側面上にセットした後、前記螺子を前記雌ねじ孔に螺進させて、前記螺子が前記取付ボルトの側面部を押圧することにより、前記治具本体が前記余剰間隙を介して前記分割歯車の中心方向に引き込まれて、前記第1噛合突子および前記第2噛合突子が前記一方の分割歯車の歯面および前記他方の分割歯車の歯面にそれぞれ圧接するように構成したことを特徴とする継足し用治具装置。
【請求項2】
互いに隣接する部分に雌ねじ部を形成した複数の分割歯車をベース台に沿って並べて継足す際に用いる継足し用治具装置において、
前記複数の分割歯車のうち、隣接する一方の分割歯車に噛合する第1噛合突子および他方の分割歯車に噛合する第2噛合突子を有するとともに、前記一方の分割歯車の前記雌ねじ部および前記他方の分割歯車の前記雌ねじ部にそれぞれ対応し、前記第1噛合突子および前記第2噛合突子と平行となるように貫通形成された挿通孔を有する治具本体と、
前記治具本体は、前記分割歯車の外側面に沿い、前記挿通孔を有する側辺部と前記側辺部の一端部に形成された立起辺部とにより断面L字状に形成された板材から成っていることと、
前記治具本体の前記挿通孔に余剰間隙が生じるように遊嵌状態に挿入され、先端部に前記雌ねじ部が螺合する雄ねじ部を有する取付ボルトと、
前記治具本体の前記立起辺部に形成された雌ねじ孔に螺進退可能に螺合され、先端面を前記取付ボルトの頭部の外側面に当接させる螺子とを備え、
前記隣接する分割歯車を前記ベース台に本止めする前に、前記治具本体を前記隣接する分割歯車の外側面上にセットした後、前記螺子を前記雌ねじ孔に螺進させて、前記螺子が前記取付ボルトの前記頭部の外側面を押圧することにより、前記治具本体が前記余剰間隙を介して前記分割歯車の中心方向に引き込まれて、前記第1噛合突子および前記第2噛合突子が前記一方の分割歯車の歯面および前記他方の分割歯車の歯面にそれぞれ圧接するように構成したことを特徴とする継足し用治具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分割歯車をベース台上に並べて継足す際に用いる継足し用治具装置に係り、とりわけ、分割歯車を簡単な操作で素早く継ぎ足せるように改良した継足し用治具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックとピニオンとを組合せた作動機構は、「ラックアンドピニオン式ステアリング」や「ラックまたはギアの構造」として知られている(例えば特許文献1、2参照)。
特許文献1では、ばねを付勢手段として設け、作動機構の作動時にラックとピニオン間の距離が変動すると、ラックの変位をラックガイドの回動により吸収し、ラックガイドの摩擦量を低減している。
特許文献2のギアでは、歯先面よりも低い位置まで弾性部材を設け、ギアがラックに噛み合う時、ギアが弾性部材を介してラックの歯に噛み合うように構成し、異音や振動の発生を抑制している。
【0003】
また、特許文献3はラック・ピニオンの回転伝達装置に関し、ラックがロボットの走行、あるいはストッカー搬送や洗浄ライン搬送など長いストロークに適用された場合、複数から成る単体のラックを継ぎ足しながら一直線状に並べて使用することを開示している。この回転伝達装置では、ラックを一直線状に並べて継足す際、把持本体を把持しながらピンをラック歯に強く当接させる方向に押し当てる必要があるため、ピンをラック歯に強く係合させる操作が煩わしく、両者を素早くかつ確実に噛合させることが難しくなり、使い勝手が悪いという不都合がある。
【0004】
この不都合をなくしたものとして、特許文献4に開示された継足し用治具装置がある。この継足し用治具装置では、複数のラック体を長手方向に沿って一直線に継ぎ足している。近年、天体観測所に据え付けられた望遠鏡を旋回駆動するものとして、幾つもの分割リングを円周上に沿って繋ぎ合せて、差渡し幅が数メートルにもなる大径平歯車を組み付ける必要に迫られている。特許文献4では、複数の分割リングを繋ぎ合せて大径平歯車を組み付ける継足し用治具としては実用性に乏しかった。
これに代わるものとして、図5に示す継足し用治具50が登場している。継足し用治具50では、図5(a)に示すように、左右の分割リング51、52をベース53上で繋ぐ時、図5(b)に示すように、治具本体54のピン55を分割リング51、52の歯面51a、52aに当接させる。この状態で、固定ボルト56を治具本体54の挿通孔54aに通してねじ込むと、固定ボルト56の先端に形成された雄ねじ部56aがベース53の立上り部53aに設けられた雌ねじ部53bに螺合する。
【0005】
これにより、ピン55が矢印P方向に引き込まれて分割リング51、52の歯面51a、52aに強く密着し、分割リング51、52同士が所定のピッチ間隔を保ちながら連結状態に繋がる。この操作後に、取付ボルト57により分割リング51、52がベース53に本止め状態に固定されて分割リング51、52同士の継足し操作が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−34354号公報
【特許文献2】特開2000−65176号公報
【特許文献3】特開平10−184842号公報
【特許文献4】特開2012−202421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図5(b)に示す継足し用治具50では、固定ボルト56を通す挿通孔54aは治具本体54に形成され、雄ねじ部56aが螺合する雌ねじ部53bは、ベース53の立上り部53aに設けられている。
すなわち、挿通孔54aと雌ねじ部53bとは、分割リング51、52に隔てられた配置となるため、固定ボルト56が長尺になって継足し用治具50が大型化するとともに、挿通孔54aを介して雌ねじ部53bに螺合させる固定ボルト56の締付け操作が煩雑になり、ひいては分割リング51、52の継足し作業性が低下する虞がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は複数の分割歯車をベース台に並べて継足す際、簡単な操作で複数の分割歯車の歯面に第1噛合突子および第2噛合突子を素早く且つ正確に圧接させることができて、使い勝手がよくなるとともに、継足し操作が迅速になり作業性が向上する継足し用治具装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1について)
互いに隣接する部分に雌ねじ部を形成した複数の分割歯車をベース台に沿って並べて継足す際に用いる継足し用治具装置において、治具本体には、複数の分割歯車のうち、隣接する一方の分割歯車に噛合する第1噛合突子および他方の分割歯車に噛合する第2噛合突子が設けられているとともに、一方の分割歯車の雌ねじ部および他方の分割歯車の雌ねじ部にそれぞれ対応し、第1噛合突子および第2噛合突子と平行となるように貫通形成された挿通孔を有する。
取付ボルトは、挿通孔に余剰間隙が生じるように遊嵌状態に挿入されて、外側周部が雌ねじ部に仮止め状態に螺合する雄ねじ部を有する。
螺子は、治具本体の分割歯車に近接する外側面で挿通孔に対して垂直となる方向から連通するように形成された雌ねじ孔に螺進退可能に螺合している。
隣接する分割歯車をベース台に本止めする前に、治具本体を隣接する分割歯車の外側面上にセットした後、螺子を雌ねじ孔に螺進させて、螺子が取付ボルトの外周側部を押圧することにより、治具本体が余剰間隙を介して分割歯車の中心方向に引き込まれて、第1噛合突子および第2噛合突子が一方の分割歯車の歯面および他方の分割歯車の歯面にそれぞれ圧接する。
【0010】
請求項1では、第1噛合突子および第2噛合突子が一方の分割歯車の歯面および他方の分割歯車の歯面にそれぞれ圧接することにより、分割歯車同士が互いの配置を調整されて正規の位置で所定のピッチ間隔を保ちながら連結状態に繋がる。
この際、治具本体と分割歯車とは隣接関係にあり、挿通孔は治具本体に設けられ、雌ねじ部は分割歯車に形成されているので、短尺な取付ボルトで挿通孔から雌ねじ部に螺合させることができ、全体のコンパクトが図られて継足し用治具装置の小型化に寄与することができる。
【0011】
また、第1噛合突子(第2噛合突子)を一方の分割歯車の歯面(他方の分割歯車の歯面)に圧接させる際、螺子を雌ねじ孔に螺進させて取付ボルトの外周側部に押圧させる簡単な操作で済むため、使い勝手がよくなるとともに、継足し操作を短時間で素早く終えることができて継足し作業性が大幅に向上する。
しかも、螺子の螺進量は余剰間隙の幅寸法でよいため、螺子が短尺になり、螺子の迅速な螺進操作が得られ、この点からも、継足し用治具装置の小型化および継足し作業性の向上に寄与する。
【0012】
(請求項2について)
互いに隣接する部分に雌ねじ部を形成した複数の分割歯車をベース台に沿って並べて継足す際に用いる継足し用治具装置において、治具本体には、複数の分割歯車のうち、隣接する一方の分割歯車に噛合する第1噛合突子および他方の分割歯車に噛合する第2噛合突子を設けるとともに、一方の分割歯車の雌ねじ部および他方の分割歯車の雌ねじ部にそれぞれ対応し、第1噛合突子および第2噛合突子と平行となるように貫通形成された挿通孔を設けている。この治具本体は、分割歯車の外側面に沿い、挿通孔を有する側辺部と側辺部の一端部に形成した立起辺部とにより断面L字状に形成された板材から成る。
。取付ボルトは、治具本体の挿通孔に余剰間隙が生じるように遊嵌状態に挿入され、前端部に雌ねじ部が螺合する雄ねじ部を有する。
螺子は、治具本体の立起辺部に形成された雌ねじ孔に螺進退可能に螺合され、先端面を取付ボルトの頭部の外側面に当接させている。
隣接する分割歯車をベース台に本止めする前に、治具本体を隣接する分割歯車の外側面上にセットした後、螺子を雌ねじ孔に螺進させて、螺子が取付ボルトの頭部の外側面を押圧することにより、治具本体が余剰間隙を介して分割歯車の中心方向に引き込まれて位置ずれし、第1噛合突子および第2噛合突子が一方の分割歯車の歯面および他方の分割歯車の歯面にそれぞれ圧接する。
【0013】
請求項2では、第1噛合突子および第2噛合突子が一方の分割歯車の歯面および他方の分割歯車の歯面にそれぞれ圧接することにより、分割歯車同士が互いの配置を調整されて正規の位置で所定のピッチ間隔を保ちながら連結状態に繋がる。
この際、治具本体と分割歯車とは隣接関係にあり、挿通孔は治具本体に設けられ、雌ねじ部は分割歯車に形成されているので、短尺な取付ボルトで挿通孔から雌ねじ部に螺合させることができ、全体のコンパクトが図られて継足し用治具装置の小型化に寄与することができる。
治具本体は断面L字状の板材であるため、例えば板材の板厚を小さくすることにより、継足し用治具装置の小型化および軽量化に資することができる。
【0014】
また、第1噛合突子(第2噛合突子)を一方の分割歯車の歯面(他方の分割歯車の歯面)に圧接させる際、螺子を雌ねじ孔に螺進させて取付ボルトの頭部の外側面に押圧させるといった簡単な操作で済むため、使い勝手がよくなるとともに、継足し操作を短時間で素早く終えることができて継足し作業性が大幅に向上する。
しかも、螺子の螺進量は余剰間隙の幅寸法に等しい大きさでよいため、螺子が短尺で済み、螺子の迅速な螺進操作が得られ、この点からも、継足し用治具装置の小型化および継足し作業性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ピン・ピニオン、分割歯車および継足し用治具装置を示す分解斜視図である(実施例1)。
図2】(a)、(b)は分割歯車に装着する手順を示す継足し用治具装置の縦断面図、(c)は(b)のK−K線に沿う縦断面図である(実施例1)。
図3】分割歯車に装着した継足し用治具装置の上面図である(実施例1)。
図4】(a)、(b)は分割歯車に装着する手順を示す継足し用治具装置の縦断面図、(c)は(b)のJ−J線に沿う縦断面図である(実施例2)。
図5】(a)は分割リングに装着した継足し用治具を示す正面図、(b)は(a)のS−S線に沿う縦断面図である(従来技術)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の継足し用治具装置では、所定のピッチ間隔を保ちながら複数の分割歯車を簡単な操作でベース台上に並べて継足す構成を各実施例により具体化する。
【実施例】
【0017】
〔実施例1の構成〕
図1ないし図3に基づいて本発明の実施例1を説明する。以後の説明において、特に断らない限り、各部材の位置および方向の特定は、各実施例を通して対応する図面の左右および上下方向に従う。
図1に示す継足し用の分割歯車1、2は、継足し用治具装置3により継ぎ足しされる分割リングとして複数個設けられている。これら分割歯車1、2は、後述するようにベース台4上で隣接間隙Lとして僅かな間隔を余して繋ぎわされて、差渡し幅が数メートルに達する大径の平歯車(図示せず)を形成する。
大径の平歯車は大型の旋回軸に取り付けられて、天体観測所の望遠鏡の旋回駆動などに用いられるものである。分割歯車1、2には、例えば円盤5、6の間に複数のピン7を設けたピン・ピニオン8が噛合し、大径の平歯車を回転駆動するための歯車として用いられる。
【0018】
分割歯車1、2は互いに隣接しており、隣接する部分に雌ねじ部9、10を形成している。治具本体11は、細長な矩形体状を成して分割歯車1、2の外側面上にセットされるものである。治具本体11には、隣接する一方の分割歯車1に噛合する第1ピン突子12、13および他方の分割歯車2に噛合する第2ピン突子14、15がそれぞれ噛合突子として縦型に設けられている。
治具本体11には、分割歯車1の雌ねじ部9および分割歯車2の雌ねじ部10にそれぞれ対応し、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15と平行となるように貫通形成された挿通孔16、17が設けられている。
第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15については、治具本体11に一体的に形成してもよく、別体のものを治具本体11に対して上下方向(垂直方向)に指向する状態に固着してもよい。
【0019】
取付ボルト18、19は、図2(a)に示すように、挿通孔16、17よりも僅かに径小に形成され、図2(b)に示すように、挿通孔16、17に余剰間隙Gがそれぞれ生じるように遊嵌状態に挿入されている。取付ボルト18、19の各外側周部には、雌ねじ部9、10に仮止め状態に螺合する雄ねじ部18a、19aを有する。余剰間隙Gは、取付ボルト18、19の直径H1と挿通孔16、17の直径H2との径寸法差H3に等しい(H3=|H1−H2|)。
この場合、取付ボルト18、19は、合成樹脂製のワッシャ18b、19bを介して挿通孔16、17を通して雌ねじ部9、10に螺合されているが、仮止め状態であるので、取付ボルト18、19の頭部18c、19cは、ワッシャ18b、19bの表面を軽く押圧し、ワッシャ18b、19bの裏面を治具本体11の外表面に緩く接触させている。
【0020】
雌ねじ孔20、21は、治具本体11の分割歯車1、2に近接する外側面において、図2(a)〜図2(c)に示すように、挿通孔16、17に対して垂直となる方向Wから連通するように形成されている。挿通孔16、17には、螺子22、23が垂直となる方向Wに沿って螺進退可能に螺合している(図2(b)、(c)参照)。
【0021】
分割歯車1、2をベース台4に本止めする前、すなわち、固定ボルト24、25を用いて分割歯車1、2をベース台4に仮止めしておき、治具本体11を分割歯車1、2の外側面上にセットした後、螺子22、23を雌ねじ孔20、21に螺進させて、螺子22、23が取付ボルト18、19の外周側部を横フォースにより押圧する(押圧工程)。
これにより、治具本体11が余剰間隙Gを介して分割歯車1、2の中心方向Eに引き込まれるように位置ずれし、図3に示すように、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15が一方の分割歯車1の歯面1bおよび他方の分割歯車2の歯面2bにそれぞれ圧接する(圧接工程)。
【0022】
圧接工程の終了後、固定ボルト24、25をベース螺子孔4a、4bに螺合させることにより、分割歯車1、2をベース台4に本止めし、螺子22、23を緩めるとともに、取付ボルト18、19を緩めて、治具本体11を分割歯車1、2から取り外す。
継足し用治具装置3を用いて、この操作を分割歯車1、2に近接する他の分割歯車(図示せず)に対して複数回にわたって繰り返すことにより、大径の平歯車を組み付けることができる。
【0023】
〔実施例1の効果〕
実施例1では、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15が一方の分割歯車1の歯面1bおよび他方の分割歯車2の歯面2bにそれぞれ圧接することにより、分割歯車1、2同士が互いの配置を調整されて正規の位置で所定のピッチ間隔Tを保ちながら連結状態に繋がる。
この際、治具本体11と分割歯車1、2とは隣接関係にあり、挿通孔16、17は治具本体11に設けられ、雌ねじ部9、10は分割歯車1、2に形成されている。
このため、短尺な取付ボルト18、19で挿通孔16、17から雌ねじ部9、10に螺合させることができ、全体のコンパクト化が図られて継足し用治具装置3の小型化に寄与することができる。
【0024】
また、第1ピン突子12、13(第2ピン突子14、15)を一方の分割歯車1の歯面1b(他方の分割歯車2の歯面2b)に圧接させる際、螺子22、23を雌ねじ孔20、21に螺進させて取付ボルト18、19の外周側部に押圧させる簡単な操作で済むため、使い勝手がよくなるとともに、継足し操作を短時間で素早く終えることができて継足し作業性が大幅に向上する。
しかも、螺子22、23の螺進量は余剰間隙Gの幅寸法に等しい大きさでよいため、螺子22、23が短尺になり、螺子22、23の迅速な螺進操作が得られ、この点からも、継足し用治具装置3の小型化および継足し作業性の向上に寄与する。
【0025】
また、取付ボルト18、19の頭部18c、19cと治具本体11の挿通孔16、17との間には、合成樹脂製のワッシャ18b、19bを介在させている。
ワッシャ18b、19bは表面の摩擦が小さいため、治具本体11が余剰間隙Gを介して分割歯車1、2の中心方向Eに引き込まれる際、治具本体11がワッシャ18b、19bに沿って位置ずれし易くなり、継足し操作を促進する効果が得られる。
【0026】
〔実施例2の構成〕
図4は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、治具本体11を断面L字状の板材28から形成したことである。
治具本体11の板材28は、図4(a)に示すように、分割歯車1、2の外側面に沿う側辺部28aと側辺部28aの一端部を立て起こして一体に曲成した立起辺部28bとから成る。立起辺部28bは、側辺部28aの一端部に別体に立設されたものでもよい。
【0027】
取付ボルト18、19は、治具本体11の挿通孔16、17に余剰間隙Gが生じるように遊嵌状態に挿入され、雄ねじ部18a、19aの前端部が雌ねじ部9、10に螺合する。螺子30は、治具本体11の立起辺部28bに形成された雌ねじ孔29に螺進退可能に螺合され、先端面30aを取付ボルト18、19における頭部18c、19cの外側面18d、19dに当接させている。
【0028】
分割歯車1、2をベース台4に本止めする前に、治具本体11を分割歯車1、2の外側面上にセットしてから、螺子30を雌ねじ孔29に螺進させて、螺子30が頭部18c、19cの外側面18d、19dを横フォースにより押圧する。
これにより、図4(b)、(c)に示すように、治具本体11が余剰間隙Gを介して分割歯車1、2の中心方向Eに引き込まれて位置ずれし、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15が一方の分割歯車1の歯面1bおよび他方の分割歯車2の歯面2bにそれぞれ圧接する。
【0029】
〔実施例2の効果〕
実施例2では、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15が一方の分割歯車1の歯面1bおよび他方の分割歯車2の歯面2bにそれぞれ圧接することにより、分割歯車1、2同士が互いの配置を調整されて正規の位置で所定のピッチ間隔Tを保ちながら連結状態に繋がる。
【0030】
この際、治具本体11と分割歯車1、2とは隣接関係にあり、挿通孔16、17は治具本体11に設けられ、雌ねじ部9、10は分割歯車1、2に形成されているので、短尺な取付ボルト18、19で挿通孔16、17から雌ねじ部9、10に螺合させることができ、全体のコンパクト化が図れて継足し用治具装置3の小型化に寄与することができる。
治具本体11は断面L字状の板材28であるため、例えば板材の板厚を小さくすることにより、継足し用治具装置3の小型化および軽量化に資することができる。
【0031】
また、第1ピン突子12、13(第2ピン突子14、15)を一方の分割歯車1の歯面1b(他方の分割歯車2の歯面2b)に圧接させる際、螺子30を雌ねじ孔29に螺進させて、取付ボルト18、19における頭部18c、19cの外側面18d、19dに押圧させる簡単な操作で済むため、使い勝手がよくなるとともに、継足し操作を短時間で素早く終えることができて継足し作業性が大幅に向上する。
しかも、螺子30の螺進量は余剰間隙Gの幅寸法に等しい大きさでよいため、螺子30が短尺で済み、螺子30の迅速な螺進操作が得られ、この点からも、継足し用治具装置3の小型化および継足し作業性の向上に寄与する。
【0032】
〔変形例〕
(a)実施例1〜4に係る第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15については、治具本体11と別体でも一体的に形成してもよい。
噛合突子としては、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15に限らず、分割歯車1、2の歯面1b、2bに噛合する歯形を有する歯形突子であってもよい。
【0033】
(b)分割歯車1、2は、大径の平歯車を構成するものに限らず、上面に多数の歯部を形成した長尺なラックを構成する複数のラック体であってもよい。
(c)実施例1において、第1ピン突子12、13(第2ピン突子14、15)を一方の分割歯車1の歯面1b(他方の分割歯車2の歯面2b)に圧接させて、取付ボルト18、19を横フォースにより押圧して移動させる際、螺子22、23に求められる螺進量は、螺子22、23に加わるトルク値により決定してもよい。実施例2の螺子30についても同様である。
【0034】
(d)ワッシャ18b、19bに適用する合成樹脂には、一般のプラスチック材料が適用でき、ポリウレタンやゴムの他にポリアセタール、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)あるいはシンジオタクチックポリスチレン(SPS)などを適用してもよい。
ワッシャ18b、19bについては、合成樹脂の代わりに、摺動性の優れた金属や、炭素繊維で補強した炭素繊維補強金属(CFRM)、あるいはC/CコンポジットにSi、Al、Cu、Tiなどの溶融金属を充填して再複合させたカーボン・金属複合体(C/C−MC)を用いて形成してもよい。
【0035】
(e)第1ピン突子12、13(第2ピン突子14、15)および治具本体11は、ステンレススチール鋼などの金属体であってもよく、上記の種類から選択した合成樹脂体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の継足し治具装置では、複数の分割歯車をベース台に並べて継ぎ足す際、簡単な操作で、隣接する分割歯車の歯面に第1ピン突子および第2ピン突子を素早く且つ正確に圧接させることができて、使い勝手がよくなるとともに、継足し操作が迅速になり作業性が向上する。これにより、分割歯車の継足し作業に、高い性能や効率化を求める需要者を喚起し、関連部品の流通を介して機械産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1、2 分割歯車(分割リング)
1b、2b 分割歯車の歯面
3 継足し用治具装置
4 ベース台
8 ピン・ピニオン
9、10 分割歯車の雌ねじ部
11 治具本体
12、13 第1ピン突子(第1噛合突子)
14、15 第2ピン突子(第2噛合突子)
16、17 治具本体の挿通孔
18、19 取付ボルト
18a、19a 取付ボルトの雄ねじ部
18b、19b ワッシャ
18c、19c 取付ボルトの頭部
18d、19d 取付ボルトの頭部の外側面
20、21 治具本体の雌ねじ部
22、23 治具本体への螺子
28 板材
28a 板材の側辺部
28b 板材の立起辺部
29 立起辺部の雌ねじ部
30 雌ねじ部への螺子
30a 螺子の先端面
E 分割歯車の中心方向
W 治具本体の挿通孔に垂直な方向
G 取付ボルトと挿通孔との間の余剰間隙
T 分割歯車のピッチ間隔
図1
図2
図3
図4
図5