【実施例】
【0017】
〔実施例1の構成〕
図1ないし
図3に基づいて本発明の実施例1を説明する。以後の説明において、特に断らない限り、各部材の位置および方向の特定は、各実施例を通して対応する図面の左右および上下方向に従う。
図1に示す継足し用の分割歯車1、2は、継足し用治具装置3により継ぎ足しされる分割リングとして複数個設けられている。これら分割歯車1、2は、後述するようにベース台4上で隣接間隙Lとして僅かな間隔を余して繋ぎわされて、差渡し幅が数メートルに達する大径の平歯車(図示せず)を形成する。
大径の平歯車は大型の旋回軸に取り付けられて、天体観測所の望遠鏡の旋回駆動などに用いられるものである。分割歯車1、2には、例えば円盤5、6の間に複数のピン7を設けたピン・ピニオン8が噛合し、大径の平歯車を回転駆動するための歯車として用いられる。
【0018】
分割歯車1、2は互いに隣接しており、隣接する部分に雌ねじ部9、10を形成している。治具本体11は、細長な矩形体状を成して分割歯車1、2の外側面上にセットされるものである。治具本体11には、隣接する一方の分割歯車1に噛合する第1ピン突子12、13および他方の分割歯車2に噛合する第2ピン突子14、15がそれぞれ噛合突子として縦型に設けられている。
治具本体11には、分割歯車1の雌ねじ部9および分割歯車2の雌ねじ部10にそれぞれ対応し、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15と平行となるように貫通形成された挿通孔16、17が設けられている。
第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15については、治具本体11に一体的に形成してもよく、別体のものを治具本体11に対して上下方向(垂直方向)に指向する状態に固着してもよい。
【0019】
取付ボルト18、19は、
図2(a)に示すように、挿通孔16、17よりも僅かに径小に形成され、
図2(b)に示すように、挿通孔16、17に余剰間隙Gがそれぞれ生じるように遊嵌状態に挿入されている。取付ボルト18、19の各外側周部には、雌ねじ部9、10に仮止め状態に螺合する雄ねじ部18a、19aを有する。余剰間隙Gは、取付ボルト18、19の直径H1と挿通孔16、17の直径H2との径寸法差H3に等しい(H3=|H1−H2|)。
この場合、取付ボルト18、19は、合成樹脂製のワッシャ18b、19bを介して挿通孔16、17を通して雌ねじ部9、10に螺合されているが、仮止め状態であるので、取付ボルト18、19の頭部18c、19cは、ワッシャ18b、19bの表面を軽く押圧し、ワッシャ18b、19bの裏面を治具本体11の外表面に緩く接触させている。
【0020】
雌ねじ孔20、21は、治具本体11の分割歯車1、2に近接する外側面において、
図2(a)〜
図2(c)に示すように、挿通孔16、17に対して垂直となる方向Wから連通するように形成されている。挿通孔16、17には、螺子22、23が垂直となる方向Wに沿って螺進退可能に螺合している(
図2(b)、(c)参照)。
【0021】
分割歯車1、2をベース台4に本止めする前、すなわち、固定ボルト24、25を用いて分割歯車1、2をベース台4に仮止めしておき、治具本体11を分割歯車1、2の外側面上にセットした後、螺子22、23を雌ねじ孔20、21に螺進させて、螺子22、23が取付ボルト18、19の外周側部を横フォースにより押圧する(押圧工程)。
これにより、治具本体11が余剰間隙Gを介して分割歯車1、2の中心方向Eに引き込まれるように位置ずれし、
図3に示すように、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15が一方の分割歯車1の歯面1bおよび他方の分割歯車2の歯面2bにそれぞれ圧接する(圧接工程)。
【0022】
圧接工程の終了後、固定ボルト24、25をベース螺子孔4a、4bに螺合させることにより、分割歯車1、2をベース台4に本止めし、螺子22、23を緩めるとともに、取付ボルト18、19を緩めて、治具本体11を分割歯車1、2から取り外す。
継足し用治具装置3を用いて、この操作を分割歯車1、2に近接する他の分割歯車(図示せず)に対して複数回にわたって繰り返すことにより、大径の平歯車を組み付けることができる。
【0023】
〔実施例1の効果〕
実施例1では、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15が一方の分割歯車1の歯面1bおよび他方の分割歯車2の歯面2bにそれぞれ圧接することにより、分割歯車1、2同士が互いの配置を調整されて正規の位置で所定のピッチ間隔Tを保ちながら連結状態に繋がる。
この際、治具本体11と分割歯車1、2とは隣接関係にあり、挿通孔16、17は治具本体11に設けられ、雌ねじ部9、10は分割歯車1、2に形成されている。
このため、短尺な取付ボルト18、19で挿通孔16、17から雌ねじ部9、10に螺合させることができ、全体のコンパクト化が図られて継足し用治具装置3の小型化に寄与することができる。
【0024】
また、第1ピン突子12、13(第2ピン突子14、15)を一方の分割歯車1の歯面1b(他方の分割歯車2の歯面2b)に圧接させる際、螺子22、23を雌ねじ孔20、21に螺進させて取付ボルト18、19の外周側部に押圧させる簡単な操作で済むため、使い勝手がよくなるとともに、継足し操作を短時間で素早く終えることができて継足し作業性が大幅に向上する。
しかも、螺子22、23の螺進量は余剰間隙Gの幅寸法に等しい大きさでよいため、螺子22、23が短尺になり、螺子22、23の迅速な螺進操作が得られ、この点からも、継足し用治具装置3の小型化および継足し作業性の向上に寄与する。
【0025】
また、取付ボルト18、19の頭部18c、19cと治具本体11の挿通孔16、17との間には、合成樹脂製のワッシャ18b、19bを介在させている。
ワッシャ18b、19bは表面の摩擦が小さいため、治具本体11が余剰間隙Gを介して分割歯車1、2の中心方向Eに引き込まれる際、治具本体11がワッシャ18b、19bに沿って位置ずれし易くなり、継足し操作を促進する効果が得られる。
【0026】
〔実施例2の構成〕
図4は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、治具本体11を断面L字状の板材28から形成したことである。
治具本体11の板材28は、
図4(a)に示すように、分割歯車1、2の外側面に沿う側辺部28aと側辺部28aの一端部を立て起こして一体に曲成した立起辺部28bとから成る。立起辺部28bは、側辺部28aの一端部に別体に立設されたものでもよい。
【0027】
取付ボルト18、19は、治具本体11の挿通孔16、17に余剰間隙Gが生じるように遊嵌状態に挿入され、雄ねじ部18a、19aの前端部が雌ねじ部9、10に螺合する。螺子30は、治具本体11の立起辺部28bに形成された雌ねじ孔29に螺進退可能に螺合され、先端面30aを取付ボルト18、19における頭部18c、19cの外側面18d、19dに当接させている。
【0028】
分割歯車1、2をベース台4に本止めする前に、治具本体11を分割歯車1、2の外側面上にセットしてから、螺子30を雌ねじ孔29に螺進させて、螺子30が頭部18c、19cの外側面18d、19dを横フォースにより押圧する。
これにより、
図4(b)、(c)に示すように、治具本体11が余剰間隙Gを介して分割歯車1、2の中心方向Eに引き込まれて位置ずれし、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15が一方の分割歯車1の歯面1bおよび他方の分割歯車2の歯面2bにそれぞれ圧接する。
【0029】
〔実施例2の効果〕
実施例2では、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15が一方の分割歯車1の歯面1bおよび他方の分割歯車2の歯面2bにそれぞれ圧接することにより、分割歯車1、2同士が互いの配置を調整されて正規の位置で所定のピッチ間隔Tを保ちながら連結状態に繋がる。
【0030】
この際、治具本体11と分割歯車1、2とは隣接関係にあり、挿通孔16、17は治具本体11に設けられ、雌ねじ部9、10は分割歯車1、2に形成されているので、短尺な取付ボルト18、19で挿通孔16、17から雌ねじ部9、10に螺合させることができ、全体のコンパクト化が図れて継足し用治具装置3の小型化に寄与することができる。
治具本体11は断面L字状の板材28であるため、例えば板材の板厚を小さくすることにより、継足し用治具装置3の小型化および軽量化に資することができる。
【0031】
また、第1ピン突子12、13(第2ピン突子14、15)を一方の分割歯車1の歯面1b(他方の分割歯車2の歯面2b)に圧接させる際、螺子30を雌ねじ孔29に螺進させて、取付ボルト18、19における頭部18c、19cの外側面18d、19dに押圧させる簡単な操作で済むため、使い勝手がよくなるとともに、継足し操作を短時間で素早く終えることができて継足し作業性が大幅に向上する。
しかも、螺子30の螺進量は余剰間隙Gの幅寸法に等しい大きさでよいため、螺子30が短尺で済み、螺子30の迅速な螺進操作が得られ、この点からも、継足し用治具装置3の小型化および継足し作業性の向上に寄与する。
【0032】
〔変形例〕
(a)実施例1〜4に係る第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15については、治具本体11と別体でも一体的に形成してもよい。
噛合突子としては、第1ピン突子12、13および第2ピン突子14、15に限らず、分割歯車1、2の歯面1b、2bに噛合する歯形を有する歯形突子であってもよい。
【0033】
(b)分割歯車1、2は、大径の平歯車を構成するものに限らず、上面に多数の歯部を形成した長尺なラックを構成する複数のラック体であってもよい。
(c)実施例1において、第1ピン突子12、13(第2ピン突子14、15)を一方の分割歯車1の歯面1b(他方の分割歯車2の歯面2b)に圧接させて、取付ボルト18、19を横フォースにより押圧して移動させる際、螺子22、23に求められる螺進量は、螺子22、23に加わるトルク値により決定してもよい。実施例2の螺子30についても同様である。
【0034】
(d)ワッシャ18b、19bに適用する合成樹脂には、一般のプラスチック材料が適用でき、ポリウレタンやゴムの他にポリアセタール、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)あるいはシンジオタクチックポリスチレン(SPS)などを適用してもよい。
ワッシャ18b、19bについては、合成樹脂の代わりに、摺動性の優れた金属や、炭素繊維で補強した炭素繊維補強金属(CFRM)、あるいはC/CコンポジットにSi、Al、Cu、Tiなどの溶融金属を充填して再複合させたカーボン・金属複合体(C/C−MC)を用いて形成してもよい。
【0035】
(e)第1ピン突子12、13(第2ピン突子14、15)および治具本体11は、ステンレススチール鋼などの金属体であってもよく、上記の種類から選択した合成樹脂体であってもよい。