【文献】
日本材料学会,地盤改良工法便覧,日刊工業新聞社,1991年 7月31日,初版1刷,P.448、449、452、453,表23.4、23.5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
施工機械にて地盤中に管ロッドを所定深度まで挿入し、挿入後、管ロッドより硬化材を高速高圧で噴射し、この硬化材の噴射エネルギーで地盤を切削しながら噴射した硬化材と地盤とを攪拌混合させ、地盤中に固結改良体を造成して地盤を改良するようにした高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において、
管ロッドの先端に横方向の左右両側に突出する水平翼を備え、水平翼に硬化材を噴射する複数の噴射口を横又は縦横両方に並べるように設け、地盤中に管ロッドを挿入後、管ロッドを回転させることなく回転停止状態で、管ロッドの先端の水平翼に設けた複数の噴射口より地盤中に平行な状態で硬化材を高速高圧で直線的に噴射するようにしたことを特徴とする高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法。
管ロッドにおける回転停止状態での硬化材の直線的な噴射を、管ロッドを引き抜き上方に徐々に移動させながら行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法。
地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離と硬化材の噴射時間との関係を求め、この求めた地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離と硬化材の噴射時間との関係に基づいて硬化材の噴射時間を算出し、この算出した硬化材の噴射時間で管ロッドの噴射口より硬化材を地盤中に噴射するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法。
【背景技術】
【0002】
高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法としては、施工機械40にて地盤中に管ロッド41を所定深度まで挿入し、挿入後、
図13に示すように、管ロッド41を回転させて管ロッド41先端の噴射口42よりセメントミルク等の硬化材を高速高圧で噴射し、この硬化材の噴射エネルギーで地盤を切削しながら噴射した硬化材と地盤とを攪拌混合させ、そして、この管ロッド41を回転させながら徐々に上方に引き抜くことにより、地盤中に縦向きの円柱状の固結改良体Tcを造成して地盤を改良するようにしたものが知られていた。
【0003】
一方、このような高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法を利用して既設構造物直下の地盤における作業を行うようにしたものもあった。これは、例えば、
図14(a)に示すように、既設構造物の外側の地上に自在ボーリングマシン43を設置し、この自在ボーリングマシン43に湾曲自在となる管ロッド44を装着し、この管ロッド44を地上から湾曲させながら既設構造物直下の地盤中に横方向から挿入し、管ロッド44より硬化材を噴射して地盤中に横向きの固結改良体Tcを造成して既設構造物直下の地盤を改良するようにしていた。
【0004】
図14(b)に示すように、既設構造物の外側に立坑を掘削し、この立坑内に水平ボーリングマシン45を設置し、この水平ボーリングマシン45に管ロッド46を装着し、この管ロッド46を既設構造物直下の地盤中に横方向から挿入し、管ロッド46より硬化材を噴射して地盤中に横向きの固結改良体Tcを造成して既設構造物直下の地盤を改良するようにしていた。
【0005】
図14(c)に示すように、既設構造物の内部に施工機械40を設置し、この設置した施工機械40により既設構造物の内部にて管ロッド41を既設構造物直下の地盤中に挿入し、管ロッド41より硬化材を噴射して地盤中に縦向きの固結改良体Tcを造成して既設構造物直下の地盤を改良するようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法にあっては、特に既設構造物直下の地盤を改良する際、既設構造物の外側の地上に設置した自在ボーリングマシン及び湾曲自在となる管ロッドを使用して作業を行う場合は、既設構造物からある程度離れた位置に自在ボーリングマシンを設置するため、既設構造物の周囲に空いている用地が必要となり、例えば密集した市街地等では施工に必要な用地の確保が困難となり、作業に支障を来すおそれがあった。
【0007】
また、既設構造物の外側に立坑を掘削して立坑内に設置した水平ボーリングマシンを使用して作業を行う場合も、既設構造物の外側に大きな立坑を掘削するため、既設構造物の周囲に広い用地が必要となり、やはり密集した市街地等では施工に必要な用地の確保が困難となり、作業に支障を来すおそれがあった。
【0008】
また、既設構造物の内部に施工機械を設置して既設構造物の内部にて作業を行う場合は、既設構造物の内部で作業を行うことから、既設構造物の内部の底の箇所に穴を開けたりする作業が必要となり、その作業が非常に面倒なものになると共に、既設構造物の内部においては大きな空間が必要となるが、内部に大きな空間がない既設構造物では作業が行えないといったこともあった。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法における問題点に鑑み、特に既設構造物直下の地盤を改良する際において生じる不具合を解消し、既設構造物直下の地盤を改良する際でも作業を容易にかつ良好に行うことのできる高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一の発明は、施工機械にて地盤中に管ロッドを所定深度まで挿入し、挿入後、管ロッドより硬化材を高速高圧で噴射し、この硬化材の噴射エネルギーで地盤を切削しながら噴射した硬化材と地盤とを攪拌混合させ、地盤中に固結改良体を造成して地盤を改良するようにした高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において、
管ロッドの先端に横方向の左右両側に突出する水平翼を備え、水平翼に硬化材を噴射する複数の噴射口を横又は縦横両方に並べるように設け、地盤中に管ロッドを挿入後、管ロッドを回転させることなく回転停止状態で、管ロッド
の先端の水平翼に設けた複数の噴射口より地盤中に平行な状態で硬化材を高速高圧で直線的に噴射するようにした高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法である。
【0011】
第二の発明は、第一の発明において、管ロッドにおける回転停止状態での硬化材の直線的な噴射を、管ロッドを引き抜き上方に徐々に移動させながら行うようにした高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法である。
【0013】
第三の発明は、第一
又は第二の発明において、地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離と硬化材の噴射時間との関係を求め、この求めた地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離と硬化材の噴射時間との関係に基づいて硬化材の噴射時間を算出し、この算出した硬化材の噴射時間で管ロッドの噴射口より硬化材を地盤中に噴射するようにした高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地盤中に管ロッドを挿入後、管ロッドを回転させることなく回転停止状態で、管ロッドより硬化材を高速高圧で直線的に噴射するようにしたことで、従来の方法と比べて噴射到達距離を大幅に長くし、地盤中に直線距離が大幅に長くなる固結改良体を造成することができる。特に既設構造物直下の地盤を改良する場合、噴射到達距離が大幅に長くなり、地盤中に直線距離が大幅に長くなる固結改良体を造成できることから、容易にかつ良好に既設構造物直下の地盤を改良することができる。このように、地盤中に固結改良体を効率良く造成することで、この作業の効率化により、地盤改良工事において工期を短縮することができると共に、その工費も安価にすることができる。しかも、その作業にあっては、既設構造物の外側の地上に小さい施工機械を設置するだけで良いことから、小さな用地での施工が可能となり、例えば密集した市街地等であっても施工に必要な用地を容易に確保することができ、その作業に極めて良好に行うことができる。
【0015】
また、本発明によれば、管ロッドの先端に横又は縦又は縦横両方に並べるように複数の噴射口を配置し、この複数の噴射口から硬化材を地盤中に平行な状態で噴射するようにしたことで、例えば横に並べるように複数の噴射口を配置した場合は、地盤中に造成する固結改良体において計画通りのある程度の横幅を有した固結改良体にすることができ、これにより、所定の強度を有する固結改良体を地盤中に造成することができる。また、縦又は縦横両方に並べるように複数の噴射口を配置した場合は、一回の噴射によって造成できる固結改良体の上下方向の大きさを大きなものにすることができ、上方に向かって固結改良体を造成する際の造成スピードを大幅に早くすることで、地盤改良工事における工期の短縮を図ることができる。
【0016】
また、本発明によれば、地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離と硬化材の噴射時間との関係に基づいて硬化材の噴射時間を算出し、この算出した硬化材の噴射時間で管ロッドの噴射口より硬化材を地盤中に噴射するようにしたことで、地盤の土質が異なるどのような施工現場においても地盤中に所望の大きさの固結改良体を造成することができ、常に最適な固結改良体を造成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法の一実施形態について説明する。
まず、この高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法において使用する施工機械とその周辺設備を説明すると、
図1に示すように、地盤中に管ロッド1を所定深度まで挿入あるいは引き抜くための施工機械2を備え、この施工機械2は例えば自走可能な小型の杭打ち機である。ただし、施工機械2は小型の杭打ち機に限定されるものではなく、地盤改良の施工深度等の改良規模に応じてボーリングマシンや他の機械でも良い。この施工機械2にあっては、マスト3を立設し、このマスト3に沿って管ロッド1を縦に向けて取り付けると共に、マスト3の上部に管ロッド1を地盤中に挿入したり引き抜いたりする昇降装置4と管ロッド1を回転させる回転装置5をそれぞれ設ける。管ロッド1はその内側を硬化材や圧縮空気等が通るようになる中空状の鋼管であり、その下端である先端に特殊先端具6を取り付けている。
【0019】
また、施工機械2の周辺設備としては、施工機械2に取り付けた管ロッド1に硬化材や圧縮空気を供給するための設備である。硬化材はセメントミルクであるが、このセメントミルクに各種の添加剤等を混ぜ合わせるようにしても良い。そして、圧縮空気を供給するための設備としては、コンプレッサー11であり、流量計12を介してコンプレッサー11から管ロッド1に圧縮空気を供給する。また、硬化材を供給するための設備としては、水中ポンプ13を設けた混合装置14を備え、この混合装置14において、水中ポンプ13を用いてセメントサイロ15からセメント原料を流入すると共に、水中ポンプ16を設けた水槽17から水を流入し、これらを混合して硬化材であるセメントミルクを生成する。そして、このセメントミルクを流量計18を介して高圧ポンプ19から成る硬化材供給装置20に供給し、この硬化材供給装置20から管ロッド1にセメントミルクを供給する。なお、各装置には図示していないがそれぞれ発電機を設けている。
【0020】
一方、管ロッド1の下端である先端に取り付けた特殊先端具6については、
図2、
図3に示すように、先端側に多数のビット31を取り付けた掘削ヘッド32を備えると共に、横方向の左右両側に突出する水平翼33を備え、この水平翼33の下部にもビット34を多数取り付ける。また、水平翼33には管ロッド1の内側と連通する噴射口35を横方向に向けて設けており、この噴射口35は水平翼33の長手方向(左右方向)にわたって複数、例えば4個の噴射口35を等間隔で横に並べるように配置し、ここよりセメントミルク等を噴射する。この4個の噴射口35にあっては、すべて同じ方向に向けており、4個の噴射口35よりセメントミルク等が地盤中に横方向に平行な状態で噴射される。なお、噴射口35については、1個でも良いが、セメントミルクを噴射して地盤中に造成する固結改良体Tを所望の横幅のものにすることを考えると、2個以上、さらには4個以上の複数個にすることが望ましい。また、複数の噴射口35を横に一列に配置しているが、これを、
図4に示すように、上下にずらして配置するようにしても良い。さらには複数の噴射口35を設ける場合、
図5に示すように、複数の噴射口35を縦に一列に並べるように配置しても良いし、
図6に示すように、縦横両方向に並べるように配置しても良い。なお、複数の噴射口35を縦に一列に並べるように配置する場合は水平翼33を備えることなく、噴射口35を特殊先端具6の本体に設けるようにする。このように、複数の噴射口35を縦又は縦横両方に並べるように配置することで、複数の噴射口35を横に一列に並べるように配置したものと比べて、一回の噴射によって造成できる固結改良体Tの上下方向の大きさを大きなものにすることができ、これにより、管ロッド1の引く抜きによる上方への移動量を大きくして、上方に向かって固結改良体Tを造成する際の造成スピードを大幅に早くすることができる。
【0021】
次に、このような施工機械とその周辺設備を使用して行う高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法について説明する。
この高圧噴射攪拌工法による地盤改良方法としては、
図7(a)に示すように、管ロッド1を取り付けた施工機械2を所定の位置に設置する。そして、
図7(b)に示すように、施工機械2にて管ロッド1を回転させながら地盤中に挿入して行く。このとき、管ロッド1の下端に取り付けた特殊先端具6にて地盤を掘削するが、管ロッド1の挿入を補助するため、特殊先端具6の噴射口35より圧縮空気や水等を噴射しながら行うようにしている。そして、
図7(c)に示すように、管ロッド1を所定深度まで挿入した後、管ロッド1及び特殊先端具6の回転を停止する。
【0022】
それから、地盤中にセメントミルクを高速高圧で噴射し、このセメントミルクの噴射エネルギーで地盤を切削しながら噴射したセメントミルクと地盤とを攪拌混合させ、地盤中に固結改良体Tを造成する作業を行う。これは、
図8(d)に示すように、管ロッド1における特殊先端具6の4個の噴射口35を施工する地盤の方向に向けてから管ロッド1を回転させることなく回転停止状態で、管ロッド1に供給されたセメントミルクと圧縮空気によって、管ロッド1における特殊先端具6の4個の噴射口35よりセメントミルクを地盤中に高速高圧で直線的に噴射し、このセメントミルクの噴射を例えば30秒行って、セメントミルクの噴射エネルギーで地盤を切削しながら噴射したセメントミルクと地盤とを攪拌混合させ、地盤中に一段目の固結改良体Tを造成する。
【0023】
そして、管ロッド1を数センチから数十センチ引く抜き上方に移動させ、その数センチから数十センチ上方の位置にて管ロッド1における特殊先端具6の噴射口35よりセメントミルクを地盤中に高速高圧で直線的に噴射し、一段目と同様、二段目の固結改良体Tを造成する。さらに、管ロッド1を引き抜き上方に移動させてから、三段目、四段目、五段目と固結改良体Tの造成を繰り返す。このように管ロッド1を引き抜き上方に徐々に移動させながらセメントミルクを噴射することで、上方に向かって段階的に固結改良体Tを造成する。この段階的に固結改良体Tを造成する際、管ロッド1を数センチから数十センチ引き抜いて上方に移動させ、数センチから数十センチ毎にセメントミルクを噴射して固結改良体Tを段階的に造成するようにしているが、この数センチから数十センチ毎に行うことによって、段階的に造成する上下の固結改良体Tが上下分断されることなく一体的に造成されるようになる。
【0024】
そして、
図8(e)に示すように、管ロッド1を引き抜き上方に徐々に移動させながら所望の深度まで固結改良体Tを造成することにより、地盤中に縦長の壁状の固結改良体Tを造成して地盤を改良する。地盤中に所望の大きさの固結改良体Tを造成した後、
図8(f)に示すように、施工機械2にて管ロッド1を地盤から引き抜いて作業が完了する。
【0025】
なお、この固結改良体Tの地盤中への造成については、セメントミルクの地盤中への噴射を、管ロッド1を上に移動することなく所定の位置で停止させた状態で噴射した後、数センチから数十センチ引き抜いて上方に移動させてから、停止させた状態で噴射することで、上方に向かって段階的に固結改良体Tを造成するようにしていたが、これに限定されるものではなく、例えば、
図9に示すように、セメントミルクの地盤中への噴射を、管ロッド1を所定の位置で停止させることなく上に低速で移動させながら噴射することで、上方に向かって連続的に固結改良体Tを造成するようにしても良い。
【0026】
以上のような管ロッド1を回転させることなく回転停止状態で、管ロッド1より硬化材であるセメントミルクを高速高圧で直線的に噴射するようにしたことについては、本発明者らが鋭意研究を重ねて実験等を行い、従来の管ロッド41を回転させて徐々に上方に引き抜きながら硬化材を噴射して地盤中に縦向きの円柱状の固結改良体Tcを造成する方法と比べて、管ロッド1を回転停止状態で直線的に噴射して固結改良体Tを造成する方法が、硬化材の噴射到達距離Sがはるかに長くなることを見出した。そこで、本発明者らはこの点に着目し、地盤中に挿入した管ロッド1からの硬化材の噴射到達距離Sが長い、要するに、長手方向の直線距離Lが大幅に長くなる固結改良体Tを地盤中に造成できるようにしたものである。
【0027】
そして、本発明者らは、次のような実験も行った。
第一の実験としては、従来の管ロッド41を回転させて徐々に上方に引き抜きながら硬化材であるセメントミルクを噴射して地盤中に縦向きの円柱状の固結改良体Tcを造成する方法におけるセメントミルクの噴射到達距離Sと、本発明の管ロッド1を回転させることなく回転停止状態にしてセメントミルクを直線的に噴射する方法におけるセメントミルクの噴射到達距離Sとを比べる実験である。
【0028】
管ロッド41を回転させながらセメントミルクを噴射して円柱状の固結改良体Tcを造成するようになる従来の方法としては、次の3つの実験例で行った。実験例Aは、セメントミルクの噴射量を600l(リットル)/min、空気を8Nm
3/minとしたものである。実験例Bは、セメントミルクの噴射量を600l(リットル)/min、空気を6.2Nm
3/minとしたものである。実験例Cは、セメントミルクの噴射量を300l(リットル)/min、空気を8Nm
3/minとしたものである。一方、管ロッド1を回転させることなく回転停止状態にしてセメントミルクを直線的に噴射するようになる本発明の方法である実験例Dとしては、セメントミルクの噴射量を300l(リットル)/min、空気を8Nm
3/minとしたものである。そして、これらにおいて、管ロッド1の上下への移動を停止した状態で、セメントミルクを地盤中に噴射し、セメントミルクの噴射到達距離Sを計測した。この実験の結果を、以下の表1に示す。
【0030】
従来の方法の実験例A、実験例B、実験例Cのすべてが10秒さらには20秒以上噴射しても、4〜5mを超えることはなかったのに対し、本発明の方法の実験例Dでは5秒で5m、15秒で7m、30秒で9mになり、従来の方法のものと比べて噴射到達距離Sが倍以上となった。このことから、セメントミルクを直線的に噴射する方がセメントミルクの噴射到達距離Sが大幅に長くなることが分かる。
【0031】
また、第二の実験としては、本発明の管ロッド1を回転させることなく回転停止状態で、管ロッド1より硬化材であるセメントミルクを高速高圧で直線的に噴射して固結改良体Tを造成する際におけるセメントミルクの噴射時間を変えたときの地盤中に造成される固結改良体Tの大きさを調べる実験である。これは、セメントミルクの地盤中への噴射にあって、上下1mの固結改良体Tを造成する際、その1mを10分(600秒)かけてセメントミルクを噴射した実験例Eと、1mを1.67分(100秒)かけてセメントミルク噴射した実験例Fとを対比し、地盤中に造成される固結改良体Tの大きさの変化を調べるものである。なお、この実験では、特殊先端具6に設ける噴射口35は2個を横に並べるように配置したものである。
【0032】
詳細には、実験例Eはセメントミルクの噴射量を300l(リットル)/min、噴射圧力を35MPa、そして噴射時間を10min/mとしたもので、実験例Fはセメントミルクの噴射量を300l(リットル)/min、噴射圧力を35MPa、そして噴射時間を1.67min/mとしたものである。そして、これらにおいて、セメントミルクを地盤中に2個の噴射口35より直線的に噴射し、セメントミルクの噴射到達距離S及び地盤中に造成された固結改良体Tの大きさを計測した。
【0033】
その結果、実験例Eでは、
図10(a)に示すように、セメントミルクの噴射到達距離Sが9mになり、地盤中に造成される固結改良体Tの大きさが長手方向の直線距離Lが9mで、横幅が0.2〜0.4mとなった。また、実験例Fでは、
図10(b)に示すように、セメントミルクの噴射到達距離Sが5mになり、地盤中に造成される固結改良体Tの大きさが長手方向の直線距離Lが5mで、横幅が0.1〜0.2mとなった。このように、セメントミルクの噴射時間が長い方がセメントミルクの噴射到達距離Sが長く、そして地盤中に造成される固結改良体Tの大きさも大きくなることが分かる。これにより、必要に応じて、セメントミルクの噴射時間を変えることで、セメントミルクの噴射到達距離S及び地盤中に造成された固結改良体Tの大きさを変えて、所望の大きさの固結改良体Tを地盤中に造成することができる。
【0034】
このような管ロッド1を回転させることなく回転停止状態にしてセメントミルクを直線的に噴射するようになる本発明の方法にあっては、地盤中に挿入した管ロッド1からの硬化材の噴射到達距離Sが長い、すなわち、長手方向の直線距離Lが大幅に長くなる固結改良体Tを地盤中に造成できることから、通常の施工現場に適用することができると共に、さらに特殊な施工現場にも適用することができる。これは、例えば、既設構造物直下の地盤を改良する作業を行う場合等である。
【0035】
この既設構造物直下の地盤を改良する場合、管ロッド41を回転させながらセメントミルクを噴射して円柱状の固結改良体Tcを造成するようになる従来の方法と比べ、噴射到達距離Sが倍以上となる管ロッド1を回転させることなく回転停止状態にしてセメントミルクを直線的に噴射するようになる本発明の方法を採用することで、既設構造物の外側の地上に小型の杭打ち機といった小さい施工機械2を設置するだけで良く、小さな用地での施工が可能となることから、既設構造物の外側に小さな用地を確保するだけで良くなり、従来のような既設構造物の外側に立坑を掘削するため広い用地を確保するといったこと、あるいは既設構造物の内部にて作業を行うといったことを無くすことができ、これにより、既設構造物直下の地盤を改良する作業において、容易にかつ良好に作業を行うことができる。
【0036】
また、この管ロッド1を回転させることなく回転停止状態にしてセメントミルクを直線的に噴射するようになる本発明の方法では、次のようないくつかの異なる形での地盤中への固結改良体Tの造成が可能となる。まず、基本的なものとしては、
図11(a)に示すように、直線距離Lが長い固結改良体Tを所定の間隔で並列に地盤中に造成して行き、それから、これらの間すべてに同じように固結改良体Tを造成して行くことで、目的の場所全体の地盤中に固結改良体Tをする。なお、図中に示す丸囲い数字番号は地盤中に固結改良体Tを造成する順番を示すもので、以後の図においても同じである。
【0037】
そして、改良する地盤の強度に問題が無いようであれば、
図11(b)に示すように、直線距離Lが長い固結改良体Tを所定の間隔で並列に地盤中に造成するだけでも良い。
【0038】
さらに、
図12(c)に示すように、直線距離Lが長い固結改良体Tを縦横と向きを変えて行うことで、地盤中に造成する固結改良体Tを組み合わせて縦横格子状に造成することもできる。このとき、セメントミルクの噴射時間を変更することで、固結改良体Tの直線距離Lを短くしたり長くしたりして地盤中に造成する固結改良体Tの大きさを調節することもできる。
【0039】
また、
図12(d)に示すように、直線距離Lが長い固結改良体Tを直列に地盤中に造成することにより、地盤中に真っ直ぐ伸びた距離の長い固結改良体Tを造成することができる。なお、従来の管ロッド41を回転させて徐々に上方に引き抜きながら硬化材であるセメントミルクを噴射して地盤中に縦向きの円柱状の固結改良体Tcを造成する方法で、このような真っ直ぐ伸びた距離の長い固結改良体Tcを造成しようとすると、図中に仮想線で示すように、円柱状の固結改良体Tcを多数造成するようになるが、このように多数の円柱状の固結改良体Tcを造成する必要があることから、工期が長くなるおそれがあると共に、図中に斜線で示すように、不要な箇所あるいは重なり合う箇所が存在するようになって工費が高くなるおそれもあった。なお、本発明の管ロッド1を回転させることなく回転停止状態にしてセメントミルクを直線的に噴射する方法では、直線距離Lが長い固結改良体Tを直列に地盤中に造成することで、地盤中に造成する固結改良体Tの数も大幅に減らすことができ、また、地盤中に造成した固結改良体Tにおいて不要な箇所や重なり合う箇所といったものも極力無くすことができる。
【0040】
また、管ロッド1における特殊先端具6の噴射口35より硬化材であるセメントミルクを地盤中に噴射する際、その噴射時間を、次のような形でコントロールするようにしても良い。
【0041】
地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離Sと硬化材の噴射時間との関係を求め、この求めた地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離Sと硬化材の噴射時間との関係に基づいて硬化材の噴射時間を算出し、この算出した硬化材の噴射時間で管ロッド1における特殊先端具6の噴射口35より硬化材であるセメントミルクを地盤中に噴射することによって、セメントミルクの到達する噴射到達距離Sを所望の距離にし、これにより、地盤中に所望の大きさの固結改良体Tを造成する。
【0042】
これは、まず、土質等が異なる多くの現場にて地盤中に噴射するセメントミルクの到達する噴射到達距離Sを測定しておき、それぞれの施工現場の地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離Sと硬化材の噴射時間との関係を求めてデータ化する。そして、このデータ化したものの中から、実際の施工現場の地盤の土質と同じものを選択し、この選択したものに基づいて硬化材であるセメントミルクの噴射時間を算出する。なお、実際の施工現場の地盤の土質と同じものが無い場合は、その現場にて予め試験を行って地盤中に噴射するセメントミルクの到達する噴射到達距離Sを測定し、施工現場の地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離Sと硬化材の噴射時間との関係を求め、この求めた地盤の土質に応じた地盤中に噴射する硬化材の噴射到達距離Sと硬化材の噴射時間との関係に基づいて硬化材であるセメントミルクの噴射時間を算出する。
【0043】
そして、この算出したセメントミルクの噴射時間、例えば10秒間又は20秒間又は30秒間、管ロッド1における特殊先端具6の噴射口35よりセメントミルクを地盤中に噴射することにより、セメントミルクの到達する噴射到達距離Sを、例えば6m又は8m又は10mというようにすることができ、地盤中に所望の大きさの固結改良体Tを造成できる。