(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒と空気との間で熱交換を行う熱源側熱交換器と、冷媒を減圧する減圧装置と、冷媒と利用側の熱媒体との間で熱交換を行う複数の利用側熱交換器と、を順に接続して環状に形成された冷媒回路と、
前記利用側熱交換器に対する前記冷媒の流れを、並列、直列、単段に切り替える第1切替手段と、
要求負荷の縮小に伴って、前記第1切替手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記複数の利用側熱交換器は、鉛直方向に直交する方向に並んで配置されるとともに前記制御手段により前記第1切替手段が前記直列に切り替えられた場合、上流側に配置した前記利用側熱交換器に冷媒が上昇しながら流れ、下流側に配置した前記利用側熱交換器に冷媒が下降しながら流れるように構成したことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。まず、冷凍装置の全体構成について説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
近年、チラーなどの冷凍装置では、年間の成績係数が重要視されているため、100%負荷から25%負荷までの幅広い範囲で高い性能が要求され、このような要求により、冷媒循環量の制御範囲も大きく広がっている。
【0013】
また、従来の冷凍サイクル装置を備えた機器では、複数のプレート式熱交換器を直列に配置した場合、定格運転条件で冷媒循環量が多いと、蒸発時の圧力損失が増大し、成績係数が低下するという問題があった。また、蒸発時の圧力損失の増大を防ぐために、熱交換器のプレートの枚数を増したり、複数の熱交換器を並列に配置した冷媒回路にしたとしても、部分負荷運転条件などで冷媒循環量が減少すると、プレート間への冷媒分配が不均一となり、熱交換性能が低下するという問題があった。
【0014】
発明者らによる検討の結果、複数の利用側熱交換器を直列にして使用する場合、それぞれの利用側熱交換器での圧力損失の増加割合と熱交換量との関係から、利用側熱交換器に供給すべき冷媒流量の比率を変化させることで、成績係数向上の可能性があることが確認された。以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置を備えた冷凍装置を示す全体構成図である。
図1に示すように、冷凍装置1は、冷媒が循環する冷媒回路10と、利用側熱交換器6A,6Bに対する冷媒の流れを並列、直列、単段に切り替える第1切替手段20と、制御装置(制御手段)30と、を含む冷凍サイクル装置100を備えている。
【0016】
冷媒回路10は、冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷媒と空気との間で熱交換を行う複数の熱源側熱交換器4A,4Bと、冷媒を減圧する膨張弁5(減圧装置)と、冷媒と利用側(負荷側)の熱媒体との間で熱交換を行う複数の利用側熱交換器6A,6Bと、を備え、これらの機器を冷媒配管8により順に接続して環状に形成したものである。
【0017】
圧縮機2は、例えば、容量制御が可能な可変容量型のものである。この圧縮機2としては、ピストン式、ロータリ式、スクロール式、スクリュー式、遠心式など各種のものを適用することができる。また、圧縮機2は、インバータ制御による容量制御により、低速から高速まで回転速度を可変にできるものである。なお、冷媒としては、HFC単一冷媒、HFC混合冷媒、HFO−1234yf、HFO−1234ze、自然冷媒(例えば、CO
2冷媒)などを用いることができる。
【0018】
熱源側熱交換器4A,4Bは、互いに並列に配置され、室外ファン95A,95Bから送風される熱源である空気(外気)と、冷媒との間で熱交換するものである。この熱源側熱交換器4A,4Bは、例えば、複数枚積層した板状のフィン(不図示)と、このフィンを貫通する複数の伝熱管(不図示)が多段に設けられたフィンチューブ式の熱交換器が用いられ、伝熱管の開口端をベンド管などで接続することで複数の冷媒パスを構成している。
【0019】
また、熱源側熱交換器4A,4Bでは、冷媒が冷媒パス内を流れ、空気が室外ファン95A,95Bにより送風されて、積層された板状のフィンの間を流れることで、フィンおよび伝熱管を介して空気と冷媒との間で熱交換が行われる。また、熱源側熱交換器4A,4Bは、冷房運転時は凝縮器として機能し、暖房運転時は蒸発器として機能する。なお、本実施形態では、2つの熱源側熱交換器4A,4Bを備えた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0020】
利用側熱交換器6A,6Bは、1次側伝熱路(1次側流路)a1,b1を通流する冷媒と2次側伝熱路(2次側流路)a2,b2を通流する熱媒体との間で熱交換するものである。この利用側熱交換器6A,6Bとしては、冷媒と熱媒体とがプレートで交互に仕切られた複数の冷媒流路の内部を流れて熱交換を行うプレート式熱交換器や、シェルチューブ式熱交換器などを用いることができる。ちなみに、プレート式熱交換器は、シェルチューブ式熱交換器に比べて制御が容易になる。
【0021】
なお、熱媒体は、配管62を介して、ポンプなどの循環手段(不図示)により、負荷側の熱交換器40(室内側)と利用側熱交換器6A,6Bとの間を循環することで熱の授受を行う。また、利用側熱交換器6A,6Bは、冷房運転時は蒸発器として機能し、暖房運転時は凝縮器として機能する。また、熱媒体としては、水や、エチレングリコールなどのブライン(不凍液)などを用いることができる。これらの点は、後記する各実施形態においても同様である。
【0022】
冷媒配管8は、圧縮機2の吐出口と四方弁3とを接続する配管8aと、四方弁3から延びるとともに途中で分岐して熱源側熱交換器4A,4Bの一端と接続される配管8bと、熱源側熱交換器4A,4Bの他端から延びるとともに途中で合流して膨張弁5の一端と接続される配管8cと、膨張弁5の他端から延びる配管8dと、配管8dから分岐して利用側熱交換器6Aの1次側伝熱路a1の一端と接続される配管8eと、配管8dから分岐して利用側熱交換器6Bの1次側伝熱路b1の一端と接続される配管8fと、利用側熱交換器6Aの1次側伝熱路a1の他端と接続される配管8gと、利用側熱交換器6Bの1次側伝熱路b1の他端と接続される配管8hと、配管8gと配管8hとを合流させて四方弁3と接続される配管8iと、四方弁3と圧縮機2の吸入口とを接続する配管8jと、から構成されている。
【0023】
第1切替手段20は、配管8eに設けられる開閉弁(遮断弁)V1と、配管8fに設けられる開閉弁(遮断弁)V2と、配管8iに設けられる開閉弁(遮断弁)V3と、一端が開閉弁V1と利用側熱交換器6Aとの間の配管8eに接続されるとともに他端が開閉弁V3と四方弁3との間の配管8iに接続される配管8sと、配管8sに設けられる開閉弁(遮断弁)V4と、から構成されている。これら開閉弁V1,V2,V3,V4は、制御装置30によって全開状態か全閉状態のいずれかに制御される。
【0024】
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、各種インタフェイス、電子回路等を含んで構成されており、記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係る冷凍装置1を制御するようになっている。すなわち、制御装置30は、圧縮機2の回転速度、四方弁3の流路切替、室外ファン95A,95Bの回転速度、膨張弁5の開度、開閉弁V1,V2,V3,V4の各開閉動作を制御する。
【0025】
また、配管8aには、圧縮機2の冷媒の吐出圧力を検出する圧力センサPdが設けられている。配管8jには、圧縮機2の冷媒の吸入圧力を検出する圧力センサPsが設けられている。配管8cには、冷媒の圧力を検出する圧力センサPcが設けられている。配管8eには、利用側熱交換器6Aの一端側の冷媒の圧力を検出する圧力センサP1が設けられている。配管8fには、利用側熱交換器6Bの一端側の冷媒の圧力を検出する圧力センサP2が設けられている。配管8gには、利用側熱交換器6Aの他端側の冷媒の圧力を検出する圧力センサP3が設けられている。配管8iには、配管8sとの接続点よりも四方弁3(圧縮機2)寄りの圧力を検出する圧力センサP4が設けられている。また、配管8gには、利用側熱交換器6Aの他端側の冷媒の温度を検出する温度センサT1が設けられている。配管8hには、利用側熱交換器6Bの他端側の冷媒の温度を検出する温度センサT2が設けられている。これら圧力センサPd,Ps,Pc,P1,P2,P3,P4によって検出された検出値および温度センサT1,T2によって検出された検出値は、制御装置30に入力され、冷凍装置1の各種運転を制御する。なお、温度センサや圧力センサの構成は一例であり、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、温度センサP1,P2の位置に、温度センサがあってもよい。
【0026】
次に、本実施形態の冷凍装置1を冷房運転する場合について
図1を参照して説明する。なお、ここでは、利用側熱交換器6A,6Bに冷媒が流れる場合を例に挙げて説明する。なお、開閉弁V1,V2,V3は開弁し、開閉弁V4は閉弁しているものとする。
【0027】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は、配管8a、四方弁3、配管8bを通って凝縮器として機能する熱源側熱交換器4A,4Bに流入する。熱源側熱交換器4A,4Bに流入した冷媒は、室外ファン95A,95Bから送られる外気(空気)に放熱することで凝縮して液冷媒となる。そして、液冷媒は、配管8cを通って、所定の開度に調整された膨張弁5によって減圧され、低温低圧の気液二相状態の冷媒となり、配管8d,8e,8fを通って、利用側熱交換器6A,6Bの1次側伝熱路(1次側流路)a1,b1に流入する。利用側熱交換器6A,6Bを流れる冷媒は、2次側伝熱路(2次側流路)a2,b2を流れる熱媒体から吸熱することにより蒸発して気化する。気化した冷媒は、配管8g,8h,8i、四方弁3、配管8jを通って圧縮機2に戻る。このようにして、冷凍装置1の冷凍サイクル装置100が構成されている。
【0028】
なお、四方弁3を切り替えて、圧縮機2から吐出した高温高圧のガス冷媒を冷房運手時と逆方向に循環させることにより、冷凍サイクル装置100を暖房運転として機能させることができる。すなわち、暖房運転の場合は、圧縮機2で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、配管8a,8iを通って凝縮器として機能する利用側熱交換器6A,6Bに流入する。利用側熱交換器6A,6Bに流入した冷媒は、熱媒体に放熱することで凝縮して液冷媒となる。この液冷媒は、所定の開度に調整された膨張弁5によって減圧され、低温低圧の気液二相状態の冷媒となり、熱源側熱交換器4A,4Bに流れ、室外空気の熱を吸熱することにより蒸発して気化する。気化した冷媒は、配管8b、四方弁3、配管8jを通って圧縮機2に戻る。
【0029】
図2に示すように、負荷側の熱交換器40に対する要求負荷(Q1)が高い場合(例えば、定格運転(100%負荷)時、過負荷運転時)には、利用側熱交換器6A,6Bを並列(第1状態)に接続するように冷媒流路の切替が行われる。なお、要求負荷とは、どのくらいの温度の熱媒体(水など)をどのくらいの流量で供給することを意味している。また、定格運転とは、100%負荷での運転、過負荷運転とは、100%を超える負荷での運転を意味する。
【0030】
この場合、制御装置30は、開閉弁V1,V2,V3を開弁するとともに開閉弁V4を閉弁する。これにより、膨張弁5で減圧された冷媒(気液二相状態の冷媒)は、配管8d,8eを通って利用側熱交換器6Aの1次側伝熱路a1に流入し、また配管8d,8fを通って利用側熱交換器6Bの1次側伝熱路b1に流入する。そして、利用側熱交換器6A,6Bから流出した冷媒は、配管8g,8hを通って配管8iで合流し、四方弁3、配管8jを通って圧縮機2に戻る。
【0031】
図3に示すように、熱交換器40に対する要求負荷(Q2)が前記要求負荷(Q1)よりも低い場合(例えば、部分負荷運転時、Q2<Q1)には、利用側熱交換器6A,6Bを直列(第2状態)に接続するように冷媒流路の切替が行われる。
【0032】
この場合、制御装置30は、開閉弁V1,V3を閉弁するとともに開閉弁V2,V4を開弁する。これにより、膨張弁5で減圧された冷媒(気液二相状態の冷媒)は、まず配管8d,8fを通って利用側熱交換器6Bの1次側伝熱路b1に流入し、その後、配管8h,8gを通って利用側熱交換器6Aの1次側伝熱路a1に流入する。そして、利用側熱交換器6Aから流出した冷媒は、配管8eの一部、配管8s、配管8iの一部、四方弁3、配管8jを通って圧縮機2に戻る。
【0033】
なお、
図3では、利用側熱交換器6B、利用側熱交換器6Aの順に冷媒が直列に流れる場合を例に挙げて説明したが、配管8sの下流端はそのままで上流端を開閉弁V2と利用側熱交換器6Bとの間の配管8fに接続することで、利用側熱交換器6A、利用側熱交換器6Bの順に直列に冷媒が流れるようにしてもよい。
【0034】
図4に示すように、熱交換器40に対する要求負荷(Q3)が前記要求負荷(Q2)よりも低い場合(例えば、Q3<Q2)には、利用側熱交換器6Aのみ(単段、第3状態)となるように接続するように冷媒流路の切替が行われる。なお、単段とは、冷媒が一つの利用側熱交換器6A(または6B)に流れることを意味する。
【0035】
この場合、制御装置30は、開閉弁V1,V3を開弁するとともに開閉弁V2,V4を閉弁する。これにより、膨張弁5で減圧された冷媒(気液二相状態の冷媒)は、配管8d,8eを通って利用側熱交換器6Aの1次側伝熱路a1に流入し、配管8gを通って流出する。
【0036】
なお、利用側熱交換器6Aを単段で利用する場合に限定されず、開閉弁V1,V4を閉弁するとともに開閉弁V2,V3を開弁して、利用側熱交換器6Bを単段で接続するようにしてもよい。
【0037】
例えば、熱交換器40に対する要求負荷が低く、冷媒の循環流量が少ない場合には、利用側熱交換器6Aのみに冷媒を供給することで、冷媒流路(1次側伝熱路a1)に流入する冷媒量が増加するため、冷媒流路内の流速が増加し、冷媒側の熱伝達率が向上して良好な熱交換が行われ、要求される能力を得ることが可能になる。
【0038】
また、熱交換器40に対する要求負荷が高く、冷媒循環量が多い場合には、利用側熱交換器6A,6Bを並列に接続して冷媒を供給することで、冷媒流路に流入する冷媒量が適正化されて、良好な熱交換が行われ、過度の圧力損失の増大を防ぐことができる。
【0039】
このように、要求負荷が低下するにつれて利用側熱交換器6A,6Bを並列、直列、単段の順に切り替えることで、冷媒循環量が減少したとしても、圧力損失の増大および冷媒分配の不均一を抑制でき、冷凍サイクル装置100としての期間成績係数を向上させることが可能になる。
【0040】
次に、冷凍サイクル装置1の動作について
図5ないし
図8を参照して説明する。
図5は複数の利用側熱交換器の分配流路数の関係を示す構成図、
図6は利用側熱交換器の配置例を示す構成図、
図7は利用側熱交換器の別の配置例を示す構成図、
図8は利用側熱交換器の変形例を示す構成図である。なお、以下では、利用側熱交換器6Aを熱交換器6A、利用側熱交換器6Bを熱交換器6Bとそれぞれ略記する。
【0041】
図5に示すように、制御装置30は、ステップS10において、運転状態検出を実行する。
【0042】
図6に示すように、ステップS11において、制御装置30は、システム(冷凍サイクル装置1)の運転状態を確認する。このシステムの運転状態は、要求負荷Qcと外気温度Tairとに基づいて確認する。なお、外気温度Tairは、図示しない外気温度センサに基づいて検出される。
【0043】
そして、ステップS12に進み、制御装置30は、熱交換器6A,6Bの運転モードを確認する。つまり、熱交換器6A,6Bが、並列運転(M1)であるか、直列運転(M2)であるか、単段運転(M3)であるかを確認する。いずれの運転モードであるか否かは、開閉弁V1,V2,V3,V4の弁状態に基づいて判定することができる。
【0044】
図5のステップS10に戻って、ステップS20に進み、制御装置30は、運転切替条件検出を実行する。
【0045】
図7に示すように、制御装置30は、ステップS21において、サイクル状態量を検出する。すなわち、制御装置30は、温度センサT1,T2から冷媒温度、圧力センサP1,P2,P3,P4から冷媒圧力、圧縮機2の回転速度Nc、膨張弁5の開度PLを検出する。また、制御装置30は、図示しない熱媒体の温度を検出する温度センサから熱媒体温度、図示しない熱媒体の流量を検出する流量センサから熱媒体流量を検出する。
【0046】
図5のステップS20に戻って、ステップS30に進み、制御装置30は、運転切替判定を実行する。
【0047】
図8に示すように、制御装置30は、ステップS31において、冷媒状態量を算出する。すなわち、圧力センサP1から冷媒飽和温度Tsat1を推算し、圧力センサP2から冷媒飽和温度Tsat2を推算する。また、制御装置30は、冷媒過熱度ΔTshA=Tsat1−T1を推算し、冷媒過熱度ΔTshB=Tsat2−T2を推算する。また、制御装置30は、圧縮機2の回転速度Ncから冷媒循環量Gr1を推算する。なお、冷媒循環量Gr1は、Ncに限定されるものではなく、熱交換器6A,6Bの熱量から推算してもよい。また、制御装置30は、圧力センサP1,P3の圧力から熱交換器6Aの圧力差ΔPhAを算出し、圧力センサP2,P3の圧力から熱交換器6Bの圧力差ΔPhBを算出する。また、制御装置30は、熱交換器6Aを流れる熱媒体の温度と冷媒飽和温度Tsat1から熱交換効率Naを算出し、熱交換器6Bを流れる熱媒体の温度と冷媒飽和温度Tsat2から熱交換効率Nbを算出する。
【0048】
そして、ステップS32に進み、制御装置30は、冷媒循環量Gr1が冷媒循環量判定値X1よりも多く、かつ、冷媒循環量判定値X2未満である(X2<Gr1<X1)か否かを判定する。なお、冷媒循環量判定値X1,X2は、事前の試験等に基づいて決定される。
【0049】
ステップS32において、制御装置30は、X2<Gr1<X1であると判定した場合には(Yes)、ステップS33に進み、X2<Gr1<X1ではないと判定した場合には(No)、ステップS36に進む。
【0050】
ステップS33において、制御装置30は、ΔPhA<XPA、および、ΔPhB<XPBの少なくとも一方を満たすか否かを判定する。なお、XPA,XPBは、熱交換器圧力差判定値であり、事前の試験等に基づいて決定される。
【0051】
ステップS33において、制御装置30は、ΔPhA<XPA、および、ΔPhB<XPBの少なくとも一方を満たすと判定した場合には(Yes)、ステップS34に進み、ΔPhA<XPA、ΔPhB<XPBのいずれも満たさないと判定した場合には(No)、ステップS36に進む。
【0052】
ステップS34において、制御装置30は、Na<XNa、および、Nb<XNbの少なくとも一方を満たすか否かを判定する。なお、XNa,XNbは、熱交換効率判定値であり、事前の試験等に基づいて決定される。
【0053】
ステップS34において、制御装置30は、Na<XNa、および、Nb<XNbの少なくとも一方を満たす場合には(Yes)、ステップS35に進み、Na<XNa、および、Nb<XNbのいずれも満たさないと判定した場合には(No)、ステップS36に進む。
【0054】
ステップS35において、制御装置30は、ステップS32,S33,S34の条件をすべて満たす場合には、
図2に示す並列運転から
図3に示す直列運転に切り替えると判定する。
【0055】
ステップS36において、制御装置30は、ステップS32,S33,S34の少なくとも一つでも満たさない場合には、
図2に示す並列運転を継続すると判定する。
【0056】
図5のステップS30に戻り、ステップS40に進み、制御装置30は、熱交換器運転モードの切替が必要であるか否かを判定する。なお、運転モードの切替が必要であるか否かは、ステップS30の運転切替判定に基づいて判定される。
【0057】
ステップS40において、制御装置30は、運転モードの切替が必要であると判定した場合には(Yes)、ステップS50に進み、運転モードの切替が不要であると判定した場合には(No)、ステップS70に進む。
【0058】
ステップS50において、制御装置30は、運転モード切替指令を出力し、そしてステップS60に進み、
図2に示す並列運転から、
図3に示す直列運転に切り替わるように切り替える。なお、切替動作については、前記したので省略する。
【0059】
ステップS70において、制御装置70は、要求能力(要求負荷)の調整操作を実行する。要求能力調整操作は、製品が通常備えている自動機能の制御の一部であり、圧縮機2により冷凍サイクルを作動させることにより、熱媒体を所定の温度に近づける機能である。例えば、高圧圧力Pdと低圧圧力Ps、圧縮機2の吸込過熱度や吐出過熱度などの制御が行われる。具体的には、圧縮機2の回転速度Nc、ファン95A,95Bの回転速度(凝縮器側)、膨張弁5の開度PL、水流量調整(蒸発器側)を制御する。利用側熱交換器6A,6Bを切り替えた後に、要求能力に対して、熱媒体が所定の温度に制御できているかを再調整する。なお、他の自動機能としては、熱媒体の凍結防止のための保護運転、熱源側熱交換器4A,4Bの除霜運転などを挙げることができる。
【0060】
ここで、冷媒流路の切替の判定は、要求負荷が満足された状態で、圧縮機2のモータの回転速度の検出値から推定される冷媒の循環流量Gr1、圧力センサP1,P2,P3,P4の検出値から得られる利用側熱交換器6A,6Bにおける圧力差、温度センサT1,T2の検出値と熱媒体温度から得られる熱交換効率、の順に有効となり、成績係数が最適となるように制御装置30によって制御される。
【0061】
このように、要求負荷が減少し、利用側熱交換器6A,6Bを流れる冷媒循環量を減少させる場合には、利用側熱交換器6A,6Bを並列から直列に切り替える。なお、運転切替判定(S30)としては、
図8に示す処理に限定されず、例えば、以下に示す処理を実行してもよく、
図8に示す処理と組み合わせてもよい。例えば、冷媒の流れ方向と熱媒体の流れ方向とが対向して流れている際(熱媒体の流れも並列)、2つの利用側熱交換器6A,6Bの熱媒体の出入口の温度差が大きく異なると判定された場合、2つの利用側熱交換器6A,6Bに流れる冷媒量に偏りがあると推定する。
【0062】
2つの利用側熱交換器6A,6Bを流れる冷媒量に偏りがない場合(例えば、6A:6B=5:5)には、2つの利用側熱交換器6A,6Bの出入口の冷媒圧力損失(ΔPhA、ΔPhB)が判定値(XPA、XPB)よりも小さく、かつ、2つの利用側熱交換器6A,6Bのスーパーヒート(ΔTshA、ΔTshB)が判定値(事前の試験等により決定される値)よりも大きく、かつ、圧縮機2の入口での過熱度(SH)が判定値(事前の試験等により判定される)よりも大きいと判定したとき、利用側熱交換器6A,6Bを並列から直列に切り替える。
【0063】
2つの利用側熱交換器6A,6Bを流れる冷媒量に偏りがある場合(例えば、6A:6B=3:7)には、2つの利用側熱交換器6A,6Bのうち、どちらか一方の利用側熱交換器6A(または6B)の出入口の冷媒圧力損失ΔPhA(またはΔPhB)が判定値XPA(XPB)よりも大きく、かつ、2つの利用側熱交換器6A,6Bのうち、どちらか一方の利用側熱交換器6A(または6B)の出口の過熱度が判定値(事前の試験等により判定される)よりも大きいと判定したとき、利用側熱交換器6A,6Bを並列から直列に切り替える。
【0064】
また、要求負荷が増加し、利用側熱交換器6A,6Bを流れる冷媒量を増加させる場合には、利用側熱交換器6A,6Bを直列から並列に切り替える。例えば、冷媒の流れ方向と熱媒体の流れ方向とが対向して流れている際(熱媒体の流れも直列)、下流側の利用側熱交換器6A(または6B)を流れる冷媒の出口温度と、この冷媒の出口温度に対応する熱媒体の入口温度とを比較して熱媒体の入口温度よりも冷媒の出口温度が高いとき、下流側の利用側熱交換器6A(または6B)では熱交換不足であると推定して、利用側熱交換器6A,6Bを並列に切り替える。
【0065】
例えば、利用側熱交換器6A,6Bの出入口の圧力P1,P2から冷媒の飽和温度Tsat1,Tsat2を推算し、利用側熱交換器6A,6Bの熱媒体の出入口の温度変化を確認し、さらに利用側熱交換器6A,6Bの冷媒圧力損失ΔPhA(またはΔPhB)が所定範囲外であると判定した場合には、利用側熱交換器6A,6Bを直列から並列に切り替える。なお、冷媒の飽和温度の推定は、圧力センサP1,P2を検出して、予め記憶された圧力と飽和温度との関係を定めたテーブルに基づいて推定できる。
【0066】
また、要求負荷が減少し、利用側熱交換器6A,6Bを流れる冷媒量をさらに減少させる場合には、利用側熱交換器6A,6Bを直列から単段に切り替える。例えば、2つの利用側熱交換器6A,6Bのうち、下流側の利用側熱交換器6A(または6B)の出口の冷媒過熱度が増加し、かつ、圧縮機2の入口の冷媒過熱度が増加したと判定したとき、利用側熱交換器6A,6Bを単段に切り替える。なお、必要に応じて、使用していない方の利用側熱交換器6A(または6B)に液冷媒を貯留する運転を実行する。
【0067】
また、要求負荷が増加し、1台の利用側熱交換器6A(または6B)では、熱交換量が不足する場合には、利用側熱交換器6A,6Bを単段から直列に切り替える。例えば、冷媒の流れ方向と熱媒体の流れ方向とが対向して流れている際(熱媒体の流れも直列)、冷媒が流れている利用側熱交換器6A(または6B)の冷媒の出口温度と、対応する熱媒体の入口温度とを比較し、熱媒体の入口温度よりも冷媒の出口温度が高いと判定した場合には、熱交換不足と推定して、利用側熱交換器6A,6Bを直列に切り替える。
【0068】
例えば、利用側熱交換器6A(または6B)の出入口の圧力P1,P2から冷媒の飽和温度Tsat1,Tsat2を推算し、利用側熱交換器6A(または6B)の熱媒体の出入口の温度を確認し、さらに利用側熱交換器6A(または6B)の冷媒圧力損失ΔPhA(またはΔPhB)が所定範囲外であると判定した場合には、利用側熱交換器6A(または6B)を単段から直列に切り替える。なお、利用側熱交換器6A(または6B)に冷媒を貯留していた場合、必要に応じて、冷媒を冷凍サイクル内に放出する運転を実行する。
【0069】
このようにして、利用側熱交換器6A,6Bを並列(第1状態)から直列(第2状態)、直列(第2状態)から単段(第3状態)、単段(第3条体)から直列(第2状態)、力列(第2状態)から並列(第1状態)のいずれかに切り替える。
【0070】
なお、利用側熱交換器6A,6Bを切り替える運転モードと、冷却と加熱とを切り替える通常の運転モードとを、選択的に切り替えられるように構成してもよい。
【0071】
また、開閉弁V1,V2については、全開状態と全閉状態のみ動作する弁に限定されるものではなく、弁開度を調整する機構を有する流量制御弁を用いた構成であってもよい。これにより、利用側熱交換器6A,6Bの1次側伝熱路a1,b1の伝熱面に対して、好適な冷媒の流量が分配される。よって、利用側熱交換器6A,6Bの有効伝熱面積が確保され、成績係数がより最適となるように制御される。ちなみに、冷媒が利用側熱交換器6A,6Bの入口近くで蒸発してしまうとガスだけになり、それ以降の熱交換に寄与しなくなるので、利用側熱交換器6A,6Bの出口近くで蒸発が完了することで、有効伝熱面積が確保されることになる。
【0072】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば、
図9に示すように、利用側熱交換器6Aの冷媒の分配流路数と、利用側熱交換器6Bの冷媒の分配流路数とが異なるように構成してもよい。例えば、利用側熱交換器6Aの分配流路数を10本とし、利用側熱交換器6Bの分配流路数を20本とすることができるが、この関係に限定されるものではない。
【0073】
これにより、利用側熱交換器6A,6Bを単段で使用する場合において、分配流路数の多い利用側熱交換器6Bの途中で液冷媒の蒸発が完了し、その後の熱交換が行われなくなるときには、分配流路数の少ない利用側熱交換器6A側に切り替えて冷媒を流すことにより、利用側熱交換器6Aの途中で蒸発が完了するのを抑制できる。逆に、利用側熱交換器6A,6Bを単段で使用する場合において、液冷媒が分配流路数の少ない利用側熱交換器6A内で蒸発が完了せず、残りの液冷媒が圧縮機2に導入され、圧縮機2の不具合の原因となるおそれがあるときには、分配流路数の多い利用側熱交換器6B側に冷媒を流すことにより、利用側熱交換器6B内で液冷媒の蒸発を完了させることができるので、圧縮機2での不具合を防止できる。
【0074】
このように、膨張弁5から流出した気液二相状態の冷媒のうちの液冷媒の状態(量)に応じて、利用側熱交換器6A,6Bのいずれかに切り替えることにより、利用側熱交換器6A,6Bが互いに同じ分配流路数で構成されている場合よりも、より適切に熱交換を行うことが可能になり、成績係数を向上させることができる。
【0075】
ところで、冷凍サイクル装置100の配管8内には、圧縮機2から吐出された冷凍機油が冷媒とともに循環している。この冷媒は、気液二相状態で利用側熱交換器6A,6Bに流入して蒸発気化して圧縮機2に吸入される。このとき冷凍機油は、冷媒のガス流れに随伴されて流動するため、配管途中で滞留し難い配管構成とすることが望ましい。
【0076】
そこで、
図10に示すように、利用側熱交換器6A,6Bを直列で使用した場合(
図3参照)、利用側熱交換器6Bを冷媒が上昇するように配置し、利用側熱交換器6Aを冷媒が下降するように配置することで、下流側の利用側熱交換器6Aを通る冷媒が下降流となることにより、冷凍機油を圧縮機2の吸入側に戻し易くなり、圧縮機2での冷凍機油の減少を防ぐことができる。
【0077】
また、
図11に示すように、利用側熱交換器6A,6Bを直列に接続した場合、分配流路数が多い(最も多い)利用側熱交換器6Aを下流側(最も下流側)に配置する構成にしてもよい。
【0078】
つまり、下流側に配置される利用側熱交換器6Aの方が、蒸発が進行してガス冷媒が多くなり、ガス冷媒が狭い流路を流れることで圧力損失が増大する。そこで、利用側熱交換器6A,6Bを、
図11に示すように、下流側に位置する利用側熱交換器6Aの分配流路数を上流側よりも多くすることにより、圧力損失が増大するのを抑えることができる。また、
図11に示すように、利用側熱交換器6A,6Bを鉛直方向において上下に配置することにより、冷凍サイクル装置100の設置スペースを縮小することができる。
【0079】
図12は、利用側熱交換器の変形例を示す構成図である。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、重複した説明を省略する。なお、
図12では、第1実施形態での四方弁3と膨張弁5との間の構成のみを示し、その他の構成については図示を省略している。変形例では、別体で構成された利用側熱交換器6A,6Bに替えて、熱交換器6を備えたものである。
【0080】
図12に示すように、熱交換器6は、例えばプレート式の熱交換器であり、ひとつの熱交換器を内部で2つの冷媒流路に区画した第1熱交換部6C(利用側熱交換器)と第2熱交換部6D(利用側熱交換器)と、を有する。
【0081】
第1熱交換部6Cは、冷媒が通流する1次側伝熱路(1次側流路)c1と、熱媒体が通流する2次側伝熱路(2次側流路)c2と、を有する。第2熱交換部6Dは、冷媒が通流する1次側伝熱路(1次側流路)d1と、熱媒体が通流する2次側伝熱路(2次側流路)d2と、を有する。また、2次側伝熱路c2の一端と2次側伝熱路d2の一端とは、熱交換器6の内部で連通するように構成されている。これにより、第1熱交換部6Cおよび第2熱交換部6Dでは、それぞれ冷媒と熱媒体との間で熱交換が行われる。
【0082】
冷媒配管61は、膨張弁5(
図1参照)から延びる配管8dから分岐して第1熱交換部6Cの1次側伝熱路c1の一端と接続される配管61aと、配管8dから分岐して第2熱交換部6Dの1次側伝熱路d1の一端と接続される配管61bと、第1熱交換部6Cの1次側伝熱路c1の他端と接続される配管61cと、第2熱交換部6Dの1次側伝熱路d1の他端と接続される配管61dと、配管61cと配管61dとを合流させて四方弁3(
図1参照)と接続される配管8iと、から構成されている。
【0083】
第1切替手段60は、配管61aに設けられる開閉弁(遮断弁)V11と、配管61bに設けられる開閉弁(遮断弁)V22と、配管8iに設けられる開閉弁(遮断弁)V33と、一端が開閉弁V22と第2熱交換部6Dとの間の配管61bに接続されるとともに他端が開閉弁V33と四方弁3(
図1参照)との間の配管8iに接続される配管61sと、配管61sに設けられる開閉弁(遮断弁)V44とから構成されている。これら開閉弁V11,V22,V33,V44は、制御装置30(
図1参照)によって全開状態か全閉状態のいずれかに制御される。
【0084】
図13に示すように、負荷側の熱交換器40(
図1参照)に対して要求される要求負荷(Q1)が高い場合(例えば、定格運転時、過負荷運転時)には、第1熱交換部6Cと第2熱交換部6Dを並列(第1状態)に接続して冷媒を循環させるように冷媒流路の切替が行われる。
【0085】
すなわち、開閉弁V11,V22,V33を開弁するとともに開閉弁V4を閉弁することにより、膨張弁5(
図1参照)で減圧された冷媒(気液二相状態の冷媒)が、配管8d,61aを通って第1熱交換部6Cの1次側伝熱路c1に流入するとともに、配管8d,61bを通って第2熱交換部6Dの1次側伝熱路d1に流入する。そして、第1熱交換部6Cおよび第2熱交換部6Dから流出した冷媒は、配管61c,61dを通って配管8iにおいて合流する。
【0086】
図14に示すように、熱交換器40(
図1参照)に対して要求される要求負荷(Q2)が前記要求負荷(Q1)よりも低い場合(例えば、部分負荷運転時、Q2<Q1)には、第1熱交換部6Cと第2熱交換部6Dとを直列(第2状態)に接続して冷媒を循環させるように冷媒流路の切替が行われる。
【0087】
すなわち、開閉弁V22,V33を閉弁するとともに開閉弁V11,V44を開弁することにより、膨張弁5で減圧された冷媒(気液二相状態の冷媒)が、配管8d,61aを通って第1熱交換部6Cの1次側伝熱路c1に流入し、その後に配管61c,61dを通って第2熱交換部6Dの1次側伝熱路d1に流入する。第2熱交換部6Dから流出した冷媒は、配管61bの一部、配管61sを通って配管8iに至る。
【0088】
なお、第1熱交換部6C、第2熱交換部6Dの順に冷媒が直列に流れる場合を例に挙げて説明したが、第2熱交換部6D、第1熱交換部6Cの順に直列に冷媒が流れるようにしてもよい。
【0089】
図15に示すように、熱交換器40(
図1参照)に対して要求される要求負荷(Q3)が前記要求負荷(Q2)よりも低い場合(例えば、Q3<Q2)には、第1熱交換部6Cのみ(単段、第3状態)接続して冷媒を循環させるように冷媒流路の切替が行われる。
【0090】
すなわち、開閉弁V11,V33を開弁するとともに開閉弁V22,V44を閉弁することにより、膨張弁5で減圧された冷媒(気液二相状態の冷媒)が、配管8d,61aを通って第1熱交換部6Cの1次側伝熱路c1に流入し、配管61cを通って第1熱交換部6Cから流出する。
【0091】
なお、第1熱交換部6Cのみを利用する場合に限定されず、開閉弁V11,V44を閉弁するとともに開閉弁V22,V33を開弁して、第2熱交換部6Dのみに冷媒を循環させるように流路を切り替えてもよい。
【0092】
例えば、熱交換器40(
図1参照)に対する要求負荷が低く、冷媒の循環流量が少ない場合には、第1熱交換部6Cのみに冷媒を供給することで、冷媒流路(1次側伝熱路c1)に流入する冷媒量が増加するため、冷媒流路内の流速が増加し、冷媒側の熱伝達率が向上して良好な熱交換が行われ、要求される能力を得ることが可能になる。
【0093】
また、熱交換器40(
図1参照)に対する要求負荷が高く、冷媒循環量が多い場合には、第1熱交換部6Cと第2熱交換部6Dとを並列に接続して冷媒を供給することで、冷媒流路に流入する冷媒量が適正化されて、良好な熱交換が行われ、過度の圧力損失の増大を防ぐことができる。
【0094】
このように、要求負荷の低下に応じて第1熱交換部6Cおよび第2熱交換部6Dを並列、直列、単段に順に切り替えることで、冷凍サイクル装置100の成績係数を向上させることが可能になる。なお、冷媒流路を並列、直列、単段に切替える判定は、第1実施形態と同様に行われる。また、開閉弁V11,V22については、第1実施形態と同様に、全開状態と全閉状態のみ動作する弁に限定されるものではなく、弁開度を調整する機構を有する流量制御弁を用いた構成であってもよい。
【0095】
また、前記した変形例に係る実施形態においても、第1熱交換部6Cと第2熱交換部6Dの分配流路数を互いに異なる構成にしてもよい(
図9参照)。また、第1熱交換部6Cと第2熱交換部6Dを直列で使用する場合において、上流側の第1熱交換部6Cを流れる冷媒が上昇し、下流側の第2熱交換部6Dを流れる冷媒が下降するように、第1熱交換部6Cおよび第2熱交換部6Dを配置するようにしてもよい(
図10参照)。また、第1熱交換部6Cと第2熱交換部6Dを鉛直方向において上下に配置して直列で使用する場合において、最も下側に位置する第2熱交換部6Dの流路分配数が最も多くなるように構成してもよい(
図11参照)。
【0096】
(第2実施形態)
図16は、第2実施形態において熱媒体を並列に流すときの状態図、
図17は、第2実施形態において熱媒体を直列に流すときの状態図、
図18は、第2実施形態において熱媒体を単段に流すときの状態図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、異なる構成のみについて説明する。
【0097】
図16に示すように、冷凍装置1Aは、冷媒が循環する冷媒回路10と、利用側熱交換器6A,6Bに対する冷媒の流れを並列、直列、単段に切り替える第1切替手段20と、利用側熱交換器6A,6Bに対する熱媒体の流れを、並列、直列、単段に切り替える第2切替手段70と、を含む冷凍サイクル装置100Aを備えている。
【0098】
第2切替手段70は、配管62a,62b,62c,62d,62s、開閉弁V111,V222,V333,V444により構成されている。開閉弁V111,V222,V333,V444は、制御装置30により開閉制御される。
【0099】
配管62aは、負荷側の熱交換器40の一端と利用側熱交換器6Aの2次側伝熱路(2次側流路)a2の一端とを接続する。配管62bは、配管62aの途中と利用側熱交換器6Bの2次側伝熱路(2次側流路)b2の一端とを接続する。配管62cは、利用側熱交換器6Aの2次側伝熱路(2次側流路)a2の他端と熱交換器40の2次側伝熱路(2次側流路)b2の他端とを接続する。配管62dは、配管62cの途中と利用側熱交換器6Bの他端とを接続する。開閉弁V111は、利用側熱交換器6Aの2次側伝熱路(2次側流路)a2の一端と配管62bの接続点との間の配管62aに設けられている。開閉弁V222は、配管62bに設けられている。開閉弁V333は、熱交換器40の他端と配管62dの接続点との間の配管62cに設けられている。配管62sは、利用側熱交換器6Bの2次側伝熱路(2次側流路)b2の一端と開閉弁V222との間の配管62bと、熱交換器40の他端と開閉弁V333との間の配管62cとを接続する。開閉弁V444は、配管62sに設けられている。
【0100】
図16に示すように、開閉弁V111,V222,V333を開弁するとともに開閉弁V444を閉弁することにより、熱媒体の流れが並列に設定される。これにより、熱交換器40から流出した熱媒体が、配管62aを通って利用側熱交換器6Aの2次側伝熱路a2に流入するとともに、配管62aの一部、配管62bを通って利用側熱交換器6Bの2次側伝熱路b1に流入し、冷媒と熱交換する。そして、利用側熱交換器6A,6Bから流出した熱媒体は、配管62c,62dを通って熱交換器40に戻る。
【0101】
図17に示すように、開閉弁V222,V333を閉弁するとともに開閉弁V111,V444を開弁することにより、熱媒体の流れが直列に設定される。これにより、熱交換器40から流出した熱媒体が、配管62aを通って利用側熱交換器6Aの2次側伝熱路a2に流入して冷媒と熱交換を行い、その後に配管62c,62dを通って利用側熱交換器6Bの2次側伝熱路b2に流入して冷媒と熱交換を行う。利用側熱交換器6Bから流出した熱媒体は、配管62bの一部、配管62s、配管62cの一部を通って熱交換器40に戻る。
【0102】
図18に示すように、開閉弁111,V333を開弁するとともに開閉弁V222,V444を閉弁することにより、熱媒体の流れが単段に設定される。これにより、熱交換器40から流出した熱媒体が、配管62aを通って利用側熱交換器6Aの2次側伝熱路a2に流入して冷媒と熱交換を行い、その後に配管62cを通って熱交換器40に戻る。なお、この場合、利用側熱交換器6Aのみに冷媒が流れるように第1切替手段20が切り替えられる。
【0103】
ところで、冷凍装置1Aでは、熱媒体の流量分布に応じて冷媒の供給がなされるため、冷媒の流れを並列、直列または単段に切り替えるだけではなく、熱媒体の流れを並列、直列または単段に切り替えることにより、熱媒体の流量分布の不均一に起因する熱交換量の低下を抑制し、成績係数の向上に寄与することが可能になる。
【0104】
なお、利用側熱交換器6Aを単段で利用する場合に限定されず、開閉弁V111,V444を閉弁するとともに開閉弁V222,V333を開弁して、利用側熱交換器6Bを単段で接続して熱媒体を循環させるように流路を切り替えてもよい。
【0105】
また、利用側熱交換器6A,6Bにおいて、冷媒流路の切替(並列、直列、単段)と、熱媒体流路の切替(並列、直列、単段)と、を可能な限りのパターンで組み合わせてもよい。
【0106】
(第3実施形態)
図19は、第3実施形態に係る冷凍サイクル装置を備えた冷凍装置を示す全体構成図である。なお、第3実施形態の冷凍装置1Bは、第1実施形態に、冷媒を自然循環させる構成を追加した冷凍サイクル装置100Bを備え、第1実施形態に配管8t、開閉弁V5,V6,V7を追加した構成である。また、熱源側熱交換器4A,4Bと利用側熱交換器6A,6Bとの間には高低差が設けられている。つまり、熱源側熱交換器4A,4Bが鉛直方向(重力方向)の上側、利用側熱交換器6A,6Bが熱源側熱交換器4A,4Bよりも鉛直方向(重力方向)の下側となるように配置されている。また、膨張弁5は、冷媒の自然循環の制御に適した開度に調整されるようになっている。
【0107】
図19に示すように、配管8tは、一端が開閉弁V4と配管8iの接続点との間の配管8sに接続され、他端が四方弁3と熱源側熱交換器4A,4Bとの間の単一流路部分の配管8bに接続されている。
【0108】
開閉弁V5は、四方弁3と、配管8tの接続点との間の配管8bに設けられている。開閉弁V6は、四方弁3と、配管8sの接続点との間の配管8iに設けられている。開閉弁V7は、配管8tに設けられている。これらの開閉弁V5,V6,V7は、制御装置30により開閉制御される。開閉弁V5,V6が閉じるとともに開閉弁V7を開弁することで、開閉弁V3を通過した冷媒が、配管8sの一部、配管8tを通ることで、圧縮機2をバイパスして、熱源側熱交換器4A,4Bへと流れるようになっている。
【0109】
これにより、凝縮器として機能する熱源側熱交換器4A,4Bでは、冷媒が室外空気(外気)に放熱することにより、凝縮して液化する。密度が高い液冷媒は、重力の影響を受けて下降し、膨張弁5を通って、蒸発器として機能する利用側熱交換器6A,6Bに流入する。利用側熱交換器6A,6Bの1次側伝熱路a1,b1を流れる冷媒は、利用側熱交換器6A,6Bの2次側伝熱路a2,b2を流れる熱媒体と熱交換することにより、熱媒体から吸熱して、蒸発気化する。このとき、冷媒の密度差による圧力勾配が発生するため、利用側熱交換器6A,6Bで蒸発した冷媒は、配管8sの一部および配管8tを通って、熱源側熱交換器4A,4Bに向かって流れ、冷媒回路10を循環する。
【0110】
このような自然循環サイクルによる冷房運転は、一般に、中間期(外気温度が負荷側の要求温度よりも低い条件時)に実行される。この自然循環サイクルによる冷房運転が実行されるためには、外気温度と、負荷側の要求温度との間に、ある程度の温度差(例えば、ΔT=5℃)が必要である。なお、制御装置30は、外気温度センサ(不図示)の外気温度の条件と、負荷側の温度センサ(不図示)の要求温度差に応じて、利用側熱交換器6A,6Bの数、室外ファン95A,95Bの回速速度を制御する。
【0111】
このような冷凍装置1Bによれば、圧縮機2を運転せずに冷媒の自然循環サイクルによる冷房運転を行うことができるため、消費電力を低減することができる。なお、この自然循環では、前記した要求負荷(Q3)よりも低い場合に適用することができる。また、
図19に示す構成において、膨張弁5での圧力損失が大きい場合には、膨張弁5をバイパスするバイパス回路(開閉弁+バイパス配管、または、流量調整弁+バイパス配管)を設けて、冷媒の流量を調整するようにしてもよい。また、高低差を大きくすることにより、冷媒の循環量を増加させることができる。
【0112】
また、冷凍装置1Bでは、利用側熱交換器6A,6Bを並列に接続して冷媒を流す構成を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、直列または単段を選択するようにしてもよい。また、冷凍装置1Bにおいても、熱媒体の流れを並列、直列、単段を切り替える第2切替手段70(
図16参照)を追加してもよい。
【0113】
なお、前記した各実施形態では、冷凍サイクル装置の適用装置として、利用側熱交換器6A,6Bによって熱交換した熱媒体を負荷側の機器(熱交換器6C)に供給する冷凍装置1を例に挙げて説明したが、冷凍装置1に限定されるものではなく、空気調和装置などにも適用することができる。
【0114】
なお、前記した各実施形態では、利用側熱交換器を2つ備える場合を例に挙げて説明したが、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。