(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)である、請求項2に記載の式(1)の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物。
42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−3)である、請求項2に記載の式(1)の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物。
1molの42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物につき、前記トリフルオロメタンスルホン酸無水物を1〜10molの量で使用して、42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物のトリフラート中間体を得る、請求項6に記載の製造方法。
トリアルキルアミンが、N,N−ジ−イソプロピルエチルアミンまたはN,N−ジ−n−ブチルエチルアミンから選択され、1molのラパマイシンにつき5〜20molの量で反応に使用される、請求項6に記載の製造方法。
保存安定性を向上させるための酸化防止剤の添加により、精製された前記42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物が安定化される、請求項6に記載の製造方法。
酸化防止剤が、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、DL−α−トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールおよびフマル酸から選択され、100%(w/w)の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物に基づき、0.1%〜1.0%(w/w)の間で使用される、請求項12に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、抗増殖剤として有用であり、対応する42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物になるように42位のヒドロキシル基が修飾されたラパマイシンの一般構造を有する、ラパマイシンの新規化合物、およびそれらの調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上の目的に従って、本発明は、対応する42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物になるように42位のヒドロキシル基が修飾されたラパマイシンの新規化合物、およびそれらの調製方法を提供する。
【0012】
1つの態様に従って、本発明は、式1の新規42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
この式中のRは、3、4および5員3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物:テトラヒドロフラン−3−オール、オキセタン−3−オール、テトラヒドロピラン−3−オール、テトラヒドロ−4−メチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−2,5,5−トリメチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−2,5−ジエチル−2−メチルフラン−3−オール、テトラヒドロピラン−3−オール、テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル2H−ピラン−3−オールおよびテトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル2H−ピラン−3−オールを示す。
【0015】
したがって、1つの好ましい実施形態において、Rは、本明細書ではMerilimus−1と呼ぶ42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物に到達するために、テトラヒドロフラン−3−オールである。
【0016】
もう1つの好ましい実施形態において、Rは、本明細書ではMerilimus−2と呼ぶ42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物に到達するために、オキセタン−3−オールである。
【0017】
さらにもう1つの好ましい実施形態において、Rは、本明細書ではMerilimus−3と呼ぶ42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン化合物に到達するために、テトラヒドロピラン−3−オールである。
【0018】
もう1つの実施形態において、Rは、42−O−(4−メチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物に到達するために、3−フラノール,テトラヒドロ−4−メチル−である。
【0019】
さらにもう1つの実施形態において、Rは、42−O−(2,5,5−トリメチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物に到達するために、3−フラノール,テトラヒドロ−2,5,5−トリメチル−である。
【0020】
もう1つの実施形態において、Rは、42−O−(2,5−ジエチル−2−メチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物に到達するために、3−フラノール,テトラヒドロ−2,5−ジエチル−2−メチル−である。
【0021】
さらのもう1つの実施形態において、Rは、42−O−(2H−ピラン−3−イル,テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル)ラパマイシン化合物に到達するために、2H−ピラン−3−オール,テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル−である。
【0022】
さらにもう1つの実施形態において、Rは、42−O−(2H−ピラン−3−イル,テトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル)ラパマイシン化合物に到達するために、2H−ピラン−3−オール,テトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル−である。
【0023】
もう1つの態様に従って、本発明は、ラパマイシンをトリフル酸(トリフルオロメタンスルホン酸)無水物と反応させてトリフラート中間体を調製すること、さらに、それを3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物と反応させることにより所望の化合物を生じさせることによる、42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の製造方法を提供する。
【0024】
したがって、一般式(1)によって表される42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の製造方法は、ラパマイシンとトリフル酸無水物とを有機塩基およびハロゲン化有機溶媒の存在下で反応させてトリフラート中間体を調製すること、さらに、それを4、5または6員3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物とトリアルキルアミンおよび不活性有機溶媒の存在下で反応させることにより42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を生じさせることを含む。
【0025】
本発明による有機塩基をピリジンまたはその誘導体から選択することができる。ピリジン誘導体は、好ましくは2,6−ジメチルピリジンであり、それを1molのラパマイシンにつき3から15molの量で使用する。
【0026】
トリフル酸無水物は、1molの42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物につき1から10molの量で使用する。
【0027】
不活性有機溶媒は、ハロゲン化有機溶媒から選択され、それを1重量部のラパマイシンに対して10から30重量部の量で使用する。
【0028】
ハロゲン化有機溶媒は、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロベンゼンまたはクロロホルムから成る群より選択される。
【0029】
トリアルキルアミンは、トリエチルアミン、N,N−ジ−イソプロピルエチルアミンまたはN,N−ジ−n−ブチルエチルアミンから選択され、それを1molのラパマイシンにつき5から20molの量で反応に使用する。
【0030】
本発明のための3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物は、オキセタン−3−オール、テトラヒドロピラン−3−オール、テトラヒドロ−4−メチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−2,5,5−トリメチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−2,5−ジエチル−2−メチルフラン−3−オール、テトラヒドロピラン−3−オール、テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル2Hピラン−3−オールおよびテトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル2H−ピラン−3−オールから選択される。
【0031】
3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物を1molのラパマイシンにつき1から7molの量で反応に使用する。
【0032】
本発明の方法に従って得た粗製42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を、2本の異なるカラムを使用する分取HPLCによる二段階精製によって精製する。
【0033】
1重量部の粗製42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物に対して5から25重量部の量で分取HPLCにより第一の精製段階を行い、その後、第二のカラム精製段階を経て、HPLCにより少なくとも約95面積%、さらに好ましくはHPLCにより少なくとも約98面積%、の純度を有する42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を得る。
【0034】
本発明のプロセスに従って得た42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を、42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の保存安定性を向上させるための酸化防止剤の添加により、さらに安定させる。
【0035】
好ましい酸化防止剤は、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、DL−α−トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールおよびフマル酸から選択される。
【0036】
使用される酸化防止剤は、100%(w/w)の前記42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物に基づき0.1%から1.0%(w/w)である。
【0037】
さらなる態様では、本発明に従って調製された42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を、それらの生物活性、例えば血液適合性、溶血および細胞傷害性、について試験する。ラパマイシンとの比較で抗増殖効果についての42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の作用強度も評価する。
【0038】
さらにもう1つの態様において、本発明は、1つ以上の製薬用担体/賦形剤と会合している式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を含む医薬組成物を提供する。42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を含む医薬組成物は、所望の治療/臨床効果を達成するために様々な製剤に調製することができる。そのような製剤の製造方法は、当分野において周知であり、これらの方法において、活性成分を適する製薬用賦形剤/担体と混合して経口投与、注射剤投与、非経口投与、局所投与に適するまたは植込み型医療装置へのコーティングに適する所望の製剤を生じさせる。
【0039】
さらにもう1つの態様において、本発明は、哺乳動物における再狭窄および血管閉塞から成る群より選択される高増殖性血管疾患を予防または処置する方法を提供し、この方法は、1つ以上の製薬用担体と会合している式1の化合物を前記被験者に経口的に、非経口的に、静脈内的に、または1つ以上の製薬用担体と会合している式1の化合物を含浸させた植込み型医療装置によって投与することによる。
【0040】
さらにもう1つの態様において、本発明は、哺乳動物における動脈再狭窄を予防または処置する方法を提供し、この方法は、1つ以上の製薬用担体と会合している有効量の式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物でコーティングされた医療装置を植え込むことによる。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、高増殖性血管疾患の処置のための医薬品を調製するための、式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の使用を提供する。
【0042】
さらなる態様において、本発明は、動脈再狭窄の処置のための植込み型医療装置へのコーティングのための、式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の様々な態様をより十分に理解でき、的確に認識できるように、一定の好ましいおよび自由選択の実施形態に関連して本発明を詳細に説明する。
【0045】
したがって、本発明は、一般構造式(1)の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物、および精製42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を製造するための化学的方法を開示する。
【0047】
この式中のRは、テトラヒドロフラン−3−オール、オキセタン−3−オール、テトラヒドロピラン−3−オール、テトラヒドロ−4−メチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−2,5,5−トリメチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−2,5−ジエチル−2−メチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル2H−ピラン−3−オールおよびテトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル2H−ピラン−3−オールから選択される3、4および5員3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物を示す。
【0048】
したがって、本発明は、式(8)から(15)の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシンの下記化合物を包含する。
【0049】
1.テトラヒドロフラン−3−オール化合物
式(8)
【化3】
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)
【0050】
2.4−メチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物
式(9)
【化4】
42−O−(4−メチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン
【0051】
3.2,5,5−トリメチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物
式(10)
【化5】
42−O−(2,5,5−トリメチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン
【0052】
4.2,5−ジエチル−2−メチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物
式(11)
【化6】
42−O−(2,5−ジエチル−2−メチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン
【0053】
5.オキセタン−3−オール化合物
式(12)
【化7】
42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)
【0054】
6.テトラヒドロピラン−3−オール化合物
式(13)
【化8】
42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−3)
【0055】
7.42−O−(2H−ピラン−3−オール,テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル)化合物
式(14)
【化9】
42−O−(2H−ピラン−3−イル,テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル)ラパマイシン
【0056】
8.2H−ピラン−3−オール,テトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル−化合物
式(15)
【化10】
42−O−(2H−ピラン−3−イル,テトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル)ラパマイシン
【0057】
もう1つの実施形態において、本発明は、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物についてのプロセスを記載する。
【0058】
本発明のプロセスに従って、式(4)のピリジン誘導体の有機塩基を触媒として使用し、ハロゲン化有機溶媒の存在下で式(2)の出発反応物ラパマイシンを式(3)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させて、式(5)のトリフラート中間体を得る。この中間体を、式(7)のアルキルアミンおよびハロゲン化有機溶媒の存在下、式(6a)、(6b)または(6c)の4、5または6員3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物での置換反応にさらに付して、一般式(1)の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を得、それらを分離し、2段階のカラム精製プロセスに通して精製化合物(8〜15)を得る。このようにして得た精製42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物(8〜15)は、室温で多少不安定であることが認められるので、アセトン中のフェノール系酸化防止剤、例えばBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシトルエン)、の添加によってそれらを安定させる。その後、この均質混合物を単離し、凍結乾燥によって乾燥させて、最終固体誘導体を得る。
【0059】
関連反応物、塩基、溶媒および生成物についての式、定義および詳細な説明を、次のようにさらに説明する。
【0060】
ラパマイシン
本明細書において用いる場合のラパマイシンは、次の式によって表される構造を有する出発反応物である。
【0062】
アルキルトリフラート
前記アルキルトリフラートは、トリフルオロメタンスルホン酸無水物である、本発明による1つの方法。
【0063】
式(3)
【化12】
これは、本発明の反応にとって有益である高い安定性、高い活性および妥当な取り扱いやすさをもたらす。それを室温で保存することができる。
【0064】
有機塩基
有機塩基を触媒として使用し、式(4)のピリジン誘導体から選択することができる。
【0065】
式(4)
【化13】
式中のR
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、水素およびC
1〜C
10アルキル置換基から選択される。
【0066】
本発明の方法において、前記ピリジン誘導体は、2,6−ジメチルピリジンが挙げられる。
【0068】
有機溶媒
有機溶媒は、ハロゲン化アルキル、および塩化エチレン、塩化メチレン、クロロベンゼンまたはクロロホルムから選択される他の適する不活性ハロゲン化有機溶媒から選択することができる。
【0069】
トリフラート中間体
式(5)
【化15】
42−O−(トリフルオロメチルスルホニル)ラパマイシン
【0070】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物をトリフラート基の調製に選択する場合には、それを式(6a)、(6b)または(6c)の3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物の分子と反応させて、式中のRが下に示すような式(6a)、(6b)または(6c)の4、5および6員3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物から選択される式(1)の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を得る。
【0071】
4員環
式(6a)
【化16】
オキセタン−3−オール
【0074】
トリアルキルアミン
式(7)
【化19】
式中のR
1、R
2およびR
3はそれぞれ、C
1〜C
10アルキル置換基からそれぞれ選択され、本発明の方法において、前記トリアルキルアミンは、N,N−ジ−イソプロピルエチルアミンまたはN,N−ジ−n−ブチルエチルアミンが挙げられる。
【化20】
【0075】
42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシンの化合物は、式(8)から(15)を包含する。
【0076】
テトラヒドロ−3−オール化合物
式(8)
【化21】
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)
【0077】
上の化合物(8)について言えば、この場合、ラパマイシンの炭素番号42におけるヒドロキシル基がテトラヒドロフラン−3−オール化合物部分で修飾されている。
【0078】
4−メチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物
式(9)
【化22】
42−O−(4−メチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン
【0079】
上の化合物(9)について言えば、この場合、ラパマイシンの炭素番号42におけるヒドロキシル基が4−メチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物部分で修飾されている。
【0080】
2,5,5−トリメチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物
式(10)
【化23】
42−O−(2,5,5−トリメチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン
【0081】
上の化合物(10)について言えば、この場合、ラパマイシンの炭素番号42におけるヒドロキシル基が2,5,5−トリメチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物部分で修飾されている。
【0082】
2,5−ジエチル−2−メチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物
式(11)
【化24】
42−O−(2,5−ジエチル−2−メチル,テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン
【0083】
上の化合物(11)について言えば、この場合、ラパマイシン化合物の炭素番号42におけるヒドロキシル基が2,5−ジエチル−2−メチル,テトラヒドロフラン−3−オール化合物部分で修飾されている。
【0084】
オキセタン−3−オール化合物
式(12)
【化25】
42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)
【0085】
上の化合物(12)について言えば、この場合、ラパマイシン化合物の炭素番号42におけるヒドロキシル基がオキセタン−3−オール化合物部分で修飾されている。
【0086】
テトラヒドロピラン−3−オール化合物
式(13)
【化26】
42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−3)
【0087】
上の化合物(13)について言えば、この場合、ラパマイシン化合物の炭素番号42におけるヒドロキシル基がテトラヒドロピラン−3−オール化合物部分で修飾されている。
【0088】
42−O−(2H−ピラン−3−オール,テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル)化合物
式(14)
【化27】
42−O−(2H−ピラン−3−イル,テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル)ラパマイシン
【0089】
上の化合物(14)について言えば、この場合、ラパマイシン化合物の炭素番号42におけるヒドロキシル基が2H−ピラン−3−オール,テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル化合物部分で修飾されている。
【0090】
2H−ピラン−3−オール,テトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル−化合物
式(15)
【化28】
42−O−(2H−ピラン−3−イル,テトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル)ラパマイシン
【0091】
上の化合物(15)について言えば、この場合、ラパマイシン化合物の炭素番号42におけるヒドロキシル基が2H−ピラン−3−オール,テトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル化合物部分で修飾されている。
【0092】
本発明のラパマイシン,42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)化合物は、二反応工程で調製される。工程−1では、有機塩基および不活性有機溶媒の存在下でラパマイシンの42−ヒドロキシル基をアルキルトリフラートで活性化して、トリフラート中間体を形成する。42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物についてのトリフラート中間体の合成における有機溶媒は、出発原料および反応生成物を溶解するならば、ハロゲン化溶媒に特に限定されない。
【0093】
42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物についてのトリフラート中間体の合成では、有機溶媒を1重量部のラパマイシンに対して15重量部以上、好ましくは15から20重量部の量で使用すべきである。
【0094】
したがって、脱離基を有するラパマイシン,42−O−(トリフルオロメチルスルホニル)(トリフラート中間体)は、不活性塩化メチレンおよび触媒としての2,6−ルチジンの存在下、冷却温度条件および不活性窒素ガス環境下での乾燥ラパマイシンと対応するトリフルオロメタンスルホン酸無水物との反応によって、容易に調製される。本発明のプロセスによる42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物についてのトリフラート中間体の合成では、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)無水物を1molのラパマイシンにつき3mol以上、好ましくは3から7molの量で使用すべきである。
【0095】
本発明のプロセスによる42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物についてのトリフラート中間体の合成では、2,6−ルチジンを1molのラパマイシンにつき6mol以上、好ましくは6から10molの量で使用すべきである。反応中に活性化剤トリフルオロメチルスルホン酸無水物がトリフルオロメタンスルホン酸を形成するので、反応混合物の酸性度の上昇を防止するために2,6−ルチジンを反応に添加する。したがって、2,6−ルチジンは、酸掃去剤として作用して、反応を前方に進ませる。トリフラート中間体の合成の際の反応温度は、−10から−60℃であり、好ましくは−20から−40℃の温度である。
【0096】
42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物についてのトリフラート中間体の合成では、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)無水物の添加後、反応混合物を放置して−20から10℃の温度(好ましくは、−20から0℃の温度である)に温める。
【0097】
42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物についてのトリフラート中間体の合成では、反応混合物を10から80分間(好ましくは、20から40分である)撹拌して、淡黄色粘性塊を得る。
【0098】
工程−2では、N,N−ジ−n−ブチルエチルアミンまたはN,N−ジ−イソプロピルエチルアミンから選択される、適切なトリアルキルアミン触媒の存在下、3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物での脱離基の置換によって、42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を調製する。
【0099】
トリフラート中間体からの42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の合成では、N,N−ジ−イソプロピルエチルアミンまたはN,N−ジ−n−ブチルエチルアミンを1molのラパマイシンにつき10mol以上、好ましくは10から15molの量で使用すべきである。
【0100】
トリフラート中間体からの42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の合成では、3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物での置換後、反応混合物を放置して、−20から10℃の温度(好ましくは、−10から10℃の温度である)に温める。
【0101】
トリフラート中間体からの42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の合成では、3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物での置換後、反応混合物を12から96時間(好ましくは、36から60時間である)、5から35℃の温度で、好ましくは10から25℃の温度で撹拌する。
【0102】
3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物は、商業的に容易に入手できる製品、例えばオキセタン−3−オール、テトラヒドロピラン−3−オール、テトラヒドロ−4−メチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−2,5,5−トリメチルフラン−3−オール、テトラヒドロ−2,5−ジエチル−2−メチルフラン−3−オール、テトラヒドロピラン−3−オール、テトラヒドロ−6−メトキシ−2−メチル2H−ピラン−3−オール、テトラヒドロ−2,2−ジメチル−6−フェニル2H−ピラン−3−オールなど、の中から本発明のために選択される。
【0103】
上で説明したような反応に従って得た粗製42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を減圧下で蒸発によって濃縮して淡黄色粘性塊を得、それを従来の手法、例えば抽出、沈殿、分別結晶、再結晶、クロマトグラフィーなど、で精製および単離する。
【0104】
すべての実施形態において、所望の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物は、副生成物から好ましくは二精製段階、例えば分取HPLCおよびCombiFlashカラムクロマトグラフィー法、によって容易に分離される。
【0105】
精製42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物は、ポリエンマクロライドであるので、保存または取り扱い中に酸化および分解する傾向がある。したがって、安定性を向上させるために、アセトン中の適切な酸化防止剤を濃縮42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物に混合した後、単離および乾燥工程に進む。
【0106】
適する酸化防止剤は、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、DL−α−トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールおよびフマル酸から選択することができる。
【0107】
3,5−ジ−tert−4−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)は、本発明での使用に適合した最も好ましい酸化防止剤である。
【0108】
上で説明したプロセスに従って得た均質反応混合物を最後に単離し、乾燥させて、本発明の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を良好な単離収率で得る。
【0109】
精製42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物は、白色粉末であり、医療装置のコーティング、取り扱い、保存および安定性のために容易に使用することができる。
【0110】
このようにして得た精製42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を、スペクトル研究、例えば核磁気共鳴(NMR)、質量スペクトル(MS)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、によって分析して同定する。
【0111】
さらにもう1つの実施形態において、本発明は、1つ以上の製薬用担体/賦形剤と会合している式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を含む医薬組成物を提供する。42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を含む医薬組成物を、所望の治療/臨床効果を達成するために様々な製剤に調製することができる。そのような製剤の製造方法は当分野において周知であり、これらの方法において、活性成分を適する製薬用賦形剤/担体/支持体と混合して、経口投与、注射剤投与、非経口投与、局所投与にまたは植込み型医療装置へのコーティングに適する所望の製剤を生じさせる。使用される製薬用賦形剤/担体としては、希釈剤、滑沢剤、結合剤、乳化剤、崩壊剤、発泡性混合物、吸収剤、着色剤、着香剤および甘味料などが挙げられる。希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリセロールなどから選択される。滑沢剤は、ケイ酸、タルク、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコールなどから選択される。結合剤は、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン、例えばコーンスターチ、小麦デンプンまたは米デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどから選択される。崩壊剤は、デンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩などから選択される。
【0112】
医療装置、例えば冠動脈ステントもしくは他の血管ステント、へのコーティングのための典型定な製剤の例を本明細書において下で説明する。製剤の他の組成物も可能であると解釈し、これらが式1の唯一可能な製剤であると考えてはならない。
【0113】
下で説明する組成物は、とりわけ動脈再狭窄を予防するための血管処置に使用することができる。ナノサイズ粒子を含有する製剤を、非経口もしくは経口経路による投与、または医療装置、例えばステントまたはバルーンカテーテル、を植え込むことによる疾患部位への直接送達による投与に使用することもでき、医療装置の場合、薬物は、ステントにまたはカテーテルのバルーンにコーティングされる。
【0114】
支持体/担体/賦形剤粒子は、42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物への結合におよび製剤からの薬物の放出速度の制御に役立つ。製剤を場合によってはナノ粒子に変換することができる。適する支持体は、脂質(単数もしくは複数)または生体分解性/非分解性ポリマー(単数もしくは複数)およびそれらのナノ粒子である。これらの支持体は安全であり、全身循環での使用歴がある。
製剤に適する支持体は、非常に多数あり、様々である。一般的な選択基準は、42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を担持することができる支持体である。
【0115】
生体分解性ポリマー支持体としては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ無水物およびこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。非分解性ポリマー支持体としては、ポリウレタン;シリコーン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンコポリマー;アクリル系ポリマーおよびコポリマー;ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー、例えばポリ塩化ビニル;ポリビニルエーテル、例えばポリビニルメチルエーテル;ポリハロゲン化ビニリデン、例えばポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデン;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族、例えばポリスチレン;ポリビニルエステル、例えばポリ酢酸ビニル;ビニルモノマー同士のまたはビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー、例えばエチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルスチレンコポリマー、セルロース;酢酸セルロース;酪酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル;およびカルボキシメチルセルロース、ポリアミド、例えばナイロン66およびポリ化プロラクタムならびにこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0116】
脂質支持体としては、硬化ヒマシ油、硬化パーム油、硬化大豆油、硬化綿実油、硬化落花生油、硬化ヤシ油、硬化ロート油(hydrogenated Turkish red oil)、硬化オリーブ油、硬化イソブテン油およびこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0117】
もう1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物における再狭窄および血管閉塞から成る群より選択される高増殖性血管疾患を処置する方法を提供し、この方法は、1つ以上の製薬用担体と会合している抗増殖有効量の式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を前記哺乳動物に経口的に、非経口的に、静脈内的に、または式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を含浸させた血管ステントで被覆された植込み型医療装置によって投与することによる。哺乳動物における再狭窄および血管閉塞は、感染性障害または代謝障害に起因し得る。
【0118】
さらなる実施形態において、本発明は、哺乳動物における動脈再狭窄を予防または処置する方法を提供し、この方法は、1つ以上の製薬用担体と会合している有効量の式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物でコーティングされた医療装置を植え込むことによる。
【0119】
さらなる実施形態において、本発明は、高増殖性血管疾患の処置のための医薬品を調製するための、式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の使用を提供する。
【0120】
さらなる実施形態において、本発明は、動脈再狭窄の処置のための植込み型医療装置にコーティングするための、式1の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の使用を提供する。
【0121】
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシンおよび42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物の生体適合性研究をin−vitroで試験する。細胞傷害性、溶血および血液適合性研究についての試験の詳細を実施例3にて説明し、結果を表3a、3b、3c
1および3c
2に示す。
【0122】
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシンおよび42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物の作用強度研究をin−vitroで試験し、親分子、ラパマイシン、の作用強度と比較する。この試験手順を実施例4にて説明し、結果を
図3aおよび3bに示す。
【0123】
42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物についてのプロセスは、本発明の合成方法との関連でより良く理解されるであろう。
【実施例】
【0124】
好ましい実施形態を含む以下の実施例は、本発明の実施の例証に役立つことであろう。示す詳細は例としてのものであり、本発明の好ましい実施形態の例証的考察を目的とするものである。
【0125】
実施例1
本発明による42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の効率的生産のためのプロセスを以下の実施例にかんがみて詳細に説明することとする。
【0126】
実施例1A
工程1:ラパマイシンの42−Oヒドロキシのトリフルオロメタンスルホン酸脱離基への転化:
マグネティックスターラーを装着した丸底反応フラスコ(100mL、火炎乾燥済み)に、4.2グラム(4.6mmol)の乾燥ラパマイシン、2.95グラム(27mmol)の2,6−ジメチルピリジンおよび42mLのジクロロメタンを添加した。その反応混合物を脱気し、フラスコを窒素ガスでパージし、撹拌した。
【0127】
その後、フラスコ内の反応混合物をアセトニトリル−ドライアイス浴で−30℃の温度に冷却し、アルゴン下で10mLのジクロロメタン中の3.96グラム(13.8mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)無水物をその中にゆっくりと滴下した。滴下後、その反応溶液を放置して−10℃の温度に温め、−10℃と0℃の間の温度で30分間撹拌して工程1のためのトリフラート中間体を得た。この反応混合物は、淡黄色粘性塊になった。HPLCは、残留ラパマイシンが残存しないことを示し、これは反応の完了を示した。
【0128】
【化29】
【0129】
実施例1B
工程2:42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を合成するための5員3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物での脱離基の置換
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−1)の調製
工程−1のトリフラート中間体が入っている反応フラスコを−30℃の温度に再び冷却し、5.94グラム(46mmol)のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加し、続いて塩化メチレン中の1.2グラム(13.8mmol)のテトラヒドロフラン−3−オール化合物を添加した。その反応混合物を0℃の温度で12時間撹拌した。その後、反応混合物を放置して25℃の温度に温め、48時間撹拌し続けた。
【0130】
その反応混合物を減圧下での蒸発によってさらに濃縮して、淡黄色粘性塊を得た。反応塊の定量的HPLCは、68%の理論収率を示す。この塊を分取HPLC(MeOH(65%):ACN(15%):H
2O(20%))によって精製して所望の生成物を約70%の純度で得た。CombiFlash(ヘキサン中0〜40%EtOAc)によるさらなる精製を行って、HPLCにより98.6%の純度を有する42−O−(テトラヒドロフラン−3−オール)ラパマイシン化合物を得た。その後、アセトン中の安定剤BHTをこの精製化合物と均質混合し、単離および乾燥工程を行って、42−O−(テトラヒドロフラン−3−オール)ラパマイシン化合物の白色固体粉末を得た。
【0131】
【化30】
【0132】
このようにして得た42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物を分析によって同定した。
【0133】
実施例1C
工程2:42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を合成するための4員3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物での脱離基の置換
42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)の調整
工程−1のトリフラート中間体が入っている反応フラスコを−30℃の温度に再び冷却し、5.94グラム(46mmol)のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加し、続いて塩化メチレン中の1.25グラム(13.8mmol)のオキセタン−3−オール化合物を添加した。その反応混合物を0℃の温度で12時間撹拌した。その後、反応混合物を放置して25℃の温度に温め、48時間撹拌し続けた。
【0134】
その反応混合物を減圧下での蒸発によってさらに濃縮して、淡黄色粘性塊を得た。反応塊の定量的HPLCは、71%の理論収率を示す。この塊を分取HPLC(MeOH(65%):ACN(15%):H
2O(20%))法によって精製して所望の生成物を約75%の純度で得た。CombiFlash(ヘキサン中0〜40%EtOAc)によるさらなる精製を行って、HPLCにより97.7%の純度を有する42−O−(オキサタン(oxatan)−3−イル)ラパマイシン化合物を得た。その後、アセトン中の安定剤BHTを精製化合物と均質混合し、単離および乾燥工程を行って、42−O−(オキサタン(oxatan)−3−イル)ラパマイシン化合物の白色固体粉末を得た。
【0135】
【化31】
【0136】
このようにして得た42−O−(オキサタン(oxatan)−3−イル)ラパマイシン化合物を分析によって同定した。
【0137】
実施例1D
工程2:42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を合成するための6員3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物での脱離基の置換
42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−3)の調製
工程−1のトリフラート中間体が入っている反応フラスコを−50℃の温度に再び冷却し、6.07グラム(46mmol)のN,N−ジ−n−ブチルエチルアミン(DNBEA)を添加し、続いて塩化メチレン中の1.17グラム(13.8mmol)のテトラヒドロピラン−3−オール化合物を添加した。その反応混合物を−10℃の温度で12時間撹拌した。その後、反応混合物を放置して15℃の温度に温め、48時間撹拌し続けた。
【0138】
その反応混合物を減圧下での蒸発によってさらに濃縮して、淡黄色粘性塊を得た。反応塊の定量的HPLCは、62%の理論収率を示す。この塊を分取HPLC(MeOH(65%):ACN(15%):H
2O(20%))によって精製して所望の生成物を約65%の純度で得た。CombiFlash(ヘキサン中0〜40%EtOAc)によるさらなる精製を行って、HPLCにより97.3%の純度を有する42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン化合物を得た。その後、アセトン中の安定剤BHTをこの精製化合物と均質混合し、単離および乾燥工程を行って、42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン化合物の白色固体粉末を得た。
【0139】
【化32】
【0140】
このようにして得た42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン化合物を分析によって同定した。
【0141】
同様に、実施例1の工程−2において説明した反応手順を用いることにより工程1のトリフラート中間体を対応する3−ヒドロキシヘテロアルコキシアルキル化合物で処理することによって、式(9)、(10)、(11)、(14)および(15)のその他の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を調製した。
【0142】
42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の特性評価
四連続バッチから得た42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物により反復分析で以下の値を得た。
【0143】
HPLC:
42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の純度を確認するために、以下の条件に従って高速液体クロマトグラフィー、Phenomenex Synergi Hydro−RP 80a(250×4.6)mm、4マイクロメートルカラムを使用した。移動相は、65:15:20=メタノール:アセトニトリル:水混合物であった。検出器を276nmに設定し、流量を1.5mL/分に調節した。カラム温度は40℃であった。2.0μgの42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物を5.0μLメタノールの容量で50分の実行時間でカラムに注入した。
【0144】
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−1)化合物、42−O−(オキサタン(oxatan)−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−2)化合物および42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−3)化合物についての純度は、それぞれ98.54%、97.21%および97.34%(3回の実行の平均値;SD=0.2)と測定された。
【0145】
【表1】
【0146】
スペクトル研究:
1HNMR研究を出発原料ラパマイシンおよびそのヘテロアルコキシアルキル化合物について行う。比較すると、明確に同定されるヘテロアリール化合物に対応する追加のプロトンピークがあることに気づく。42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシンの少数の化合物の研究について下で論ずる。
【0147】
1)42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−1)化合物
I)ラパマイシンの酸素に付いている1個のプロトン(テトラヒドロフラン環)に対応する4.3ppmのプロトン。
【化33】
C−42−ラパマイシン誘導体
II)3.7から3.9ppmで同定される、他の2つのメチレンエーテルに結合しているプロトン(4個のプロトン)。
【化34】
C−42−ラパマイシン誘導体
III)メチレンの2個のプロトンが、(他のピークとマージして)1.7ppm付近で同定される。
【化35】
C−42−ラパマイシン誘導体
【0148】
上で述べた(ポイントI、IIおよびIII)H−NMRデータは、テトラヒドロフラン環がラパマイシンに付いていることを明確に示している。残りのピークは、ラパマイシンと同一である。
【0149】
2)42−O−(オキサタン(oxatan)−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−2)化合物
I)ラパマイシンの酸素に付いている1個のプロトン(オキサタン(oxatan)環)に対応する4.3ppmのプロトン。
【化36】
C−42−ラパマイシン誘導体
II)3.6から3.8ppmで同定される、他の2つのメチレンエーテルに結合しているプロトン(4個のプロトン)。
【化37】
C−42−ラパマイシン誘導体
【0150】
上で述べた(ポイントIおよびII)H−NMRデータは、オキサタン(oxatan)環がラパマイシンに付いていることを明確に示している。残りのピークは、ラパマイシンと同一である。
【0151】
3)42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−3)化合物
I)ラパマイシンの酸素に付いている1個のプロトン(テトラヒドロピラン環)に対応する4.3ppmのプロトン。
【化38】
C−42−ラパマイシン誘導体
II)3.5から3.7ppm付近で同定される、他の2つのメチレンエーテルに結合しているプロトン(4個のプロトン)。
【化39】
C−42−ラパマイシン誘導体
III)2つのメチレンの4個のプロトンが、(他のピークとマージして)1.7から2.0ppm付近で同定される。
【化40】
C−42−ラパマイシン誘導体
【0152】
上で述べた(ポイントI、IIおよびIII)H−NMRデータは、テトラヒドロピラン環がラパマイシンに付いていることを明確に示している。残りのピークは、ラパマイシンと同一である。
【0153】
42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の様々な化学構造をイオントラップ型LC質量分析によってさらに検証する。結果は、42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物のすべての化学構造と一致する。
【0154】
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−1、C
55H
85NO
14)化合物、42−O−(オキサタン(oxatan)−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−2、C
54H
83NO
14)化合物および42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル),ラパマイシン(Merilimus−3、C
56H
87NO
14)化合物についてのm/zピークは、それぞれ、984.13、970.20および998.18で観察され、これらが本発明の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の構造をさらに確証した。
【0155】
実施例2
様々な42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の安定性分析
本方法によって調製したすべての42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物は不安定であり、この故に時が経つにつれてそれらの純度は低下する。この純度損失は、上昇した温度でのほうが高かったが、純度プロフィールの明らかな変化はなかった。表2Aは、異なる時間間隔および温度条件での様々な42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の純度を提示するものである。実施例は、密封容器内で25℃ででさえ、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)化合物の純度は、12週間の期間に98.7%から94.1%に低下し、42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)化合物については97.6%から93.9%に低下し、および42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−3)化合物については12週間の期間に97.6%から93.5%に低下することを示す。これらの純度損失は、密封容器内で25℃に保ったときに対して40℃で保持したときには、まさに12週間の間にMerilimus−1については98.6%から93.5%に、Merilimus−2については97.3%から92.7%におよびMerilimus−3については97.5%から91.6%に増加された。
【0156】
本発明者らは、様々なBHT濃度を用いて、上で述べたような様々な42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の安定性研究も行った。この研究は、40℃の温度で密封容器内で8週間行った。
【0157】
密封容器内で、実施例1において説明した手順に従って得た42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物に、100%(w/w)の42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物に基づき0.1%、0.2%、0.5%および1.0%(w/w)の濃度の酸化防止剤、すなわちブチルヒドロキシトルエン(すなわちBHT)、をそれぞれ添加して、40℃の温度での安定性を研究する。Merilimus−1およびMerilimus−2中の様々なBHT濃度に関する研究成果は、8週間の保存の後でさえ純度の喪失がさほど有意でなかった、すなわちそれぞれ98.3%および97.4%であった、ことを明示する。しかし、42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−3)化合物の場合、1.0%BHT濃度ででさえ安定性が94.9%へと大幅に低下した。比較として、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)化合物、42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)化合物および42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−3)化合物への0.0%の酸化防止剤(BHT)の添加により結果として8週間の保存後にそれぞれ94.7%、93.6%および92.3%へと純度が低下した対照試験を提供する。異なる時間間隔で確認した、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物、42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物および42−O−(テトラヒドロピラン−3−イル)ラパマイシン化合物に添加したときの異なる量の酸化防止剤の添加に伴う純度データを下に挙げる表2Bに要約する。
【0158】
【表2A】
【0159】
【表2B】
【0160】
これらの様々な安定性研究結果は、立体障害が42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の安定性に有意な役割を果たすことを示している。様々な4員、5員および6員42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の安定性研究成果データを比較すると、立体障害効果により安定性の順序が6員基および嵩高い分子化合物に向う方向とは逆になっている。Merilimus−1、Merilimus−2およびMerilimus−3を含むすべての42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物についての、BHTなしのおよび1.0%BHTを用いる40℃の温度での8週間までの安定性データを
図2Aおよび2Bにそれぞれ示す。
【0161】
例えば、これらの所見は、42−O−(ヘテロアルコキシアルキル)ラパマイシン化合物の安定性を維持する点での酸化防止剤の重要性に関する、ならびに生体適合性および抗増殖研究を計画するためのより熱安定性の高い42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)および42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)のさらなる選択に関する有用な詳細をもたらす。
【0162】
実施例3
42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシンおよび42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物のin−vitro生体適合性試験
3a.細胞傷害性試験
in−vitro評価を行って、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシンおよび42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物の細胞傷害性または壊死性の可能性を抽出法により確認した。この研究では、被験物質の抽出物をL−929(ATCC細胞株CCL−1、NCTCクローン929)ハツカネズミ(Mus Musculus)マウス繊維芽細胞の多重培養物と接触した状態を48時間保った。細胞を顕微鏡検査して、その総体的形態、空胞化、剥離、細胞溶解および膜完全性についての変化を評価した。試験結果を表3aに示す。
【0163】
【表3a】
【0164】
細胞傷害性試験所見に基づき、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)化合物および42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)化合物は、細胞に対する傷害効果を一切示さず、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシンおよび42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物は両方とも、このin−vitro細胞傷害性試験の要件を満たしていた。
【0165】
3b.溶血試験
ウサギ血液を用いてin−vitro法により溶血試験を行って、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)化合物および42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)化合物の溶血効果を確認した。この研究では、3つ1組の被験物質抽出物をウサギ血液と接触した状態に保ち、4時間インキュベートした。分光光度計において540nmでの標準溶液の吸収と比較することにより、上清中の遊離した血漿ヘモグロビンの濃度を算出した。溶血指数を標準的な式によって算出した。結果を表3bに要約する。
【0166】
【表3b】
溶血指数=放出されたヘモグロビン(mg/mL)/存在するヘモグロビン(mg/mL)×100
【0167】
溶血指数計算結果は、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物抽出物については1.7、および42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物抽出物については1.9であった。
【0168】
溶血指数結果に基づき、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物および42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物は、非溶血性を示し、この溶血試験の要件を満たす。
【0169】
3c.血液適合性試験
医療装置のために血液適合性試験を行って、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシンおよび42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物と接触する血液の生物学的安定性を評価する。被験物質とウサギ血液の相互作用を、血栓形成、凝固、血小板数および白血球数について確認した。試験結果を表3cおよび3dに示す。
【0170】
【表3c】
【0171】
【表3d】
【0172】
上記に基づき、すべてのパラメータが正常限界範囲内に入ったので、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物および42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物についてのすべての血液学的所見は、それらの対応する対照と比較して有意な変化を示さなかった。そのため、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物および42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物は両方とも、血液適合性であり、この血液適合性試験の要件を満たす。
【0173】
実施例4
42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物および42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物のin−vitro作用強度
新規mTOR阻害剤42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物および42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物とラパマイシンの相対的抗増殖効果のin−vitro評価をヒトおよびウサギ平滑筋細胞培養モデルで行った。このin−vitro評価では、ヒト大動脈およびウサギ腸骨(illiac)動脈平滑筋細胞培養物を、細胞培養培地中5桁の濃度にわたる漸増用量の42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物、42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物およびラパマイシンに付した。細胞培養物の再生能力を、薬物曝露後、生存細胞を変色させるブロモデオキシウリジン(BrdU)着色試薬の添加により評価した。分光光度計マイクロプレートリーダー(BMG Labtech、FLUOstar OPTIMA)を使用して450nmの波長で着色の程度を定量した。より高いOD読取り値は、細胞DNAへのBrdUの取り込み増加を表し、したがって、より活発な増殖を表す。対照的に、より低いOD値は、BrdUに基づきより少ない取り込み、および細胞阻害へのシフトを表す。100%非阻害成長を表す陽性対照OD値を引くことによって、成長阻害を算出した。
【0174】
42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシンおよび42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物の作用強度をin−vitroで試験し、ラパマイシンの作用強度と比較した。試験結果の値を
図3Aおよび
図3Bに示す。
【0175】
これらの結果の要約は、42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)化合物および42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)化合物が、5桁の濃度にわたってhAoSMCとRbIASMC両方の平滑筋細胞の成長抑制に関して同様の作用強度を有することの例証となる。本発明の42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン化合物および42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン化合物が平滑筋細胞の成長をラパマイシンより有効に阻害することも観察された。
【0176】
実施例5
支持体としての生体分解性ポリマーの混合物80mg ポリL−ラクチド、23mg ポリ(ラクチド−co−グリコリド)と、59mg 42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)とを使用する製剤を50mLの二塩化メチレン溶媒に溶解して、明澄透明溶液を得る。その後、この溶液を医療装置表面にスプレーコーティングする。ポリビニルピロリドンのような急速放出性ポリマーの最上部保護層を、場合によっては設けてもよい。その後、溶媒を真空下で除去してもよい。
【0177】
実施例6
支持体としての脂質70mg 硬化ヒマシ油と、47mg 42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)とを使用する製剤を50mLの二塩化メチレン溶媒に溶解する。その後、この明澄透明溶液を医療装置表面にスプレーコーティングする。ポリビニルピロリドンのような急速放出性ポリマーの最上部保護層を、場合によっては設けてもよい。その後、溶媒を真空下で除去してもよい。
【0178】
実施例7
支持体としての生体分解性ポリマーナノ粒子の混合物800mg ポリL−ラクチド、300mg ポリ(ラクチド−co−グリコリド)と、250mg 42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)を使用する製剤を25mLの塩化メチレンに溶解する。その後、この溶液を、650mg オレイン酸ナトリウムと250mg ビタミンE−TPGSの150mLの水溶液に、高速撹拌しながら徐々に添加する。この結果、安定した懸濁液を得る。高圧ホモジナイザーに何度も通すことによって粒径を低減させる。得られた粒径は、50nmと250nmの間であった。
【0179】
実施例8
固体脂質ナノ粒子900mg 硬化ヒマシ油の支持体と、225mg 42−O−(テトラヒドロフラン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−1)とを使用する製剤を15mLの二塩化メチレンに溶解する。その後、この溶液を、500mg Poloxamer−188と150mg ビタミンE−TPGSの150mLの水溶液に、高速撹拌しながら徐々に添加する。この結果、安定した固体薬物−脂質懸濁液を得る。高圧ホモジナイザーに何度も通すことによって所望の粒径範囲を達成した。得られた粒径は、50nmと450nmの間であった。
【0180】
同様に、42−O−(オキセタン−3−イル)ラパマイシン(Merilimus−2)についての医薬組成物を、実施例5、6、7および8において説明したように調製する。