【実施例】
【0062】
実施例1
実験方法
マウス抗マウスCD20 18B12の産生。マウス抗mCD20ハイブリドーマ18B12およびそのアイソタイプ変異体の産生を、参照により本明細書に組み込まれる、特許出願米国特許第2007/0136826 A1号に記載のように行った。
【0063】
マウス。NOD(雌雄)、雌SJL、雄SWR、雄NOR、雄C.B−17、雄C57BL/6およびBALB/c(雌雄)マウスをジャクソン・ラボラトリー(メイン州、バーハーバー)から購入し、バイオジェン・アイデック社にて動物施設で飼育した。NOD、NOR、SJLおよびC.B−17マウスは、IgG2a(IgG2c)のIgh−1bアレルを発現し、BALB/cマウスは、Igh−1aアレル(IgG2a)を発現し、SWRマウスはIgh−1c遺伝子を発現する。NORマウスは、糖尿病関連遺伝子をマップするために、NODゲノムの制限領域(約15%)がC57BL/KsJ系統由来のゲノムにより置換されているリコンビナントコンジェニック系統である(Serreze et al., 1994)。マウスは全ての試験開始時に8〜12週齢であった。NODマウスを、記載した以外の全ての抗イディオタイプ抗体産生試験に使用した。BALB/cマウスを抗イディオタイプモノクローナル抗体5A7による18B12抗体の生体内での無力化の効果を評価するために使用した。全ての動物プロトコールは、バイオジェン・アイデック動物実験委員会(IACUC)により再考され、承認された。
【0064】
【表1】
【0065】
免疫化およびハイブリドーマ産生。抗mCD20 18B12 IgG2aと組み合わせた免疫化およびハイブリドーマスクリーニングのための抗原として使用した抗体およびタンパク質を表1に記載する。18B12抗体に対する抗イディオタイプ抗体の産生において、抗mCD20 18B12IgG2aのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の単回投与がNODマウス10匹に行われた(100μg、腹腔内投与(i.p.))。7日目に、マウスを採血し、18B12 IgG1
aに結合する抗イディオタイプ抗体について、血清をELISA法により評価した。次の日に、最も高い力価を有するマウスをハイブリドーマ融合のために選択した(8日目、Koehler and Milstein, 1975)。2B8、C12およびM290抗体に対する抗イディオタイプ抗体の産生において、NODマウス5匹をはじめに各抗原:18B12 IgG2aおよび2B8 IgG2a(PBS中各100μg、腹腔内投与)、18B12 IgG2aおよびC12 IgG2a(PBS中、18B12 IgG2aは100μgおよびC12 IgG2aは25μg、それぞれ腹腔内投与)または18B12 IgG2aおよびM290 IgG2a(PBS中各100μg、腹腔内投与)で免疫化した。10日目にマウスを採血し、2B8、C12またはM290抗体の可変ドメインと特異的に結合する抗体について、血清をELISA法により評価した。マウスを休ませた後、21日目に2B8 IgG2aまたはM290 IgG2a(PBS中各100μg、腹腔内投与)のいずれかで、または17日目にC12 IgG2a(PBS中50μg、腹腔内投与)でブーストした。3日後にハイブリドーマ融合を行った(Koehler and Milstein, 1975)。抗イディオタイプ抗体産生の一般的スキームを
図1に示す。
【0066】
各ハイブリドーマ融合に、PEG1500(シグマ・ケミカル社、ミズーリ州、セントルイス)およびNS−1骨髄腫融合パートナーまたはSP2/0骨髄腫融合パートナーのいずれかを用いた標準的なプロトコールを利用した(Koehler and Milstein, 1975)。NS−1融合パートナー(P3X63Ag8の非分泌型クローン、アメリカ培養細胞系統保存機関、バージニア州、マナサス)を抗18B12および抗C12融合に使用した。抗2B8において、脾臓細胞を等しく2分に分け、SP2/0骨髄腫融合パートナー(Sp2/0−Ag14;アメリカ培養細胞系統保存機関)またはNS−1骨髄腫融合パートナーのいずれかを使用した。SP2/0融合パートナーを抗M290融合に使用した。ハイブリドーマを、10%ウシ胎児血清(FBS)、L−グルタミン(ジブコ−BRL、メリーランド州、ベセスダ)、非必須アミノ酸(シグマ・ケミカル社)、ピルビン酸ナトリウム(シグマ・ケミカル社)、ゲンタマイシン(ジブコ−BRL)およびハイブリドーマ融合クローニング添加剤(ロッシュ・ダイアグノスティックス、ドイツ、マンハイム)を補充したイスコフ改変ダルベッコ培地(メディアテック、バージニア州、マナサス)に入れた。全ての免疫原アイソタイプに結合するが、アイソタイプコントロール抗体に結合しないスクリーニング基準を満たすハイブリドーマを限界希釈によりサブクローン化し、拡大させ、抗体がAタンパク質クロマトグラフィーを使用して培養上清液から精製された。
【0067】
フローサイトメトリーおよびELISA試薬。ビオチン抗マウスIgG1b(B68−2)、ビオチン抗マウスIgG2ab(5.7)、ビオチン抗IgG2aa(8.3)、FITC抗CD3(145−2C11)、PE抗CD19(1D3)、非共役型CD16/CD32(2.4G2)、ストレプトアビジン−HRPおよびストレプトアビジン−APCをBD−ファーミンゲン(カリフォルニア州、サンディエゴ)から入手した。ビオチン抗IgG2b(LO−MG2b)をサザン・バイオテクノロジーズ(アラバマ州、バーミンガム)から購入した。7AADはモレキュラー・プローブス(オレゴン州、ユージーン)製であった。TNP−KLH、TNP−フィコールおよびTNP−Ovaは、バイオサーチ・テクノロジーズ社(カリフォルニア州、ノバト)から得た。ELISAプレートを被覆するために使用した抗体を表1に記載する。
【0068】
細胞染色およびフローサイトメトリー分析。全ての染色方法を、FACS緩衝液(カルシウムおよびマグネシウム非含有の2%FBS、0.05%アジ化ナトリウム、10%正常ヤギ血清(熱不活性化)補充のダルベッコPBS)およびマウス細胞を使用した場合は2.4G2抗体(5〜10μg/ml)を含む丸底96ウェルプレート(コーニング3799)で行った。細胞(試料当たり0.1×106〜1×106個)を一次抗体または二次抗体と氷上で45分間インキュベーションし、インキュベーション中2回洗浄し、分析用のFACS緩衝液中細胞3〜5×106個/mlにて再懸濁した。蛍光度をFACSCaliburまたはFACSCanto(BDバイオサイエンス、カリフォルニア州、サンノゼ)で測定し、BD FACSDivaTMまたはBD CellQuest Proソフトウェア(BDバイオサイエンス)で分析した。
【0069】
ELISAアッセイ。IgG2a免疫原と異なる免疫抗原の他のアイソタイプへの結合およびアイソタイプコントロール抗体パネルへの結合について、ハイブリドーマ上清をELISA法によりスクリーニングした。つまり、マイクロタイターウェル(イムロン2 HB96ウェルプレート、テルモ・ラボシステムズ、マサチューセッツ州、フランクリン)を適切な抗原またはアイソタイプコントロール抗体(0.1M炭酸水素ナトリウム中2μg/ml、pH9.6、100μl/ウェル、4℃にて一晩)で被覆した。結合したハイブリドーマ抗体をNODマウスが発現した主な3つのIgGアイソタイプ(IgG1b、IgG2bおよびIgG2c)を認識する3つのビオチン化抗IgG試薬のプールを用いて検出した。この方法を使用した場合、ELISAプレートウェルを被覆するために使用される抗体は検出されなかった。ビオチン化試薬はストレプトアビジン−HRPを用い、その後TMB基質(KPL、メリーランド州、ゲイサーズバーグ)を添加することにより検出された。室温にて5分間展開後、反応を4N硫酸の等量でクエンチし、プレートを参照値650nmの450nmにてSpectramaxプレートリーダー(モレキュラー・デバイス、カリフォルニア州、パロアルト)で読み取った。血清力価は、OD
450−650値が0.5となる1/血清希釈液として定義される。
【0070】
実施例2
抗mCD20 IgG2aアイソタイプがNODマウスにおける増幅可能な抗イディオタイプ抗体反応を生じさせる
抗mCD20 18B12 IgG2aに対するNODマウスにおける抗イディオタイプ抗体反応が必要であったかを試験するため、IgG2a Fc NODマウスに抗mCD20 18B12 IgG1a、IgG1b、IgG2b、IgG2c、IgG2aまたは抗mCD20 18B12アフコシル IgG2aのいずれかを投与し、18B12可変ドメインに対する抗体価について、血清を試験した。抗イディオタイプ免疫化中によく使用される補助剤を含有しないPBSに抗体を投与した。投与後10日目の血清力価の評価として、18B12 IgG2aまたは18B12アフコシル IgG2aを投与したマウスの抗mCD20 18B12可変ドメインに対して産生された抗イディオタイプIgG抗体の抗体価が高いことが同定されたが、抗mCD20 18B12 IgG1a、IgG1bまたはIgG2bを投与したマウスでは同定されなかった(
図2A)。抗mCD20 18B12可変ドメインに対する弱い抗イディオタイプIgG反応が、抗mCD20 18B12 IgG2cを投与したマウスにおいて認められた。
【0071】
さらに、抗イディオタイプ抗体反応が18B12自体に制限され、またはマウスCD20に結合しない「バイスタンダー」マウスIgG2a抗体により産生されることができたのか、あるいはこれにより伸長されることができたのかを検討した。NODマウスに別のマウスのIgG2a(2B8、マウス抗hCD20)と併用して抗mCD20 18B12(IgG2aまたはIgG1b)を投与した。2B8 IgG2a抗体および抗mCD20 18B12 IgG2aを共投与したマウスは、18B12抗体(図示せず)および2B8抗体(
図2B)の両方に対して抗イディオタイプ反応を生じた。対照的に、2B8 IgG2a抗体と抗mCD20 18B12 IgG1bを共投与したマウスはいずれかの抗体に対する検出可能な抗イディオタイプ反応を生じなかった(
図2B)。
【0072】
NODマウスにおけるこれらの抗イディオタイプ抗体反応が、典型的には親和性の低い一次抗体反応を表したため、この一次抗イディオタイプ反応が増幅可能な液性記憶を生じるかについて試験することを必要とした。18B12 IgG2a抗体のNODマウスへの2回以上の注射の後に生じるアナフィラキシーを避けるため、2B8に対する二次抗イディオタイプ抗体反応を続けた。予測した通り、2B8 IgG2aを抗mCD20 18B12 IgG2aと共投与した場合、2B8に対する一次抗イディオタイプ抗体価は10日目に産生された(
図3、□)。2B8 IgG2aのみ(
図3、▲)を投与または2B8 IgG2aおよび抗mCD20 IgG1を投与(図示せず、
図2参照)したマウスにおいては、抗イディオタイプ抗体反応は認められなかった。3週間後(31日目)に、2B8 IgG2aおよび抗mCD20 18B12 IgG2aを予め投与したマウスを2B8 IgG2aのみでブーストした。2B8可変ドメインに対するIgG抗イディオタイプ抗体について、二次免疫後10日目に採取した血清をアッセイした。2B8に対する抗イディオタイプ血清力価において一次反応と比較した場合、約32倍増加したことで、液性記憶反応は明白であった(
図3、□と●の比較)。
【0073】
実施例3
NODマウスにおける抗mCD20 IgG2aを共投与した抗原の免疫原性の増強はウスIgG2a抗体の可変ドメインに制限される
抗mCD20 IgG2a処置の後、NODマウスにおいて認められたイディオタイプ免疫原性の増強を、無傷の抗体ではない抗原に広げることができるかについて試験するため、マウスを抗mCD20 IgG2a共投与の有無に関わらずトリニトロフェニル(TNP)−KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)およびTNP−フィコール(それぞれ、T依存型およびT非依存型抗原)で免疫化した。さらに、mIgG2a Fcに結合するヒトBDCA2の細胞外ドメインおよびキメラマウスIgG2a抗体として遺伝子操作されたラット抗マウスCD103抗体からなる融合タンパク質を、抗mCD20 IgG2aの共投与に選択した。予測した通り、TNPコンジュゲートおよびヒトBDCA2は抗mCD20 IgG2a処置しない場合において免疫原性であった(
図4)。抗mCD20 IgG2aの共投与では、免疫原性を有意に増加させなかったが(
図4)、抗mCD20処置動物の力価を高い方へとする(有意ではない)傾向があった。これまでに2B8 IgG2a抗体と18B12 IgG2a抗体の共投与において認められたように、抗イディオタイプ反応は、抗mCD20 18B12 IgG2aを共投与した場合にのみマウスγ2aFc領域を有する抗体に生じた(
図4)。
【0074】
抗イディオタイプ抗体反応がマウスIgG2a抗原に制限されたため、抗原の取り込み/プロセッシングにおけるマウスFcγ受容体(FcγR)の役割の可能性について、NODマウスをアフコシルヒトIgG1(hIgG1)で免疫化することにより探索した。主としてマウスIgG2aおよびIgG2bに結合するFcγRであるマウスFcγRIVへのアフコシルhIgG1の結合親和性(Nimmerjahn and Ravetch, 2006)は、FcγRIVへのマウスIgG2aの結合親和性に類似しているようである。アフコシルhIgG1標的抗原がマウスIgG2aと同様に挙動し得る可能性について、NODマウスにc2B8のhIgG1もしくはアフコシルhIgG1変異体(リツキシマブ、抗ヒトCD20)またはルミリキシマブ(抗ヒトCD23、5E4カニクイザルモノクローナル抗体由来のプリマタイズド(登録商標))のみ、あるいは抗mCD20 18B12 IgG2aと併用して投与することにより試験した。バックグランドが高いと予測される、hIgG1に対する反応を最小限にし、実際の抗イディオタイプ反応の検出を可能にするため、免疫化したNODマウス由来の血清を希釈(1/100)し、異なるhIgG1抗体、CE9.1(抗ヒトCD4、100μg/ml)を用いて吸収した。抗イディオタイプ反応は、免疫抗原の異なるFc領域アイソタイプを含有するc2B8およびルミリキシマブ(それぞれマウスIgG1およびヒトIgG4)への結合について、血清を試験することにより特異的に検出された。10日目に採血したNODマウス由来の血清は、動物に抗mCD20 18B12 IgG2aを共投与したかに関わらず、c2B8またはルミリキシマブのいずれかに結合する検出可能な抗イディオタイプ抗体を示さなかった(
図5)。アフコシルhIgG1 Fc領域は野生型hIgC1対応物に比べより免疫原性であるようであり、CE9.1 hIgG1 100μg/mlで吸収されない可能性が最も高い抗hIgG1抗体を産生したことは興味深い(
図5、リツキシマブアフコシルおよびルミリキシマブアフコシル)。これまでに認められるように、抗mCD20 18B12 IgG2aで処置したNODマウスの各群は、18B12 IgG1と強く結合することにより検出された18B12の可変ドメインに対する抗イディオタイプIgG反応を強く生じた(
図5)。
【0075】
実施例4
抗mCD20 IgG2a免疫化NODマウスから産生された抗イディオタイプモノクローナル抗体は、多様なエピトープを認識し、異なるアイソタイプを有する
異なる標的抗原に対する抗イディオタイプモノクローナル抗体を産生するための4つのハイブリドーマ融合が、IgG2a抗原および抗mCD20 18B12 IgG2a免疫化NODマウスの脾臓細胞を使用して行われた。各融合は、広範囲の結合特性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマパネルを生じた(表2に要約)。18B12抗mCD20に対する抗イディオタイプ抗体を産生する融合は、18B12 IgG2a(PBS中100μg)の単回腹腔内投与後8日目に行われた。2B8、C12およびM290に対する抗イディオタイプ抗体を産生させる方法は、抗mCD20 18B12 IgG2a(2B8 IgG2aおよびM290 IgG2a抗原においてPBS中各100μg、腹腔内投与)と共投与した抗原(IgG2a)で一次免疫化を行った後、抗原のみ(それぞれPBS中2B8 IgG2aまたはM290 IgG2a100μg)で21日後または抗原のみ(PBS中C12 IgG2a 50μg)で17日後に腹腔内にブーストした。融合はブースト後3日目に行われた。M290 IgG2a融合は、2匹の血清学的陽性のマウスからプールされた脾臓細胞を利用したため、より多くのハイブリドーマを産生した(表2)。抗原に利用可能な全てのアイソタイプ変異体に結合するが、アイソタイプ適合コントール抗体パネルに結合しないIgG1、IgG2bまたはIgG2c抗体を産生するハイブリドーマについて、各融合をスクリーニングした。
【0076】
【表2】
表2.抗mCD20 18B12 IgG2a免疫化NODマウスから産生された多様性抗イディオタイプ産生ハイブリドーマ。4つの独立した融合物由来のハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体は、主にIgG1/κであり、約10%がIgG2bまたはIgG2cであった。標的抗体(抗mCD20 18B12、抗hCD20 2B8、抗hBCMA C12または抗mCD103 M290)が抗原陽性細胞(それぞれmCD20トランスフェクト300.18、Ramos、H929またはC57B1/6 CD8
+脾臓細胞)と結合することを防ぐ能力について、モノクローナル抗体をフローサイトメトリーにより試験した。抗原結合阻害90%以上を示す抗体は「+」と採点し、阻害70%〜90%のものを「+/−」と採点し、阻害70%以下のものを「−」と採点した。
【0077】
各融合物由来のハイブリドーマにより産生された主要なアイソタイプは、IgG1であり、ハイブリドーマのおよそ10%がIgG2bまたはIgG2cを産生した(表2)。可溶性標的抗体が細胞上の抗原(mCD20、hCD20、hBCMAまたはmCD103)に結合することを防ぐ能力について、抗mCD20 18B12、リツキシマブ2B8、抗hBCMA C12および抗mCD103 M290に対して確認された抗イディオタイプ抗体を試験した。抗mCD20 18B12に対して抗イディオタイプ抗体をブロッキングおよび非ブロッキングする例を
図6に示す。アッセイした抗体の1つは5A7ハイブリドーマにより産生され、マウスCD20でトランスフェクトされたマウスプレB細胞株(300.18)への18B12の結合をブロックした(
図6、△)。異なるアイソタイプの抗イディオタイプ抗体も交差競合実験においてアッセイし、クロスブロッキングおよびエピトープ多様性を調べた。異なるエピトープを認識し、ELISAサンドイッチ捕捉アッセイに適した抗イディオタイプモノクローナル抗体を各融合物に認めた。マウス血清の18B12またはM290抗体の定量のためのELISAアッセイを開発し、動物疾患モデルにおいて抗体投与後の生体内の薬物動態の決定に利用した。
【0078】
実施例5
抗イディオタイプ抗体は関連性の高いモノクローナル抗体の共有エピトープと結合することができる
一般に、抗体イディオタイプは相補決定領域内の同位体の違いにより定義されるが、個別の、または関連の抗体の可変領域内に類似または同一のエピトープがなお生じ得る。免疫抗原に対する特異性について、抗イディオタイプ抗体パネルを試験する場合、抗イディオタイプ抗体は、免疫原IgG2a抗体または同一の可変ドメインを有するクラススイッチしたアイソタイプにのみ結合し、他の抗原を認識する同じまたは異なるアイソタイプの抗体パネルには結合しないことが実証された。表2に示される抗ヒトBCMA C12に対して産生された3つの抗イディオタイプ抗体も(VHおよびVLアミノ酸配列により)2つの関連の高い抗ヒトBCMA抗体(C11およびC13)と結合することが認められた(
図7)。抗ヒトBCMA抗体C11、C12およびC13は可変ドメインのアミノ酸数個のみが異なり、ヒトBCMAのオーバーラップエピトープと結合する。C12に対する抗イディオタイプ抗体は、ヒトBCMAの非オーバーラップエピトープおよび個別のエピトープに結合する他の2つの抗ヒトBCMA抗体(A7およびVicky−1)に結合しなかった。さらに、C12に対するこれら3つの抗イディオタイプ抗体は、抗マウスBCMA抗体パネルに結合せず、抗ヒトCD20 2B8または抗マウスCD20 18B12抗体にも結合しなかった(
図7)。
【0079】
宿主が自己免疫寛容を破壊し、自己抗原に対する液性反応を産生する自己免疫疾患では、特定の抗原に対する自己抗体が単一のエピトープまたはいくつかの限定されたエピトープと結合することができる。この自己抗体により認識されたエピトープの多様性の欠如は、1つの自己抗体に対して産生された抗イディオタイプ抗体が、同じエピトープを標的とする関連のある自己抗体と交差反応することを可能にし得る。それゆえ、自己抗体の抗イディオタイプ処置および自己抗体の診断薬は、示唆される「1つの自己抗体に対する1つの抗イディオタイプ抗体」のパラダイムに比べ、より効果的であり、または広く適用可能である可能性がある。
【0080】
実施例6
抗mCD20 IgG2a:抗原IgG2aの最適比が高力価の抗イディオタイプ液性反応を生じる
抗イディオタイプ免疫化プロトコールを最適化するため、抗mCD20 IgG2a:抗原 IgG2aの比を免疫化に使用するIgG2a抗体の量を増減させることで変更した(
図8に記載)。抗mCD20 18B12 IgG2aを共投与した場合、抗イディオタイプ抗体反応を引き出すことが知られているため、2B8 IgG2a抗体を試験抗原として使用した(
図4参照)。NODマウスに抗mCD20 18B12 IgG2a 100μgおよびIgG2a抗原100μgを投与することにより予め行われた免疫化は、相対的に低いが一貫した一次抗イディオタイプIgG血清力化反応を生じた(500〜3000の力価、
図3〜5参照)。
図8の試験した5つの異なる抗mCD20 IgG2a:抗原IgG2aの比のうち、これまでに使用されたものと異なる比、抗mCD20 18B12 IgG2a 100μgおよび2B8 IgG2a25μgは、2B8 IgG2aに対する最も強い一次抗イディオタイプ血清力価反応を生じた(
図8)。これらの量に対していずれかの抗体を増加させると、低い一次抗イディオタイプ抗体反応を生じた(
図8)。
【0081】
実施例7
抗マウスCD20 18B12 IgG2aに対する抗イディオタイプ反応は、IgG2aのIgh−1
bアレルを発現するNOD関連マウス系統に制限される
NODにかなり関連のあるいくつかのマウス系統を、抗mCD20 18B12 IgG2a、2B8 IgG2aまたは抗mCD20 18B12および2B8 IgG2aの両方の抗体での免疫化に選択し、NODマウスに発現したIgh−1アレルおよび/またはNODマウスに検出された抗体レパートリーおよび免疫系が抗イディオタイプ抗体産生に重要であるかを試験した。マウス系統、関連表現型および抗イディオタイプ抗体反応を産生する能力を表3に要約した。
【0082】
【表3】
【0083】
表3.抗イディオタイプ抗体反応について試験したマウス系統。マウス(5匹/群)を2B8 IgG2a(PBS中100μg、腹腔内投与)、抗mCD20 18B12 IgG2a(PBS中100μg、腹腔内投与)または抗mCD20 18B12 IgG2aおよび2B8 IgG2aの両方(PBS中各100μg、腹腔内投与)で免疫化し、10日目に採血し、18B12 IgG1a、2B8 IgG1aまたはコントロールIgG2aへの結合について、血清をELISA法により評価した。
*++、平均抗イディオタイプ力価が500以上であるが、5000以下;+、平均抗イディオタイプ力価が100以上であるが500以下;−、平均抗イディオタイプ力価が100以下。各群(NOR、SJLおよびSWRのみ)の平均力価を
図9に示す。
【0084】
NODの最も関連のあるNORマウス系統(Serreze et al., 1994)は、18B12 IgG2aのみに対して強い抗イディオタイプ抗体反応を生じ、18B12 IgG2a投与しない場合において2B8 IgG2aに対して反応しなかった(
図9)。SJLマウスはNORマウス系統と同様に反応した。NORマウスおよびSJLマウスに抗イディオタイプ反応を生じる18B12 IgG2aおよび2B8 IgG2aをともに投与したが、両抗原に対する抗イディオタイプ抗体価が18B12 IgG2aのみを投与した同じ系統のマウスに比べ低かった(
図9)。SWRマウスは注射した抗体のいずれに対する検出可能な抗イディオタイプ反応がなかった(
図9)。これらの試験は、18B12 IgG2aがIgh−1
bアロタイプを発現する自己免疫傾向性マウス系統において抗イディオタイプ反応を引き出すことで一致している。
【0085】
実施例8
抗CD20抗体を無効化するための抗イディオタイプ抗体の使用
抗mCD20 18B12 IgG2aで処置したNODマウスに産生される抗イディオタイプ抗体は、抗mCD20 18B12抗体の可変ドメインのみに結合する固有の能力を有する。生体外で抗mCD20 18B12のmCD20への結合をブロッキングさした抗イディオタイプ抗体のうち(表2、
図6)、3つの抗体を選択し、抗mCD20 18B12 IgG2aと生体内で結合し、機能的に無効化する能力について試験した。マウスを抗mCD20 18B12 IgG2aの単回投与で処置し、7日後に、等量の抗イディオタイプ抗体(クローン4E8、5A7または50F1)を投与した。末梢血B細胞および血清抗mCD20 18B12抗体の濃度をさらに1、3および7日後にモニタリングした。試験した3つ全ての抗イディオタイプ抗体は、投与24時間以内に血液循環から検出可能な抗mCD20 18B12を除去したようであった(データは図示せず)。4E8抗イディオタイプ抗体で処置後7日目に、マウスは、抗イディオタイプ抗体で処置しなかった動物とあまり違いのないB細胞の回復をごくわずかに示した。5A7および50F1抗イディオタイプ抗体(ともにIgG1/κ)のいずれかで処置したマウスは、抗イディオタイプ処置後7日目にB細胞のかなりの再集合を示した。B細胞の再集合は、5A7抗イディオタイプ抗体の投与後のマウスにおいて最も高く、その後、B細胞の再集合はこの抗イディオタイプ抗体とともに経時的に変化した(
図10)。全身のB細胞の再集合が開始され、それは5A7抗イディオタイプ抗体の投与後1日目で明らかであった(
図10)。血中のCD19
+B細胞は、5A7抗イディオタイプ抗体が投与された後1週間以内に通常の濃度の60%に達したが、5A7抗体を投与しなかった、抗mCD20 18B12処置マウスでは、B細胞が減少したままであった(
図10)。5A7抗イディオタイプ抗体の投与後、マウスの健康に対する副作用は見られず、抗mCD20抗体の無効化を生じた。
【0086】
実施例9
NODマウスの細胞系抗CD20抗体免疫化
任意の細胞結合IgG2aが抗イディオタイプ抗体反応を誘発するか、かつB細胞が抗イディオタイプ抗体産生に必要であるかを決定するため、脾臓細胞(TおよびB細胞)および胸腺細胞(未熟T細胞;CD20
−)を生体外で18B12 IgG2aまたは抗H−2D
b IgG2a(クローン27−11−13S)で被覆し、洗浄し、可溶性2B8 IgG2aの有無に関わらずNODマウスに腹腔内注射した。10日目に血清を採取し、2B8または18B12に対する抗イディオタイプIgG反応について試験した。抗mCD20 18B12 IgG2aは、脾臓細胞(B細胞)に前被覆された場合、または細胞非含有もしくは胸腺細胞含有のPBSに可溶性に投与された場合に抗イディオタイプ抗体反応を誘発することができた(
図11A)。抗H−2D
b IgG2a処置マウスは、軽度の抗IgG2aアイソタイプ反応を生じ、かつ抗H−2D
b IgG2aが脾臓細胞とともに投与された場合にのみ生じたが、2B8 IgG2a処置マウスは何ら抗体反応を生じなかった。さらに抗H−2D
b IgG2aを投与したマウスにおいて2B8 IgG2aに対する抗イディオタイプ抗体は認められなかった(
図11A)。可溶性抗原2B8 IgG2aは、脾臓細胞結合18B12 IgG2aによる抗イディオタイプ抗体産生を低レベルに低下させたようであった。これは、注射した抗体の比が最適未満であり(この場合、18B12 IgG2aが約20μgおよび2B8 IgG2aが50μg)、過剰な2B8 IgG2aが18B12 IgG2aと競合したことによる可能性があった。
【0087】
抗マウスCD20 18B12 IgG2aで前被覆されたマウスB細胞を使用してNODマウスを免疫化し、抗マウスCD20 18B12に対する抗イディオタイプ抗体反応を生じるという
図11Aの所見を抗ヒトCD20 2B8 IgG2aで前被覆したヒトB細胞に広げることができるかを試験するため、ヒトSKW6.4バーキットリンパ種細胞株を抗ヒトCD20 2B8 IgG2aで前被覆し、洗浄し、NODマウスに注射した。前被覆した細胞を単一でまたは可溶性抗マウスCD20 18B12 IgG2aまたは抗マウスCD103 M290 IgG2aとともに注射した。18B12 IgG2aを使用してNODマウスを免疫化した場合はいつでも、抗マウスCD20 18B12 IgG2aに対する抗イディオタイプ反応を生じたが、この抗体をヒトBリンパ腫細胞で被覆した場合は、可溶性抗マウスCD20 18B12 IgG2aの存在下においてでも、抗ヒトCD20 2B8 IgG2a抗体に対する抗イディオタイプ反応を生じなかった(
図11B)。これは、抗イディオタイプ抗体反応を生じるのに必要とされる共投与した抗原IgG2aが可溶性で、細胞結合ではないことが必要であることを示唆する。この実験において、抗CD103 M290 IgG2aもヒトBリンパ腫細胞結合2B8 IgG2aを共投与したIgG2a抗体として使用した。2B8 IgG2aまたはM290 IgG2aに対して抗イディオタイプ抗体反応は生じなかったが、この抗原の組み合わせにおいて、M290 IgG2aは測定可能な抗IgG2aアイソタイプ特異反応(
図11B)を引き出し、これはこれまでに、抗原として脾臓細胞に結合した抗H−2Db IgG2aを使用して認められたものと同様であった(
図11A)。