(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985488
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ステレオ光学系
(51)【国際特許分類】
G03B 35/02 20060101AFI20160823BHJP
G03B 17/56 20060101ALI20160823BHJP
G03B 35/16 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
G03B35/02
G03B17/56 Z
G03B35/16
【請求項の数】35
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-535005(P2013-535005)
(86)(22)【出願日】2011年10月18日
(65)【公表番号】特表2013-545132(P2013-545132A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011056712
(87)【国際公開番号】WO2012054481
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/394,046
(32)【優先日】2010年10月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513096598
【氏名又は名称】リーチ3ディ メディカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】REACH3D MEDICAL LLC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ブレント メイ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジェイ マイケル
【審査官】
越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−043126(JP,A)
【文献】
特開2001−012915(JP,A)
【文献】
特表平09−505906(JP,A)
【文献】
特表2004−524553(JP,A)
【文献】
国際公開第96/037796(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0077450(US,A1)
【文献】
米国特許第05914810(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0141057(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0012053(US,A1)
【文献】
特表2001−502817(JP,A)
【文献】
特表2004−503278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 35/02
G03B 17/56
G03B 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオ光学アダプタであって、
撮像領域を画定する単レンズ光学デバイス及び撮像デバイスを光学的に相互接続するよう構成し、少なくともステレオシャッタ及び光学リレーを備えた光学アダプタ本体を備え、
前記ステレオシャッタは、複数の別個に制御可能な閉塞可能領域を備え、これらの閉塞可能領域は、前記単レンズ光学デバイスの所定領域から出る光を交互に閉塞するように構成され、前記ステレオシャッタを、前記単レンズ光学デバイスの前記撮像領域から立体像を生成するよう構成し、
前記光学リレーは、前記単レンズ光学デバイスから前記ステレオシャッタを通して前記撮像デバイスへ光を伝送するよう構成した1つ又は複数の光学素子を備え、これにより、前記ステレオシャッタは、前記撮像領域から立体像を生成して、当該立体像を前記撮像デバイスへ伝送し、
前記ステレオ光学アダプタは、前記ステレオシャッタと前記撮像デバイスとの間に相互接続されたプログラマブルコントローラ回路をさらに備え、前記プログラマブルコントローラ回路は、前記ステレオシャッタの前記閉塞可能領域の各々の動作を制御して、前記ステレオシャッタの前記閉塞可能領域をオーバーサンプリング及びアンダーサンプリングすることによって、前記ステレオシャッタの開閉を前記撮像デバイスの動作と同期させるステレオ光学アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタが、少なくとも1つの所定領域において、前記撮像領域の中心部分を閉塞し、前記ステレオシャッタは、前記撮像領域の前記中心部分における前記閉塞の位置を変更するように構成され、これにより、前記撮像領域の光場のエッジ付近において、最適に重み付けされた画像品質が得られる、ステレオ光学アダプタ。
【請求項3】
請求項2に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記所定領域は、前記撮像領域の左領域及び右領域であるステレオ光学アダプタ。
【請求項4】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記複数の別個に制御可能な閉塞可能領域の幅が調整可能であるステレオ光学アダプタ。
【請求項5】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記閉塞可能領域を、機械的、電気機械的、化学的、及び材料からなる群から選択されるデバイスにより形成したステレオ光学アダプタ。
【請求項6】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記閉塞可能領域を、湾曲、円形、六角形、及び矩形からなる群から選択される形状で形成したステレオ光学アダプタ。
【請求項7】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記閉塞可能領域の少なくとも1つを固定したステレオ光学アダプタ。
【請求項8】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタを前記光学リレーと前記単レンズ光学デバイスとの間に配置したステレオ光学アダプタ。
【請求項9】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタを前記光学リレーと前記撮像デバイスとの間に配置したステレオ光学アダプタ。
【請求項10】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタを前記光学リレーと共に配置したステレオ光学アダプタ。
【請求項11】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記光学リレーはアイリスを含むステレオ光学アダプタ。
【請求項12】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタを前記単レンズ光学デバイス内又は前記撮像デバイス内に配置したステレオ光学アダプタ。
【請求項13】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタはアイリスとして作動するステレオ光学アダプタ。
【請求項14】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタをズームレンズ内に組み込んだステレオ光学アダプタ。
【請求項15】
請求項14に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ズームレンズは、前記ステレオシャッタと着脱可能に光学的に位置合わせして前記アダプタの焦点距離を調整するよう構成した一連の収束レンズを備えるステレオ光学アダプタ。
【請求項16】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、該アダプタを前記撮像デバイスと前記単レンズ光学デバイスとの間に着脱可能に相互接続したステレオ光学アダプタ。
【請求項17】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、該アダプタを前記撮像デバイス内に一体化したステレオ光学アダプタ。
【請求項18】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、該アダプタを前記単レンズ光学デバイス内に一体化したステレオ光学アダプタ。
【請求項19】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記光学リレーが光学素子を備え、この光学素子は、前記ステレオシャッタに入る光が共役を有してほぼ平行になるよう構成されているステレオ光学アダプタ。
【請求項20】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記光学リレーを前記単レンズ光学デバイスの出口に直接隣接して位置付けたステレオ光学アダプタ。
【請求項21】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記単レンズ光学デバイスは顕微鏡又は内視鏡であるステレオ光学アダプタ。
【請求項22】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記撮像デバイスは、機械式スチルカメラ、デジタルスチルカメラ、CCD、CMOS、デジタルビデオカメラ、及びライトフィールドキャプチャシステムからなる群から選択されるステレオ光学アダプタ。
【請求項23】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、該アダプタは、前記単レンズ光学デバイスの対物レンズの全域を利用するステレオ光学アダプタ。
【請求項24】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタ及び前記撮像デバイスの少なくとも一方を、該撮像デバイスに対する前記ステレオシャッタの回転位置合わせを可能にするよう構成した調整ステージに取り付けたステレオ光学アダプタ。
【請求項25】
請求項24に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記立体像が前記撮像デバイスによって撮像されるように、前記ステレオシャッタ及び前記撮像デバイスが回転配向され、
前記ステレオシャッタと前記撮像デバイスとが、さらに、回転可能なように相互接続され、これにより、前記ステレオシャッタと前記撮像デバイスとの間の相対的な回転位置合わせを維持しつつ、前記撮像デバイスの前記撮像領域に対する回転配向を変更することができるステレオ光学アダプタ。
【請求項26】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記撮像デバイスによって前記撮像領域内に見える位置合わせ機能をさらに備え、前記プログラマブルコントローラ回路は、前記立体像中に形成された影を、前記位置合わせ機能によって検査して、前記ステレオシャッタの動作を最適な立体撮像向けに最適化するように構成されているステレオ光学アダプタ。
【請求項27】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記プログラマブルコントローラ回路が、前記所定領域の幅を変更しながら撮像して得られた複数の前記立体像を比較することによって、前記撮像デバイスによって撮像した前記立体像の視差を測定して調整するように構成されているステレオ光学アダプタ。
【請求項28】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記プログラマブルコントローラ回路を、前記ステレオシャッタを無効にするよう構成することで、前記アダプタを非立体視デバイスに再構成できるようにしたステレオ光学アダプタ。
【請求項29】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記撮像デバイスはローリングシャッタを有し、前記プログラマブルコントローラ回路を、前記ステレオシャッタと前記ローリングシャッタとを同期させるよう構成したステレオ光学アダプタ。
【請求項30】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記撮像デバイスは、スチルカメラを含み、前記プログラマブルコントローラ回路を、前記スチルカメラと前記立体レンズとを同期させて単一の静止立体像を撮像するよう構成したステレオ光学アダプタ。
【請求項31】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記プログラマブルコントローラ回路を、フレームシーケンシャル、プログレッシブ、インタレース、サイドバイサイド、チェッカボード、及び水平インタリーブ/ラインバイラインからなる群から選択される方式での、前記撮像デバイスから立体ビデオ出力への変換を可能にするよう構成したステレオ光学アダプタ。
【請求項32】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、間欠的に発光するように構成されたパルス光をさらに含み、前記プログラマブルコントローラ回路を、前記ステレオシャッタと前記パルス光とを同期させて前記撮像デバイスによる高速モーションキャプチャを可能にするよう構成したステレオ光学アダプタ。
【請求項33】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記プログラマブルコントローラ回路を、前記ステレオシャッタの位置を前記単レンズ光学デバイスの光軸と中心合わせするよう構成したステレオ光学アダプタ。
【請求項34】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記プログラマブルコントローラ回路を、前記撮像デバイスが撮像した像の視差を求めるよう構成したステレオ光学アダプタ。
【請求項35】
請求項1に記載のステレオ光学アダプタにおいて、前記ステレオシャッタは電子式であり、画像信号処理により立体感を生むステレオ光学アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的にはステレオ光学装置に関し、より詳細には、立体撮像装置を医療用顕微鏡及び内視鏡等の従来の単レンズ光学デバイスに取り付けるのに適したステレオ光学アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの立体撮像及び/又は立体視装置が知られている。例えば、1948年に遡る特許文献1は、スケールモデルを立体視する装置であって、対物レンズ及びさらに別のレンズを収容した視管を、上記さらに別のレンズの左領域及び右領域から出た光を両眼視装置の各アイピースへ逸らす2つの相互に直交したミラーと組み合わせた装置を開示している。1949年に遡る特許文献2も、顕微鏡を用いて顕微鏡写真を撮影するカメラ装置を開示しており、この場合、立体鏡を通して写真を見ることで物体の3次元的印象を与えることができる。したがって、立体像の形成に関与する基本的な光学系は既知である。しかしながら、これらのステレオ技法を顕微鏡及び内視鏡等の従来の光学デバイスに、静止画像及びビデオ画像の両方を容易に撮像することができるよう適用するのは、かなり複雑であり、これらの技術に捧げた時間及び労力を考えると、期待されるほどの成功は収めていない。
【0003】
例えば、現代の研究用顕微鏡は、多くの場合、ビームスプリッティングアセンブリを組み込むことで追加のビューイング、ビデオ、及びカメラアタッチメントポートを可能にする。入手可能なビームスプリッタには、多種多様な構成があり、主アイピースに加えて1つ又は複数の光学アタッチメントポートを提供することができる。さらに、さらに高い融通性を与えるために、アダプタによっては、顕微鏡ビームスプリッタの単一の光学ポートに2つ以上のカメラを取り付けることを可能にするよう設計されたものがある。ビデオカメラ及び35mmカメラを外科用顕微鏡ビームスプリッタの片側に同時に取り付けるためのアダプタは、例えば特許文献3及び特許文献4に示されており、当該文献の開示を参照により本明細書に援用する。こうしたアダプタは、Carl Zeiss Inc.から市販されており、カリフォルニア州バーバンクのUrban Engineering Co.により製造されている。
【0004】
他の従来技術文献には、これら光学アタッチメントへのビデオカメラの統合、オートアイリス制御の使用、ズームの統合、及び倍率の変化を可能にする他の光学アダプタが記載されている。例えば、一体型ビデオカメラを有するビームスプリッタが、特許文献5及び特許文献6に示されており、3つの同一光路及び4つのビューイングステーションを有するビームスプリッタが、特許文献7に示されており、外科用顕微鏡アダプタと共に用いるオートアイリス制御システムが、特許文献8及び特許文献9に示されており、内視鏡カメラ用のズームレンズアダプタが、特許文献10に示されており、異なる焦点距離倍率の使用を可能にするユニバーサルアダプタが、特許文献11に示されており、上記文献それぞれの開示を参照により本明細書に援用する。
【0005】
こうした顕微鏡アダプタは、機能的で有用な一方で、一般的には非立体像の記録又は投影しか可能にしない。近年の顕微鏡法の進歩は、立体像の投影の記録を可能にする立体撮像デバイスの導入である。通常の顕微鏡は、被観察物の拡大像を生成するよう機能する単一の対物レンズと、片眼で見るための単一の接眼レンズ、右眼及び左眼で見るための2つの接眼レンズ、又はスチル又はビデオカメラで拡大像を記録するためのアクセスホールとを含む。これら従来のアダプタの大半は、対物レンズの1つの光路を通した観測しか可能にしないので、観察者には深さが分からなかった。この制限に対処するために、アダプタによっては、特に外科用途で用いるアダプタは、立体視を可能にするよう変更されている。しかしながら、これらのアダプタの大半は、特許文献12に開示されているデバイスのように異なる光軸にある複数の対物レンズの使用か、又は特許文献13に開示されているもののように複数の光軸から撮像するよう設計した単一のカメラの使用を必要とし、上記文献それぞれの開示を参照により本明細書に援用する。残念ながら、こうしたマルチカメラデバイスのいずれも、製造が極めて複雑且つ高価である。
【0006】
単レンズ立体顕微鏡接眼レンズアダプタが提案されてきたが、これまでに、これらのデバイスには重大な欠点があった。一種のこうした単レンズ立体顕微鏡アダプタは、偏光子又はフィルタの使用を必要とするが、こうしたデバイスは、像の光学的品質を低下させ、多くの場合には観察者が像に対して特定の視角を維持する必要があることが知られていた。必要なのが偏光子かフィルタかを問わず、これらのいずれにも大きな欠点がある。こうしたデバイスの例は、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、及び特許文献18に示されており、上記文献の開示を参照により本明細書に援用する。他の代替的な方法では、能動シャッタの使用が必要であり、これはより設置費用が高く、より維持し難く、故障時にレンズの光学特性を著しく低下させる。こうした方法は、例えば、特許文献19、特許文献20、及び特許文献21に開示されており、上記文献の開示を参照により本明細書に援用する。
【0007】
同様に、ごく最近に立体内視鏡が開発された。内視鏡に対するサイズ制約を考慮して、光学系の横方向寸法を最小化することが非常に望ましく、この理由で、多くの設計は、単一の対物レンズと、その光路において左像及び右像を形成する光を分離するビームスプリッティング装置とを利用する。例えば、特許文献22は、内視鏡の遠位先端でビデオカメラアセンブリの対物レンズに隣接して開口板を位置付けた立体内視鏡装置を開示している。板の左開口及び右開口を、ビデオ切り替え装置に結合したシャッタにより交互に開く。このようにして、左像及び右像を立て続けに検出してモニタ画面に交互に表示することにより、左右のアイピースが表示と同期して立て続けに交互に閉塞される一対の眼鏡を用いてこれらの像を立体視することができる。しかしながら、シャッタ装置には、既存の単眼内視鏡に容易に後付けできないという欠点がある。さらに、内視鏡の先端部にシャッタコンポーネントを加えると体積が増加する傾向があり、これは望ましくない。
【0008】
特許文献23に従って内視鏡の射出瞳にビームスプリッティング装置を設けることで、特許文献22の装置の上記問題のいくつかが回避されるが、ビームスプリッタの光軸と内視鏡の光軸との精密な配置が必要であり、内視鏡の接眼レンズから出る光線が平行である必要もある。さらに、ビームスプリッティング装置を設けることで、反射面の数が不所望に増加し、装置の費用が増す。
【0009】
これらのデバイスの単レンズから立体像を生成するという長きにわたる課題に対する1つの解決手段は、特許文献24でWattsが述べており、これはレンズを単一の単純なシャッタ素子における3つのオフセットセグメントに分割するものである。(Watts特許の開示を参照により本明細書に援用する。)Wattsの技術は、単レンズ立体撮像に対する有望な解決手段を与えるように思われるが、これまでにこの技術を外科用顕微鏡又は内視鏡に組み込む試みはなされていない。
【0010】
したがって、基礎となる光学デバイスの可変倍率を含む全機能の使用を可能にする単純な受動「光学シャッタ」を用いて、顕微鏡及び内視鏡等の単レンズ標準光学デバイスからの立体像の投影又は記録を可能にすることが可能な光学アダプタを開発することが有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許第606,065号明細書
【特許文献2】米国特許第2,639,653号明細書
【特許文献3】米国特許第4,272,161号明細書
【特許文献4】米国特許第4,143,938号明細書
【特許文献5】米国特許第4,805,027号明細書
【特許文献6】米国特許第4,344,667号明細書
【特許文献7】米国特許第4,688,907号明細書
【特許文献8】米国特許第3,820,882号明細書
【特許文献9】米国特許第4,300,167号明細書
【特許文献10】米国特許第4,781,448号明細書
【特許文献11】米国特許第5,264,928号明細書
【特許文献12】米国出願公開第2002/0080481号明細書
【特許文献13】米国特許第3,574,295号明細書
【特許文献14】米国特許第3,712,199号明細書
【特許文献15】米国特許第4,716,066号明細書
【特許文献16】米国特許第5,835,264号明細書
【特許文献17】米国特許第5,867,312号明細書
【特許文献18】米国特許第6,275,335号明細書
【特許文献19】米国特許第5,471,237号明細書
【特許文献20】米国特許第5,617,007号明細書
【特許文献21】米国特許第5,828,487号明細書
【特許文献22】米国特許第5,222,477号明細書
【特許文献23】英国特許第2,268,283号明細書
【特許文献24】米国特許第5,914,810号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ビデオ及び/スチルカメラを従来の又は特定の変更を加えた単レンズ光学デバイス、例えばビームスプリッタ又はアイピースを通して立体像を提供する顕微鏡、及び内視鏡等に接続するアダプタを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態では、顕微鏡用の光学アダプタは、従来の顕微鏡ビームスプリッタから軸上ビーム経路に沿って光を受け取るような向きの内部ビームスプリッタを有する本体ハウジングを備える。アダプタビームスプリッタは、軸上光の一部を横方向ビーム経路に沿って反射させる。アダプタは、本体ハウジングに取り外し可能に取り付けられて軸上ビームに沿って配置したステレオシャッタを有するノーズピースアセンブリをさらに備える。このような実施形態では、ステレオシャッタをビームスプリッタ、カメラマウント、又はノーズピース内でアイリスの前又は後に位置決めすることで、ビデオ/スチルカメラに対して投影した像が立体的になるようにすることができる。
【0014】
別の実施形態では、光学アダプタは、内視鏡システムの瞳面における/又は瞳面付近の単レンズ内視鏡又は内視鏡状デバイスに組み込んだシャッタ素子を備える。
【0015】
さらに別の実施形態では、ステレオシャッタは、上記さらに別のレンズ手段の左領域及び右領域から出る光を選択的に閉塞して上記像面上に右像及び左像を形成するよう構成した手段を含み、この手段は、上記右像及び左像を合成して上記対物レンズの視野の立体表現を形成する手段を有する。このような実施形態では、右像及び左像を合成する手段は、例えば、交互の左像及び右像を表すビデオ信号を発生するビデオ処理回路を備え得る。このようなビデオ信号は、電子形態での立体表現とみなすことができる。
【0016】
さらに別の実施形態では、シャッタ手段は、左から右へ分配した3つ以上の光学シャッタ素子のアレイと、上記右像と左像との間のステレオベース幅を変えるよう上記光学シャッタ素子の光透過を制御する手段とを備える。これらの素子は、左像と右像との間の位置変化をもたらすのに適した任意の形状をとることができる。
【0017】
さらに別の実施形態では、シャッタ手段は、上記さらに別のレンズ手段の閉塞されていない左領域及び右領域のサイズを変えて、上記像面における視野の幅及び/又は照明を変える制御手段を含む。好ましくは、上記シャッタ手段は、制御可能な幅及び/又は高さ及び分離の鉛直ユニットを形成するよう配置したシャッタ素子の多重感度(multisensitivity)を備える。このような一実施形態では、視野の幅を距離検出器と統合することにより、像の視差を最適化することができる。
【0018】
さらにまた別の実施形態では、立体撮像を最適化するようシャッタ及びカメラを相互に対して位置決めする。このような実施形態では、シャッタ及びカメラは、一方の回転が他方の素子の等しい相対回転をもたらすことでカメラ及びシャッタが常に適切な位置合わせを維持するよう相互接続することができる。
【0019】
さらにまた別の実施形態では、シャッタ素子が相互に制御され得るようシャッタを電子的に制御する。このような一実施形態では、デバイスを変更することなく、シャッタをオフにして2次元視を可能にすることができる。別のこのような実施形態では、シャッタ及びカメラを、立体静止像のトリガを可能にするよう制御する。
【0020】
さらにまた別の実施形態では、本発明は、ステレオ光学アダプタを用いて立体像を投影、記録、及び観察する方法を対象とする。
【0021】
さらにまた別の実施形態では、本発明は、結像させる領域を規定する単レンズ光学デバイスと撮像デバイスとを光学的に相互接続するよう構成した光学アダプタ本体を含むステレオ光学アダプタであって、光学アダプタ本体は少なくともステレオシャッタ及び光学リレーを備え、ステレオシャッタを単レンズ光学デバイスの結像領域から立体像を生成するよう構成し、光学リレーは上記単レンズ光学デバイスから上記ステレオシャッタを通して上記撮像デバイスへ光を伝送するよう構成した1つ又は複数の光学素子を備え、ステレオシャッタとカメラとの間の回転位置合わせを固定して撮像デバイスによる立体像の撮像を確保する、ステレオ光学アダプタを対象とする。
【0022】
このような一実施形態では、ステレオシャッタを、単レンズ光学デバイスの所定領域から出る光を交互に閉塞するよう構成する。別のこのような実施形態では、所定領域は結像領域の左領域及び右領域である。
【0023】
さらに別のこのような実施形態では、シャッタは、複数の別個に制御可能な閉塞可能領域を備える。別のこのような実施形態では、閉塞可能領域を、機械的、電気機械的、化学的、及び材料からなる群から選択されるデバイスにより形成する。さらに別のこのような実施形態では、閉塞可能領域を、湾曲、円形、六角形、及び矩形からなる群から選択される形状で形成する。さらに別のこのような実施形態では、閉塞可能領域の少なくとも1つを固定する。
【0024】
さらに別のこのような実施形態では、ステレオシャッタを光学リレーと単レンズ光学デバイスとの間に配置する。このような一実施形態では、ステレオシャッタを光学リレーと撮像デバイスとの間に配置する。別のこのような実施形態では、ステレオシャッタを光学リレーと共に配置する。さらに別のこのような実施形態では、光学リレーはアイリスを含む。さらに別のこのような実施形態では、ステレオシャッタを単レンズ光学デバイス内又は撮像デバイス内に配置する。さらにまた別の実施形態では、ステレオシャッタはアイリスとして働く。
【0025】
さらにまた別のこのような実施形態では、ステレオシャッタをズームレンズ内に組み込む。このような一実施形態では、ズームレンズは、ステレオシャッタと着脱可能に光学的に位置合わせしてアダプタの焦点距離を調整するよう構成した一連の収束レンズを備える。
【0026】
さらにまた別のこのような実施形態では、アダプタを撮像デバイスと単レンズ光学デバイスとの間に着脱可能に相互接続する。このような一実施形態では、アダプタを撮像デバイス内に一体化する。別のこのような実施形態では、アダプタを単レンズ光学デバイス内に一体化する。
【0027】
さらにまた別のこのような実施形態では、ステレオシャッタに入る光は、ほぼ無限の1つの共役を有する。このような一実施形態では、光学リレーを単レンズ光学デバイスの射出瞳に隣接して位置付ける。
【0028】
さらにまた別のこのような実施形態では、単レンズ光学デバイスは、顕微鏡又は内視鏡のいずれかである。
【0029】
さらにまた別のこのような実施形態では、撮像デバイスは、機械式スチルカメラ、デジタルスチルカメラ、CCD、CMOS、デジタルビデオカメラ、及びライトフィールドキャプチャ(light field capturing:光照射野撮影)システムからなる群から選択される。
【0030】
さらにまた別のこのような実施形態では、アダプタは、単レンズ光学デバイスの全域を利用する。
【0031】
さらにまた別のこのような実施形態では、ステレオシャッタ及び撮像デバイスの少なくとも一方を、撮像デバイスに対するステレオシャッタの回転位置合わせを可能にするよう構成した調整ステージに取り付ける。このような一実施形態では、ステレオシャッタ及び撮像デバイスの両方を、撮像デバイスに対するステレオシャッタの回転位置合わせを可能にするよう構成した回転調整ステージに取り付け、調整ステージ同士を相互接続することで、ステレオシャッタ又は撮像デバイスの一方の回転がその相手における同等の回転を引き起こすようにする。
【0032】
さらにまた別のこのような実施形態では、アダプタは、ステレオシャッタの動作を制御するプログラマブルコントローラ回路を備える。このような一実施形態では、シャッタは、単レンズ光学デバイスの所定領域から出る光を交互に閉塞するよう構成した複数の別個に制御可能な閉塞可能領域を備え、プログラマブルコントローラ回路は、閉塞可能領域のそれぞれの動作を制御する。別のこのような実施形態では、プログラマブルコントローラ回路を、撮像デバイスとさらに信号通信させ、撮像デバイスをステレオシャッタの開閉と同期させて立体視を確保するよう構成する。さらに別のこのような実施形態では、プログラマブルコントローラ回路を、ステレオシャッタを無効にするよう構成することで、アダプタを非立体視デバイスに再構成できるようにする。さらにまた別のこのような実施形態では、プログラマブルコントローラ回路を、立体像に形成された影を検査するよう構成すると共に、立体撮像を最適化するためにステレオシャッタの動作を最適化するよう構成する。さらにまた別のこのような実施形態では、撮像デバイスはローリングシャッタを有し、プログラマブルコントローラ回路を、ステレオシャッタと上記ローリングシャッタとを同期させるよう構成する。さらにまた別のこのような実施形態では、アダプタは少なくとも2つの撮像デバイスをさらに備え、プログラマブルコントローラ回路を、2つの撮像デバイスを同期させて単一の静止立体像を撮像するよう構成する。さらにまた別のこのような実施形態では、プログラマブルコントローラ回路を、フレームシーケンシャル、プログレッシブ、インタレース、サイドバイサイド、チェッカボード、及び水平インタリーブ/ラインバイラインからなる群から選択される方式での、撮像デバイスから立体ビデオ出力への変換を可能にするよう構成する。さらにまた別のこのような実施形態では、アダプタはパルス光をさらに含み、プログラマブルコントローラ回路を、ステレオシャッタとパルス光とを同期させて撮像デバイスによる高速モーションキャプチャを可能にするよう構成する。さらにまた別のこのような実施形態では、プログラマブルコントローラ回路を、ステレオシャッタの位置を単レンズ光学デバイスの光軸と中心合わせするよう構成する。さらにまた別のこのような実施形態では、プログラマブルコントローラ回路を、撮像デバイスが撮像した像の視差を求めるよう構成する。
【0033】
さらにまた別のこのような実施形態では、ステレオシャッタは電子式であり、画像信号処理により立体感を生む。
【0034】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を参照して添付図面と共に検討すればよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】従来技術による一対の従来のカメラ取付用アダプタシステムを示す斜視図である。
【
図2】従来技術による従来のカメラ取付用アダプタシステムの斜視図である。
【
図3】従来技術による従来のカメラ取付用アダプタシステムの分解図である。
【
図4】従来技術による従来のカメラ取付用アダプタシステムの断面図である。
【
図5】従来技術による従来の内視鏡の断面図である。
【
図6A】従来技術によるステレオシャッタの概略図である。
【
図6B】従来技術によるステレオシャッタの概略図である。
【
図7A】従来技術によるステレオシャッタの別の実施形態の概略図である。
【
図7B】従来技術によるステレオシャッタの別の実施形態の概略図である。
【
図7C】従来技術によるステレオシャッタの別の実施形態の概略図である。
【
図8A】本発明による立体カメラ取付用アダプタシステムの一実施形態の概略図である。
【
図8B】本発明による立体カメラ取付用アダプタシステムの一実施形態の概略図である。
【
図8C】本発明による立体カメラ取付用アダプタシステムの一実施形態の概略図である。
【
図8D】本発明による立体カメラ取付用アダプタシステムの一実施形態の概略図である。
【
図9】本発明による立体カメラ取付用アダプタシステムの実施形態の光線図形の概略図である。
【
図10】本発明による立体カメラ取付用アダプタシステムの別の実施形態の光線図形の概略図である。
【
図11】本発明による立体顕微鏡の実施形態の概略図である。
【
図12】本発明によるカメラとステレオシャッタとの間の同期の概略図である。
【
図14A】本発明によるステレオシャッタの別の実施形態の概略図である。
【
図14B】本発明によるステレオシャッタの別の実施形態の概略図である。
【
図14C】本発明によるステレオシャッタの別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、ビデオ及び/又はスチルカメラを従来の単レンズ光学デバイス、例えば顕微鏡又は内視鏡に接続して観察像の立体像を記録又は投影させるステレオアダプタを対象とする。特に、本発明は、顕微鏡及び内視鏡等の従来の単レンズ光学デバイスへのWatts特許(米国特許第5,914,810号)の立体撮像技術の組み込みを可能にするようステレオ光学アダプタを変更したものである。本発明は、あらゆる光学デバイスに適用することができるが、以下の説明は、本発明の2つの実施態様である顕微鏡及び内視鏡に焦点を合わせる。
【0037】
従来の顕微鏡ビデオ/カメラアダプタの概要
従来のビデオ/スチルカメラ顕微鏡アダプタシステムを
図1に示す。図示のように、従来のビデオアダプタシステムは、一対のカメラ又は他の光学デバイス10を単一の顕微鏡ビームスプリッタアセンブリ(BS)に取り付けることを可能にする。ビデオアダプタは、民間の供給業者、例えばCarl Zeiss, Inc.等から入手可能な任意の従来の顕微鏡ビームスプリッタアセンブリに取り付けることができる。
図1において、第1ビデオアダプタシステム10AにビデオカメラVC(仮想線で示す)を取り付け、第2ビデオアダプタシステム10BにビデオカメラVC(仮想線で示す)及びスチルカメラC(同じく仮想線で示す)の両方を取り付けてある。以下でより詳細に説明するように、これら従来のビデオアダプタシステム10は、異なるビデオ及び/又はスチルカメラの取り付けを許すよう様々な特徴の選択を可能にする複数のコンポーネントを含み、異なる焦点距離倍率を提供すると共に、顕微鏡ビームスプリッタへの異なる製造業者からの様々な装置の相互接続を可能にする。
【0038】
次に
図2〜
図4を参照して、従来のビデオアダプタシステム10の基本構成を説明する。ビデオアダプタシステムの基本的なコンポーネントは、ビームスプリッタ16を保持する軸方向通路14を画定する本体ハウジング12を含む。図示のように、ビームスプリッタは一対の対向プリズムを備えるが、ビーム経路20に沿って移動する顕微鏡対物レンズからの軸上光ビーム18を反射及び/又は部分反射させる任意のデバイスをこれらのデバイスで用いることができ、これには単一のプリズム、部分反射ミラー、枢動可能なミラー、又は任意の同等の構造が含まれることを理解されたい。
【0039】
ビデオアダプタの動作に必須ではないが、大半の従来設計は、ノーズピースアセンブリ24も含み、これは、従来の係止リング26等の機構を介して本体ハウジング12の近位端に取り外し可能に固定することができる。ノーズピースアセンブリ24も、ノーズピースアセンブリを本体ハウジング12に固定すると本体ハウジングの軸方向通路14と一致する軸方向通路27を含む。これらの図に示すように、ノーズピースアセンブリ24は、ノーズピースの端に取り付けた調整可能なアイリス36をさらに含み得る。このアイリスは調整リング38を用いて調整することができ、調整リング38は、
図4に要素40で示すもの等の筒を含む任意の従来の連結アセンブリによってアイリスに接続することができる。代替的に、ビデオアダプタシステムは、外部デバイス、例えばビデオカメラ内に取り付けることができる遠隔光センサ(図示せず)等から受け取った命令からアイリス36を自動制御するための電動アイリス制御機構をさらに備え得る。
【0040】
ビデオアダプタは、ビデオ又はスチルカメラに達する前の光18を集束させるか又は他の方法でその光学特性を変えるためのレンズカートリッジ28も含み得る。レンズカートリッジ28(
図4)は、本質的に、単レンズ若しくは複合レンズ又は一連のレンズを取り付けた中空管である。装着したカメラ毎に異なる焦点距離倍率を得るために、カートリッジ28内のレンズ34の光学及び軸方向位置を変えることができる。この目的で、図示の実施形態では、レンズカートリッジを本体ハウジング12のねじ付きレセプタクル32に受け入れられるねじコネクタ30によってハウジングに着脱可能に装着するが、レンズを任意の適当な手段によってハウジングに装着してもよく、レンズを交換する必要がない場合は所定位置に固定してもよいことを理解されたい。
【0041】
次に、
図1〜
図4に示すようなビデオ及びカメラ取付用レセプタクルを見ると、これらの従来設計では、特に
図3及び
図4に示すように、ビデオ取付用レセプタクル42が本体ハウジング12に形成され、ベース44及び係止リング46を備えたビデオ取付用フォーカスアセンブリを受け入れる。係止リング46は、Cマウントリング及びバヨネット式マウントリングの両方を含む任意の適当なカメラコネクタを受け入れるよう構成することができる。
【0042】
図2〜
図4に示すように、ビデオアダプタシステム10は、
図1及び
図4でダストカバー52を所定位置にして示すレセプタクル56で終わる。スチルカメラを装着するためには、ダストキャップ52を取り外してレンズホルダアセンブリ54(
図4A)と交換し、レンズホルダアセンブリ54は、本体ハウジング12に形成したレセプタクル56に螺挿することができる。任意の適当な単レンズ又は複合レンズを、軸上ビーム経路18上でビームスプリッタのうちノーズピースアセンブリ24から離れた側にあるようレンズホルダアセンブリ54に交換可能に取り付けることができる。レンズホルダアセンブリ54は、通常はねじ付きレセプタクルを介して別のスチルカメラ本体を固定する手段もその近位端に含み得る。レセプタクルの性質は、当然ながら、カメラマウントのタイプに応じて変わり、アダプタシステム10は、異なるカメラを収容するようあらゆるレンズホルダアセンブリ54を含み得る。
【0043】
相互接続の方法に関係なく、前述のように、レンズはノーズピース24に配置したレンズカートリッジ28と光学的に適合するよう選択する。要するに、ビデオカメラVC及びスチルカメラCに関連するレンズを、カメラ毎に異なる焦点距離倍率を提供するよう独立して選択することができる。
【0044】
従来の内視鏡光学系の概要
内視鏡用の従来の光学装置を
図5に示す。図示のように、従来の単レンズ内視鏡では、光学系は、第1像面57Aで像を形成するための対物レンズ57、面57Aの像を第2像面57Bへ伝送する任意のリレーシステム58、及び伝送された像を見るためのアイピース59を備える。対物レンズ57及び伝達システム58は、環状光ファイバ束によって通常は囲まれた比較的小径の筒を占める。レンズの通常の直径は約2.5mmである。
【0045】
使用の際、体内領域の観察のために医師が内視鏡を体腔内等に挿入する。対物レンズ57は、第1像面57Aで見られる領域の像を形成し、この像は、医師による直接観察又はテレビカメラへの通信のためにリレーシステム58によってアイピース59に近い第2像面57Bへ伝送される。後述する種々の実施形態では、光学リレーシステム58は、複数の接合5要素アセンブリ58Aを備え得る。アセンブリ58Aは対で配置し、各対が伝達モジュール(すなわち、モジュールの前方の一平面からモジュールの後方の第2平面へ像を伝達するモジュール)となる。こうした光学方式を用いて、内視鏡の遠位端での映像を観察者がいる内視鏡の近位端へ伝送することが可能である。
【0046】
Watts内視鏡技術の概要
上記説明は、顕微鏡アダプタ及び内視鏡を含む従来の単レンズ光学デバイスの構造及び機能に焦点を当てたが、本発明は、上記で開示した米国特許第5,914,810号に記載のWattsの立体撮像技法を組み込むよう従来技術のアダプタの構造を変更したステレオ光学アダプタを対象とする。新規の顕微鏡マウントを詳細に説明する前に、Watts立体撮像法の説明が必要である。
【0047】
Watts法の核心は、
図6A、
図6B、及び
図7A〜
図7Cに概略的に示す新規のステレオシャッタ61の提供である。このシャッタは、好ましくは高速で(ビデオの場合は毎秒60回であるが、速度が速いほど優れた特性をもたらす場合は任意の適当な速度を用いることができることを理解されたい)、専用ビデオ処理回路からの信号の制御下で、接眼レンズの左領域及び右領域から出る光を交互に閉塞するよう配置する。シャッタは、高速切り替えが可能な機械的、電気機械的、化学的、又は材料手段、例えば液晶材料等により形成した別個に制御可能な領域からなる。
図6及び
図7に示す実施形態では、これらの領域は、制御回路からの信号によって個別に制御できる垂直ストリップ62a〜62hからなる。例えば、
図6Aにおいて、左側像を形成する場合は素子62a及び62bが開く。その時点で、シャッタ切り替え信号を発生させ、これらのシャッタ素子を閉じ、
図6bに示すようにシャッタ素子62e及び62gを続いて開いて右側像を形成できるようにする。
【0048】
上記シーケンスを高速で、例えば毎秒24画像対等で繰り返す。上記では垂直ストリップを一例として用いるが、セルがシャッタの異なる垂直領域を選択的に閉塞可能であれば、シャッタを任意の形状、サイズ、又は寸法のセルに分割できることを理解されたい。例えば、ステレオシャッタの個々の素子は、直線状ではなく、湾曲、円形、六角形等であってもよい。さらに、上述したシャッタの個々の素子全ては、同様の電気機械的又は機械的素子から形成されているが、シャッタがこれら素子の混合からなり得ることを理解されたい。例えば、一実施形態では、中間シャッタ素子が固定又は機械的であり得る一方で、側方シャッタはLCD素子等の電気的に制御可能な素子となる。
【0049】
各露光で開くシャッタ素子の数を制御することにより、照明及び/又は被写界深度を制御することができ、従来のアイリス36(
図2)を省くことができる。例えば、シャッタ素子62cのみを開いて左側像を形成し、シャッタ素子62fのみを開いて右側像を形成した場合、開口のF値が
図6A及び
図6Bに示すものよりも増加し、したがって照明が減少して被写界深度が増加することになる。
【0050】
左側像と右側像との間の立体視分離は、左側像を形成するために開くシャッタ素子(単数又は複数)と右側像を形成するために開くシャッタ素子(単数又は複数)との間の分離を調整することによっても変えることができる。例えば、分離は、素子62a及び62bを開いて左側像を形成し、素子62g及び62hを開いて右側像を形成することによって増加させることができる。シャッタ素子を垂直方向に分割することにより、開口サイズ及び場所のさらなる制御を得ることを可能にすることもできる。
【0051】
動作中、ビデオ処理回路は、視野の左側部分及び右側部分から生じる交互の左像及び右像を表すビデオ信号を発生し、このビデオ信号を、左像及び右像を交互にそれぞれ同一速度で表示する立体モニタ又は他の立体視デバイスへ伝送する。ユーザは続いて、選択した立体視デバイスと共に用いるよう設計した眼鏡を用いて画面上の像を見ることができる。
【0052】
図7A〜
図7Cは、上記ステレオシャッタ素子61の別の動作モードを示す。この実施形態では、3状態切り替え信号を発生するようビデオ回路をプログラムし、この信号は、シャッタ素子62a及び62bを開いて左側像を形成し(
図7a)、シャッタ素子62d及び62eを開いて中央像を形成し(
図7b)、シャッタ素子62g及び62hを開いて右側像を形成する(
図7c)ことを連続的に行わせる。立体視デバイスに対する対応の3状態切り替え信号は、当該デバイスを入来画像に同期させる。この動作モードは、立体感をわずかに損なわせるが、平均照明を増加させてちらつきを低減することにより、場合によっては全体的画像品質を向上させる。
【0053】
ステレオ光学アダプタ
本発明は、上述のもの等のステレオシャッタを任意の従来の単レンズ光学デバイス用、例えば顕微鏡又は内視鏡等用の従来のビデオ/スチルカメラアダプタと合体させるシステムを提供する。顕微鏡(
図8A〜
図8D)及び内視鏡(
図9)で用いるよう構成した本発明のアダプタのいくつかの代替構成の概略図を以下で説明する。
【0054】
図8A〜
図89Cに示すように、本発明では、シャッタを複数の異なる構成で顕微鏡64に組み込むことができる。例えば、ステレオシャッタ66を、レンズ70及びアイリス72の前方で(
図8A)、又はアイリスの後方且つマルチエレメントレンズの異なるレンズ素子間で(
図8B)、カメラアダプタレンズアセンブリ68内に位置決めすることができる。代替的に、シャッタを、顕微鏡アダプタレンズアセンブリ68の前で顕微鏡64自体のカメラ/ビデオポート74内に配置してもよい(
図8C)。
【0055】
これらは例示的な構成の一部にすぎず、レンズアダプタにおけるレンズの数を光学デバイスの特定の配置に合うよう変えることができることを理解されたい。例えば、ステレオシャッタをズームレンズと合体させる場合がある。このような実施形態では、
図8Dに概略的に示すように、収束レンズ76を標準の機械的/電気機械的連結機構(図示せず)によってさらに別の収束レンズ78に連結して焦点距離の調整を可能にする。中間発散レンズ80を設け、例えば
図6A〜
図7Cのいずれかを参照して図示及び上述したようなシャッタ82を、アイリスが通常は位置する場所であるさらに別の収束レンズ84の後方に取り付ける。このとき、像はビデオ/スチルカメラ86で通常通りに結像される。好適な実施形態では、シャッタアセンブリを最適配置のためにロッドレンズ間に配置する。
【0056】
さらに、デバイスの不要な態様を省くことができる。例えば、上述のように、ステレオシャッタがアイリスとして動作できることにより、第2アイリスの必要がなくなる。
【0057】
これら種々の構成は、それぞれに異なる利点がある。例えば、シャッタをアダプタ内に保持すると、アダプタを内視鏡と位置合わせ又は位置ずれするよう単に移動させることにより、内視鏡が標準的な内視鏡又は立体内視鏡のように機能することが可能になる。さらに、アダプタ及びカメラを連結することにより、カメラを構えながらスコープを回転させることが可能であり、これは特に斜視鏡(angled scopes)(すなわち、30°DOV)で非常に重要である。さらに、このような実施形態では、スコープを標準的なアイピースコネクタと交換することができ、これは、処置の最中にスコープの角度を切り替える必要がある場合(すなわち0°スコープから80°スコープへ)、又はスコープが処置中に故障した場合に重要である。最後に、シャッタをスコープ内ではなくカメラカプラ内に位置付けた場合、標準的な機器を用いることができるので費用が削減され、シャッタとは無関係にスコープを回転させることができ、シャッタに損傷を与える心配なくスコープを滅菌でき、電子機器及びケーブルが全てカプラ内に保持される。シャッタをカメラヘッドに永久的に一体化することにより、同様の利点を得ることができる。こうした場合、シャッタ及びカプラを製造時に位置合わせし、永久的に装着/一体化することができるが、明らかにこれには専用カメラが必要である。
【0058】
アダプタ及び顕微鏡に組み込んだステレオシャッタ又は特定の光学系の位置に関係なく、アダプタの光学系及びカメラマウントを、立体像が歪みなく適切な構成でビデオ/スチルカメラに届くことを確実にするよう位置合わせ及び選択することが重要である。
図9及び
図10は、2つの異なるレンズ/シャッタ構成の動作を示すレイトレーシングの概略図を示す。図示のように、好ましくは、シャッタ88によって遮断された光線86は、図示のように平行であるが、代替的には収束又は発散し得る。これは、シャッタをカメラカプラ光学系/アダプタに組み込む場合に特に重要である。平行光線はシャッタにとって理想的な場所であるが、それはこの瞳面が全像情報を含むからである。したがって、好適な実施形態では、接眼レンズを、共役がほぼ無限である内視鏡から出る光を提供するよう設計する。このようなほぼ無限の共役系では、レンズ系が内視鏡のその射出面又は瞳に配置され得るので、光が最大限にシャッタに近付く。無限共役又はほぼ無限の共役を有する系では、内視鏡とカプラとの間の距離を変えることができ、光学系の位置合わせを保ちやすくなる。一方、光線が収束している場合、シャッタをレンズの近くに位置付けることが好ましい。
【0059】
さらに、このような実施形態は、内視鏡を取り外し、従来の内視鏡を有するが新たな技術を含むのに理想的な方法である。例えば、既存の内視鏡用のアダプタを設けてスコープアイピースから出る光線をコリメートすることが可能である。種々のアダプタを、種々の射出角度又はアイピース倍率を有する内視鏡の種々の型及びモデルと共に用いるよう構成することができる。例えば、光線が10°発散している内視鏡を、系の共役がほぼ無限であることを確実にするアダプタレンズの後方に置く場合、その角度に関係なく本発明のカプラを用いることが可能である。このようなアダプタは、別個であっても内視鏡内に設計してもよいことを理解されたい。
【0060】
より詳細には、
図9に、ツァイス顕微鏡の非シーケンシャルモデルを示す。このモデルでは、対物レンズは直径175mm×50mmであり、CCDレンズは直径55mmFL×20mmであり、ターレットは軸外12mmである。軸上視野点(青色)角度は、シャッタ及びCCDレンズの中心を通るよう調整する。周縁視野点(赤色及び黄色)は、1/3インチCCDを満たすよう変換する。CCDの長寸は、ステレオチャネルと同じ軸(y軸)にある。全視野点の角度を、シャッタの中心を通るよう調整する。最大シャッタ径は、100%効率で5.5mmである。
図10では、入射瞳の場所が物体から486mmである。ターレットにおけるチャネルの分離は24mmであるが、瞳への入口におけるチャネルの分離は66mmである。入射瞳におけるシャッタの像は直径15.4mmである(Ms=15.4/5.5=2.8X)
【0061】
これらの光学シミュレーションの結果は、本発明のアダプタを用いた任意の従来の顕微鏡から立体像を得ることができるが、顕微鏡で用いる対物レンズ又は開口部の直径が大きいほど立体感が向上することを実証する。特に、従来の内視鏡設計は、最高の立体視を与えない。例えば、従来の内視鏡では、直径6.5mmのレンズは、直径4.5mmのレンズ部分しか用いることができない。この欠点は、光が曲がった場合にケラレ(像中心と比べて周辺で像の輝度又は彩度が低下すること)を引き起こし得る。しかしながら、シミュレーションにより実証したように、システムの入射瞳は立体感を最高にするのに重要である。従来の顕微鏡と立体顕微鏡との間のこの実施態様の差の理由は、それらの目的に基づくものである。従来の顕微鏡では、用いる入射直径が小さいほど焦点深度が良好になる。しかしながら、用いる入射直径が大きいほどより大きな面積が得られて見掛け上の瞳内径が改善され、これは立体感及び光透過(輝度)を大幅に改善するが、これらのいずれも非立体顕微鏡には重要でない。したがって、好ましい一実施形態では、立体顕微鏡システムの対物レンズは、レンズを最大限に利用するよう設計する。
【0062】
さらに、従来の内視鏡光学設計は光学系の中心に最適化される。同様に、シャッタを利用する従来の単レンズ立体システムは、中心を遮断するので、光路の縁の70%で最適化されるよう設計した場合によりよい光学性能を得ることができる。本発明では、シャッタは常に像の中心部分の一部を遮断する。この遮断を増加させることにより、縁をより広範囲に見ることが可能であり、見掛け上の瞳内径が拡大される。本発明のマルチコンポーネントシャッタを用いると、閉塞部をあちこちに動かすことが可能であることにより、このような重みのついた設計を用いることによって中心の70%で最高の画像品質を得ることができる。
【0063】
次に、内視鏡への本発明の光学アダプタの一体化に移り、例示的な実施形態の概略図を
図11に示す。図示のように、本発明のこの実施形態では、遠位先端に対物レンズ90を有し近位端に接眼レンズ94を有する従来の単眼硬性内視鏡89を、カメラ(概略的に示す)に光学的に結合し、カメラは、さらに別のレンズ手段から、すなわち接眼レンズ94から出る光を、集束レンズ98によってカメラの光学系99に集束させる。当然ながら、実際にはレンズ98が通常はマルチエレメントレンズであり、露光が通常はアイリス(図示せず)によって制御される。これまで説明したように、配置は従来通りである。代替的に、カメラはビデオ又はスチルカメラとすることができ、その場合、レンズ98からの光をビデオ又はフィルムカメラの感光像面に集束させる。
【0064】
本発明によれば、好ましくは毎秒60回以上等の高速で(ビデオの場合)、ビデオ処理回路からの信号の制御下で、接眼レンズ94の左領域及び右領域から出る光を交互に閉塞するよう配置したシャッタ96を設ける。シャッタ96は、図示のようにレンズ98の前方、マルチエレメントレンズ98の異なるレンズ素子(図示せず)間、又は例えば、レンズ98とカメラとの間に設けることができる。特に、シャッタは、機械又は電子、例えばレンズ98の表面に印刷したLCDシャッタとすることができる。シャッタ96により遮断された光線は、図示のようにほぼ無限共役であることが好ましいが、交互に収束又は発散してもよい。特に、光線が収束している場合、シャッタを好ましくはレンズの近くに位置付けるべきである。
【0065】
上記実施形態を内視鏡に関して説明したが、光学アダプタを、例えば腹腔鏡、ボロスコープ、膀胱鏡、又は関節鏡に適用することもできることを理解されたい。さらに、後述するように、ユーザは、立体撮像に影響を及ぼすことなくフォーカス又はズームを引きこむことができる(レンズがこの機能を有する場合)。
【0066】
本発明のステレオ光学アダプタを組み込む単レンズ光学デバイスの実際のタイプに関係なく、特定の構造的制約を考慮にいれる必要があることを理解されたい。例えば、通常の単レンズデバイスでは、カメラ又はカメラアダプタを単に回転さえることによって画面上の投影像の位置を変えることが可能である。明らかに、カメラ又はカメラアダプタのこのような回転を観察画面上で変換することにより、観測者が試料(外科的な場合は患者の身体であり得る)を移動も回転もさせることなく視角を変更することを可能にする。しかしながら、この観察物体の視角の操作法は、本発明では複雑である。特に、左映像と右映像とを切り替えて立体感をもたらすようビデオディスプレイをシャッタと同期させる必要があるので、シャッタ及びカメラの相互に対する向きが固定されたままでなければならない。カメラ又はシャッタの相互に対する向きを変えた場合、ビデオディスプレイは、伝送されている像がシャッタの右部分からのものか左部分からのものか「把握」せず、立体感が損なわれるか又は低下する。
図12は、カメラ及びシャッタの相対向きの変化が画面上の立体像にどのような影響を及ぼし得るかを示す概略図を提供する。視点Aでは、カメラ100及びシャッタ102が正しく位置合わせされていることにより、シャッタが左映像及び右映像間を切り替えるとカメラがそれらの像を画面104へ適切な向きで伝送する。しかしながら、視点Bでは、シャッタが90°回転していることにより、「上」及び「下」映像がある。しかしながら、カメラは回転していないので、ディスプレイは上の向きを左の向きとして依然として表示する。その結果、観測者にとっての立体感が損なわれる。
【0067】
したがって、本発明の一実施形態では、ステレオシャッタ及びカメラを、シャッタ及びカメラの適当な向きを可能にする任意の適当なタイプの手動又は自動調整リング等、独立して回転可能な接続部上のアダプタに配置する。シャッタ及びカメラを必要に応じた向きにすると、これらが機械的又は電気機械的連結機構を介して相互接続されることで、シャッタ又はカメラの一方の回転がシャッタ又はカメラの他方の同一方向及び同一回転度の等しい回転をもたらす。このような同期相互接続を用いることで、立体感を低下することも損なわせることもなく、また観察されている物体を移動させる必要なく、ユーザが観察物体の向きを変えることができる。例えば、このような相互接続を用いることで、カプラの光学系を移動させて結像する際にシャッタ及び光学系を移動させることができる。カメラ及びシャッタの向きを妨害せずに適切に合焦する能力は、そうしなければ立体視位置合わせ(stereoscopic alignment)を損なわせることになるので重要である。このような合焦同期を構成するには、内視鏡に対するシールに起因して特別な設計が必要である。特に、従来の内視鏡は、レンズを内側に気密シールする2つの窓を外側に有し、レンズを前後に駆動して焦点を調整するノブを有するカム機構がある。より複雑なズーム機構には、1組の光学系を所定位置に移動させて倍率を増加させる調整ズームと、焦点を調整する別のリングとがある。シャッタをこのような光学系に対して位置付けるべきである最適位置がある。したがって、光学系を合焦させると適切なスポットになるようにその位置を固定する必要がある。単純な焦点に関しては、シャッタとレンズとの間の位置を単に固定してシステム全体を移動させることが可能だが、ズームを有するデバイスでは、ズームレンズと共に所定位置に出入りするようシャッタをカム操作する(cam)必要もある。気密シールしたデバイスの外部で移動が行われる1つの例示的なオートクレーブ処理可能なシステムは、米国特許出願第68/55106号及び第63/98724号で見ることができ、これら両方の開示を参照により本明細書に援用する。
【0068】
ステレオシャッタの動作を制御するプログラマブル回路デバイス(図示せず)にも光学アダプタを設けることを理解されたい。この回路デバイスは、シャッタ素子それぞれの透過状態から不透明状態への移行と、シャッタ素子の不透明状態から透過状態への移行とを制御する。この回路デバイスは、カメラ及び/又はビデオ表示デバイスと相互接続して、各ビデオフレームの可視ビデオ部分をシャッタと同期させることもできる。
【0069】
このような制御可能な電子デバイスの存在は、本発明の能動ステレオシャッタと組み合わせて、立体視用光学系の動作に大きな柔軟性を与える。例えば、シャッタ制御回路デバイスを用いて、ユーザがいくつかの固有機能を実施することが可能となる。
・ステレオシャッタ制御技術は、シャッタのオンオフを即時に切り替えることを可能にする。これにより、レンズ、シャッタ、又はアダプタに変更を加える必要なく、3次元視から2次元視への瞬時移行が可能となる。
・ユーザが左右の視野を制御してそれらをカメラの適当な奇数及び偶数フレームと位置合わせすることができるよう同期回路を埋め込むことも可能である。この回路は、この同期を制御すること又は左/右映像を特定のカメラ要件に自動的に一致させることを可能にすることができる。
・ステレオシャッタ制御技術を用いて、ビデオの処理/タイミングをシャッタと、またシャッタをカメラと同期させることも可能であり、3つの素子(シャッタ/カメラ/ビデオディスプレイ)の全てを同期させて同じ左/右映像を見せると共にこれらの素子が非同期になった場合はいつでもこれらを切り替えることを確実にすることが可能である。
・位置合わせ機能をシャッタドライバに組み込んで、画像品質及び立体感を最高にするためにシャッタの正しい位置及び向きを確認することができる。このような実施形態では、ドライバは、シャッタが正しい場所にあるか否かを判断するために影を検査し、立体感又は位置合わせを最高にするためにセグメントのオンオフを切り替える。
・シャッタドライバは、現代のCMOS/MOSチップ技術のローリングシャッタに対応するよう光学系の左側及び/又は右側をオーバー又はアンダーサンプリングするよう構成することもできる。要するに、新たなカメラシステムによっては、一度にオンオフ動作するグローバルシャッタではなく、ライン毎に発動するローリングシャッタを有する。これらのローリング又はラインバイラインシャッタでは、部分的な(pockets of)立体感となる。したがって、シャッタがこのローリングシャッタを周波数整合により補償することを確実にする必要がある。
・コントローラを用いてスチルカメラをトリガし、左右に同期させた2つの写真を1回で撮影することにより、アダプタの素子のいずれも機械的に移動させる必要なく高品質の立体像を撮影することを可能にすることもできる。
・別の実施形態では、フレームシーケンシャル方式の立体像を、フレームシーケンシャル、プログレッシブ、インタレース、サイドバイサイド、チェッカボード、及び水平インタリーブ/ラインバイラインを含む任意の所望の方式の立体ビデオ出力に変換できるようにする、付加的なビデオプロセッサ回路をシャッタコントローラに含めてもよい。
・シャッタドライバは、シャッタドライバ及びパルス光システムを併用して3Dの高速移動を撮像することができるようパルス光と同期させることもできる。例えば、このようなシステムを用いると、3Dストロボスコピーを実施して身体の声帯又は他の動きの速い部分を調査することが可能である。
・最後に、マルチエレメント/マルチピクセルシャッタを用いているので、フィードバック機構で自動的にシャッタの場所を中心合わせするか又はシャッタの場所を機械的に調整する必要なくシャッタの位置を手動で中心合わせするのを助けるように、左側及び右側(すなわち、光軸又は像中心と関連した中心ピクセルの位置)を選択的に配置することが可能である。
【0070】
ステレオシャッタコントローラを用いると、画像解析も可能になる。一実施形態では、試料の左像及び右像を検査して像の適切な視差を求める。視差は、2つの異なる視線に沿って見た物体の見かけ上の位置の見かけ上の変位又は差であり、
図13に概略的に示すように、これら2つの線間の傾斜の角又は半角により測定される。この概略図に示すように、観測者(M)は、物体(O)を2つの異なる位置(P1及びP2)から見る。Oは、背景(B)よりも観測者に近いので、P1からP2への位置の変化が、Oの投影を対応の位置S1及びS2に変化させる。BはOよりもはるかに遠いので、この投影位置の変化はBよりもOの方が大きい。したがって、観測者は、Bに対するOの位置の視覚的変化を認識する。本システムにおいてこれを説明するために、
図14A〜
図14Cに示すようにシャッタの幅を調整して、システムの視差を調整することにより画像品質を向上することができる。これらの概略図に示すように、視差が増加すると(
図14Aから
図14B、さらに
図14Cへ)、シャッタ(106)で起動される右(110)及び左(108)の素子の数が増加する。このようなステレオシャッタ幅調整は、シャッタコントローラにより手動で行ってもよく、又は代替的に、シャッタ視差が物体のズーム又は拡大中に自動的に調整されるようフィードバックループシステムに組み込んでもよい。このようなシステムでは、視差調整は、単レンズ光学デバイスの拡大又はズームのレベルに基づく特定の事前設定に従って、又は例えば短距離ソナー(short ranging sonar)等の測距デバイスにより行うことができる。
【0071】
上記説明はシャッタシステムに焦点を当てたが、シャッタを、ステレオシャッタの効果が画像信号処理により論理的であるか又はソフトウェア駆動される電子設計としてもよいことを理解されたい。例えば、ライトフィールドキャプチャと称する新たな技術は、焦点の合った像を取り込むのではなく、通常のアイリスがある場所の像を撮像する。したがって、このプロセスは、データ化けを捉えてそれを操作して3D像を形成する。このようなデバイスの一例は、Lytro Co.により製造されたライトフィールド検出器である。このデバイスでは、センサが僅かな情報ではなく全光照射野を検出する。
【0072】
上記実施形態のいずれにおいても、上述のように、光画像を撮像する装置が任意の適当な記録/像/カメラキャプチャシステム、例えばCCD、CMOS、又はライトフィールドキャプチャシステム等を含むことができ、こうしたキャプチャシステムが瞳に配置されて電子シャッタを用いることができるか、又は立体視分離を画像処理によって完了することができることを理解されたい。
【0073】
均等論
本発明のこの説明は、図示及び説明を目的として提示したものである。網羅的であることも本発明を記載の形態そのものに限定することも意図するものではなく、多くの変更及び変形が上記教示に照らして可能である。例えば、アダプタ光学系及び回路の上記説明は、顕微鏡ビームスプリッタ又は内視鏡に関して説明されているが、顕微鏡のアイピースを介してアダプタを顕微鏡に適用することもでき、又は他の単レンズ光学デバイスに適用してもよいことを理解されたい。実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途を最善に説明するために選択し記載した。この説明により、当業者は、特定の使用に合うように種々の実施形態で種々の変更を加えて本発明を最善に利用及び実施することができよう。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲により規定される。