(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記診断条件が成立しているときに、予め設定した単位期間内にノッキング振動周波数成分の大きさが前記第2の閾値を超えた回数をカウントし、カウントした回数が第1の所定回数を超えた場合に、前記ノックセンサが故障していると診断する請求項1又は2に記載のノックセンサの故障診断装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施例に係る内燃機関の構成図。
【
図2】上記第1実施例のノックセンサの故障診断制御の流れを示すフローチャート。
【
図3】上記第1実施例の故障診断制御を適用した場合の各特性値の変化を示すタイミングチャート。
【
図4】本発明の第2実施例に係るノックセンサの故障診断制御の流れを示すフローチャート。
【
図5】本発明の第3実施例に係るノックセンサの故障診断制御の流れを示すフローチャート。
【
図6】本発明の第4実施例に係るハイブリッド車両の構成図。
【
図7】上記第4実施例に係るノックセンサの故障診断制御の流れを示すフローチャート。
【
図8】本発明の第5実施例に係るノックセンサの故障診断制御の流れを示すフローチャート。
【
図9】本発明の第6実施例に係るノックセンサの故障診断制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。先ず、
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施例について説明する。
図1は、本発明が適用されるポート噴射方式の火花点火式ガソリン機関のシステム構成を示す構成図である。内燃機関10は、複数のシリンダ(ボア)11Aが設けられたシリンダブロック11と、このシリンダブロック11の上側に固定されるシリンダヘッド12とを有している。なお、この
図1では、一つの気筒のシリンダ11Aのみを描いており、実際には複数のシリンダ11Aが気筒列方向に並設されている。
【0009】
各シリンダ11Aにはピストン15が摺動可能に配設されており、各ピストン15の上方には、ペントルーフ型のシリンダヘッド12の下面との間に燃焼室13が形成されている。各燃焼室13には吸気弁16を介して吸気ポート17が接続するとともに、排気弁18を介して排気ポート19が接続し、更に、燃焼室13内の頂部中央に混合気を火花点火する点火プラグ20が配設されている。
【0010】
各気筒の吸気ポート17に接続する吸気通路21には、吸気コレクタ22の上流側に、吸気量(吸入空気量)を調整する電子制御式のスロットル弁23が設けられるとともに、各気筒の吸気ポート17へ向けて燃料を噴射する燃料噴射弁24が設けられている。なお、このようなポート噴射型の構成に限らず、燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式の構成であっても良い。また、スロットル弁23の上流側には、吸気量を検出するエアフロメータ25と、吸気中の異物を捕集するエアフィルタ26と、が設けられている。
【0011】
各気筒の排気ポート19が接続・集合する排気通路30には、三元触媒等の触媒31が介装されるとともに、この触媒31の上流側に、排気の空燃比を検出する酸素濃度センサ等の空燃比センサ32が設けられる。この空燃比センサ32の検出信号に基づいて、排気の空燃比を目標空燃比(理論空燃比)に維持するように燃料噴射量を増減する空燃比フィードバック制御が行われる。
【0012】
各気筒のピストン15はコネクティングロッド33を介してクランクシャフト34と連結されており、このクランクシャフト34のクランク角を検出するクランク角センサ35がシリンダブロック11に設けられている。また、シリンダブロック11には、内燃機関の振動を検知するノックセンサ36が取り付けられている。
【0013】
機関運転状態を検出する各種センサ・スイッチ類として、上述したセンサ類の他に、ウォータジャケット38内の冷却水温を検出する水温センサ37、運転者により操作されるアクセルペダルのアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ39、及び内燃機関の起動及び停止用のイグニッションスイッチ40等が設けられている。運転者により操作されるイグニッションスイッチ40が「ON」のときに、内燃機関の起動要求が出力され、イグニッションスイッチ40が「OFF」のとき、内燃機関の停止要求が出力される。
【0014】
制御手段としてのECU(エンジン・コントロール・ユニット)41は、各種制御処理を記憶及び実行する機能を有するマイクロコンピュータを備えるもので、上述した各種センサ・スイッチ類からの入力信号に基づいて、スロットル弁23、点火プラグ20、燃料噴射弁24等へ制御信号を出力して、その動作を制御する。
【0015】
このECU41は、ノックセンサ36の出力信号から抽出されるノッキング振動周波数成分(例えば、5〜12kHz)の信号強度(大きさ)が、予め設定された第1の閾値SL1を超える場合に、ノッキングが発生していると判定する。より具体的には、内燃機関の定常的な振動とノッキングとを正確に区別して検出するため、ノッキング振動周波数成分の過去の値から定常成分を算出し、最新の抽出されたノッキング振動周波数成分から定常成分を減じてノッキング振動周波数成分の動的成分を算出し、この動的成分の大きさが閾値SL1(機関回転数に応じて設定)を超える場合にノッキングが発生していると判断する。なお、ノッキング振動周波数成分の大きさを閾値と比較してノッキングの発生を判定する方法としては、ノッキング振動周波数成分そのものの大きさを閾値と比較する方法と、上記したようにノッキング振動周波数成分の動的成分の大きさを閾値と比較する方法とが考えられるが、本発明では何れの方法であっても良い。このようにノッキングの発生を検知した場合、このノッキングの発生を抑制もしくは解消するように、点火時期の遅角制御などが行われる。
【0016】
図2は、本実施例に係るノックセンサ36の故障診断処理の流れを示すフローチャートである。本ルーチンは、上記のECU41に記憶され、所定期間(例えば、10ms)毎に繰り返し実行される。
【0017】
ステップS11では、ノッキングが発生し得ない所定の診断条件が成立するか否かを判定する。この例では、全気筒燃料カット中で、かつ、燃料カットの開始から所定期間
ΔB、具体的には1サイクルが経過したかを判定する。
【0018】
ステップS12では、ノックセンサ36の検出信号に基づいて、ノック判定中であるか、つまりノッキングの発生を検出したかを判定する。具体的には、ノックセンサ36の出力信号から抽出される5〜12kHzのノッキング振動周波数の信号強度(大きさ)が急峻に大きくなって、上記した動的成分の大きさが予め設定される第2の閾値SL2を超えた場合に、ノッキングの発生を検知して、ステップS13へ進む。この第2の閾値SL2は、この実施例では、制御の簡素化のため、通常運転時のノック判定に用いられる上記の第1の閾値SL1と同じ値とされている。但し、診断精度向上のために、診断条件等に応じて第1の閾値SL1を第2の閾値SL2よりも大きな値もしくは小さな値としても良い。
【0019】
ステップS13では、ノック判定の頻度を算出する。具体的には、予め設定した単位期間
ΔA内に、上記ノッキング振動周波数成分の大きさが上記第2の閾値SL2を超えた回数、つまりノック判定の回数をカウントする。単位期間
ΔAは、
図3の例では1秒であるが、これに限らず、他の時間もしくは期間(例えば、所定クランク角度)としても良い。
【0020】
ステップS14では、このノック判定の頻度(単位期間
ΔA内のノック判定回数)が、予め設定された第1の所定回数sN1を超えたか否かを判定する。第1の所定回数sN1は、この例では
図3に示すように8回であるが、他の整数回であっても良い。
【0021】
ステップS15では、上記ステップS14におけるノック判定の頻度が第1の所定回数sN1を超える状態が、連続して第2の所定回数sN2以上に発生したかを判定する。ノック判定の頻度が第1の所定回数sN1を超える状態が、連続して第2の所定回数sN2以上に発生した場合に、ステップS15からステップS16へ進み、ノックセンサ36を故障と判定する。このようにノックセンサ36の故障と判定された場合には、警告灯や音声によりノックセンサ36が故障である旨を運転者に報知するとともに、このノックセンサ36の検出信号を用いた点火時期制御等の制御処理を適宜なフェールセーフモードに切り替える。
【0022】
図3は、このような本実施例の制御を適用した場合の各特性値の変化を示すタイミングチャートである。全気筒燃料カットの開始時点t1,t4から所定期間
ΔB(この例では1サイクル)が経過した時点t2,t5で、ノックセンサ36の診断許可がONとなり、
図2のルーチンでステップS11からステップS12へ進んで、ノックセンサ36の故障診断が実施される。この故障診断中には、上述したように、単位期間
ΔA内のノック判定回数(ノック頻度)が第1の所定回数sN1(この例では8回)を超える状態が、連続して第2の所定回数(この例では5回)以上発生した時点t6で、ノックセンサ36の故障と診断される。
【0023】
なお、
図3の例では、ノック頻度の判定の2回目と3回目の間が不連続のようにみえるが、全気筒燃料カットが一時的にOFFとなる時刻t3から時刻t4までの期間痾を除いた故障診断許可条件の下では、ノック頻度の判定が5回以上連続して第2の所定回数sN2以上となっている。
【0024】
このように本実施例では、ノッキングが発生し得ない所定の診断条件下で、ノックセンサの出力信号から抽出されるノッキング振動周波数成分の大きさが第2の閾値SL2を超えた場合、より具体的には、第2の閾値SL2を超えるノック判定の頻度が第1の所定回数sN1を超える状態が、連続して第2の所定回数sN2以上発生した場合に、ノックセンサ36が故障であると診断している。従って、ノックセンサ36の出力が過度に大きくなる形態の異常・故障を検出することが可能となる。また、第2の閾値SL2を用いた故障診断処理では、第1の閾値SL1を用いた通常のノッキングの発生の検知処理とほぼ同様の制御処理を流用することが可能となり、極めて簡素な制御ロジックによって故障診断を実施することが可能となる。
【0025】
図4、
図5及び
図7〜
図9は、第2〜第6実施例に係るノックセンサ36の故障診断の処理の流れを示すフローチャートである。これらの第2〜第6実施例では、ノッキングが発生し得ない診断条件の判定処理として、上記第1実施例のステップS11に代えて、下記のステップS11A〜S11Eが行われる点で、上記第1実施例と異なっている。なお、他の構成については上記の第1実施例と同様であり、重複する説明を省略する。
【0026】
図4に示す第2実施例では、ノッキングが発生し得ない診断条件として、ステップS11Aにおいて、点火時期が所定のノック限界点火時期よりも遅角側にあるか否かを判定する。ノック限界点火時期は、例えば、機関回転速度と機関負荷とをパラメータとする予め設定された制御マップを参照して求めることができる。点火時期がノック限界点火時期よりも遅角側にある場合には、ノッキングが発生し得ない診断条件が成立していると判断して、ステップS12以降へ進み、点火時期がノック限界点火時期よりも遅角側にない場合には、ノッキングが発生し得ない診断条件が成立していないとして、本ルーチンを終了する。
【0027】
図5に示す第3実施例では、ノッキングが発生し得ない診断条件として、ステップS11Bにおいて、アイドル運転中であるか否かを判定する。より具体的には、アクセル開度がほぼ全閉で、かつ、機関回転速度がほぼアイドル回転速度である場合に、アイドル運転中である、つまりノッキングが発生し得ない診断条件が成立していると判断して、ステップS12以降へ進み、アイドル運転中でない場合、ノッキングが発生し得ない診断条件が成立していないと判断して、本ルーチンを終了する。
【0028】
図6は、本発明の第4実施例が適用されるハイブリッド車両の全体構成図である。このハイブリッド車両は、いわゆる1モータ2クラッチのパラレルハイブリッド車両であって、車両駆動源として併用される内燃機関51とモータ/ジェネレータ52とが第1クラッチ53を介して直列に接続されている。モータ/ジェネレータ52と自動変速機54との間には第2クラッチ55が介装されており、自動変速機54はデファレンシャルギヤ56を介して駆動輪57に接続されている。
【0029】
このようなハイブリッド車両では、内燃機関51の起動・停止用のイグニッションスイッチ40(
図1参照)がONである場合、つまり運転者により操作されるイグニッションスイッチ40から内燃機関51の起動要求が出力されている場合にも、内燃機関51を自動停止し、モータ/ジェネレータ52のみによる走行が可能であり、例えばアイドルストップ時には、燃費向上のために、イグニッションスイッチ40が「ON」の状況下で内燃機関51を自動停止する。なお、この第4実施例が適用される車両としては、上記のハイブリッド車両に限らず、アイドル運転時に内燃機関51を自動停止するアイドルストップ制御を実現可能なものであれば、内燃機関51のみを車両駆動源とする車両であっても良い。
【0030】
この第4実施例では、
図7に示すように、ノッキングが発生し得ない診断条件として、ステップS11Cにおいて、アイドリングストップ中であるか、より具体的には、イグニッションスイッチ40がONであり、かつ、内燃機関51が自動停止されているかを判定する。アイドリングストップ中であると判定されれば、ノッキングが発生し得ない診断条件が成立するとして、ステップS12以降ヘ進む。一方、アイドリングストップ中で無く、ノッキングが発生し得ない診断条件が成立していない場合には、本ルーチンを終了する。
【0031】
図8に示す第5実施例では、ノッキングが発生し得ない診断条件として、ステップS11Dにおいて、イグニッションスイッチ40がOFFで、かつ、回転速度が0以上であるかを判定する。具体的には、運転者によるイグニッションスイッチ40の「OFF」操作により内燃機関の停止処理が開始されてから、実際に内燃機関の回転が停止するまでの間、つまりクランクシャフト34が惰性で回転している間であるか否かを判定する。内燃機関の回転停止の判定は、上述したクランク角センサ35の検出信号等に基づいて行われる。イグニッションスイッチ40がOFFされてから内燃機関の回転が停止するまでの間であれば、ノッキングが発生し得ない診断条件が成立していると判定して、ステップS12へ進む。
【0032】
図9に示す第6実施例では、ノックセンサ36が特定気筒の振動を検出するように、例えばシリンダブロック11における特定気筒に近接する位置に設置されている。そしてステップS11Eでは、ノッキングが発生し得ない診断条件として、この特定気筒が燃焼が行われていないタイミングであるか、具体的には、吸気行程、圧縮行程前半、膨張行程後半、排気行程の何れかであるかが判定される。特定気筒が吸気行程、圧縮行程前半、膨張行程後半、排気行程の何れかである場合には、ノッキングが発生し得ない診断条件が成立すると判定して、ステップS12へ進む。
【0033】
なお、これらの第1〜第5実施例で示したような、ノッキングが発生し得ない診断条件の幾つかを適宜に組み合わせて用いることも可能であり、この場合、故障診断が実施される機会・頻度を増加することができる。