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特許5985501容器の成形及び充填の単一ステッププロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985501
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】容器の成形及び充填の単一ステッププロセス
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/08 20060101AFI20160823BHJP
   B29B 11/14 20060101ALI20160823BHJP
   B65B 47/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B29C49/08
   B29B11/14
   B65B47/02
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-542518(P2013-542518)
(86)(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公表番号】特表2014-504219(P2014-504219A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】EP2011072011
(87)【国際公開番号】WO2012076576
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年12月4日
(31)【優先権主張番号】10194546.7
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514318149
【氏名又は名称】ディスクマ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】DISCMA AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハートウィッグ, クラウス
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/075791(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/003853(WO,A1)
【文献】 特開2000−043129(JP,A)
【文献】 特開2009−102509(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/109159(WO,A1)
【文献】 特開2011−131487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00−49/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックの容器を同時に製造し充填するプロセスであって、
a.ラスチックから製造され、長手方向軸(17)を備え、前記プロセスの間に延伸されない上部(11)、及び、プリフォームの長手方向軸に沿って、1つ又はいくつかの局所的に薄くされた壁厚さ(15)を有する領域(16)を備えている延伸可能な部分(13)である下部を呈するプリフォーム(1)を、2つ以上の構成部材の型組立体(20、21、22)に対して位置させるステップと、
b.前記プリフォームをその長手方向軸(17)に沿って延伸させるステップと、
c.前記プリフォーム(1)を所望のサイズ及び形状を実現するまで塑性変形させるような圧力を受ける液体(29)を、前記プリフォーム(1)の内容積部(6)に注入するステップと、
d.前記型組立体(20、21、22)から前記容器を解放し、前記容器を密封するステップとを含み、
ステップa.より前において、前記プリフォームの局所的に薄くされた壁厚さ(15)
を有する領域(16)の位置がガラス転移温度(Tg)よりも高い温度に加熱され、前記プリフォーム(1)の、局所的に薄くされた壁厚さ(15)を有する領域(16)と異なり、前記延伸可能な部分(13)の少なくとも一部が、前記プリフォーム(1)のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
ステップa.より前において、前記プリフォーム(1)の、局所的に薄くされた壁厚さ(15)を有する領域(16)と異なり、前記延伸可能な部分(13)の少なくとも一部は、前記プリフォーム(1)のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であり、当該温度は周囲温度であることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プリフォームは、リエチレンテレフタレート樹脂から製造されるPETプリフォームであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記プリフォーム(1)を延伸させる前記ステップ及び前記液体(29)を注入する前記ステップが実質的に順次に実行されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記液体(29)を注入する前記ステップが、前記プリフォーム(1)を延伸させる前記ステップが終了する前に開始することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プリフォーム(1)を延伸させる前記ステップ及び前記液体(29)を注入する前記ステップが実質的に同時に実行されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記容器を成形するために前記プリフォーム(1)に注入される前記液体(29)が、前記容器内に封ぜられ前記容器とともに供給されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記液体が周囲温度であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プリフォーム(1)の前記延伸可能な部分(13)の少なくとも50%が、前記プリフォーム(1)のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記プリフォーム(1)の前記延伸可能な部分(13)の少なくとも30%が、前記プリフォーム(1)のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プリフォーム(1)の前記延伸可能な部分(13)の少なくとも70%が、前記プリフォーム(1)のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プリフォーム(1)の前記延伸可能な部分(13)の少なくとも90%が、前記プリフォーム(1)のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
プラスチックの容器を同時に製造し充填するためのシステムであって、
ラスチックから製造され、長手方向軸(17)を備え、プラスチックの容器を同時に製造し充填するプロセスの間に延伸されない上部(11)、及び、プリフォームの長手方向軸に沿って、1つ又はいくつかの局所的に薄くされた壁厚さ(15)を有する領域(16)を備えている延伸可能な部分(13)である下部を呈するプリフォーム(1)と、
局所的に薄くされた壁厚さ(15)を有する領域(16)の位置がガラス転移温度(Tg)よりも高い温度になるように、且つ、前記プリフォーム(1)の、局所的に薄くされた壁厚さ(15)を有する領域(16)と異なり、前記延伸可能な部分(13)の少なくとも一部が、前記プリフォーム(1)のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度になるように、前記プリフォームを加熱するための手段と、
2つ以上の構成部材の型組立体(20、21、22)と、
前記プリフォーム(1)をその長手方向軸(17)に沿って延伸させるための延伸要素(25)と、
前記プリフォーム(1)を所望のサイズ及び形状を実現するまで塑性変形させるような圧力を受ける液体(29)を前記プリフォーム(1)に注入するための手段と、
前記型組立体から前記容器を解放するための手段と、
前記容器を密封するための手段とを備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、プラスチック容器を製造し充填する方法に関する。より詳細には、本発明は、加熱され加圧された空気を使用して、例えば射出成形によってすでに製造されているプリフォームを膨張させることによって容器を成形する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]上述の技術は、プラスチック成形技術では「ブロー成形」として広く知られている。特に、ブロー成形は、食品、飲料品、又は薬品などの容器の成形に広く使用されている技術である。ブロー成形用の一般的なプラスチック樹脂には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)が含まれる。ただし、プロセス及び用途に適した特性を有する他の樹脂を使用してもよい。
【0003】
[0003]ブロー成形プロセス用の代表的な原料は、射出成形によって作製される、概して管状で、中空の熱可塑性プリフォームである。このプリフォームは概して、一方の端部が閉鎖され、他方の端部が開放されたままであり、試験管又は同様の容器の外観を有する。プリフォームの開放端部は概して、実質的に完成した形態であり、場合によってはねじ、吐出口などの特徴部を含む。しかし、プリフォームは、両方の端部を開放し未完成のままにしておき、閉鎖部材及びその他の特徴部を後で付加してもよい。
【0004】
[0004]代表的なブロー成形プロセスでは、まず、通常は炉又は放射暖房器を使用することによってプリフォームを予熱する。プリフォームが加熱される温度は、材料のガラス転移点よりも高い温度である。これによって、プリフォームは、柔らかくかつしなやかになり、型のくぼみに流入することができる。したがって、ブロー成形プロセスの加工温度は、使用される材料の特性に応じて55℃〜135℃の範囲である。
【0005】
[0005]プリフォームを、所望の温度まで一様に加熱した後、型内に位置させる。型のキャビティを、完成後の容器の外部の輪郭を定めるように形成する。プリフォームの開放端部における首部は概して、型の頂部から突き出る。延伸ロッドをプリフォームの開口部に挿入し、プリフォームの開口部の周りにブロー成形装置を位置させる。成形時に、プリフォームの閉鎖端部に押し込み、プリフォームをその長手方向軸の方向に変形させるように、プリフォーム内で延伸ロッドを前進させる。同時に、高圧下の空気をプリフォーム内に吹き込み、プリフォームを膨張させて型キャビティを充填する。次いで、容器を取り出す前に冷却剤を型本体内に循環させるか又は液体窒素などの低温流体を容器に注入することによって容器を冷却する。容器を十分に冷却した後、型から取り出し、製品を充填して密封する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]上述のような現在の方法は、いくつかの点で不利である。第1に、プラスチックを成形に適切な温度に維持するために、プラスチックプリフォームを予熱しなければならず、これは、プロセスにエネルギー費の形でかなりのコストを追加するステップである。これらのコストは、大量生産工程では特に重要な問題であり、大量のプリフォームを非常に急速に加工温度まで加熱しなければならず、大規模な加熱機器の設置が必要になる。第2に、容器をガスを使用して成形する際、ガスが圧縮可能であることによって成形プロセスに対する制御が低下する。第3に、容器を成形後に冷却しなければならず、温度が十分に低下するまで充填することができず、それによって、ブロー成形装置が動作できる速度が制限され、概して、プロセスにさらなる複雑さ及び経費が付加される。第4に、プラスチックの温度が成形プロセスの間材料のガラス転移点よりも高い温度に維持されるので、完成後の容器の分子構造は主として無定形のままであり、強度の増大による利点並びに結晶化及び歪み硬化の結果としての他の物理的特性による利点が得られない。
【0007】
[0007]本発明の一目的は、成形の前のプリフォームの加熱量を低減させることによってプロセスを完了するのに必要なエネルギーの量を低減させることであってもよい。
【0008】
[0008]本発明のさらなる目的は、材料のガラス転移点を超える加熱なしに材料の流動を実現する代替手段を有するプリフォームを提供することであってもよい。
【0009】
[0009]本発明のさらなる目的は、容器ブロー成形充填工程のサイクル時間を短縮することのできる手段を提供することであってもよい。
【0010】
[0010]本発明のさらなる目的は、現在のブロー成形技術におけるガス状流体注入の不正確さ及び制御不能性を軽減又は解消することによって、ブロー成形プロセスに対する現在の制御手段を改善することであってもよい。
【0011】
[0011]本発明のさらなる目的は、ブロー成形プロセスによって生じる容器の結晶化度を高めることにより、ブロー成形プロセスによって作製される容器の結晶構造を改善することであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]第1の態様によれば、本発明は請求項1に定義された新規のプロセスに関する。それに応じて、本発明は、請求項15に定義されたプラスチック容器を製造し充填する新規のシステムにも関する。さらなる態様によれば、流体は圧縮不能な流体である。このさらなる態様によるプロセス及びシステムは、プリフォームの膨張が、空気ではなく圧縮不能な流体を使用することによって実現されるという点で有利である。このことは、膨張するプリフォームに注入されるガスの体積及び圧力の調節における予測不能性及び変動を解消するという点で有利である。例えば、プリフォームを熱可塑性樹脂から製造してもよい。
【0013】
[0013]本発明のさらなる態様によれば、プリフォームを延伸させるステップ及び流体を注入するステップは、実質的に順次に実行される。このことは、本発明の実施者が成形プロセスをそれぞれの異なる制御可能なステップに分離することによって成形プロセスをよりうまく制御するのを可能にする利点を有する。このことは、本発明の実施者が成形プロセスを特定の容器設計に対して最適化するのをさらに可能にし、成形がいくつかの異なるステップで行われるので、実施者は、プロセスにおけるあるステップを特定の欠陥の原因として、よりうまく特定し、したがって、そのステップを補正することができる。
【0014】
[0014]本発明の代替態様によれば、プリフォームを延伸させるステップ及び流体を注入するステップは、実質的に同時に実行される。このことは、延伸及び注入を順次に行うプロセスと比べて成形プロセスを高速化し、それによって、ブロー成形工程の能力を向上させる利点を有する。
【0015】
[0015]本発明のさらに別の態様によれば、プリフォームを延伸させるステップ及び流体を注入するステップは、実質的に順次に実行され、注入ステップは、延伸ステップが終了する前に開始する。これによって、各ステップの開始時間がずらされ、したがって、それぞれの異なる制御可能なステップが構成されるという点で、本発明の上記の両方の態様の利点が組み合わされる。さらに、延伸ステップが終了するのを待たずに注入ステップが開始するので、それによって製造プロセスの時間的な利点が得られる。
【0016】
[0016]本発明のさらなる態様では、容器の成形を行うのに使用される流体(例えば、圧縮不能な流体)は、容器によって封ぜられ顧客に供給される流体である。このことは、別個の成形装置及び充填装置を取得して動作させることに伴う資本経費及び工程所要時間の延長が解消されるという点で有利である。同時に、容器を滅菌するプロセスが大幅に改善される。その理由は、このプロセスでは、滅菌されるのはプリフォームであって、完成後の容器ではないからである。詳細には、(完成後の容器と比べて)プリフォームが小型であり形状が単純であるので、既存の方法よりもかなり迅速に滅菌プロセスを実施することが可能になる。この態様は場合によっては、腐敗又は異物混入を防止するのに広く使用されているようなシールを、成形プロセスが完了した後に容器に貼るステップを含んでもよい。
【0017】
[0017]別の態様によれば、流体は周囲温度である。これによって、延伸ステップによって発生した熱を散逸させることが可能になる。さらに、このことは、流体が(周囲温度で)流体源に蓄積されるか又は流体源から利用できるので、流体を加熱又は冷却するのに使用することのできるエネルギーのうちで流体を加熱又は冷却するうえで無駄になるエネルギーがないという点で有利である。
【0018】
[0018]本発明のさらなる態様は、プロセスによって必要とされるエネルギーの量が現在の方法と比べて大幅に低減することである。エネルギーがこのように低減すると、単位当たりコスト及び全体的なコストがかなり節約される。このような低減は、ガラス転移温度(Tg)よりも低い温度、好ましくは周囲温度でプリフォームによるブロー成形工程を実施することによって実現される。本発明のこの態様は、プリフォームを成形する前の加熱が限定されるか又は全く行われないので、成形後の冷却時間が大幅に短縮され、又は場合によっては無くなるという利点を有する。これによって、総サイクル時間が短縮され、所与のブロー成形工程の能力が向上し、容器の製造業者に経済上の利点がもたらされる。有利なことに、プリフォームの少なくとも一部、より具体的には、プロセス中に延伸させることのできるプリフォームの部分は、プリフォームのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であり、最も好ましくは周囲温度である。したがって、プリフォームを延伸させる前には、プリフォームの延伸可能な部分の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは90%がプリフォームのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度である。
【0019】
[0019]プラスチック容器を製造し充填するプロセスの間、プリフォームは周囲温度であり、小さくなった断面積を呈する、プリフォームの延伸可能な部分の少なくとも一領域を加熱して、成形時に変形を容易に開始させることができることが好ましい。
【0020】
[0020]本発明は、前述のブロー成形で使用されるよう意図された、請求項10によるプリフォームにも関する。このプリフォームは、プリフォームの長手方向軸に沿って位置する、断面積を小さくされた1つ又はいくつかの領域を備える。断面積を小さくされたこれらの領域は、長手方向及び半径方向の応力の集中部として働き、したがって、成形時にこれらの領域で塑性変形が確実に開始される。1つ又は複数の領域の断面積を小さくするには、プリフォームの長手方向軸に沿って形状を滑らかに変化させるか(例えば、湾曲形状)、又はプリフォームの長手方向軸に沿って鋭角部を形成するか(例えば、傾斜形状)、又はそれらを組み合わせることによって実現可能である。
【0021】
[0021]したがって、本発明のさらなる態様では、従来技術による方法によって作製された容器で見られる結晶化度と比べて完成後の容器の結晶化度が高くなる。結晶化度がこのように高くなるのは、ブロー成形プロセスにおいて、プリフォームが製造される材料のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度でプリフォームが成形されるという事実の結果である。このことは、良好な熱伝導特性(例えば、特に、水は高い熱伝導特性を有する)を有し、したがって、延伸ステップによって発生した熱を迅速に散逸させる圧縮不能な流体を使用することで可能になる。したがって、圧縮不能な流体として水を用いることによって高い結晶化度(30〜35%)を得ることができる。これによって、プリフォームを所望の形状に変形する作用によってプラスチック樹脂分子同士が揃い結晶化するよう促されるので、成形プロセス時の歪み硬化が改善される。このように結晶化度が高くなると、完成後の容器の機械的特性及び化学的特性が向上する。
【0022】
[0022]請求項13による本発明の別の目的は、上記に簡単に説明したようにプラスチック容器を製造し充填するプロセスを制御する方法である。この方法は、本発明の任意の他の態様と組み合わされたときに、本発明の実施者が、自動化プロセス制御システムを使用することによってプロセス制御及びスループットを最適化するのを可能にするので有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】[0023] 図2及び図3における別々の詳細図の表示を含む、本発明で使用するためのプリフォームの図である。
図2】[0024] 湾曲形状で構成される図1のプリフォーム上の変形領域の詳細図である。
図3】[0025] 傾斜形状で構成される図1のプリフォーム上の変形領域の代替的な詳細図である。
図4】[0026] 本発明を実施することのできる装置の図である。
図5】[0027] 本発明によるプロセスによって作製された完成後の容器を示す図である。
図6】[0028] 本発明によるプロセスの一例によって得られた実験的な曲線を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0029]本発明は、非限定的な例として与えられ、本発明によるプリフォーム及び成形装置を示す添付の図1〜4を参照して説明する、好ましい実施形態に関する以下の説明からより適切に理解されよう。
【0025】
[0030]プラスチック、より詳細には、熱可塑性樹脂、例えばPETから容器をブロー成形するプロセスは、図1に示すプリフォーム1から開始する。好ましい実施形態では、プリフォーム1は、従来の射出成形プロセスにおいてPET樹脂で製造される。プリフォーム1は、理想的には長手方向軸17に対して軸対称である。プリフォーム1は、上部11と下部13とで構成された、全体的に細長い形状の管状体である。プリフォーム1の下部13は、概して、厚さ5の壁を形成する外面3及び内面4によって形成される。厚さ5は、必ずしも一定ではなく、完成後の容器の形状を最適化する必要に応じて(長手方向において)プリフォーム1の本体に沿ってわずかに変化してもよい。プリフォーム1の上部11は、キャップを容易に嵌めることができるように配置されたショルダ9、ねじ部10、及び開口部12を備える。首部14は、上部11と下部13との間の遷移部を備える。
【0026】
[0031]上部11は、容器を製造するプロセスの間及びプリフォーム1をその長手方向軸に沿って延伸させるステップの間に延伸しない部分である。したがって、上部11は延伸不能な部分と呼ばれる。それに対して、下部13は、延伸可能な部分として定義され、容器の所望のサイズ及び形状を実現するまで延伸し、変形する。
【0027】
[0032]プリフォーム1は、内径7及び外径8を有する半球状シェルを備える底部2によってさらに画定される。底部2を上部11及び下部13と組み合わせることの効果として、プリフォームが内容積部6を画定する管状構造になる。
【0028】
[0033]首部14は、プリフォーム1の残りの部分に対して局所的に薄くされた壁厚さ15を有する領域16を備える。領域16は、プリフォーム1の壁の軸方向応力及び半径方向応力の集中部であり、成形時に変形の確実な開始点を形成し、したがって、成形時にプリフォーム1の流動を推進する働きをする。図2及び図3は、薄くされた厚さ15を有する2つの可能な構成を示す。図2では、薄くされた厚さ15は、一定の半径であっても又は可変半径であってもよい滑らかな曲線18によって実現される。その代わりに、図3では、プリフォームは、曲線18と同じ目的を実現する角度部19(鋭角部)を備える。好ましい実施形態では、1つのそのような領域16のみが使用されるが、場合によっては、使用される材料の特性及び成形中の容器の形状に応じて、複数のそのような領域が使用されてもよい。
【0029】
[0034]プリフォームは全体として周囲温度であることが好ましい。より詳細には、プリフォームの延伸可能な部分の少なくとも一部は周囲温度であり、最も好ましくは、プリフォームのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度である。
【0030】
[0035]提案されたように、プリフォームを延伸させる前には、プリフォームの延伸可能な部分の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは90%がプリフォームのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度である。
【0031】
[0036]しかし、プリフォームの長手方向軸に沿った延伸可能な部分の延伸を容易にするために、延伸可能な部分をいくつかの点で局所的に加熱することが計画される。有利なことに、成形時に、局所的に薄くされた壁厚さ15を示す領域16の位置でプリフォームを加熱して延伸可能な部分の変形を開始することができる。ガラス転移温度(Tg)に近いか又はガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で領域16を加熱することができ、一方、プリフォームは、全体としてガラス転移温度(Tg)よりも低い温度のままであり、好ましくは周囲温度である。
【0032】
[0037]図4は、成形プロセスを実施する装置の好ましい実施形態を示す。装置は、ベース20並びに左右の型半部21及び22(まとめて型構成部材)を有する型と、シリンダ26によって駆動される延伸ロッド25などの延伸要素を有する成形ヘッド27とを備える。型半部21及び22は、型中心線35に沿って互いに当接し、型ベースシーム34に沿って型ベース20に当接する。したがって、型構成部材の内面23によって型キャビティ30が画定されている。代替として異なる数の構成部材を有する型が使用されてもよいことに留意されたい。型は、成形工程時にプリフォーム1によって押しのけられた空気を排気する1つ又は複数の排気口38をさらに備えてもよい。
【0033】
[0038]型半部21及び22は、上部オリフィス36を備える。オリフィス36は、プリフォームショルダ9が型半部21及び22の上面に載せられるとともにプリフォーム首部14がオリフィス36を通過することができるようなサイズを有する。その結果、プリフォームの下部13が型キャビティ30内に位置し、一方、プリフォームの上部11が型キャビティの外側に位置する。
【0034】
[0039]成形工程の前に、プリフォーム1を成形プロセス用に準備する。好ましい実施形態では、プリフォームから何らかの潜在的残留物を除去し、将来入れられる内容物の腐敗を防止するように消毒する。プリフォームは周囲温度であることが好ましい。準備されたプリフォーム1を、上述のように封ぜられるように型構成部材20、21、及び22に対して位置させる。実際的には、プリフォーム1を組立て済みの型構造に挿入するか、或いは各型構成部材を組み立ててプリフォーム1を取り囲む間プリフォーム1を所定の位置に保持してもよい。各型構成部材を適切に位置させた後、クランプ又はロックデバイスによって所定の位置に保持する。装置は、プリフォーム1とともに、プラスチック容器を製造し充填するためのシステムを形成する。次いで、成形ヘッド27をプリフォーム1の口部28の周りに位置させ、外力41を加えることによって所定の位置に保持する。成形ヘッド27は場合によっては、プリフォームねじ部10に係合して連結及び密封を向上させるための手段を備えてもよい。
【0035】
[0040]成形工程を準備する間、プリフォーム1は周囲温度であるか又は少なくともプリフォーム1のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度である。
【0036】
[0041]成形工程時に、プリフォームの延伸可能な部分13の局所領域16をプリフォーム1のガラス転移温度(Tg)又はプリフォーム1のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で加熱してプリフォーム1の塑性変形の開始を助けることができる。
【0037】
[0042]延伸ロッド25をプリフォームの内容積部6内で前進させ、延伸ロッド25をプリフォームの長手方向軸17に沿って延伸させることによってプリフォームを可塑性変形させることによって成形工程を開始する。圧縮空気供給源32から供給される圧縮空気によって駆動され弁33によって規制される空気圧シリンダ26によって延伸ロッド25を駆動する。代替として、他の駆動手段を使用して延伸要素の変位を駆動してもよい。この変形は、延伸ロッド25が底部点37の所で型底部20に当接するまで継続し、底部点で、延伸ロッド25が停止し、成形工程が完了するまで延伸ロッドが所定の位置に保持される。
【0038】
[0043]延伸ロッド25が延伸によってプリフォームを変形させている間、流体供給源31から供給され弁39によって規制される、圧力下の圧縮不能な流体29、例えば水をプリフォーム内容積部6に注入する。より具体的には、注入は、延伸が開始してから終了するまでの間に開始する。これによって、プリフォームの高さに沿って規則的に分布する結晶化度を得ることが可能になる。最初は多少非晶形であるPETプリフォームを延伸させると、プリフォームが結晶性を生じることに留意されたい。しかし、延伸ステップによって発生する熱によって、このように生じた結晶性が損なわれる。圧縮不能な流体、特に、水のような良好な熱伝導性又は特に高い熱伝導性を有する流体を使用すると、延伸ステップによって生じた熱を排出し、結晶化度をかなり高いレベル、例えば30〜35%の間に維持することが可能になる。さらに、結晶性を得るために、注入ステップでは水が周囲温度で使用される。しかし、代替として、他の流体(例えば、液体)、特に0℃〜100℃の間の任意の温度を有する流体を使用してもよい。任意で圧縮不能な流体29を注入する前にプリフォーム1の内部から空気を除去する手段を設けてもよい。延伸ロッド25によって生じる長手方向の応力及び圧縮不能な流体29の圧力によって生じる長手方向及び半径方向の応力は、プリフォーム1の領域16にある応力集中部において塑性変形を開始させる。
【0039】
[0044]塑性変形が開始すると、プリフォーム1は、概ね型内側表面23の内側の形状となるまで、型キャビティ30内に向かって膨張し続ける。この膨張は、装置の制御システムにより、適切に配置されたセンサ40によって監視される。必要とされる正確な数のセンサ40は型キャビティ30の形状に応じて異なり、ここでは、図を明確にするために2つのセンサしか示されていない。成形プロセスに対する制御が、プロセスの間の型内の体積増加率を制御することによって得られることに留意されたい。プリフォームに注入される圧縮不能な流体(例えば、水)の体積を(例えば、流量計又は別の適切な手段によって)制御することは、空気のような圧縮可能な流体の場合よりもずっと容易である。体積増加率を制御すると、型内でプリフォームが膨張する間、表面増加率を制御するのが可能になる。体積増加率は、実質的に一定のPET気泡面の増加率が得られるように監視され、それによって、PETプリフォームで可能なように最大結晶化度が得られるようになる。
【0040】
[0045]説明したように、製造プロセスの間に、容器がプリフォーム1によって生じる。プリフォームの延伸可能な部分13の少なくとも一部は、プリフォームが製造される材料のガラス転移温度Tgよりも低い温度であり、好ましくは周囲温度である。
【0041】
[0046]提案されたプロセスによれば、プリフォーム1の延伸可能な部分13の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは90%がプリフォーム1のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度であり、プロセスで必要なエネルギーを低減させることができる。
【0042】
[0047]図6は、本発明による製造プロセスの例を実施する過程で得られた概略的な曲線(a)、(b)、及び(c)を示す。曲線(a)は、成形プロセス中の時間の経過に対する延伸位置を表す。曲線(b)は、プリフォームが延伸されている間にプリフォームに注入される圧縮不能な流体、例えば水の体積の大きさを表す。図面から明らかなように、プリフォームの延伸の進行中に流体の注入が開始される。最後に、点線の曲線(c)は水の体積の設定値の大きさを表す。
【0043】
[0048]膨張が終了すると、型半部21及び22が開かれ、圧縮不能な流体29を空にせずに容器が取り外される。最後に、圧縮不能な流体29(例えば、水又は別の流体)を内部に入れたまま、好ましくはねじ口によって容器を密封する。そして、中に入っている流体を注出することによって容器を使用する準備が整う。好ましい実施形態によって作製された完成後の容器は図5に示されており、図を明確にするためにキャップは省略されている。
【0044】
[0049]もちろん、本発明は、上記で説明し添付の図面に図示した実施形態に限定されない。本発明の保護の範囲から逸脱せずに、特に、様々な要素の構成に関する修正が可能であり、或いは技術的な均等物で置き換えることによって修正が可能である。したがって、本開示の範囲は、限定的なものではなく例示的なものであるよう意図され、本発明の範囲は、少なくとも一部が本開示から得られる特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6