特許第5985508号(P5985508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985508
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】タービンエンジンの始動方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/262 20060101AFI20160823BHJP
   F02C 7/266 20060101ALI20160823BHJP
   F02C 7/268 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F02C7/262
   F02C7/266
   F02C7/268
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-548874(P2013-548874)
(86)(22)【出願日】2012年1月3日
(65)【公表番号】特表2014-502699(P2014-502699A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】FR2012050005
(87)【国際公開番号】WO2012095590
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】1150206
(32)【優先日】2011年1月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501107994
【氏名又は名称】ターボメカ
【氏名又は名称原語表記】TURBOMECA
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルデイエール,ユベール・パスカル
(72)【発明者】
【氏名】エチユパール,フイリツプ
(72)【発明者】
【氏名】ジラルト,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ルベルガ,リユツク
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−264767(JP,A)
【文献】 特開昭59−015639(JP,A)
【文献】 特開2002−357128(JP,A)
【文献】 特開2008−215350(JP,A)
【文献】 特開平10−037762(JP,A)
【文献】 特開昭55−117040(JP,A)
【文献】 実開平01−124338(JP,U)
【文献】 特開2006−083730(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0319357(US,A1)
【文献】 特開2003−328777(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0024431(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0086094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C1/00−9/58
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火装置と少なくとも1つの主噴射装置(30)とを有する燃焼室(22)であって、出口を有する燃焼室(22)と、
燃焼室(22)に圧縮空気を供給するために燃焼室(22)の上流側に配置された圧縮機ホイール(14)に接続されるシャフト(12)と、
前記シャフト(12)に接続される始動装置(44)と
を備えるタービンエンジン(10)の始動方法にして、
シャフトを回転駆動するために始動装置が作動される第1の始動ステップと、
燃焼室に燃料が噴射され、点火装置が作動される第1の点火ステップと
を含む始動方法であって、
シャフトが第1の所定の速度値(NG1)に達した時に主噴射装置(30)が点火されなかった場合に実行される再試行ステップ(S200)であって、
始動装置と点火装置とが停止される停止ステップ(S210)と、
燃料が燃焼室に噴射され、点火装置が作動される第2の点火ステップ(S230)であって、シャフトの回転速度が第2の所定の速度値(NG2)に達した時に実行される第2の点火ステップ(S230)と、
シャフトを回転駆動するために再度始動装置が作動される第2の始動ステップ(S250)と
を含む再試行ステップ(S200)をさらに含むことを特徴とする、始動方法。
【請求項2】
停止ステップ(S210)が、シャフト(12)が第1の所定の速度値(NG1)に達した時に測定された燃焼室の出口の温度(T)が、第1の所定の温度値(T1)未満である場合に実行される、請求項1に記載の始動方法。
【請求項3】
第2の始動ステップ(S250)が、第2の点火ステップから一定の時間が経過した後に実行される、請求項1または請求項2に記載の始動方法。
【請求項4】
第2の始動ステップ(S250)が、第2の点火ステップから一定の時間が経過した後であって、燃焼室(22)の下流側(24)の温度(T)が第2の所定の温度値(T2)に達した時に実行される、請求項2に記載の始動方法。
【請求項5】
第2の始動ステップ(S250)が、第2の点火ステップ(S230)と同時に実行される、請求項1または請求項2に記載の始動方法。
【請求項6】
始動装置(44)と点火装置(32)が、シャフト(12)が第3の所定の速度値(NG3)に達した後に停止される、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の始動方法。
【請求項7】
燃焼室がさらに、始動噴射装置(28)を含み、前記始動噴射装置(28)は、第1の点火ステップ時に燃料を燃焼室に噴射し、前記停止ステップ(S210)時に停止され、第2の点火ステップ時に燃料を燃焼室に噴射する、請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の始動方法。
【請求項8】
燃焼室がさらに、始動噴射装置(28)を含み、前記始動噴射装置(28)は、第1の点火ステップ時に燃料を燃焼室に噴射し、前記停止ステップ(S210)時に停止され、第2の点火ステップ時に燃料を燃焼室に噴射し、始動噴射装置(28)が、シャフトが第3の所定の速度値(NG3)に達した後に停止される、請求項6に記載の始動方法。
【請求項9】
コンピュータ(40)上で実行され、請求項1から8のうちのいずれか1項に記載の始動方法のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体(42)。
【請求項11】
請求項10に記載の記憶媒体を含むタービンエンジンコンピュータ(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジンの分野に関し、特に、航空機のターボシャフトエンジンの分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、
点火装置と少なくとも1つの主噴射装置とを有する燃焼室であって、出口を有する燃焼室と、
燃焼室に圧縮空気を供給するために燃焼室の上流側に配置された圧縮機ホイールに接続されるシャフトと、
前記シャフトに接続される始動装置と
を備えるタービンエンジンの始動方法であって、
シャフトを回転駆動するために始動装置が作動される第1の始動ステップと、
燃焼室に燃料が噴射され、点火装置が作動される第1の点火ステップと
を含む始動方法に関する。このステップの時に、主噴射装置に燃料が供給されるのが好ましい。
【背景技術】
【0003】
通常、第1の始動ステップの終わりに、点火装置(通常は、スパークプラグ)によって点火された後に燃焼室内で安定した燃焼が行われることにより、タービンエンジンを始動させることができる。
【0004】
タービンエンジンが始動すると、すなわち、高圧タービンが燃焼室からの燃焼ガス流により回転駆動されてシャフトが自律回転できるようになると、点火装置と始動装置とはオフになる。
【0005】
しかし、始動を試みた時に、例えば、始動装置によるトルクが高すぎる、または燃料噴射圧力が達成されると同時に、始動装置によってすでに駆動されているシャフトの回転速度が速すぎる場合には、タービンエンジンが機能しない場合がある。これは、例えば、燃料供給回路内に空気が存在するために発生する場合がある、または外部温度が非常に低い時に発生する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より信頼性があり、さらに始動が実行可能な範囲を、例えば、高い高度または非常に低い温度での始動のような厳しいウィンドウまで拡大することができるタービンエンジンの始動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を、本発明の方法が、シャフトが第1の所定の速度値に達した時に燃焼が適切に行われない場合に実行される再試行ステップであって、
始動装置と点火装置が停止される停止ステップと、
燃料が燃焼室に噴射され、点火装置が作動される第2の点火ステップであって、シャフトの回転速度が第2の所定の速度値に達した時に実行される第2の点火ステップと、
シャフトを回転駆動するために始動装置が再度作動される第2の始動ステップと
を含む再試行ステップをさらに含むことにより達成する。
【0008】
したがって、再試行ステップは、タービンエンジンの点火が失敗した場合に実行される。
【0009】
点火ステップおよび始動ステップの時に、燃料は、主噴射装置によって噴射されるか、もしあれば、主噴射装置と同様に始動噴射装置によって噴射される。始動噴射装置は、主噴射装置と別個の装置としてもよいし、主噴射装置に組み込まれてもよい(2回路式主噴射装置)。
【0010】
タービンエンジンの点火不良は、本明細書では、シャフトが第1の所定の速度値に達した時に十分な熱を発生させる燃焼が行われていない状態として定義される。このような状況下では、シャフトの速度は、非常に遅い速度値と、第1の所定速度値と第2の所定の速度値との間にある他の速度値との間の値として定義された「始動」ウィンドウとして周知の速度ウィンドウ外にある。
【0011】
また、第2の点火ステップと第2の始動ステップは、減速ステップの後に実行される。
【0012】
したがって、再試行ステップは、
タービンエンジンの第1の点火が失敗した場合にタービンエンジンを新たに始動させるステップであることがわかる。このステップは、有利には、始動装置が停止された結果、シャフトの回転速度が減速し、再度点火ウィンドウに入るまで十分に減速した時に実行される。
【0013】
さらに、本発明により、シャフトの回転速度が点火ウィンドウ内でより長い時間維持されるので、始動の機会を最大にすることができる。
【0014】
本発明では、シャフトの回転速度は、第2の点火ステップを実行する前に始動装置を停止することによって点火ウィンドウに戻される。すなわち、シャフトは停止ステップ時に減速する。
【0015】
燃料の噴射は、停止ステップ時に停止されるのが好ましいが、これに限定されない。
【0016】
変形形態では、第2の点火ステップと第2の始動ステップは同時に実行されてもよい。
【0017】
好ましくは、限定的ではないが、ヘリコプタ式航空機のターボシャフトエンジンの場合、第1の所定の速度値は、最大エンジン速度の15%〜20%の範囲内にあり、第2の所定の速度値は、最大エンジン速度の10%〜15%の範囲内にある。
【0018】
有利には、停止ステップは、シャフトが第1の所定の速度値に達した時に測定された燃焼室の出口の温度が第1の所定の温度値未満である場合に実行される。
【0019】
燃焼室の出口で測定される温度は、燃焼が正確に行われているか(すなわち、主噴射装置(複数可)が正確に点火されているか否か、および/または始動噴射装置(複数可)が正確に点火されているか否か)を決定するという観点から有利な指標となる。
【0020】
したがって、第1の所定の温度値は、温度が燃焼室の出口で第1の所定の温度値より高い温度が測定された場合に、燃焼室は非常に高い確率で正確に点火されていることを示すように選択される。
【0021】
逆に、第1の所定の温度値未満の温度が測定された場合、非常に高い確率で燃焼室が点火されていないことになる。
【0022】
好ましくは、限定的ではないが、第1の所定温度値は、150℃〜250℃である。
【0023】
変形形態では、第1の所定の温度値は、第1の点火ステップの開始時のタービンエンジンの温度から決定される。例えば、第1の所定の温度値は、第1の始動の試みの開始時のタービンエンジンの温度より高い約100℃に相当する温度にしてもよい。
【0024】
したがって、第1の点火ステップ時に燃焼室の点火不良が生じ、この不良が燃焼室の出口の温度を測定することで検出された場合、始動装置と点火装置は、シャフトの速度が第2の所定の速度値未満になるまで停止され、その後、第2の点火ステップが実行される。
【0025】
有利には、第2の始動ステップは、第2の点火ステップから一定の時間が経過した後に実行される。
【0026】
利点としては、シャフトの回転速度を再度上昇させる前に主噴射装置(または、もしあれば始動噴射装置)が正確に点火されるのを確認することで、燃焼室が点火されずに点火ウィンドウを再び出るリスクを抑えることができるということである。
【0027】
好ましくは、第2の始動ステップは、燃焼室の出口の温度が第2の所定の温度値に達した時に実行される。
【0028】
この検査により、主噴射装置および/または始動噴射装置が正確に点火されたか確認することができる。
【0029】
この第2の所定の温度値は、第1の所定の温度値未満である。第2の所定の温度値は、好ましくは、50℃〜150℃である。
【0030】
変形形態では、第2の所定の温度値は、第2の点火ステップの開始時のタービンエンジンの温度から決定される。例えば、第2の所定の温度値は、第2の点火ステップの開始時のタービンエンジンの温度より高い約25℃に相当する温度にしてもよい。
【0031】
有利には、第2の始動ステップは、第2の点火ステップと同時に実行される。
【0032】
第2の始動ステップ後、シャフトの速度は再度上昇し、本発明では、シャフトが第1の所定の速度値に再度達した時に燃焼室内で燃焼がまだ正確に行われていない場合、上述の再試行ステップが繰り返される。
【0033】
有利には、始動装置と点火装置は、シャフトが第3の所定の速度値に達した後に停止される。
【0034】
第2の所定の速度値より高い第3の所定の速度値は、シャフトの速度が第3の所定の速度値に達した時に、確実にタービンエンジンが自律的に動作するように選択される。
【0035】
この時点で、燃料は、主噴射装置のみによって噴霧される。
【0036】
好ましくは、第3の所定の回転速度値は、最大エンジン速度の30%〜65%である。
【0037】
変形形態では、再試行ステップは、連続して点火不良が発生した場合に複数回繰り返されてもよい。しかし、この再試行の回数を制限するのが有利であり、適切な制御手段によって自動的に行われるのが好ましい。非限定的な例として、ヘリコプタエンジンの場合、始動を試みるのは2回のみ(第1の始動ステップと再試行ステップ)とするのが好ましいが、これに限らない。
【0038】
好適な実施形態では、燃焼室はさらに始動噴射装置を含み、始動噴射装置は、主噴射装置(複数可)とは別個のものであるのが好ましい。第1の点火ステップ時に、始動噴射装置は、燃料を燃焼室に噴射する。
【0039】
したがって、この実施形態では、このようなタービンエンジン(例えば、ヘリコプタターボシャフトエンジンとしてよいが、これに限らない)は、始動噴射装置と呼ばれる1つまたは複数の専用噴射装置を利用して始動されることがわかる。タービンエンジンを始動させるために、これらの噴射装置からの火炎が主噴射装置(複数可)で構成される主噴射システムに連続して伝播される。
【0040】
この実施形態では、始動噴射装置は、停止ステップおよび再試行ステップの時に停止されるのが好ましいが、これに限らない。
【0041】
さらに、この実施形態では、始動噴射装置は、第2の点火ステップ時に燃焼室に燃料を噴射する。
【0042】
本発明はさらに、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行される時に本発明の始動方法のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラムに関する。本発明はさらに、上述のコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0043】
最後に、本発明は、本発明の記憶媒体を含むタービンエンジンコンピュータを提供する。
【0044】
以下の非限定的な例として挙げられた実施形態の説明を読めば、本発明はより十分に理解され、本発明の利点はより明らかになるであろう。添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】燃焼室の出口の温度変化と、シャフトの回転速度の変化、および燃料噴射圧の変化を本発明の始動方法を実行する時間の関数として示したグラフである。
図2】本発明の始動方法を示したフローチャートである。
図3】本発明の始動方法を実行するためのコンピュータを含むヘリコプタターボシャフトエンジンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ヘリコプタターボシャフトエンジン10の一例が図3に示されている。通常は、ターボシャフトエンジン10は、シャフト12が取り付けられ、それに続いて、圧縮段16の圧縮機ホイール14と高圧タービンホイール18とを有する。ターボシャフトエンジン10はさらに、圧縮段に通じる外気口20を有する。圧縮段16によって圧縮された空気は、燃焼室22に取り込まれて燃料と混合される。こうして得られた混合物は燃焼され、燃焼ガスが燃焼室22から燃焼室の出口24を通って排出される。図3に示されるように、燃焼ガス流は、高圧タービンホイール18を回転駆動し、さらに高圧タービンホイール18から下流側に配置されたフリータービン26を回転駆動する。
【0047】
したがって、周知の形では、通常の動作で、シャフトは燃焼室によって発生した燃焼ガス流によって回転駆動される。
【0048】
本明細書では、特に、燃焼室22に焦点を合わせて説明する。
【0049】
図3に示されるように、燃焼室は、1つまたは複数の始動噴射装置28(図では1つのみ)と、複数の主噴射装置30(図では1つのみ)とを有する。
【0050】
当然、本発明の始動方法は、始動噴射装置の無い燃焼室または主噴射装置が始動噴射装置としての機能も果たす燃焼室を有するタービンエンジンで使用されてもよい。したがって、以下で説明する実施形態は限定的ではない。
【0051】
主噴射装置の機能は、燃料を圧縮空気と混合するために燃料を燃焼室22内に噴霧することである。
【0052】
さらに、始動噴射装置28に結合された点火装置32により始動噴射装置28が点火される。点火装置32は、始動噴射装置28によって噴霧された燃料を着火させる役目を果たす。例えば、点火装置は、スパークを発するスパークプラグとしてもよい。始動噴射装置28の正確な点火により火炎が発生し、火炎は燃焼室に伝播して、主噴射装置30によって噴霧された燃料を着火させる。
【0053】
本発明によれば、ターボシャフトエンジン10は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、もしくはハードディスクタイプの記憶媒体42、または任意の他のタイプのメモリの記憶媒体42を有するコンピュータ40を含む。記憶媒体42は、以下で説明する始動方法のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラムを記憶する。コンピュータはさらに、計算を実行するためのマイクロプロセッサを有する。したがって、コンピュータプログラムはコンピュータ40によって実行される。
【0054】
図3を参照して分かるように、始動噴射装置28、主噴射装置30、および点火装置32は、コンピュータ40によって制御される。
【0055】
シャフト12はさらに、周知の種類の伝動装置46を介して始動装置44に接続される。始動装置44は、通常、シャフトを回転駆動すると同時にターボシャフトエンジンを始動させる働きをする。
【0056】
始動装置44も同様に、コンピュータ40によって制御される。
【0057】
最後に、コンピュータ40に接続される温度プローブ48は、燃焼室22から排出される燃焼ガスの温度Tを測定するように燃焼室22の下流側に配置され、好ましくは、高圧タービン18とフリータービン26との間に配置される。
【0058】
図1および図2を参照しながら、ヘリコプタターボシャフトエンジン10の本発明の始動方法の実施形態について説明する。当然、この始動方法は、他のタイプのタービンエンジンとの使用にも十分に適している。
【0059】
図1に示されるグラフは、複数の曲線、すなわち、燃焼室の下流側の燃焼ガスの温度Tを表す曲線、シャフト12の回転速度NGを表す曲線、および始動噴射装置28によって噴霧された時の燃料圧力Dpを表す曲線を重ね合わせたグラフである。
【0060】
時間tは、横軸に表示されている。
【0061】
より詳細には、図1は、第1の始動の試みE1が失敗した後に実行される再試行ステップE2を含むのが有利である本発明の始動方法を示している。
【0062】
第1の始動の試みの時に、第1の始動ステップS100が実行され、始動装置44がシャフト12を回転駆動するために作動される。このステップは、時間t1の直後に開始される。
【0063】
時間t1の時点で、第1の点火ステップS110が実行され、始動噴射装置(複数可)が燃料を燃焼室22に噴射し、点火装置自体は始動噴射装置によって噴霧された燃料を着火させるために作動される。言い換えれば、時間t1の後に、始動噴射装置を点火してその後に主噴射装置を点火するのが望ましい。
【0064】
時間t1と時間t2との間では、始動装置44によって駆動されるシャフト12の速度は上昇し、その間に始動噴射装置は燃料を噴霧しているが、燃焼室を点火するのに十分に安定した火炎を発生させることができない。その結果、温度Tはほとんど上昇しない。
【0065】
本発明によれば、温度Tは、時間t2の時点で測定される。時間t2は、シャフト12の回転速度が第1の所定の速度値NG1、具体的には、最大エンジン速度NGmax(この速度は、ほぼ数千回転/分(rpm))の20%を超えた時点に相当する。
【0066】
この段階で、検査T120が実行され、測定された温度が第1の所定の温度値T1以上、具体的には250℃以上になれば、検査は合格となる。これは、燃焼が正確に開始されたということ、およびタービンエンジンが正確に始動していることを意味する。
【0067】
さもなければ、図示されるように、測定された温度TがT1未満であれば、検査は不合格となる。これは、主噴射装置30が点火されなかったということ、つまり、燃焼が正確に行われなかったということ、ひいてはタービンエンジンが始動しなかったということを意味する。
【0068】
この状況で、本発明によれば、再試行ステップS200が実行され、再度ターボシャフトエンジン10の始動が試みられる。
【0069】
再試行ステップS200は、連続する以下のステップを含む。
【0070】
まず、停止ステップS210の時に、始動装置44が停止され、同様に始動噴射装置28さらに点火装置32が停止される。その後、シャフト12が始動装置によって駆動されなくなるとシャフト12の速度NGは低下する。
【0071】
その後、検査T220で、シャフト12の速度NGが第2の所定の速度値NG2、具体的には、上述の最大エンジン速度の10%に達したか否かが判断される。検査T220が不合格である場合、検査は繰り返される。通常、検査T220が合格であれば、シャフト12の速度が点火範囲に戻ったことを意味する。その後、本発明では、始動噴射装置を点火するために第2の点火ステップS230が実行される。このステップでは、始動噴射装置28が燃料を燃焼室22に噴射し、その後、点火装置32が作動される。図1のグラフでは、第2の点火ステップS230は、時間t3の時点で開始される。
【0072】
その後、第2の始動ステップS250が実行され、再度始動装置がシャフト12を回転駆動するために作動される。検査T240の時に、燃焼室の出口で測定された温度Tが第2の所定の温度値T2、具体的には50℃に達したことが検出された場合、この第2の始動ステップが実行される。図示されている例では、第2の始動ステップS250は、時間t4の時点で実行される。この時点から、再びシャフト12の回転速度NGは上昇する。
【0073】
その後、再度、検査T120が実行される。すなわち、シャフト12が再度速度値NG1に達した時点で燃焼室22の出口で温度が測定される。グラフから、この時点で、温度Tが第1の所定の温度値T1より高いことがわかる。これは、主噴射装置30が点火され、ひいてはターボシャフトエンジン10が正確に始動した確率が高いことを示している。
【0074】
時間t5の時点で、シャフトが第3の所定の速度値NG3、具体的には最大エンジン速度の50%に達すると、ターボシャフトエンジンはもう自律的に動作しているので、始動装置が停止され、同様に始動噴射装置および点火装置が停止される。
図1
図2
図3