特許第5985518号(P5985518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5985518エレクトロスプレーエミッターアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985518
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】エレクトロスプレーエミッターアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/10 20060101AFI20160823BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20160823BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01J49/10
   G01N27/62 X
   H01J49/04
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-557786(P2013-557786)
(86)(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公表番号】特表2014-509059(P2014-509059A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】US2012027722
(87)【国際公開番号】WO2012122100
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年3月4日
(31)【優先権主張番号】61/451,260
(32)【優先日】2011年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131764
【氏名又は名称】ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トマニー,マイケル・ジエイ
(72)【発明者】
【氏名】レインビル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】マーフイー,ジエイムズ・ピー
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/102194(WO,A1)
【文献】 特開2005−135781(JP,A)
【文献】 特表2012−519857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/04
H01J 49/10
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロスプレーエミッターアセンブリであって、
エミッターニードルと、
シースと、
質量分析計に取り付けるように構成されたハウジングを備え、
アセンブリが質量分析計に取り付けられていないときに、シースがエレクトロスプレーエミッターニードルをシールドするよう配置され
シースが、使用中、エレクトロスプレーエミッターニードルが現れるように作動可能であり、
シースが、エミッターニードルがシールドされている配置された位置とエミッターニードルが使用のために現れるようにされている後退した位置との間でハウジングに対して移動可能であり、
シースが、複数のさまざまな位置間でハウジングに対して可動的に調整可能であり
ハウジングに対するシースの移動がサーボ機構を使用して実行される、アセンブリ。
【請求項2】
アセンブリが、シースが質量分析計へのアセンブリの取り付け時に、エレクトロスプレーエミッターニードルが現れるように構成される、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記アセンブリが単一の一体型構造である、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項4】
ハウジングが質量分析計へ取り付けるためのフランジを備えている、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
液体クロマトグラフィーを質量分析計に接続するためのインターフェースデバイスであって、インターフェースデバイスは、チューブにより液体クロマトグラフィーのコネクタと流体接続されている、請求項に記載のエレクトロスプレーエミッターアセンブリを備える、インターフェースデバイス。
【請求項6】
アセンブリのハウジングを質量分析計に接続するステップおよびアセンブリのエレクトロスプレーエミッターニードルが現れるために、アセンブリのシースを除去または後退するステップを備える、エレクトロスプレーエミッターアセンブリを質量分析計に接続する方法の前記除去または後退するステップを実行するために作動可能なまたはプログラムされた制御システム。
【請求項7】
請求項に記載のインターフェースデバイスにより質量分析計に接続された液体クロマトグラフィーを備える分析機器。
【請求項8】
機器が、質量分析計へのアセンブリの取り付け時に、エレクトロスプレーエミッターニードルが現れるため、シースを作動するアセンブリと協働する、請求項に記載の分析機器。
【請求項9】
アセンブリのハウジングを質量分析計に接続するステップおよびアセンブリのエレクトロスプレーエミッターニードルが現れるために、アセンブリのシースを除去または後退するステップ備える、エレクトロスプレーエミッターアセンブリを質量分析計に接続する方法の前記除去または後退するステップを実装する手順をプロセッサーが実行するためのコンピュータ読み取り可能プログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム要素。
【請求項10】
プログラムがそこに保存されたコンピュータ読み取り可能媒体であって、プログラムがコンピュータに請求項に記載の方法の除去または後退するステップを実装する手順を実行させるものである、コンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年3月10日に出願された米国仮特許出願第61/451,260号に対して優先権を主張するものである。米国仮特許出願第61/451,260号の内容全体は、参照によって本明細書に引用したものとする。
【0002】
本開示は、エレクトロスプレーエミッターアセンブリに関し、しかしより詳細には、限定されるものではないが小型のエレクトロスプレーエミッターアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
質量分析計は、複雑なサンプルを解析するために使用されることができる。解析する前に、複雑なサンプルを分離することがよく必要となる。このことは通常、液体クロマトグラフィーシステムを使用して行われる。
【0004】
最近、液体クロマトグラフィーシステムはますます小型のシステムになってきている。このため、液体クロマトグラフィーシステムと質量分析計のイオンソースとの間の接続もますます小型の装置になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体クロマトグラフィーデバイス間の通常の接続には、ユーザーが手作業でハウジングに挿入するエレクトロスプレーエミッターチップとしてキャピラリーが含まれ、そのハウジングは次に、質量分析計に取り付けることができる。しかしながら、これらのキャピラリーは精巧で、キャピラリーのサイズが小型なので、装着するのが非常に難しく、時間がかかる場合がある。キャピラリーの配置でのどの誤りでも、例えば、接続の隙間に保持されるサンプルの小型のポケットからのメモリー効果のために、分析結果が貧弱なものになる場合がある。
【0006】
これらのキャピラリーは塩分で詰まる、あるいは実行されるサンプルのタイプのために、メモリー効果を引き起こす、汚染物質が壁に残ったままになる場合もある。キャピラリーが交換されていると、これは機器のダウンタイムにつながり、そのような高度で高額の機器を使用する場合には、とりわけコストがかさむことになる。
【0007】
さらに、これらのキャピラリーは非常に脆弱な場合があるので、キャピラリーとのいかなる軽い接触も欠陥の原因になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、エレクトロスプレーエミッターアセンブリが提供され、例えば、質量分析計への取り付けのためであり、そのアセンブリは、質量分析計への取り付けのために構成されたエミッターニードル、シース、およびハウジングを備え、そのシースは、例えば、非使用時および/または質量分析計に取り付けられていないときに、エレクトロスプレーエミッターニードルをシールドするように配置されている。
【0009】
したがって、アセンブリは、使用前および/または使用中および/または使用後に、ニードルが保護されるように提供される。
【0010】
場合によっては、シースは、使用中、エレクトロスプレーエミッターニードルが現れるように作動可能で、例えば、アセンブリは、シースを作動して、質量分析計への取り付け時ならびに/あるいは質量分析計の中へのアセンブリの挿入時にニードルが現れるように構成されることができる。実施形態によっては、シースは配置された位置、例えば、その中にエミッターニードルがシールドされている位置と、後退した位置、例えば、その中でエミッターニードルが使用のために現れるようにされている位置間でハウジングに対して移動可能である。
【0011】
追加的またはもう1つの方法として、シースは、複数のさまざまな位置間でハウジングに対して可動的に調整可能とすること、および/またはハウジングに対するシースの移動がサーボ機構を使用して実行されることができる。
【0012】
別の態様では、エレクトロスプレーエミッターニードルおよびハウジングを有する質量分析計への取り付けに適したエレクトロスプレーエミッターアセンブリが提供されており、ハウジングは質量分析計へ完全にクリップで留めるように配置されている。
【0013】
機器は、アセンブリと協働してシースを作動させ、質量分析計への取り付け時ならびに/あるいは質量分析計の中へのアセンブリの挿入時にエレクトロスプレーエミッターニードルが現れる。
【0014】
別の態様によると、エレクトロスプレーエミッターニードルおよびハウジングを備える質量分析計のソースへの取り付けに適したエレクトロスプレーエミッターアセンブリが提供され、前記ハウジングはエミッターアセンブリの質量分析計への取り付けのために構成され、ハウジングはさらに、例えば、ニードルが使用されていないとき、および/またはアセンブリが質量分析計のソースに取り付けられていないときに、エレクトロスプレーエミッターニードルをシールドするよう配置されたシースを備えている。
【0015】
アセンブリは、単一の一体型構造とすることも、および/または質量分析計の「クリップ」アタッチメントに取り付けるように設計および配置されることもできる。ハウジングは、質量分析計に対して一体的にクリップで留めるように配置されることができる。
【0016】
一部の実装形態では、ハウジングまたはシースは、例えば、シースの取り付け時および/または後退時および/またはニードルの配置時に、質量分析計のソース領域へのガスフローを可能にするように配置される。場合によって、ハウジングまたはシースは、ガスフローが最適化されるようにするため、調整可能なように配置される。ガスフローの最適化は、サーボループ機構によって行われることができる。
【0017】
エレクトロスプレーエミッターアセンブリには、エミッターニードルを、エレクトロスプレーエミッターアセンブリの上流で液体クロマトグラフィーシステムに取り付けるためのエミッターニードル取り付け手段を含めることができる。
【0018】
さらに他の態様では、液体クロマトグラフィーシステムを質量分析計のエレクトロスプレーのソースに接続するために適したコネクタアセンブリが提供され、液体クロマトグラフィーシステムは出口を有し、質量分析計は入口を有し、前記コネクタアセンブリは液体クロマトグラフィーシステムの出口に取り付ける入力接続部、および質量分析計に接続するために出力接続部を有しており、コネクタは一体的に形成される。
【0019】
出力接続部はエレクトロスプレーエミッターおよび/またはハウジングを備えることができ、例えば、ハウジングはシースを備えることができる。一部の実装形態では、出力接続部は態様に従ってエレクトロスプレーエミッターアセンブリを備えている。
【0020】
さらに別の態様では、インジェクションニードルおよびハウジングを備える質量分析計のソースへの取り付けに適した質量分析計サプライアセンブリが提供され、ハウジングはサプライアセンブリの質量分析計への取り付けのために構成され、ハウジングはさらに、例えば、ニードルが使用されていないとき、および/またはアセンブリが質量分析計のソースに取り付けられていないときに、インジェクションニードルをシールドするよう配置されたシースを備えている。
【0021】
別の態様では、例えば、液体クロマトグラフィーを質量分析計に接続するためのインターフェースデバイスが提供され、インターフェースデバイスは上述のようなエレクトロスプレーエミッターアセンブリを備えることができ、それは、例えば、チューブにより液体クロマトグラフィーのコネクタと流体接続されることができる。
【0022】
なおさらに別の態様では、エレクトロスプレーエミッターアセンブリを、質量分析計に、例えば上述のとおり接続する方法が提供されている。本方法は、アセンブリのハウジングを質量分析計に接続する、ならびに/あるいはアセンブリのシースを、例えば、アセンブリのエレクトロスプレーエミッターニードルが現れるために、アセンブリのシースを除去するまたは後退する各ステップを備えることができる。
【0023】
さらなる態様では、除去または後退ステップを実行するために作動可能なまたはプログラムされた制御システム、上述のインターフェースデバイスによって質量分析計に接続された液体クロマトグラフィーを備え、および/または制御システムを備える分析機器、プロセッサーが除去または後退ステップを実装するための手順を実行するためのコンピュータ読み取り可能プログラムコードを備えるコンピュータプログラム要素、そのようなコンピュータプログラム要素を具現化するコンピュータ読み取り可能媒体および/またはプログラムが保存されているコンピュータ読み取り可能媒体で、そのプログラムは、コンピュータに除去または後退ステップを実装するための手順を実行させるものを提供している。
【0024】
実装形態は、1つ以上の次の利点を提供することができる。
【0025】
一部の実装形態では、アセンブリおよび/または装置はキャピラリーが保護されて提供される。
【0026】
特定の実装形態の場合、コネクタアセンブリのより容易な交換を可能にする、および/またはさらに耐久性のあるアセンブリを提供する装置が提供されている。
【0027】
他の態様、特徴、および利点は、説明、図面、および請求項に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態によるエレクトロスプレーエミッターアセンブリを含むLC−MSインターフェースデバイスの機構図である。
図2】質量分析計に接続された図1のエレクトロスプレーエミッターアセンブリの機構図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
同じ参照番号は同じ要素を示している。
【0030】
図を参照すると、質量分析計10のエレクトロスプレーイオンのソースの入口に、液体クロマトグラフィー(LC−図示せず)の出力を接続する分析機器で使用するためのインターフェースデバイス1が示されている。インターフェースデバイス1は、LCコネクタ2、接続チューブ3、およびエレクトロスプレーエミッターアセンブリ4を含んでいる。
【0031】
LCコネクタ2は、そこを通る軸方向穴を備える円筒体20およびその終端のいずれかで外側に延びているディスク形状のフランジ21を含んでいる。接続チューブ3の最初の終端は円筒体20の穴内部で受けられ、LCコネクタ2のもう一方の終端から延びている。
【0032】
エレクトロスプレーエミッターアセンブリ4は、接続チューブ3、ハウジング5、およびシース6に流体接続されたエミッターニードル40を含んでいる。ハウジング5は、円筒部分50の下側の両方のチャンバー51、ノズル52、およびガス入口53を画定する中空の円筒部分50、円筒部分50の上側の検体入口54、ならびに円筒部分50の下側の周辺から延びる取り付けフランジ55を含んでいる。
【0033】
ノズル52は円筒部分50の下側中央から軸方向に延びており、そこで受けられるOリングシール58を備える溝57を有する拡張ヘッド部分56を備えるチューブ状のものである。ガス入口53は、ノズル52からずれた、円筒部分50の下側壁を貫通する開口部である。検体入口54は接続チューブ3の第2の終端を受け、接続チューブ3が延びている中空のエラストマープラグの形でシール59によりそこで封止されている。
【0034】
シース6は、終端の一方で内側に延びたフランジ61を備える中空の円筒体部分60、およびもう一方の終端から延びる、直径が小さいネブライザー部分62を含み、それによって、円周ステップ63が作成される。ネブライザー部分62はさらに、使用中にエミッターニードル40が延びる開口部を画定する自由端で、内側に延びるフランジ64を含んでいる。シース6は、ノズル52に対してシース6の往復移動を可能にするために、ノズル52のヘッド部分56を摺動的に受け、エミッターニードル40を程度の差はあるが漸進的に現れるようにする。チャンバー51はノズル52を介してシース6と流体連通にあり、一方Oリングシール58は、シース6がノズル52に沿って往復する際に、流体的なシールを維持する。
【0035】
図1は、運搬状態のエレクトロスプレーエミッターアセンブリ4を示しており、ここで、シース6はエミッターニードル40が事故による破損からエミッターニードル40を保護するため完全にカバーされるような完全に配置された位置の状態である。シース6は、安全および/または付勢手段(図示せず)により、完全に配置された状態で安全および/または完全に配置された状態の方向へ付勢されることが好適である。
【0036】
使用中で図2を参照すると、最初に、エレクトロスプレーエミッターアセンブリ4は、シース6およびノズル52を質量分析計10の入口11に挿入し、そして取り付けフランジ55の部分を締め付ける、急速解放クランプ機構12により、ともに固定することにより、質量分析計10に取り付けられる。エレクトロスプレーエミッターアセンブリ4にはさらに、質量分析計10のガス入口53とガス出口13間の適切な配置を確保するための配置手段(図示せず)も組み込まれている。こうして、ガスはハウジング5およびシース6を通して、質量分析計10のソース領域に流入することができる。
【0037】
入口11へシース6を挿入する際、質量分析計10の調整要素14は、シース6を係合し、ステップ63と接する。調整要素14はサーボループ機構(図示せず)により作動し、使用のためにシース6を後退し、エミッターニードル40が現れるようになるようにする。質量分析計10またはエレクトロスプレーエミッターアセンブリ4が、例えば、クランプ機構12による締め付けで起動される機構により、自動的にシース6を後退するように構成されることができることは、当業者により認識されるであろう。
【0038】
質量分析計10制御システムは、シース6を調整することによりソースへのガスの流れを最適化するよう構成されることが好適である。
【0039】
こうして、インターフェースデバイス1は、エレクトロスプレーエミッターニードル40が、使用前および/または使用中および/または使用後に保護されるような単純でありながら効果的な手段を提供する。この装置は、インターフェースデバイス1またはエレクトロスプレーエミッターアセンブリ4が分析機器と分離した組み立て済みユニットとして提供されている場合に、とりわけ有用である。例えば、この装置は、使い捨てのインターフェースデバイス1の提供を容易にする。
【0040】
当業者ならば、本発明の範囲を逸脱することなく、いくつかの変更形態が想定されることを認識されるであろう。例えば、シース6は伸縮自在ではなく着脱可能とすることができる。クランプ機構12は、例えば、クリップ装置などの、適切な任意の装置に置き換えられることができる。
【0041】
前述の特徴および/または添付図面の示されたものの任意の数の組み合わせは、従来技術よりも明らかに利点を提供しており、したがって、本明細書で記述されている本発明の範囲内であることも当業者によって認識されるであろう。
【0042】
したがって、他の実装形態も次の特許請求の範囲内である。
図1
図2