(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書中で記載されるように、1つ以上の眼内インプラントの使用を介した治療薬の制御投与および持続投与は、望ましくない眼症状の治療を改良し得る。インプラントは、医薬的に許容されるポリマー組成物を含み、1つ以上の医薬的に許容される活性薬剤(例えば、チロシンキナーゼインヒビター(TKI))を、長期間、放出するように処方される。インプラントは、1つ以上の望ましくない眼症状の1つ以上の症状を治療し、予防し、および/または軽減するために、眼の領域に直接、治療有効量の薬剤を供給するのに効果的である。このように、1回の投与で、治療薬は、患者に繰り返し注射されるよりも、または、自己投与点眼剤の場合には、活性薬剤に対する限定された突然の暴露による効果的ではない処置よりも、必要な部位で利用可能になり、長期間持続される。
【0045】
本明細書中の開示に従う眼内インプラントは、治療成分と、治療成分に付随する薬剤放出持続成分とを含む。本発明に従えば、治療成分は、TKIを含み、TKIから本質的になり、またはTKIのみからなる。薬剤放出持続成分は、インプラントが配置された眼に有効量の治療成分を持続的に放出するために治療成分に付随する。インプラントが眼に配置された時点から約1週間を超える期間、ある量の治療成分が眼に放出され、1つ以上の眼症状の少なくとも1つの症状、例えば、網膜色素上皮またはグリア細胞の移動または増殖が病気の原因であるかまたは病気の原因の一因となる病気を治療するかまたは軽減するのに効果的である。本発明のインプラントで治療されてもよい眼症状のいくつかの例としては、限定されないが、非滲出性老化関連黄斑部変性、滲出性老化関連黄斑部変性、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経網膜症、類嚢胞黄斑部浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、ベーチェット症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉鎖、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー処置によって引き起こされた症状、光感作療法によって引き起こされた症状、光凝固、放射網膜症、網膜上膜、増殖性糖尿病網膜症、網膜枝静脈閉塞、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病網膜機能不全、網膜色素変性、眼腫瘍、眼新生物などが挙げられる。
【0046】
眼内インプラントは、種々の期間にわたって薬剤負荷量を放出することができるように開発される。この種のインプラントは、眼(例えば眼の硝子体)に挿入された場合、長期間(例えば、約1週間以上)、治療レベルのTKIを提供する。開示されたインプラントは、例えば、非滲出性老化関連黄斑部変性、滲出性老化関連黄斑部変性、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経網膜症、類嚢胞黄斑部浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、ベーチェット症、糖尿病性網膜症、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉鎖、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー処置によって引き起こされた症状、光感作療法によって引き起こされた症状、光凝固、放射網膜症、網膜上膜、増殖性糖尿病網膜症、網膜枝静脈閉塞、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病網膜機能不全、網膜色素変性、眼腫瘍、眼新生物などの眼症状を治療するのに効果的である。
【0047】
本発明の一態様では、眼内インプラントは生分解性ポリマーマトリックスを含む。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の一種である。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内インプラントを形成するのに効果的である。生分解性眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスに付随するTKIを含む。マトリックスは、インプラントが眼の領域または眼の部位(例えば眼球)に配置された時点から約1週間よりも長い期間、インプラントからのある量のTKIの放出を持続するのに効果的な速度で分解する。
【0048】
本発明に従って調製されるミクロインプラントは、より大きなインプラントを移植する場合のような通常は修復のために縫合または他の外科手段を必要とする切開または穿刺の傷を眼に作ることを要せずに、眼に配置することができるような寸法および形状で、十分に小さいか、または小型化することができる。本発明のミクロインプラントを用いて、以下にさらに記載される挿入技術に従って、ミクロインプラントを挿入した後に眼は「自己封止」することができ、それにより、縫合または外科手術の必要がなくなり、それに伴う痛みおよび外傷が排除され、さらに、外科的処置におけるこのような手段を実施するコスト、時間および他の不都合が回避できる。本明細書において使用する場合、ミクロインプラントを眼に送達する「自己封止」法は、1つ以上のミクロインプラントをカニューレによってカニューレ穿刺部位での縫合または他の封止手段の必要なく、患者の眼の所望の位置に導入する方法を指す。このような「自己封止」方法は、カニューレを引き抜く際に穿刺部位をすぐに完全に封止することを必要としないが、外科医または他の技術者が、自身の良好な臨床的判断において縫合をせざるを得ないか、または穿刺部位に封止手段のような他の手段を提供しないでよいように、初期の漏れは最小であり、短い期間で消える。
【0049】
本発明に従って製造されるミクロインプラントは、非常に均一な特性を有し、活性成分を正確に送達する能力を保持し、それによって活性成分を、所定の期間、非常に制御された速度で、眼に放出する。本発明のインプラントから放出された活性成分は、眼の特定の領域を選択的に標的にしてもよい。例えば、患者の眼の後眼部に配置されたインプラントについて、活性成分は、インプラントが配置された眼の網膜または網膜の一部分に治療的な利益を与えるように、インプラントから放出されてもよい。
【0050】
本発明のインプラントは、活性成分の粒子と生体分解性(侵食性)ポリマーの粒子とを組み合わせることによって製造することができる。特定の方法によれば、ミクロインプラントは、活性成分から作成された粒子と生体分解性ポリマーの粒子とを寸法に従って選別し、これらの粒子を活性成分および生体分解性ポリマーの均一混合物になるようにブレンドし、この混合物をフィラメントに押出し(シングルまたはデュアル押出法を用いて)、これらのフィラメントをミクロインプラントに正確に切断し、ミクロインプラントの所望の性質を検査する工程を含む製造方法により製造することができる。この製造方法は、所望の均一な性質(例えば、重量、寸法(例えば、長さ、直径、面積、体積)、活性成分の領域分布、放出速度など)を有するミクロインプラントのバッチまたは集合として製造するために使用することができる。例えば、これらのバッチは、特定の承認基準(例えば、特定の重量基準、例えばミクロインプラントあたり望ましい標的重量の特定の重量割合内にある、または例えば、各バッチのミクロインプラントについて特定の許容可能な重量標準偏差)に従うことができる。さらに、特定の薬剤/ポリマー比は、バッチの個々のインプラントまたはインプラントの集合が、同じ量の活性成分を含むように得ることができる。このように、インプラントのバッチ、例えば、パッケージ中のインプラントのバッチには、このバッチの各個々のインプラントについて特定の活性成分のラベル強度または用量が提供されてもよい。
【0051】
一般に、本発明に従って製造されるインプラントおよびミクロインプラントは、活性成分と生体分解性ポリマーとの混合物を用いて処方することができ、これらは一緒に眼の中での活性成分の放出速度を制御することができる。特定の処方は、例えば、好ましい薬剤放出プロフィール、使用される特定の活性成分、移植部位、治療される症状、および患者の病歴に従って変化し得る。本発明のインプラントは、生体分解性ポリマーマトリックス内の活性成分の粒子を用いて処方される。活性成分の放出は、ポリマーの侵食の後、囲まれていたまたは分散していた活性成分粒子が眼に触れ、その後薬剤が溶解し放出されることによって達成される。放出速度を決定するパラメータとしては、限定されないが、薬剤粒子の寸法、薬剤の水溶性、薬剤対ポリマーの比、製造方法、インプラントの形状、露出する表面積、およびポリマーの侵食(分解)速度などが挙げられる。
【0052】
インプラントのTKIは、典型的には、チロシンキナーゼの活性を阻害または低減する薬剤である。TKIは、チロシンキナーゼ分子に直接作用することによってチロシンキナーゼ活性を阻害してもよく、または1つ以上の他の因子または薬剤とともに所望の阻害を達成してもよい。本発明のインプラントに有用なTKIの例は、米国特許出願第10/256,879号(米国特許出願公開第20030199478号)および同第10/259,703号(米国特許公開20030225152号)に記載されている。
【0053】
要するに、本発明のインプラントのTKIは、チロシンキナーゼシグナル形質導入を調節し、制御しおよび/または阻害することが可能な有機分子を包含する。本発明のインプラントにおいて有用ないくつかの化合物は、以下の式またはそれらの医薬的に許容される塩によって代表される:
【化1】
【0054】
[式中、R
1は、ハロゲン、NO
2、CN、C
1〜C
4アルキルおよびアリール、例えばフェニルからなる群から選択され;R
2は、水素、C
1〜C
8アルキル、COCH
3、CH
2CH
2OH、CH
2CH
2CH
2OHおよびフェニルからなる群から選択され;Rは、D、ハロゲン、C
1〜C
8アルキル、CF
3、OCF
3、OCF
2H、CH
2CN、CN、SR
2、(CR
7R
8)
CC(O)OR
2、C(O)N(R
2)
2、(CR
7R
8)COR
2、HNC(O)R
2、HN−C(O)OR
2、(CR
7R
8)CN(R
2)
2、SO
2(CR
7R
8)N(R
2)
2、OP(O)(OR
2)
2、OC(O)OR
2、OCH
2O、HN−CH=CH、−N(COR
2)CH
2CH
2、HC=N−NH、N=CH−S、O(CR
7R
8)
d−R
6および(CR
7R
8)
C−R
6、−NR
2(CR
7R
8)
dR
6(ここで、R
6は、ハロゲン、3−フルオロピロリジニル、3−フルオロピペリジニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、3−ピロリニル、ピロリジニル、メチルイソニペコテート、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルアミル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、モルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、ピペラジニル−2−オン、ピペラジニル、N−(2−メトキシエチル)エチルアミニル、チオモルホリニル、ヘプタメチレンイミニル、1−ピペラジニルカルボキサアルデヒド、2,3,6,7−テトラヒドロ−(1H)−1,4−ジアゼピニル−5(4H)−オン、N−メチルホモピペラジニル、(3−ジメチルアミノ)ピロリジニル、N−(2−メトキシエチル)−N−プロピルアミニル、イソインドリニル、ニペコタミジニル、イソニペコタミジニル、1−アセチルピペラジニル、3−アセトアミドピロリジニル、trans−デカヒドロイソキノリニル、cis−デカヒドロイソキノリニル、N−アセチルホモピペラジニル、3−(ジエチルアミノ)ピロリジニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニニル、1−(2−メトキシエチル)−ピペラジニル、2−ピロリジン−3−イルピリジニル、4−ピロリジン−3−イルピリジニル、3−(メチルスルホニル)ピロリジニル、3−ピコリルメチルアミニル、2−(2−メチルアミノエチル)ピリジニル、1−(2−ピリミジル)−ピペラジニル、1−(2−ピラジニル)−ピペラジニル、2−メチルアミノメチル−1,3−ジオキソラン、2−(N−メチル−2−アミノエチル)−1,3−ジオキソラン、3−(N−アセチル−N−メチルアミノ)ピロリジニル、2−メトキシエチルアミニル、テトラヒドロフルフリルアミニル、4−アミノテトラヒドロピラン、2−アミノ−1−メトキシブタン、2−メトキシイソプロピルアミニル、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスタミル、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミニル、1−ベンジル−3−アミノピロリジル、2−(アミノメチル)−5−メチルピラジニル、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタンアミニル、(R)−3−アミノ−1−N−BOC−ピロリジニル、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル、4−アミノメチルテトラヒドロピラン、エタノールアミンおよびそれらのアルキル置換誘導体からなる群から選択される)、cが1の場合CH
2は
【化2】
およびCH
2CH
2CH
2であってもよい;ただし、上記アルキルまたはフェニル基は、1つまたは2つのハロ、ヒドロキシまたは低級アルキルアミノ基で置換されていてもよく、上記式中、R
7およびR
8は、H、FおよびC
1〜C
4アルキルからなる群から選択されてもよいか、またはCR
7R
8は3〜6炭素の炭素環式環を表してもよく、好ましくはR
7およびR
8はHまたはCH
3である。
bは0または1〜3の整数であり;
aは0または1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり;
cは0または1〜4の整数であり、
dは2〜5の整数である。)
波線はEまたはZ結合を表す。]
【0055】
あるインプラントでは、TKIは、R
1が、H(すなわちbが0);CH
3、F、Clおよびフェニルからなる群から選択される、上記式で示される化合物である。
【0056】
好ましくは、Rは、CH
3、CH
2CH
3、OCH
3、OH、t−ブチル、F、CN、C(O)NH
2、HNC(O)CH
3、CH
2C(O)OH、SO
2NH
2、C(O)OH、OCF
2H、イソプロピル、C
2H
5OH、C(O)OCH
3、CH
2OH、NH-CH=CH、HC=N-N-H、N=CH-S、O(CR
7R
8)
dR
6、(CR
7R
8)CR
6および-NR
2(CR
7R
8)
dR
6からなる群から選択され、ここで、R
6は、3−フルオロピロリジニル、3−フルオロピペリジニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、3−ピロリニル、ピロリジニル、メチルイソニペコテート、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルアミル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、モルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、ピペラジニル−2−オン、ピペラジニル、N−(2−メトキシエチル)エチルアミニル、チオモルホリニル、ヘプタメチレンイミニル、1−ピペラジニルカルボキサアルデヒド、2,3,6,7−テトラヒドロ−(1H)−1,4−ジアゼピニル−5(4H)−オン、N−メチルホモピペラジニル、(3−ジメチルアミノ)ピロリジニル、N−(2−メトキシエチル)−N−プロピルアミニル、イソインドリニル、ニペコタミジニル、イソニペコタミジニル、1−アセチルピペラジニル、3−アセトアミドピロリジニル、trans−デカヒドロイソキノリニル、cis−デカヒドロイソキノリニル、N−アセチルホモピペラジニル、3−(ジエチルアミノ)ピロリジニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニニル、1−(2−メトキシエチル)−ピペラジニル、2−ピロリジン−3−イルピリジニル、4−ピロリジン−3−イルピリジニル、3−(メチルスルホニル)ピロリジニル、3−ピコリルメチルアミニル、2−(2−メチルアミノエチル)ピリジニル、1−(2−ピリミジル)−ピペラジニル、1−(2−ピラジニル)−ピペラジニル、2−メチルアミノメチル−1,3−ジオキソラン、2−(N−メチル−2−アミノエチル)−1,3−ジオキソラン、3−(N−アセチル−N−メチルアミノ)ピロリジニル、2−メトキシエチルアミニル、テトラヒドロフルフリルアミニル、4−アミノテトラヒドロピラン、2−アミノ−1−メトキシブタン、2−メトキシイソプロピルアミニル、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスタミル、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミニル、1−ベンジル−3−アミノピロリジル 2−(アミノメチル)−5−メチルピラジニル、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタンアミニル、(R)−3−アミノ−1−N−BOC−ピロリジニル、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル、4−アミノメチルテトラヒドロピラニル、エタノールアミンおよびそれらのアルキル置換誘導体からなる群から選択され、例えば、R
6はモルホリニルまたはCH
2N(CH
3)
2である。
【0057】
さらに好ましくは、Rは、m−エチル、p−メトキシ、p−ヒドロキシ、m−ヒドロキシ、p−シアノ、m-C(O)NH
2、p-HNC(O)CH
3、p-CH
2C(O)OH、p-SO
2NH
2、p-CH
2OH、m-メトキシ、p-CH
2CH
2OH、HNCH=CH、HC=N-NH、p−モルホリニル、N=CH-S、p-OCHF
2、p-COOH、p-CH
3、p-OCH
3、m-F、m-CH
2N(C
2H
3)
2、(CR
7R
8)
CR
6、O(CR
7R
8)
dR
6およびNR
2(CR
7R
8)
dR
6からなる群から選択される。
【0058】
Rが、2つの位置で上記フェニル環に結合した縮合環を表してもよい。例えば、CH
2CH
2CH
2は、フェニル環の3位および4位(すなわちmおよびp)に結合してもよい。
【0059】
より好ましくは、Rは、フルオロ、メチル、(CR
7R
8)
CR
6、O(CR
7R
8)
dR
6およびNR
2(CR
7R
8)
dR
6からなる群から選択され、ここで、R
6は、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、3−フルオロピロリジニル、3−フルオロピペリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ヘプタメチレンイミニル、テトラヒドロフルフリルアミニル、4−アミノテトラヒドロピラニル、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミニル、および4−アミノメチルテトラヒドロピランからなる群から選択される。
【0060】
特に、本発明のインプラントの化合物は、以下の表の化合物から選択され得る。
【0061】
非置換4−メチルおよび5−クロロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化3】
【表1】
【0062】
非置換4−メチルおよび5−クロロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化4】
【表2】
【0063】
非置換4−メチルおよび5−クロロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化5】
【表3】
【0064】
非置換4−メチルおよび5−クロロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化6】
【表4】
【0065】
非置換4−メチル、5−クロロおよび5−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化7】
【表5】
【0066】
非置換4−メチル、5−クロロおよび5−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化8】
【表6】
【0067】
非置換4−メチル、5−クロロおよび5−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化9】
【表7】
【0068】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化10】
【表8】
【0069】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化11】
【表9】
【0070】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化12】
【表10】
【0071】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化13】
【表11】
【0072】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化14】
【表12】
【0073】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化15】
【表13】
【0074】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−フルオロおよび6−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化16】
【表14】
【0075】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−フルオロおよび6−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化17】
【表15】
【0076】
本発明のインプラントはさらに、以下の式で表されるTKIまたはTKIの組み合わせを含んでもよい。
【化18】
【化19】
【0077】
本発明のインプラントにおいて使用できるさらなるTKIとしては、Goel et al., "Tyrosine Kinase Inhibitors: A Clinical Perspective", Current Oncology Reports, 4:9-19(2002); Haluska et al., "Receptor tyrosine kinase inhibitors", Current Opinion in Investigational Drugs, 2(2):280−286(2001); Hubbard et al., "Protein tyrosine kinase structure and function", Annu. Rev. Biochem., 69:373−98(2000); Busse et al., "Tyrosine kinase inhibitors: rationale, mechanisms of action, and implications for drug resistance", Semin Oncol 28(suppl 16)47-55(2001); and Fabbro et al., "Protein tyrosine kinase inhibitors: new treatment modalities?", Current Opinion in Pharmacology, 2: 374−381(2002)に開示される化合物が挙げられる。
【0078】
上記化合物は、通常の化学技術および米国特許出願第10/256,879号(米国特許出願公開第20030199478号)および同第10/259,703号(米国特許出願公開第20030225152号)および他の上記参考文献に開示されるものを含む方法を用いて合成されてもよい。
【0079】
本発明のインプラントはさらに、TKIの塩を含んでもよい。本発明の化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容されるアニオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成されるもの、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、または硫酸水素酸塩、リン酸塩または酸リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、サッカレートおよびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0080】
このように、インプラントは、TKI、それらの塩およびそれらの混合物を含み、これから本質的になり、またはこれのみからなる治療成分を含み得る。このようなインプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、ポリビニルアルコールが実質的に存在しなくてよく、言い換えると、ポリビニルアルコールを含まなくてよい。
【0081】
さらなるTKIは、従来の方法、例えば、当業者に知られている通常の化学合成方法によってを用いて得られるまたは合成され得る。治療的に有効なTKIは、本明細書中に記載されるTKIのために使用される従来のスクリーニング技術を用いてスクリーニングおよび同定し得る。
【0082】
TKIは、粒子状または粉末状であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに封入されてもよい。通常、眼内インプラント中のTKI粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均寸法を有する。特定のインプラントでは、粒子は、3000ナノメートルよりも小さいオーダーの有効平均粒子寸法を有し得る。例えば、粒子は約500ナノメートル未満の有効平均粒子寸法を有してもよい。さらなるインプラントでは、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒子寸法を有してもよく、なおさらなる態様では、約200ナノメートル未満の有効平均粒子寸法を有してもよい。
【0083】
インプラントのTKIは、好ましくはインプラントの約10wt%〜90wt%である。さらに好ましくは、TKIは、インプラントの約20wt%〜80wt%である。好ましい態様では、TKIはインプラントの約40%(例えば、30%〜50%)を占める。別の態様では、TKIはインプラントの約60wt%を占める。
【0084】
インプラントにおいて使用するのに適したポリマー材料または組成物としては、眼の機能または生理機能を実質的に阻害しないような眼と適合性の(すなわち、生体適合性の)材料が挙げられる。このような材料は、好ましくは、少なくとも部分的に、さらに好ましくは、実質的に完全に生分解性または生体分解(侵食)性である。
【0085】
有用なポリマー材料の例としては、限定されないが、分解した際に生理学的に許容される分解生成物(モノマーを含む)を生じる、有機エステルおよび有機エーテルから誘導される材料、および/または有機エステルおよび有機エーテルを含む材料が挙げられる。また、酸無水物、アミド、オルトエステルなどから、それら自体または他のモノマーと組み合わせて、誘導されるポリマー材料および/または酸無水物、アミド、オルトエステルなどをそれら自体または他のモノマーと組み合わせて含むポリマー材料も、使用され得る。ポリマー材料は、付加ポリマーまたは縮合ポリマーであってよく、有利には縮合ポリマーである。ポリマー材料は、架橋または非架橋であってよく、例えば、せいぜい架橋度が小さい、例えば、ポリマー材料の約5%未満、または約1%未満が架橋されていてもよい。ほとんどの場合、ポリマーは、炭素および水素以外に少なくとも1つの酸素および窒素、有利には酸素を含む。酸素は、オキシ(例えば、ヒドロキシまたはエーテル、カルボニル)、例えば、非オキソ−カルボニル(例えば、カルボン酸、エーテル)などとして存在してよい。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在してよい。ポリマーは、Heller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, In: CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, Vol. 1, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, 39-90頁に記載され、この文献には、本発明のインプラントにおいて採用し得る、制御された薬剤送達のためのカプセル化が記載されている。
【0086】
さらに興味深いのは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか)、および多糖類である。興味深いポリエステルとしては、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ体乳酸、グリコール酸のポリマー、ポリカプロラクトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくりと分解するポリマーまたはポリマー材料が達成され、一方、この分解は、ラクテートのラセミ化合物を用いて実質的に促進される。
【0087】
有用な多糖類の中で、限定されないが、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロースが挙げられ、特に、水不溶性に特徴があるカルボキシメチルセルロースエステル(例えば、約5kD〜500kD)が挙げられる。
【0088】
興味深い他のポリマーとしては、限定されないが、生体適合性であり、生分解性および/または生体分解性であってよい、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
本発明において使用するためのポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴としては、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬剤送達系の製造におけるポリマーの使用容易性、少なくとも約6時間(好ましくは約1日を超える時間)の生理学的環境における半減期、硝子体の粘度を顕著に上昇しないこと、および水不溶性を挙げることができる。
【0090】
マトリックスを形成するために含まれる生分解性ポリマー材料は、望ましくは、酵素不安定性または加水分解不安定性を有する。水溶性ポリマーは、有用な水不溶性ポリマーを提供するために、不安定な加水分解性または生分解性架橋で架橋されてよい。安定度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれが使用されるか、ポリマーの混合物が使用されるか、ポリマーが末端酸基を含むか否かに依存して、広範囲に変化することができる。
【0091】
ポリマーの生分解性を制御することによりインプラントの放出プロフィールを延長することに対して同様に重要なのは、インプラント中で使用されるポリマー組成物の相対平均分子量である。異なる分子量を有する同じまたは異なるポリマー組成物が、放出プロフィールを調整するためにインプラント中に含まれてもよい。特定のインプラントでは、ポリマーの相対平均分子量は、約9kD〜約64kDの範囲、一般に約10kD〜約54kD、より一般には約12kD〜約45kDの範囲である。
【0092】
いくつかのインプラントでは、グリコール酸および乳酸のコポリマーが使用され、ここで、生分解速度は、グリコール酸対乳酸の比によって制御される。最も迅速に分解するコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含む。等しい比以外の比を有するホモポリマー、またはコポリマーは、分解に対してさらに耐性である。グリコール酸 対 乳酸の比率はさらに、インプラントのもろさに影響を与え、より可とう性のインプラン後は、さらに大きい幾何形状のために望ましい。ポリラクチドポリグリコール酸(PLGA)コポリマー中のポリラクチドの割合(%)は0〜100%であることができ、好ましくは約15〜85%、さらに好ましくは約35〜65%である。いくつかのインプラントでは、50/50のPLGAコポリマーが使用される。
【0093】
眼内インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2種以上の生分解性ポリマーの混合物を含んでもよい。例えば、インプラントは、第1の生分解性ポリマーと異なる第2の生分解性ポリマーとを含んでもよい。生分解性ポリマーの1種以上は、末端酸基を有していてもよい。
【0094】
侵食可能なポリマーからの薬剤の放出は、いくつかの機構または機構の組み合わせの結果である。これらの機構のいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔性チャンネルを介した拡散、および侵食を含む。侵食は、バルクまたは表面またはそれら両方の組み合わせであってよい。本明細書に記載されているように、眼内インプラントのマトリックスは、眼に移植された1週間後を超える期間、ある量のTKIを持続的に放出するのに効果的な速度で薬剤を放出し得る。特定のインプラントでは、治療量のTKIが、約1ヶ月を超える期間、さらに約6ヶ月以上の期間、放出される。
【0095】
生分解性眼内インプラントの一例は、TKIと、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)またはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含む生分解性ポリマーマトリックスとを含む。インプラントは、インプラントの約20wt%〜約60wt%の量のTKIを有し得る。このような混合物は、インプラントが眼に配置された時点から約1ヶ月〜約6ヶ月の期間、治療有効量のTKIを持続的に放出するのに効果的である。
【0096】
生分解性眼内インプラントの別の例は、TKIと、1種類のポリマーを含む生分解性ポリマーマトリックスとを含む。例えば、生分解性ポリマーマトリックスは、ポリカプロラクトンから本質的になってもよい。ポリカプロラクトンは、約10〜約20キロダルトン、例えば約15キロダルトンの分子量を有し得る。これらのインプラントは、少なくとも約70日間、ほぼ線形の放出速度を提供することができる。
【0097】
生分解性ポリマーマトリックスを含む眼内インプラントからのTKIの放出は、放出されたTKIの量を徐々に増加させることによる初期の大量な突発的な暴露を含んでもよいか、またはこの放出は、放出の増加によるTKIの放出における初期の遅れを含んでもよい。インプラントが実質的に完全に分解したら、放出したTKIの割合は約100である。既存のインプラントと比較して、本明細書に開示されるインプラントは、眼に配置されてから約1週間経過するまでに、完全には放出しないか、または約100%のTKIを放出する。
【0098】
インプラントの寿命全期間にわたって、インプラントからのTKIの比較的一定速度の放出を提供することが望ましいことがある。例えば、インプラントの寿命の間、TKIが約0.01μg〜約2μg/日の量で放出されることが望ましいことがある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの組成に依存して増加するかまたは減少するかのいずれかに変化する場合がある。それに加えて、TKIの放出プロフィールは、1つ以上の線形部分および/または1つ以上の非線形部分を含んでもよい。好ましくは、放出速度は、一旦インプラントが分解または侵食し始めると、ゼロより大きい。
【0099】
インプラントは、一体型(すなわち、ポリマー性マトリックス内に均一に分散した活性薬剤を含有)であってもよいか、またはカプセル化されていてもよい(ここで、活性薬剤の貯蔵部がポリマー性マトリックスによってカプセル化されている)。製造の容易性の故に、通例、カプセル化形態よりも一体型インプラントが好ましい。しかし、カプセル化貯蔵部型インプラントによって与えられるより大きい制御はいくつかの環境において利点を有することがあり、この場合、薬剤の治療レベルは狭い範囲にある。加えて、TKIを含む治療成分は、マトリックス中の非均一パターンで分布してもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第2の部分に比べ、より大きな濃度のTKIを有する部分を含んでいてもよい。
【0100】
1つのこのようなインプラント100を
図14に示す。インプラント100は、一方向薬剤送達器具であると理解される。インプラント100は、第1の部分110と第2の部分120とを含むことに特徴がある。第1の部分110は、治療薬(例えばTKI)と、生分解性ポリマーマトリックス(例えば、PLGA、PLAのマトリックス、またはそれらの組み合わせ)との混合物を含む。第2の部分120は、ポリマー(例えば生分解性ポリマー)を含み、治療薬を実質的に含まない。第1の部分110および第2の部分120のポリマー成分は、同じポリマー材料を含んでもよく、例えば、両方の成分がPLGAポリマーから製造されてもよい。治療薬はTKIであるが、他のインプラントは、本明細書中に記載されるものを含む他の治療薬を含んでいてもよい。第1の部分110は活性層であると理解され、第2の部分120はバリア層であると理解されてよく、後者は、インプラントの片側からの治療薬の拡散を防止または減少するのに有効である。これらの層はフィルムとして別個に形成されてもよく、例えば、Carverプレスを用いて一緒にプレスされてもよい。または、これらの層は、従来の押出技術を用いて共押出されてもよいか、または射出成形技術を用いて射出成形されてもよい。インプラント110は、特定の方向(例えば一方向)における治療薬の流れまたは放出を制御するのに有効である。インプラントは、例えば、結膜下適用のために、特定の様式および制御された様式での治療薬の放出を必要とする疾患位置(例えば眼)に適用することができる。
【0101】
本発明のインプラントはさらに、本明細書中に記載されるように、TKIとポリカプロラクトンとの組み合わせを含んでもよい。このようなインプラントは、眼に配置された後約70日間以上、単一オーダーの放出速度を与えてもよい。ポリカプロラクトンは約15キロダルトンの分子量を有し得る。すなわち、本発明のインプラントの一態様は、溶解性の低い薬剤または治療薬と、実質的に線形の放出速度で(例えば、ゼロ次速度で)薬剤を放出する単一ポリマー成分とを含む。
【0102】
本発明のインプラントはさらに、本明細書に記載されるように、非生分解性ポリマー成分を含んでいてもよい。治療薬(例えばTKI)の放出は、1つ以上の開口、オリフィスまたは穴を通る治療薬の移動によって達成されてもよい。このようなインプラントの例は、米国特許第6,331,313号に開示されている。
【0103】
本明細書に開示される眼内インプラントは、針を用いて投与するために約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの寸法、外科移植による投与のために1mmを超える、または2mmを超える、例えば3mmまたは10mmまでの寸法を有し得る。ヒトの硝子体腔は、種々の幾何形状を有する、例えば1〜10mmの長さを有する比較的大きなインプラントを収容することができる。インプラントは、約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒状ペレット(例えば棒)であってもよい。あるいは、インプラントは、約7mm〜約10mmの長さ、約0.75mm〜約1.5mmの直径を有する円筒状ペレットであってもよい。
【0104】
インプラントはさらに、眼(例えば硝子体)内へのインプラントの挿入を容易にするため、およびインプラントの収容を容易にするために、少なくともいくらか可撓性であってもよい。インプラントの全重量は、通常約250〜5000μg、さらに好ましくは500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってもよい。非ヒト個体について、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存して、より大きくてもより小さくてもよい。例えば、ウマの約30ml、ゾウの約60〜100mlと比較して、ヒトの硝子体体積は、約3.8mlである。ヒトに使用するために寸法設計されたインプラントは、他の動物についてのインプラントに応じて寸法を大きくするかまたは小さくしてもよく、例えば、ウマに対するインプラントは約8倍、または、例えばゾウについてのインプラントは約26倍大きい。
【0105】
インプラントは、中心が1つの材料から成り、表面が同じまたは異なる組成の1つ以上の層を有するように調製することができ、これらの層は、架橋されているか、または異なる分子量を有するか、または異なる密度または多孔度などを有することができる。例えば、薬剤の初期のボーラスを迅速に放出することが望ましい場合、中心は、初期分解速度を高めるために、ポリアセテート−ポリグリコレートコポリマーでコーティングされたポリアセテートであってもよい。あるいは、中心は、ポリアセテートの分解の際に、中心の外側が溶解し、眼から迅速に洗い流されるため、ポリアセテートでコーティングされたポリビニルアルコールであってもよい。
【0106】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、微小球、球、円板、平板などを含む任意の幾何形状であってよい。インプラントの寸法の上限は、インプラントの許容性、挿入の際の寸法制限、取扱いの容易性などの因子によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱いの容易性のために、約0.1〜1.0mの厚みを有して、少なくとも約0.5mm×0.5mm、通常は約3〜10mm×5〜10mmの範囲である。繊維を使用する場合、繊維の直径は一般に約0.05〜3mmの範囲であり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmの範囲である。球は、他の形状の粒子に匹敵する体積を有し、その直径が¥は約0.5μm〜約4mmの範囲であってよい。
【0107】
インプラントの寸法および形状はさらに、放出速度、治療期間および移植部位での薬剤濃度を制御するために使用することができる。より大きなインプラントは、比例して大きな用量を送達するが、質量比に対する表面に依存して、よりゆっくりとした放出速度を有する。インプラントの特定の寸法および幾何形状は、移植部位に適するように選択される。
【0108】
TKI、ポリマー、および任意の他の改質剤の割合は、種々の割合を有するいくつかのインプラントを処方することにより経験的に決定され得る。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
【0109】
本明細書に開示される眼内インプラントに含まれるTKIに加えて、眼内インプラントは、1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療剤も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のβ遮断薬、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗新生物薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
【0110】
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0111】
抗ヒスタミン薬の例は、ロラダチン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、キオルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
【0112】
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、シクロスポリン、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピリシン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、ガチフロキサシン、およびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
【0113】
β遮断薬の例は、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体である。
【0114】
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール(loteprednol)、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、リアムシノロンヘキサカトニド、酢酸パラメータゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0115】
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ジュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
【0116】
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
【0117】
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バルシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
【0118】
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタザンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
【0119】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、αアゴニスト、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
【0120】
個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびインプラントからの所望放出速度に依存して広く変化する。本明細書に示すように、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般に約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0121】
本明細書に開示する眼内インプラントは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、燐酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、硼酸塩、酢酸塩、琥珀酸塩等、例えば、燐酸、クエン酸、硼酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等を包含するが、それらに限定されない。これらの緩衝剤は、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在するのが好都合である。従って、緩衝剤は、全インプラントの約5wt%もの量で存在する場合もある。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硼酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの防腐剤は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。
【0122】
さらに、インプラントは、溶解促進成分を含有していない実質的に同じインプラントと比較して、TKIの溶解性を増加させるのに有効な量で使用される溶解促進成分を含有しうる。例えば、インプラントは、TKIの溶解性を増加させるのに有効なβ−シクロデキストリンを含有しうる。β−シクロデキストリンは、インプラントの約0.5%(w/w)〜約25%(w/w)の量で使用しうる。特定のインプラントにおいて、β−シクロデキストリンは、インプラントの約5%(w/w)〜約15%(w/w)の量で使用される。
【0123】
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、インプラントの混合物を使用しうる。この場合、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールの組み合わせが得られ、放出のパターンがかなり変化しうる。インプラントは、シグモイド型放出プロフィールを有していてもよい。
【0124】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のTKIの放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる材料のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
【0125】
種々の方法を使用して、本明細書に開示するインプラントを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0126】
特定の方法が、米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0127】
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
【0128】
圧縮法を使用してインプラントを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のインプラントを生じる。圧縮法は、約50〜150psi、より好ましくは約70〜80psi、さらに好ましくは約76psiの圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
【0129】
本発明のインプラントは、2〜3mmの強膜切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる器具の1つの例は、米国特許出願公開第2004/0054374号に開示されている。配置方法は、治療成分または薬剤放出速度論に影響を与えうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より、硝子体内に深くインプラントを配置し、それによって、インプラントを硝子体の縁により近づけうる。インプラントの位置は、要素の周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与える場合があり、従って、放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁の近くに配置するほど、より遅い放出速度を生じうる)。
【0130】
本発明のインプラントは、眼の症状、例えば、眼後部の症状を、治療または減少させるのに有効な所定量のTKIを放出するように構成される。特に、新生血管形成を減少させ、眼の腫瘍を治療する方法に、インプラントを使用しうる。
【0131】
本明細書に開示するインプラントは、下記のような疾患または症状を予防するために、前記のTKIまたは他の治療薬を放出するように構成してもよい。
【0132】
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0133】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(Birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome)(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群。
【0134】
血管疾患/滲出性疾患:
コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症。
【0135】
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
【0136】
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症、未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)。
【0137】
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
【0138】
遺伝性疾患:
網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti’s Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫、オースラー−ウェーバー症候群。
【0139】
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
【0140】
腫瘍:
腫瘍、固形腫瘍、腫瘍転移、良性腫瘍、例えば、血管腫、神経線維腫、トラコーマおよび化膿性肉芽腫に関連した網膜疾患;RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
【0141】
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、眼炎症性および免疫性疾患、眼血管機能不全、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障等。
【0142】
1つの態様において、インプラント、例えば、本明細書に開示するインプラントを、ヒトまたは動物患者、好ましくは生体ヒトまたは動物の、眼の後区に投与する。少なくとも1つの態様において、眼の網膜下腔に接近せずに、インプラントを投与する。例えば、患者の治療法は、後眼房に直接的にインプラントを配置することを含みうる。他の態様において、患者の治療法は、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者にインプラントを投与することを含みうる。
【0143】
少なくとも1つの態様において、患者の視力を向上または維持する方法は、本明細書に開示する1つまたはそれ以上のTKIを含有する1つまたはそれ以上のインプラントを、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者に投与することを含んで成る。適切な太さの針、例えば、22ゲージ針、27ゲージ針または30ゲージ針を含む注入器具を効果的に使用して、ヒトまたは動物の眼の後区に組成物を注入することができる。インプラントからのTKIの長期間放出により、繰り返しの注入が必要でない場合が多い。
【0144】
本発明の他の局面において、下記を含んで成る眼疾患治療用キットを提供する:a)TKIを含有する治療成分および薬剤放出持続成分を含んで成る長期間放出インプラントを含有する容器、およびb)使用説明書。使用説明書は、インプラントの取扱い方法、眼領域へのインプラントの挿入方法、およびインプラントの使用により予期される事柄を含みうる。
【実施例1】
【0145】
流体組成物中でのTKIの硝子体内薬剤動態
雌の白ウサギの眼に硝子体内注射を1回行なった後に、AGN199659、AGN200954、AGN201088およびAGN201666の硝子体内薬剤動態を評価した。動物に、1つの眼につき、242ngのAGN201088、128ngのAGN201666、114ngのAGN199659または222ngのAGN200954を含む50μLを、硝子体内注射により投与した。硝子体液サンプル(各時点につきn=4の眼)を、投与後0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、および12時間で集めた。硝子体液中のTKI濃度を、液体クロマトグラフィータンデム型質量分析方法(LC-MS/MS)を使用して決定した。
【0146】
全ての化合物は、かなり迅速にウサギの眼から除去された。これは、網膜横断経路の除去を示す。化合物の核に対する偏りはなかった。しかし、除去が非常に速かった場合であっても、局所的な持続送達が可能であることが決定された。3−[(4−モルホリン−4−イル−フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン、3−(6−アミノ−3H−イソベンゾフラン−1−イリデン)−5−クロロ−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン、AGN201088およびAGN201666についての研究において決定され、2回の定常状態の有効濃度をEC50値であると推定した硝子体のクリアランス(インビトロ受容体結合および細胞内Ca2+アッセイによって決定)に基づいて、試験した全てのチロシンキナーゼインヒビターは、約6ヶ月間の持続時間、所望される定常状態の薬剤硝子体濃度を維持する、1mgインプラント内に配合できた。このデータは、表16および
図1および
図2にまとめられている。
【0147】
【表16】
【実施例2】
【0148】
TKI生分解性インプラント
押出によって、チロシンキナーゼインヒビターをPLGAまたはPLAインプラントに配合した。TKIを所定の比でポリマーとともに粉砕し、次いでフィラメントに押出した。次いで、これらのフィラメントを、約1mgの重さのインプラントになるように、切断した。いくつかのTKIを、表17に示されるようにそれらの有効性および生理化学的性質に基づいて、PLGAおよびPLAインプラントに配合した。
【0149】
【表17】
【0150】
インプラントからのTKI放出をインビトロで評価した。インプラントを、放出媒体を含むバイアルに入れ、37℃で振盪した。適切な時点で、分析のためにサンプルを放出媒体から採取し、媒体を全て入れ替えて沈積状態を維持した。サンプル中の薬剤をHPLCでアッセイし、インプラントからの薬剤の累積放出割合を時間の関数として記録した。AGN200954、AGN202314、AGN201635、およびAGN202564のインビトロでの放出プロフィールを
図3〜
図10にそれぞれ示す。
【0151】
図3〜
図10に示した製剤放出データから、広範囲の生理化学的性質を有するTKIを用いて、数週間から1年にわたってインビトロで薬剤を放出するように設計可能であることが、明らかである。
【実施例3】
【0152】
TKI含有インプラントのインビボでの薬剤動態特性
AGN202314を含有するインプラントを、眼の硝子体内または結膜下に配置した。このインプラントは、14日間にわたってAGN202314をインビトロで放出した(
図3)。この研究の意図は、硝子体内インプラントを用いて硝子体内のインビボ/インビトロ相関関係を確認し、眼周囲への送達の可能性を評価することであった。
【0153】
硝子体内インプラントPLGA(AGN202314投与量400μg、インプラントの全重量1mg)を、外科的切開によって白ウサギの硝子体中央に移植した。8日目、15日目、31日目および61日目に、ウサギを殺し、硝子体液、硝子体、房水およびリンパ漿をAGN202314についてアッセイした。
【0154】
結膜下インプラントPLGA(AGN202314投与量1200μg;3つのインプラント)およびPLA微小球(AGN202314 300μg)を結膜下に移植した。8日目、15日目、31日目、および61日目に、ウサギを殺し、硝子体液、硝子体、房水およびリンパ漿をAGN202314についてアッセイした。
【0155】
データを表18〜表20にまとめた。
【0156】
【表18】
【0157】
【表19】
【0158】
【表20】
【0159】
この研究からのデータは、AGN202314について良好なインビボインビトロ相関関係が存在したことを示している。AGN202314インプラントは、インビトロおよびインビボの両方で2週間にわたって薬剤を放出した。全ての時点で、リンパ漿レベルがBLQ(検出限界未満)に維持されるかまたは非常に低いことも重要である。このことは、最悪の場合でさえ、2週間にわたる全身暴露を超える硝子体内送達のシナリオをほとんど無視できることを示す。さらに、眼周囲への送達は、硝子体および網膜に対するAGN202314の送達では成功しなかったことも注記しておく。
【0160】
白ウサギの眼への1個の硝子体内移植後に、後続の2ヶ月の眼球でのAGN202314の薬剤動態研究を開始した。この処方物は、AGN202314をインビトロで4ヶ月にわたって送達した。以下の1mgインプラントを評価した:30%のAGN202314/70%のPurac PLA;ロット番号 JS493028(
図4)、50%のAGN201634/50%のPurac PLA;ロット番号JS493034(
図6)。2匹のウサギ(4つの眼および2つのリンパ漿)を各時点について使用した。硝子体切除を行わない強膜切開術によってインプラントを投与した。硝子体液および網膜のAGN202314濃度を8日目、15日目、31日目および61日目にアッセイした。データを表21に示す。
【0161】
【表21】
【0162】
この研究から達成される網膜レベルは、第1週までに治療レベルに接近し、最初の30日間にわたって維持される。このデータは、TKIを局所的にインビボで持続的に実際に送達することが可能であることを示す。
【0163】
6ヶ月の薬剤動態研究を、硝子体内および結膜下のAGN200954インプラントを用いて開始した。このインプラントは、AGN200954をインビトロで180日間放出した(
図3)。硝子体内インプラントPLGA(AGN200954投与量500μg、インプラントの全重量1mg、Puracポリマー)およびPLGA(AGN200954投与量500μg、インプラントの全重量1mg、RG503Hポリマー)を外科的切開によって白ウサギの硝子体中央に移植した。8日目、15日目、31日目、および61日目に、ウサギを殺し、硝子体液、硝子体、房水およびリンパ漿をAGN200954についてアッセイした。結膜下インプラントPLGA(AGN200954投与量500μg、インプラントの全重量1mg、Puracポリマー)およびPLGA微小球(AGN200954投与量500μg、インプラントの全重量1mg、RG503Hポリマー)を投与した。
【0164】
【表22】
【0165】
第1の処方物について、インビボで見られるかなりの遅延時間がインビトロでは見られないことが明らかである。いずれの処方物も測定可能なリンパ漿濃度を示さなかった。
【実施例4】
【0166】
インプラントからのTKI(AGN201634)のインビトロでの放出
振盪した水浴中37℃で、洗浄剤を添加しまたは添加せずに、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PDLG)またはポリ(D,L−ラクチド)(PDL)から製造したインプラントについて、TKI放出を試験した。
【0167】
AGN201634をAllergan から得た。AGN201634の化学構造を以下に示す。AGN201634はさらなる精製を行なわず、受け取った状態で使用した。PDLG/PDLポリマー材料をPurac America Inc. から得た。
【化20】
【0168】
種々の媒体(食塩水、pH7.4のリン酸緩衝食塩水、0.1%のセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を含有するpH6.0±0.1の50mmの重炭酸緩衝液、および0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するpH8.5±0.1の50mmホウ酸緩衝液)中において、振盪した水浴(精密)中37℃で、TKI放出を試験した。媒体10ml中でサンプルをインキュベートし、それぞれのサンプリング時間に新しい媒体と全て入れ替えた。Waters XTerra RP8カラム(3.9×150mm、5μm、周囲状態で平衡化)およびWaters 996光ダイオードアレイ検出器(238nmに設定)を取り付けたWaters 2690 Separation Moduleを用いたHPLCによって、アセトニトリル/0.1%酢酸水(体積で40/60)を移動相として用いて、1.2ml/分の流速で薬剤濃度を決定した。サンプル注入を開始する前に、カラムを移動相で少なくとも30分間平衡化させた。
【0169】
処方物番号、ロット番号、薬剤含有量、ポリマーの固有粘度、および押出温度を含む処方物の特性を以下の表にまとめた。薬剤含有量は20〜50%である。処方物を750μmノズルから押出し、円筒状DDSを形成した。
【0170】
【表23】
【0171】
脱イオン水/アセトニトリル(75%/25%)中のAGN201634標準溶液の安定性を4℃で試験し、その結果を以下の表にまとめた。標準溶液の濃度は0.0695μg/ml〜8.693μg/mlであり、濃度を14日目、21日目、および35日目に分析した。その結果は、回収率が全て95%よりも大きく、8.7μg/mlまでの濃度でさえ、4℃で35日目まで脱イオン水/アセトニトリル(75%/25%)中でAGN201634が良好な安定性をもつことを示す。
【0172】
【表24】
【0173】
処方物中のTKIの安定性を試験するために、それぞれpH6.0、7.4または8.5の媒体中で処方物3および4を種々の濃度になるように調製し、周囲条件下で7日間、または4℃で14日間のいずれかの定温放置条件に付し、その結果を以下の表にまとめた。その結果は、回収率が全て98%よりも大きく、AGN201634はpH6.0、7.4、または8.5の媒体中で安定であり、その安定が周囲条件下で7日間、または4℃で14日間続いた。
【0174】
【表25】
【0175】
食塩水20mlまたはPBS20〜30ml中の処方物1のTKI放出を
図11に示す。DDSを40mlまたは20mlのいずれかのバイアル中でインキュベートし、それぞれのサンプリング時間に、10mlサンプルを同じ体積の新しい媒体と交換した。食塩水およびPBS中の放出プロフィールは明らかに異なっていた。最初の70日間で、5%未満のTKIが食塩水中で放出した。対照的に、DDSがPBS中でインキュベートされた場合、食塩水中と同様に、5%未満のAGN201634は、最初の3週間で放出したが、80%を超えるAGN201634は70日後に放出した。しかし、DDSが20mlまたは40mlバイアル中のPBS20mlまたは30ml中でインキュベートされる場合、放出プロフィールにおける顕著な違いは見出されなかった。このゆっくりとした途中でパターンが変わる放出プロフィールに起因して、その処方物が、さらに低い薬剤含有量を有する同じポリマーに基づくため、処方物2の放出プロフィールは実施しなかった。
【0176】
pH6.0(0.1%CTAB含有)、pH7.4(PBS)、またはpH8.5(0.5%SDS含有)中37℃での処方物3および4の放出を、それぞれ
図12および
図13に示す。処方物3について、DDSがpH6.0(0.1%CTAB含有)、pH7.4(PBS)、またはpH8.5(0.5%SDS含有)中でインキュベートされる場合、50%を超える量、45%を超える量、および75%を超える量のTKIが最初の3、7、および2週間で放出した。一方、DDSを上述の媒体中でインキュベートした場合、約47%、6%、および68%のTKIが処方物4から放出した。媒体中に洗剤が存在する状態または存在しない状態で、異なるpH媒体中でのTKI放出はpH8.5>pH6.0>pH7.4であるようである。両処方物について、すべての媒体中で大きな標準偏差は見られなかった。
【0177】
分解中のDDSの外観をモニターするために、pH6.0(0.1%CTAB含有)、pH7.4(PBS)、またはpH8.5(0.5%SDS含有)10ml媒体中でインキュベートしたF3およびF4処方物の画像を37℃で撮影した。全ての処方物は、膨潤の後にマトリックス分解を受け、薬剤を放出した。処方物マトリックスの完全な崩壊は37℃で153日以内に観察されなかった。
【0178】
要約すると、チロシンキナーゼインヒビター(AGN201634)DDSを、種々の薬剤含有量で、種々のPLGAまたはPLAを用いて処方した。4℃での脱イオン水/アセトニトリル(75%/25%)中のAGN201634溶液の安定は35日を超え、種々のpH媒体中のDDS溶液は、周囲条件下で7日間を超えて、または4℃で14日間を超えて安定であった。DDSがPBS中または食塩水中で試験される場合、異なる薬剤放出プロフィールが見出された。薬剤バースト効果は、pH6.0の媒体中でインキュベートした場合に処方物3でのみ見られた。インビトロでの制御されたAGN201634放出は、pH8.5の媒体中で4週間を超え、pH7.4およびpH6.0の媒体中で5ヶ月を超えた。
【実施例5】
【0179】
線形放出プロフィールをもつ生分解性インプラント
生分解性インプラントを、ステンレス鋼乳鉢中で、TKIと生分解性ポリマー組成物とを合わせることによって製造する。生分解性ポリマー組成物は、単一種の生分解性ポリマーを含む。その組合せを、96RPMに設定したTurbulaシェーカーで15分間混合する。粉末ブレンドを、乳鉢の壁からこすり取り、次に、さらに15分間再混合する。混合した粉末ブレンドを、所定の温度で合計30分間にわたって半溶融状態に加熱し、ポリマー/薬剤メルトを形成する。
【0180】
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を使用してポリマー/薬剤メルトをペレット化し、ペレットをバレルに装填し、材料を所定コア押出温度でフィラメントに押し出すことによって、ロッドを製造する。次に、フィラメントを、約1mgサイズのインプラントまたは薬物送達システムに切る。ロッドは、約2mm長さ×0.72mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントは、約900μg〜1100μgの重さである。
【0181】
所定温度においてCarverプレスでポリマーメルトを平板化し、該平板材料を、それぞれ約1mgのウエハに切ることによって、ウエハを形成する。ウエハは、直径約2.5mm、厚さ約0.13mmである。ウエハインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
【0182】
生体外放出試験を、インプラント(ロッドまたはウエハ)の各ロットについて行うことができる。各インプラントを、37℃において、燐酸緩衝生理食塩水10mLと共に、24mLのネジ蓋バイアルに入れ、第1、4、7、14、28日およびその後2週間ごとに、1mLアリコートを取り、等容量の新しい媒質と交換する。
【0183】
薬剤アッセイは、HPLC(Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る)によって行ってよい。30℃に加熱したUltrasphere, C-18(2), 5μm;4.6×150mmカラムを分離に使用することができ、検出器は264nmに設定することができる。移動相は、流速1mL/分および合計実行時間12分/試料の(10:90)MeOH緩衝移動相であってよい。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1−ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含んで成ってよい。放出速度は、時間の経過に伴って、所定容量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求めることができる。
【0184】
インプラントのために選択された単一ポリマーはポリ(カプロラクトン)であった。棒インプラントおよびウエハインプラントを、50:50比の(ポリ(カプロラクトン):TKI)で処方した。すなわち、1mgのインプラントは、約500μgのポリ(カプロラクトン)と500μgのTKIとを含む。AGN200954をTKIとして使用した。
【0185】
図15に示されるように、難溶性薬剤(TKI)と単一生分解性ポリマー(ポリ(カプロラクトン))から形成されたインプラントは、少なくとも約70日間、TKIをほぼゼロ次の速度で放出した。特定のポリ(カプロラクトン)は、約15キロダルトンの分子量を有していた。ほぼ線形の放出速度は、
図15中のデキサメタゾン含有インプラントについて示されるように、単一ポリマー成分に基づく他の生分解性インプラントで達成することは非常に困難である。
【実施例6】
【0186】
TKIと生分解性ポリマーマトリックスとを含有するインプラントの製造および試験
さらなる生分解性インプラントを、TKIと生分解性ポリマー組成物とを実施例5に記載されるように組み合わせることによって製造する。インプラントのために選択されるポリマーは、例えば、Boehrfnger IngelheimまたはPURAC AMERICAから得ることができる。ポリマーの例としては、以下のものが包含される:RG502、RG752、R202H、R203およびR206、およびPurac PDLG(50/50)。RG502は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは酸末端基または末端酸基を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L−ラクチド)である。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、およびPurac PDLGの固有粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0、および0.2dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、6500、1400、63300、および9700ダルトンである。
【実施例7】
【0187】
種々のTKIインプラントのインビトロ評価
概要
TKIは、血管内皮成育因子(VEGF)のチロシンキナーゼを阻害することができる。VEGFは、脈管形成を誘発することができ、血管透過性を増す。このように、TKIは、脈絡膜血管新生(CNV)、例えば、老化関連黄斑部変性(AMD)および糖尿病性網膜症(DRO)から生じるかまたは老化関連黄斑部変性(AMD)および糖尿病性網膜症(DRO)の症状を有するCNVを予防または治療するために有用である。
【0188】
この実験では、血管新生阻害活性を有する5つの異なるTKI(受容体媒介チロシンキナーゼインヒビター)の1つを含有する実験インプラントを製造し、評価した。インプラントは、異なるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)およびポリ(D−L−ラクチド)ポリマーを含むTKI持続性放出性生分解性ポリマーインプラントとして処方し、溶融押出法によって製造した。これらのインプラントは、1つ以上の眼球の障害を処置するための眼内(例えば硝子体内)用途に適している。特に、本発明者らは、TKI AGN206639、AGN205558、AGN206320、AGN206784およびAGN206316について制御放出硝子体内インプラントを製造し、評価したところ、これらインプラントは、約3〜約6ヶ月間にわたって、TKIを定常的に放出することができることを示した。インプラント処方物を、2つの異なる放出媒体(リン酸緩衝食塩水およびクエン酸リン酸緩衝液、0.1%セチルトリメチルアンモニウムブロミド含有)中でインビトロ評価した。効能についての評価された温度での保存およびγ線での滅菌の効果も試験した。
【0189】
インプラントをポリ(ラクチド)またはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーを用いた溶融押出によって製造したが、種々のインプラント処方物を、異なる薬剤(TKI)を用いてまたは異なる薬剤(TKI)含有状態、ラクチド−グリコリド比、固有粘度、および押出温度で製造した。製造したポリマーインプラント薬剤送達系(DDS)を、初期の効能、滅菌後の効能、および促進条件にさらした後の効能について、HPLCによってアッセイした。DDSからのTKIの放出を、2つの異なる放出媒体中37℃でインキュベーションした後にHPLCによって評価した:(1)リン酸緩衝食塩水(pH7.4)、および(2)0.1%セチルトリメチルアンモニウムブロミド含有クエン酸リン酸緩衝液(pH5.4)。一般に、放出速度は、より高い薬剤(TKI)含有状態で、同様のポリマー系について、より高かった。
【0190】
表26は、薬剤送達系(すなわちインプラント)に配合された5つの異なるTKIを記載する。
【0191】
【表26】
【0192】
TKI薬剤送達系を処方するために使用されたポリマーは以下のとおりである:
Purasorb PDL、ポリ(D,L−ラクチド)、Purac Corp. ロット番号DG676GA(固有粘度[iv]は6dL/gまで、分子量[mw、ダルトン]は700Kまでである)。
Resomer RG502、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号R02M002(ivは0.16〜0.24dL/gである)。
Resomer RG502S、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号Res-0354(ivは0.16〜0.24dL/gである)。
Resomer RG504、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号1009731(ivは0.45〜0.60dL/gである)。
Resomer RG505、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号223799(ivは0.61〜0.74dL/gである)。
Resomer RG506、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号34034(ivは0.75〜0.95dL/gである)。
Resomer RG752、75:25ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号R02A0Q5(ivは0.16〜0.24dL/gである)。
Resomer RG755、75:25ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号1009232(ivは0.50〜0.70dL/gである)。
Resomer R104、ポリ(D,L−ラクチド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号290588(mwは、C
3H
4O
2の繰り返しモノマー単位を有する約1,500〜約2,250のポリマーの存在下で決定される)。
Resomer R207、ポリ(D,L−ラクチド)、Boehrfnger Ingelheim Corp. ロット番号260911(ivは1.3〜1.7dL/g)である。
【0193】
使用したクエン酸リン酸緩衝液(CTAB)は、二塩基性リン酸ナトリウム七水和物27.56g、クエン酸9.32gおよびセチルトリメチルアンモニウムブロミド2g(1%)(CTAB,JT Baker)を2Lのメスフラスコに添加し、脱イオン水で満たすことによって調製した。
【0194】
使用したリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液は、PBS(Sigmaカタログ番号P-3813)顆粒2包を2Lメスフラスコに添加し、脱イオン水で満たすことによって調製した。
【0195】
放出プロフィール標準
AGN206784以外の化合物についてのストック標準調製のために、5mgを50mlメスフラスコに加え、アセトニトリルを標線まで添加した。作業標準液は、ストック標準5mlを50mlメスフラスコに加え、アセトニトリル:水(60:40)混合物に添加することによって調製した。AGN206784ストック標準調製のために、化合物5mgを50mlメスフラスコに加え、80%アセトニトリルおよび20%水の溶液で、一杯になるまで添加した。作業標準液調製のために、ストック標準5mlを50mlメスフラスコに加え、アセトニトリル:水(40:60)混合物で満たすまで添加することによって調製した。
【0196】
放出プロフィール移動相
アセトニトリル(ACN)をBurdick and Jacksonによって製造した。トリフルオロ酢酸(TFA)をBurdick and Jacksonによって製造した。5mmヘキサンスルホン酸を含む、ACN:水:酢酸(75:24.5:0.5)混合物をAGN206748処方物以外の全ての分析について使用し、ACN:水:TFA(60:40:1)混合物を移動相として使用した。
【0197】
装置:
粉末ブレンド:Glenn Mills Inc.Turbula shakerT2F型、ID番号990720を使用した。それに加えて、F.Kurt Retsch GmbH & CoモデルMM200ボールミルを使用した。
【0198】
粉末圧縮:改変されたJanesville Tool and Manufacturing Inc. 空気圧駆動粉末圧縮機モデルA−1024を使用した。
【0199】
ピストン押出:APS Engineering Inc. により製造された特注ピストン押出機を、Watlow 93温度コントローラーおよび熱電対とともに使用した。
【0200】
秤量:Mettler Toledo MT6バランス、S/N1118481643を使用した。
サンプルインキュベーション:Precision Inc. Reciprocal Shaking Bathを水とともに使用した。
【0201】
HPLC:Waters LC モジュール1プラス、S/NM98LCJ242Mを、Supelco HSF 5μm、4.6×150mmカラムおよびWaters 2487デュアル波長吸収検出器とともに使用した。データをPeak Proソフトウェア、バージョン9.1bによって分析した。
【0202】
粉末ブレンド
薬剤(TKI)は、最小の光暴露状態において室温で保存し、ポリマーは5℃で保存し、使用前に室温で平衡化した。両方の材料を受け取った状態で使用した。表27に示す処方物をステンレス鋼混合カプセル中で2つのステンレス鋼球を用いてブレンドし、30cps のRetsch ミル中、または96rpm のTurbulaブレンダー中に、5〜15分間置いた。標準物質に依存して、処方物を、各5〜15分間で4〜6回のブレンドサイクルによりブレンドした。ブレンドサイクルの間、ステンレス鋼スパチュラを使用して混合容器の内部表面から物質を取り除いた。全ての処方物についての処方比率および押出温度を表27に示した。
【0203】
粉末圧縮
720μm開口部を有するダイをステンレス鋼バレルに取り付けた。粉末圧縮機を50psiに設定した。バレルを粉末圧縮機アセンブリに挿入した。ステンレス鋼粉末漏斗を使用して少量の粉末をバレルに添加し、空気圧圧縮機を始動した。この方法を、バレルがいっぱいになるか、または粉末が残らなくなるまで繰り返した。
【0204】
押出
ピストン押出機をある温度に設定し、平衡化した。押出温度は、薬剤含有量およびポリマーに依存して選択された。押出温度は、平滑で均一に見えるフィラメントを製造するために各処方物について調整した。押出温度が平衡化した後、ピストン押出バレルを押出機に挿入し、熱電対を挿入し、バレルの表面の温度を測定した。バレル温度が平衡化した後、ピストンをバレルに挿入し、ピストン速度を0.0025インチ/分に設定した。押出品の最初の2〜4インチは廃棄した。その後、3〜5インチ片を遠心管に直接切断した。サンプルにラベルをつけ、乾燥剤を含有する密閉したホイルポーチに保存した。
【0205】
より高い薬剤含有量を有する処方物はより高い押出温度を必要とした。より高い固有粘度を有するポリマーは、より低い固有粘度を有するポリマーよりも高い押出温度を必要とした。ラクチドの割合がより高い(75:25)ラクチド−グリコリドコポリマーは、ラクチドの割合がより低い(50:50)ポリマーよりも低い加工温度を必要とした。処方物の情報および押出温度を表27に示した。
【0206】
内容物均一性分析
1mg(±10%)の10個のサンプルをそれぞれの処方物から切断した。それぞれのサンプルを秤量し、個々に50mlメスフラスコに入れた。AGN206784について、40:60のACN:水または100%アセトニトリルを添加し、サンプルを超音波破砕した。以下の放出プロフィール分析に使用されるHPLC法に従ってサンプルを分析した。他のTKIについて、60:40のACN:水を各50mlフラスコに添加した。フラスコを超音波破砕し、サンプルをインビボ放出(下記)に使用されるのと同じHPLC法に従って試験した。
【0207】
γ線滅菌
サンプルを秤量し、バイアルに入れ、それぞれのバイアルを、乾燥剤を入れたホイルポーチに密閉し、ラベルをつけた。全てのサンプルを25〜40kGyのγ線によって殺菌した。
【0208】
安定性試験:
フィラメントを1mg(±10%)サンプルに切断し、ねじ蓋付きバイアルに入れた。次いで、処方物を40℃で周囲湿度の乾燥機に入れた。14日後に、TKI含量についてサンプルを試験した。
【0209】
インビトロ放出プロフィール分析
1mg(±10%)の12個のサンプルをそれぞれの処方物から切断した。それぞれのサンプルを秤量し、個々に60mlサンプルバイアルに入れた。50mlのクエン酸リン酸緩衝溶液を6個のバイアルに添加し、5mlのリン酸緩衝食塩水放出媒体を6個のバイアルに添加した。全てのバイアルを37℃50RPMに設定した振盪水浴に入れた。各時点で、分析のために2mlを各バイアルから採取し、残った溶液を捨て、新しい放出媒体50mlをバイアルに添加した。
【0210】
【表27】
【0211】
表27では、API(活性薬剤成分[すなわち、TKI])値は重量パーセントでの値である。
【0212】
HPLCアッセイ
HPLCを1ml/分の流速で安定になるまで280nmで調整した。サンプルをシステムに適した標準化のためのサンプルとともに、自動採取装置バイアルに移した。全測定時間は10分であり、温度は周囲温度であり、注入体積は20μLであった。試験が終了するか、または100%の放出が達成されるまで、サンプルを1日目、4日目、7日目に7日間隔で採取した。標準ピークの高さと比較した280nmでのピークの高さから全TKIの割合を計算した。処方物内で放出した薬剤の割合、放出した全μg、および標準偏差をを検出した薬剤の量から計算した。
【0213】
結果
行なった内容物均一性分析により、ほとんどの処方物は100%のラベル強度またはマイナス20%で試験されたことが示された。
【0214】
図16〜
図21は、種々のポリマー処方物を有するインプラントにおいて使用される5つのTKIについて、インビトロ放出データの例を提供するグラフである(pH5.4クエン酸リン酸緩衝液媒体中またはpH7.4リン酸緩衝食塩水放出媒体中のいずれか)。
図16〜
図21は、より高い溶解度を有するTKIが、より低い溶解度を有するTKIよりも早い速度で放出される傾向を有することを示す。さらに、
図16〜
図21は、より低い薬剤(TKI)含有量を有するTKIインプラント処方物は、より高い薬剤含有量を有するものよりも遅い速度で放出されることを示す。
【0215】
このように、多くの異なる持続性放出の生分解性ポリマー性処方物(インプラント)を、5つの異なるチロシンキナーゼインヒビター化合物について製造した。この結果は、PLGAポリマーインプラントからのTKIの放出が、ポリマーマトリックスおよび押出条件を変えることによって調整可能であることを示す。特に、リン酸緩衝食塩水放出媒体(pH7.4)およびCTAB媒体中の5つのTKI化合物すべてについて持続性放出が達成され、この結果は、ポリマーマトリックスからのTKIの放出が、処方物に依存して約1ヶ月〜6ヶ月を超えて持続し得ることを示す。顕著なことに、リン酸緩衝食塩水中の5つのTKIのそれぞれから、線形の一貫した薬剤放出プロフィールが得られた(処方物7409-024、7409-009、7409-022、7409-032および7409-071を参照)。
【実施例8】
【0216】
活性薬剤微小球の製造方法
1つ以上の活性薬剤(例えばチロシンキナーゼインヒビター)を組み込んだ微小球を製造するための実験を行なった。活性薬剤微小球を製造するための既知のエマルジョン蒸発方法を
図22に示した。この既知の方法では、活性薬剤と、活性薬剤をカプセル化するためのポリマーと、両方のための溶媒を含む有機相を調製する。水相を調製し、2相をあわせてエマルジョンを形成させる。このエマルジョンを攪拌し、溶媒を蒸発させる。得られた微小球を集め、寸法設定し(篩いに通し)、後で使用するために凍結乾燥した。典型的には、古典的なエマルジョン/蒸発方法は、微粒子からの活性薬剤の一気放出が見られる微小球を生じる。さらに、既知の方法では一般に、活性薬剤の含有量が微粒子中で約10%(微粒子の重量の)を超えないようにする。
【0217】
本発明者らは、活性薬剤微小球を製造するための新しい(水中油)方法を開発した(
図23)。微小球を製造するためのこの新しい方法は、水および有機溶媒にわずかに可溶で、有機溶媒中で選択的に結晶化できる小分子とともに使用することができる。このような小分子としては、4以上のLogPを有するものが挙げられる。P(分配係数)は、2つのほとんど非混和性の溶媒からなる2相系に溶解した基質の平衡濃度(C
i)、例えば、N−オクタノール(C
o):水(C
w)の比として定義される。
【0218】
本発明の修正された方法では、既知の方法におけるように、有機相および水相を調製する。本発明者らは、既知のエマルジョン/蒸発方法を、以下のいずれかにより改変した:
(1)活性薬剤の結晶化を促進するために、活性薬剤と活性薬剤をカプセル化するために使用されるポリマー(例えばPLAまたはPLGAコポリマー)とを含む有機相の量を減らすこと。好ましくは、水相IのpHは約6〜8である。
【0219】
本発明の方法では、活性薬剤とポリマー(すなわちPLAおよび/またはPLGA)とを含有する有機相の体積は、活性薬剤を結晶化および/または沈殿させ、ポリマー内に埋包するために、約80%減らされた。このように、本発明の新しい方法の顕著な違いは、有機溶媒中のポリマー(すなわちPLGA)の濃度に関するものである。例えば、既知の方法では、約450mgのPLGAを約25〜30mlの塩化メチレンに溶解させ、一方、本発明の新しい方法では、約450mgのPLGAをたった5mlの溶媒(塩化メチレン)に溶解させた。すなわち、本発明者らは、塩化メチレン中でより高い濃度のPLGAを使用し、より粘性の高い有機相を得た。
【0220】
(2)2相方法を使用すること。第1の水相(水相I)は、有機相を含む安定なエマルジョンの形成を助長するために使用される。第2の水相(水相II)は、シンクとして、有機相を抽出し、溶媒蒸発ステップで安定な懸濁物の形成を補助するのに役立つ。
【0221】
(3)水性抽出相(水相IIまたは水共溶媒系)の体積は、完全に溶解させるために、有機相中で使用される溶媒(すなわち塩化メチレン)の体積に基づいて計算される。水相IIは、溶媒を溶解させ、有機溶媒を微小球から除去し、蒸発ステップの間に懸濁液中で安定な硬質微小球を得るために使用される。蒸発工程の間、有機溶媒は水相から除去され、固体微小球が得られる。
【0222】
(4)活性薬剤を結晶化させること。本発明者らは、活性薬剤の結晶化により、優先的な微小球特性が提供可能であることを見出した。本発明の新規方法を用いて、活性薬剤の結晶化は、空気流による蒸発の際にまたは溶媒の減圧下で、粘性の高い媒体(有機相、ポリマーおよび活性成分の混合物)中で進行する。本発明者らは、活性薬剤がこの減少した体積の有機相中で多く結晶化すればするほど、より多くの活性薬剤がポリマーによってカプセル化されることを見出した。
【0223】
(5)水性抽出相(水相IIまたは水共溶媒系)のpHを、水相II中での活性薬剤の溶解度が制限され、Log D(水/オクタノール分配係数)を最大化するように確立すること。このように、水相IIのpHは、水中での活性薬剤の溶解度を制限するように調整される(Log D max)。
好ましくは、水相IIのpHは約4〜9である。
【0224】
特に、活性薬剤をカプセル化眼的での結晶形成の使用は、既知のエマルジョン/蒸発方法の顕著な改良である。本発明の新規方法の利点は以下の点を含む:
【0225】
(1)微粒子からの活性薬剤のバースト効果を排除または顕著に減らす。この排除または顕著な減少は、本発明の方法による活性薬剤の結晶形成の促進に起因するのであろう。
(2)微小球中のより高い活性薬剤含有量(10〜30wt%)。
【0226】
既知の方法および本発明の新規方法の両方において、有機相溶媒(すなわち塩化メチレン)と使用される水相との体積比は、ほぼ同じである(約1:5〜1:6)。例えば、両方法において、3gのバッチでは、水相は約1000mlの水を含み、一方、有機相は約180mlの塩化メチレンを含む。
【0227】
本発明の新規方法を用いて、
図24に示される5つの異なるTKIのそれぞれを、PLGA生分解性微小球内に別個に組み込んだ。
図24において、示される5つのTKIは以下のように定義される:第1(最上部の)列:206639および205558;第2の(中央の)列:206320および206316、および;一番下の列:206784。これらの5つのTKIの性質は表28に記載され、ここで、「DSC」は示差走査熱量測定を意味し、吸熱は摂氏で示される(TKI結晶の存在を決定するために使用される)。
【0228】
【表28】
【0229】
PLGAポリマー中で11%までのTKI活性薬剤含有量を有するTKI PLGA微小球を、以下のような本発明の新規方法を用いて製造した:
【0230】
水相(I)調製
1.5%のPVA(ポリビニルアルコール)溶液を調製し、使用される活性薬剤TKIについて最も高いLog D(すなわち、Log D max)に依存して、pHを6〜8に調整した。使用するPH範囲により、所望のエマルジョンの形成を確実にする。pH約8およびpH約6未満の条件は、エマルジョンの形成のためには好ましくない。600mlの蒸留水を入れた別個のビーカーをLog D maxの正確なpHに調節した。先に記載したように、分配係数(P)は、2つのほとんど非混和性の溶媒からなる2相系中に溶解した基質の平衡濃度(C
i)の比として定義され;この実験では、2つのほとんど非混和性の溶媒はn−オクタノールおよび水である。
【0231】
Po/wはC
N−オクタノール/C
水の比である。すなわち、分配係数(P)は、2つの濃度の商であり、通常はそのlog
10の形で与えられる(Log P)。特に、Log Pは、有機溶媒中の分子(中性形)の溶解度に関連する。すなわち、Log Pが4より大きい場合、分子は有機溶媒に非常に可溶であり、水に不溶である。一方、活性薬剤が0<Log P<1を有する場合、水に限定された量が可溶である。最後に、活性薬剤が0未満(<0)のLog Pを有する場合、水に非常に可溶であり、有機溶媒に不溶である。化合物の結晶格子エネルギーに依存して、水および有機溶媒の両方に低い溶解度を有する場合もある。これらの化合物(活性薬剤)はさらに、水相IIのpHをその化合物のLog D maxに調整することによって、本発明において使用することができる。さらに、かなり親油性の部分とイオン化可能な官能基とを有する活性薬剤は、適切なpHで高いLog Dを有し、化合物がイオン化可能なpHで高い溶解度を有する場合がある。さらに、親油性化合物は、それらの結晶格子エネルギーを破壊する可撓性側鎖を有してさらに水溶性になるか、または水性環境中で化合物に対する振動エントロピーを与え、水相IIのpHをその化合物のLog D maxに調整することによって本発明において使用することができる。
【0232】
評価される活性薬剤が異なる性質(酸性および塩基性)を有する2つ以上の官能基を有する場合、Log Dを使用する必要がある(Log Dは分配係数でもあるが、pHと関連している)。
【0233】
有機相調製
小さいエレンマイヤーフラスコ中の50mgのAGN TKIに、塩化メチレン5mlを添加した。活性薬剤が可溶化されていない場合、さらに5mlの塩化メチレンを添加した。それでも十分ではない場合、さらに5mlの塩化メチレンを添加した。450mgのPLGA 75/25(ポリラクチド75wt%、ポリグリコリドコポリマー25wt%)をこの溶液に添加した。完全に溶解した後か、または溶液がまだ濁っている状態であっても、わずかに粘性の高い溶液5mlを得るために、この相を、溶液上を流れる空気流で濃縮した。
【0234】
エマルジョン調製
高剪断力を有するインペラ付き小ビーカーに、1.5%のPVA溶液を、インペラがちょうど覆われるように、添加した。有機相を飽和してエマルジョンを形成するまで、2mlのCH
2Cl
2を激しく攪拌しながら添加した。調製した有機相を攪拌しながらゆっくりと添加した(上記参照)。
【0235】
水相IIを用いた共溶媒抽出
次いで、高剪断力攪拌を数秒間行なった後、600mlビーカーの水(水相II)を磁気攪拌しながらエマルジョンに添加した。エマルジョンのpHを、水相IIを添加することによって調整し(それによって、新しく作成されたTKI PLGA微粒子の水性懸濁物が形成し)、この懸濁物のpHを使用されるTKIのLog D maxのpHにする(例えば、表28に記載されるように)。水相IIは水であってよい。
【0236】
蒸発
空気流により、溶液を一晩かけて蒸発させ、微小球を硬化させた。
【0237】
遠心分離
遠心分離し、水ですすいだ後、凍結乾燥の前に、分析を行なって、顕微鏡外観および粒度を評価した。得られた粒子を45μm篩いサイズで篩過し、27G針を通過できる寸法を有するバッチ部分を選択した。一般に、微小球は、約30〜50ミクロンの寸法を有し、約40ミクロンのピーク直径分布を有する。
【0238】
凍結乾燥
微小球懸濁物をバイアルに集め、14時間凍結乾燥し、蓋をした。凍結乾燥機中で、凍結乾燥工程の間、容器は開けておき(5mlガラスバイアル)、サイクルの最後に真空を部分的に窒素交換し、窒素雰囲気下800mbarの圧力で容器を凍結乾燥機内で直接密閉した。
【0239】
この実験により、本発明の新規方法は、活性薬剤微小球を調製するために使用できることが示された。
【実施例9】
【0240】
インビトロでのTKI微小球の評価
さらなる実験を行なって、実施例8の方法によって製造されたTKI活性薬剤微小球のインビトロ放出プロフィールを決定した。実施例8の方法は、例えば約11wt%までのTKI活性薬剤をカプセル化した活性薬剤微小球の調製を可能にすることが見出された。
【0241】
実施例9において製造したTKI PLGA微小球についてのインビトロ放出プロフィールを以下のように決定した。放出媒体は、以下の4つの試薬を含有している:リン酸二ナトリウム12水和物(Na
2HPO
4 12H
2O);リン酸二水素カリウム(KH
2PO
4)塩化ナトリウム(NaCl)および;脱イオン水。リン酸二ナトリウム12水和物2.38g、リン酸二水素カリウム0.19g、および塩化ナトリウム8.0gを脱イオン水に溶解することによって放出媒体を調製した。次いで、この溶媒を用いて1000mlに希釈し、pHを7.4に調整した。
【0242】
TKI微小球50mgを透析管(Spectra/Por CE透析機 MWCO=50000Da、φ5mm、サンプル体積1ml、参照スペクトル 135222、またはその等価物)に入れ、放出媒体1.0mlを添加し、管を密閉した。50ml遠心管に、放出媒体50.0mlを添加した。透析管を遠心管に入れ、全体を沈積し、管をきつく密閉した。次いで、遠心管をシェーカー水浴に入れた(37℃/25rpm)。
【0243】
放出の各時点で、調製した放出媒体40.0mlをメスピペットを用いてピペットアウトし、新しい放出媒体40.0mlと入れ替えた。サンプリング時間は、T
0(時間0)、放出媒体を交換した24時間後、48時間後、5日後、8日後、12日後、16日後、19日後、22日後、および26日後を含んでいた。
【0244】
次いで、Waters(登録商標)XTerra Phenylクロマトグラフィーカラムを取り付け、水/氷酢酸(99.5/0.5)の傾斜濃度溶媒を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、製造した5つの異なるTKI PLGA微小球のそれぞれのインビトロ放出を決定した。検出は280nmのUV吸収によって行い、定量はピーク面積に基づいて行なった。
【0245】
図25は、製造した5つのTKI微小球についてのインビトロ放出プロフィールを示す。
【0246】
PLGA微小球ポリマーからのTKIの放出プロフィールに関連する因子としては、溶解媒体中のTKIの溶解度が挙げられる。全ての場合において、バーストは制限され、最大バースト量はカプセル化された活性薬剤全体の約1%である。
【0247】
この実験は、実施例8の方法を用いて製造されたTKI PLGA微小球が、28日を超える期間にわたってインビトロでTKIを放出可能であることを明らかにした。
【0248】
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0249】
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。