(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁素材で成ると共に複数の筒状部が片面に並設されたシート状部材と、前記複数の筒状部にそれぞれに挿通されると共に前記筒状部の軸方向に伸縮可能な紐状弾性部材と、前記紐状弾性部材の両端に設けられると共に前記筒状部の開口から表出した係合具とを備え、被覆対象物を前記シート状部材で覆った後、前記係合具を引っ張ることで、前記シート状部材で覆われた状態の前記被覆対象物が前記紐状弾性部材により締め付けられる絶縁用防具であって、
前記係合具は、前記紐状弾性部材の外径寸法よりも大きな内径寸法の弧状の内周面を有する引き掛け部と、この引き掛け部に連接し且つ前記紐状弾性部材と連結されたグリップ部とを備えると共に、
前記被覆対象物が前記シート状部材で覆われた状態を固定する固定手段として、前記引き掛け部の内周面と対峙する内側面に前記紐状弾性部材の引っ張り方向とは反対方向に暫時厚くなるように傾斜した楔形状の突起部材を有し、
前記引き掛け部の内側面は、前記紐状弾性部材の引っ張り方向に沿って前記紐状弾性部材から離れる方向に傾斜していると共に、
前記突起部材は、前記引き掛け部に対し当該引き掛け部に装着された前記紐状弾性部材の軸方向の双方に移動させることができることを特徴とする絶縁用防具。
絶縁素材で成ると共に複数の筒状部が片面に並設されたシート状部材と、前記複数の筒状部にそれぞれに挿通されると共に前記筒状部の軸方向に伸縮可能な紐状弾性部材と、前記紐状弾性部材の両端に設けられると共に前記筒状部の開口から表出した係合具とを備え、被覆対象物を前記シート状部材で覆った後、前記係合具を引っ張ることで、前記シート状部材で覆われた状態の前記被覆対象物が前記紐状弾性部材により締め付けられる絶縁用防具であって、
前記係合具は、前記被覆対象物が前記シート状部材で覆われた状態を固定する固定手段として、基部と、この基部から突出した3つのアーム部と、前記基部に連接し且つ前記紐状弾性部材と連結されたグリップ部とを備え、
前記3つのアーム部は、前記紐状弾性部材が前記3つのアーム部のうち所定のアーム部と他の2つのアーム部との間をいずれのアーム部にも接せずに直線状に通ることが可能なように三角状に配置されると共に、前記3つのアームを回転させることで、前記紐状弾性部材が蛇行しつつ前記所定のアーム部と前記他の2つのアーム部のいずれか又は双方に接することを特徴とする絶縁用防具。
【背景技術】
【0002】
この種の電線等を覆う絶縁用防具としては、例えば、特許文献1等に示されるように、一枚のシート状部材で構成された電線防護シートが既に公知となっている。特許文献1の電線防護シートでは、電線防護シートを折り曲げて電線をその間に挟んだ後、電線と電線防護シートの折り曲げ側部位との双方を挟み式クリップで挟持することにより、電線防護シートを電線に対し当該電線の軸方向にずれなく取り付ける方法が用いられていた。
【0003】
また、特許文献2等に示されるように、折り曲げ部とその両側に位置する板状部とで成り、電線、碍子、クランプ等を一度に覆うことができる逆U字状の防護用シートも既に公知となっている。特許文献2の防護用シートは、折り曲げ部の外面側に絶縁ヤット等で把持する第1把持部が設けられ、板状部の折り曲げ部とは反対側端(下端)及び折り曲げ部の両側に位置する側端に絶縁ヤット等で把持する第2把持部が設けられていると共に板状部の内面に仮止め部が形成されている。そして、第2把持部には接着部が形成されている。
【0004】
そして、特許文献2において、防護用絶縁シートの折曲部とは反対側の開放端同士を連接させる接着部として、面ファスナーや永久磁石が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
もっとも、電線防護シートの電線への取り付けのために特許文献1に示されるような挟みクリップを用いると、電線防護シートの電線の充電部への堅固な取り付けをするためには、複数の挟みクリップが必要となってしまい、電線防護シートの電線への取り付け作業が煩雑になるおそれがある。
【0007】
また、特許文献2の防護用シートの第2把持部同士を接着させる接着部として、特許文献3に示される面ファスナーや永久磁石を用いると、第2把持部同士の連接を堅固にするために、面ファスナーの接着性や永久磁石の磁性を相対的に高める必要があるので、防護用シート状部材の取り外しが困難になることが考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、取り付けのために挟みクリップ等の挟み具を用いることなく、且つ、開放側での接着のために面ファスナーや磁石等を用いることなく、充電部や接地体等の覆対象物に堅固に取り付けることが可能で、その取り外しも容易な絶縁用防具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る絶縁用防具は、絶縁素材で成ると共に複数の筒状部が片面に並設されたシート状部材と、前記複数の筒状部にそれぞれに挿通されると共に前記筒状部の軸方向に伸縮可能な紐状弾性部材と、前記紐状弾性部材の両端に設けられると共に前記筒状部の開口から表出した係合具とを備え、
被覆対象物を前記シート状部材で覆った後、前記係合具を引っ張ることで、前記シート状部材で覆われた状態の前記被覆対象物が前記紐状弾性部材により締め付けられる
絶縁用防具であって、前記係合具は、前記紐状弾性部材の外径寸法よりも大きな内径寸法の弧状の内周面を有する引き掛け部と、この引き掛け部に連接し且つ前記紐状弾性部材と連結されたグリップ部とを備えると共に、前記被覆対象物が前記シート状部材で覆われた状態を固定する固定手段として、前記引き掛け部の内周面と対峙する内側面に前記紐状弾性部材の引っ張り方向とは反対方向に暫時厚くなるように傾斜した楔形状の突起部材を有し、前記引き掛け部の内側面は、前記紐状弾性部材の引っ張り方向に沿って前記紐状弾性部材から離れる方向に傾斜していると共に、前記突起部材は、前記引き掛け部に対し当該引き掛け部に装着された前記紐状弾性部材の軸方向の双方に移動させることができることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
ここで、紐状弾性部材は、例えばゴム紐である。係合具は、紐状弾性部材を筒状部に挿通容易にするために、紐状弾性部材に対し着脱自在に設けられていても良い。被覆対象物とは、例えば充電した電線や金具等の充電部、接地物である。シート状部材には、絶縁ヤット等の間接活線作業用把持工具で把持することが可能な取手等の把持手段が設けられていても良い。更に、グリップ部は、絶縁ヤットコ等の把持機能を有する間接活線作業用工具で掴みやすいように、六角柱などの多角形の柱形状をなしている。更にまた、楔形の突起部材は、バネ等の弾性部材によって、紐状弾性部材の引っ張り方向とは反対方向に付勢されている。
【0011】
また、本発明に係る絶縁用防具は、絶縁素材で成ると共に複数の筒状部が片面に並設されたシート状部材と、前記複数の筒状部にそれぞれに挿通されると共に前記筒状部の軸方向に伸縮可能な紐状弾性部材と、前記紐状弾性部材の両端に設けられると共に前記筒状部の開口から表出した係合具とを備え、
被覆対象物を前記シート状部材で覆った後、前記係合具を引っ張ることで、前記シート状部材で覆われた状態の前記被覆対象物が前記紐状弾性部材により締め付けられる
絶縁用防具であって、前記係合具は、前記被覆対象物が前記シート状部材で覆われた状態を固定する固定手段として、基部と、この基部から突出した3つのアーム部と、前記基部に連接し且つ前記紐状弾性部材と連結されたグリップ部とを備え、前記3つのアーム部は、前記紐状弾性部材が前記3つのアーム部のうち所定のアーム部と他の2つのアーム部との間をいずれのアーム部にも接せずに直線状に通ることが可能なように三角状に配置されると共に、前記3つのアームを回転させることで、前記紐状弾性部材が蛇行しつつ前記所定のアーム部と前記他の2つのアーム部のいずれか又は双方に接することを特徴としている(請求項2)。
【0012】
ここで、紐状弾性部材は、例えばゴム紐である。係合具は、紐状弾性部材を筒状部に挿通容易にするために、紐状弾性部材に対し着脱自在に設けられていても良い。被覆対象物とは、例えば充電した電線や金具等の充電部、接地物である。シート状部材には、絶縁ヤット等の間接活線作業用把持工具で把持することが可能な取手等の把持手段が設けられていても良い。更に、このグリップ部も、絶縁ヤットコ等の把持機能を有する間接活線作業用工具で掴みやすいように、六角柱などの多角形の柱形状をなしている。更にまた、アーム部は、例えば円柱形状をしている。
【0013】
これらの双方の発明により、絶縁ヤットコ等の把持機能を有する間接活線作業用把持工具でシート状部材の把持部を把持して被覆対象物に近接させ、シート状部材で被覆対象物を覆った後、把持機能を有する間接活線作業用把持工具で任意の係合具を引っ張ることで、シート状部材で覆われた状態の被覆対象物は紐状弾性部材により締め付けられるので、被覆対がシート状部材で覆われた状態を仮保持することができ、シート状部材の開放端同士を面ファスナーや磁石等の接着部で接着する必要がなくなる。
そして、例えば係合具を他の係合具や近くの機器等に係合させることにより、被覆対象物が紐状弾性部材により締め付けられた状態が固定されるので、シート状部材で被覆対象が堅固に覆われた状態とすることもできる。このため、挟みクリップ等の挟み具による被覆対象物へのシート状部材の固定も不要となる。
【0014】
請求項1に記載の発明により、一方の係合具の引き掛け部の弧状の内周面に他方の係合具が設けられた紐状弾性部材を入れて他方の係合具を引っ張ると、楔形の突起部材の最も傾斜した部位は、紐状弾性部材により紐状弾性部材の引っ張り方向に押されて、紐状弾性部材の引っ張り方向と同方向に変位し、突起部材の最も傾斜した部位が紐状弾性部材に強く接せず、その間に隙間ができたりするので、突起部材が紐状弾性部材に対して規制手段とならず紐状弾性部材を円滑に引っ張って動かすことが可能となる。その一方で、係合具を引っ張る動作を停止すると、紐状弾性部材は、引っ張られて伸長した状態から復元しようとして、楔形状の突起部材の最も傾斜した部位を引っ張られる方向と反対方向に押すため、突起部材も紐状弾性部材が引っ張られる方向と反対方向に移動して、突起部材の最も傾斜した部位が紐状弾性部材に強く接するので、紐状弾性部材が引っ張られる方向と反対方向に変位するのを、突起部材で規制することが可能である。
【0015】
請求項2に記載の発明により、一方の係合具の引き掛け部の弧状の内周面に他方の係合具が設けられた紐状弾性部材を入れて他方の係合具を引っ張ることで、紐状弾性部材を引っ張るときには、3つのアーム部を、紐状弾性部材が直線状でも3つのアーム部のうち所定のアーム部と他の2つのアーム部との間をいずれのアーム部にも接せずに通ることが可能な状態に配置することにより、紐状弾性部材を円滑に引っ張って動かすことが可能である。その一方で、係合具を引っ張る動作を停止するときには、3つのアーム部を回転させて、紐状弾性部材が蛇行しつつ所定のアーム部及び他の2つのアーム部のいずれか又は双方に接した状態とすることで、紐状弾性部材が固定されて、紐状弾性部材が引っ張られる方向と反対方向に変位するのを規制することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る絶縁用防具によれば、絶縁ヤットコ等の把持機能を有する間接活線作業用把持工具でシート状部材の把持部を把持して被覆対象物に近接させ、シート状部材で被覆対象物を覆った後、把持機能を有する間接活線作業用把持工具で任意の係合具を引っ張ることで、シート状部材で覆われた状態の被覆対象物は紐状弾性部材により締め付けられるので、被覆対がシート状部材で覆われた状態を仮保持することができる。
そして、例えば係合具を他の係合具や近くの機器等に係合させることにより、被覆対象物が紐状弾性部材により締め付けられた状態が固定されるので、シート状部材で被覆対象が堅固に覆われた状態とすることもできる。
しかるに、シート状部材の開放端同士を面ファスナーや磁石等の接着部で接着する必要がなくなると共に、挟みクリップ等の挟み具による被覆対象物へのシート状部材の固定も不要となるので、部品点数の減少及び工数の削減を図ることが可能である。
【0017】
特に
請求項1に係る絶縁用防具によれば、一方の係合具の引き掛け部の弧状の内周面に他方の係合具が設けられた紐状弾性部材を入れて他方の係合具を引っ張る操作で、楔形の突起部材の最も傾斜した部位が紐状弾性部材により紐状弾性部材の引っ張り方向に押されて、紐状弾性部材の引っ張り方向と同方向に変位し、突起部材の最も傾斜した部位と紐状弾性部材とが強く接せず、その間に隙間ができたりするので、突起部材が紐状弾性部材に対して規制手段とならず紐状弾性部材を円滑に引っ張って動かすことができる。
そして、
請求項1に係る絶縁用防具によれば、係合具を引っ張る動作を停止するのみで、紐状弾性部材は、引っ張られて伸長した状態から復元しようとして、楔形の突起部材の最も傾斜した部位を引っ張られる方向と反対方向に押すため、突起部材も紐状弾性部材が引っ張られる方向と反対方向に移動して、突起部材の最も傾斜した部位が紐状弾性部材に強く接するので、紐状弾性部材が引っ張られる方向と反対方向に動くのを、突起部材で規制することができる。
しかるに、紐状弾性部材が引っ張られた状態を固定手段により固定することが可能である。
【0018】
特に
請求項2に係る絶縁用防具によれば、一方の係合具の引き掛け部の弧状の内周面に他方の係合具が設けられた紐状弾性部材を入れて他方の係合具を引っ張ることで、紐状弾性部材を引っ張るときには、3つのアーム部を、紐状弾性部材が直線状でも3つのアーム部のうち所定のアーム部と他の2つのアーム部との間をいずれのアーム部にも接せずに通ることが可能な状態に配置することで、紐状弾性部材を円滑に引っ張って動かすことができる。
そして、
請求項2に係る絶縁用防具によれば、係合具を引っ張る動作を停止するときには、3つのアーム部を回転させて、紐状弾性部材が蛇行しつつ所定のアーム部と他の2つのアーム部のいずれか又は双方に接した状態とすることで、紐状弾性部材が固定されて、紐状弾性部材が引っ張られる方向と反対方向に動くのを規制することができる。
しかるに、紐状弾性部材が引っ張られた状態を固定手段により固定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、被覆対象物への取り付け前の絶縁用防具を示した説明図であり、
図1(a)は、絶縁用防具の全体図、
図1(b)は、絶縁用防具のシート状部材の筒状部に紐状弾性部材が挿通した状態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、紐状弾性部材の両端に設けられた係合具の一例を示した説明図であり、
図2(a)は、係合具の斜視図、
図5(b)は、紐状弾性部材を係合具の引き掛け部に通して引っ張るときの楔形の突起部材の動きを示す断面図、
図5(c)は、伸長した紐状弾性部材が復元しようとするのを楔形の突起部材で規制する作用を示す断面図である。
【
図3】
図3は、被覆対象物の一例たる碍子に絶縁用防具を取り付ける工程を示した説明図である。
【
図4】
図4は、碍子に対し絶縁用防具のシート状部材を上方から被せて、係合具を紐状弾性部材に引き掛けることで、シート状部材の開放端同士を接合した状態を示した説明図である。
【
図5】
図5は、碍子に対し絶縁用防具のシート状部材を巻付けて、係合具を紐状弾性部材に連結させることで、シート状部材を締め付けた状態を示した説明図である。
【
図6】
図6は、紐状弾性部材の両端に設けられた係合具の他例を示した説明図であり、
図6(a)は、係合具の斜視図、
図6(b)は、紐状弾性部材を引っ張るときに、紐状弾性部材がアーム部間を直線状に延出した状態を示し、
図6(c)は、伸長した紐状弾性部材が復元しようとするのを回転させたアーム部で規制した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る絶縁用防具1について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1において、絶縁用防具1の全体形状の一例が示されている。この絶縁用防具1は、1つのシート状部材2と、シート状部材2に取り付けられた複数(この実施例では2つ)の紐状弾性部材3と、紐状弾性部材3の両端に設けられた係合具4とを備えている。
【0022】
シート状部材2は、絶縁素材からなるもので、肉厚が相対的に薄く、多種多様な形の被覆対象物であってもその全体を覆うことができるように可撓性を有している。シート状部材2を平面から見た形状は、
図1(a)では長方形状として図示されているが、この形状に限定されず、正方形状や台形状、平行四辺形状であっても良い。
【0023】
そして、シート状部材2の片面には、
図1(b)に示されるように、複数の筒状部21が一体形成されている。筒状部21は、長手方向の両側が開口した通孔22を有している。各筒状部21同士は、交差していなければ、平行に配置されていても、相互に近接し、或いは相互に離隔する方句に配置されていても良い。
【0024】
更に、この実施例では、
図1(a)や
図3に示されるように、間接活線作業の一環として、シート状部材2を被覆対象物に近接させたり、覆ったりするために、図示しない絶縁ヤット等の間接活線作業用工具で把持するための取手23が設けられている。取手23は、帯状体の長手方向の両端をシート状部材2に接続することで略逆U字状に形成されている。また、取手23は、この実施例では、シート状部材2の筒状部21と同じ片面に設けられている。取手23の数は、
図1等では1つであるが、2以上であっても良い。
【0025】
紐状弾性部材3は、筒状部21の内径寸法よりも小さな外径寸法を有すると共に筒状部21の軸方向に沿って伸縮することが可能な紐状のものであり、例えばゴム紐のようにゴム等が素材として用いられている。紐状弾性部材3の断面形状は、
図1(b)では円状となっている。そして、紐状弾性部材3の全長は、伸長していない状態でも、筒状部21の通孔22の長手方向の全長と同じかそれよりも長くなっている。
【0026】
紐状弾性部材3の両端に設けられた係合具4は、係合具4同士を係合し又は紐状弾性部材3に係合させるためのものであり、
図2では、その一例として、引き掛け部41と、この引き掛け部41に連接し且つ紐状弾性部材3と連結されたグリップ部42とを備えている。係合具4は、紐状弾性部材3を筒状部21の通孔22に挿通させやすいように紐状弾性部材3から着脱可能としても良い。
【0027】
グリップ部42は、
図2(a)に示されるように、引き掛け部41から、この引き掛け部41に装着された紐状弾性部材3に対し径方向に沿って延びているもので、絶縁ヤットコ等の間接活線作業用工具で把持しやすい形状、例えば六角柱形状などの多角柱形状をしている。
【0028】
引き掛け部41は、
図2に示されるように、紐状弾性部材3の側面の一部がガタつきなく当接することが可能なように、紐状弾性部材3の外径寸法よりも若干大きな内径寸法の弧状の内周面41aと、この内周面41aに対峙する位置に配された内側面41bとを有している。内側面41bは、紐状弾性部材3の引っ張り方向(
図2(b)の矢印方向)に沿って内周面41aに接した状態の紐状弾性部材3から離れる方向に傾斜している。そして、引き掛け部41の内側面41bには、
図2に示されるように、突起部材5が取り付けられている。
【0029】
突起部材5は、
図2(b)の白抜き矢印に示される、紐状弾性部材3の引っ張り方向とは反対方向に沿って厚みが暫時大きくなる方向に傾斜した楔形状(側方から見て直角三角形状)をしていると共に、引き掛け部41の内側面41bに接しつつ、紐状弾性部材3の軸方向に沿って所定の範囲にて移動(スライド)することが可能になっている。尚、突起部材5全体若しくは最も傾斜した部位(紐状弾性部材3に接する部位)は、紐状弾性部材3が破損等しないようにゴム等の柔軟な部材で形成されていても良い。また、突起部材5の側方から見た三角形状も、
図2に示される直角三角形状に限定されず、内側面41bに接する面を有すると共に内側面41bとは反対側に最も傾斜した部位を有する楔形状であればよい。
【0030】
この実施例では、突起部材5を所定の範囲において移動可能とするために、
図2(b)及び
図2(c)に示されるように、突起部材5の側面に突部51を設けると共に、引き掛け部41の内側面41bと交差する内側面に紐状弾性部材3の軸方向に延びる溝部43を形成し、突部51が溝部43に係合されつつ、この溝部43内を動くことができるようになっている。但し、突起部材5を適宜移動させることが可能であれば、他の構造を用いても良い。
【0031】
更に、この実施例では、突起部材5を紐状弾性部材3の
図2(b)に示す引っ張り方向と反対方向に引っ張るバネ52の一方端が突起部材5に取り付けられている。そして、バネ52の他方端は、内側面41bに固定部53を介して固定されている。尚、バネ52の代わりにゴム等の他の弾性部材を用いても良い。突起部材5は、通常時では、バネ52による引っ張りで、突部51が溝部43のうち紐状弾性部材3の引っ張り方向とは反対側端に位置し、これに伴い、突起部材5の最も傾斜した部位と内周面41aとの間隔が紐状弾性部材3の径寸法と同じか若干小さい状態になる。
【0032】
これにより、
図2(b)の矢印方向に紐状弾性部材3を引っ張ると、突起部材5の最も傾斜した部位が紐状弾性部材3により紐状弾性部材3の引っ張り方向に押されるので、バネ52の力に抗するかたちで、突部51が溝部43内を動き、突起部材5は、紐状弾性部材3の引っ張り方向と同方向(
図2(b)の白抜き矢印の方向)に変位する。これに伴い、突起部材5の最も傾斜した部位が紐状弾性部材3に強く接せず、突起部材5の最も傾斜した部位と紐状弾性部材3との間に隙間ができたりするので、突起部材5が紐状弾性部材3に対して規制手段とならず紐状弾性部材3を円滑に引っ張って動かすことが可能となる。
【0033】
そして、係合具4のグリップ部42を絶縁ヤットコ等で把持して紐状弾性部材3を引っ張る動作を停止するのみで、紐状弾性部材3は、引っ張られて伸長した状態から復元するために、
図2(c)の太線の矢印として示される方向に動こうとし、楔形の突起部材5の最も傾斜した部位を、紐状弾性部材3が引っ張られる方向と反対方向に押すこととなる。このため、バネ52の力を受けて、突部51が溝部43の上端まで動き、突起部材5も紐状弾性部材3が引っ張られる方向と反対方向(
図2(c)の白抜き矢印の方向)に変位して、突起部材5の最も傾斜した部位が紐状弾性部材3に強く接するので、紐状弾性部材3が引っ張られる方向と反対方向に動くのを、突起部材5で規制することが可能となる。
【0034】
このような構成の絶縁用防具1を被覆対象物の一例として電柱100から延びる腕金101、並びにこの腕金101と引き留めクランプが収納されたクランプカバー102との間に配置された碍子103、104を覆う工程について、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0035】
まず、
図3に示されるように、絶縁用防具1を略逆U字状に湾曲させて、図示しない絶縁ヤットコでシート状部材2の頂部に位置する取手23を掴み、腕金101、碍子103、104に対し上方から被せる。次に、係合具4のグリップ部42を絶縁ヤットコで掴み、各紐状弾性部材3の両端の係合具4、4の双方を引っ張る。これにより、紐状弾性部材3の両側が引っ張られて、シート状部材2で腕金101、碍子103、104を覆ったまま、紐状弾性部材3で腕金101、碍子103、104が締め付けられた状態となり、腕金101、碍子103、104に対してシート状部材2が仮覆い状態となる。最後に、一方の係合具4を紐状弾性部材3に連結することにより、紐状弾性部材3が引っ張られた状態が固定されるので、腕金101、碍子103、104に対するシート状部材2による覆い作業が完了する。
【0036】
次に、電柱100から延びる腕金101、並びにこの腕金101と引き留めクランプが収納されたクランプカバー102との間に配置された碍子103、104を覆う工程の他例について、
図5を用いて説明する。
【0037】
シート状部材2を腕金101、碍子103、104に対して巻回した後、最も外側に位置する一方の係合具4のグリップ部42を絶縁ヤットコで掴み、各紐状弾性部材3の両端の係合具4、4の一方のみを引っ張る。そして、紐状弾性部材3について、腕金101、碍子103、104に巻回したシート状部材2の外周を一周させる。これにより、シート状部材2で腕金101、碍子103、104を巻回したまま、紐状弾性部材3で腕金101、碍子103、104が締め付けられた状態となり、腕金101、碍子103、104に対してシート状部材2が仮覆い状態となる。最後に、シート状部材2の外周を一周した紐状弾性部材3に係合具4を連結することにより、紐状弾性部材3が引っ張られた状態が固定されるので、腕金101、碍子103、104に対するシート状部材2による覆い作業が完了する。
【0038】
図6では、係合具4の他の構成例が示されている。以下、この係合具4について説明する。尚、この係合具4を用いる絶縁用防具1のシート状部材2、紐状弾性部材3の構成は、先の実施例と同様であるので、図示せず且つその説明を省略する。
【0039】
係合具4は、基部44と、この基部44から突出した3つのアーム部45、46、47と、基部44に連接したグリップ部42とを備え、更にこの実施例では基部44から突出した連結部48を有している。グリップ部42は、基部44からアーム部45乃至47とは反対方向に延びている。連結部48は、紐状弾性部材3の一方端を基部44に連結させるためのものである。係合具4は、紐状弾性部材3を筒状部21の通孔22に挿通させやすいように、連結部48が紐状弾性部材3から着脱可能としても良い。
【0040】
3つのアーム部45、46、47は、
図6に示されるように、円柱状であると共に、紐状弾性部材3が3つのアーム部45、46、47のうちアーム部47とアーム部45、46とのそれぞれの間を通ることが可能なように三角状に配置されている。すなわち、この実施例では、
図6に示されるように、アーム部45とアーム部46とは、紐状弾性部材3の軸線と平行となるように配置されているのに対し、アーム部47は、紐状弾性部材3が鉛直方向に延びた配置となった場合に、アーム部45よりも下方でアーム部46よりも上方にずれた位置になるように配置されている。更には、アーム部45とアーム部47との間隔、アーム部47とアーム部46との間隔は、紐状弾性部材3を直線状にしてこれらの間に挿通させても、アーム部45、46、47と紐状弾性部材3とが接しない寸法になっている。
【0041】
連結部48は、この実施例では、
図6に示されるように、基部44の側面のうちアーム部47に対しアーム部45側に位置する側面から突出している。そして、連結部48は、下記するように、基部44ひいてはアーム部45乃至47を回転させるときに、これらのアーム部45乃至47で紐状弾性部材3を確実に固定する動きとするために、基部44の幅方向の中心に対していずれか一方にずれた位置に配置されている。
【0042】
これにより、
図6(b)に示されるように、紐状弾性部材3を引っ張るときには、紐状弾性部材3の一部を直線状として、アーム部45とアーム部47、アーム部47とアーム部46との間をいずれのアーム部45、46、47にも接せずに通ることが可能な状態に、係合具4と紐状弾性部材3の直線状の部位とを組み付けることにより、アーム部45、46、47が紐状弾性部材3の規制手段とはならないので、
図6(b)の矢印方向に紐状弾性部材3を円滑に引っ張って、引き下げる等のように動かすことが可能である。
【0043】
そして、紐状弾性部材3を引っ張る動作を停止するときには、基部44を回転させてアーム部45、46、47も回転させることにより、
図6(c)に示されるように、紐状弾性部材3が蛇行しつつアーム部45、46、47に接した状態とすることで、紐状弾性部材3が固定されるので、紐状弾性部材3が引っ張られる方向と反対方向に動こうとするのを、アーム部45、46、47で規制することが可能である。
【0044】
しかるに、
図6に示される係合具4でも、
図3や
図4に示されるように、腕金101、碍子103、104に対してシート状部材2で仮覆い状態とした後に、紐状弾性部材3を係合具4のアーム部47とアーム部45、46との間に直線状に通した後、アーム部47とアーム部45、46とを回転させることで、紐状弾性部材3が引っ張られた状態を固定することが可能である。