特許第5985561号(P5985561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985561
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】エレベータの群管理制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20160823BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B66B1/18 H
   B66B1/06 K
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-183956(P2014-183956)
(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-55993(P2016-55993A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 宜正
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−066471(JP,A)
【文献】 特開2009−057190(JP,A)
【文献】 特開2005−047646(JP,A)
【文献】 特開2013−124179(JP,A)
【文献】 特開2012−188215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 − 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の号機の運転を制御するエレベータの群管理制御装置において、
上記各号機毎に割当済みのホール呼びをキャンセルした場合に最終的に応答する階までの予測到着時間を算出する予測到着時間算出手段と、
この予測到着時間算出手段によって算出された予測到着時間に基づいて、上記各号機の中から休止対象とする号機を選出し、その号機に割り当てられていたホール呼びを他の号機に割当変更する割当制御手段と
を具備し、
上記予測到着時間算出手段は、
上記各号機毎に割当済みのホール呼びを少なくとも1つずつキャンセルした場合を想定して最終的に応答する階までの予測到着時間を算出し、
上記割当制御手段は、
上記予測到着時間算出手段によって算出された予測到着時間に基づいて、上記各号機の中で無方向状態になるまでの時間が最小の号機を休止対象とし、その号機に割り当てられていたホール呼びの中の上記無方向状態になるまでの時間を最小とするホール呼びを他の号機に割当変更することを特徴とするエレベータの群管理制御装置。
【請求項2】
上記割当制御手段は、
上記各号機の中で休止対象とする号機が複数台存在した場合には、割当済みのホール呼びの個数が少ない号機を優先的に選出することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの群管理制御装置。
【請求項3】
上記割当制御手段は、
上記各号機の中で休止対象とする号機が複数台存在した場合には、乗場の入口から遠い号機を優先的に選出することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの群管理制御装置。
【請求項4】
運行台数を設定する運行台数設定手段と、
現在の稼働台数を検出する稼働台数検出手段とをさらに具備し、
上記予測到着時間算出手段は、
上記運行台数設定手段によって設定された運行台数が上記稼働台数検出手段によって検出された稼働台数よりも多い場合に、上記各号機の中の現在稼働中の号機を対象にして、上記予測到着時間の算出処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの群管理制御装置。
【請求項5】
上記運行台数設定手段は、
予め時間帯毎に学習された交通需要に基づいて運行台数を設定することを特徴とする請求項記載のエレベータの群管理制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数台の乗りかごの運転を制御するエレベータの群管理制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高層ビルなどでは、複数台のエレベータ(乗りかご)を設置して、大量の輸送システムを実現している。一方、省エネの観点から、利用者の少ない閑散時間帯などに乗りかごの稼働台数を減らして運転することが行われている。例えば、通常の時間帯では8台の乗りかごを用いて運転し、閑散時間帯になったら、2台の乗りかごを休止状態として6台で運転を行う。
【0003】
なお、乗りかごが複数存在する場合に、乗りかご1台1台を「号機」と呼ぶ。また、乗場呼びが割り当てられた乗りかごのことを「割当号機」と呼ぶ。「乗場呼び」は、各階の乗場で登録された呼び情報のことであり、行先方向(上方向/下方向)と登録階の情報を有する。また、「かご呼び」とは、各号機のかご内で登録された呼び情報のことであり、行先階と登録号機の情報を有する。
【0004】
ここで、各号機は上述した乗場呼びやかご呼びに従って各階を移動している。したがって、稼働台数を減らす場合には、これらの呼びが早く無くなった号機を休止候補とするのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4177045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、稼働台数を減らすときの各号機の運転状況によっては、既に多数の呼びが割り当てられていることがある。このため、直ぐには稼働台数を減らすことができず、その間、電力が消費されることになる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、稼働台数を減らすときに、できるだけ早く休止対象号機を休止状態にして、その間の消費電力を抑えることのできるエレベータの群管理制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係るエレベータの群管理制御装置は、複数台の号機の運転を制御するエレベータの群管理制御装置において、上記各号機毎に割当済みのホール呼びをキャンセルした場合に最終的に応答する階までの予測到着時間を算出する予測到着時間算出手段と、この予測到着時間算出手段によって算出された予測到着時間に基づいて、上記各号機の中から休止対象とする号機を選出し、その号機に割り当てられていたホール呼びを他の号機に割当変更する割当制御手段とを具備し、上記予測到着時間算出手段は、上記各号機毎に割当済みのホール呼びを少なくとも1つずつキャンセルした場合を想定して最終的に応答する階までの予測到着時間を算出し、上記割当制御手段は、上記予測到着時間算出手段によって算出された予測到着時間に基づいて、上記各号機の中で無方向状態になるまでの時間が最小の号機を休止対象とし、その号機に割り当てられていたホール呼びの中の上記無方向状態になるまでの時間を最小とするホール呼びを他の号機に割当変更する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は第1の実施形態に係るエレベータの群管理制御装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は第1の実施形態におけるエレベータの群管理制御装置に用いられる学習テーブルの一例を示す図である。
図3図3は第1の実施形態におけるエレベータの群管理制御装置の稼働台数変更処理を示すフローチャートである。
図4図4は第1の実施形態における各号機の運行状態を示す図である。
図5図5は第1の実施形態における各号機の割当変更後の運行状態を示す図である。
図6図6は第2の実施形態におけるエレベータの群管理制御装置の稼働台数変更処理を示すフローチャートである。
図7図7は第2の実施形態における各号機の割当変更後の運行状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータの群管理制御装置の構成を示すブロック図であり、複数台のエレベータが群管理された構成が示されている。なお、ここで言う「エレベータ」とは、基本的には「乗りかご」のことであり、複数台ある場合には「号機」という言い方もする。図1の例では、A〜C号機の3台だけであるが、もっと多くの号機が群管理された構成であっても良い。
【0012】
図中の1a〜1cはエレベータ制御装置、2a〜2cは乗りかごである。エレベータ制御装置1aは、A号機の乗りかご2aの運転制御を行う。具体的には、エレベータ制御装置1aは、乗りかご2aを昇降動作させるための図示せぬモータ(巻上機)の制御やドアの開閉制御などを行う。B号機のエレベータ制御装置1b、C号機のエレベータ制御装置1cも同様である。これらのエレベータ制御装置1a〜1cは、コンピュータによって構成される。
【0013】
乗りかご2a〜2cは、モータ(巻上機)の駆動により昇降路内を昇降動作する。乗りかご2aの室内には、行先階釦、戸開釦、戸閉釦などを含む各種操作ボタンを有する操作盤3aが設置されている。これらの釦の信号は、A号機のエレベータ制御装置1aを介して群管理制御装置10に伝送される。
【0014】
同様に、乗りかご2bの室内には、行先階釦、戸開釦、戸閉釦などを含む各種操作ボタンを有する操作盤3bが設置されている。これらの釦の信号は、B号機のエレベータ制御装置1bを介して群管理制御装置10に伝送される。乗りかご2cの室内には、行先階釦、戸開釦、戸閉釦などを含む各種操作ボタンを有する操作盤3cが設置されている。これらの釦の信号は、C号機のエレベータ制御装置1cを介して群管理制御装置10に伝送される。
【0015】
また、各階の乗場(エレベータホール)には、ホール呼びを登録するためのホール釦4a,4b,4c…が設置されている。これらのホール釦4a,4b,4c…は、上方向釦と下方向釦からなり、利用者の行先方向に応じて、上方向釦または下方向釦を押下するように構成されている。なお、最下階では上方向釦、最上階では下方向釦だけで構成される。
【0016】
「ホール呼び」とは、各階の乗場に設置されたホール釦の操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。また、「かご呼び」とは、かご室内に設けられた行先階釦の操作により登録される呼びの信号のことであり、行先階と号機の情報を含む。
【0017】
群管理制御装置10は、各号機の運転を群管理制御するための装置であり、エレベータ制御装置1a〜1cと同様にコンピュータによって構成される。本実施形態において、この群管理制御装置10には、状態監視部11、呼び記憶部12、割当制御部13、運行台数設定部14、稼動台数検出部15、予測到着時間算出部16が備えられている。なお、これらの処理部は、実際にはソフトウェアあるいはソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより実現される。
【0018】
状態監視部11は、各号機の運転状態(かご位置、運転方向、戸開閉状態など)や、かご呼びの発生状況などを監視する。呼び記憶部12は、各階のホール釦4a,4b,4c…の操作によって登録されるホール呼びを記憶する。
【0019】
割当制御部13は、呼び記憶部12に新規に登録されたホール呼びが記憶された際に、所定の割当評価方式を用いて当該ホール呼びを割り当てる号機を選出し、その号機を割当号機として当該ホール呼びの登録階へ応答させる。上記割当評価方式としては、例えばファジイ方式やRTS(Real Time Scheduling)方式などがある。また、後述するように、割当制御部13は、ホール呼びを割当変更する機能を備えている。
【0020】
運行台数設定部14は、運行台数を設定する。例えば8台の号機が存在した場合に、省電力のために8台から6台に減らして運行する場合に用いられる。設定方法として、例えばビルの管理者がスイッチや端末等の操作により任意に設定することでも良いし、過去の交通需要を参考にして時間帯毎に適宜最適な運行台数を設定することでも良い。
【0021】
図2に交通需要の学習テーブル17を示す。この学習テーブル17には、所定の時間帯毎(この例では1時間毎)に平均未応答時間が記憶されている。「平均未応答時間」とは、ホール呼びが登録されてから割当号機がそのホール呼びの登録階に応答するまでの平均的な時間である。
【0022】
運行台数設定部14は、この学習テーブル17を参照することにより、平均未応答時間が短い場合には交通需要が少ない状況であると判定し、そのときの運行台数を現状よりも減らす。逆に平均未応答時間が長い場合には、運行台数設定部14は、交通需要が多い状況であると判定し、そのときの運行台数を現状よりも増やす。
【0023】
稼動台数検出部15は、状態監視部11から得られる各号機の運転状態情報に基づいて現在の稼動台数を検出する。「現在の稼動台数」とは、有方向(上方向/下方向)に運転可能状態にある号機である。すなわち現在上方向又は下方向へ走行中であるか、若しくは階床に着床中であるが、ホール呼び又はかご呼びを有していることにより他の階床への走行予定である号機(有効方向号機)の台数のことである。
【0024】
予測到着時間算出部16は、運行台数設定部14によって設定された運行台数が稼動台数検出部15によって検出された稼働台数よりも多い場合に、運行台数を減らすために以下のような予測到着時間の算出処理を行う。
【0025】
すなわち、予測到着時間算出部16は、各号機の中の現在稼働中の号機を対象にして、各号機毎に割当済みのホール呼びをキャンセルした場合を想定し、最終的に応答する階までの予測到着時間を算出する。
【0026】
割当制御部13は、この予測到着時間算出部16によって算出された予測到着時間に基づいて、各号機の中で無方向状態になるまでの時間が最小の号機を休止対象とし、その号機に割り当てられていたホール呼びを他の号機に割当変更する。
【0027】
次に、第1の実施形態の動作を説明する。
【0028】
図3は第1の実施形態における群管理制御装置10の稼働台数変更処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、コンピュータである群管理制御装置10が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0029】
例えば、時間帯毎の交通需要に応じて運行台数が適宜設定され、その設定された台数(運行設定台数)で各号機の運転が制御される。ここで、稼動台数検出部15によって検出される現在の稼動台数(有方向号機の台数)と運行設定台数とが比較される(ステップS11)。その結果、現在の稼動台数が運行設定台数より多かった場合、つまり、例えば8台から6台に減らして運行する場合に現在7台の号機が稼動中(有方向状態)である場合に(ステップS11のYes)、予測到着時間算出部16と割当制御部13を通じて以下のような処理が実行される。
【0030】
すなわち、まず、予測到着時間算出部16は、現在稼働中の各号機(有方向号機)を対象にして、これらの号機に既に割り当てられているホール呼びの全てをキャンセルする(ステップS12)。例えば、現在7台の号機が稼動中であれば、この7台の号機について、既割当のホール呼びの全てをキャンセルする。
【0031】
なお、ここで言う「既割当のホール呼びをキャンセルする」とは、実際に割当て済みのホール呼びをキャンセルしてしまうのではなく、計算上、ホール呼びがないものとして仮定することである。割当号機がホール呼びの登録階に応答した後、そのホール呼びが実際にキャンセルされる。 各号機に既割当のホール呼びの全てをキャンセルすると、予測到着時間算出部16は、各号機にかご呼びだけが登録されているものと仮定して、最終的に応答する階までの予測到着時間を算出し、その結果を割当制御部13に渡す(ステップS13)。
【0032】
図4に具体例を示す。
いま、A号機,B号機,C号機の3台が稼動中であり、その中の1台を休止させる場合を想定する。A号機に5階の上方向ホール呼び、B号機に15階の上方向ホール呼び、17階の上方向ホール呼び、20階の下方向ホール呼び、C号機に5階の下方向ホール呼びが割当済みであるとする。
【0033】
A号機については、10階のかご呼びと12階のかご呼びが行先階として登録されているので、10階で止まった後、最終的に12階に到着するまでの時間を予測する。詳しくは、現在位置(1階)から10階までの距離と運転速度、10階でのドアの開閉時間と、10階から12階までの距離と運転速度に基づいて、A号機が12階に到着したときの時間(予測)を算出する。
【0034】
B号機については、12階のかご呼びだけなので、現在位置(10階)から12階に到着するまでの時間を予測する。C号機については、10階と1階のかご呼びがあるので、現在位置(15階)から10階で止まった後、最終的に1階に到着するまでの時間を予測する。
【0035】
ここで、ホール呼びの全てをキャンセルしたときの各号機の予測到着時間をTa,Tb,Tcとする。例えば、Ta=80秒,Tb=20秒,Ta=100秒であった場合、B号機が最も早く最終応答階である12階に到着し、そこで乗客を降ろして無方向状態になる。「無方向状態になる」とは、上方向/下方向の運転がなく、かつ、ホール呼びが割り当てられておらず、現在の階で待機状態になることである。
【0036】
割当制御部13は、予測到着時間算出部16によって算出された各号機の予測到着時間に基づいて、無方向状態になるまでの時間が最小の号機を休止候補号機として選出する(ステップS14)。そして、割当制御部13は、休止候補号機として選出した号機に既割当のホール呼びの全てを他の号機に変更する(ステップS15)。
【0037】
図4の例であれば、B号機が最も早く無方向状態になるので、B号機が休止候補号機として選出される。また、B号機に割り当てられていた15階の上方向ホール呼び、17階の上方向ホール呼び、20階の下方向ホール呼びがA号機またはC号機に割当変更される。なお、割当変更後は、上記休止候補号機として選出されたB号機への新規ホール呼びの追加割当てが規制されているものとする。
【0038】
割当変更の状態を図5に示す。
この例では、B号機に割り当てられていた15階の上方向ホール呼び、17階の上方向ホール呼び、20階の下方向ホール呼びがA号機に割当変更されている。この場合、B号機は12階のかご呼びに応答した後(20秒後)に無方向状態になる。したがって、ホール呼びを割当変更しなかった場合の最終応答階(20階)までの到着時間を例えば100秒とすれば、100秒→20秒に短縮してB号機を速やかに休止させることができる。
【0039】
なお、どの号機に割当変更するのかは、一般的に知られている割当変更の技術を用いるものとし、ここではその詳しい説明は省略するものとする。ただし、一般的な割当変更は長待ちを防いで運行効率を改善する場合など用いられるものであるが、本実施形態では、稼動台数を減らすときの時間を短縮化する目的で用いられる。
【0040】
また、上記ステップS14において、該当する号機が複数台存在した場合、つまり、無方向状態になるまでの時間が最小となる号機が複数台存在した場合には、割当済みのホール呼びの個数が少ない号機を優先にして休止候補号機とする。これは、他号機への影響を考慮して割当変更の個数をできるだけ少なくするためである。
【0041】
また、乗場に各号機が配置されている場合に、乗場の入口から遠い位置に配置されている号機を優先して休止候補号機とすることでも良い。例えば、乗場の入口に近い方からA号機,B号機,C号機の順で配置されていれば、C号機を優先とする。これは、乗場の入口から遠い号機を休止しておけば、利用者は乗場の入口に近い号機を利用できて都合が良いからである。
【0042】
なお、上記の例では稼動台数を1台減らす場合を想定して説明したが、2台以上減らす必要があった場合には、上記ステップS11からの処理を繰り返すことで、休止候補号機を順次選出していくものとする。
【0043】
このように第1の実施形態によれば、既割当のホール呼びをキャンセルし、かご呼びのみで応答した場合の各号機の予測到着時間から最も早く無方向状態になる号機を休止候補号機として選出し、その号機に割り当てられていたホール呼びを他の号機に割当変更する。これにより、稼働台数を減らすときに、できるだけ早く休止対象号機を休止状態にして、その間に消費される電力を抑えることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0045】
予報灯仕様のエレベータシステムでは、ホール呼びの登録後に、そのホール呼びが割り当てられた号機の予報灯が点灯する。したがって、利用者は予報灯が点灯した号機の前で待てばよい。
【0046】
ところが、上記第1の実施形態のように既割当のホール呼びの全てをキャンセルして休止候補号機を選出すると、他の号機に割当変更したときに、各階で予報灯の点灯切り替えが発生してしまい、利用者に迷惑をかけることになる。そこで、第2の実施形態では、割当変更をできるだけ抑えて休止対象号機を選出するものである。
【0047】
群管理制御装置10の構成については上記第1の実施形態と同様であるため、ここではフローチャートを参照して第2の実施形態としての処理について説明する。
【0048】
図6は第2の実施形態における群管理制御装置10の稼働台数変更処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、コンピュータである群管理制御装置10が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0049】
例えば、時間帯毎の交通需要に応じて運行台数が適宜設定され、その設定された台数(運行設定台数)で各号機の運転が制御される。ここで、稼動台数検出部15によって検出される現在の稼動台数(有方向号機の台数)が運行設定台数より多かった場合に(ステップS21のYes)、予測到着時間算出部16と割当制御部13を通じて以下のような処理が実行される。
【0050】
すなわち、まず、予測到着時間算出部16は、現在稼働中の各号機(有方向号機)を対象にして、これらの号機に既に割り当てられているホール呼びを1つずつキャンセルする(ステップS22)。
【0051】
なお、ここでいう「既に割り当てられているホール呼びを1つずつキャンセルする」とは実際に1つずつホール呼びをキャンセルするのではなく、計算上、ホール呼びがないものとして仮定することである。割当号機がホール呼びの登録階に応答した後、そのホール呼びが実際にキャンセルされる。
【0052】
そして、予測到着時間算出部16は、各号機について、残りのホール呼びとかご呼びが登録されているものと仮定して、最終的に応答する階までの予測到着時間を算出し、その結果を割当制御部13に渡す(ステップS23)。これをホール呼びの個数分繰り返し、予測到着時間算出部16は、各パターンでの予測到着時間を求める(ステップS24)。
【0053】
図4の例で説明すると、
A号機については、5階の上方向ホール呼びをキャンセルするパターンだけであり、そのパターンでの予測到着時間を求める。このときの予測到着時間をTa−1とする。
B号機については、15階の上方向ホール呼び、17階の上方向ホール呼び、20階の下方向ホール呼びをそれぞれ1つずつキャンセルする3つのパターンがあり、それぞれのパターンの予測到着時間を求める。このときの予測到着時間をTb−1(15階のホール呼びをキャンセルした場合),Tb−2(17階の呼びをキャンセルした場合),Tb−3(20階の呼びをキャンセルした場合)とする。
【0054】
C号機については、5階の下方向ホール呼びをキャンセルするパターンだけであり、そのパターンの予測到着時間を求める。このときの予測到着時間をTc−1とする。
【0055】
なお、B号機については、かご呼びだけでなく、ホール呼びを含めた形で予測到着時間を算出するので、ホール呼びに応答した後の派生呼びも考慮に入れることが好ましい。
【0056】
すなわち、例えばB号機が15階の上方向ホール呼びに応答した場合、15階から乗った利用者が16階〜20階のいずれかのかご呼びを登録することが考えられる。これを「派生呼び」と言う。この派生呼びについての考え方は、RTS(Real Time Scheduling)と呼ばれる割当方式で既に提案されているため、ここではその詳しい説明を省略するものとする。RTSは、現在割り当てられている呼びが将来の呼びに与える影響と、将来の呼びが今までに割当した全ての未応答の呼びに与える影響を考慮して、各号機の運行を予測、評価する方式である。
【0057】
割当制御部13は、これらのパターン毎に得られた予測到着時間に基づいて、無方向状態になるまでの時間が最小の号機を休止候補号機として選出する(ステップS25)。そして、割当制御部13は、休止候補号機として選出した号機に既割当のホール呼びの中で無方向状態になるまでの時間を最小とするホール呼びを他の号機に変更する(ステップS26)。
【0058】
すなわち、B号機の20階の下方向ホール呼びをキャンセルした場合のパターンが無方向状態になるまでの時間を最小とする場合には、B号機を休止候補号機として選出する。このとき、B号機に割り当てられていた20階の下方向ホール呼びがA号機またはC号機に割当変更される。なお、割当変更後は、上記休止候補号機として選出されたB号機への新規ホール呼びの追加割当てが規制されているものとする。
【0059】
割当変更の状態を図7に示す。
この例では、B号機に割り当てられていた20階の下方向ホール呼びがA号機に割当変更されている。この場合、B号機は17階のホール呼びに応答した後、そこから乗車した利用者がかご呼びとして登録した行先階までの運転サービスを終えたときに無方向状態となる。
【0060】
なお、上記の例では、各号機についてホール呼びを1つだけキャンセルする場合を想定して説明したが、ホール呼びを2つ以上キャンセルする場合も同様である。
【0061】
このように第2の実施形態によれば、既割当てのホール呼びの全てではなく、少なくとも1つのホール呼びをキャンセルして休止候補号機を選出することでも、稼働台数を減らすときに、できるだけ早く休止対象号機を休止状態にして、その間に消費される電力を抑えることができる。さらに、ホール呼びをキャンセルする数が少ないので、割当変更を抑えることでき、他号機への影響や、予報灯仕様の場合の点灯切り替えを軽減することができる。
【0062】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、稼働台数を減らすときに、できるだけ早く休止対象号機を休止状態にして、その間の消費電力を抑えることのできるエレベータの群管理制御装置を提供することができる。
【0063】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1a〜1c…エレベータ制御装置、2a〜2c…乗りかご、3a〜3c…操作盤、4a,4b,4c…ホール釦、10…群管理制御装置、11…状態監視部、12…呼び記憶部、13…割当制御部、14…運行台数設定部、15…稼動台数検出部、16…予測到着時間算出部、17…学習テーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7