(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献1に記載のインサート成形方法では、下金型210の固定ピン取り付け孔212のキー突条214と、固定ピン216に形成したキー溝222を嵌合して、固定ピン216を金型206内に固定する必要がある。
【0014】
また、固定ピン216の雄ネジ218に係合するように、雌ネジブッシュ202の雌ネジ220をネジ込んで、固定ピン216に雌ネジブッシュ202を装着する必要がある。
【0015】
従って、固定ピン216の金型206内への固定と、固定ピン216に雌ネジブッシュ202を装着する、2つの部品(固定ピン216、雌ネジブッシュ202)を、金型206内へ組み込む必要があるため、煩雑な工程が必要となり手間がかかることになり、コストも高くつくことになる。
【0016】
また、雌ネジブッシュ202の雌ネジ220を固定ピン216の雄ネジ218に組み込む際、また、インサート成形の完了の後に、雌ネジブッシュ202の雌ネジ220を固定ピン216の雄ネジ218から取り外す際に、ネジ係合であるため、これらの組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることになる。
【0017】
さらに、1つの部品を組み込む時と比較して、部品自体の公差、嵌め合い公差が、2部品分必要となり、完成時の寸法安定性が悪くなり、正確な流量を制御することができないことにもなる。
【0018】
また、特許文献2(特開2008−291985号公報)には、ネジ部材のインサート成形方法が開示されており、金型側に、キー突条、ネジ部材側に、キー溝を設けることによって、位置出しを行い、ねじ切り開始位置とストッバーの位置を対応させて、ネジ部材をインサート成形する製造する方法が開示されている。
【0019】
この特許文献2の製造方法で、位置出しを行った場合には、ネジ部材の全長のぱらつきの影響を受け、閉弁規制ストッバーと全閉ストッパーの当接部の当たり方にばらつきが発生する可能性がある。
【0020】
さらに、特許文献2の製造方法では、雄ネジ部材と雌ネジ部材の2部品が、このようなインサート成形により製造されている。従って、このようなインサート成形によって製造した雄ネジ部材と雌ネジ部材とから構成した送りねじ位置決め構造の場合、2部品の組み合わせであるため、正確な位置出し精度を達成することができない。
【0021】
ところで、従来、永久磁石からなるローターマグネットを備えたこの種の電動弁、すなわち、流量制御弁では、所定の弁開度での流量が仕様上決まっており、それを達成させるためには、ランダムに組立てられたローターのストッパー位置と弁位置(閉弁位置、開弁位置)を、―定の位置に調整することが必要である。
【0022】
このようなステッピングモーターを駆動部としたアクチュエータにおいて、送りネジを用いた作動機構を備える場合、ローターの回転をストッパーを用いて規制することにより、送りネジの駆動範囲を制御できるようになる。
【0023】
例えば、ステッピングモーターにより動作する開閉機構には、送りネジが使用されるが、閉動作時において、ネジの過剰な回転による締結を防止するためには、ストッパー(回転規制手段)を設ける必要がある。しかも、ステッピングモーターにより正確な開閉動作を行うには、ネジ閉時に位置出しを正確に行わなければならない。
【0024】
このため、特許文献2(特開2008−291985号公報)、特許文献3(特開2012−62938号公報)などにおいて、様々な送りネジの位置決め構造が提案されている。
【0025】
図21は、このような従来のネジ送り機構300の雌ネジ部材304の縦断面図、
図22は、
図21のA方向の端面図、
図23は、従来のネジ送り機構300の作動を説明する概略図、
図24は、
図23のネジ送り機構300のネジ締め付け時の部分拡大図である。
【0026】
図21、
図23に示したように、ネジ送り機構300は、雄ネジ部材302と、雌ネジ部材304とから構成されている。
【0027】
そして、雌ネジ部材304は、略筒状の雌ネジ本体306を備えており、この雌ネジ本体306の内部には、内周側に雌ネジ308が形成された筒状の雌ネジブッシュ310が嵌着されている。また、
図21、
図22に示したように、雌ネジ本体306の一端側に形成したフランジ312上には、雌ネジ側ストッパー314が外方に突設するように形成されている。
【0028】
一方、
図23に示したように、雄ネジ部材302は、略円柱形状であり、大径の基端部316と、この基端部316の先端に形成されたフランジ318を備えている。また、フランジ318の先端側には、雌ネジ本体306の内周に挿入される小径部320を備えている。さらに、小径部320の先端側の外周には、雌ネジブッシュ310の雌ネジ308と螺合する雄ネジ322が形成されている。
【0029】
そして、雄ネジ部材302のフランジ318には、先端側に突設するように形成された雄ネジ側ストッパー324が形成されている。
【0030】
このように構成されるネジ送り機構300では、図示しないステッピングモーターにより、雄ネジ部材302が、
図23の矢印Bで示したように回転することによって、雄ネジ部材302の先端に形成された雄ネジ322が、雌ネジ部材304の雌ネジブッシュ310に形成された雌ネジ308に螺合する。
【0031】
これによって、雄ネジ部材302が、
図23の矢印C方向に移動することによって、例えば、電動弁などの制御弁において、流量を制御するようになっている。
【0032】
そして、
図24に示したように、ネジ締め付け時、例えば、弁閉時において、ネジの過剰の回転による締結を防止するために、雄ネジ部材302と雌ネジ部材304とが締結してしまう直前に、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324が、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314に当接して、ネジ送り機構300の駆動範囲を規制するように構成されている。
【0033】
しかしながら、従来のネジ送り機構の製造方法においては、ネジ駆動範囲の設定は、送りネジである雄ネジ部材302の雄ネジ322、雌ネジ部材304の雌ネジ308のネジ位置を手動で調整した状態でストッパー部を組み立てていた。
【0034】
従って、このような従来のネジ送り機構300では、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314のそれぞれのストッパー高さが、不適切な状態で組まれた場合に、下記のような問題が生じる。
【0035】
すなわち、例えば、
図25に示したように、ネジ締め付け時、例えば、弁閉時において、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314との当接距離R、すなわち当接面積が、小さい場合には、耐久性が低下して繰り返しの使用によって、雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ側ストッパー314とが摩耗損傷してしまう。
【0036】
これによって、
図26に示したように、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314とが当接しない状態となって、ストッパーとして機能せず、雄ネジ部材302が過剰に回転して、締結状態となり、ネジ送り機構300が正常に作動しないおそれがある。
【0037】
また、不適切な状態で組まれた場合に、当初から
図26に示したように、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314とが当接しない状態となって、ストッパーとして機能せず、雌ネジ部材304が過剰に回転して、締結状態となり、ネジ送り機構300が正常に作動しない場合もある。
【0038】
さらに、
図27に示したように、ネジ締め付け時、例えば、弁閉時において、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314とが当接する前に、雄ネジ部材302が過剰に回転して、締結状態となり、ネジ送り機構300が正常に作動しないおそれがある。
【0039】
このように従来のネジ送り機構300では、不適切な状態で組まれた場合に、ネジの駆動範囲がばらついて、上記のような問題が発生していた。
【0040】
また、従来のネジ送り機構300では、製作に時間がかかり、位置出し機構を備えた送りネジを構成する部品点数が多くなり、複雑な工程が必要でコストも高くつくことになっていた。
【0041】
本発明は、このような現状に鑑み、簡単な操作で、ネジブッシュのネジ部の所定の位置が金型内で所定の位置となり、ローターのストッパー位置と弁位置(閉弁位置、開弁位置)を、―定の位置に調整するように、ネジブッシュを金型内に位置決め固定でき、しかも、組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることがなく、完成時の寸法安定性が良好で、正確な流量を制御することができる雌ネジ部材をインサート成形によって一体化するインサート成形方法、および、ネジブッシュの位置決め方法、ならびに、インサート成形方法によって製造された雌ネジ部材を備えた電動弁を提供することを目的とする。
【0042】
また、本発明は、ネジ締め付け時、例えば、弁閉時において、雄ネジ部材の雄ネジ側ストッパーと、雌ネジ部材の雌ネジ側ストッパーとの当接距離、すなわち、当接面積が常に一定で、雄ネジ部材が過剰に回転して、締結状態となることがなく、ネジ送り機構を正常に作動することができ、しかも、部品点数が少なく、複雑な工程が不要でコストも低減できるネジ送り機構を製造できる雌ネジ部材をインサート成形によって一体化するインサート成形方法を提供することを目的とする。
【0043】
また、本発明は、上記のインサート成形方法によって製造された、ネジブッシュとガイド部材とから構成されている雌ネジ部材、および、上記のインサート成形方法に用いられ、ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部を備えたネジブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の電動弁は、
雄ネジ部材と雌ネジ部材とが螺合することによって、雄ネジ部材と雌ネジ部材との相対的な回転角度を規制するように構成したネジ送り機構に用いられ、溶融樹脂を金型内に射出することによって、ネジブッシュとガイド部材とから構成される雌ネジ部材をインサート成形によって一体化するインサート成形方法であって、
前記金型側に形成した金型側位置決め部と、前記ネジブッシュのネジ部の所定の位置に対応するように、前記ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部とを嵌合して、金型内に前記ネジブッシュを配置して、
溶融樹脂を金型内に射出することによって、前記ネジブッシュとガイド部材とから構成される雌ネジ部材をインサート成形によって一体化し、
前記一体化した雌ネジ部材を取り出し、
前記雌ネジ部材のネジ部に螺合するネジ部と、前記雌ネジ部材のストッパーに当接する基準当接面と、基準目盛とが形成されたネジ検査治具を用いて、
前記取り出した雌ネジ部材のネジ部に、前記ネジ検査治具のネジ部を螺合して、ネジ検査治具の基準当接面を雌ネジ部材のストッパーに当接させて、
前記雌ネジ部材のストッパーとネジ検査治具の基準目盛とのずれ量に従って、前記金型の位置を調整して、インサート成形を行うインサート成形方法によって製造された雌ネジ部材を備えたことを特徴とする。
【0045】
また、本発明の雌ネジ部材は、
雄ネジ部材と雌ネジ部材とが螺合することによって、雄ネジ部材と雌ネジ部材との相対的な回転角度を規制するように構成したネジ送り機構に用いられ、溶融樹脂を金型内に射出することによって、ネジブッシュとガイド部材とから構成される雌ネジ部材をインサート成形によって一体化するインサート成形方法であって、
前記金型側に形成した金型側位置決め部と、前記ネジブッシュのネジ部の所定の位置に対応するように、前記ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部とを嵌合して、金型内に前記ネジブッシュを配置して、
溶融樹脂を金型内に射出することによって、前記ネジブッシュとガイド部材とから構成される雌ネジ部材をインサート成形によって一体化し、
前記一体化した雌ネジ部材を取り出し、
前記雌ネジ部材のネジ部に螺合するネジ部と、前記雌ネジ部材のストッパーに当接する基準当接面と、基準目盛とが形成されたネジ検査治具を用いて、
前記取り出した雌ネジ部材のネジ部に、前記ネジ検査治具のネジ部を螺合して、ネジ検査治具の基準当接面を雌ネジ部材のストッパーに当接させて、
前記雌ネジ部材のストッパーとネジ検査治具の基準目盛とのずれ量に従って、前記金型の位置を調整して、インサート成形を行うインサート成形方法によって製造されたネジブッシュとガイド部材とから構成されていることを特徴とする。
【0046】
また、本発明のネジブッシュは、
雄ネジ部材と雌ネジ部材とが螺合することによって、雄ネジ部材と雌ネジ部材との相対的な回転角度を規制するように構成したネジ送り機構に用いられ、溶融樹脂を金型内に射出することによって、ネジブッシュとガイド部材とから構成される雌ネジ部材をインサート成形によって一体化するインサート成形方法であって、
前記金型側に形成した金型側位置決め部と、前記ネジブッシュのネジ部の所定の位置に対応するように、前記ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部とを嵌合して、金型内に前記ネジブッシュを配置して、
溶融樹脂を金型内に射出することによって、前記ネジブッシュとガイド部材とから構成される雌ネジ部材をインサート成形によって一体化し、
前記一体化した雌ネジ部材を取り出し、
前記雌ネジ部材のネジ部に螺合するネジ部と、前記雌ネジ部材のストッパーに当接する基準当接面と、基準目盛とが形成されたネジ検査治具を用いて、
前記取り出した雌ネジ部材のネジ部に、前記ネジ検査治具のネジ部を螺合して、ネジ検査治具の基準当接面を雌ネジ部材のストッパーに当接させて、
前記雌ネジ部材のストッパーとネジ検査治具の基準目盛とのずれ量に従って、前記金型の位置を調整して、インサート成形を行うインサート成形方法に用いられ、前記ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部を備えたことを特徴とする。
【0047】
また、本発明では、前記雌ネジ部材が、電動弁に用いられ、雄ネジ部材と雌ネジ部材とが螺合することによって、弁体が弁座に対して離接するように構成したネジ送り機構に用いられ、ネジブッシュとガイド部材とから構成される雌ネジ部材であることを特徴とする。
【0048】
このように構成することによって、金型側に形成した金型側位置決め部と、ネジブッシュのネジ部の所定の位置に対応するように、ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部とを嵌合して、金型内にネジブッシュを配置することができる。
【0049】
従って、簡単な操作で、ネジブッシュのネジ部の所定の位置が金型内で所定の位置となり、ローターのストッパー位置と弁位置(閉弁位置、開弁位置)を、―定の位置に調整するように、ネジブッシュを金型内に位置決め固定でき、しかも、組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることがなく、コストを低減することができる。
【0050】
また、金型側に形成した金型側位置決め部と、ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部だけで良いので、部品点数が特許文献1に比較して少なくなる。その結果、溶融樹脂を金型内に射出することによって、ネジブッシュとガイド部材とから構成される雌ネジ部材をインサート成形によって一体化した際に、完成時の寸法安定性が良好であり、これにより、例えば、正確な流量を制御することが可能な電動弁を提供することができる。
【0051】
すなわち、例えば、ガイド部材に形成した弁閉ストッパーの位置と、ネジブッシュのネジ部の所定の位置とが対応するように正確に、しかも、簡単な操作で金型内で位置決めできる。これにより、ローターのストッパー位置と閉弁位置を、―定の位置に調整することができ、正確な流量を制御することが可能な電動弁を提供することができる。
また、取り出した雌ネジ部材のネジ部に、前記ネジ検査治具のネジ部を螺合して、ネジ検査治具の基準当接面を雌ネジ部材のストッパーに当接させて、雌ネジ部材のストッパーとネジ検査治具の基準目盛とのずれ量に従って、金型の位置を調整して、インサート成形を行っている。
【0052】
従って、正確な位置出し精度を達成することができ、その結果、ネジ締め付け時、例えば、弁閉時において、雄ネジ部材の雄ネジ側ストッパーと、雌ネジ部材の雌ネジ側ストッパーとの当接距離、すなわち、当接面積が常に一定で、雄ネジ部材が過剰に回転して、締結状態となることがなく、ネジ送り機構を正常に作動することができる。
しかも、部品点数が少なく、複雑な工程が不要でコストも低減できるネジ送り機構を製造できる。
また、本発明は、前記金型側位置決め部が、金型側に形成した突設部であり、前記ネジ部材側位置決め部が、前記金型側位置決め部の突設部に対応して形成されたスリットであることを特徴とする。
【0053】
このように構成することによって、金型側に形成した突設部からなる金型側位置決め部を、金型側位置決め部の突設部に対応して形成されたスリットからなるネジ部材側位置決め部に嵌合するだけで、簡単な操作で、ネジブッシュのネジ部の所定の位置が金型内で所定の位置となるように、ネジブッシュを金型内に位置決め固定でき、しかも、組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることがない。
【0054】
また、本発明は、前記金型側位置決め部が、金型側に形成したスリットであり、前記ネジ部材側位置決め部が、前記金型側位置決め部のスリットに対応して形成された突設部であることを特徴とする。
【0055】
このように構成することによって、金型側に形成したスリットからなる金型側位置決め部を、金型側位置決め部のスリットに対応して形成された突設部からなるネジ部材側位置決め部に嵌合するだけで、簡単な操作で、ネジブッシュのネジ部の所定の位置が金型内で所定の位置となるように、ネジブッシュを金型内に位置決め固定でき、しかも、組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることがない。
【0056】
また、本発明は、前記ネジブッシュが、雌ネジブッシュであることを特徴とする。
【0057】
このように構成することによって、雌ネジブッシュのネジ部の所定の位置が金型内で所定の位置となるように、雌ネジブッシュを金型内に位置決め固定でき、しかも、組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることがなく、これにより、ローターのストッパー位置と弁位置(閉弁位置、開弁位置)を、―定の位置に調整することができ、正確な流量を制御することが可能な電動弁を提供することができる。
【0058】
また、本発明は、前記ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部が、前記ネジブッシュのネジ部の所定の位置が弁閉位置を基準となるように形成されていることを特徴とする。
【0059】
このように構成することによって、ガイド部材に形成した弁閉ストッパーの位置と、ネジブッシュのネジ部の所定の位置とが対応するように正確に、しかも、簡単な操作で金型内で位置決めできる。これにより、ローターのストッパー位置と閉弁位置を、―定の位置に調整することができ、正確な流量を制御することが可能な電動弁を提供することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、簡単な操作で、ネジブッシュのネジ部の所定の位置が金型内で所定の位置となり、ローターのストッパー位置と弁位置(閉弁位置、開弁位置)を、―定の位置に調整するように、ネジブッシュを金型内に位置決め固定でき、しかも、組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることがなく、コストを低減することができる。
【0061】
また、金型側に形成した金型側位置決め部と、ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部だけで良いので、部品点数が特許文献1に比較して少なくなる。その結果、溶融樹脂を金型内に射出することによって、ネジブッシュとガイド部材とから構成されるネジ部材をインサート成形によって一体化した際に、完成時の寸法安定性が良好であり、これにより、例えば、正確な流量を制御することが可能な電動弁を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0064】
図1は、本発明のインサート成形方法で製造したネジ部材として、雌ネジ部材を備えた電動弁の弁開状態の縦断面図、
図2は、
図1の雌ネジ部材の縦断面図、
図3は、本発明のインサート成形方法の概略を説明する金型の縦断面図、
図4は、
図3の金型側に形成した金型側位置決め部と、雌ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部とを嵌合する状態を説明する斜視図、
図5は、金型側に形成した金型側位置決め部と、雌ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部の別の実施例を説明する概略平面図である。
【0065】
図1において、符号10は、全体で本発明のインサート成形方法で製造した雌ネジ部材24を備えた電動弁を示している。
【0066】
図1に示したように、本発明の電動弁10は、弁本体12を備えており、弁本体12内には弁室14が形成されている。そして、この弁室14に連通するように、入口継手である第1の配管部材16と、出口継手である第2の配管部材18とが装着されている。
【0067】
また、第1の配管部材16の上部には、弁本体12に弁座20が固定されており、この弁座20に弁ポート22が設けられている。
【0068】
さらに、雌ネジ部材24は、ガイド部材40を備えており、このガイド部材40の下端には、弁座20に嵌着する嵌合部24bが形成されており、ガイド部材40の嵌合部24bを弁座20に嵌着することにより、雌ネジ部材24が弁座20に固定されている。これにより、弁本体12内に、雌ネジ部材24が固定されている。
【0069】
また、ガイド部材40の嵌合部24bの上方に一定間隔離間して、弁室14とローター室28を隔てる隔壁26が形成されており、この隔壁26の端部30が弁本体12の内壁に嵌合することにより、弁本体12内にガイド部材40が固定されている。
【0070】
さらに、弁本体12の上端部に、固定金具32を嵌合することにより、ガイド部材40が弁本体12に固定されている。
【0071】
なお、この実施例では、固定金具32を用いて、ガイド部材40を弁本体12に固定するように構成したが、例えば、溶着、溶接、接着、かしめ加工などの公知の固定方法で、ガイド部材40を弁本体12に固定するように構成することも可能である。
【0072】
一方、このガイド部材40の嵌合部24bと隔壁26との間に、主流路34が形成されており、隔壁26には、ニードル弁36が挿通される挿通孔38が形成されている。
【0073】
また、この隔壁26の上部には、略筒状のガイド部40aが延設されており、ガイド部材40のガイド部40aには、内周に雌ネジ50aが形成された略円筒形状の雌ネジブッシュ50が固定されている。この雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aに噛合するように、ローター軸52の下端に形成された雄ネジ部54の雄ネジ54aが螺着されている。
【0074】
このローター軸52に形成されたニードル弁挿通孔56に、ニードル弁36が挿通され、ニードル弁36の基端部に形成された拡径部36aにより、ニードル弁36の抜け落ちが防止されるようになっている。
【0075】
また、ローター軸52の上端の外周には、永久磁石からなる略円筒形のローターマグネット58が、嵌合部58aにより嵌着されている。このローターマグネット58の下端には、弁開ストッパー60が内周方向に突設され、ガイド部材40のガイド部40aの上端に外周方向に突設された弁開ストッパー62に、このローターマグネット58の弁開ストッパー60が、弁開時に当接することにより、ストッパーの機能をするように構成されている。
【0076】
同様に、ローター軸52の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー64に、ガイド部材40のガイド部40a上端に形成された弁閉ストッパー66が、弁閉時に当接することにより、ストッパーの機能をするように構成されている。
【0077】
また、ローター軸52の上部には、バネ受け金具68が、ローター軸52の上端に嵌合されているとともに、ニードル弁36の基端部に形成された拡径部36aの上方に、バネ受け70が装着されている。そして、これらのバネ受け金具68とバネ受け70との間に圧縮状態のコイルバネ72が介装され、ニードル弁36を弁座20の方向に突出するように付勢するよう構成されている。
【0078】
なお、
図1に示したように、ニードル弁36の拡径部36aの上端部36bは、ばね受け70との接触面積が小さくなるように設定されている。
【0079】
すなわち、摩擦モーメントを小さくし、摩擦抵抗力を低減している。
【0080】
さらに、弁本体12の上部には、有底筒形状のケース74が溶着などによって固定されており、このケース74の内部に、これらのローターマグネット58などからなる駆動部76が収容されるとともに、ケース74の内部にローター室28が形成されている。
【0081】
また、ケース74の外周に、
図1に示したように、コイル78が装着されている。
【0082】
このように構成される電動弁10は、
図1の弁開状態においては、コイル78により送りパルスを発生させることによって、ローターマグネット58が回転し、このローターマグネット58とともに、ローター軸52、ニードル弁36が一体的に回転して、ローター軸52の雄ネジ部54の雄ネジ54aと、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aとが噛合して案内され、ニードル弁36が上方に移動する。これにより、ニードル弁36の下端が、弁座20の弁ポート22から離間して、弁開状態となるように構成されている。
【0083】
この際、ローターマグネット58の回転にともなって、ガイド部材40のガイド部40aの上端に外周方向に突設された弁開ストッパー62に、ローターマグネット58の弁開ストッパー60が、弁開時に当接することにより、上方位置が規制されるようになっている。
【0084】
そして、この状態から、コイル78により逆の送りパルスを発生させることによって、ローターマグネット58が逆方向に回転し、このローターマグネット58とともに、ローター軸52、ニードル弁36が一体的に回転して、ローター軸52の雄ネジ部54の雄ネジ54aと、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aとが噛合して案内され、ニードル弁36が下方に移動する。これにより、ニードル弁36の下端が、弁座20の弁ポート22に当接して、弁閉状態となるように構成されている。
【0085】
この際、ローターマグネット58の回転にともなって、ガイド部材40のガイド部40a上端に形成された弁閉ストッパー66に、ローター軸52の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー64が、弁閉時に当接することにより、下方位置が規制されるようになっている。
【0086】
ところで、このように構成される電動弁10においては、正確な流量を制御するために、弁閉状態となった際に、ガイド部材40のガイド部40a上端に形成された弁閉ストッパー66に、ローター軸52の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー64が、弁閉時に当接した状態で、ローター軸52の雄ネジ部54の雄ネジ54aと、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aとが所定の位置になるようにする必要がある。
【0087】
このためには、雌ネジ部材24において、ガイド部材40のガイド部40a上端に形成された弁閉ストッパー66の位置と、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定位置、例えば、ネジ切り開始位置とが、正確に対応するように配置する必要がある。
【0088】
このため、本発明のインサート成形方法では、下記のようなインサート成形を用いている。
【0089】
以下に、本発明のインサート成形方法について、
図3〜
図4に基づいて説明する。
【0090】
本発明のインサート成形方法では、金型80が、左右一対の左側スライド金型82と、右側スライド金型84とを備えており、これらの左側スライド金型82と右側スライド金型84の間の上部には、固定用金型86が配置されている。
【0091】
一方、これらの左側スライド金型82と右側スライド金型84の間の下部には、可動金型88が配置されている。
【0092】
そして、これらの金型の間に、キャビティー90が形成され、このキャビティー90は、ガイド部材40のガイド部40aに対応するキャビティー90aと、ガイド部材40の隔壁26に対応するキャビティー90bと、ガイド部材40の嵌合部24bに対応するキャビティー90cとが形成されている。
【0093】
図3〜
図4に示したように、金型側、すなわち、固定用金型86には、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの上部の段部50bに嵌合する部分に、
図4に示したように、金型側位置決め部を構成する略半円形状の突設部31が形成されている。
【0094】
一方、雌ネジブッシュ50には、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定の位置に対応するように、ネジ部材側位置決め部を構成する略半円形状の窪み形状のスリット51が形成されている。
【0095】
なお、この実施例では、固定用金型86の突設部31、雌ネジブッシュ50のスリット51を略半円形状としたが、この形状は特に限定されるものではなく、矩形形状、三角形、多角形など適宜変更可能である。
【0096】
そして、金型側に形成した金型側位置決め部である、固定用金型86に形成した突設部31と、ネジ部材側位置決め部である、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51とを嵌合するように、金型80内に雌ネジブッシュ50を配置する。
【0097】
この場合、固定用金型86に形成した突設部31に、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51を嵌合する方法としては、特に限定されるものではなく、手作業であっても、例えば、ロボットを用いて配置するようにしてもよい。
【0098】
この状態で、ゲート92を介して、溶融樹脂を金型80内に射出することによって、雌ネジブッシュ50とガイド部材40とから構成される雌ネジ部材24をインサート成形によって一体化する。
【0099】
この場合、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51を、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定の位置に対応するように形成するには、例えば、スリット51の位置が、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aのネジ切り開始位置から所定の位置(例えば、所定の角度位置関係)になるように、形成すればよい。
【0100】
すなわち、雌ネジ部材24において、弁閉位置基準となるように、ガイド部材40のガイド部40a上端に形成された弁閉ストッパー66の位置と、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定位置、例えば、ネジ切り開始位置とが、所定の位置関係になるように、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51と、固定用金型86に形成した突設部31とを形成すればよい。
【0101】
このように構成することによって、弁閉状態において、ガイド部材40のガイド部40a上端に形成された弁閉ストッパー66に、ローター軸52の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー64が、弁閉時に当接した状態で、ニードル弁36の下端が、弁座20の弁ポート22に当接して、弁閉状態となり、正確な流量を制御することが可能な電動弁を提供することができる。
【0102】
すなわち、ガイド部材40に形成した弁閉ストッパーの位置と、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定の位置とが対応するように正確に、しかも、簡単な操作で金型内で位置決めできる。これにより、ローターのストッパー位置と閉弁位置を、―定の位置に調整することができ、正確な流量を制御することが可能な電動弁を提供することができる。
【0103】
また、金型80の側に形成した金型側位置決め部である、固定用金型86に形成した突設部31と、ネジ部材側位置決め部である、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51とを嵌合して、金型80内に雌ネジブッシュ50を配置することができる。
【0104】
従って、簡単な操作で、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定の位置が金型80内で所定の位置となり、ローターのストッパー位置と弁位置(閉弁位置、開弁位置)を、―定の位置に調整するように、雌ネジブッシュ50を金型80内に位置決め固定でき、しかも、組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることがなく、コストを低減することができる。
【0105】
また、金型80側に形成した金型側位置決め部である、固定用金型86に形成した突設部31と、ネジ部材側位置決め部である、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51だけで良いので、部品点数が特許文献1に比較して少なくなる。その結果、溶融樹脂を金型内に射出することによって、雌ネジブッシュ50とガイド部材40とから構成される雌ネジ部材24をインサート成形によって一体化した際に、完成時の寸法安定性が良好であり、これにより、正確な流量を制御することが可能な電動弁を提供することができる。
【0106】
なお、この実施例では、弁閉位置基準となるように、ガイド部材40のガイド部40a上端に形成された弁閉ストッパー66の位置と、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定位置(ネジ切り開始位置)とが、所定の位置関係になるように、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51と、固定用金型86に形成した突設部31とを形成したが、弁開位置を基準とすることも可能である。
【0107】
すなわち、雌ネジ部材24において、弁開位置基準となるように、ガイド部材40のガイド部40aの上端に外周方向に突設された弁開ストッパー62の位置と、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定位置、例えば、ネジ切り終端位置とが、所定の位置関係になるように、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51と、固定用金型86に形成した突設部31とを形成すればよい。
【0108】
また、この実施例では、
図4に示したように、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51と、固定用金型86に形成した突設部31とをそれぞれ、1個形成したが、それぞれ複数個形成することも可能である。
【0109】
例えば、
図5(A)に示したように、中心角度αが、180°となるように、それぞれ2個の雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51と、固定用金型86に形成した突設部31を形成することもできる。
【0110】
また、
図5(B)に示したように、中心角度αが、120°と等しくなるように、それぞれ3個の雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51と、固定用金型86に形成した突設部31を形成することによって、雌ネジブッシュ50と固定用金型86の位置合わせが正確になる。
【0111】
なお、
図5(A)、
図5(B)の場合には、これらの複数のスリット51と突設部31を、それぞれ大きさが相違するようにするか、もしくは、それぞれ異なる形状とするか、または、これらを適宜組み合わせることによって、ねじ切り開始位置と弁閉ストッパー66との位置関係がずれてしまう可能性を防止でき、パルス制御において位置とパルスの関係がずれてしまうことがないので望ましい。
【0112】
この場合、
図5(A)に示した実施例では、これらの複数のスリット51と突設部31が、異なる形状である場合を示しており、
図5(B)に示した実施例では、これらの複数のスリット51と突設部31が、それぞれ大きさが異なる場合を示している。
【0113】
さらに、この場合、
図5(C)に示したように、中心角度α、β、γのようにずらして、それぞれ3個の雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51と、固定用金型86に形成した突設部31を形成することによって、嵌合状態が規制されるので、位置合わせを誤ることなく、雌ネジブッシュ50と固定用金型86の位置合わせが、さらに正確になる。
【0114】
なお、
図5では、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51のみを図示したが、これらの雌ネジブッシュ50のスリット51の位置、形状に対応して、固定用金型86に突設部31を形成するようにすればよい。
【実施例2】
【0115】
図6は、本発明の別の実施例のインサート成形方法の概略を説明する金型側に形成した金型側位置決め部と、雌ネジブッシュに形成されたネジ部材側位置決め部とを嵌合する状態を説明する斜視図である。
【0116】
この実施例のインサート成形方法は、実施例1に示したインサート成形方法と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0117】
この実施例のインサート成形方法では、
図6に示したように、金型側、すなわち、固定用金型86には、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの上部の段部50bに嵌合する部分に、
図6に示したように、金型側位置決め部を構成する略三角形形状の窪み形状のスリット33が形成されている。
【0118】
一方、雌ネジブッシュ50には、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定の位置に対応するように、ネジ部材側位置決め部を構成する略三角形形状の突設部53が形成されている。
【0119】
なお、この実施例では、固定用金型86のスリット33、雌ネジブッシュ50の突設部53を略三角形形状としたが、この形状は特に限定されるものではなく、略半円形状、矩形形状、多角形など適宜変更可能である。
【0120】
このように構成することによって、金型側に形成したスリット33からなる金型側位置決め部を、金型側位置決め部のスリット33に対応して形成された突設部53からなるネジ部材側位置決め部に嵌合するだけで、簡単な操作で、雌ネジブッシュ50の雌ネジ50aの所定の位置が金型内で所定の位置となるように、雌ネジブッシュ50を金型内に位置決め固定でき、しかも、組み込み、取り外し作業に時間と手間がかかることがない。
【実施例3】
【0121】
図7は、本発明のネジ送り機構の雌ネジ部材の縦断面図、
図8は、
図7のA方向の端面図、
図9は、本発明のネジ送り機構の作動を説明する概略図、
図10は、
図9のネジ送り機構のネジ締め付け時の部分拡大図である。
【0122】
図7〜
図10において、符号100は、全体で本発明のネジ送り機構を示している。
【0123】
図7、
図9に示したように、ネジ送り機構100は、雄ネジ部材102と、雌ネジ部材104とから構成されている。
【0124】
そして、雌ネジ部材104は、略筒状の雌ネジ本体106を備えており、この雌ネジ本体106の内部には、内周側に雌ネジ108が形成された筒状の雌ネジブッシュ110が嵌着されている。また、
図7、
図8に示したように、雌ネジ本体106の一端側に形成したフランジ112の外方に略扇形状に突設した突設部112a上には、雌ネジ側ストッパー114aが外方に突設するように形成されている。さらに、
図7、
図8に示したように、雌ネジ本体106の一端側に形成したフランジ112の外方に略扇形状に突設した突設部112b上には、全開ストッパー114bが形成されている。
【0125】
一方、
図9に示したように、雄ネジ部材102は、略円柱形状であり、大径の基端部116と、この基端部116の先端に形成されたフランジ118を備えている。また、フランジ118の先端側には、雌ネジ本体106の内周に挿入される小径部120を備えている。さらに、小径部120の先端側の外周には、雌ネジブッシュ110の雌ネジ108と螺合する雄ネジ122が形成されている。
【0126】
そして、雄ネジ部材102のフランジ118には、先端側に突設するように形成された雄ネジ側ストッパー124が形成されている。
【0127】
このように構成されるネジ送り機構100では、図示しないステッピングモーターにより、雄ネジ部材102が、
図9の矢印Bで示したように回転することによって、雄ネジ部材102の先端に形成された雄ネジ122が、雌ネジ部材104の雌ネジブッシュ110に形成された雌ネジ108に螺合する。
【0128】
これによって、雄ネジ部材102が、
図9の矢印C方向に移動することによって、例えば、電動弁などの制御弁において、流量を制御するようになっている。
【0129】
ところで、従来のネジ送り機構300について説明したように、
図25に示したように、ネジ締め付け時、例えば、弁閉時において、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314との当接距離R、すなわち当接面積が、小さい場合には、耐久性が低下して繰り返しの使用によって、雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ側ストッパー314とが摩耗損傷してしまう。
【0130】
これによって、
図26に示したように、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314とが当接しない状態となって、ストッパーとして機能せず、雄ネジ部材302が過剰に回転して、締結状態となり、ネジ送り機構300が正常に作動しないおそれがある。
【0131】
また、不適切な状態で組まれた場合に、当初から
図26に示したように、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314とが当接しない状態となって、ストッパーとして機能せず、雌ネジ部材304が過剰に回転して、締結状態となり、ネジ送り機構300が正常に作動しない場合もある。
【0132】
さらに、
図27に示したように、ネジ締め付け時、例えば、弁閉時において、雄ネジ部材302の雄ネジ側ストッパー324と、雌ネジ部材304の雌ネジ側ストッパー314とが当接する前に、雄ネジ部材302が過剰に回転して、締結状態となり、ネジ送り機構300が正常に作動しないおそれがある。
【0133】
このため、本発明では、下記の実施例4のようにして、本発明のネジ送り機構100の雌ネジ部材104をインサート成形方法によって製造する。
【実施例4】
【0134】
図11〜
図14は、本発明のネジ送り機構100の雌ネジ部材104をインサート成形方法によって製造する方法を説明する概略図、
図15は、本発明のネジ送り機構100の雌ネジ部材104を雌ネジ検査治具を用いて検査する状態を説明する概略図、
図16は、本発明のネジ送り機構100の雌ネジ部材104を雌ネジ検査治具を用いて検査する状態を説明する概略図、
図17は、本発明のネジ送り機構100の雌ネジ部材104を雌ネジ検査治具を用いて検査する状態を説明する概略図、
図18は、本発明のネジ送り機構100の雌ネジ部材104をインサート成形方法によって製造する方法を説明する概略図である。
【0135】
図11、
図18において、符号140は、全体で本発明のネジ送り機構100の雌ネジ部材104をインサート成形方法によって製造するインサート成形金型を示している。
【0136】
図11、
図18に示したように、インサート成形金型140は、可動側の可動型141と、スライド金型142と、固定側の固定側金型144とから構成されている。また、可動型141には、ネジ金型146を備えている。
【0137】
そして、スライド金型142は、上下一対の上金型142aと下金型142bに分離可能になっており、上金型142aと下金型142bを閉じることによって形成されたキャビティー148内に、予め成形された雌ネジブッシュ110が、所定の位置に配置されるようになっている。
【0138】
また、可動型141は、上下一対の上金型141aと下金型141bに分離可能になっており、上金型141aと下金型141bを閉じることによって形成された挿入孔150内に、図示しない駆動機構によって、ネジ金型146が、出没および回転ができるように構成されている。
【0139】
さらに、ネジ金型146は、雌ネジ部材104の雌ネジブッシュ110に形成された雌ネジ108に対応する雌ネジ形成部152が形成されている。
【0140】
このように構成されるインサート成形金型140を用いて、ネジ送り機構100の雌ネジ部材104をインサート成形方法によって製造する方法は、下記のようにして行われる。
【0141】
先ず、
図11に示したように、スライド金型142の上金型142aと下金型142bを閉じることによって形成されるキャビティー148内に、予め成形された金属製または樹脂製の雌ネジブッシュ110を、所定の位置に配置する。なお、図示しないが、上記実施例1、実施例2と同様に、金型側位置決め部、ネジ部材側位置決め部がそれぞれ設けられており、金型内の所定の位置に配置できるように構成されている。
【0142】
そして、ネジ金型146を、可動型141の上金型141aと下金型141bを閉じることによって形成された挿入孔150内に、所定の位置まで、また、所定の回転角度で、挿入する。
【0143】
この状態で、キャビティー空間154内に、別途図示しないゲートを介して、溶融樹脂を注入することによって、雌ネジブッシュ110の外周側に、雌ネジ本体106を一体成形することによって、雌ネジ部材104を成形する。
【0144】
そして、
図12の矢印で示したように、可動側の動側の可動型141と、スライド金型142と、ネジ金型146とを、一体的に固定側の固定側金型144から離間する方向に移動させる。
【0145】
この状態で、
図13の矢印で示したように、スライド金型142の上金型142aと下金型142bを分離する。そして、図示しないが、可動型141の上金型141aと下金型141bを分離して、
図14の矢印で示したように、ネジ金型146を、スライド金型142から離間する方向に移動して、成形品である雌ネジ部材104を取り出す。
【0146】
そして、このようにいったん成形した雌ネジ部材104について、
図15〜
図17に示したように、以下のようにして、雌ネジ検査治具160を用いて検査する。
【0147】
図15に示したように、雌ネジ検査治具160は、雌ネジ検査治具本体162と、雌ネジ検査治具本体162より小径で、雄ネジ部材102の雌ネジ本体106の内周に挿入される小径部120に相当する小径部164が形成されている。さらに、小径部164の先端側の外周には、雌ネジブッシュ110の雌ネジ108と螺合する雄ネジ部材102の雄ネジ122に相当する雄ネジ166が形成されている。
【0148】
そして、
図15の矢印で示したように、雌ネジ検査治具160を回転することによって、雌ネジ検査治具160の先端に形成された雄ネジ166を、雌ネジ部材104の雌ネジブッシュ110に形成された雌ネジ108に螺合させる。
【0149】
これにより、
図16に示したように、雌ネジ部材104に設けた雌ネジ側ストッパー114aが、雌ネジ検査治具160の雌ネジ検査治具本体162の端部168に当接するようにする。
【0150】
この状態で、雌ネジ検査治具160の雌ネジ検査治具本体162に形成された目盛170の中心線170aと、雌ネジ部材104に設けた雌ネジ側ストッパー114aとの関係を検査する。
【0151】
すなわち、
図16に示したように、雌ネジ部材104に設けた雌ネジ側ストッパー114aと、雌ネジ検査治具160の目盛170の中心線170aが合致している状態では、
図10に示したように、ネジ締め付け時、例えば、弁閉時において、ネジの過剰の回転による締結を防止するために、雄ネジ部材102と雌ネジ部材104とが締結してしまう直前に、雄ネジ部材102の雄ネジ側ストッパー124が、雌ネジ部材104の雌ネジ側ストッパー114aに当接して、ネジ送り機構100の駆動範囲を規制することができる状態となっている。
【0152】
すなわち、この状態では、
図7、
図8に示したように、雌ネジ部材104に設けた雌ネジ側ストッパー114aの位置P1に対して、雌ネジ部材104の雌ネジブッシュ110に形成された雌ネジ108のネジ切始め位置P2が、中心角度αが一定の角度になる。
【0153】
また、この状態では、
図7、
図8に示したように、雌ネジ部材104に設けた雌ネジ側ストッパー114aの高さ位置Q1に対して、雌ネジ部材104の雌ネジブッシュ110に形成された雌ネジ108のネジ切始め高さ位置Q2との距離Sが、一定の距離になる。
【0154】
従って、この状態であれば、ネジ金型146の挿入位置および回転位置が適切な状態である。このため、このままの状態で連続して、インサート成形を行えばよい。
【0155】
これに対して、
図17に示したように、雌ネジ部材104に設けた雌ネジ側ストッパー114aと、雌ネジ検査治具160の目盛170の中心線170aが一致していない状態では、不適切な状態である。このため、雌ネジ部材104に設けた雌ネジ側ストッパー114aと、雌ネジ検査治具160の目盛170の中心線170aの位置とのずれの回転目盛T分、
図18の矢印で示したように、ネジ金型146の回転角度を調整することによって、ネジ金型146の挿入位置および回転位置が適切な状態になるようにする。
【0156】
従って、この状態であれば、ネジ金型146の挿入位置および回転位置が適切な状態である。このため、このままの状態で連続して、インサート成形を行えばよい。
【0157】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、固定用金型86に形成した突設部31に、雌ネジブッシュ50に形成されたスリット51を嵌合する場合には、下方から雌ネジブッシュ50を固定用金型86に装着する必要があるが、
図3の金型を上下逆に配置して、雌ネジブッシュ50を固定用金型86に装着しやすいように、上方から雌ネジブッシュ50を固定用金型86に装着することも可能である。
【0158】
また、
図3の金型を、いわゆる横置き型としたり、多数個取りの金型とすることも可能である。
【0159】
さらに、上記実施例では、ネジ部材として、雌ネジ部材を用いた実施例を示したが、ネジ部材として、雄ネジ部材を用いることも可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。