(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置によれば、被処理物を連続的に処理することができ、バッチ式と比べて生産効率を高めることができる。
しかし、加熱炉内にコンベアを設置するために、上記チェーンの設置スペースの他に、このチェーンをガイドするレールも必要となり、被処理物の大きさとは関係のない要因によって加熱炉が大きくなり、装置が全体として大型化する。このため、加熱に要する消費エネルギーが増大化する。
また、上記コンベアが備える上記チェーンは炉内を走行するため、コンタミネーションの発生源となるおそれがあり、被処理物の処理品質を低下させるおそれもある。
【0007】
このように、上記従来の装置では、エネルギーロスが大きくかつ、処理品質と生産効率が両立しないという問題を有している。
【0008】
本発明は、板状の被処理物に対して拡散処理を行う連続拡散処理装置であって、複数の前記被処理物を搭載して搬送する搬送台と、前記搬送台を搬入する搬入口から当該搬送台を搬出する搬出口まで直線状に延びるとともに内部で拡散処理を行う筒状の加熱炉と、前記搬送台を一つずつ前記搬入口から前記加熱炉内に押し込むことで搬入し、当該搬入した搬送台によって先に前記加熱炉内に搬入されている搬送台を前記搬出口側へ押し込み、複数の前記搬送台を列状として前記加熱炉内を移動させる移動装置と、前記加熱炉内に設けられるとともに、前記搬送台の通過を許容する開口が形成され、前記搬入口から前記搬出口までの間を、前記搬送台の移動方向に沿う長さ寸法と同一寸法に設定された複数の処理ゾーンに区画するための、前記加熱炉の内壁から内側に向かって伸びている
板状の複数の第一の隔壁部材と、を備え、前記移動装置は、前記搬送台を一台ずつ前記加熱炉内に押し込むことで列状に並ぶ各搬送台を前記処理ゾーン単位で間欠的に移動させるものであり、前記搬送台は、搬送方向の一端側に前記第一の隔壁部材の開口を通過可能に、幅および高さ方向に延びている第二の隔壁部材を備え、前記搬送台が前記処理ゾーンで静止したときに前記第一の隔壁部材と前記第二の隔壁部材の一部が少なくとも鉛直方向に沿って重なることで、前記複数の第一の隔壁部材の開口を閉鎖して隣接する処理ゾーン同士の間を仕切
り、前記第二の隔壁部材は、前記搬送台の両端に設けられ、前記搬送台が処理ゾーンで静止したときに、当該搬送台の両端に設けられた第二の隔壁部材は前記第一の隔壁部材と少なくとも一部が鉛直方向に沿って重なることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、板状の被処理物に対して拡散処理を行う連続拡散処理装置であって、複数の前記被処理物を搭載して搬送する搬送台と、前記搬送台を搬入する搬入口から当該搬送台を搬出する搬出口まで直線状に延びるとともに内部で拡散処理を行う筒状の加熱炉と、前記搬送台を一つずつ前記搬入口から前記加熱炉内に押し込むことで搬入し、当該搬入した搬送台によって先に前記加熱炉内に搬入されている搬送台を前記搬出口側へ押し込み、複数の前記搬送台を列状として前記加熱炉内を移動させる移動装置と、前記加熱炉内に設けられるとともに、前記搬送台が通過可能な開口が形成され、前記搬入口から前記搬出口までの間を、前記搬送台の移動方向に沿う長さ寸法とほぼ同一寸法に設定された複数の処理ゾーンに区画している複数の第一の隔壁部材と、を備え、前記移動装置は、前記搬送台を一台ずつ前記加熱炉内に押し込むことで列状に並ぶ各搬送台を前記処理ゾーン単位で間欠的に移動させるものであり、前記搬送台は、前記処理ゾーンで静止したときに前記複数の第一の隔壁部材の開口を閉鎖して隣接する処理ゾーン同士の間を仕切る第二の隔壁部材を、搬送方向の少なくとも一端側に備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、加熱炉内を第一の隔壁部材で区画することで異なる処理条件に設定された処理ゾーン単位で、列状に並ぶ各搬送台に搭載された被処理物を間欠的に移動させるので、各処理ゾーンでの処理を同時にかつ連続して行うことができ、生産効率を向上させることができる。
また、搬送台は、いずれかの処理ゾーンで静止したときに第一の隔壁部材の開口を閉鎖して隣接する処理ゾーン同士の間を仕切る第二の隔壁部材を搬送方向の少なくとも一端側に備えているので、各処理ゾーンごとで異なる処理条件の処理を行ったとしても、適切に各処理ゾーンを隔離できる。この結果、各処理ゾーンの炉内雰囲気を維持でき、品質の高い被処理物を得ることができる。
さらに本発明では、搬送台を一つずつ搬入口から加熱炉内に押し込むことで搬入して加熱炉内の搬送台を移動させるので、上記従来例のようにコンベアといった機械的な要素部品を炉内で走行させる必要がなく、装置の大型化を抑制して加熱に要する消費エネルギーを抑制できるのと同時に、品質低下の原因となるコンタミネーションの発生を抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、装置の大型化を抑制することでエネルギーロスを低減しつつ、生産効率の向上と処理品質の向上とを両立させることができる。
【0011】
また、前記第二の隔壁部材は、前記搬送台の両端に設けられ
、前記搬送台が処理ゾーンで静止したときに、当該搬送台の両端に設けられた第二の隔壁部材は前記第一の隔壁部材と少なくとも一部が鉛直方向に沿って重なるのが好ましく、この場合には、より適切に各処理ゾーンを隔離して、各処理ゾーンの炉内雰囲気を維持できる。
【0012】
さらに、上記の場合、前記搬送台には、自己の第二の隔壁部材と、当該搬送台に隣接する他の搬送台の第二の隔壁部材との間で、所定の隙間を設けるためのスペーサが設けられ、隣接する処理ゾーン同士の間に設けられ、前記所定の隙間内を排気する排気手段をさらに備えていることが好ましい。
この場合、隣接する処理ゾーン同士の間に第一及び第二の隔壁部材の他、所定の隙間を設けることができる。さらに、排気手段によって、所定の隙間内を排気することで、処理ゾーンにおける炉内雰囲気が、隣接する他の処理ゾーンに影響を与えるのを抑制することができる。
【0013】
また、上記連続拡散処理装置において、隣接する処理ゾーン同士の間に設けられ、前記所定の隙間にパージガスを供給する供給手段をさらに備えていてもよい。
この場合、処理ゾーンにおける炉内雰囲気が隣接する他の処理ゾーンに影響を与えるのをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の連続拡散処理装置によれば、エネルギーロスを低減できかつ、生産効率の向上と処理品質の向上とを両立させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る連続拡散処理装置の全体図である。
この連続拡散処理装置は、被処理物に対して拡散処理を行うための装置である。例えば、結晶シリコンによる太陽電池セルの製造において、シリコン製のウエハ(被処理物)の表面に、所定の元素からなる不純物を付着させ、この不純物を当該ウエハの内部に拡散させるための装置である。
【0017】
連続拡散処理装置は、複数枚の板状の被処理物Wを載せる搬送台50と、筒状の加熱炉1と、複数の搬送台50を搬送する搬送装置2と、搬送装置2等の各部を制御する制御装置(図示せず)を備えている。加熱炉1の長手方向(
図1では左右方向)と、搬送台50が搬送される方向とは、一致しており、この方向を前後方向と呼ぶ。また、搬送台50が搬送される方向に直交する水平方向を左右方向と呼ぶこともある。
【0018】
搬送台50は、複数枚の板状の被処理物Wを、等間隔で垂直に立てた状態として搭載する本体部51と、本体部51に取り付けられ加熱炉1の底面を転がる車輪部52と、前後方向両端に設けられた板状の第二隔壁部材54とを備えている。
本体部51は、被処理物Wを、前後方向に直交する姿勢で搭載する。本体部51は、複数本の円柱形状の棒部材によって直方体形状の枠体として組み立てられている。なお、搬送台50を構成している本体部51、車輪部52、及び第二隔壁部材54は、その他の部品を含めた全てが石英ガラス又はセラミックスで形成されている。
【0019】
図2は、加熱炉1の断面図である。
図1も参照して、加熱炉1は、前後方向に長く、搬送台50を搬入する搬入口11から、搬送台50を搬出する搬出口12まで直線状に延びる構成である。加熱炉1は、石英ガラス又はセラミックスからなる円筒状の炉心管5と、炉心管5の内部を加熱するヒータ30を有する加熱装置3とを備えている。加熱炉1は、連続拡散処理装置が有しているステージ6(
図1参照)上に設置されている。
炉心管5は、一端部が搬入口11、他端部が搬出口12とされており、内部に複数の搬送台50が搬入される。また炉心管5は、搬入口11から搬出口12まで一体に形成されており、炉内のガスが漏れるのを防いでいる。炉心管5の両端には、搬入口11及び搬出口12それぞれを開閉するための上下方向にスライド可能なシャッタ5aが設けられている。シャッタ5aは、炉内で被処理物Wの処理中のときには両口11,12を閉じて密封する。一方、炉内に搬送台50を搬入出するときには開放する。なお、シャッタ5aに代えて、パージガスによって形成されるガスカーテンによって、加熱炉1内外を遮断してもよい。
【0020】
加熱装置3は、加熱炉1の外周に設けられ前後方向に並べられた複数のヒータ30と、各ヒータ30と共に加熱炉1を外周側から覆う筒状の断熱材31とを備えている。加熱装置3は、炉心管5内を加熱し、加熱炉1内を通過する搬送台50に搭載される被処理物を加熱する。
後に説明するが、加熱炉1内は、3つの処理ゾーン(第一〜第三処理ゾーン)に区画されており、3つの処理ゾーンの内の、第一処理ゾーンA1と、第二処理ゾーンA2の外周側に、ヒータ30がそれぞれ設けられている。ヒータ30は、例えば筒型のヒータである。断熱材31は、ヒータ30が設けられている処理ゾーンA1,A2の外周側に設置されている。
【0021】
図2において、加熱炉1(の炉心管5)内には、複数の第一隔壁部材7が前後方向に並べて設けられている。第一隔壁部材7は、加熱炉1内の搬入口11から搬出口12までの間を、上述のように、前後方向に複数の処理ゾーンに区画している。これら各処理ゾーンの前後方向の長さ寸法は、搬送台50の前後方向(移動方向)に沿う長さ寸法とほぼ同一寸法に設定されている。
本実施形態では、2個の隔壁部材7によって、3つの処理ゾーンA1,A2,A3に区画している。従って、加熱炉1内には、各処理ゾーンA1〜A3それぞれに一致して搬送台50が列状に配置される。
【0022】
第一処理ゾーンA1は、被処理物Wを所定の予熱温度まで昇温させる予熱処理を行うためのゾーンである。第一処理ゾーンA1では、炉内には酸化防止のために窒素ガスが供給され、ヒータ30によって炉内温度が前記予熱温度(例えば、約800℃)で一定に保持される。
第二処理ゾーンA2は、被処理物Wに対して拡散処理を行うためのゾーンである。第二処理ゾーンA2では、その外周側に設けられたヒータ30により、炉内温度が例えば850〜900℃に維持される。第二処理ゾーンA2では、拡散処理を行うための処理ガス(例えば、POCl
3)が炉内に供給され、被処理物Wの表面に不純物(P)を拡散させることで拡散処理が行われる。
第三処理ゾーンA3は、拡散処理を終えた被処理物Wを所定の温度まで降温させる降温処理のためのゾーンである。第三処理ゾーンA3では、炉内に窒素ガスが供給される。第三処理ゾーンA3の外周には、ヒータが設けられておらず、炉冷によって、処理を終えた被処理物Wを降温させる。なお、炉冷よりもさらに緩やかに降温させる必要がある場合には、第三処理ゾーンA3の外周側にも一定の低温で炉内を保持するためにヒータを配置してもよい。
【0023】
各処理ゾーンA1〜A3で行われる各処理(予熱処理、拡散処理、及び降温処理)は、被処理物Wに対して行われる処理工程の順番となるように、搬送方向に沿って配置されている。
【0024】
連続拡散処理装置は、加熱炉1内に上述の処理ガスや窒素ガスの供給を行うとともに、当該加熱炉1内のガスの排出を行うガス給排装置4をさらに備えている。
ガス給排装置4は、加熱炉1内にガスを供給するガス供給装置41と、加熱炉1内のガスを当該加熱炉1外へ排出するガス排出装置42とを有している。
図2において、ガス供給装置41は、図示しないガス源から供給される所定のガスの流量を調整する流量調整器43と、この流量調整器43に接続され加熱炉1内へと延びている複数の供給パイプ44とを備えている。本実施形態では、流量調整器43は、搬入口11側及び搬出口12側のそれぞれに設けられている。供給パイプ44は、流量調整器43から加熱炉1内の内周上側に前後方向に沿って延びるように配置されている。
【0025】
各供給パイプ44には、ガス源から供給されるガスを噴出するための噴出口(穴)が複数設けられている。各供給パイプ44は、各処理ゾーンA1〜A3それぞれに対応して配置されており、それぞれが対応する処理ゾーンの範囲の位置に噴出口が形成されている。各供給パイプ44には、各処理ゾーンA1〜A3それぞれに応じて設定されたガスがガス源から供給される。このため、ガス供給装置41は、前後方向で複数存在している処理ゾーン毎に、異なるガスを供給することができる。また、流量調整器43は、各処理ゾーンA1〜A3に供給するガスの流量を各処理ゾーン毎で調整することができる。
従って、上述したように、第一及び第三処理ゾーンA1,A3には、窒素ガスを、第二処理ゾーンA2には、拡散処理を行うための処理ガスをそれぞれ所定の流量に調整して供給することができる。
【0026】
ガス排出装置42は、炉内のガスを排出するための図示しない排出器(ポンプ)に接続され排出流量を調整する流量調整器47と、流量調整器47に接続され加熱炉1内へと延びている排出パイプ48とを備えている。本実施形態では、流量調整器47は、搬入口11側及び搬出口12側のそれぞれに設けられている。排出パイプ48は、流量調整器47から加熱炉1の内周底部に前後方向に沿って延びるように設置されている。
【0027】
図3は、加熱炉1の底部を示した部分断面図である。排出パイプ48それぞれには、炉内ガスを吸引するための吸引口(穴)48aが複数設けられている。各排出パイプ48は、各処理ゾーンA1〜A3それぞれに対応して配置されており、それぞれが対応する処理ゾーンの範囲の位置に吸引口が形成されている。このため、ゾーン毎で個別にガスを炉外に排出することができる。
【0028】
加熱炉1の底部には、排気パイプ48を収納している排気構造部45が設けられている。排気構造部45は、前後方向に長い左右の側壁45bと、前後方向に長い上壁45aとを有し、複数の排出パイプ48を格納している箱体からなる。そして、上壁45aには、複数の貫通穴45cが形成されている。排気構造部45の内部は、各処理ゾーンごとに仕切られており、各処理ゾーンのガスは、対応する貫通穴45c及び前記吸引口48aを通過し、加熱炉1の外部へ排出される。
【0029】
また、排気構造部45は、加熱炉内1のガスを外部へ排出する機能の他に、搬送台50をガイドする機能を有している。
図2に示しているように、排気構造部45は、加熱炉1内において、前後方向に沿って直線的にかつ連続して配置されている。また、この排気構造部45は、加熱炉1外(
図1参照)の搬入口11の外部と搬出口12の外部にも延長されている。このように、排気構造部45は、搬送台50の搬送方向に沿って直線的に配置されており、搬送装置2によって搬送される複数の搬送台50を前後方向に沿って搬入口11から搬出口12へと導くことができる。
【0030】
このガイド機能について具体的に説明する。
図3に示しているように、排気構造部45は、左右の側壁45b、上壁45aの他に、前後方向に長い底板45dを有している。底板45dの左右両側には、側壁45bから左右の両側方へ延びかつ前後方向に連続している走行面45eが形成されている。搬送台50の左右の車輪部52は、前記走行面45eを転がり、搬送台50は左右の側壁45b及び上壁45aを跨いだ状態にある。
また、搬送台50は、側壁45bに摺接するガイドブロック53を有しており、このガイドブロック53によって、搬送台50は排気構造部45に沿って直線的に誘導される。
以上のように、ガスの排出機能を有している排気構造部45を、搬送台50を前後方向に導くガイドとして兼用することができる。
【0031】
図1に戻って、搬送装置2は、搬送台50を一台ずつ搬入口11から加熱炉1の炉心管5内に順次搬入すると共に、搬入した搬送台50を加熱炉1内を移動させ、さらに、搬出口12から搬送台50を順次搬出する機能を有している。
搬送装置2は、搬送台50を一台ずつ搬入口11から炉心管5内に押し込むプッシャー22と、このプッシャー22を前後方向に往復移動させる駆動装置23とを備えている。プッシャー22、及び駆動装置23は、ステージ6上に配置されており、これらは、加熱炉1の搬入口11の前方外側に設置されている。
【0032】
プッシャー22は、搬入口11の後方に配置された搬送台50を、その後端が搬入口11の縁部に位置するまで押し込んで一台ずつ搬入するように構成されている。
プッシャー22が搬送台50を一台押し込んで搬入すると、その搬入した搬送台50によって先に炉心管5内に搬入されている搬送台50が搬出口12側へ押し込まれる。これを繰り返すことで、複数の搬送台50は列状に並んで炉心管5内を移動する。
【0033】
駆動装置23は、前記制御装置の制御により、プッシャー22によって搬送台50を一台ずつ加熱炉1内に押し込む。駆動装置23は、搬送台50を一台押し込むと、所定時間の間隔を置いた後、次の搬送台50を押し込むように制御される。従って、搬送台50は、プッシャー22によって自己の長さ寸法だけ移動し、その後前記所定時間が経過するまでの間、静止する。
【0034】
ここで、加熱炉1内の各処理ゾーンA1〜A3の前後方向の長さ寸法は、上述したように、搬送台50の前後方向に沿う長さ寸法とほぼ同一寸法に設定されているので、搬入された搬送台50は、プッシャー22によって自己の長さ寸法だけ移動することで、処理ゾーンA1にほぼ一致するように移動して停止し、前記所定時間が経過するまでの間、処理ゾーンA1内で静止する。所定時間の経過後、さらに次の搬送台50が搬入されることで、処理ゾーンA1で静止していた搬送台50は、処理ゾーンA2に移動して停止し、前記所定時間が経過するまでの間、処理ゾーンA2内で静止する。これを繰り返すことで、列状に並ぶ各搬送台50は、各処理ゾーンA1〜A3でそれぞれ順番に所定時間の間だけ静止し、搬出口12から搬出される。
このように、搬送装置2は、搬送台50を一台ずつ加熱炉1内に押し込むことで、搬送台50を各処理ゾーンA1〜A3単位で間欠的に移動させる。
【0035】
上記所定時間は、各処理ゾーンA1〜A3における処理時間と一致する時間に設定される。これにより、列状に並ぶ各搬送台50に搭載された被処理物Wは、各処理ゾーンA1〜A3それぞれで所定時間静止する間に、各処理ゾーンA1〜A3ごとの処理が同時になされる。その後、被処理物Wは、搬送装置2によって隣接する次の処理ゾーンに移動し、その隣接する処理ゾーンで次の処理がなされる。
【0036】
前記制御装置は、処理装置(CPU)及び記憶装置を有するコンピュータによって構成されており、記憶装置に記憶させたコンピュータプログラムを前記処理装置が実行することで、搬送装置2(駆動装置23)、加熱装置3(ヒータ30)等の各装置の制御を行う。
例えば、加熱装置3は、処理ゾーンA1,A2それぞれの炉内温度を検出する温度センサを有しており、制御装置は、これら温度センサの検出結果に基づいて、各ヒータ30を制御し、各処理ゾーンの炉内の温度を個別に調整する。
また、制御装置は、各処理ゾーンA1〜A3における搬送台50の静止時間が、処理時間と一致するように搬送装置2を制御する。
さらに、ガス給排装置4は、各処理ゾーンA1〜A3それぞれの炉内圧力を検出する圧力センサを有しており、制御装置5は、この圧力センサの検出結果に基づいて、流量調整器43,47を制御して、炉内に供給するガスの流量及び炉内から排出するガスの流量の一方又は双方を調整することができる。これにより、各処理ゾーンにおける処理に適した炉内雰囲気に、各ゾーンごとに調整することができる。
このように、制御装置は、加熱炉1における各処理ゾーンA1〜A3の処理温度や雰囲気(ガス流量)、処理時間といった処理条件をゾーン毎に制御することができる。
【0037】
図4は、第一隔壁部材7、及びカバー13の斜視図である。第一隔壁部材7は、板状の壁部7aと、この壁部7aの下部に固定され当該壁部7aを起立させる左右の脚部7bとを有している。壁部7aには、被処理物Wを載せた搬送台50の通過を許容する開口7cが形成されている。また、壁部7aには、複数の貫通穴7dが形成されており、供給パイプ44の他に、温度センサのケーブル(収納管)、圧力センサのケーブル(収納管)、各ゾーンのガスをサンプリングするためのパイプ等を挿通させる。
【0038】
ガス供給装置41の供給パイプ44は、加熱炉1の上部に配置され、ガス排出装置42の排出パイプ48は加熱炉1の下部に設置されていることから、加熱炉1内において、ガスは上部から下部へと広がりながら流れる。
そこで、拡散処理を行うための第二処理ゾーンA2では、搬送台の通路を、上側及び左右両側から覆うカバー13が設けられている(
図2及び
図4)。
図4中、カバー13は、前後方向に隣り合う隔壁部材7間に設置される。カバー13の上部及び左右の両側部には、多数の貫通穴15が形成されており、供給パイプ44から噴出された処理ガスは、この貫通穴15を通過し、排出パイプ48から排出される。
【0039】
上記カバー13を第二処理ゾーンA2に設けることによって、貫通穴15を通過する処理ガスは整流され、ガスの流れの乱れを防ぎ、搬送台50に載せた被処理物Wの周囲のガス濃度(雰囲気)を均質化することができる。このため、拡散処理した複数の被処理物Wをより一層、均質化することが可能となる。
【0040】
次に、加熱炉1内における互いに隣接する処理ゾーン同士の境界部分について説明する。
図5は、第一処理ゾーンA1と、第二処理ゾーンA2との境界部分を拡大した部分断面図であり、
図6は、
図5中、VI−VI線矢視断面図である。
図5では、各搬送台50が搬送装置2によって移動された後、各処理ゾーンA1〜A3で静止している状態を示している。
上述したように、搬送台50の前後方向両端には、板状の第二隔壁部材54が設けられている。第二隔壁部材54は、前後方向から正面視したときの形状が、
図6に示すように、第一隔壁部材7の開口7cとの間で僅かな隙間を置きつつ当該開口7cに沿う形状に形成されている。これによって、第二隔壁部材54は、開口7cを通過可能に開口7cを閉鎖することができる。つまり、第二隔壁部材54は、搬送台50が各処理ゾーンA1〜A3で静止したときに第一隔壁部材7の開口7cを閉鎖して隣接する処理ゾーン同士の間を仕切ることができる。
これにより、各処理ゾーンごとで異なる処理条件の処理を行ったとしても、適切に各処理ゾーンを隔離できる。この結果、各処理ゾーンの炉内雰囲気を維持でき、品質の高い被処理物を得ることができる。
【0041】
搬送台50の第二隔壁部材54は、例えば、搬送台50の前後方向(搬送方向)のいずれか一端側に設けられていれば、第一隔壁部材7の開口7cを閉鎖し仕切ることができるが、本実施形態のように、搬送台50の前後両端側に第二隔壁部材54を設ければ、後述するように、隣接する第二隔壁部材54同士の間に隙間を設けることができ、より適切に各処理ゾーンを隔離することができる。
【0042】
搬送台50前方側に設けられている第二隔壁部材54には、前方に突出したスペーサ55が設けられている。
このスペーサ55は、前方に並ぶ搬送台50の第二隔壁部材54に当接している。従って、加熱炉1内の各搬送台50は、プッシャー22によって新たな搬送台50が搬入口11から加熱炉1内に押し込まれたときに列状に移動する。
スペーサ55は、互いに隣接する搬送台50それぞれの第二隔壁部材54の間に介在することで、これら両第二隔壁部材54の間に所定間隔の隙間56を設けている。これにより、互いに隣接する処理ゾーンの間に、二つの第二隔壁部材54の他、隙間56を介在させることができるので、より適切に各処理ゾーンを隔離することができる。
なお、搬送台50及びスペーサ55は、加熱炉1内の各搬送台50が静止しているときに、隙間56が第一隔壁部材7の位置にほぼ一致するように、その前後方向の長さ寸法が設定されている。
【0043】
また、
図6に示すように、排気構造部45の上壁45aには、第二隔壁部材54の位置に対応する位置に、隙間56内を排気するための排気口45f(排気手段)が形成されている。
この排気口45fも、各処理ゾーンA1〜A3のガスを排出するために設けられている貫通孔45cと同様、排出パイプ48を介して前記排出器によって、隙間56内のガスを吸引し、加熱炉1の外部に排出する。また、流量調整器47によって、各処理ゾーンA1〜A3と独立して排気流量を調整することができる。
【0044】
排気口45fは、貫通孔45cよりも大きく形成されており、貫通孔45cよりもより多くの流量でガスを吸引できるように構成されている。また、排気口45fにおける排気流量は、各処理ゾーンA1〜A3と比べてより排気流量が大きくなるように制御部によって制御される。このため、排気口45fは、他の貫通孔45cと比較してより多くのガスを排気することができる。従って、隣接する両処理ゾーンから異なるガスが流入するおそれのある隙間56においては、各処理ゾーンの圧力に対して負圧となり、処理ゾーンの炉内ガスが隣接する他の処理ゾーンに漏洩するのを抑制することができる。この結果、処理ゾーンにおける炉内雰囲気が、隣接する他の処理ゾーンに影響を与えるのを抑制することができる。
【0045】
上記のように構成された連続拡散処理装置によれば、加熱炉1内を第一隔壁部材7で区画することで異なる処理条件に設定された処理ゾーン単位で、列状に並ぶ各搬送台50に搭載された被処理物Wを間欠的に移動させるので、各処理ゾーンA1〜A3での処理を同時にかつ連続して行うことができ、生産効率を向上させることができる。
【0046】
また、搬送台50は、いずれかの処理ゾーンで静止したときに第一隔壁部材7の開口7cを閉鎖して隣接する処理ゾーン同士の間を仕切る第二隔壁部材54を備えているので、各処理ゾーンごとで異なる処理条件の処理を行ったとしても、適切に各処理ゾーンを隔離でき、品質の高い被処理物を得ることができる。
さらに本発明では、搬送台50を一つずつ搬入口11から加熱炉1内に押し込むことで搬入して加熱炉1内の搬送台50を移動させるので、上記従来例のようにコンベアといった機械的な要素部品を炉内で走行させる必要がなく、装置の大型化を抑制して加熱に要する消費エネルギーを抑制できるのと同時に、品質低下の原因となるコンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0047】
また、従来のバッチ式の拡散処理装置では、拡散処理の前後に、昇温と降温とが必要となり、エネルギーロスが大きかったが、本実施形態の拡散処理装置によれば、ゾーン毎に炉内温度を一定に保つことができるため、さらに省エネルギーに貢献することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態の連続拡散処理装置によれば、装置の大型化を抑制することでエネルギーロスを低減しつつ、生産効率の向上と処理品質の向上とを両立させることができる。
【0049】
図7は、本発明の他の実施形態に係る連続拡散処理装置の第一処理ゾーンA1と、第二処理ゾーンA2との境界部分を拡大した部分断面図である。
上記実施形態と、本実施形態との相違点は、隣接する処理ゾーンの間それぞれに二つの第一隔壁部材7を設けた点、及び、隙間56に供給パイプを介してパージガスを供給するように構成されている点である。
【0050】
二つの第一隔壁部材7は、加熱炉1内の各搬送台50が静止しているときに、隣接することで隙間56を形成している両第二隔壁部材54の位置とほぼ一致する位置に設けられている。つまり二つの第一隔壁部材7は、対応する第二隔壁部材54と前後方向にほぼ一致する位置に設けられており、第二隔壁部材54とともに隙間56を形成している。
【0051】
また、本実施形態では、
図7に示すように、炉心管5の内周上側に配置されている複数の供給パイプ44の内のいずれか一つを、隙間56にパージガスを供給するための供給パイプ44a(供給手段)として設けている。
供給パイプ44aからは、パージガスとして窒素ガスが所定の流量で供給される。供給されるパージガスは、炉心管5の内周下側に設けられている隙間56内を排気するための排気口45fによって炉外に排気される。
これによって隙間56内にはガスカーテンが形成され、処理ゾーンにおける炉内ガスが隣接する他の処理ゾーンに漏洩するのをより効果的に抑制することができる。
【0052】
本発明の拡散処理装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。加熱炉1の断面を円形として説明したが、円形以外に矩形であってもよい。なお、円形とした場合、
図7に示しているように、矩形の被処理物Wと、加熱炉1の内周面との間のデッドスペースに、車輪部52や搬送台50をガイドする排気構造部45を配置することができ、加熱炉1内の空間を有効に利用することができる。