(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985578
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】DCブラシレスモータを有する電動工具
(51)【国際特許分類】
H02K 29/08 20060101AFI20160823BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20160823BHJP
【FI】
H02K29/08
H02K11/215
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-219007(P2014-219007)
(22)【出願日】2014年10月28日
(62)【分割の表示】特願2012-251243(P2012-251243)の分割
【原出願日】2006年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-19582(P2015-19582A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 一俊
【審査官】
小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−102370(JP,A)
【文献】
特開平10−234158(JP,A)
【文献】
特開昭61−251462(JP,A)
【文献】
特開平10−304613(JP,A)
【文献】
特開2004−357371(JP,A)
【文献】
特許第5512781(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 29/08
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心と、
前記固定子鉄心の少なくとも一部を覆う電気絶縁部材と、
前記電気絶縁部材に巻き線される駆動コイルと、
前記固定子鉄心の内周側に配置される回転子鉄心と、
前記回転子鉄心に固定されるマグネットと、
前記回転子鉄心に固定され、一端及び他端を有する回転軸と、
前記回転子鉄心の前記一端側に配置される冷却ファンと、
前記冷却ファンの前記一端側に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する一端側軸受けと、
前記回転子鉄心の前記他端側に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する他端側軸受けと、
前記駆動コイルの前記他端側に配置され、前記電気絶縁部材に固定されるセンサ基板と、
前記センサ基板の前記一端側の面に取り付けられる磁気センサと、
を有するDCブラシレスモータを駆動源として内蔵し、
ハウジングを有する電動工具であって、
前記冷却ファンは、前記駆動コイルと対向するように前記駆動コイルの前記一端側に配置されるとともに、前記センサ基板は、前記駆動コイルと対向するように前記駆動コイルの前記他端側に配置されており、
前記電気絶縁部材には、前記センサ基板を収容する段差部が設けられており、該段差部にその一部を切り欠いた切り欠き部が形成されており、前記センサ基板は、該切り欠き部を経て前記固定子鉄心よりも径方向外側へ張り出す張り出し部を有して、該張り出し部が配線接続用の端子接続板部とされており、
かつ前記切り欠き部とは別に、前記段差部には、前記センサ基板の外周面の少なくとも一部に対して径方向に対向して前記センサ基板を回転方向に位置規制する部位が一体に設けられており、前記センサ基板が該部位によって回転方向に位置規制され、
更に、前記センサ基板を前記電気絶縁部材に固定するねじを有し、
前記固定子鉄心の前記一端側の端面の少なくとも一部は、前記電気絶縁部材から露出しており、前記冷却ファンが回転することにより、前記ハウジング内に外気が導入され、この外気により、前記回転子及び前記固定子が冷却される構成とした電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明
は、DCブラシレスモータ
を有する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
このDCブラシレスモータは、積層鋼板構造の回転子鉄心にマグネット(永久磁石)を取り付けた回転子と、積層鋼板構造の固定子鉄心の各歯部に巻き線してなる駆動コイルを回転子の周囲に位置させる固定子と、回転子の磁極の位置を検出する磁気センサ(ホール素子)を有するセンサ基板と、このセンサ基板により検出される回転子の磁極の位置を検出し、これに基づいて固定子の各駆動コイルに順次電流を流して回転子を回転させる電気回路基板を備えたもので、ブラシと整流子を必要としないことから機器のコンパクト化及びメンテナンスフリー化を図ることができ
る。
従来
のブラシレスモータとして、例えば特許第3545215号公報に開示された技術が公知になっている
。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3545215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、
センサ基板を取り付けることができるDCブラシレスモータを有する電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、
以下に記載の構造とした。
第1の発明は、固定子鉄心と、前記固定子鉄心の少なくとも一部を覆う電気絶縁部材と、前記電気絶縁部材に巻き線される駆動コイルと、前記固定子鉄心の内周側に配置される回転子鉄心と、前記回転子鉄心に固定されるマグネットと、前記回転子鉄心に固定される回転軸と、前記回転子鉄心の前方側に配置される冷却ファンと、前記冷却ファンの前方側に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する前側軸受けと、前記回転子鉄心の後方側に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する後側軸受けと、前記駆動コイルの後方側に配置され、前記固定子鉄心の少なくとも一部を覆う前記電気絶縁部材に固定されるセンサ基板と、前記センサ基板の前面に取り付けられる磁気センサと、電気制御基板と、を有するDCブラシレスモータを駆動源として内蔵し、ハウジングを有する電動工具である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係るDCブラシレスモータの縦断面図である。
【
図2】
図1の(2)矢視図であって、DCブラシレスモータの前面図である。
【
図3】
図1の(3)部拡大図であって、センサ基板に対する係合爪の係合状態を示す縦断面図である。
【
図6】
図3の(6)-(6)線断面矢視図であって、回り止め突起の係合凹部に対する係合状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るDCブラシレスモータ10を示している。このDCブラシレスモータ10は、4極構造のモータであり、回転子(ロータ)11と、内周側にこの回転子11を位置させる固定子(ステータ)20と、回転子11の磁極の位置を検出するための3個のホール素子31〜31を備えたセンサ基板30と、駆動回路を有する電気制御基板を備えている。電気制御基板の図示は省略されている。
回転子11は、円形の薄鋼板を多数枚積層した回転子鉄心12を備えている。この回転子鉄心12の周囲には、4極のリングマグネット13〜13が固定されている。回転子鉄心12の中心には回転軸14が固定されている。
回転軸14は回転子鉄心12の両側から突き出されている。この回転軸14は、当該DCブラシレスモータ10を内装した電動工具のハウジング(図示省略)に対してそれぞれ軸受け15,16を介してその軸線J回りに回転可能に支持されている。以下、この
回転軸14の回転軸線J方向を電動工具の機長方向ともいう。回転軸14の図示左側であって回転子鉄心12と軸受け16との間には、冷却ファン17が取り付けられている。この冷却ファン17は回転子11と一体で回転する。この冷却ファン17が回転することにより、当該電動工具のハウジング内に外気が導入され、この外気(モータ冷却風)により回転子11及び固定子20等が冷却される。
固定子20は、概ね円筒形状を有するもので、多数枚の薄鋼板を積層した積層鋼板構造を有する固定子鉄心(ステタコア)21と、これを電気的に絶縁するいわゆるインシュレータと呼ばれる合成樹脂製の電気絶縁部材22を備えている。固定子鉄心21の内周側には、複数(本例では6本)の歯部21a〜21aが周方向六等分位置から放射方向中心に向かって突き出す状態に設けられている。
この固定子鉄心21の外周面と各歯部21a〜21aの先端面を除く範囲が電気絶縁部材22で覆われている。各歯部21aの、電気絶縁部材22で覆われた部分に駆動コイル23が巻き線されている。電気絶縁部材22で覆われない各歯部21aの先端面は、回転子11の周面との間に一定の隙間をおいた状態で位置している。
【0008】
この電気絶縁部材22の前面(
図1において右端面)にセンサ基板30が取り付けられている。本実施形態は、このセンサ基板30の電気絶縁部材22ひいては固定子20に対する取り付け構造に特徴を有している。電気絶縁部材22の前面側には、その全周にわたるほぼ円形の段差部22aが設けられている。この段差部22a内にセンサ基板30が収容されて、その面方向に位置決めがなされている。
センサ基板30は、概ね円板形状をなすもので、その中心には回転子11の回転軸14を位置させるための逃がし孔
30cが設けられている。またこのセンサ基板30の下部には、配線接続用の端子接続板部30bが放射方向へ張り出す状態に設けられている。この端子接続板部30bは、上記段差部22aの一部を切り欠いた切り欠き部22bを経て電気絶縁部材22の外周側(
図1および
図2において下方)に張り出されている。
センサ基板30に取り付けた3個の磁気センサ31〜31は、回転子11の磁極の位置が固定子20のいずれの歯部21aに対向する位置にあるのかを検出するためのセンサであり、本例ではホール素子が用いられている。
図2に示すようにこのセンサ基板30が電気絶縁部材22の周囲三等分位置に設けられた3本の係合爪32〜32で位置決め固定されている。各係合爪32は相互に同様の構成を備えている。この係合爪32の詳細が
図3〜5に示されている。
【0009】
図3に示すように上記3本の係合爪32〜32は、電気絶縁部材22の段差部22aの外周側から機長方向前側(
図1,3において右方)に突き出す状態で一体に設けられており、
図3中二点鎖線で示すようにそれぞれ全体として放射方向外方へ撓むように弾性変形可能に設けられている。
図4にも示すように各係合爪32は、電気絶縁部材22の周縁部から機長方向前側に延びる係合アーム部32eと、この係合アーム部32eの先端部から放射方向内側に突き出す爪部32aを備えている。
各係合アーム部32eは断面矩形の平板形状を有している。各爪部32aは、前面側となる案内面32dと、後面側となる係合面32bを有している。案内面32dは、機長方向(回転軸14の回転軸線J)に対してその先端側(
図3において下側)を後側に変位させる方向に傾斜している。一方、係合面32bは、機長方向(回転軸14の回転軸線J)に対してその先端側(
図3において下側)を前側(
図3において右側)に変位させる方向に傾斜している。
さらに、各係合アーム部32eの内側には、断面三角形状の回り止め突起32cが一体に設けられている。各回り止め突起32cは、機長方向に沿ってその基部から爪部32aの係合面
32bに至る範囲で形成されている。この回り止め突起32cに対応してセンサ基板30の周囲三等分位置には、係合凹部30a〜30aが形成されている。各係合凹部30aに上記係合爪32の回り止め突起32cが嵌り込んだ状態となることにより当該センサ基板30が回転軸14の回転軸線J回りに位置決め(回り止め)された状態となる。
【0010】
以上のように構成したセンサ基板30の取り付け構造によれば、電気絶縁部材22の前端面にセンサ基板30を取り付ける際に、当該センサ基板30の周縁部を3箇所の係合爪32〜32の各案内面32dに当接させ、各係合爪32をその弾性力に抗して放射方向外方へ撓ませながらそのまま当該センサ基板30を押し込めば、当該センサ基板30を段差部22a内に取り付けることができる。この取り付け状態では、3箇所の係合爪32〜32の各係合面32bが係合アーム部32eの弾性力によってセンサ基板30の端縁に押圧される。このため、センサ基板30には、係合面32bの傾斜作用により3箇所の係合アーム部32e〜32eの弾性力がその板厚方向であって当該センサ基板30を電気絶縁部材22の前端面(段差部22aの底部)に押し付ける方向(
図3において白抜きの矢印で示した方向)に作用する。このように、センサ基板30は、その端縁に各係合爪32の係合面32bが常時押圧されて、段差部22aに押し付けられた状態に組み付けられることから、その板厚方向にがたつきのない状態に取り付けられる。
【0011】
また、センサ基板30の板厚に多少のばらつきがあっても、各係合アーム部32eが放射方向外方へ弾性変形して当該センサ基板30の端縁に係合面32b〜32bが押圧される限り、当該センサ基板30は係合アーム部32e〜32eの弾性力により板厚方向に押圧された状態に保持されるため、その板厚方向にがたつきのない状態で取り付けることができる。
さらに、各係合爪32の係合アーム部32eには回り止め突起32cが設けられ、この各回り止め突起32cがセンサ基板30の取り付け状態においてそれぞれ係合凹部30aに嵌り込んだ状態とされ、これにより当該センサ基板30の回り止めがなされる。このように、周方向三等分位置に設けた係合爪32〜32は、取り付けたセンサ基板30の板厚方向の位置決め機能と回転軸線J回りの位置決め(回り止め)機能との2機能を備えている。従って、それぞれ別々に設ける場合に比して電気絶縁部材の端面という限られたスペース内に効率よく各機構を配置することができる。
また、3箇所の係合爪32〜32を放射方向外方へ押し広げながらセンサ基板を段差部22aに押し付ければその取り付けが完了することから、ねじ止めや接着により取り付ける構成に比して当該センサ基板の組み付け行程の迅速化を図ることができる。
【0012】
以上説明した実施形態に種々変更を加えて実施することができる。例えば、各係合爪32の回り止め突起32cは断面三角形状を有する構成を例示したが、その他断面円弧形状、断面矩形の回り止め突起としてもよい。また、各係合爪32の回り止め突起32cは省略してもよい。
また、周方向の三等分位置に係合爪を設ける構成を例示したが、4箇所以上であってもよい。
さらに、例示した取り付け構造にねじ止めや接着を併用して当該センサ基板を取り付ける構成としてもよい。
また、センサ基板を固定子の前面側に取り付ける場合を例示したが、後面側に取り付ける場合にも同様に適用することができる。
冷却ファン17は回転子の後側に配置する構成の他、前側に配置する構成であっても同様の冷却構造を適用することができる。
さらに、電動工具の駆動源として内蔵するDCブラシレスモータを例示したが、その他の機器の駆動源として用いるものにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0013】
10…DCブラシレスモータ
11…回転子
12…回転子鉄心
J…回転軸線
13…リングマグネット
14…回転
軸
15,16…軸受け
17…冷却ファン
20…固定子
21…固定子鉄心、21a…歯部
22…電気絶縁部材、22a…段差部、22b…切り欠き部
23…駆動コイル
30…センサ基板
30a…
係合凹部、30b…端子接続板部、
30c…逃がし孔
31…磁気センサ(ホール素子)
32…係合爪
32a…爪部、32b…係合面、32c…回り止め突起、32d…案内面
32e…係合アーム部