【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、筆記体3の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体3の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先31を設け、前記筆記体3を軸筒2内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒2の後端部にノック体6を設け、前記ノック体6を前方に押圧することにより前記ペン先31を前記軸筒2の前端孔21から突出状態にし、再度、前記ノック体6を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除し前記ペン先31を前記軸筒2の前端孔21より前記軸筒2内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック体6の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部64を設けた熱変色性筆記具であって、
前記軸筒2の後端開口部内面と前記ノック体6の外面との間に
前後方向に移動可能且つ回転可能に
筒状の締め付け部材8を設け、前記摩擦部64を用いて摩擦操作する際、前記締め付け部材8を回転操作することにより、前記締め付け部材8が、前記ノック体6の外面または前記摩擦部64の外面に圧接され、前記軸筒2に対する前記摩擦部64の前後方向の移動を阻止してなることを要件とする。
【0007】
前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、前記摩擦部64を用いて摩擦操作する際、
前記締め付け部材8を回転操作することにより、前記締め付け部材8が、前記ノック体6の外面または前記摩擦部64の外面に圧接され、前記軸筒2に対する前記摩擦部64の前後方向の移動を阻止してなることにより、ノック体6の後端部外面の摩擦部64を用いて安定した摩擦操作が可能となる。特に、前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、ノック体6及び摩擦部64と別部材の締め付け部材8を用いることにより、摩擦部64の前後方向の移動を確実に阻止できるとともに、ノック体6または摩擦部64を特殊な形状にする必要がなく、ノック体6または摩擦部64の外観を自由に設定できる。
【0008】
前記第2の発明は、前記第1の発明の熱変色性筆記具1において、前記摩擦部64を弾性材料により構成
されることを要件とする。
【0009】
前記第2の発明の熱変色性筆記具1は、摩擦部64を用いて摩擦操作する際
、軸筒2に対する摩擦部64の前後方向の移動を一層確実に阻止できる。
【0010】
本願の第3の発明は、前記第1または第2の発明の熱変色性筆記具1において、前記締め付け部材8が、前記軸筒2の後端開口部内面との圧接により径方向内方に弾性変形し且つ前記ノック体6の外面に圧接可能な変形部81と、該変形部81の後方に形成され且つ前記軸筒2の後端開口部内面のメネジ部22に螺合可能なオネジ部82と、該オネジ部82より後方に形成される回転操作部83とからなることを要件とする。
【0011】
前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、回転操作部83を回転操作することにより、締め付け部材8によるノック体6または摩擦部64の締め付け及び締め付け解除を容易に行うことができる。
【0012】
前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、摩擦操作する際、回転操作部83をネジ締め方向に回転させることにより、締め付け部材8が軸筒2に対して前方に移動し、変形部81と軸筒2の後端開口部内面とが圧接する。それにより、変形部81が径方向内方に弾性変形するとともに変形部81がノック体6の外面または摩擦部64の外面に圧接され、締め付け部材8によるノック体6または摩擦部64の容易な締め付け(即ち前後方向の移動阻止)が可能となる。そして、前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、ノック体6を操作する際、回転操作部83をネジ緩み方向に回転させることにより、締め付け部材8が軸筒2に対して後方に移動し、変形部81と軸筒2の後端開口部内面との圧接が解除されるとともに変形部81が径方向外方に弾性変形し、それにより、変形部81によるノック体6または摩擦部64との締め付けが容易に解除できる。
【0013】
・摩擦部
本発明において摩擦部64は、弾性材料(軟質材料)から構成されることが好ましい。前記摩擦部64を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部64を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。尚、本発明のノック体6は、少なくとも後端部外面が弾性材料からなる構成であればよく、例えば、ノック体6全体を弾性材料から構成してもよい。
【0014】
・熱変色性インキ
本願発明において、前記熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0015】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0016】
本発明では、
図5に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2〜t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキが適用されることが好ましい。
図5において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0017】
本発明では、前記熱変色性インキの摩擦部64の摩擦熱による変色温度は、25℃〜95℃(好ましくは36℃〜95℃)に設定される。即ち、本発明では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t
4)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t
1)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦部64による摩擦熱で容易に変色することができる。