特許第5985602号(P5985602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985602
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】被覆物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20160823BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C03C17/36
   C03C27/06 101H
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-501209(P2014-501209)
(86)(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公表番号】特表2014-508712(P2014-508712A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】US2012029938
(87)【国際公開番号】WO2012129303
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】13/052,779
(32)【優先日】2011年3月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513237445
【氏名又は名称】アポジー・エンタープライジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APOGEE ENTERPRISES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル・ハファー
(72)【発明者】
【氏名】ランディ・リーランド・スタル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー・ボーヤム
(72)【発明者】
【氏名】キース・グラブ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン・スパージョン
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−531451(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/107998(WO,A1)
【文献】 特表2008−522870(JP,A)
【文献】 特開昭63−265499(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/053921(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0115655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00 − 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂縁、底部縁および向かい合った側縁によって規定される主表面を有する単一ガラスシート基板;
前記主表面の第1被覆表面セグメント
前記主表面の第2被覆表面セグメント;および
前記主表面の遷移被覆表面セグメント;
を有して成る被覆基板であって、
前記第1被覆表面セグメントが、前記頂縁を有して成り、前記向かい合った側縁の間にて該頂縁から第1境界(前記頂縁と前記底部縁との間の前記主表面に位置付けられた該第1境界)まで延在しており、また、該第1被覆表面セグメントは、少なくとも1つの層を有して成る第1積層系を有して成り、
前記第2被覆表面セグメントが、前記底部縁を有して成り、前記向かい合った側縁の間にて該底部縁から第2境界(前記頂縁と前記底部縁との間の前記主表面に位置付けられた該第2境界)まで延在しており、また、該第2被覆表面セグメントは、少なくとも1つの層を有して成る第2積層系を有して成り、
前記遷移被覆表面セグメントが、前記第1境界、前記第2境界、および前記主表面の向かい合った側縁を有して成り、また、該遷移被覆表面セグメントが、前記第1積層系と前記第2積層系との間の穏やかな厚さの少なくとも1つの層を有して成り、また
前記第1被覆表面セグメントが高可視光透過領域を規定し、前記第2被覆表面セグメントが低可視光透過領域を規定する、被覆基板。
【請求項2】
前記第1積層系が複数の層を有して成り、前記第2積層系が複数の層を有して成る請求項1に記載の被覆基板。
【請求項3】
前記第1被覆表面セグメントおよび前記第2被覆表面セグメントのどちらかまたは両方が、低放射率コーティングを有して成る、請求項2に記載の被覆基板。
【請求項4】
前記第1積層系および前記第2積層系の複数の層が同じであり、該第1積層系には該第2積層系と比べた1以上の層の違いがある、請求項に記載の被覆基板。
【請求項5】
前記1以上の層の違いが、1以上の追加的な層、1以上のより少ない層、より大きい厚さを有する1以上の層、より小さい厚さを有する1以上の層および/または異なる材料の1以上の層を有する、請求項に記載の被覆基板。
【請求項6】
前記1以上の層の違いが、前記主表面の前記遷移被覆表面セグメントに及んで徐々に生じる、請求項に記載の被覆基板。
【請求項7】
前記第1被覆表面セグメントが60%以上の可視光透過率を有し、前記第2被覆表面セグメントが40%以下の可視光透過率を有する、請求項3に記載の被覆基板。
【請求項8】
前記第2被覆表面セグメントが、前記第1被覆表面セグメントの日射熱取得率よりも小さい日射熱取得率を有する、請求項に記載の被覆基板。
【請求項9】
前記第1被覆表面セグメントが、前記主表面の合計表面積の10%〜4%である、請求項に記載の被覆基板。
【請求項10】
前記単一ガラスシート基板が、フロートガラスである、請求項に記載の被覆基板。
【請求項11】
被覆基板の製造方法であって、当該方法が:
a)頂縁、底部縁および向かい合った側縁によって規定される主表面を有するガラスシート基板を準備すること;
b)前記主表面の第1表面セグメント上に第1コーティングを堆積すること;および
c)前記主表面の第2表面セグメント上に第2コーティングを堆積すること;
を有して成り、
前記第1表面セグメントが、前記頂縁を有して成り、前記向かい合った側縁の間にて該頂縁から第1境界(前記頂縁と前記底部縁との間の前記主表面に位置付けられた該第1境界)まで延在しており、また、該第1表面セグメントは高可視光透過領域を規定し、
前記第2表面セグメントが、前記底部縁を有して成り、前記向かい合った側縁の間にて該底部縁から第2境界(前記頂縁と前記底部縁との間の前記主表面に位置付けられた該第2境界)まで延在しており、また、該第2表面セグメントは低可視光透過領域を規定し、
前記第1表面セグメントおよび前記第2表面セグメントへの前記堆積が遷移被覆表面セグメントの形成を引き起こし、該遷移被覆表面セグメントが、前記第1境界、前記第2境界、および前記主表面の前記向かい合った側縁を有して成り、また、該遷移被覆表面セグメントが、第1積層系と第2積層系との間の穏やかな厚さの少なくとも1つの層を有して成る、被覆基板の製造方法。
【請求項12】
前記第1表面セグメントへの堆積工程が、複数の層を有して成る前記第1積層系を有して成る前記第1コーティングを堆積することを含んで成り、前記第2表面セグメントへの堆積工程が、複数の層を有して成る前記第2積層系を堆積することを含んで成る、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1コーティングおよび前記第2コーティングを、マグネトロンスパッタリングによって堆積する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
スパッタリングターゲットと前記主表面の間に1以上の物体を選択的に配置することによって、1以上の層の違いを達成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
スパッタリングチャンバー内の反応性ガスおよび/もしくは不活性ガスの種類、容量、方向ならびに/または源の位置を操作することによって、1以上の層の違いを達成する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
なくとも2つの平行な離隔したガラスシートであって、該少なくとも2つのガラスシートが、それらの周縁で一体に封止されて、その間絶縁チャンバーを規定している、ガラスシート
を有して成る絶縁ガラスユニットであって;
前記ガラスシートの少なくとも1つが請求項1の前記被覆基板である、絶縁ガラスユニット。
【請求項17】
前記第1被覆表面セグメント、前記第2被覆表面セグメントおよび前記遷移被覆表面セグメントが、絶縁チャンバーと向かい合っている、請求項16に記載の絶縁ガラスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の発明の態様において、本開示は、基板または基板表面への被覆に関する。第2の発明の態様において、本開示は、絶縁ガラスユニットを透過する可視光の分配に影響を与えるおよび/または改善するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窓技術の進歩は、窓の熱、冷却および光特性に影響を与えることおよび改善することによって、建造物のエネルギー消費を減少させてきた。しばしば、このような進歩は、窓の熱的および/または透過特性に影響を与える被覆の適用に関する。例えば、被覆は、放射熱伝達を減少し、可視光透過率を増加し、まぶしさを減少させるなどのために、窓に適用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
低放射率(「low-e」)コーティングは既知である。これらの被覆は、1以上の反射金属層と2以上の透過誘電層を一般に有する。低放射率コーティングは、熱的赤外線における高反射率を一般に有し、特定の構成に依存して、「日射熱取得率」および「遮蔽係数」などの性能指標の観点から、変動する全体の太陽光性能を有することができる。トレードオフが、時折、より高い太陽光性能の低放射率コーティングにもたらされ、それによって、より高い太陽光性能を達成するように選択された膜が、窓を透過する可視光量を制限する効果を有する。結果として、これらのコーティングを有する窓が、自然照明を建造物の空間にほとんど入れないようにする。従って、同じ建造物空間において、高い太陽光性能と高い可視光透過率の両方を有する窓を有することが望ましいことがある。しかしながら、現在、同じ建造物空間においてこれらの特徴の両方を達成する唯一の手段は、各々のコーティングの1つをそれぞれ有する別々の窓を設けることである。ついで、これらの別々の窓のそれぞれは、独自の枠組みに据え付けられる必要があり、したがって、建造物空間で達成可能な最大のガラスと壁の比率を減少して、設置コストを単一窓のそれに対して増加し得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、単一窓シートにおける高い太陽光性能および高い可視光透過率をもたらすシステムおよび方法が望ましいことがある。更に、建造物空間内のこのような単一シートを透過する可視光の分配に対する影響を最大限にしおよび/または向上するシステムおよび方法が望ましいことがある。
【0005】
1つの実施形態において、本開示は、被覆基板に関する。被覆基板は、主表面を有する単一表面を有する。第1コーティングは、主表面の第1表面セグメントに適用されている。第2コーティングが、主表面の第2表面セグメントに適用されている。第1コーティングは、第2コーティングと異なる。
【0006】
第1の実施形態において、本開示は、被覆基板の製造方法に関する。その方法は、主表面を有する基板を準備し、前記主表面の第1表面セグメント上に第1コーティングを堆積し、第2主表面の第2表面セグメント上に第2コーティングを堆積する。第1コーティングは第2コーティングと異なる。
【0007】
1つの実施形態において、本開示は、絶縁ガラスユニットに関する。絶縁ガラスユニットは、少なくとも2つの実質的に平行な分離ガラスシートを有する。ガラスの少なくとも2つのシートは、絶縁チャンバーを規定するようにそれらの周囲縁で一体に封止されている。1つのシートは、主表面を有する。第1コーティングは、主表面の第1表面に適用されている。第2コーティングは、主表面の第2表面に適用されている。第1コーティングは、第2コーティングと異なる。
【0008】
上記の一般的記載と下記の詳細な記載の両方は、例および説明の目的であり、本開示を必ずしも限定しないことを理解すべきである。明細書の部分に組み込まれおよび明細書の部分を構成する添付図面は、本開示における発明の主題を示す。併せて、明細書および図面は、本開示の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の1つの実施形態に係る分割して被覆された基板を示す図である。
図2図2は、本開示の1つの実施形態に係る絶縁ガラスユニットに組み込まれている分割して被覆された基板の断面的な側面図である。
図3図3は、シートの長さに沿って、様々な位置における分割して被覆されたシートのパーセント(%)の可視光透過値を示すグラフである。
図4図4は、本開示の1つの実施形態に係る光方向転換器具を有する絶縁ガラスユニットの側面の断面図である。
図5図5は、本開示の1つの実施形態に係る光方向転換器具の前面斜視図である。
図6図6は、本開示の1つの実施形態に係る光方向転換器具の後方斜視図である。
図7図7は、本開示の1つの実施形態に係る光方向転換器具の側面の断面図である。
図7A図7Aは、本開示の1つの実施形態に係る光方向転換器具の側面の断面図である。
図7B図7Bは、本開示の1つの実施形態に係る光方向転換器具の側面の断面図である。
図8図8は、本開示の1つの実施形態に係る光方向転換器具を有する絶縁ガラスユニットの側面の断面図の概略図である。
図9図9は、本開示の1つの実施形態に係る光方向転換器具を有する絶縁ガラスユニットの側面の断面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の第1の発明の態様は、コーティングを有する物品または基板に関する。
【0011】
より詳細には、第1の発明の態様は、基板の第1セグメントの1以上の特性(例えば、可視光透過率、赤外透過率、放射率、日射熱取得、遮光および色など)が、基板の他のセグメントにおけるそれらの特性と異なるように、その上に選択的に配置されている1以上のコーティングを有する基板に関する。
【0012】
例えば、第1の発明の態様に従って、主表面を有する基板が、主表面の第1表面セグメント上に設けられている第1コーティングおよび主表面の第2表面セグメント上に設けられている第2コーティングなどを有してよく、それぞれのコーティングが、個別の表面セグメントに、異なる特徴または特性を与える。
【0013】
あるいは、主表面を有する基板が、主表面の第1表面セグメント上に設けられている第1コーティングおよび主表面の1以上の被覆されていない表面セグメントを有してよい。
【0014】
第1の発明の態様は、分割して被覆された基板を製造する方法にも関する。
【0015】
図1を参照すると、頂縁12、向かい合った側縁14a、14b、および底縁16を有する分割して被覆された基板の主表面が示されている。
【0016】
例示的な実施形態において、表面Sが、頂縁12、側縁14a、14bおよび境界B1によって規定されておりそこに適用されている第1コーティングC1を有している第1セグメント18と、底縁16、側縁14a、14bおよび境界B1によって規定されておりそこに適用されている第2コーティングC2を有する第2セグメントを含んでよい。
【0017】
一般に、第1セグメント18が、第2セグメント22のそれに対して異なる1以上の特性(例えば、可視光透過率、赤外透過率、放射率、日射熱取得率、遮光および色など)を示すように、第1コーティングC1は、第2コーティングC2に対して構成されてよい。
【0018】
本開示は、基板10が、そこに適用されている異なるコーティングを有する2つのセグメントを有する実施形態に関して記載されているが、同じおよび/または異なるコーティングを有する任意の数の追加のセグメントを有する基板が本開示の範囲内にあることは当然である。
【0019】
いくらかの実施形態において、適切な基板10が、ガラス、石英、任意のプラスチックまたは有機ポリマー基板などの任意の透明な、実質的に透明な、若しくは光透過性の基板、または任意の他の適切な材料若しくは組み合わせであってよい。
【0020】
更に、基板10は、2以上の異なる材料の積層であってよく、様々な厚さであってよい。
【0021】
基板10が、例えば、ガラス基板中のイオン含有量を制御することによって達成できるように、膜またはコーティングとは別に、特性を示すように構成されてよい。
【0022】
1つの実施形態において、基板が、フロートガラスであってよい。基板10は、その目的に適した任意の形状および寸法を有することができる。例えば、基板10は、円形、正方形、長方形、多角形、不規則な形状、またはこれらの組合せとすることができる。基板10は、反射率と透過率の制御が必要または所望されるさまざまな配置と設定において使用することができる。例えば、基板10は、窓の一部、天窓、ドア、または他のグレージング(例えば、自動車グレージング)であってよい。
【0023】
例示的な実施形態において、コーティングC1、C2が、基板10の主表面S上に適用でき、単層または複数の層からなる層系に配置できる。層系の層は、系の他の層または基板の頂に直接的に、または系の他の層または基板に隣接して、連続した関係で設けられていてよい。個々の層の厚さまたは層系の厚さが統一されていてもよく、またはその幅や長さにわたって変化していてよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、コーティングC1、C2のいずれかまたは両方が、低放射率コーティングとして構成することができる。低放射率コーティングは、金属層、金属酸化物層、またはそれらの組み合わせから形成することができる。1つの実施形態において、低放射率コーティングは、隣接する誘電体層間に配置されている一つ以上の金属層(例えば、銀、銅、金、白金、パラジウムおよびこれらの合金)を有する複数の誘電体層(例えば、亜鉛、スズ、インジウム、ビスマス、チタン、ハフニウム、ジルコニウムおよびそれらの合金の酸化物の酸化物)を有する層系として適用することができる。代替的にまたは追加的に、他の材料または層は、別個の誘電体層間に配置できる。
【0025】
図1に示すように、例示的な実施形態において、第1および第2のセグメント18、22を規定している境界B1が、頂縁12および底縁16に実質的に平行に延在している直線として形成されるように、コーティングC1、C2が基板10に適用されている。あるいは、境界B1は、角度がつけられ、傾斜し、またはセグメント化され、それは、それらの組合せであってよい。境界B1は、頂縁と底縁12、16の間の任意の位置に配置することができる。第1の実施形態によれば、別の実施形態による約5〜70パーセントの間(さらに別の実施形態によれば、表面Sの合計表面積の10〜40重量%の間)において、第1セグメント18の表面積が約1〜90パーセントとなるように、境界B1が配置されていてよい。一般に、第1および第2のセグメント18、22は、分割して被覆された基板10の使用目的に応じて互いに相対的な寸法であってよい。
【0026】
上述したように、基板Sの第1セグメント18が、第2セグメント22のそれに関して異なる特性を1つ以上示すように、第1コーティングC1が、第2コーティングC2に対して構成されていてよい。いくつかの実施形態において、セグメント18、22の特性のこのような変化は、第2コーティングC2の層系に対する第1コーティングC1の層系を変化させることによって達成することができる。例えば、第1コーティングC1の層系は、1以上の追加的な層、1以上のより少ない層、より大きい厚さを有する1以上の層、より小さい厚さを有する1以上の層および/または異なる材料の1以上の層を含んでよい。この方法でコーティングC1、C2の層配置を変えることによって、第1セグメント18によって示される特性が、所望の配置における特性の組み合わせを示す分割して被覆された基板を達成するように、第2セグメント22のそれらの特性に対して変えられてよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1コーティングC1の層系は、第2コーティングC2の層系と実質的に同様に(例えば、材料、厚さなどに関して)構成されてよい。例えば、コーティングC1、C2は、一つ以上の別個の層の変化を除いて、実質的に同じである層系として形成することができる(即ち、コーティングの複数の層が、実質的に同じであり、一つ以上の別個の層が異なる)。あるいは、コーティングC1、C2は、実質的に異なる層系として形成することができる(すなわち、層が実質的に同じでないまたは層の少数が実質的に同じである)。
【0028】
様々な実施形態において、適用技術に依存して、コーティングC1、C2の間の遷移が緩やかであってよい。例えば、コーティングC1がコーティングC2に対して1以上の追加の層、より少ない層または異なる材料の層を有する実施形態において、このような層の修正は、コーティングC2におけるその仕上げ形状に達する前において表面Sの遷移セグメント上で徐々に生じてよい(例えば、層がコーティングC2の仕上げ厚さに達する前において表面Sの遷移セグメント上で緩やかな厚さ(graded thickness(段階的・傾斜的な変化を伴う穏やかな厚さ))を有してよい)。このように緩やかな遷移を設けることにより、第1および第2セグメント18、22において任意の視覚的に知覚可能な差(例えば、色、反射特性を)を"緩和(軟化)"でき、従って、より美的で魅力のある分割して被覆された基板を製造できる。遷移セグメントの長さは、"緩和(軟化)"の任意の所望の程度を達成するように選択することができる。

【0029】
様々な実施形態において、第1セグメント18が、第2セグメント22の可視光線透過率よりも高い可視光透過率を示すように、コーティングC1、C2が構成されてよい。1つの実施形態において、第1セグメント18が、いわゆる高透過領域(約60%以上の可視光透過率)であり、第2セグメント22が、いわゆる低透過領域(約40%以下の可視光透過率)であってよい。追加的または代替的に、第2セグメント22が、第1セグメント18に対して優れた太陽光性能(例えば、より低い日射熱取得率、低い遮蔽係数など)を示すように、コーティングC1、C2が構成されてよい。第1および第2のセグメント18、22の他の特性が、追加的または代替的に互いに対して変化してよい。
【0030】
図2は、本開示の第1の態様に従って、絶縁ガラス(IG)ユニット50に組み込まれた分割して被覆された基板を示す。図2に示すように、IGユニット50は、チャンバー58をその間で形成するように、封止材56によってそれらの周囲縁で封止されている第1ペインまたはライト52および第2ペインまたはライト54を有するマルチペイン窓として形成されてよい。ライト52、54の周囲縁を封止して、例えばアルゴン、空気およびクリプトン等の低コンダクタンスのガスをチャンバー58に導入することにより、高い絶縁値IGユニット50を形成することができる。1つの実施形態において、ライト52、54の1つ以上の表面は、図1に関して説明したのと同様の方法で分割して被覆することができる。すなわち、例えば、いずれかまたは両方の内側表面62、64などの、ライト52、54の1つ以上の表面が、第1表面セグメントに適用されている第1コーティングC1と第2表面セグメントに適用されている第2コーティングC2を有してよい(図2は、内側表面62に適用されている第1および第2コーティングを示す)。図2は、本発明の分割して被覆された基板が用いられ得るIGユニットのたった1つの実施形態を示す。例えば、本発明の分割して被覆された基板が、3つ以上のペインを有するIGユニットに用いられてよい。
【0031】
本発明の第1の発明は、上述の分割して被覆された基板の製造方法を更に有する。種々の方法を、コーティングを適用するように、またはコーティングを形成する膜または層を適用するように用いることができる。コーティングは、1つ以上の一連の別個の層に、若しくは段階的な膜の厚さとして、またはそれらの組み合わせとして堆積されてよい。コーティングはまた、スパッタ堆積またはプラズマ化学蒸着などの任意の適切な薄膜堆積技術を用いて堆積させることができる。スパッタ堆積技術は、例えば、ダイオードスパッタリング、マグネトロンスパッタリング法、共焦点スパッタリングおよび直接スパッタリング等もよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、分割して被覆された基板の製造方法が、マグネトロンスパッタリングコーターシステムの開始時に基板を位置決めすること、およびコンベヤアセンブリによって、コーティングをなす様々な膜または層が順次適用される複数の分離被覆ゾーンを通って、基板を搬送することを含んでよい。搬送は、機械的にコンピュータ化された任意の適切な手段によって、または手の操作によって達成され得ることが理解される。1つの例において、基板の搬送は、コンベヤアセンブリの搬送ローラーによるものであってよい。各被覆ゾーンは、基板上に膜または層を堆積するように適合された1つまたは複数のスパッタリングチャンバーまたはベイ(または、湾、室)を備えることができる。ベイのそれぞれにおいて、スパッタリング可能なターゲット材料を有する1つ以上のターゲットが置かれてよい。スパッタリングターゲットの数とタイプ、すなわち、平面または円筒形等は、製造またはその他の設定のために変化させることができる。層は、金属または誘電源またはターゲットからスパッタリングすることができ、スパッタリングは、不活性または反応性雰囲気中で起こり得る。堆積膜の厚さは、基板速度を変化させることによっておよび/またはターゲット上に位置する電力を変化させることによって制御することができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、分割して被覆された基板の製造方法は、被覆ゾーンの1以上のスパッタリングターゲットと基板の間のシールド、スクリーンまたは他の適当な障害物などの1以上の物体をマスキングまたは選択的に配置することを含んでよい。特定のゾーン内のそのような障害物を選択的に成形および配置することによって、特定の被覆ゾーンに適用されている膜または層は、基板の表面にわたって変化させることができる。
【0034】
様々な実施形態において、マスキングに加えてまたは代わりに、分割して被覆された基板の製造方法が、特定のゾーンに用いられる反応性ガスまたはイオン化ガスを操作することを有することができる。例えば、1以上の被覆ゾーン内の反応性ガスの種類、容量、方向および/または発生源の位置を、基材の表面を横切って選択的に変化する膜または層を達成するように変化させることができる。
【0035】
本発明の第1の態様のシステムおよび方法は、いくつかの実施形態において、特定の特性または特徴を示す第1セグメントと、第1のセグメントとは異なる性質または特性を示す第2セグメントを有する、窓シートなどの単一の一体基板に関する。異なる特性や性質を有する単一の窓シートの2つのセグメントをもたらすことは、互いに隣接して据え付けられている別々の窓で同じ2つの特性をもたらすことよりもいくつかの利点をもたらす。例えば、各窓が独自の枠組みに据え付けられる必要があるので、別々の窓に2つの特性をもたらすことは、追加的な枠組みを取り付けることを要求し、従って、達成可能な最大のガラスと壁の比を減少させるからである。さらに、2つの別々の窓のための設置費用は、1つの窓に比べてかなり高くなっている。
【実施例】
【0036】
84インチの長さ、30インチの幅、および6ミリメートルの厚さを有する透明なアニールされたガラスのシートは、マグネトロンスパッタ法を用いて被覆された。シートの頂縁から出発し、第1低放射率コーティングは、シートの上側セグメント上に適用され、第2低放射率コーティングは、シートの下側セグメント上に堆積された。第1コーティングと第2コーティングの間の遷移は、スパッタリングプロセス中に用いられる反応ガスの操作によって達成された。被覆されたシートは、垂直入射における可視光透過率を決定するために全米窓格付協議会の手順に従って、可視光透過率を測定した。図3は、試験結果を、測定されたパーセント(%)の可視光透過率対シートに沿った測定位置として示す。前述の例から分かるように、本開示の被覆システムおよび方法は、高可視光透過率を示す第1表面セグメント、および低可視光透過率を示す第2表面セグメント有する被覆されたガラスの単一シートをもたらすことができる。
【0037】
本開示の第2の本発明の態様は、それに備え付けられた1つ以上の入射光方向転換器具を有する絶縁ガラスユニットに関する。より具体的には、本発明の第2の態様は、絶縁ガラスユニットの内側チャンバー内に据え付けられた1つ以上の入射光方向転換器具を有する絶縁ガラスユニットに関する。一般に、入射光方向転換器具は、IGユニット100の部分を通って入ってくる自然光を受光して、所望の様式で建物空間内に反射するように、またはさもなければ光を方向転換するように配置および構成することができる。
【0038】
図4を参照すると、頂縁103、向かい合った側縁、および底縁105を画定する絶縁ガラスユニット100は、それに備え付けられた光方向転換器具102を有してよい。絶縁ガラスユニット100は、密封チャンバー114を形成するように封止材112によってその周囲縁で封止されておりスペーサ108によって分離した関係で設けられている第1ペインまたはライト104および第2ペインまたはライト106を有するマルチペイン窓として形成されてよい。例えば、アルゴン、空気およびクリプトン等の低コンダクタンスのガスは、密閉されたチャンバー114内に存在してよい。器具102は、密封チャンバー114内に据え付けてよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、IGユニット100は、建物の壁に据え付けるために構成されてよい。そのような実施形態において、"第1"(または"#1")表面104aは、屋外環境に面するIGユニット100の最外側シートの表面として規定することができる。従って、それは、自然光DLが最初にぶつかるIGユニット100の#1表面104aであってよい。内側101に向かって#1表面から移動し、次の表面は、「第2」(または"#2")表面104bと呼ぶことができる。内側101に向かってさらに移動すると、次の表面は、"第3の"(または"#3")表面106a、続いて、"第4の"(または"#4")面106bと呼ぶことができる。
【0040】
例示的な実施形態において、ライト104、106は、ガラス、石英、任意のプラスチックまたは有機ポリマー基板、任意の他の適切な材料または材料の組み合わせなどの任意の透明な、実質的に透明、または光透過性材料から形成することができる。さらに、ライト104、106は、2つ以上の異なる材料の積層体であってもよく、様々な厚さであってよい。1つの実施形態において、ライト104、106はフロートガラスであってよい。ライト104、106は、その目的に適した任意の形状および寸法を有することができる。例えば、ライト104、106は、円形、正方形、長方形、多角形、不規則な形状、またはそれらの組合せとすることができる
【0041】
様々な実施形態において、スペーサ108は、1つ以上のセクションに形成され、間隔を隔ててライト104、106を維持するために、IGユニット100の周囲に延びている。スペーサ108は、平坦な板状部材として、または示すように中実または中空のチューブとして形成してよい。スペーサ108の矩形断面が示されているが、スペーサ108は、様々な断面構成でもたらされ得る。スペーサ108は、限定されないが、アルミニウム、鋼、合金、または他の金属材料を有する1つ以上の材料から形成されてよい。他の材料はまた、複合材料、プラスチック、または木を有することができる。スペーサ108は、摩擦嵌合、締付け機構(例えば、接着剤)またはそれらの組合せによってライト104、106の間に固定することができる。
【0042】
図5−6を参照すると、本開示の一部の実施形態による光方向変換器102のそれぞれの斜視図の正面図と後面図が示されている。一般に、光方向変換器102は、天然の入射光を受光し、内側空間内に上向きに同じものを反射するように構成され、従って、内側空間に間接照明をもたらされてよい。間接照明は、直接照明に比べていくつかの利点をもたらすことができる。例えば、間接照明は、しばしば、よりバランスのとれた明るさと視覚的な快適さを特徴付ける空間をもたらす。さらに、それは、しばしば、天井の電気照明を薄暗くまたはオフにし、それによって省エネにすることができるようにすることによって、経済的および環境上の利点をもたらす。さらに、それは、電子ディスプレイ画面の視聴中に観察されるような、建築空間の居住者が経験するまぶしさの量および眼精疲労を低減する。
【0043】
例示的な実施形態において、器具102は、日光表面仕上げを有するベース部材116、または前面117、後面118、前面117から延びる複数のブレードまたはスラット119、および基材116に形成されておりそれを通過して延びる複数の開口122を有するルーバ型器具として構成することができる。器具102は、IGユニット100のチャンバー114内の器具102の据え付けを容易にするために、リムまたはフランジ部材124を更に有することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、ベース部材116およびその面117、118は、頂縁126、底部縁128、向かい合った側縁132a、132bを有する実質的に平面の細長い部材として形成されてよい。 図5−6のベース部材116は、矩形状の部材として形成されているが、ベース部材が、その意図する目的に適した任意の形状および寸法を有することができることを理解されたい。例えば、ベース部材は、円形、正方形、多角形、不規則な形状、またはこれらの組合せとすることができる。別の例として、基部部材116は、器具102を有する絶縁ガラスユニットの寸法および形状に一致するような寸法形状とすることができる(すなわち、ベース部材116の一つ以上の縁が、一般に絶縁ガラスユニットの一つ以上の縁に一致する)。ベース部材116は、限定されないが、アルミニウム、鋼、合金、または他の金属材料を有する1つ以上の材料から形成されてよい。他の材料は、また、複合材料、プラスチックまたは木を有することができる。ベース部材116は、例えば、ベース部材116の外観を向上させ、ベース部材116を保護し、および/またはベース部材116の反射特性を変更するように、1つ以上のコーティングまたは仕上げを備えていてよい。
【0045】
様々な実施形態において、スラット119が、頂縁126と底縁128に実質的に平行に長手方向に延びる前面117から突出した細長い部材として形成されてよい。スラット119は、実質的に全体の前面117を横切って延びることができる。あるいは、 図5−6に示すように、スラット119は、ベース部材116によって形成された一つ以上の横断部材134によって中断されていてよい。横断部材134の数と幅を器具102の所望の形状に適応するように変更され得ることを理解されたい。1つの実施形態において、スラット119が、基材116に対して一体的に形成されてよい(すなわち、スラット119がベース部材116の一連の切断および/または屈曲によって形成されてよい)。あるいは、スラット119は、接着剤、突合せ溶接、プラグ溶接、重ね溶接、リベット、かしめ、ガセット補強、釘等によって表面117に結合された別個の構成要素であってよい。スラット119が、限定されないが、アルミニウム、鋼、合金または他の金属材料を有する1つ以上の材料から形成されてよい。他の材料はまた、複合材料、プラスチックまたは木を有することができる。1つの実施形態において、スラット119とベース部材116は、同じ材料で形成することができる。
【0046】
図7を参照すると、図5−6の光方向変換器102の側断面図が示されている。示すように、スラット119は、前縁136で終端する前に、前面117から延びており、入射面138と反対側表面142を規定することができる。表面138、142は、滑らかな、ギザギザ、鋸歯状、刻み目またはそれらの組合せであってよく、またはそうでなければ他の所望の様式で光を方向転換するために処理されていてよい。1つの実施形態において、少なくとも、スラット119の入射表面138は、表面138の反射特性を増大させるように構成された一つ以上のコーティングまたは仕上げを設けて、それによって、建物空間に間接照明をもたらすそのような表面の能力を高める。例えば、表面138は、アクリル系またはフルオロポリマー樹脂、または他のアクリル系、ポリエステル系およびウレタンコーティングを設けてよい。他の仕上げを設けてよい。表面138は、鏡面反射率、拡散反射率またはこれらの組み合わせを達成するために構成されてよく、またはそうでなければ処理されてよい。さらなる実施形態において、対向表面142はまた、表面142の反射特性を増大させるように構成された一つ以上のコーティングまたは仕上げを設けてよい。
【0047】
いくつかのいくつかの実施形態において、スラット119は、前面117に対して実質的に垂直に延びることができるか、または図7に示すように、前面117に対して鋭角αで延びることができる。示すように、スラット119は、それぞれ、同じ角度で延びてよいし、スラット119のうちの1つ以上は、異なる角度で延びていてよい。角度αを変化させることによって、反射光の所望の経路、または反射パターンを達成することができる。例えば、角度αは、集束領域、広域、またはいくつかの他の所望の様式にわたって建物空間に間接的光をもたらす反射パターンを達成するために、スラット119の間で変化させることができる。
【0048】
例示的な実施形態において、スラット119は、平面的な(図7のように示されるように)、湾曲した、またはセグメント化された断面を有してよく、それは、それらの組合せであってよい。例えば、図7Aは、第1平面部と第2平面部を有するセグメント化された断面を有するスラット119を示す。さらなる例として、図7Bは、第1の弧状部分と第2の円弧状部を有するセグメント化された断面を有するスラット119を示す。平面と円弧セグメントの他の組み合わせをもたらすことができる。スラット119は、その長さに沿って同一の断面形状を有してよく、または断面形状が変えられてよい。さらに、示されたように、器具102のスラット119の各々は、同一の断面形状を有してもよく、またはスラット119の一つ以上は、他の一つ以上に対して異なる断面形状を有することができる。角度αと同様に、所望の反射パターンは、断面プロファイルの形状を操作することによって達成することができる。
【0049】
別の実施形態において、スラット119の1つ以上が、ベース部材116に移動可能に据え付けられてよい。例えば、スラット119の1つ以上が、ベース部材116に回動可能に据え付けられてよい。このように、スラット119の1つ以上の角度αは、器具102のユーザによって調節することができる。さらなる例として、スラット119がベース部材116に対して上昇および/または低下できるように、スラット119がベース部材116に摺動可能に据え付けることができる。さらに別の例として、スラット119とベース部材116は、器具102の全体の高さを調整することができるように、折り畳み可能であってよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、 1つ以上の開口122がベース部材116に形成され、およびそこを通って延びていてよい。一般に、開口122が、スラット119から反射された光の通過を促進しつつ、器具102を直接通過することができる自然光の量を制限するように構成および配置することができる。この点で、開口122の1つ以上が、スラット119からの反射光の通路を収容する距離で個々のスラット119の上方に設けられてよい。開口122は、スラット119の全長に沿って延びてよいし、スラット119の長さの一部分のみに沿って延びてよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の隣接する開口122とスラット119が最大直射日光角βを規定でき、該日光角βは、器具102を直接通過する日光の最大角度を表す(すなわち、スラット119からまず反射せずに器具102を通過して)。角度βは、例えば、前面117からスラット119の伸長長さを変化させることによって、前面117からスラット119の延長角度αを変化させたり、および/または開口122の幅を変えるなどして、所望に応じて変えることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、器具102は、チャンバー114内の器具102の据え付けを容易にするためにフランジ部材124を含んでよい。例えば、フランジ部材124は、 IGユニット100のスペーサ108に据え付けられるように構成することができる。この点で、フランジ部材124は、器具102の各縁またはそれらの一部に沿って延びることができ、または器具102の1以上の縁に沿ってのみ設けることができる。フランジ部材124は、前面117、後面118 、またはそれらの組み合わせから延びてもよく、および面117、118に実質的に垂直に、または器具102の据え付けに適合する別の角度で延びることができる。1つの実施形態において、フランジ部材124が、ベース部材116に対して一体的に形成されてよい(即ち、フランジ部材124は、ベース部材116の一連の切断および/または屈曲によって形成されてよい)。あるいは、フランジ部材124は、接着剤、突合せ溶接、プラグ溶接、重ね溶接、リベット、かしめ、ガセット補強および釘等を用いて、ベース部材116に結合されている別個の構成要素であってよい。フランジ部材124は、スペーサ108に固定され得るねじ、リベット、ボルト、ピン、または他の留め具によって、浸透のための1つまたは複数の穿孔144が設けられてよい。フランジ部材124の代替として、例えば、ハンガー、ブラケットのような他の機械的取付け器具、または互いに物体を固定するための他の公知の機械器具等は、チャンバー114内に器具102を据え付けるために使用することができる。さらなる代替として、器具102は、接着剤または他の結合剤を用いて、チャンバー114内に据え付けてよい。
【0052】
種々の実施形態において、器具102は、一体構造として構成することができる。すなわち、スラット119、開口122およびフランジ部材124の各々は、出発材料の単一のシートに対する一連の切断および/または屈曲によって形成されてよい。このような一体構造を用いることにより、器具102の製造中に適用され得るまたはそうでなければ存在し得る仕上げ材料、破片、他の汚染物質を捕捉し得る継ぎ目、隙間、または他の裂け目を、器具102は実質的に有さない。このような一体構造は、接着剤または結合剤などの任意の付着促進材料の必要性を更に排除することができる。このような物質の存在が、#2と#3の表面のいずれかまたは両方に適用されている薄膜コーティングなどのIGユニット100のチャンバー114内における要素に有害な影響を与える実施形態において、このような材料の不在は特に望ましいことがある。あるいは、器具102は、互いに結合された複数の別個の要素として構成することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、器具102の前面117が#2表面と向かい合うように、器具102が、チャンバー114内に据え付けられてよい(すなわち、前面117が、入ってくる自然光DLに面する)。このような取り付けにおいて、器具102は、入ってくる日光を受光するように、そのスラット119および開口122を介して、建物空間内に上向きに入射光を方向転換するように適合され、従って、所望の様式で、建物空間に間接照明をもたらすことができる。
【0054】
例示的な実施形態において、隙間または空隙が、器具102と、#2、#3表面104b、106aの間に存在するように、器具102がチャンバー114内に据え付けられてよい。1つの実施形態において、隙間は、例えば、IGユニット100に適用可能な風荷重および他の圧縮力などを考慮して、器具102といずれかのライト104、106の間の接触を防止する最小距離として選択することができる。あるいは、器具102と、#2、#3表面104b、106aの間の任意の所望の隙間が選択されてよい。
【0055】
種々の実施形態において、器具102は、IGユニット100の任意の部分またはセグメントにわたって延びるように寸法成形されてよい。例えば、1つの実施形態において、側縁132a、132bの間に延在する器具102の寸法として規定された器具102の幅が、 IGユニット100の幅と実質的に同等であり、頂と、底縁126、128の間に延在する器具102の寸法として規定された器具102の長さが、IGユニット100の長さ未満であるように、器具102が寸法成形されてよい。このような実施形態において、器具102の頂縁126が、IGユニット100の頂縁近傍に設けられてもよく、器具102の底縁128が、IGユニット100の底縁近傍に設けられてもよく、または器具102が、IGユニット100の頂縁と底縁から離間し設けられてよい。あるいは、器具102が、全体IGユニット100上に延びていてもよく、または器具102が、IGユニット100の任意の1つ以上の縁から離間して据え付けることができるような寸法にされてよい。
【0056】
例示的な実施形態において、光方向変換器102に代替として、またはそれに加えて、1以上の方向転換要素が、IGユニット100に関連付けることができる。例えば、それを通る光を方向転換するように構成されているポリマー膜は、ライト104、106の表面に適用されてよい。あるいは、光を方向転換することが知られている任意の他の成分を用いることができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、1つ以上の光方向転換器具を有することに加えて、IGユニット100は、例えば、本発明の第1の本発明の態様に従って分割して被覆されているいずれかまたは全ての#1、#2、#3および#4表面などの1つまたは複数の表面を有してよい。1つの実施形態において、#2、#3の表面のいずれかまたは両方が、分割して被覆することができる。別の実施形態において、#2表面のみは、分割して被覆することができる。本発明の第1の態様に関して説明した分割して被覆された表面の場合と同様に、IGユニット100の分割して被覆された表面が、表面の第1セグメントに適用されている第1コーティング、および表面の第2セグメントに適用されている第2コーティングを含んでよく、第1および第2コーティングの各々が、表面に異なる性質や特性を有する。1つの実施形態において、第1コーティングが適用されているその表面のその領域に対応する第1表面セグメントが、高い約60%以上の可視光透過率("高透過領域"である)を示し、第2コーティングが適用される表面のその領域に対応するIGユニットの第2セグメントが、約40%以下の可視光透過率("低透過領域"である。)を示すように、IGユニットの表面に適用されている第1および第2コーティングが構成されてよい。第1および第2コーティングは、可視光透過率に加えて、任意の数の特性を変化させるように構成されている。当業者によって理解されるように、高い透過領域と低い遷移領域の相対的な大きさは、建物空間に応じて、IGユニットの太陽光特性を最適化する要求と、増加した間接照明のための要求のバランスをとるように選択することができる。
【0058】
様々な実施形態において、光方向変換器102は、IGユニット100の寸法、形状、および/または高および低透過領域の大きさ、形状、および/または位置に基づいてIGユニット100内に配置することができる。例えば、光方向変換器102は、最大高透過領域の一部に(全体まで)実質的に重なるように構成および配置することができる(すなわち、器具102および高透過領域実質的に同じ"フットプリント"を有することができる)。高透過領域と光方向変換器102を整列して、建物空間に設けられた間接照明の量を最適化することができる。あるいは、寸法、形状、および/または光方向変換器102と、高および低透過領域の位置を、互いに独立して決定することができる。
【0059】
前述したように、IGユニット100は、建物の壁に据え付けることができる。具体的には、ライト106が、建物内側空間に隣接し、頂縁103が建物内側空間の天井に最も近いとなるように、IGユニット100が据え付けられていてよい。このような実施形態において、高透過領域が、IGユニット100の上側セグメントとして形成されてもよく(天井に最も近い)、および低透過領域が、IGユニット100の下側セグメントとして形成されてよい(天井に最も近い)。例えば、高透過領域の位置は、IGユニット100のいわゆるビュー領域の上方になるように選択することができる。さらに、光方向変換器102は、高い透過領域と実質的に位置合わせすることができる。このようにして透過領域と光転換器具102を配置することによって、単一のIGユニットの操作により間接照明の十分な量を建物の内側空間に供給できると同時に、そのライトの一方の表面全体にわたって高透過コーティングを有するIGユニットに対する改善した太陽光性能を達成できる。
【0060】
図8を参照すると、本発明の代替の実施形態に係る内側に配置された光方向変換器102を有するIGユニット200が示されている。IGユニット200は、外側ライト202 、内側ライト204 、中間ライト206を有する3シート窓として構成され、スペーサ208、212によって離間した関係で設けられ、密封チャンバー218を形成するように封止材214、216によって周縁縁で封止されてよい。例えば、アルゴン、空気およびクリプトン等の低コンダクタンスのガスは、密封チャンバー218に存在してよい。示すように、器具102が、その頂縁126がライト202、204の頂縁202a、204aと実質的に同じ平面にあるように密封チャンバー218内に据え付けられてよい。この点に関して、器具102の上側セグメントが密閉チャンバー218の上方に設けられてよい。図8の実施形態において、器具102が、締結器具を使用せずにIGユニット200内に配置されてよい。例えば、中間ライト206の頂縁206aによって垂直に支持し、スペーサ208、212によって上側セグメントに、および中間ライト206の頂縁206aを跨ぐ器具102の下方に延在しているフランジ部材124a、124bによって下側セグメントに、横方向に支持するように、器具102がIGユニット200内に配置されてよい。代替的に、または追加的に、器具102は、一つ以上のねじ、リベット、ボルト、ピン、または他のファスナーをスペーサ208、212の一方または両方に固定することができる。
【0061】
図9を参照すると、本発明の代替の実施形態に係る内側に配置された光方向変換器102を有するIGユニット300が示されている。IGユニット300は、外側ライト302 、内側ライト304 、および中間ライト306を有する3ライト窓として構成されてよい。外側ライト302および内側ライト304は、スペーサ308によって離間した関係で設けられてよい。中間シート306は、それぞれ、サブフレームによって外側ライト302および内側ライト304からまたはサブスペーサ312および314から分離した関係で設けられてよい。IGユニット300は、密封チャンバー318を形成するために封止材316によってその周囲縁で封止されてよい。例えば、アルゴン、空気またはクリプトン等の低コンダクタンスのガスは、密封チャンバー318に存在してよい。図8の実施形態とは対照的に、頂縁126がライト302、304の頂縁302a、304aの下方に位置するように、器具102が密封チャンバー318内に据え付けることができる。図8の実施形態と同様に、器具102は、締結器具を使用せずにIGユニット300内に据え付けてよい。例えば、器具102は、スペーサ308の底縁308aと、中間ライト306の頂縁306aの間に垂直に支持されるように、IGユニット300内に配置することができる。器具102は、サブスペーサ312、314によって上側セグメントに、中間ライト306の頂縁306aを跨ぐ器具102の下方に延在しているフランジ部材124a、124bによって下側セグメントに、横方向に支持されてよい。代替的に、または追加的に、器具102は、一つ以上のねじ、リベット、ボルト、ピン、または他のファスナーとサブスペーサ312、314の一方または両方に固定することができる。
【0062】
上記の説明において、本発明の様々な実施形態は、例示および説明の目的のために提示されている。これらは、網羅的であることまたは開示された正確な形態に本発明を限定するものではない。明らかな修正または変形が上記の教示に照らして可能である。実施形態が、本発明およびその実用化の原理の最善の実例をもたらすために選択および記載され、当業者が様々な実施形態においておよび特定の用途に適するように種々変形して、本発明を利用できるようにする。全てのそのような改変および変形は、それらが公正に、合法的におよび公平に題される幅に応じて解釈される場合に添付の特許請求の範囲によって決定されるように本発明の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図7B
図8
図9