(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985641
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】多材料から構成される自由造形可能な微細部品の積層造形法
(51)【国際特許分類】
B29C 67/00 20060101AFI20160823BHJP
B22F 7/06 20060101ALI20160823BHJP
B22F 3/00 20060101ALI20160823BHJP
B22F 5/10 20060101ALI20160823BHJP
B22F 7/00 20060101ALI20160823BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20160823BHJP
B22F 3/22 20060101ALI20160823BHJP
B33Y 10/00 20150101ALN20160823BHJP
【FI】
B29C67/00
B22F7/06 A
B22F3/00 A
B22F5/10
B22F7/00 F
B28B1/30 101
B22F3/22
!B33Y10/00
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-526487(P2014-526487)
(86)(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公表番号】特表2014-529523(P2014-529523A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】EP2012066339
(87)【国際公開番号】WO2013030064
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年6月29日
(31)【優先権主張番号】1100624-4
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】514048257
【氏名又は名称】ディジタル メタル アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】オークリント,ソーブヨルン
(72)【発明者】
【氏名】カールストローム,エリス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンダー,ペル
(72)【発明者】
【氏名】スティーンステット,ヨハンナ
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−006538(JP,A)
【文献】
特開平06−218712(JP,A)
【文献】
特開2000−234104(JP,A)
【文献】
特表2002−507940(JP,A)
【文献】
特開2012−040727(JP,A)
【文献】
特開2011−245713(JP,A)
【文献】
特開2010−031279(JP,A)
【文献】
特開2004−262243(JP,A)
【文献】
特開2005−007572(JP,A)
【文献】
特開2008−302607(JP,A)
【文献】
特表平07−507508(JP,A)
【文献】
特開2010−274480(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0004381(US,A1)
【文献】
米国特許第06363606(US,B1)
【文献】
国際公開第98/056566(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0071367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
B22F 1/00− 8/00
B28B 1/00− 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含まれる全ての材料に対して自由造形能力を有する複数の材料から構成されるような層を追加して物体を製造する方法であって、当該方法が、
a)物体を形成するための支持体を形成するプラットフォームとして平坦な基板を提供するステップと、
b)疎水性溶液を塗布することによって平坦な基板の選択された部分を疎水化するステップと、
c)5μm以下のサイズの粒子から構成される水ベースの粉末懸濁液を50μm以下の厚さの層としてキャストするステップと、
d)粉末成形体内に保持される結合剤を粉末層の一部に塗布するステップと、
e)水ベースの懸濁液の疎水性反発力によって形成された層内のギャップに粉末懸濁液又は粉末ペーストを含む1つ以上の二次材料を塗布するステップと、
f)前記粉末層、前記疎水化された領域、前記結合剤、及び前記二次材料を上述したステップのように繰り返し追加して、所望の形状及び大きさの粉状体を形成するステップと、
g)物体から付着粉末を洗い流すか清掃するステップと、
h)熱処理を行って結合剤を除去して、粉末状物体を固形状物体に焼結させるステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記ステップg)が、物体を支持体から取り外すステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末層のギャップは、熱処理中に消失しキャビティ又はチャネルを焼結された物体内に残すような犠牲材料で選択的に充填される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水ベースの粉末懸濁液は、ドクターブレード、スロットダイ又は押出法によって層状に堆積され、前記疎水性溶液及び前記結合剤がインクジェット印刷によって堆積され、前記二次材料がインクジェット印刷又は散布によって堆積される、
請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記疎水性溶液は、フルオロカーボン又はシリコーンの溶液又は分散液である、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末懸濁液は、セラミック又は硬質金属粉末から構成される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
追加の機能性は、センサ又はアクチュエータ用の誘電体、抵抗体、半導電体、磁性体又は他の機能性材料を含めることによって追加される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
当該方法は、マイクロシステムのパッケージを形成するべく、導電性材料及び絶縁性材料を有する構造体を形成するために使用される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
当該方法は、インプラント又は歯科用交換品を形成するために使用される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
当該方法は、研削又は切断用の工具を形成するために使用される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
当該方法は、機械的な精密部品を形成するために使用される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
当該方法は、マイクロ波用の導波路として使用するために、セラミック材料内に金属化表面を有するチャネル及びキャビティを形成するために使用される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
当該方法は、流体を輸送するために、セラミック材料内に金属化表面を有するチャネル及びキャビティを形成するために使用される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
当該方法は、光導波路を形成するために使用される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記光導波路が、セラミック材料内に又は該セラミック材料上部に形成される、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形に関し、より具体的には、含まれる全ての材料に対して自由造形能力を有する複数の材料から構成されるような層を追加して物体を製造するための方法に関する。
本発明は、仮想3Dモデル(CADモデル)を用いて開始され、この3D情報を用いて制御された方法で材料を追加して物体を成形するような物体を製作する方法を扱う。これらの種類の方法は、例えば光造形システム、自由造形製作、積層造形及び追加的な造形等の多数の用語によって一般に呼ばれている。3Dプリントは、このグループに属する一つの方法である。非常に複雑な形状を有する物体が平坦層の集合によって表すことができるので、この方法によれば、これら積層造形方法の実際の実装精度の範囲内で任意の所望の形状を製作することができる。
【背景技術】
【0002】
3Dプリントは、粉末層が表面に分布されるような方法である。インクジェットプリンタは、結合剤をこの表面上に分布させて、粒子同士間の一時的な結合を形成するように使用される。結合剤は乾燥され、プロセスは、結合剤と共に結合された物体を含むような粉末土台が形成されるまで繰り返される。付着粉末を物体から洗い流すか清掃して、その物体を次に焼結させる。当初存在していた粉末層の境界が消えて、固形状物体が形成される。
【0003】
他の積層造形方法と比較して、3Dプリントを用いる利点は、高速であることであり、支持構造体を形成する必要がなく、最終的な物体には残留応力がなく均質であるということである。高速性は粉末層を1つのステップで堆積させることからもたらされ、結合剤が複数のノズルを用いて同時に堆積される。各ポイントで分布させることによって物体を形成する又は選択的な固形化のために単一レーザや電子ビームスポットを使用する他の方法は、一度に1つのポイントでのみ形成しているので、本質的に遅くなる。粉末土台は、後工程で除去しなければならない別個の支持構造体を形成することなく、アーチ形状を含む構造体を形成することを可能にするような構造体を支持する。粉末は、密度勾配を有することなく堆積させることができ、これは別々の段階で行われる焼結が、収縮差を有することなく均質な物体を形成することができることを保証する。
【0004】
最初の3Dプリントの発明(Cima、特許文献1)では、懸濁液を吹付けすることにより粉末を表面上に塗布していた。Fcubicによる後の発明では、粉末を乾燥形態で散布して層を形成する(Fcubic、特許文献2)。後者の方法は非常に高速であるが、乾燥した状態で均一に散布されるようにするため約10〜20μmの粒径を有するより粗い粉末に制限されている。最も焼結させ易いセラミック粉末及び硬質金属粉末を含む微細粉末は、乾いた小粒子の流動を阻害するファンデルワールス引力に起因して、乾燥状態で均一な薄層として散布することは不可能である。
【0005】
マイクロシステムは、より高性能な製品を作るために、つまり新たな機能性を製品に追加するためにますます使用されている。そのマイクロシステムは、例えば太陽電池、バッテリー、OLED、マイクロ波部品、ラボ・オン・チップ及び高温度センサ、自動車及び台所用品等の製品で使用されている。マイクロシステムは、(加速度、放射線、力、圧力、湿度、化学的環境等を)感知するセンサーを含むことができ、それらマイクロシステムは、静電、磁歪、圧電、その他の原則に基づいて、アクチュエータをさらに含めることができる。
【0006】
今日まで、真の3D構造体を有するマイクロシステムパッケージを直接的に製作するために積層造形を使用することは不可能であった。このようなLTCC(低温共焼成セラミックス)等の使用可能な方法は、平坦基板のみ提供することができたが、電子接続(ビア)を層に対して垂直に配置する必要があった。これは、大抵の場合、LTCC構造と別個に製造された他の3D構造体を組み合わせることが必要になる。パッケージを形成するために追加的な及び直接的な製造を使用することによって、競争上の優位性を与える。集積電子チップの開発は、シリコン製造工場によって行われている非常に効率的に合理化された製造工程である。しかしながら、パッケージは同様に標準化されていない。パッケージングは、大抵の場合、マイクロシステムの生産における主要なコストを占める。さらに、パッケージの設計、製造及び検査は、非常に時間のかかるプロセスである。
【0007】
マイクロシステム用の電気配線は、絶縁材料及び導電性材料で形成されている。いくつかの用途では、他の材料が、抵抗を形成するとともに誘電特性を変更するために必要とされる。光相互接続のために、他の材料の組み合わせが、導波路を形成するために必要とされる。これは、製造プロセスがいくつかの材料を用いて形成され、これら材料を統合する必要がある。これは、積層造形のための以前に利用可能な方法では不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,146,567号
【特許文献2】WO03/055628
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の上述した及びその他の欠点に鑑みて、本発明の概略的な目的は、層を追加する積層造形を用いていくつかの材料を含む3D物体の製造を提供することである。本発明は、(例えばセラミックの、ガラスの、ハイブリッドの、金属間の、硬質金属又は金属材料等の)粉末系の材料から構成されるが、(このようなセラミックの、ガラスの、ハイブリッドの、金属間の、硬質金属又は金属材料等の)1つ以上の二次材料の追加を含むような物体の効率的な製造を可能にする。二次材料は、自由造形能力を有した状態で統合することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、本方法は、含まれる全ての材料に対して自由造形能力を有する複数の材料から構成されるような層を追加して物体を製造する方法に関し、当該方法が、物体を形成するための基盤として平坦な基板を提供するステップと、疎水性溶液を塗布して平坦な基板の選択された部分を疎水化するステップと、5μm以下のサイズの粒子から構成される水ベースの粉末懸濁液を50μm以下の厚さの層として拡散するステップと、粉末成形体内に保持される結合剤を粉末層の一部に塗布するステップと、水ベースの懸濁液の疎水性反発力により形成された層内のギャップに粉末懸濁液又は粉末ペースト等の1つ以上の二次材料を塗布するステップと、粉末層、疎水性領域、結合剤及び二次材料を上述したステップのように繰り返し追加して、所望の形状及び大きさの粉状体を形成するステップと、物体から付着粉末を洗い流すか清掃して、物体から支持体を取り外すステップと、熱処理を行って結合剤を除去して、粉末状物体を固形状物体に焼結するステップと、を含む。
【0011】
種々の例示的な実施形態によれば、平坦な支持体が、物体を形成するための基盤として提供される。微粉末は、スロットダイ、ドクターブレード又は押出法を用いて、支持体上に水ベースの懸濁液として堆積される。一時的な結合剤が、最終形状の物体に含まれるべき層の一部を結合するために使用される。水が濃縮懸濁液から急速に乾燥して、この層を固形化する。いくつかの層が、追加の結合剤を用いて物体を形成するために互いの上部に堆積される。疎水性材料は、次の層にギャップを形成するために、各粉末層上に選択的に堆積される。疎水性部分は、水ベースの懸濁液をはじく。これらのギャップは、インクジェット印刷を使用した二次材料又は分散剤で充填される。粉末層及び二次材料の堆積は、所望の層数まで繰り返される。物体全体が形成される時に、例えば一時的な結合剤と一緒に結合されなかった付着粉末は、物体から洗い流されるか清掃される。物体は、付着粉末を洗い流すか清掃する前に又はその後に支持体から取り外される。物体は、次に一時的な結合剤を除去するために加熱され、続いてさらに加熱されて、物体をいくつかの材料を含む固形状部品に焼結される。
【0012】
このようにして、任意の形状を有する二次材料の構造は、物体内に含めることができる。これらの構造は、例えば絶縁性又は屈折性マトリクス内に3Dビアを(任意の形状及び方向の電気的な、光学的な又は熱的な導体ラインとして)形成するために使用することができる。
【0013】
一般に、本発明の他の目的、特徴、及び利点は、本発明の範囲内で同様に可能であり、以下の詳細な開示から、添付の従属請求項から、及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る結合剤を添加して構造体を成形する及び付着粉末を除去することを示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る層内にギャップを形成して二次材料で充填する原理を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る接触パターンの概略図である。
【
図4】本発明に係る例示の実施形態の概略図である。
【
図5】本発明に係る方法の実施形態の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、ここで説明される例示的な実施形態、実験及び添付の図面を参照して例として説明する。
なお、当業者によって容易に理解されるように、図面は縮尺通りではないことを理解するべきであり、図面に示された以外の寸法は、本発明の範囲内で同様に可能である。
【0016】
様々な実施形態によれば、本発明は、セラミックが絶縁体として機能し、二次材料が3D導体線又は3Dビアに使用される、或いはこれらライン又はビアを形成するようなマイクロシステム用のパッケージを製造するために使用することができる。この方法で使用される微粉末は、小さい機構サイズの、高い精度を有する及び/又は高い精度が要求される部品を形成するために使用することができ、又はそのような使用を可能にする。この方法の他の使用目的は、光電子システム、マイクロ流体システム、機械的に小さな精密な部品、研削工具、歯科用物体や医療用インプラントを形成することである。本発明の様々な実施形態に従って形成されたマイクロシステムは、有利には、より高性能な製品を作る、すなわち新たな機能性を製品に追加するために使用される。
【0017】
本発明は、3Dプリントの概念に基づいている。乾燥粉末を散布又は吹付ける代わりに、粉末層が水に濃縮懸濁液として添加されている。懸濁液は、この懸濁液を拡散するためのスロットダイ、ドクターブレード、押出成形法又は他の技術を用いて薄層として塗布される。これは、粘度を有する液をスプレーノズルを通過させるために、非常に希薄な懸濁液でなければならないセラミック又は金属の吹付けとは異なっている。スロットダイを用いて懸濁液を塗布する際に、高濃縮懸濁液から正確に制御された方法で非常に薄い粉末層(1〜50μm)を追加することが可能である。高濃度の用語は、ここでは理論的にはランダムな最密充填濃度に近い懸濁液を表すために使用されている。高濃縮懸濁液は、微量の水を除去するだけで固体に変換するように急速に固形化する。結合剤が、次に、最終的な本体に留まるように層の一部にプリントされる。
【0018】
結合剤を添加するとともに、その後付着粉末を洗い流すか清掃して除去することにより構造体を成形する方法が、
図1に示されている。層内にギャップを形成して二次材料で充填する原理が、
図2に説明されている。
【0019】
層として追加される材料は、セラミックであるが、その材料は、例えばガラス、ハイブリッド材料、超硬合金、金属間化合物又は金属等の他の微粉末の層を塗布することも可能である。必要な要件は、粉末が例えば5μm未満の小さい粒子径を有することであり、それによって、その粉末は、低減された堆積状態で、又は、略堆積なしの状態で分散させることが可能になるだけでなく、薄層と共働して、高い精度で小さい形状を形成することが可能になる。粉末は、低減された状態で、又は微粉末と水との間で有意な反応をすることなしに水中にさらに分散させることができる。さらに、この方法によれば、粉末は、緻密な最終的な材料に焼結することができる。この目的のために、焼結能力を有する微粒子の非凝集粉末が利用され、ここで粒径要件は、実際の材料の種類に依存する。高性能セラミックについては、1μm以下の粒径を利用することができる。
【0020】
3Dプリントプロセスは、キャビティが部品の表面に接続され、且つ部品が形成された後に付着粉末を洗い流すか清掃される限り、部品内に内部キャビティ(穴又はチャネル)を形成するように構成することができる。部品全体を製造した後に、形成したキャビティを二次材料で充填することは、困難であり実用的でない。二次材料を部品の内部に追加するようにすることは、有用であり、又は層が形成されるときにその部品に空間を形成するために必要である。
【0021】
機械的穴あけ又はレーザー加工を用いてキャビティを各層内に形成することは、可能であるが、それはチップ又は他の破片の放出を引き起こす。これにより、これらチップ又は破片を除去することは非常に困難であり、高い精度で且つ高い品質で形成された小さな構造体を得ようとするプロセスが損なわれることになる。
【0022】
機械加工の代わりに、疎水性液体が、層の一部に選択的にプリントされる。次の層が追加されるときに、疎水性領域は、水ベースの粉末懸濁液をはじいて、二次(又は三次又は四次)材料を追加することができるように層内にギャップ(キャビティの穴)をもたらす。疎水性液体は、例えば炭化水素(アルカン、油脂)、フルオロカーボン又はシリコーンを含むか、又はこれらで構成されている。
【0023】
キャビティが層毎に形成されているので、それらキャビティは、ディスペンサ、インクジェット印刷又は他の適用方法を用いて二次材料のペーストで層毎に充填することができる。(一度に1点で行われる)ディスペンサを用いるキャビティの充填は、(ノズルアレイを用いて行われる)結合剤のインクジェット印刷より遅いプロセスであるが、ほとんどの適用において、充填しなければならない面積は、部品の全体の区分のうちの小さな部分だけである。こうして、層全体を迅速に堆積して固形化する主な利点は、維持されている。
【0024】
このプロセスは、部品の内部に3次元ビア孔(3D導電性接続部又は光ビア)を形成することができ、二次材料からなる他の3D構造をこの構造体に統合することができる。追加の材料を選択することができ、又は、良好な焼結手順になるように適合することができる。この問題は、しかしながら、例えば市販のLTCC技術(電子部品用途の低温共焼成セラミック)において解決される。
【0025】
実施形態によれば、プロセスは、疎水性領域によって形成されたギャップ内に二次材料等の犠牲材料を追加するように使用することもできる。犠牲材料は、このギャップを一時的に充填して、焼結前の加熱処理中に又は焼結の初期段階中に消失するように選択される。この犠牲材料は、チャネル、閉鎖状態のチャネル及び/又はキャビティを部品内に含めるために使用することができる。これらのキャビティは、恒久的な二次材料で充填されないので、それらキャビティを本体の外側面に接続する必要はない。犠牲材料は、物体の孔が焼結中にシールされる前に、この物体の孔を通じて分解され/消失する。犠牲材料の一例は、物体が熱処理の際に空気中で加熱される場合に、二酸化炭素を形成するように酸化されるグラファイトである。犠牲材料の別の例は、熱処理中に溶融して消失するようなワックスである。小さなチャネル又は小さなキャビティを洗い流す又は清掃することは、これらチャネル又はキャビティが物体の表面に対して開いた状態であったとしても、大抵の場合、困難で時間がかかる。
【0026】
なお、導電性金属インクを用いてインクジェットにより平坦な導体線を追加するこの方法は、LTCC技術で行われている同様の方法で次のセラミック層が追加される前に、行うことも可能である。
【0027】
例えば、この方法は、広範なマイクロシステムについてセラミックパッケージ(又はセラミック配線)の製造を可能にする。機能性材料を追加すること、電気導伝体によりこの機能性材料を接続することによって、センサやアクチュエータを追加することができる。導線、抵抗、インダクタンス及びキャパシタンス、接続ポイントを電子チップに追加することによって、高性能なシステム統合のための可能性が開かれる。マイクロシステムは、例えば太陽電池、バッテリー、OLED、マイクロ波部品、ラボ・オン・チップ及び高温度センサ、自動車及び台所用品等の製品に使用することができる。マイクロシステムは、(加速度、放射線、力、圧力、湿度、化学的環境等を)感知するセンサーをさらに含むことができ、それらマイクロシステムは、静電、磁歪、圧電、その他の原則に基づいて、アクチュエータを含めることもできる。マイクロシステムは、光及びマイクロ波用の導波管だけでなく、流体の輸送用のチャネルも形成するようなキャビティを含めることもできる。本方法に従って形成されたマイクロシステムは、光導波路を含めることもできる。
【0028】
複雑な機構を形成しするとともに二次材料を統合するための高い精度及び能力によって、複雑で小さな機械工具や医療用インプラントだけでなく歯科用製品を製造する可能性が生まれる。この方法によって、内部金属化されたチャンネル及びキャビティを形成する可能性も生まれる。このような構造体は、マイクロ波用途における導波管として使用することができる。高周波マイクロ波(THz又はそれに近いTHz)について、マイクロストリップ接続部を導波路と交換する必要がある。これらの導波路(金属化されたチャネル)は、高い精度を有していなければならず、損失を避けるために表面粗さを小さくする必要がある。このような高い精度と小さな表面粗さは、この方法を用いて製造することができる。
【0029】
実施例1
単純なモデル実験において、ドクターブレードの成型(casting)ステーションを、スロットダイの代わりに、層の手動塗布のために使用した。焼結アルミナのプレート上で、金属パターンがスクリーン印刷された。このパターンは、
図3で、接点によって終端するような様々な寸法の直線状導体線から構成される。プリントは、良好な電気導伝性を有する銀ペーストを用いて行った。
【0030】
導体を含むプレートを成型ステーションに配置した。分散剤(0.35% Dolapix PC21)を含む水中に分散するアルミナ懸濁液(40vol% AKP30、住友化学)を、80μmのギャップを有するドクターブレードを用いてキャスト(流込み・成型)した。このキャストによって、プレート上に微細なアルミナ粉末を含むフィルムを形成した。
【0031】
ビア用の孔は、疎水性液体を分布させることによって形成した。疎水性液体は、フルオロカーボン系液体であった。疎水性液体を塗布した領域上には、アルミナの水ベース懸濁液が濡れておらず、従って、これらの領域での濡れが回避される。乾燥アルミナ粉末層を貫通するような孔が、形成される。
【0032】
導体の新しい層を、乾燥したセラミック層の上部にスクリーン印刷した。第2層の導電パターンは、第1層が接点を通じて接続できるように移動される。銀ペーストが、形成した孔を通じて浸透して第1の層と第2の層とを接続し、こうしてビア接続を確立する。
この接続は、
図4に示される上層及び下層エンドポイントの間の短絡を測定することにより確認した。電流は、上下の層を交互に6つのビアを通じて進んだ。
【0033】
実施例2
積層造形用の機械を形成した。この機械は、ステージをXYZ方向に移動させることができるようなリニアアクチュエータ(NSK及びHIWIN)を有するテーブルで構成されている。可動ステージは、PLCコントローラ(Beijer)で制御される。
可動ステージは、(例えば精密ギアポンプ等の)精密ポンプを用いた圧力下でのセラミック懸濁液が供給されるようなスロットダイ(Premier Dies)が装着されている。セラミック懸濁液は、実施例1と同様であるが、固形分濃度は、スロットダイに適した粘度に調整した。
【0034】
駆動電子部品(Megatec Electronic)を用いたインクジェットヘッド(HP)を、ステージに固定して、一時的なラテックス結合剤と疎水性の液体との両方をプリントできるようにした。
ディスペンサが、可動ステージにも取り付けられており、導電性ペーストで充填されている。
【0035】
コンピュータは、PLCを通じてスロットダイを制御するとともに、印刷情報を転送して各層について印刷電子部品を駆動するようにプログラムした。可動ステージを、その後、次の層を堆積する前に上昇させた。
この機械は、3D導電性ビアをセラミックパッケージ構造体に形成するために使用した。
【0036】
図1,
図2及び
図5を参照して、例示の方法11を用いて製造された物体1の実施例を説明する。示されるように、方法11の例示的な実施形態は:
図5のブロック12で示されるように、平坦な基板を基盤として提供して、物体1を形成するための支持体2を形成するステップと、
図5のブロック13で示されるように、3a又は3bのような疎水性溶液を塗布することにより、水ベースの粉末懸濁液の粉末層4,4a,4b等を含む平坦な基板の選択した一部、又は支持体2を形成する基盤を疎水化するステップと、
図5のブロック14で示されるように、5μm以下のサイズの粒子から構成される水ベースの粉末懸濁液4a又は4bを、50μm以下の厚さの層に拡散させるステップと、
図5のブロック15で示されるように、粉末成形体中に保持される結合剤5を粉末層の一部に塗布するステップと、
図5のブロック16で示されるように、水ベースの懸濁液の疎水性反発力によって形成された層内のギャップに粉末懸濁液又は粉末ペースト等の1つ以上の二次材料6aを塗布するステップと、
図5のブロック17で示されるように、粉末層4a,4b,4c等、疎水性領域3a、3b、結合剤5a,5b,5c、及び二次材料6aに対応する二次材料を上述したように繰り返し追加して、所望の形状及び大きさの粉状体を形成するステップと、
図5のブロック18で示されるように、付着粉末を物体から洗い流すか清掃して、支持体2から物体を取り外すステップと、
図5のブロック19で示されるように、熱処理を行って結合剤を除去して粉末状物体を固形状物体に焼結するステップと、を含む。
【0037】
なお、
図2を参照しながら、粉末層4a、4bの選択された一部は、疎水性溶液3a及び/又は3bを塗布することによって、疎水化された平坦基板を形成することを例示していることを留意されたい。しかしながら、疎水性溶液は、支持体2を形成する基盤上に直接的に塗布することもできるが、ここで、支持体2を形成する基盤は、疎水化ステップにおいて平坦な基板を形成する。
【0038】
本発明は、主にいくつかの実施形態を参照して説明してきたことに留意されたい。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上述した以外の実施形態は、本発明の範囲内で同様に可能であり、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0039】
さらに、特許請求の範囲において、「備える、有する、含む(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞の「1つの(a, an)」は、複数を排除するものではないことに留意されたい。単一の装置又は他のユニットは、請求項に列挙されるいくつかのアイテムの機能を充足することができる。特定の特徴又は方法ステップが相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの特徴又はステップの組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。