(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985737
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】発電所および発電所設備を運転するための方法
(51)【国際特許分類】
F01D 17/00 20060101AFI20160823BHJP
F01K 7/24 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
F01D17/00 P
F01D17/00 L
F01K7/24 H
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-503823(P2015-503823)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公表番号】特表2015-515573(P2015-515573A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】EP2013056496
(87)【国際公開番号】WO2013149900
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】12163194.9
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・ピーパー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ウルリヒ・ティーアバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヴェフズング
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−026303(JP,A)
【文献】
実開昭53−120606(JP,U)
【文献】
特開昭63−248903(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0136337(US,A1)
【文献】
米国特許第04744723(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00
F01D 19/00
F01K 7/24
F01K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンを含む発電所設備であって、前記蒸気タービンは、高圧タービン部分と、中圧タービン部分と、低圧タービン部分とに分割されており、前記高圧タービン部分と前記中圧タービン部分との間に再加熱ユニットが設けられている発電所設備を運転するための方法であって、
前記発電所設備を部分負荷で運転するステップと、
前記中圧タービン部分の前段に設けられる弁を絞らない場合に比べて前記再加熱ユニットへの入口における温度を上昇させるために、前記中圧タービン部分の前段に設けられる弁を絞るステップと、を有し、
前記弁は前記高圧タービン部分と前記中圧タービン部分との間に設けられ、
前記弁は、絞られていない状態での前記再加熱ユニットの後段の定格負荷から部分負荷に移行した場合における温度降下の大きさが略半分にされるように絞られ、
前記弁は、負荷変動時に前記再加熱ユニットの前段と後段における温度変化が前記絞るステップの結果、略同等であるように絞られる、方法。
【請求項2】
前記弁は、前記高圧タービン部分における膨張が低減されるように絞られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
部分負荷における運転は定格負荷の約20%から40%の間で行われる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
部分負荷における運転は定格負荷の25%で行われる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービンを含む発電所設備を運転するための方法に関する。前記蒸気タービンは高圧タービン部分と、中圧タービン部分と、低圧タービン部分とに分割されており、高圧タービン部分と中圧タービン部分との間に再加熱ユニットが設けられる。
【0002】
本発明はさらに、本発明に係る方法に従って運転される発電所に関する。
【背景技術】
【0003】
容積の大きな蒸気タービンが用いられる発電所設備は、特に地域のエネルギー供給に用いられる。このような発電所において用いられる蒸気タービンは、比較的大きな質量を有しており、通常は所定の定格出力に対して設計されている。これらの発電所は従来型の発電所とも称され得るが、第一次近似において、純粋な蒸気発電所と、ガスと蒸気を用いる発電所とに分類され得る。これら二つに共通なのは、電気エネルギーを作り出すために化石燃料が必要とされることである。このような発電所は従来、当該発電所がベース負荷に対して設計されたものであると考えられていた。例えば風力エネルギーのような、概ね制御可能でない再生可能なエネルギー源の割合が増大することによって、上記の従来型の発電所は部分負荷で運転されなければならない頻度が増大しつつある。すなわち、発電所は定格出力を持続的には供給せず、定格出力のあるパーセンテージを部分負荷として提供する。部分負荷は多くの場合、例えば全負荷の25%であり得る。
【0004】
上記の点は、これらの発電所が柔軟性を有して運転されなければならないことを意味しており、比較的低い部分負荷から全負荷への変化ができる限り迅速に、かつ負荷変動数の制限なしに行われるべきである。このとき問題となるのは、再加熱ユニットの出口における蒸気の温度が、徐々に冷たくなる燃焼排ガスから提供される熱が少なくなることに起因して、極端な部分負荷においては非常に大きく(例えば25%)下降することである。当該温度降下の値は60ケルビンにまでなり得る。なお、この温度変動は構成部材にも伝達される。これは、理想的とは言えない場合において、容積が大きくかつ質量が大きい構成部材は常に必然的に加熱および冷却されることを意味する。特に中圧タービン部分シャフトのような、壁厚の大きな構成部材は、所望の付加変動に注意しながら、比較的ゆっくりとしか加熱してはいけない。しかしながらこれは、発電所をできるだけ短い時間で極端な部分負荷から全負荷へと運転するという要求と矛盾している。
【0005】
したがって従来、再加熱装置の加熱面は特大にされ、例えば70%から100%の、上方負荷領域における高温の再加熱装置温度は、結果として生じる熱力学的な効率損失を受け入れたうえで制御されていた。再加熱ユニットの後段に存在している高温の再加熱装置温度は「hRH」と称される。さらなる解決のアプローチは、下方負荷領域において負荷勾配を相応に制限する、あるいは、許容される負荷変動を減らすことであるが、その際、摩耗が増大することも考慮され、それにより壁厚の大きい構成部材は早期に交換されなければならない。
【0006】
特許文献1には蒸気タービンを始動させるための方法が開示されている。
【0007】
特許文献2は、負荷が低減されたときの蒸気タービンの運転を改善するための装置および方法を開示している。
【0008】
特許文献3には高圧再加熱装置を有する複合型の発電所が開示されている。
【0009】
特許文献4は、高圧部分を有する蒸気タービンを開示しており、高圧部分と低圧部分の間に制御弁が設けられている。
【0010】
特許文献5には、高圧発電所のための制御システムが開示されている。
【0011】
特許文献6は、蒸気タービンを始動させるための制御方法を開示している。
【0012】
特許文献7には、蒸気タービンを運転するための自動的な制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第236959号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008037575号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0899505号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102010041627号明細書
【特許文献5】米国特許第3894394号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第4132076号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第4253308号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこれを端に発するものである。本発明の課題は、負荷変動が頻繁に生じるにもかかわらず、構成部材の寿命が増大されるように発電所の運転を行うことである
。
【0015】
当該課題は、蒸気タービンを含む発電所設備であり、前記蒸気タービンは高圧タービン部分と、中圧タービン部分と、低圧タービン部分とに分割されており、前記高圧タービン部分と前記中圧タービン部分との間に再加熱ユニットが設けられる発電所設備を運転するための方法であって、
−前記発電所設備を部分負荷で運転するステップと、
−前記再加熱ユニットへの入口における温度を、前記中圧タービン部分の前段に設けられる弁を絞ることによって上昇させるステップと、
を有する方法によって解決され、前記絞ることは、絞られていない状態での前記再加熱ユニットの後段の温度降下の大きさが、概ね半分にされるように選択され、前記絞ることは、負荷変動時に前記再加熱ユニットの前段と後段における温度変化が前記絞ることの結果、概ね同じ大きさであるように行われる。
【0016】
有利なさらなる構成は、従属請求項に記載されている。
【0017】
本発明は以下の思想を出発点とする。すなわち、従来と同様に負荷変動は頻回に行われ得るが、当該負荷変動は構成部材の寿命を短縮させる結果にならないというものである。本発明は以下の思想に基づいている。すなわち、一般に温度勾配が等しいとき、許容される負荷変動の数は、急激な温度変化に比例しないというものである。例えば30ケルビンの急激な温度変化はおよそ1000000回の負荷変動を許容するが、それに対して60ケルビンの急激な温度変化は許容される負荷変動を半分にする結果を招かず、はるかに小さい数の負荷変動、それもおよそ10000回の負荷変動を許容する。従って急激な温度変化が倍になるとき、許容される負荷変動の数は、一桁あるいは複数桁の大きさで変化する。前記の数値は単に実例として示すものである。急激な温度変化に応じた許容負荷変動数は、構成部材の幾何形状と、材料特性および温度水準および多くの他のさらなるパラメータとに大きく依存している。
【0018】
本発明の主な特徴は、再加熱ユニットの温度が、当該再加熱ユニットへの入口温度が上昇させられることによって低減され得ることである。再加熱ユニットの前段の入口温度は低温再加熱とも称される。当該温度の上昇は、第二の膨張部分の前段、つまり中圧タービン部分の前段に設けられている制御弁が絞られることによって実現される。当該絞りによって、第一の膨張部分において、この場合は高圧タービン部分において膨張は低減し、それとともに温度降下も低減する。その結果、高圧タービン部分の出口において、負荷に依存する温度変動が増大する。
【0019】
部分負荷時に生じる高温の再加熱ユニット温度の下降はこのように、高圧タービン部分の出口における低温の再加熱ユニット温度を上昇させることにより、低減される。当該温度上昇は、部分負荷時に弁の絞りを用いて、再加熱システムにおいて目標を定めて圧力を上昇させることによって達成される。絞ることが行われないという条件で、ある箇所における部分負荷時に、例えばある構成部材において60ケルビンの温度変化が生じるとする。本発明に応じて絞ることによって、当該60ケルビンの温度降下に対抗する措置が取られ、例えばわずか30ケルビンの温度降下が実現され、当該30ケルビンの温度降下は二つの構成部材に分割される。これにより、許容される負荷変動は一桁以上の大きさで増大する。
【0020】
すなわち、高温の再加熱システムと中圧蒸気タービン内の構成部材における大きな温度変化を、低温の再加熱装置内の構成部材と高温の再加熱装置構成部材における小さな温度変化に分割することにより、システム内の全ての構成部材における温度変化は全体として小さくなる。
【0021】
絞ることは、絞られていない状態での再加熱ユニットの後段の温度降下の大きさが、概ね半分にされるように選択される。
【0022】
すなわち絞りの制御は、負荷変動時に、全ての構成部材において、その際の比較的小さな温度変化が第一次近似において等しい大きさであるように行われる。本発明の主な有利点は、今や大きな負荷変動が蒸気タービンの寿命において、明らかにより迅速な勾配を有して、明らかにより頻繁に、行われ得ることである。これは全体として寿命を増大させる結果となる。
【0023】
以下において本発明の実施の形態をより詳しく説明する(図面はない)。
【0024】
伝統的な従来型の発電所は、蒸気タービンを含んでおり、当該蒸気タービンは、高圧タービン部分と、中圧タービン部分と、低圧タービン部分と、再加熱ユニットと、に区分され、当該再加熱ユニットは高圧タービン部分と中圧タービン部分との間に設けられる。高圧タービン部分の前段において、蒸気発生器は高温の生蒸気を発生させ、当該生蒸気は高圧タービン部分を通過して流れ、続いて再加熱ユニットにおいて再び加熱され、続いて中圧タービン部分に流入し、続いて低圧タービン部分を通過して流れる。低圧タービン部分の後段において蒸気は凝縮して水になり、ポンプを介して再び蒸気発生器にガイドされ、当該蒸気発生器において再び蒸気に変換される。このような発電所設備は、定格出力に対して構想されており、当該定格出力はできる限り恒常的に当該定格出力レベルで運転されるべきものである。部分負荷において、すなわち発電所設備が100%の定格出力ではなく、例えば定格出力の25%で運転される場合、再加熱ユニットにおいて温度が変化する。温度は下降する。中圧タービン部分の前段に制御弁が設けられ、当該制御弁は部分負荷の運転時に絞られ、それにより再加熱ユニットへの入口における温度の上昇が生じる。すなわち、制御装置が中圧弁を制御し、それにより蒸気流が絞られ、しかも当該絞りは、高圧タービン部分における膨張が低減されるように行われる。当該低減の結果として、高圧タービン部分の出口における温度が上昇する。