(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高分子圧電材料が、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の安定化剤をさらに含み、前記ヘリカルキラル高分子100質量部に対して前記安定化剤が0.01質量部〜10質量部含まれる、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の押圧検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<押圧検出装置>
本発明の一実施形態に係る押圧検出装置は、加圧手段が接触して圧力が加えられる接触面を有する被加圧部材と、前記被加圧部材に対向して配置され、高分子圧電材料を含む圧電部材と、を備え、前記被加圧部材の断面2次モーメントIb及びヤング率Ebの積IEbと、前記圧電部材の断面2次モーメントIa及びヤング率Eaの積IEaとの比IEb/IEaが10
2〜10
10の範囲にある。
【0012】
本発明者らは、被加圧部材の断面2次モーメントIb及びヤング率Ebの積IEbと、圧電部材の断面2次モーメントIa及びヤング率Eaの積IEaとの比IEb/IEaが好ましくは10
2〜10
10の範囲にあることで、単位たわみ量当たりの発生電荷密度が高く、すなわち、被加圧部材の接触面に加えられた圧力を高い感度で検出することができることを見出した。IEb/IEaは、より高い検出感度を有する観点から、10
3以上が好ましく、10
4以上がより好ましく、10
5以上が特に好ましい。同様に、より検出感度を有する観点から、IEb/IEaは、10
9以下が好ましく、10
8以下がより好ましく、10
7以下が更に好ましい。
IEb/IEaは、10
4〜10
9が好ましく、10
4〜10
8がより好ましく、10
5〜10
8が特に好ましい。
なお、本実施形態において、圧電部材は被加圧部材の少なくとも一部分に対して対向していればよい。また、本実施形態において、加圧手段と、被加圧部材の加圧手段が接触する部分と、圧電部材とが、一直線上に配置されていてもよいし、一直線上に配置されていなくてもよい。
【0013】
〔断面2次モーメント〕
断面2次モーメントは、曲げモーメントに対する物体の変形のしにくさを表した量である。
本実施形態の押圧検出装置を構成する、被加圧部材の断面2次モーメント(Ib)、及び、圧電部材の各断面2次モーメント(Ia)は、それぞれ、以下のようにして求められる。
部材(被加圧部材及び圧電部材)が矩形平板状の部材である場合、この部材は、その断面が矩形断面である梁とみなされる。この場合、断面2次モーメントIは、部材の幅b及び部材の厚みhに基づき、下記式(a)によって一般的に算出される。
I=(b×h
3)/12 ・・・ 式(a)
但し、部材(例えば、後述の被加圧部材(基材)6)が支持手段(例えば、後述の支持枠5)によって支持されることにより、加えられる圧力に対して部材の幅のうちの一部(以下「固定端間隔」ともいう;例えば、後述の支持枠5の内周よりも内側の部分)のみが変形する場合には、その部材の断面2次モーメントは、固定端間隔×(部材の厚さの3乗)/12によって算出される。
【0014】
被加圧部材又は圧電部材の断面が短矩断面でない場合も、短矩断面として計算され、断面2次モーメントは、固定端間隔×(部材の厚さの3乗)/12によって算出される。
【0015】
断面2次モーメントが大きいほど撓みにくい。圧電部材より被加圧部材の方が撓みやすいと接触面に加えられた圧力Fが圧電部材に効率的に伝播しにくい。一方、被加圧部材が撓まなすぎても、圧電部材に力が効率的に伝播しにくい。
【0016】
〔ヤング率〕
ヤング率(Young's modulus、縦弾性係数)は、弾性範囲で単位ひずみあたり、どれだけ応力が必要かの値を決める定数である。
本実施形態の押圧検出装置を構成する被加圧部材及び圧電部材の各ヤング率(Eb、Ea)は、以下のようにして求められる。
圧電部材のヤング率Ea(縦弾性係数)や、樹脂からなる被加圧部材のヤング率Eb(縦弾性係数)は、JIS K7127に準拠した引張試験方法により、JIS K6251の規定されるダンベル状1号形の試験片を用いて計測する。ヤング率は、本試験片および本試験方法により得られた応力ひずみ線図における弾性域(の線形部)の傾きとして求める。ガラスのような脆性材料からなる被加圧部材のヤング率は、JIS R1602に準拠する静的弾性率測定方法により求める。
【0017】
以下、本実施形態の押圧検出装置についてより具体的に説明する。
図1は、本実施形態に係る押圧検出装置の一例について厚さ方向の断面を概略的に示す断面図であり、
図2は、
図1に示す押圧検出装置の接触面の反対側(支持枠側)を示す概略平面図である。
【0018】
本実施形態の一例に係る押圧検出装置10は、加圧手段8が接触して圧力が加えられる接触面6Aを有する基材(被加圧部材)6と、基材6に対向して配置された圧電部材7と、を備えている。圧電部材7は、ポリ乳酸(PLA:polylactic acid)フィルム(高分子圧電材料)4と、PLAフィルム4の両面に設けられた電極層(第1電極層2、第2電極層3)と、から構成されている。
この一例では、さらに、第1電極層2及び第2電極層3には、それぞれ、引出電極として導電性粘着層付きの銅箔テープ22、23が貼り付けられている。
【0019】
基材6の接触面6Aとは反対側の面の縁部には、接触面6Aから加えられる圧力に対して基材6を支持する支持手段としての支持枠5が設けられている。支持枠5は、例えば、両面テープ、接着剤、粘着剤などによって基材6に貼り付けられる。
なお、この一例では、支持枠5が基材6の面の縁部に設けられているが、本実施形態はこの態様には限定されず、支持枠5が圧電部材7の面の縁部に設けられていてもよい。例えば、基材6のサイズと圧電部材7のサイズとが近い場合(同サイズである場合を含む)や、基材6のサイズよりも圧電部材7のサイズが大きい場合には、支持枠5は圧電部材7の縁部に設けられていてもよい。要するに、支持枠5は、接触面6Aから加えられる圧力に対して基材6を支持できるように設けられていればよい。
また、本実施形態において、接触面から加えられる圧力に対して被加圧部材を支持する支持手段は、支持枠であることには制限されず、上記圧力に対して被加圧部材を(好ましくは2点以上で)支持する手段であればよい。
【0020】
また、圧電部材7において、PLAフィルム4の第1電極層2側は、両面テープ1を介して基材6に貼り付けられている。両面テープ1は圧電部材7を基材6に支持する支持手段として機能し、接触面6Aから基材6を介して加えられる圧力に対して圧電部材7を基材6上に支持する。このように基材6が支持枠5によって支持され、かつ、圧電部材7が両面テープ1を介して基材6に支持されることで、接触面6Aから圧力が加えられたときに基材6と圧電部材7が共に撓む。これにより、圧電部材7中のPLAフィルム4において、基材6を介して圧力が加えられた位置に電荷が発生する。
なお、圧電部材7を基材6に支持する支持手段としては、両面テープに代えて、接着剤、粘着剤などのその他の支持手段を用いることもできる。
【0021】
本実施形態の押圧検出装置は、圧電部材7の主面全体が被加圧部材6の主面と両面テープ等を介して接している態様が好ましいが、圧電部材7は少なくとも2箇所で支えられている態様でもよい。具体的には、圧力Fに対して圧電部材7を支える点(以下、「支点a」と記す)が被加圧部材6との間に2箇所以上設けられていれば、圧電部材7と被加圧部材6との間に隙間があってもよい。
なお、圧電部材7の支点aが被加圧部材6上に設けられているとは、被加圧部材6に加えられた圧力Fが支点аを通じて圧電部材7に伝播する態様であれば、被加圧部材6と圧電部材7が直接接触している必要はなく、圧力Fを伝播する部材が圧電部材7と被加圧部材6との間に介在してもよい。
【0022】
ここで、圧電部材7の支点aは、圧力Fが接触面6Aに加えられた場合、圧電部材7の最大変位に対して変位が10%以下であることが好ましい。なお、支点aは圧力Fの方向以外の方向へは自由に変位してもよい。例えば、加圧方向と直交する方向であり、かつ圧電部材7の主面と平行方向に支点aがスライドしてもよい。
【0023】
本実施形態に係る押圧検出装置は、接触面6Aに加えられた圧力により被加圧部材6と圧電部材7が変位するには、変位するための隙間か、変位を吸収できる部分が設けられているのが好ましい。具体的には、本実施形態に係る押圧検出装置は、圧電部材7の被加圧部材6側とは反対側に、ヤング率が0.1GPa以下の緩和部をさらに有することが好ましい。
図1及び
図2に示す押圧検出装置10では、緩和部として圧電部材7の背面に空洞11が設けられている。かかる空洞11を有することで基材6の接触面6Aに圧力が加わったときに、圧力が加えられた位置を中心として圧力の強さに応じて基材6とともに圧電部材7(詳細には、圧電部材7に含まれるPLAフィルム4)が変位し、これにより電荷を発生させることができる。なお、圧電部材7の背面に緩和部として緩衝材を設けてもよい。
【0024】
−被加圧部材−
本実施形態における被加圧部材(例えば上記被加圧部材6)は、操作者の指などの加圧手段(例えば上記加圧手段8)が接触して圧力が加えられる接触面(例えば上記接触面6A)を有する。
なお、加圧手段の例としては、操作者の指以外にも、ペン状部材(例えばタッチペン)、棒状部材等の加圧用部材も挙げられる。
【0025】
本実施形態における被加圧部材は、ガラスなどの無機材料、樹脂(アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、等)などの有機材料(好ましくは樹脂)など、材質は特に限定されない。
また、被加圧部材としては、無機材料層及び有機材料層とが積層され一体化した形態の被加圧部材や、樹脂材料層中に無機材料を分散した形態の被加圧部材を用いることもできる。
また、本実施形態の押圧検出装置を表示装置の視認側に重ねてタッチパネルを作製する場合は、表示装置の視認性を高めるため、被加圧部材としては、透明性が高い材料を用いることが好ましい。
【0026】
接触面6Aは、操作者の指などの加圧手段8が接触する面である。接触面6Aは、単独の層として形成された被加圧部材6の表面であってもよいし、被加圧部材6を複数の材料で構成して最表面の層が接触面6Aを形成してもよい。例えば、被加圧部材6の表面に電極が配置されていてもよく、耐傷性を高めるためハードコート層が形成されていてもよい。また、被加圧部材6は内部に一部空隙があってもよい。
【0027】
いずれの構成にせよ、被加圧部材6全体としての断面2次モーメントIb及びヤング率Ebの積IEbを求めて、圧電部材7の断面2次モーメントIa及びヤング率Eaの積IEaとの比IEb/IEaが10
2〜10
10の範囲にあればよい。IEb/IEaの好ましい範囲は前述のとおりである。
【0028】
被加圧部材6の厚みは、検出信号の歪みを抑制する観点から、0.2mm〜20mmの範囲にあることが好ましく、0.3mm〜10mmであることがより好ましい。
【0029】
本実施形態における被加圧部材(例えば上記被加圧部材6)のヤング率Ebは、押厚により発生した歪を、圧電部材の歪に効率的に伝達させる観点から、200GPa以下の範囲にあることが好ましい。本実施形態における被加圧部材のヤング率Ebは、1GPa〜200GPaの範囲にあることが好ましく、3GPa〜100GPaの範囲にあることが特に好ましい。
【0030】
また、本実施形態における被加圧部材の断面2次モーメントIbは、接触面に加えられた圧力を圧電部材により効率的に伝播させる観点から、10
−1mm
4〜10
7mm
4が好ましく、10
−1mm
4〜10
6mm
4がより好ましく、10
−1mm
4〜10
5mm
4がより好ましい。
また、本実施形態におけるIEbは、接触面に加えられた圧力を圧電部材により効率的に伝播させる観点から、10GPa・mm
4〜10
8GPa・mm
4が好ましく、10GPa・mm
4〜10
7GPa・mm
4がより好ましく、10GPa・mm
4〜10
6GPa・mm
4が更に好ましく、10
2GPa・mm
4〜10
5GPa・mm
4が特に好ましい。
【0031】
また、本実施形態における圧電部材(例えば上記圧電部材7)のヤング率Eaは、発生電荷密度と強度とのバランスの観点から、1GPa〜10GPaが好ましく、1GPa〜5GPaがより好ましく、2GPa〜4GPaが特に好ましい。
また、本実施形態における圧電部材の断面2次モーメントIaは、発生電荷密度と強度とのバランスの観点から、10
−7mm
4〜10
−1mm
4が好ましく、10
−6mm
4〜10
−2mm
4がより好ましく、10
−5mm
4〜10
−3mm
4が特に好ましい。
また、本実施形態におけるIEaは、発生電荷密度と強度とのバランスの観点から、10
−6GPa・mm
4〜1GPa・mm
4が好ましく、10
−5GPa・mm
4〜10
−1GPa・mm
4がより好ましく、10
−4GPa・mm
4〜10
−2GPa・mm
4が好ましい。
【0032】
本実施形態において、被加圧部材(
図1中では被加圧部材6)と圧電部材(
図1中では圧電部材7)は、
図1に示すように両面テープ1と第1電極層2を介して密着していてもよいし、被加圧部材と圧電部材との間に空隙(隙間)を設けて配置されていてもよい。被加圧部材と圧電部材との間に空隙がある場合は、圧力が加えられる方向の空隙の大きさは0.1mm以下であることが好ましい。これは指などの加圧手段(
図1中では加圧手段8)によって被加圧部材に撓み(変位)が生じた際に、被加圧部材が圧電部材と接触することで、被加圧部材の撓みが圧電部材に伝播し、圧電部材(詳細には、圧電部材に含まれる高分子圧電材料)により電荷が発生しやすくなるからである。
【0033】
−圧電部材−
本実施形態における圧電部材(例えば上記圧電部材7)は、被加圧部材(例えば上記被加圧部材6)に対向して配置されており、高分子圧電材料(例えば上記PLAフィルム4)を含む。
本実施形態における高分子圧電材料としては、例えば、25℃において変位法で測定した圧電定数d
14が1pm/V以上である高分子圧電材料を用いることができる。
【0034】
〔圧電定数〕
ここで、「圧電定数d
14」とは、圧電率のテンソルの一つであり、延伸した材料の延伸軸方向に、ずり応力を印加したとき、ずり応力の方向に生じた分極の程度から求める。具体的には、単位ずり応力あたりの発生電荷密度をd
14と定義する。圧電定数d
14の数値が大きいほど圧電性が高いことを表す。本願において単に『圧電定数』と称するときは、「圧電定数d
14」を指す。
【0035】
また、複素圧電率d
14は、「d
14=d
14’―id
14’’」として算出され、「d
14’」と「id
14’’」は東洋精機製作所社製「レオログラフソリッドS−1型」より得られる。「d
14’」は、複素圧電率の実数部を表し、「id
14’’」は、複素圧電率の虚数部を表し、d
14’(複素圧電率の実数部)は本実施形態における圧電定数d
14に相当する。尚、複素圧電率の実数部が高いほど圧電性に優れることを示す。圧電定数d
14には変位法で測定されるもの(単位:pm/V)と、共振法により測定されるもの(単位:pC/N)とがある。
【0036】
〔圧電定数(変位法)〕
本実施形態において、高分子圧電材料の圧電定数(変位法)は、例えば次のようにして変位法により測定される値をいう。
【0037】
高分子圧電材料を、延伸方向(MD方向)に40mm、延伸方向に直交する方向(TD方向)に40mmでそれぞれカットして、矩形の試験片を作製する。次に、(株)昭和真空製SIP−600の試験台に、得られた試験片をセットし、Alの蒸着厚が50nmとなるように、試験片の一方の面にAlを蒸着する。次いで、試験片の他方の面を、同様に蒸着して、試験片の両面にAlを被覆し、Alの導電層を形成する。
【0038】
両面にAlの導電層が形成された40mm×40mmの試験片を、高分子圧電材料の延伸方向(MD方向)に対して45°なす方向に32mm、45°なす方向に直交する方向に5mmにカットして、32mm×5mmの矩形のフィルムを切り出す。これを、圧電定数測定用サンプルとする。
【0039】
得られたサンプルに、10Hz、300Vppの正弦波の交流電圧を印加したときの、フィルムの変位の最大値と最小値の差分距離を、キーエンス社製レーザ分光干渉型変位計SI−1000により計測した。計測した変位量(mp−p)を、フィルムの基準長30mmで割った値を歪量とし、この歪量をフィルムに印加した電界強度((印加電圧(V))/(フィルム厚))で割った値に2を乗じた値を圧電定数d
14とする。
【0040】
圧電定数は高ければ高いほど、高分子圧電材料に印加される電圧に対する前記材料の変位、逆に高分子圧電材料に印加される力に対し発生する電圧が大きくなり、高分子圧電材料としては有用である。具体的には、25℃における変位法で測定した圧電定数d
14は通常、1pm/V以上であり、4pm/V以上が好ましく、6pm/V以上がより好ましく、8pm/V以上が特に好ましい。また圧電定数d
14の上限は特に限定されないが、後述する透明性などのバランスの観点からは、ヘリカルキラル高分子を用いた圧電材料では50pm/V以下が好ましく、30pm/V以下がより好ましい場合がある。
【0041】
本実施形態では、接触面から圧力が加えられる方向(例えば、
図1中の方向20)と、高分子圧電材料(例えば、
図1中のPLAフィルム4)の分子配向方向(例えば、
図2中の分子配向方向9)と、が交差することが好ましい。
接触面から圧力が加えられる方向と、高分子圧電材料の分子配向方向とが交差していることで、被加圧部材の接触面から圧電部材の厚さ方向に加えられた圧力によって、被加圧部材が撓むことにより、圧電部材に引張力が働いてこの圧電部材が歪むので、高分子圧電材料に電荷が発生しやすい。
【0042】
また、本実施形態における高分子圧電材料は、好ましくは、重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子[以下、適宜、「光学活性高分子(A)」と称する]を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が40〜700である。
【0043】
光学活性を有するヘリカルキラル高分子(以下、「光学活性高分子」ともいう)とは、分子構造が螺旋構造である分子光学活性を有する高分子をいう。
光学活性を有するヘリカルキラル高分子としては、例えば、ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等を挙げることができる。
前記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ−ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ−メチル)等が挙げられる。
前記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
【0044】
本実施形態における光学活性高分子(A)は、高分子圧電材料の圧電性を向上する観点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましく、96.00%ee以上であることがより好ましく、99.00%ee以上であることがさらに好ましく、99.99%ee以上であることがさらにより好ましい。望ましくは100.00%eeである。光学活性高分子(A)の光学純度を上記範囲とすることで、圧電性を発現する高分子結晶のパッキング性が高くなり、その結果、圧電性が高くなるものと考えられる。
【0045】
本実施形態において、光学活性高分子(A)の光学純度は、下記式にて算出した値である。
光学純度(%ee)=100×|L体量−D体量|/(L体量+D体量)
すなわち、『「光学活性高分子のL体の量〔質量%〕と光学活性高分子(A)のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「光学活性高分子のL体の量〔質量%〕と光学活性高分子のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値を、光学純度とする。
【0046】
なお、光学活性高分子のL体の量〔質量%〕と光学活性高分子のD体の量〔質量%〕は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いる。
【0047】
以上の光学活性高分子(A)の中でも、光学純度を上げ、圧電性を向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有する化合物が好ましい。
【0049】
前記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖とする化合物としては、ポリ乳酸系高分子が挙げられる。中でも、ポリ乳酸が好ましく、L−乳酸のホモポリマー(PLLA)またはD−乳酸のホモポリマー(PDLA)が最も好ましい。なお、本実施形態における前記ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L−乳酸及びD−乳酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位のみからなる高分子化合物)」、「L−乳酸またはD−乳酸と、該L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
【0050】
前記「ポリ乳酸」は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子であり、ラクチドを経由するラクチド法と、溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法などによって製造できることが知られている。前記「ポリ乳酸」としては、L−乳酸のホモポリマー、D−乳酸のホモポリマー、L−乳酸およびD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、及び、L−乳酸およびD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
【0051】
前記「L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸、グリコリド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸、及びこれらの無水物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール等の多価アルコール、セルロース等の多糖類、及び、α−アミノ酸等のアミノカルボン酸等を挙げることができる。
【0052】
前記「L−乳酸またはD−乳酸と、該L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが挙げられる。
【0053】
また光学活性高分子(A)中のコポリマー成分に由来する構造の濃度は20mol%以下であることが好ましい。例えば光学活性高分子(A)がポリ乳酸系高分子の場合、前記ポリ乳酸系高分子中の乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、前記コポリマー成分が20mol%以下であることが好ましい。
【0054】
前記ポリ乳酸系高分子は、例えば、特開昭59−096123号公報、及び特開平7−033861号公報に記載されている乳酸を直接脱水縮合して得る方法や、米国特許2,668,182号及び4,057,357号等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法などにより製造することができる。
【0055】
さらに、前記の各製造方法により得られた光学活性高分子は、光学純度を95.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を95.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
【0056】
本実施形態における高分子圧電材料に含有される光学活性高分子(A)の含有量は、80質量%以上が好ましい。
【0057】
〔光学活性高分子(A)の重量平均分子量〕
本実施形態における光学活性高分子(A)は、重量平均分子量(Mw)が、5万〜100万である。光学活性高分子(A)の重量平均分子量の下限が5万以上であれば光学活性高分子を成型体としたときの機械的強度が十分となる。光学活性高分子の重量平均分子量の下限は、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。一方、光学活性高分子(A)の重量平均分子量の上限が100万以下であると、光学活性高分子を成形すること(例えば、押出成型などによりフィルム形状などに成形すること)がより容易となる。重量平均分子量の上限は、80万以下であることが好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
【0058】
また、前記光学活性高分子(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、高分子圧電材料の強度の観点から、1.1〜5であることが好ましく、1.2〜4であることがより好ましい。さらに1.4〜3であることが好ましい。
【0059】
なお、光学活性高分子(A)の重量平均分子量Mwと、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、下記条件のGPC測定方法により、測定される。
−GPC測定装置−
Waters社製GPC−100
−カラム−
昭和電工社製、Shodex LF−804
−サンプルの調製−
光学活性高分子(A)を40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mlのサンプル溶液を準備する。
−測定条件−
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
【0060】
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、光学活性高分子(A)の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
【0061】
ポリ乳酸系高分子は、市販のポリ乳酸を用いてもよく、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H−100、H−400)等が挙げられる。光学活性高分子としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、または直接重合法により光学活性高分子を製造することが好ましい。
【0062】
〔安定化剤(B)〕
本実施形態における高分子圧電材料は、安定化剤として、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の化合物を含むことが好ましい。
この安定化剤(B)は、前記ヘリカルキラル高分子の加水分解反応(この加水分解反応は、例えば下記反応スキームにて進行するものと推定される)を抑制し、得られる圧電材料の耐湿熱性を改良するために用いられる。
【0064】
上記ヘリカルキラル高分子の加水分解反応を抑制するために、水酸基及びカルボキシ基の両方と相互作用し得る官能基として、以下の構造を有する、カルボジイミド基、イソシアネート基、及びエポキシ基からなる少なくとも1種の官能基が挙げられ、中でも、効果の観点からカルボジイミド基が好ましい。
【0066】
本実施形態に使用される安定化剤(B)の重量平均分子量は、200〜60000が好ましく、200〜30000がより好ましく、300〜18000がさらに好ましい。分子量が前記範囲内ならば、安定化剤(B)の移動がしやすくなり、耐湿熱性改良効果を十分に得ることができると推測される。
【0067】
安定化剤(B)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。安定化剤(B)の好ましい態様としては、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有し、且つ、数平均分子量が200〜900の安定化剤(B1)と、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を1分子内に2以上有し、且つ、重量平均分子量が1000〜60000の安定化剤(B2)とを併用するという態様が挙げられる。なお、数平均分子量が200〜900の安定化剤(B1)の重量平均分子量は、大凡200〜900であり、安定化剤(B1)の数平均分子量と重量平均分子量とはほぼ同じ値となる。
【0068】
ここで、安定化剤(B1)としては、具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ヘキシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、N−グリシジルフタルイミド、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、安定化剤(B2)としては、具体的には、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド)、ポリ(N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ジフェニルメタンジイソシアネート系ポリイソシアネート、1 ,6−ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0069】
分子量が比較的小さい安定化剤(B1)と、多官能で比較的分子量の大きい安定化剤(B2)を含むことで、耐湿熱性が特に向上する。両者の添加量のバランスを考慮すれば、単官能で分子量が比較的小さい安定化剤(B1)を多く含むことが透明性向上の観点から好ましく、安定化剤(B1)100質量部に対して、安定化剤(B2)が10質量部〜150質量部の範囲であることが、透明性と耐湿熱性の両立という観点から好ましく、50質量部〜100質量部の範囲であることが、より好ましい。
【0070】
また、安定化剤(B)が、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を1分子内に1つ有する安定化剤(B3)を含む態様も寸法安定性も向上させ得るという観点からは好ましい態様である。安定化剤(B3)はカルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を1分子内に1つしか有さないので、加水分解により生じた水酸基やカルボキシル基を有する光学活性高分子(A)の部位が、安定化剤(B3)を間に挟んで架橋されにくくなる。このため、光学活性高分子(A)の分子鎖が適度に柔軟に変位し、高分子圧電材料の内部応力が分散され、高分子圧電材料の寸法安定性が向上すると推測される。
【0071】
カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を1分子内に1つ有する化合物の重量平均分子量としては、200〜2000が好ましく、200〜1500がより好ましく、300〜900がさらに好ましい。
カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を1分子内に1つ有する化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ヘキシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、N−グリシジルフタルイミド、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好ましく、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドがさらに好ましい。
【0072】
また安定化剤(B3)と、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を1分子内に2つ以上有する安定化剤(B4)(例えば前述の安定化剤(B2)が含まれる)を併用してもよい。安定化剤(B3)100質量部に対して、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる官能基を1分子内に2つ以上有する安定化剤(B4)が5質量部〜200質量部の範囲であることが、透明性、耐湿熱性及び寸法安定性バランスという観点から好ましく、10質量部〜100質量部の範囲であることが、より好ましい。
【0073】
〔安定化剤(B)の重量平均分子量及び数平均分子量〕
上記安定化剤(B)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)は、いずれも、光学活性高分子(A)について記載したゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いた測定方法により同様に測定される。なおGPC以外にもGC−MS,FAB−MS,ESI−MS,TOF−MSなどの測定方法でも測定することができる。
【0074】
安定化剤(B)の添加量は、光学活性高分子(A)100質量部に対して0.01質量部〜10質量部が好ましい。また、より高い信頼性を得るためには(具体的には後述する信頼性試験500時間での信頼性)、添加量は0.7質量部以上がより好ましい。特に、安定化剤として脂肪族カルボジイミドを用いる場合は0.01質量部〜2.8質量部含まれるのが透明性という観点からはさらに好ましい。添加量が上記の範囲になることで、本実施形態における高分子圧電材料の内部へイズを著しく損なうことなく、圧電材料の信頼性を高めることができる。
なお、上記添加量は、安定化剤(B)を2種以上併用する場合、それらの総量を示す。
一方、内部ヘイズを低くし、かつ圧電定数を高めるか又は維持するという観点からは、安定化剤(B)の添加量は、光学活性を有する光学活性高分子(A)100質量部に対して0.01質量部〜1.2質量部が好ましく、0.01質量部〜0.7質量部がさらに好ましく、0.01質量部〜0.6質量部がさらにより好ましい。
【0075】
〔その他の成分〕
本実施形態における高分子圧電材料は、本実施形態の効果を損なわない限度において、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂やポリスチレン樹脂に代表される公知の樹脂や、シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の無機フィラー、フタロシアニン等の公知の結晶核剤等他の成分を含有していてもよい。
【0076】
−無機フィラー−
例えば、高分子圧電材料を、気泡等のボイドの発生を抑えた透明なフィルムとするために、高分子圧電材料中に、ヒドロキシアパタイト等の無機フィラーをナノ分散してもよい。但し、無機のフィラーをナノ分散させるためには、凝集塊の解砕に大きなエネルギーが必要であり、また、フィラーがナノ分散しない場合、フィルムの透明度が低下する場合がある。本実施形態における高分子圧電材料が無機フィラーを含有するとき、高分子圧電材料全質量に対する無機フィラーの含有量は、1質量%未満とすることが好ましい。なお、高分子圧電材料がヘリカルキラル高分子以外の成分を含む場合、ヘリカルキラル高分子以外の成分の含有量は、高分子圧電材料全質量中に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
−結晶促進剤(結晶核剤)−
結晶促進剤は、結晶化促進の効果が認められるものであれば、特に限定されないが、ヘリカルキラル高分子の結晶格子の面間隔に近い面間隔を持つ結晶構造を有する物質を選択することが望ましい。面間隔が近い物質ほど核剤としての効果が高いからである。例えば、ヘリカルキラル高分子としてポリ乳酸系高分子を用いた場合、有機系物質であるフェニルスルホン酸亜鉛、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、フェニルホスホン酸亜鉛、フェニルホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸マグネシウム、無機系物質のタルク、クレー等が挙げられる。それらのうちでも、最も面間隔がポリ乳酸の面間隔に類似し、良好な結晶形成促進効果が得られるフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。なお、使用する結晶促進剤は、市販されているものを用いることができる。具体的には例えば、フェニルホスホン酸亜鉛;エコプロモート(日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0078】
結晶核剤の含有量は、ヘリカルキラル高分子(例えば上記光学活性高分子(A))100質量部に対して通常0.01質量部〜1.0質量部、好ましくは0.01質量部〜0.5質量部、より良好な結晶促進効果とバイオマス度維持の観点から特に好ましくは0.02質量部〜0.2質量部である。結晶核剤の上記含有量が、0.01質量部未満では結晶促進の効果が十分でなく、1.0質量部を超えると結晶化の速度を制御しにくくなり、高分子圧電材料の透明性が低下する傾向にある。
【0079】
なお、高分子圧電材料は、透明性の観点からは、光学活性高分子(A)及び安定化剤(B)以外の成分を含まないことが好ましい。
【0080】
〔その他の物性〕
本実施形態における高分子圧電材料は、高度に分子が配向している。この配向を表す指標として、「分子配向度MOR」がある。分子配向度MOR(Molecular Orientation Ratio)は、分子の配向の度合いを示す値であり、以下のようなマイクロ波測定法により測定される。すなわち、試料(フィルム)を、周知のマイクロ波分子配向度測定装置(マイクロ波透過型分子配向計ともいう)のマイクロ波共振導波管中に、マイクロ波の進行方向に前記試料面(フィルム面)が垂直になるように配置する。そして、振動方向が一方向に偏ったマイクロ波を試料に連続的に照射した状態で、試料をマイクロ波の進行方向と垂直な面内で0〜360°回転させて、試料を透過したマイクロ波強度を測定することにより分子配向度MORを求める。
【0081】
本実施形態における規格化分子配向MORcとは、基準厚さtcを50μmとしたときのMOR値であって、下記式により求めることができる。
MORc=(tc/t)×(MOR−1)+1
(tc:補正したい基準厚さ、t:試料厚さ)
規格化分子配向MORcは、公知の分子配向計、例えば王子計測機器株式会社製マイクロ波方式分子配向計MOA−2012AやMOA−6000等により、4GHzもしくは12GHz近傍の共振周波数で測定することができる。
【0082】
規格化分子配向MORcは、後述の通り、主に一軸延伸フィルムの延伸前の加熱処理条件(加熱温度および加熱時間)や延伸条件(延伸温度および延伸速度)等によって制御されうる。
【0083】
なお規格化分子配向MORcは、位相差量(レターデーション)をフィルムの厚さで除した複屈折率Δnに変換することもできる。具体的には、レターデーションは大塚電子株式会社製RETS100を用いて測定することができる。またMORcとΔnとは大凡、直線的な比例関係にあり、かつΔnが0の場合、MORcは1になる。
例えば、光学活性高分子(A)がポリ乳酸系高分子で複屈折率Δnを測定波長550nmで測定した場合、規格化分子配向MORcの好ましい範囲の下限である2.0は、複屈折率Δn 0.005に変換できる。また高分子圧電材料の規格化分子配向MORcと結晶化度の積の好ましい範囲の下限である40は、高分子圧電材料の複屈折率Δnと結晶化度の積が0.1に変換することができる。
【0084】
〔規格化分子配向MORc〕
本実施形態における高分子圧電材料は、規格化分子配向MORcが3.5〜15.0であることが好ましく、4.0〜15.0であることがより好ましく、6.0〜10.0であることがさらに好ましく、7〜10.0であることがさらにより好ましい。規格化分子配向MORcが3.5〜15.0の範囲にあれば、延伸方向に配列するポリ乳酸分子鎖が多く、その結果、配向結晶の生成する率が高くなり、高い圧電性を発現することが可能となる。
【0085】
〔結晶化度〕
高分子圧電材料の結晶化度は、DSC法によって求められるものであり、本実施形態における高分子圧電材料の結晶化度は20%〜80%であり、好ましくは25%〜70%、さらに好ましくは30%〜50%が好ましい。前記範囲に結晶化度があれば、高分子圧電材料の圧電性、透明性のバランスがよく、また高分子圧電材料を延伸するときに、白化や破断がおきにくく製造しやすい。
【0086】
〔規格化分子配向MORcと結晶化度の積〕
高分子圧電材料の結晶化度と規格化分子配向MORcとの積は好ましくは40〜700、さらに好ましくは75〜680、さらに好ましくは90〜660、さらに好ましくは125〜650、さらに好ましくは180〜350である。高分子圧電材料の結晶化度と、規格化分子配向MORcとの積が40〜700の範囲にあれば、高分子圧電材料の圧電性と透明性とのバランスが良好であり、かつ寸法安定性も高く、後述する圧電素子として好適に用いることができる。
【0087】
〔透明性(内部ヘイズ)〕
高分子圧電材料の透明性は、例えば、目視観察やヘイズ測定により評価することができる。本実施形態における高分子圧電材料のヘイズは、可視光線に対する内部ヘイズが10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。ここで、ヘイズは、厚さ0.05mmの高分子圧電材料に対して、JIS−K7105に準拠して、ヘイズ測定機〔(有)東京電色製、TC−HIII DPK〕を用いて25℃で測定したときの値である。高分子圧電材料のヘイズは、低ければ低いほどよいが、圧電定数などとのバランスの観点からは、0.01%〜10%であることが好ましく、0.1%〜5%であることがより好ましく、0.1%〜1%であることが特に好ましい。なお本願でいう「ヘイズ」または「内部へイズ」とは、高分子圧電材料の内部へイズをいう。内部へイズとは、高分子圧電材料の外表面の形状によるヘイズを除外したヘイズである。
【0088】
<高分子圧電材料の製造方法>
本実施形態における高分子圧電材料の原料は、既述のポリ乳酸系高分子などの光学活性高分子(A)、必要に応じて、カルボジイミド化合物などの安定化剤(B)等の他の成分を混合して、混合物とすることにより得られる。混合物は溶融混練をしてもよい。具体的には、混合する光学活性高分子(A)と必要に応じて用いられる他の成分とを、溶融混練機〔東洋精機社製、ラボプラストミル〕を用い、ミキサー回転数30rpm〜70rpm、180℃〜250℃の条件で、5分〜20分間溶融混練することで、光学活性高分子(A)と安定化剤(B)とのブレンド体、複数種のヘリカルキラル高分子のブレンド体、ヘリカルキラル高分子と無機フィラーなどの他の成分とのブレンド体等を得ることができる。
【0089】
本実施形態における高分子圧電材料は、例えば、光学活性高分子(A)と、必要に応じて安定化剤(B)とを含む非晶状態のシートを結晶化して予備結晶化シート(結晶化原反ともいう)を得る第一の工程と、前記予備結晶化シートを主として1軸方向に延伸する第二の工程と、を含む、製造方法によって製造されうる。
【0090】
一般的に延伸時にフィルムにかける力を増やすことで、ヘリカルキラル高分子の配向が促進され圧電定数も大きくなり、結晶化が進み、結晶サイズが大きくなることでヘイズが大きくなる傾向にある。また内部応力の増加により寸法変形率も増加する傾向がある。単純にフィルムに力をかけた場合、球晶のように配向していない結晶が形成される。球晶のような配向が低い結晶は、ヘイズを上げるものの圧電定数の増加には寄与しにくい。よって、圧電定数が高く、ヘイズ及び寸法変形率が低いフィルムを形成するためには、圧電定数に寄与する配向結晶を、ヘイズを増大させない程度の微小サイズで効率よく形成する必要がある。
【0091】
本実施形態における高分子圧電材料の製造方法においては、例えば延伸の前にシート内を予備結晶化させ微細な結晶を形成した後に延伸する。これにより、延伸時にフィルムにかけた力を微結晶と微結晶の間の結晶性が低い高分子部分に効率よくかけることができるようになり、ヘリカルキラル高分子を主な延伸方向に効率よく配向させることができる。具体的には、微結晶と微結晶の間の結晶性が低い高分子部分内に、微細な配向結晶が生成すると同時に、予備結晶化によって生成された球晶がくずれ、球晶を構成しているラメラ晶が、タイ分子鎖につながれた数珠繋ぎ状に延伸方向に配向することで、所望の値のMORcを得ることができる。このため、圧電定数を大きく低下させることなく、ヘイズ及び寸法変形率の値が低いシートを得ることができる。
【0092】
規格化分子配向MORcを制御するには、第一の工程の加熱処理時間および加熱処理温度になどによる結晶化原反の結晶化度の調整、および第二の工程の延伸速度および延伸温度の調整が重要である。前述のとおり、ヘリカルキラル高分子は、分子光学活性を有する高分子である。ヘリカルキラル高分子とカルボジライト化合物を含む非晶状態のシートは、市場から入手可能なものでもよく、押出成形などの公知のフィルム成形手段で作製されてもよい。非晶状態のシートは単層であっても、多層であっても構わない。
【0093】
〔第一の工程(予備結晶化工程)〕
予備結晶化シートは、光学活性高分子(A)と、必要に応じて安定化剤(B)とを含む非晶状態のシートを加熱処理して結晶化させることで得ることができる。また、押出成形法などで光学活性高分子(A)と安定化剤(B)とを含む原料を、ヘリカルキラル高分子のガラス転移温度よりも高い温度に加熱しシート状に押出成形した後、キャスターで押し出されたシートを急冷することで、所定の結晶化度を有する予備結晶化シートを得ることもできる。
【0094】
また1)予め結晶化した予備結晶化シートを、後述する延伸工程(第二の工程)に送り、延伸装置にセットして延伸してもよいし(オフラインによる加熱処理)、2)加熱処理により結晶化されていない非晶状態のシートを、延伸装置にセットして、延伸装置にて加熱して予備結晶化し、その後、連続して延伸工程(第二の工程)に送って、延伸してもよい(インラインによる加熱処理)。
【0095】
非晶状態のヘリカルキラル高分子を含むシートを予備結晶化するための加熱温度Tは特に限定されないが、本製造方法で製造される高分子圧電材料の圧電性や透明性など高める点で、ヘリカルキラル高分子のガラス転移温度Tgと以下の式の関係を満たし、結晶化度が3%〜70%になるように設定されるのが好ましい。
Tg−40℃≦T≦Tg+40℃
(Tgは、前記ヘリカルキラル高分子のガラス転移温度を表す)
【0096】
予備結晶化するための加熱時間またはシート状に押出成形するときに結晶化する場合の加熱時間は、所望の結晶化度を満たし、かつ延伸後(第二工程後)の高分子圧電材料の規格化分子配向MORcと延伸後の高分子圧電材料の結晶化度の積が好ましくは40〜700、さらに好ましくは125〜650、さらに好ましくは250〜350になるように調整されればよい。加熱時間が長くなると、延伸後の結晶化度も高くなり、延伸後の規格化分子配向MORcも高くなる。加熱時間が短くなると、延伸後の結晶化度も低くなり、延伸後の規格化分子配向MORcも低くなる傾向がある。
【0097】
延伸前の予備結晶化シートの結晶化度が高くなると、シートが硬くなってより大きな延伸応力がシートにかかるので、前記シート中の結晶性が比較的低い部分も配向が強くなり、延伸後の規格化分子配向MORcも高くなる。逆に、延伸前の予備結晶化シートの結晶化度が低くなると、シートが柔らかくなって延伸応力がよりシートにかかりにくくなるので、前記シート中の結晶性が比較的低い部分も配向が弱くなり、延伸後の規格化分子配向MORcも低くなると考えられる。
【0098】
加熱時間は、加熱温度、シートの厚み、シートを構成する樹脂の分子量、添加剤などの種類または量によって異なる。また、シートを結晶化させる実質的な加熱時間は、後述する延伸工程(第二工程)の前に行なってもよい予熱において、非晶状態のシートが結晶化する温度で予熱した場合、前記予熱時間と、予熱前の予備結晶化工程における加熱時間の和に相当する。
【0099】
非晶状態のシートの加熱時間またはシート状に押出成形するときに結晶化する場合の加熱時間は、通常は5秒〜60分であり、製造条件の安定化という観点からは1分〜30分でもよい。例えば、ヘリカルキラル高分子としてポリ乳酸系高分子を含む非晶状態のシートを予備結晶化する場合は、20℃〜170℃で、5秒〜60分加熱することが好ましく、1分〜30分でもよい。
【0100】
延伸後のシートに効率的に圧電性、透明性、高寸法安定性を付与するには、延伸前の予備結晶化シートの結晶化度を調整することが重要である。すなわち、延伸により圧電性や寸法安定性が向上する理由は、延伸による応力が、球晶状態にあると推測される予備結晶化シート中の結晶性が比較的高い部分に集中し、球晶が破壊されつつ配向することで圧電性d
14が向上する一方、球晶を介して延伸応力が結晶性の比較的低い部分にもかかり、配向を促し、圧電性d
14を向上させるからと考えられるからである。
【0101】
延伸後のシートの結晶化度、または後述するアニール処理を行う場合はアニール処理後の結晶化度は、20%〜80%、好ましくは40%〜70%になるように設定される。そのため、予備結晶化シートの延伸直前の結晶化度は3%〜70%、好ましくは10%〜60%、さらに好ましくは15%〜50%になるように設定される。
【0102】
予備結晶化シートの結晶化度は、延伸後の、本実施形態における高分子圧電材料の結晶化度の測定と同様に行なえばよい。
【0103】
予備結晶化シートの厚みは、第二の工程の延伸により得ようとする高分子圧電材料の厚みと延伸倍率によって主に決められるが、好ましくは50μm〜1000μmであり、より好ましくは200μm〜800μm程度である。
【0104】
〔第二の工程(延伸工程)〕
第二の工程である、延伸工程における延伸方法は特に制限されず、1軸延伸、2軸延伸、後述する固相延伸などの種々の延伸方法を用いることができる。高分子圧電材料を延伸することにより、主面の面積が大きな高分子圧電材料を得ることができる。
【0105】
ここで、「主面」とは、高分子圧電材料の表面の中で、最も面積の大きい面をいう。本実施形態における高分子圧電材料は、主面を2つ以上有してもよい。例えば、高分子圧電材料が、10mm×0.3mm四方の面Aと、3mm×0.3mm四方の面Bと、10mm×3mm四方の面Cとをそれぞれ2面ずつ有する板状体である場合、当該高分子圧電材料の主面は面Cであり、2つの主面を有する。
【0106】
本実施形態において、主面の面積が大きいとは、高分子圧電材料の主面の面積が5mm
2以上であることをいう。また主面の面積が10mm
2以上であることが好ましい。
【0107】
高分子圧電材料を主に一方向に延伸することで、高分子圧電材料に含まれるポリ乳酸系高分子の分子鎖を、一方向に配向させ、かつ高密度に整列させることができ、より高い圧電性が得られると推測される。
【0108】
ここで、高分子圧電材料のガラス転移温度Tg〔℃〕および高分子圧電材料の融点Tm〔℃〕は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、高分子圧電材料に対して、昇温速度10℃/分の条件で温度を上昇させたときの融解吸熱曲線から、曲線の屈曲点として得られるガラス転移温度(Tg)と、吸熱反応のピーク値として確認される温度(Tm)である。
【0109】
高分子圧電材料の延伸温度は、1軸延伸方法や2軸延伸方法等のように、引張力のみで高分子圧電材料を延伸する場合は、高分子圧電材料のガラス転移温度より10℃〜20℃程度高い温度範囲であることが好ましい。
【0110】
延伸処理における延伸倍率は、3倍〜30倍が好ましく、4倍〜15倍の範囲で延伸することがより好ましい。
【0111】
予備結晶化シートの延伸を行なうときは、延伸直前にシートを延伸しやすくするために予熱を行なってもよい。この予熱は、一般的には延伸前のシートを軟らかくし延伸しやすくするために行なわれるものであるため、前記延伸前のシートを結晶化してシートを硬くすることがない条件で行なわれるのが通常である。しかし、上述したように本実施形態においては、延伸前に予備結晶化を行なう場合があるため、前記予熱を、予備結晶化を兼ねて行なってもよい。具体的には、上述した予備結晶化工程における加熱温度や加熱処理時間に合わせて、予熱を通常行なわれる温度よりも高い温度や長い時間行なうことで、予熱と予備結晶化を兼ねることができる。
【0112】
〔アニール処理工程〕
圧電定数を向上させる観点から、延伸処理を施した後(前記第二の工程の後)の高分子圧電材料を、一定の熱処理(以下「アニール処理」とも称する)することが好ましい。なおアニール処理により主に結晶化する場合は、前述の予備結晶化工程で行う予備結晶化を省略できる場合がある。
【0113】
アニール処理の温度は、概ね80℃〜160℃であることが好ましく、100℃〜155℃あることがさらに好ましい。
【0114】
アニール処理の温度印加方法は、特に限定されないが、熱風ヒータや赤外線ヒータを用いて直接加熱する方法、加熱したシリコンオイルなど、加熱した液体に高分子圧電材料を浸漬して加熱する方法等が挙げられる。
【0115】
このとき、線膨張により高分子圧電材料が変形すると、実用上平坦なフィルムを得ることが困難になるため、高分子圧電材料に一定の引張応力(例えば、0.01MPa〜100Mpa)を印加し、高分子圧電材料がたるまないようにしながら温度を印加することが好ましい。
【0116】
アニール処理の温度印加時間は、1秒〜60分であることが好ましく、1秒〜300秒であることがより好ましく、1秒から60秒の範囲で加熱することがさらに好ましい。60分を超えてアニールをすると、高分子圧電材料のガラス転移温度より高い温度で、非晶部分の分子鎖から球晶が成長することにより配向度が低下する場合があり、その結果、圧電性や透明性が低下する場合がある。
【0117】
上記のようにしてアニール処理された高分子圧電材料は、アニール処理した後に急冷することが好ましい。アニール処理において、「急冷する」とは、アニール処理した高分子圧電材料を、アニール処理直後に、例えば氷水中等に浸漬して、少なくともガラス転移点Tg以下に冷やすことをいい、アニール処理と氷水中等への浸漬との間に他の処理が含まれないことをいう。
【0118】
急冷の方法は、水、氷水、エタノール、ドライアイスを入れたエタノールやメタノール、液体窒素などの冷媒に、アニール処理した高分子圧電材料を浸漬する方法や、蒸気圧の低い液体スプレーを吹き付け、蒸発潜熱により冷却したりする方法が挙げられる。連続的に高分子圧電材料を冷却するには、高分子圧電材料のガラス転移温度Tg以下の温度に管理された金属ロールと、高分子圧電材料とを接触させるなどして、急冷することが可能である。また、冷却の回数は、1回のみであっても、2回以上であってもよく、さらには、アニールと冷却とを交互に繰り返し行なうことも可能である。
【0119】
本実施形態における高分子圧電材料の製造方法は、光学活性高分子(A)と前記安定化剤(B)を含むシートを主として1軸方向に延伸する工程と、アニール処理をする工程と、をこの順で含むものであってもよい。該延伸する工程及びアニール処理をする工程は、上述と同様の工程とすることができる。また、本製造方法においては、上述の予備結晶化工程を実施しなくともよい。
【0120】
また、本実施形態における圧電部材は、上述した高分子圧電材料に加え、電極を含むことが好ましい。
より好ましい態様の圧電部材は、上記圧電部材7のように、高分子圧電材料(例えば上記PLAフィルム4)が2つの主面を有し、当該主面に電極(例えば上記第1電極層2及び第2電極層3)が設けられた構成の圧電部材である。電極は、高分子圧電材料の少なくとも2つの面に備えられていればよい。
前記電極としては、特に制限されないが、例えば、Al、Ag、Au、Cu、Ag−Pd合金、ITO、ZnO、IZO(登録商標)、導電性ポリマー等が用いられる。
【0121】
また、本実施形態における圧電部材は、高分子圧電材料と電極とを繰り返し重ねた構成の積層型の圧電部材であってもよい。
積層型の圧電部材の例としては、電極と高分子圧電材料とのユニットを繰り返し重ね、最後に電極で覆われていない高分子圧電材料の主面を電極で覆ったものが挙げられる。具体的にはユニットの繰り返しが2回のものは、電極、高分子圧電材料、電極、高分子圧電材料、電極をこの順で重ねた積層型の圧電部材である。積層型の圧電部材に用いられる高分子圧電材料はそのうち1層の高分子圧電材料が本実施形態における高分子圧電材料であればよく、その他の層は本実施形態における高分子圧電材料でなくてもよい。
また、積層圧電素子に複数の本実施形態における高分子圧電材料が含まれる場合は、ある層の本実施形態における高分子圧電材料に含まれる光学活性高分子(A)の光学活性がL体ならば、他の層の高分子圧電材料に含まれる光学活性高分子(A)はL体であってもD体であってもよい。高分子圧電材料の配置は圧電部材の用途に応じて適宜調整することができる。
【0122】
圧電部材において、例えば、L体の光学活性高分子(A)を主たる成分として含む高分子圧電材料の第1の層が電極を介してL体の光学活性高分子(A)を主たる成分として含む第2の高分子圧電材料と積層される場合は、第1の高分子圧電材料の一軸延伸方向(主たる延伸方向)を、第2の高分子圧電材料の一軸延伸方向(主たる延伸方向)と交差、好ましくは直交させると、第1の高分子圧電材料と第2の高分子圧電材料の変位の向きを揃えることができ、積層型の圧電部材全体としての圧電性が高まるので好ましい。
【0123】
一方、圧電部材において、L体の光学活性高分子(A)を主たる成分として含む高分子圧電材料の第1の層が電極を介してD体の光学活性高分子(A)を主たる成分として含む第2の高分子圧電材料と積層される場合は、第1の高分子圧電材料の一軸延伸方向(主たる延伸方向)を、第2の高分子圧電材料の一軸延伸方向(主たる延伸方向)と略平行となるように配置すると第1の高分子圧電材料と第2の高分子圧電材料の変位の向きを揃えることができ、積層型の圧電部材全体としての圧電性が高まるので好ましい。
【0124】
本実施形態の押圧検出装置は、表示装置と組み合わせてタッチパネルとして用いることができる。
即ち、本発明の一実施形態に係るタッチパネルは、本実施形態の押圧検出装置と、表示装置(例えば、液晶表示パネル、有機エレクトロルミネッセンス表示パネル、等)と、を備える。
上記タッチパネルにおいて、本実施形態の押圧検出装置と、表示装置と、の位置関係には特に制限はない。
例えば、上記タッチパネルにおいて、本実施形態の押圧検出装置は、表示装置を視認する側(以下、「視認側」ともいう)からみて、表示装置に重なる位置(好ましくは表示装置の視認側。以下同じ。)に配置されていてもよいし、表示装置に重ならない位置(例えば、表示装置に隣接する位置。以下同じ)に配置されていてもよいし、表示装置に重なる位置及び表示装置に重ならない位置の両方に配置されていてもよい。
また、上記タッチパネルにおいて、本実施形態の押圧検出装置は、表示装置1つに対し、1つのみ備えられていてもよいし、複数備えられていてもよい。
【0125】
上記タッチパネルにおいて、本実施形態の押圧検出装置が、視認側からみて表示装置に重なる位置に配置される場合、押圧検出装置の圧電部材に含まれ得る電極としては、透明性がある電極が好ましい。
上記タッチパネルにおいて、本実施形態の押圧検出装置が、視認側からみて表示装置に重なる位置に配置される場合、表示装置の視認性を高めるため、押圧検出装置に含まれる被加圧部材としては、透明性がある部材を用いることが好ましい。
電極及び被加圧部材について、「透明性がある」とは、具体的には、内部ヘイズが20%以下(全光線透過率が80%以上)であることをいう。
【0126】
本実施形態に係るタッチパネルの一例として、
表示装置と、
表示装置に対して視認側に配置された位置検出装置と、
視認側からみて該表示装置に重ならない位置に配置された感圧装置と、
を備え、
位置検出装置及び感圧装置の少なくとも一方が、本実施形態の押圧検出装置を含む形態が挙げられる。
【0127】
上記位置検出装置とは、指やタッチペンなどの位置入力手段が触れた位置を検出する装置を指す。ここでいう「位置」としては、表示装置の表示面に平行であり互いに直交するX軸方向及びY軸方向についての位置と、表示装置の表示面に垂直なZ軸方向についての位置と、が挙げられる。この「Z軸方向についての位置」とは、位置入力手段によって押し込まれた深さを表す。この深さは、位置入力手段によって押し込まれた圧力(押圧)に対応する。本実施形態の押圧検出装置は、Z軸方向についての位置を検出するための位置検出装置として好適である。この場合、位置入力手段が、本実施形態における加圧手段に対応する。
【0128】
上記感圧装置とは、視認側からみて表示装置とは重ならない位置に配置され、指などの加圧手段による押圧を検出する装置を指す。
感圧装置は、位置検出装置で検出された押圧を増幅又は減衰させるための装置とすることもできる。この場合、タッチパネルの操作者が、一方の手(又は指)によって位置検出装置に対して位置入力を行うと同時に、他方の手(又は指)によって感圧装置に圧を加え、位置検出装置によって検出された押圧を増幅又は減衰させることができる。
感圧装置は、表示装置1つに対し、2つ以上備えられることが好ましく、3つ以上備えられることがより好ましい。例えば、視認側からみた表示装置(表示面)の形状が矩形形状である場合、感圧装置は表示装置の4隅に隣接する4か所のうち、少なくとも3か所に備えられることが好ましい。本実施形態の押圧検出装置は、上記感圧装置の少なくとも1つとして好適である。
【0129】
上記一例に係るタッチパネルでは、本実施形態の押圧検出装置が、位置検出装置にのみ含まれていてもよいし、感圧装置にのみ含まれていてもよいし、両方に含まれていてもよい。
また、上記一例に係るタッチパネルにおいて、本実施形態の押圧検出装置が、位置検出装置及び感圧装置の両方に含まれる場合、位置検出装置に含まれる押圧検出装置の被加圧部材と、感圧装置に含まれる押圧検出装置の被加圧部材と、が共通する部材であってもよい。
両者が共通する部材である場合の具体的な態様としては、一つの被加圧部材(例えば、ガラス基板、樹脂基板、等)に対し、視認側からみて表示装置に重なる位置に第1の圧電部材を設け、視認側からみて表示装置に重ならない位置に第2の圧電部材を設けた態様が挙げられる。この態様において、第1の圧電部材及び第2の圧電部材は、それぞれ、1つのみ設けてもよいし、複数設けてもよい。
また、両者が共通する部材である場合の具体的な態様としては、一つの被加圧部材に対し、視認側からみて、表示装置に重なる位置から表示装置に重ならない位置にかけてまたがる圧電部材を設けた態様も挙げられる。
【0130】
以上、本発明の一実施形態(以下、「第1実施形態」ともいう)に係る押圧検出装置について説明したが、押圧検出装置としては、上記第1実施形態以外にも、以下の実施形態(以下、「第2実施形態」ともいう)に係る押圧検出装置も好適である。
第2実施形態に係る押圧検出装置は、加圧手段が接触して圧力が加えられる接触面を有する被加圧部材と、前記被加圧部材に対向して配置され、高分子圧電材料を含む圧電部材と、を備え、前記被加圧部材の断面2次モーメントIb及びヤング率Ebの積IEbが、10GPa・mm
4〜10
8GPa・mm
4の範囲にある。
第2実施形態に係る押圧検出装置も、第1実施形態に係る押圧検出装置と同様に、表示装置と組み合わせてタッチパネルとして用いることができる。タッチパネルの好ましい態様は、第1実施形態に係る押圧検出装置を用いたタッチパネルの好ましい態様と同様である。
【0131】
本発明者らは、IEbが、10GPa・mm
4〜10
8GPa・mm
4の範囲にあることで、上記第1実施形態と同様に、単位たわみ量当たりの発生電荷密度が高く、すなわち、被加圧部材の接触面に加えられた圧力を高い感度で検出することができることを見出した。
第2実施形態に係る押圧検出装置は、IEb/IEaが10
2〜10
10の範囲にあることには限定されないが、IEbが10GPa・mm
4〜10
8GPa・mm
4の範囲にあることが必要である。第2実施形態に係る押圧検出装置は、この点以外は第1実施形態に係る押圧検出装置と同様である。第2実施形態に係る押圧検出装置の好ましい態様も第1実施形態に係る押圧検出装置の好ましい形態と同様である。第2実施形態において、IEbは、10GPa・mm
4〜10
7GPa・mm
4が好ましく、10GPa・mm
4〜10
6GPa・mm
4がより好ましく、10
2GPa・mm
4〜10
5GPa・mm
4が特に好ましい。
【実施例】
【0132】
以下、本発明の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
〔圧電シート(ポリ乳酸フィルム:PLAフィルム)の作製〕
三井化学(株)製ポリ乳酸系樹脂(登録商標 LACEA、H−400(重量平均分子量Mw:20万)100質量部に対して、安定化剤(B)として下記構造を有する安定化剤B1−1を0.1質量部添加し、ドライブレンドして原料を作製した。
【0134】
【化5】
【0135】
作製した原料を押出成形機ホッパーに入れて、220℃〜230℃に加熱しながらTダイから押し出し、55℃のキャストロールに0.5分間接触させて、厚さ150μmの予備結晶化シートを製膜した(予備結晶化工程)。予備結晶化シートの結晶化度を測定したところ5.63%であった。
得られた予備結晶化シートを70℃に加熱しながらロールツーロールで、延伸速度1650mm/分で延伸を開始し、3.3倍までMD方向に一軸延伸した(延伸工程)。得られたフィルムの厚さは0.05mmであった。
その後、前記一軸延伸フィルムを、ロールツーロールで、130℃に加熱したロール上に60秒間接触させアニール処理し、高分子圧電材料(PLAフィルム)を作製した(アニール処理工程)。
【0136】
〔物性測定および評価〕
以上のようにして得られた高分子圧電材料について、重量平均分子量、融点(Tm)、結晶化度、内部ヘイズ、MORc、圧電定数d
14を測定した。結果を表1に示す。
具体的には、次のようにして測定した。
【0137】
<光学活性高分子の分子量分布(Mw/Mn)及び重量平均分子量>
前述したGPC測定方法により、高分子圧電材料に含まれる樹脂(光学活性高分子)の分子量分布(Mw/Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出した。
結果を表1に示した。
【0138】
<融点、結晶化度>
高分子圧電材料を、10mg正確に秤量し、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC−1)を用い、昇温速度500℃/分の条件で140℃まで昇温し、さらに昇温速度10℃/分の条件で200℃まで昇温して融解曲線を得た。得られた融解曲線から融点Tm及び結晶化度を得た。
【0139】
<内部ヘイズ>
本願でいう「内部へイズ」とは高分子圧電材料の内部へイズのことをいい、測定方法は一般的な方法で測定される。
具体的には、本実施例の高分子圧電材料の内部ヘイズ値は、下記測定条件下で下記装置を用いて、厚さ方向の光透過性を測定することにより、測定した。より詳細には、予めガラス板2枚の間に、シリコンオイル(信越化学工業株式会社製信越シリコーン(商標)、型番:KF96−100CS)のみを挟んでヘイズ(H2)を測定し、次にシリコンオイルで表面を均一に塗らした高分子圧電材料を、ガラス板2枚で挟んでヘイズ(H3)を測定し、下記式のようにこれらの差をとることで本実施例の高分子圧電材料の内部ヘイズ(H1)を得た。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)−ヘイズ(H2)
上記ヘイズ(H2)及び上記ヘイズ(H3)は、下記測定条件下で下記装置を用いて、厚さ方向の光透過性を測定することにより測定した。
測定装置:東京電色社製、HAZE METER TC−HIIIDPK
試料サイズ:幅3mm×長さ30mm、厚さ0.05mm
測定条件:JIS−K7105に準拠
測定温度:室温(25℃)
【0140】
<規格化分子配向MORc>
規格化分子配向MORcは、王子計測機器株式会社製マイクロ波方式分子配向計MOA−6000により測定した。基準厚さtcは、50μmに設定した。
【0141】
<圧電定数d
14(変位法)>
前述した測定方法(変位法)により、高分子圧電材料の圧電定数d
14を測定した。
【0142】
【表1】
【0143】
(実施例1)
前記作製した高分子圧電材料(PLAフィルム)から、幅50mm、長さ90mmのPLAフィルムを切り出し、切り出したPLAフィルムの表裏にAl蒸着電極層(厚さはいずれも50nmとした)を形成することにより、圧電部材を準備した。これらのAl蒸着電極層は、前述した圧電定数(変位法)の測定におけるAl蒸着層と同様に、(株)昭和真空製SIP−600を用いて形成した。
また、被加圧部材(基材)として、下記表2に示すサイズ(長さ×幅×厚さ)のタキロン(株)製の塩ビプレートを準備した。
【0144】
<断面2次モーメント>
上記圧電部材の断面二次モーメント(Ia)を、圧電部材の厚み及び幅に基づいて前述の式(a)に従って求めた。
また上記被加圧部材(基材)の断面二次モーメント(Ib)を、上記被加圧部材(基材)の厚み及び後述の幅方向の固定端間隔に基づいて、数式「Ib=固定端間隔×(部材の厚さの3乗)/12」に従って求めた。
ここでは、各部材の主面を水平に設置し、水平方向に軸を定義したときの値を断面2次モーメントとした。
【0145】
<ヤング率>
上記圧電部材及び上記被加圧部材(基材)のヤング率(Ea、Eb)を、それぞれ、JIS K7127に準拠した引張試験方法により、JIS K6251の規定されるダンベル状1号形の試験片を用いて計測した。上記圧電部材及び上記被加圧部材(基材)のヤング率は、それぞれ、本試験片および本試験方法により得られた応力ひずみ線図における弾性域(の線形部)の傾きとして求めた。
【0146】
[押圧検出装置の作製]
上記圧電部材及び上記被加圧部材(基材)を用い、
図1に示す押圧検出装置10と同様の構成を有する押圧検出装置を作製した。
ここで、支持枠5としては、130mm×80mm×厚さ6mmサイズの四面体の中心部から100mm×54mm×厚さ6mmサイズの四面体を切り抜いた四角枠状の、硬質塩化ビニル製部材を用いた。
また、被加圧部材(基材)6と支持枠5とを、それぞれの外周が重なるように配置し、両者を両面テープ(不図示)で貼り合せた。この例では、被加圧部材(基材)6の幅方向の固定端間隔は、54mmとなる。
また、圧電部材7と被加圧部材(基材)6とを、それぞれの中心が重なるように配置し(即ち、圧電部材7の中心と支持枠5の内周の中心とが重なるように配置し)、両者を両面テープ1で貼り合わせた。
また、圧電部材の両面のAl蒸着電極層には、導電性粘着層付きの銅箔テープを貼り付けて電気的導通を図った。
【0147】
<発生電荷密度>
上記銅箔テープに
図3に示す回路に含まれる銅線をハンダ付けで接続することにより、上記押圧検出装置を
図3に示す回路に接続した。
本回路では、圧電効果により発生した電荷を、回路内の100nFのコンデンサ13に蓄電し、コンデンサ13の両端電圧を、OPアンプ12からなるバッファーアンプを介して、AD変換装置14で読み取る。読み取った電圧値に、回路内のコンデンサ13の静電容量100nFを乗じた値が発生電荷量となる。さらに発生電荷を、Al蒸着電極の面積(45cm
2(=5cm×9cm))で割った値が発生電荷密度となる。
以上により発生電荷密度を測定した。
【0148】
<単位たわみ量当たりの発生電荷密度>
図1に示す加圧手段8としての押出棒は、エーアンドディ社製引張試験機テンシロンRTG1250のクロスヘッド部のロードセルに接続されている。
単位たわみ当たりの発生電荷密度の測定方法を説明する。
図1に示す加圧手段8(ここでは押出棒)を基材6の接触面6Aの中央部に、接触面6Aに垂直に接触させ、クロスヘッドスピード毎分5mmで、基材6に押し圧を印加する。押し圧は、引張試験機のロードセルで計測され、押し圧力が、人間の指の押力に相当する5Nに達したら、クロスヘッドの進行方向を反転させて押し圧力を減じる。押し圧力が0Nに達したら、再度、クロスヘッドの進行方向を反転させる。押し圧力を増大させ5Nに達したら力を減じる。
このサイクルを10サイクル行い、その際に発生した電荷量を、
図3に示した回路を介して読み取る。また撓み量は、引張試験機の出力電圧をAD変換器で読み取り、比例定数を用いて、撓み量に変換する。
発生電荷密度の(最大値−最小値)を、撓み量の(最大値−最小値)で割った値を単位撓み量当たりの発生電荷密度とした。
【0149】
(実施例2〜5及び比較例1)
圧電部材及び被加圧部材(基材)を表2のように変更したこと以外は実施例1と同様にして押圧検出装置を作製し、評価を行った。
結果を下記表2に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
(表2の説明)
・断面2次モーメントは、主面を水平に設置し、水平方向に軸を定義した時の値である。
・実施例1〜4では、基材として、タキロン(株)製の塩ビプレート(厚さは表2のとおり)を用いた。
・実施例5及び比較例1では、基材として、(株)光製の塩ビプレート「ユニサンデー」(厚さは表2のとおり)を用いた。
・「(数値a)E(数値b)」の表記は、「(数値a)×10
(数値b)」を表す。例えば、「5.2E−04」との表記は、5.2×10
−4を表す。
【0152】
表2に示すように、IEb/IEaが10
2〜10
10の範囲で、単位たわみ量当たりの発生電荷密度が高いことが確認された。中でも、IEb/IEaが10
4〜10
9の範囲(その中でも、10
4〜10
8の範囲(特に10
5〜10
8の範囲))では、単位たわみ量当たりの発生電荷密度が特に高いことが確認された。
【0153】
2013年5月16日に出願された日本国特許出願2013−104398の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。