(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985747
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】移動可能な家具部品のための駆動装置
(51)【国際特許分類】
A47B 88/00 20060101AFI20160823BHJP
E05C 19/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
A47B88/00 H
E05C19/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-520766(P2015-520766)
(86)(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公表番号】特表2015-525623(P2015-525623A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】AT2013000095
(87)【国際公開番号】WO2014008521
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】A769/2012
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルンマイヤー,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】ヘメール,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ブルム,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘメール,クルト
(72)【発明者】
【氏名】フローガス,アレクサンダー,ジーモン
【審査官】
蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−102294(JP,A)
【文献】
特表2012−522550(JP,A)
【文献】
特開2011−005243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/22
E05C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な家具部品(2)のための駆動装置(1)であって、
筐体(4)と、
開放方向(OR)に閉位置(SS)から前記移動可能な家具部品(2)を排出するための、前記筐体(4)上あるいは筐体(4)の中に移動可能に取り付けられた排出スライド(3)と、
開位置(OS)から前記閉位置(SS)に前記移動可能な家具部品(2)を格納するための、前記筐体(4)に対して移動可能な格納スライド(15)と、
前記排出スライド(3)上に移動可能に取り付けられており、前記排出スライド(3)を少なくとも前記閉位置(SS)で前記筐体(4)に固定するラッチ要素(6)と、
を備えており、
前記格納スライド(15)は、前記ラッチ要素(6)を介して前記排出スライド(3)に連結することができることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
第1移動部分(B1)において、前記格納スライド(15)が第1連結位置(K1)に配置された前記ラッチ要素を用いて前記排出スライド(3)に連結され、第2移動部分(B2)において、一方で、前記格納スライド(15)が前記排出スライド(3)から分離され、他方で、前記排出スライド(3)は第2連結位置(K2)に配置された前記ラッチ要素(6)を用いて前記筐体(4)に固定されることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1移動部分(B1)は前記第2移動部分(B2)に直接移行し、前記ラッチ要素(6)は、前記格納スライド(15)と前記排出スライド(3)の間の前記第1連結位置(K1)から出て、前記排出スライド(3)と前記筐体(4)との間の前記第2連結位置(K2)へ直接移動可能であることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記格納スライド(15)は、前記排出スライド(3)に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
前記格納スライド(15)は、牽引部材(9)を介して前記移動可能な家具部品(2)に連結可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記排出スライド(3)は、一方で前記筐体(4)に固定され、且つ他方で前記排出スライド(3)に固定された、排出力蓄積手段(18)による前記開放方向(OR)への力によって起動されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項7】
前記格納スライド(15)は、一方で前記排出スライド(3)に固定され、且つ他方で前記格納スライド(15)に固定された、格納力蓄積手段(19)による閉止方向(SR)への力によって起動されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項8】
家具のカーカス(17)と、移動可能な家具部品(2)と、前記移動可能な家具部品(2)のための請求項1から7のいずれかに記載の駆動装置(1)と、を備えた家具(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動可能な家具部品な家具部品のための駆動装置に関する。当該駆動装置は、筐体(housing、ハウジング)と、開放方向に閉位置から移動可能な家具部品を排出するための、筐体内又は筐体に接して移動可能に取り付けられた排出スライド(ejection slide、排出用摺動手段)、開位置から閉位置に移動可能な家具部品を格納するための、筐体に対して移動可能な格納スライド(retraction slide、引戻し用摺動手段)、排出スライドに移動可能に取り付けられ、それによって排出スライドが少なくとも閉位置の筐体に停止させられるラッチ要素(latching element、掛金手段)を含む。本発明は、さらに、このような固定可能(lockable、ロック可能)な排出装置を含む家具(an article of furniture、家具品目)に関する。
【背景技術】
【0002】
固定可能な排出装置は、家具用取付具の分野で長年に亘って知られている。排出装置の固定状態の解除は、閉位置から外への移動可能な家具部品の(押す又は引く)動作によって引き起こされるため、移動可能な家具部品は自動的に排出又は開放される。
【0003】
格納装置もまた家具用取付具の分野で知られている。具体的には、最終的な閉止部で、移動可能な家具部品(引出し、ドア、垂れ蓋(flap)など)は、自動的に閉位置へと移動させられる。この閉止動作を減衰するための減衰手段もしばしば提供される。
【0004】
排出装置と格納装置の両方が一体化している家具部品のための駆動装置を開示した最初の明細書のうちの1つが、ドイツ国特許公開DE 198 23 305 A1である。この仕様の不利な点は、複雑で高価な点であり、別々の連結工程が、一方で排出要素と、他方で格納装置にそれぞれ含まれる。
【0005】
同様の形態が、本出願人によってオーストリア特許出願A 1891/2011として出願されており、適切な日に公開されており、優先する権利を構成している。明細書では、格納スライドと排出スライドを有する駆動装置が記載されている。詳細な説明の
図13は、格納スライドが固定状態から解除され、排出スライドの固定はカージオイド曲線(cardioid curve、ハート型曲線)の別の場所で、同時に、別々に引き起こされることを示している。その後の排出スライドの固定状態の解除は
図15に示される。格納スライドの固定は
図17に示される。格納スライドの固定状態の解除と同時に起こる排出スライドの固定に関する不利な点は、第1に、固定及び固定状態の解除のための2つの分離した装置がなければならない点、第2に、結果として、駆動装置全体がより複雑な設計構成でなければならない点、第3に、同時に起こる固定と固定状態の解除の騒音が、ラッチ工程及び固定工程によって重複する点が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ国特許公開DE 198 23 305 A1
【特許文献2】オーストラリア国特許出願A 1891/2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は従来技術よりも改善された駆動装置を提供することである。特に、本発明は、従来技術の不利な点を取り除き、移動可能な家具部品のための、より簡素で静かな駆動装置を提供することを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1の特徴を有する駆動装置によって実現される。請求項1によると、格納スライドはラッチ要素を用いて排出スライドに連結されることができる。よって、ラッチ要素は二重機能を有し、排出スライドを筐体に固定するため、及び、格納スライドを排出スライドに固定するための両方の目的に役立つ。
【0009】
本発明のとりわけ好ましい実施形態において、格納スライド又は移動可能な家具部品の第1移動部分(first movement portion)において、格納スライドが、第1連結位置(first coupling position)に配置されたラッチ要素を介して、排出スライドに連結される。格納スライド又は移動可能な家具部品の第2移動部分(second movement portion)において、一方で、格納スライドが排出スライドへの連結が解除され、他方で、排出スライドが第2連結位置に配置されたラッチ要素によって筐体に固定される。格納スライドの第1移動部分は、移動可能な家具部品の閉止機構(closing movement)の一部に対応している。この閉止機構又は第1移動部分で、排出力蓄積手段は圧力(stress、応力)を与えられ、蓄積手段は、一方で筐体に他方では排出スライドに固定され、排出スライドに開放方向の力を受けさせる。第2移動部分も、移動可能な家具部品の閉止機構の一部に対応している。この第2移動部分は、好ましくは、格納スライドによって起動される移動可能な家具部品の格納機構(retraction movement)に対応している。この場合、格納力蓄積手段は除荷(unload)され、格納力蓄積方法は、一方で排出スライドに固定され、他方では格納スライドに固定され、格納スライドを閉止方向の力を受ける。
【0010】
原則として、第1移動部分と第2移動部分との間の、中立的(neutral)な無作動領域、又は他の移動部分の提供は排除されない。しかし、移動部分同士の間のできるだけ静かな流動体変化(fluid transition)を保証するために、好ましくは、第1移動部分は直接第2移動部分へと融合し(blend into)、ラッチ要素は格納スライドと排出スライドの間の第1連結位置から出て、排出スライドと筐体の間の第2連結位置へと直接移動可能である。このように、排出スライドからの格納スライドの固定状態の解除は、筐体の固定用要素(locking element)上のラッチ要素の固定機構によって、同時に実現される。
【0011】
原則として、格納スライドが移動可能且つ直接的に、筐体に取り付けられること、あるいは、排出スライドが格納スライドに移動可能に取り付けられることも可能である。しかし、好ましくは、格納スライドが排出スライドに移動可能に取り付けられる。
【0012】
さらに好ましい実施形態では、格納スライドは牽引部材(entrainment member、同伴部材、引き込み部材)を介して、移動可能な家具部品に連結することができる。駆動装置は家具のカーカス(家具外枠)上に配置されてもよく、移動可能な家具部品上に配置された牽引部材を排出又は格納してもよい。しかし、好ましくは、牽引部材は家具のカーカスに対して固定され、駆動装置の残りの部分は移動可能な家具部品と共に移動することが可能である。また、駆動装置の残りの部分は、移動可能な家具部品と共に、牽引部材上に格納又は排出される。
【0013】
固定用要素に対する移動可能な家具部品の位置の正確な検出と伝達とを保証するために、移動可能な、好ましくは旋回可能な連結要素を有する伝達装置が提供されることが好ましく、移動可能な家具部品に接続された検出装置の、閉位置から開放方向への動作において、この伝達装置は、連結要素を用いて検出装置の接続要素に連結されていることが可能である。移動可能な家具部品の開放方向の動作のみが伝達装置に影響するように意図された場合、好ましくは、連結要素は、閉止方向への検出装置の動作において、検出装置の接続要素から移動可能でなければならない。
【0014】
本質的に、ラッチ要素の固定(lock)は、ラッチ要素と固定用要素との間の摩擦による固定動作、及び/又は押し込み式の係合(positive-engagement)による固定動作を用いて効果を発現させることができる。好ましくは旋回可能に排出要素に取り付けられたラッチ要素のカージオイド曲線(cardioid curve)のスライドトラック(slide track、摺動用の軌道)が、少なくとも部分的に筐体に配置されており、この固定用要素は、スライドトラックのラッチの凹部(latch recess)の少なくとも一部を形成する。
【0015】
本発明に準じた駆動装置を有する家具類に関しても、権利保護を請求するものである。
本発明のさらなる詳細と優位な点について、図示された例に基づき、実施形態に関する具体的な記述をもって、以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】駆動装置を含む移動可能な家具部品を様々な位置で概略的に示す図である。
【
図2】駆動装置を含む移動可能な家具部品を様々な位置で概略的に示す図である。
【
図3】駆動装置を含む移動可能な家具部品を様々な位置で概略的に示す図である。
【
図4】駆動装置を含む移動可能な家具部品を様々な位置で概略的に示す図である。
【
図7】駆動装置の様々な立体的視野の切り欠き図(broken−away 3D views)を示す。
【
図8】駆動装置の様々な立体的視野の切り欠き図を示す。
【
図9】駆動装置の様々な立体的視野の切り欠き図を示す。
【
図10】駆動装置の様々な立体的視野の切り欠き図を示す。
【
図11】駆動装置の様々な立体的視野の切り欠き図を示す。
【
図12】駆動装置の様々な立体的視野の切り欠き図を示す。
【
図13】閉鎖、及び、過剰に押し込むことによる固定状態の解除を含む動作を示す図である。
【
図14】閉鎖、及び、過剰に押し込むことによる固定状態の解除を含む動作を示す図である。
【
図15】閉鎖、及び、過剰に押し込むことによる固定状態の解除を含む動作を示す図である。
【
図16】閉鎖、及び、過剰に押し込むことによる固定状態の解除を含む動作を示す図である。
【
図17】閉鎖、及び、過剰に押し込むことによる固定状態の解除を含む動作を示す図である。
【
図18】閉鎖、及び、過剰に押し込むことによる固定状態の解除を含む動作を示す図である。
【
図19】閉鎖、及び、過剰に押し込むことによる固定状態の解除を含む動作を示す図である。
【
図20】引張ることで固定解除することを含む動作を示す図である。
【
図21】引張ることで固定解除することを含む動作を示す図である。
【
図22】引張ることで固定解除することを含む動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、正面にフロントパネル21が付けられた、家具のカーカス17と移動可能な家具部品2を含む家具類16を概略的に示している。移動可能な家具部品2は、引出しレール22を介して、及び、任意で中央レール(図示されず)もまた介して、移動可能にカーカスレール23に取り付けられている。この概略的な図面において、カーカスレール23は同時に駆動装置1の筐体4を形成する。
図1では、駆動装置1全体が家具のカーカス17と結合されており(associate with)、牽引部材9だけが移動可能な家具部品2と共に移動する。原則として、牽引部材9が家具のカーカスに対して固定して配置される場合には、駆動装置1は移動可能な家具部品2と結合される、といったように、正確に反転した配置でもよい。移動可能な家具部品2、より具体的には牽引部材9の位置は、検出装置7によって検出され、この例では円で示される伝達スライド14によって固定用要素5へと渡される(pass to、移動させられる)。伝達スライド14と検出装置7は、使用可能な他の構成要素と共に、固定用要素5に対する移動可能な家具部品2の、検出装置7によって検出された位置を伝達するための伝達装置8を形成する。排出要素3(排出スライド3とも呼ばれる)は、筐体4に移動可能に取り付けられ、また、開放方向ORの方に、排出力蓄積手段18によって起動される。開放方向ORへの排出要素3の動きは、固定用要素5によって阻止されるため、移動可能な家具部品2は開放方向ORへ排出されることが不可能で、それにより移動可能な家具部品2は閉位置SSに配置される。
【0018】
図2に示されるように、閉止方向SRに、移動可能な家具部品2に対して圧力がかけられ、固定用要素5は伝達装置8によって移動され、排出要素3のための排出経路が空けられる。閉止方向SRに過剰に押し込まれる(over−pressing)場合、
図1から
図4、及び
図23から
図29に示されるように、固定用要素5は必ずしも移動されなければいけないわけではない。むしろ、
図5から
図22に示されるように、移動可能な家具部品2の位置は、検出装置7によって、排出要素3上に配置された排出要素6に直接通過され、そうすることによって、移動可能な家具部品2の位置は、カージオイド曲線のスライドトラック12のラッチ凹部13外のスライドトラック12の開部分45(opening portion)へと移動される。過剰に押し込まれた位置USは、過剰に押し込む動作によって到達される。
【0019】
対照的に、
図3は、開放方向ORの方に移動可能な家具部品2を引張ることによって固定解除される駆動装置1を示している。この開放動作は、検出装置7によっても検出され、それにより、固定用要素5は、ラッチ要素6から分離した伝達装置8によって筐体4に対して相対的に移動され、排出要素3の排出経路が空けられる。よって、閉位置SSの正面に(in front of)位置する引張り位置ZSに直接到達する。
【0020】
図4において、排出要素3は、押圧(
図2)又は引張り(
図3)によって固定解除された後、排出力蓄積手段18の圧力(stress、応力)が解放されることにより、開放方向ORに、移動可能な家具部品2を排出し、それにより開位置OSに到達する。排出の際、牽引部材9は検出装置7の係合から外れる。これは、旋回する検出装置7のキャッチレバー37(catch lever、捕捉レバー)によってもたらされる。
【0021】
駆動装置1を用いた特定の実施形態の例示による分解図が、
図5と
図6で示されている。この場合、筐体底板24、筐体中央板、及び筐体カバー25が共に筐体1を形成し、好ましくは、筐体4は筐体底板24を介して引出しレール22に取り付けられる。家具のカーカス17に対して、閉位置SSにある移動可能な家具部品2の位置の変更を実現するために、筐体中央板26は家具部品、筐体底板24、及び筐体カバー25に対して固定された構成要素に対して、変位して配置されてもよい。この場合、調整手段28及び筐体中央板26上の調整スタッド(stud、鋲)を用いることにより、正確な取り付けが可能である。移動可能な家具部品2の格納動作を減衰するための減衰手段27も、筐体中央板26に接続されている。この減衰手段27の個々の構成要素は、より詳細には特定されない。
【0022】
筐体中央板26と、ひいては筐体4内に提供されるものは、ラッチ要素6が移動するスライドトラック12である。ラッチ要素は排出要素3の取り付け位置42の一方の端部で、旋回可能に保持されている。排出要素3は、筐体中央板26に対する接合部(abutment)間で移動可能である。この排出要素3に、排出力蓄積手段18のばね基部33(tension spring、引張ばね)が提供される。排出力蓄積手段18のも他方の端部は、ばね基部32によって保持される。このばね基部32は、筐体底板24に固定して接続された、ばね加圧要素(spring stressing element)30に配置される。ばねの加圧する力(spring stressing force)は、筐体底板24へのばね加圧要素30の固定位置に依存して調整されることができる。筐体底板24に取り付けられた、ばね加圧要素30は、調整要素31を用いて、筐体底板24に対して移動することができるため、排出力蓄積手段18のばねの加圧する力が設定可能である。
【0023】
排出要素3にさらに配置されているのは、他方で格納スライド15に提供されているばねの基部34に固定される格納力蓄積手段19(引張ばね)のためのばね基部35である。この格納スライド15(格納装置15とも呼ばれる)は、接合部によって、移動可能かつ限定的(limitedly)に、排出スライド3に取り付けられる。格納スライド15の一方の端部には、キャッチレバー37のための回転軸38が配置される。牽引部材9は、検出装置7の一部であるキャッチレバー37を介して保持される。牽引部材9は、カーカスレール23に取り付けられた取り付け板36に固定されて接続されている(図示されず)。さらに、減衰接合部40が格納スライド15の端部に提供され、それにより、格納スライド15と牽引部材9との間で起こる接触時に大きな騒音を立てず、構成要素は丁寧に取り扱われる。
【0024】
引張り力が加えられるとき、筐体中央板26に移動可能に取り付けられた伝達スライド14が、排出スライド3の移動制御の起動(travel−controlled triggering)又は固定動作の移動制御の解放(travel−controlled release)のために提供される。一方の端部では、スライド14は、スライドトラック12のラッチ凹部13の一部分をも形成する、固定用要素5を有する。この伝達スライド14には、過剰に押し込む動作のためのスライドトラック12も形成する、傾斜偏手段(inclined deflection means)43が備えられる。伝達スライド14の前方端部には、格納スライド15に提供された接続要素(connecting element)11に対応する弾性連結要素10が保持されている。また、偏向要素20が、排出動作が完了されていない場合にラッチ要素6が閉位置に戻されることが可能な手段によって、伝達スライド14に配置されている。筐体中央板26に弾性的に取り付けられたスライダー39は、特に引出しが小さ過ぎるエネルギーで押して閉じられ、固定される前に再度排出される場合に、ラッチ要素6がスライドトラック12の望まない箇所に移行しないために役立つ。このような動作では、スライダー39は閉止されたままの状態である。
【0025】
図7は、筐体カバー25が外された、組み立てられた状態の駆動装置1を示している。減衰手段27は筐体中央板26に把持されていることが示されている。また、図は、一方が筐体底板24もしくはばね加圧要素30に固定されており、他方が排出スライド3に固定されている排出力蓄積手段18を示している。さらに、格納スライド15と、そこに固定されたキャッチレバー37が部分的に見える。伝達スライド14の大部分も筐体中央板26を通して見ることができる。
【0026】
図7と比較して、
図8では筐体中央板26が取り除かれており、それによって、排出スライド3と格納スライド15のより良い表示が保証されている。ラッチ要素6は、格納スライド15の端部を支えており(bear against)、この格納スライド15は、ラッチ要素接合部41によって形成されていることが分かる。ラッチ要素6は、スライドトラック12に案内(guide)されているため、この位置から外れることはできない。
【0027】
このスライドトラック12は、
図9では大部分が見ることのできる状態となっており、駆動装置1のうち、筐体底板24だけが欠けている(missing)。引張ばねの形態の格納力蓄積方法19は、この場合、ばね基部34とばね35の間で保持されている。排出力蓄積手段18は、ばね基部32とばね基部33で保持されている。キャッチレバー37は開位置で示されており、ここでは牽引部材9はすでに、格納スライド15の接合部40を支えている。
【0028】
ラッチ要素6に関して、より分かりやすく表示するために、
図9とは対照的に、
図10では排出スライド3の一部が取り除かれている。結果として、ラッチ要素6は、スライドトラック12とラッチ要素接合部41を支えている状態が見える。このラッチ要素の第1連結位置K1において、格納スライド15は格納スライド15として排出スライド3と連結し、ラッチ要素6を支えるラッチ要素接合部41のおかげで、格納スライド15は排出スライド3に対して左方向に向かってさらに移動することはできない。結果として、格納力蓄積手段19は圧力から解放されない。
【0029】
対照的に、
図11で格納力蓄積手段19は、ラッチ要素6が、排出スライド3に対する格納スライド15のための経路が空けられた第2連結位置K2に到達するので、緩和される(relax、除荷される)。
【0030】
上記に準拠して、
図12では、格納スライド15が部分的に取り除かれ、ラッチ凹部13内部、又はラッチ凹部13上で保持されるラッチ要素6が明確に示されている。
【0031】
図13では、駆動装置1とそれにより移動可能な家具部品2とが、開位置OSに配置されている。
図10と同様に、ラッチ要素6は、格納スライド15のラッチ要素接合部41を支えており、筐体中央板26に提供されているスライドトラック12内で案内されている。排出スライド3全体が第1移動部分B1に配置され、ラッチ要素6は第1連結位置K1に配置されている。キャッチレバー37による牽引部材9への接続が、格納スライド15の他端部に見られる。筐体中央板26によって部分的に隠れた伝達スライド14が、筐体中央板26に対して移動可能に取り付けられている。この伝達スライド14はまた、スライドトラック12の部品を形成している。したがって、例えば、伝達スライドは、固定用要素5と、ラッチ要素6のための傾斜偏向手段43と、接続要素11のための傾斜ガイド手段47を有している。これに加えて、接続要素11に対応している連結要素10は、伝達スライド14に旋回可能に取り付けられている。
【0032】
図13において、移動可能な家具部品2が閉止方向SRに向かってさらに移動されると、ラッチ要素11は、第1連結位置K1に維持されながら、偏向要素20によって一部が形成されるスライドトラック12に沿って移動する。
図14では、スライドトラック12の直線状の閉部分の終端、つまり、第1移動部分B1の終端に到達する。
【0033】
移動可能な家具部品2が、
図14の位置から
図15の位置にさらに移動するとすぐに、ラッチ要素6は、格納スライド15のラッチ要素接合部41によって、スライドトラック12のラッチ凹部13へと押し込まれる。その結果、格納スライド15は、排出スライド3から分離され、同時に格納スライド15は筐体4に固定(rock)され、第2連結位置K2に到達する。このように、2つの連結動作が、ラッチ要素6の上記1つの動作によって実行される。
【0034】
移動可能な家具部品2は、格納力蓄積手段19の応力除去(stress relief)によって、
図15の開位置OSから、
図16の閉位置SSへと移動又は格納される。この格納動作の終了直前に、接続要素11が伝達スライド14の連結要素10を支えるとすぐに、伝達スライド14全体が、まず左方向へと移動され、筐体中央板26との接合状態となる(to the condition of abutment)。その後、接続要素11は、閉位置SRの接合要素10を通過する。この伝達スライド14の左方向の動作と共に、その固定用要素5も左方向に移動し、(より具体的には、筐体中央板26に含まれる)筐体4に提供されたスライドトラック12の一部と共に、筐体4に含まれるラッチ要素6のための、実際のラッチ凹部13を形成する。よって、たとえ
図15に関しては、わずかにずれていたとしても、ラッチ要素は第2連結位置K2にとどまる。
図16からは、スライドトラック12はカージオイド曲線を含むことが明確に見ることができる。
【0035】
この閉位置SSで、閉止方向SRに移動可能な家具部品2に対して圧力がかけられると、格納スライド15もさらに閉止方向SRに移動される(
図17参照)。この閉位置SSで、この格納スライド15が、排出スライド3で終端接合部に到達すると、排出スライド3も旋回可能に取り付けられたラッチ要素6と共に、閉止方向SRへと移動される。その結果、ラッチ要素6は、
図17に示されるように、ラッチ要素6が傾斜偏向手段43を支えるまで、ラッチ凹部13の外に移動する。それにより、過剰に押し込まれた位置USに到達する。同時に、接続要素11も傾斜ガイド手段47によって偏向される(deflect、逸らされる、ずらされる)。
【0036】
傾斜偏向手段43での偏向により(
図18参照)、ラッチ要素6は、くぼみスライド14に提供されており且つスライドトラック12の一部を形成しているくぼみ44を、スライドトラック12の開口部45の方向にさらに通過する。
【0037】
この開口部45に到達するとすぐに、排出要素3は固定解除され、排出力蓄積手段18は圧力から解放され、移動可能な家具部品2は開放方向ORに向かって排出され、開位置OSへと移行する(
図19を参照)。この排出動作において、伝達スライド14は、連結要素10を介して、開放方向ORへ離れた接合部の状態に到達するまで(reaching a condition of abutment a distance)、接続要素11によって再度移動され、そうすることにより、伝達スライド14の初期の位置が回復される。開放動作が、開始直後にすでに中断されている場合、再度閉止する時には、ラッチ要素6は偏向経路(deflection passage、ずらすための経路)48を通して移動でき、ラッチ要素6は、フラップ構造の偏向要素20が押し込まれることにより(being urged away)、再度スライドトラック12の閉位置へと通過する。
【0038】
図20は、再びラッチ要素6が第2の連結位置K2にある、閉止位置SSを示している。この
図20は、
図16の表示に対応している。
【0039】
ここで、閉位置SSから移動可能な家具部品2に対して圧力がかけられるのではなく、移動可能な家具部品2に引張り力がかけられる場合、この動作はキャッチレバー37と格納スライド15で形成される検出装置7によって検出される。結果として、格納スライド15と、それに伴って接続要素11は、格納スライド15が連結要素10を支え、この連結要素10を引き込むまで、右方向に移動される。
図21に示されるように、このように引き込まれた連結要素によって、伝達スライド14全体も移動され、もはや固定用要素5はラッチ凹部13の一部を形成しない。このように、ラッチ要素6の経路は、もはや固定用要素5によって塞がれないので、スライドトラック12の開口部45への経路が開けられる。従って、引張り動作の伝達は、ラッチ要素6に対して直接引き起こされることはないが、いわゆるラッチ接合部(=固定用要素5)がこのラッチ要素6から引き離され、固定位置又は第2連結位置K2は無効となる。
【0040】
図22に示されるように、さらなる結果として、排出力蓄積手段18は、再度、圧力の解放が可能となり、そこに保持された排出スライド3と格納スライド15によって、移動可能な家具部品2を開放方向ORへと移動する。排出力蓄積手段18が完全に除荷(relax、緩和)されると、格納力蓄積手段19は、格納スライド15と排出スライド3との間の第1連結位置K1が回復されるまで、移動可能な家具部品2の更なる運動量を用いて、あるいは、開放位置ORで移動可能な家具部品2を能動的に(actively)引き寄せることによって、荷重(load)がかけられる。移動可能な家具部品2の閉止時、さらなる結果として、排出力蓄積手段18は、固定位置又は第2連結位置K2に到達する前に除荷される。これは、実質的に、
図13と
図14に示される位置の間である、第1移動部分B1に対応する。
【0041】
格納スライド15は、ラッチ要素6を用いて排出スライド3に連結されることが可能なため、従来技術よりも静かな、移動可能な家具部品2のための簡素化された駆動装置1を実現する。