(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)常温で固体である固体エポキシ樹脂5〜30質量部と常温で液体である液体エポキシ樹脂20〜90質量部とを合計量100質量部を超えない範囲で含むバインダー成分100質量部、
(B)金属粒子200〜1800質量部、及び
(C)硬化剤0.3〜40質量部
を少なくとも有し、
粘度が3〜30dPa・sである、電子部品のパッケージのシールド用導電性塗料。
前記液体エポキシ樹脂が、液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂5〜35質量部と、液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂20〜55質量部とからなる、請求項1に記載の導電性塗料。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る導電性塗料は、上記の通り、(A)常温で固体のエポキシ樹脂(以下、「固体エポキシ樹脂」という場合がある)と常温で液体のエポキシ樹脂(以下、「液体エポキシ樹脂」という場合がある)とを含むバインダー成分100質量部に対して、(B)金属粒子200〜1800質量部と、(C)硬化剤0.3〜40質量部とを少なくとも含有する。この導電性塗料の用途は特に限定されるわけではないが、個片化される前のパッケージ又は個片化されたパッケージの表面に、スプレー等で霧状に噴射してシールド層を形成させてシールドパッケージを得るために好適に使用される。
【0019】
本発明の導電性塗料におけるバインダー成分は、エポキシ樹脂を必須の成分とするものであり、必要に応じて(メタ)アクリレート化合物をさらに含むこともできる。
【0020】
ここでエポキシ樹脂について「常温で固体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を有さない状態であることを意味するものとし、「常温で液体」とは同条件において流動性を有する状態であることを意味するものとする。固体エポキシ樹脂は、バインダー成分100質量部中、5〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましい。また液体エポキシ樹脂は、バインダー成分100質量部中、20〜90質量部であることが好ましく、25〜80質量部であることがより好ましい。
【0021】
常温で固体のエポキシ樹脂を使用することにより、均一にパッケージ表面に塗布され、ムラの無いシールド層を形成することができる導電性塗料が得られる。固体エポキシ樹脂は、分子内に2以上のグリシジル基を有し、かつ、エポキシ当量が150〜280g/eqを有するものが好ましい。エポキシ当量が150g/eq以上であるとクラックや反り等の不具合が起こりにくく、280g/eq以下であると耐熱性がより優れた塗膜が得られ易い。
【0022】
固体エポキシ樹脂は、溶剤に溶解して使用することができる。使用する溶剤は特に限定されず、後述するものの中から適宜選択することができる。
【0023】
固体エポキシ樹脂の具体例としては、特にこれらに限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
【0024】
常温で液体のエポキシ樹脂は、上記の通りバインダー成分100質量部中20〜90質量部使用するが、そのうち5〜35質量部が液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂であることが好ましく、20〜55質量部が液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂であることが好ましい。液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂と液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂をこの配合量の範囲内で組み合わせて使用した場合、導電性塗料の導電性と密着性がバランスよく優れたものとなり、さらに硬化後の塗膜の反りがより少なくなり、耐熱性がより優れたシールドパッケージが得られる。
【0025】
上記液体グリシジルアミン系液体エポキシ樹脂は、エポキシ当量80〜120g/eq、粘度1.5Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5Pa・sであり、液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂は、エポキシ当量180〜220g/eq、粘度6Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1〜6Pa・sである。エポキシ当量と粘度が上記好ましい範囲内である液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂と液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂を使用した場合、硬化後の塗膜の反りがより少なくなり、耐熱性がより優れ塗膜厚みがより均一なシールドパッケージが得られる。
【0026】
本発明で使用することができる(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されない。(メタ)アクリレート化合物の例としては、イソアミルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
【0027】
上記のように(メタ)アクリレート化合物を使用する場合のエポキシ樹脂と(メタ)アクリレート化合物との配合比率(両者の合計量を100%とした場合の質量%)は、5:95〜95:5であることが好ましく、より好ましくは20:80〜80:20である。(メタ)アクリレート化合物が5質量%以上であることにより導電性塗料の保存安定性が優れ、導電性塗料を速やかに硬化させることができ、さらに硬化時の塗料ダレを防止することができる。また、(メタ)アクリレート化合物が95質量%以下である場合、パッケージとシールド層との密着性が良好となり易い。
【0028】
バインダー成分には、上記エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート化合物以外に、導電性塗料の物性を向上させることを目的として、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂等を改質剤として添加することができる。
【0029】
上記バインダー成分に改質剤をブレンドする場合の配合比は、シールド層とパッケージとの密着性の観点から、バインダー成分に対して40質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下とする。
【0030】
本発明においては、上記バインダー成分を硬化させるための硬化剤を使用する。硬化剤は特に限定されないが、例えばフェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤等が挙げられる。これらは単独で使用することもでき、2種以上を併用してもよい。
【0031】
フェノール系硬化剤としては、例えばノボラックフェノール、ナフトール系化合物等が挙げられる。
【0032】
イミダゾール系硬化剤としては、例えばイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−イミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールが挙げられる。
【0033】
カチオン系硬化剤の例としては、三フッ化ホウ素のアミン塩、P−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等に代表されるオニウム系化合物が挙げられる。
【0034】
ラジカル系硬化剤(重合開始剤)の例としては、ジ−クミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0035】
硬化剤の配合量は、硬化剤の種類によっても異なるが、通常は、バインダー成分の合計量100質量部に対して0.3〜40質量部であることが好ましく、0.5〜35質量部であることがより好ましい。硬化剤の配合量が0.3質量部以上であるとシールド層とパッケージ表面との密着性とシールド層の導電性が良好となって、シールド効果に優れたシールド層が得られ易く、35質量部以下であると導電性塗料の保存安定性を良好に保ち易い。
【0036】
また、本発明の塗料には、発明の目的を損なわない範囲内において、消泡剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤等、公知の添加剤を加えることができる。
【0037】
本発明で使用することができる金属粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されないが、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀コ−ト銅粒子、金コート銅粒子、銀コートニッケル粒子、金コートニッケル粒子等が挙げられる。金属粒子の形状としては、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、球状、繊維状などが挙げられるが、抵抗値がより低く、シールド性がより向上したシールド層が得られる点からは、フレーク状、樹枝状、球状のいずれかであることが好ましく、フレーク状であることがより好ましい。
【0038】
金属粒子の配合量は、バインダー成分100質量部に対して200〜1800質量部であることが好ましい。金属粒子の配合量が200質量部以上であるとシールド層の導電性が良好となり、1800質量部以下であると、シールド層とパッケージとの密着性、及び硬化後の導電性塗料の物性が良好となり、後述するダイシングソーで切断した時にシールド層のカケが生じにくくなる。
【0039】
また、金属粒子の平均粒径は、1〜30μmであることが好ましい。金属粒子の平均粒径が1μm以上であると、金属粒子の分散性が良好で凝集が防止でき、また酸化されにくく、30μm以下であるとパッケージのグランド回路との接続性が良好である。
【0040】
また、金属粒子がフレーク状である場合は、金属粒子のタップ密度は4.0〜6.0g/cm
3であることが好ましい。タップ密度が上記範囲内であると、シールド層の導電性が良好となる。
【0041】
また、金属粒子がフレーク状である場合には、金属粒子のアスペクト比は5〜10であることが好ましい。アスペクト比が上記範囲内であると、シールド層の導電性がより良好となる。
【0042】
本発明の導電性塗料は、導電性塗料をスプレー噴霧によりパッケージ表面に均一に塗布するため、いわゆる導電性ペーストよりも低粘度であることが好ましい。
【0043】
すなわち、本発明の導電性塗料の粘度は3〜30dPa・sであることが好ましく、5〜20dPa・sであることがより好ましい。粘度が3dPa・s以上であるとパッケージの壁面における液ダレを防止してシールド層をムラなく形成させることができるとともに金属粒子の沈降を防止することができ、30dPa・s以下であるとスプレーノズルの目詰まりを防ぎ、パッケージ表面及び側壁面にムラなくシールド層を形成し易い。
【0044】
導電性塗料の粘度はバインダー成分の粘度や金属粒子の配合量等により異なるので、上記範囲内にするために、溶剤を使用することができる。本発明において使用可能な溶剤は、特に限定されないが、例えばメチルエチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用してもよい。
【0045】
溶剤の配合量は、導電性塗料の粘度が上記範囲内にするように適宜調整する。従って、バインダー成分の粘度や金属粒子の配合量等により異なるが、目安としてはバインダー成分100質量部に対して20〜300質量部程度である。
【0046】
本発明の導電性塗料によって得られるシールド層は、銅箔等で形成されたグランド回路との密着性に優れる。具体的には、シールドパッケージの一部から露出したグランド回路の銅箔とシールド層との密着性が良好であるため、シールドパッケージ表面に導電性塗料を塗布してシールド層を形成した後にパッケージを切断して個片化する際、切断時の衝撃によりシールド層がグランド回路から剥離することを防ぐことができる。
【0047】
導電性塗料と銅箔との密着性としては、JIS K 6850:1999に基づいて測定したせん断強度が3.0MPa以上であることが好ましい。せん断強度が3.0MPa以上であると、個片化前のパッケージを切断する時の衝撃によりシールド層がグランド回路から剥離することを防ぐことができる。
【0048】
本発明の導電性塗料により形成されるシールド層の比抵抗は、優れたシールド特性が得られる点から2×10
-4Ω・cm以下であることが好ましい。
【0049】
次に、本発明の導電性塗料を用いてシールドパッケージを得るための方法の一実施形態について図を用いて説明する。
【0050】
まず、
図1(a)に示すように、基板1に複数の電子部品(IC等)2を搭載し、これら複数の電子部品2間にグランド回路パターン(銅箔)3が設けられたものを用意する。
【0051】
次に、同図(b)に示すように、これら電子部品2及びグランド回路パターン3上に封止材4を充填して硬化させ、電子部品2を封止する。
【0052】
次に、同図(c)において矢印で示すように、複数の電子部品2間で封止材4を切削して溝部を形成し、これらの溝部によって基板1の各電子部品のパッケージを個別化させる。符号Aは、それぞれ個別化したパッケージを示す。溝を構成する壁面からはグランド回路の少なくとも一部が露出しており、溝の底部は基板を完全には貫通していない。
【0053】
一方で、上述したバインダー成分、金属粒子及び硬化剤の所定量と、必要に応じて使用される溶剤及び改質剤を混合し、導電性塗料を用意する。
【0054】
次いで、導電性塗料を公知のスプレーガン等によって霧状に噴射し、パッケージ表面にまんべんなく塗布する。このときの噴射圧力や噴射流量、スプレーガンの噴射口とパッケージ表面との距離は、必要に応じて適宜設定される。
【0055】
次に、導電性塗料が塗布されたパッケージを加熱して溶剤を十分に乾燥させた後、さらに加熱して導電性塗料中の(メタ)アクリレート化合物とエポキシ樹脂を十分に硬化させ、同図(d)に示すように、パッケージ表面にシールド層(導電性塗膜)5を形成させる。このときの加熱条件は適宜設定することができる。
図2はこの状態における基板を示す平面図である。符号B
1,B
2,…B
9は、個片化される前のシールドパッケージをそれぞれ示し、符号11〜19はこれらシールドパッケージ間の溝をそれぞれ表す。
【0056】
次に、
図1(e)において矢印で示すように、個片化前のパッケージの溝の底部に沿って基板をダイシングソー等により切断することにより個片化されたパッケージBが得られる。
【0057】
このようにして得られる個片化されたパッケージBは、パッケージ表面(上面部、側面面部及び上面部と側面部との境界の角部のいずれも)に均一なシールド層が形成されているため、良好なシールド特性が得られる。またシールド層とパッケージ表面及びグランド回路との密着性に優れているため、ダイシングソー等によってパッケージを個片化する際の衝撃によりパッケージ表面やグランド回路からシールド層が剥離することを防ぐことができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の内容を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。また、以下において「部」又は「%」とあるのは、特にことわらない限り質量基準とする。
【0059】
[実施例1]
バインダー成分として、固体エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名JER157S70)15質量部、液体エポキシ樹脂35質量部(内訳は、グリシジルアミン系エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名EP−3905S)10質量部、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂((株)ADEKA製、EP−4400)25質量部)、及び2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学(株)製、商品名ライトエステルG−201P)50質量部からなる計100質量部を使用した。また、硬化剤として2−
メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名2MZ−H)5質量部およびフェノールノボラック(荒川化学工業(株)製、商品名タマノル758)15質量部を、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を、金属粒子として平均粒径5μmのフレーク状銀コート銅粉を使用した。これらを表1に示す配合量で混合し、導電性塗料を得た。この導電性塗料(液温25℃)の粘度をBH型粘度計(ローターNo.5、回転数10rpm)で測定したところ、11dPa・sであった。
【0060】
[実施例2〜7]、[比較例1〜4]、
バインダー成分、硬化剤、溶剤及び金属粉を表1に記載された通り配合した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を得た。なお、実施例5で使用した球状金属粉は平均粒径5μmの銀コート銅粉(銀被覆量10質量%)である。得られた導電性塗料の粘度を実施例1と同様にして測定した。測定された粘度を表1に示す。
【0061】
上記実施例及び比較例の導電性塗料の評価を以下の通り行った。結果を表1に示す。
【0062】
(1)導電性塗膜の導電性
実施例1の導電性塗料で得られた導電性塗膜の導電性を、比抵抗で評価した。比抵抗の測定は、ガラスエポキシ基板上に幅5mmのスリットを設けた厚さ55μmのポリイミドフィルムを貼り付けて印刷版とし、実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた導電性塗料をライン印刷(長さ60mm、幅5mm、厚さ約100μm)し、80℃で60分間予備加熱した後、160℃で60分間加熱することにより本硬化させ、ポリイミドフィルムを剥離した。この硬化物サンプルにつき、テスターを用いて両端の抵抗(R、Ω)を測定し、断面積(S、cm
2)と長さ(L、cm)から次式(1)により比抵抗(Ω・cm)を計算した。
【0063】
【数1】
【0064】
サンプルの断面積、長さ及び抵抗は、ガラスエポキシ基板3枚に各5本のライン印刷を施して合計15本形成し、その平均値を求めた。なお、比抵抗は2×10
-4Ω・cm以下であれば、シールド層に用いる導電性塗料として好適に使用できる。実施例1の比抵抗は9×10
-5Ω・cmであり、シールド層に用いる導電性塗料として好適な比抵抗を示した。
【0065】
また、実施例2〜7、比較例1〜4についても同様に比抵抗を測定した。その結果、実施例2〜7についてはいずれも比抵抗が2×10
-4Ω・cm以下であり、シールド層に用いる導電性塗料として好適に使用できることが確認された。一方で、比較例2については、比抵抗が2×10
-4Ω・cmを大きく上回り、シールド層に用いる導電性塗料として不適格であることが確認された。
【0066】
(2)導電性塗料の密着性(ハンダディップ前後のせん断強度の測定)
シールド層とパッケージ表面又はグランド回路との密着性の評価として、JIS K 6850:1999に基づくせん断強度を測定した。具体的には、幅25mm×長さ100mm×厚さ1.6mmの銅板に導電性塗料を長さ12.5mmの領域に塗布し、その上に幅25mm×長さ100mm×厚さ1.6mmの銅板を貼りあわせた。次いで、80℃で60分間加熱し、さらに160℃で60分間加熱して銅板同士を接着させた。次いで、引張り強度試験機((株)島津製作所社製、商品名オートグラフAGS−X)を用いて接着面を平行に引張り、破断した時の最大荷重を接着面積で除してせん断強度を計算した。せん断強度が3.0MPa以上であれば問題なく使用できる。
【0067】
実施例1〜7のせん断強度はいずれも3.0MPa以上であり、シールド層として好適に使用できることが確認された。一方で比較例3においてはせん断強度が3.0MPa未満であり、シールド層の密着性が十分でないことが分かった。
【0068】
上記に加えて、ハンダディップ後の密着性を評価した。パッケージはハンダディップ工程において高温に曝される。そのため、高温に曝された後のシールド層とパッケージの表面及びグランド回路との密着性も重要となる。そこで、ハンダディップ後の密着性を測定するため、上記と同様にして導電性塗料を銅板に塗布し貼りあわせて80℃で60分加熱した後、160℃で60分間加熱して導電性塗料を硬化させた。次いで、260℃のハンダに30秒間フロートした後のせん断強度を測定した。せん断強度の測定方法は上記と同じである。
【0069】
ハンダディップ後のせん断強度が3.0MPa以上であればシールド層として問題なく使用できる。実施例1〜7の導電性塗料のハンダディップ後せん断強度はいずれも3.0MPa以上であり、シールド層として好適に使用できることが確認された。一方で比較例3のものはハンダディップ後のせん断強度が3.0MPa未満であり、密着性が十分でないことが分かった。
【0070】
2.パッケージ表面におけるシールド層の評価
個片化前のパッケージのモデルとして、溝幅1mm、深さ2mmのザグリ加工を縦横それぞれ10列ずつ施し、1cm角のパッケージに見立てた島部が縦横9列形成されたガラスエポキシ基板を使用した。上記実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた導電性塗料を、市販のスプレーガン(アネスト岩田(株)製、LPH−101A−144LVG)を用いて、下記に示す条件でパッケージの表面に噴霧し、25℃で30分間静置して溶剤を蒸発させた。次いで、80℃で60分間加熱し、更に160℃で60分間加熱して導電性塗料を硬化させた。
【0071】
<スプレー条件>
エアー量:200L/分、塗布時間:9秒
供給圧力:0.5MPa
パッケージ表面の温度:25℃
パッケージ表面からノズルまでの距離:約20cm
【0072】
(1)シールド層の厚みの均一性
シールド層の厚みを、シールド層を形成したパッケージの断面における角部及び壁面部におけるシールド層の厚みの差により算出した。具体的には、
図3に示すように、パッケージ側面に形成されたシールド層の厚みをd
1(但し、d
1は側面の高さ方向中央部で測定し、上面から測定位置までの距離l
1と底面から測定位置までの距離l
2とが等しいものとする)とし、パッケージ角部に形成されたシールド層の厚み(水平面から上方に45°の角度で測定)をd
2として、((d
1−d
2)/d
1)により算出される値を均一性の指標とした。この数値が60%以下であれば○とし、シールド層として好適に使用できることを表す。
【0073】
シールド層の厚みの差がゼロに近いほどシールド層の厚みが均一となるが、従来の導電性塗料では角部にシールド層を形成させようとすると壁面部の厚みが増してしまい、シールド層の抵抗値にムラが生じてしまう。一方で壁面部の厚みを薄くしようとすると角部にシールド層が形成されず、シールド効果が得られなくなってしまう。実施例1〜7では、角部と壁面部とでシールド層の厚みの差がいずれも60%以下であり、シールド層として好適に使用できることが確認できた。一方で比較例1、2及び4では、角部と壁面部におけるシールド層の厚みの差が60%を超えていた。
【0074】
(2)シールド層の導電性
シールド層の導電性を、抵抗値で測定した。具体的には、上記ザグリ加工して形成した立方体状の島部によって構成される列の中から任意の1列を選択し、その列の両端部の島部間(
図2におけるB
1及びB
9間)の抵抗値を測定した。抵抗値が100mΩ以下であれば○とし、シールド層として好適に使用できることを示す。
【0075】
表1に示すように、実施例1〜7の抵抗値はいずれも100mΩ以下であり、シールド層として好適に使用できることが確認された。一方で比較例1、2及び4のものは、抵抗値が∞Ω(測定限界以上)であり、シールド層として不適であることが確認された。
【0076】
(3)シールド層の長期信頼性
シールド層の長期信頼性を、ヒートサイクル試験後の抵抗値変化率により評価した。具体的には、
図4に示すように、ガラスエポキシ製基材(FR−5)で形成され、厚さ35μmの銅箔とスルーホールメッキにより形成された回路21〜26を内層に有するチップサンプルC(1.0cm×1.0cm、厚さ1.3mm)を用いた。回路21,22,23は連続した一回路の一部であり、回路24,25,26は別の連続した一の回路の一部であるが、回路21〜23と回路24〜26とは接続されていない。回路22,25は、チップサンプルの下部から銅箔が部分的に露出したパッド部分を矢印の箇所にそれぞれ有し、回路21,26はチップサンプルの両端面から露出した端部27,28をそれぞれ有する。
【0077】
上記チップサンプルCの表面に導電性塗料を上記スプレー条件でスプレーにより塗布し、硬化させて、膜厚約30μmのシールド層(導電性塗膜)29を形成させた。これにより、上記2つのパッド部分を、端部27,28と接触する導電性塗膜29を介して電気的に接続させて、パッド間の抵抗値を測定し、信頼性試験前の抵抗値を得た。次いで、JEDEC LEVEL3(室温30℃、相対湿度60%RHの環境下に192時間)の環境下にチップサンプルCを放置し、次いで260℃に10秒間曝してリフロー試験を行った後に、ヒートサイクル試験(−65℃に30分間⇔125℃に30分間)を3000サイクル行い、信頼性試験後の抵抗値を得た。このようにして得られた信頼性試験前後の抵抗値から、抵抗値変化率を下記式により算出した。変化率が50%以下であれば、長期信頼性が良好である。
式:変化率(%)=((B−A)/A)×100
A:信頼性試験前の抵抗値
B:信頼性試験後の抵抗値
【0078】
【表1】
良好なシールド性を有し、パッケージとの密着性も良好なシールド層がスプレー塗布により形成可能な導電性塗料、及びこれを用いたシールドパッケージの製造方法を提供する。
(A)常温で固体である固体エポキシ樹脂5〜30質量部と常温で液体である液体エポキシ樹脂20〜90質量部を含むバインダー成分100質量部、(B)金属粒子200〜1800質量部、及び(C)硬化剤0.3〜40質量部を少なくとも有し、粘度が3〜30dPa・sである導電性塗料を用いる。