(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5985825
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】高電流アモルファス粉末磁心インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20160823BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20160823BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20160823BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F27/24 C
H01F27/24 D
H01F41/02 C
H01F41/02 D
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-531055(P2011-531055)
(86)(22)【出願日】2009年9月18日
(65)【公表番号】特表2012-505545(P2012-505545A)
(43)【公表日】2012年3月1日
(86)【国際出願番号】US2009057471
(87)【国際公開番号】WO2010042308
(87)【国際公開日】20100415
【審査請求日】2012年6月21日
(31)【優先権主張番号】12/247,821
(32)【優先日】2008年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506257537
【氏名又は名称】クーパー テクノロジーズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100110489
【弁理士】
【氏名又は名称】篠崎 正海
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,イーペン
(72)【発明者】
【氏名】ボガート,ロバート ジェイムズ
【審査官】
▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−257124(JP,A)
【文献】
特開2002−057049(JP,A)
【文献】
特開2002−134330(JP,A)
【文献】
特開2005−310866(JP,A)
【文献】
特開2005−310865(JP,A)
【文献】
特開2004−241678(JP,A)
【文献】
特開2006−060061(JP,A)
【文献】
特開2007−049073(JP,A)
【文献】
特開2007−227914(JP,A)
【文献】
特開2007−231415(JP,A)
【文献】
特開2004−197218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/24
H01F 27/255
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性のアモルファス粉末材料から製造された少なくとも1つの成形磁心であって、前記少なくとも1つの成形磁心は第一成形磁心及び第二成形磁心を備え、前記第一成形磁心及び前記第二成形磁心はそれぞれ上面と前記上面の反対にある底面とを有する、成形磁心と、
前記少なくとも1つの成形磁心に結合される、少なくとも1つの予形成された電導性巻線であって、前記少なくとも1つの予形成された電導性巻線は、巻線部と互いに反対にある第一リード及び第二リードとで形成され、前巻線部は、互いに反対にある複数の主面と、前記互いに反対にある複数の主面を相互に連結する複数の側面とを備え、前記少なくとも1つの成形磁心の周りにより前記互いに反対にある第一リード及び第二リードを形作るのではなく、前記巻線部は、前記少なくとも1つの成形磁心の前記第二成形磁心の前記上面と係合し、前記互いに反対にある第一リードと第二リードは、前記少なくとも1つの成形磁心の前記第二成形磁心の前記底面に係合するよう予め形成されている、少なくとも1つの予形成された電導性巻線と、
を備え、
前記軟磁性のアモルファス粉末材料はナノアモルファス粉末材料であり、
前記巻線部は、前記第一成形磁心と前記第二成形磁心との間を延び、前記第一成形磁心及び前記第二成形磁心は互いに接触する面においてプレスされ、
前記第一成形磁心と前記第二成形磁心との間に物理的な間隔が形成されていないことを特徴とする、電磁石要素。
【請求項2】
前記軟磁性のナノアモルファス粉末材料が鉄を主原料とするナノアモルファス粉末材料であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁石要素。
【請求項3】
前記第一成形磁心がU形磁心であり、かつ前記第二成形磁心がI形磁心であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁石要素。
【請求項4】
前記I形磁心が上面と底面を備え、前記底面はさらに第一端部を有し、前記底面は前記第一リード及び第二リードを前記第一端部で受けるよう構成され、前記巻線部を前記上面に渡って横方向に、記第一端部から離れて前記第一リード及び第二リードが前記底面の所定位置に到達するまで、移動可能にし、前記底面は、さらに、前記所定位置を超えて前記第一リード及び第二リードの移動を防ぐよう構成される、ことを特徴とする、請求項3に記載の電磁石要素。
【請求項5】
前記U形磁心が対称形であり、第一脚と、第二脚と、前記第一脚と第二脚との間を延びる溝とを備え、さらに前記巻線部は前記溝に配置され、前記U形磁心は前記巻線部に接触する面においてプレスされ、前記I形磁心の少なくとも一部に接触する面においてプレスされることを特徴とする、請求項3に記載の電磁石要素。
【請求項6】
前記U形磁心が非対称形であり、第一脚と、第二脚と、前記第一脚と第二脚との間を延びる溝とを備え、さらに前記巻線部は前記溝に配置され、前記U形磁心は前記巻線部に接触する面においてプレスされ、前記I形磁心の少なくとも一部に接触する面においてプレスされることを特徴とする、請求項3に記載の電磁石要素。
【請求項7】
前記少なくとも1つの予形成された電導性巻線が1つの予形成された巻線クリップであることを特徴とする、請求項1に記載の電磁石要素。
【請求項8】
前記巻線クリップがC形クリップであることを特徴とする、請求項7に記載の電磁石要素。
【請求項9】
前記少なくとも1つの予形成された電導性巻線が複数の巻線を備えることを特徴とする、請求項7に記載の電磁石要素。
【請求項10】
前記少なくとも1つの予形成された電導性巻線が前記複数の巻線を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電磁石要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的に電子要素及び前記電子要素を製造する方法、特にインダクタ、トランス及びこれらの製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的インダクタは、シールド磁心(コア)とドラム磁心、U形磁心とI形磁心、E形磁心とI形磁心及びその他の対応する形状を含めて環状磁心と成形磁心を含む。このようなインダクタの典型的な磁心材料はフェライトまたは鉄(Fe)、Sendust(Al-Si-Fe)、MPP(Mo-Ni-Fe)およびHighFlux(Ni-Fe)を含む通常の粉末磁心材料である。インダクタは、一般に磁心の周りに巻かれた電導性巻線を有する。電導性巻線は、平らなまたは丸いマグネット線コイル、打ち抜き銅箔またはクリップを含むが、これに限定されない。コイルはドラム磁心またはその他のボビン磁心の上に直接巻かれる。巻線の両端はリードと呼ばれ、インダクタを電気回路に結合するために使用される。巻線は用途の要件に応じて予形成、半予形成または非予形成とすることができる。別個の磁心を接着剤で結合できる。
【0003】
インダクタはより高い電流のものへ向かう傾向があるので、より柔軟な形状因子、より丈夫な構成、より高い出力及びエネルギー密度、より高い効率及びより厳密なインダクタンス及び直流抵抗(DCR)公差を持つインダクタを提供する必要がある。直流-直流コンバータ及び電圧調整モジュール(VRM)には、より厳密なDCR公差を有するインダクタが必要とされることが多い。このようなインダクタは完成品の製造工程の点から現在提供が困難である。典型的なインダクタにおいてより高い飽和電流及びより厳密なDCR公差を与えるための既存の解決法は、非常に困難でコスト高になっており、典型的インダクタでは最良の性能が得られない。したがって、現在のインダクタは改良を必要とする。
【0004】
特定のインダクタ特性を改良するために、最近、磁心材料にアモルファス粉末材料を使用して環状磁心が製造されている。環状磁心は、コイルまたは巻線を磁心に直接巻き付ける必要がある。この巻付け工程において、磁心は簡単に砕ける可能性があるので、製造工程を困難にし、表面実装技術における使用をよりコスト高にする。さらに、環状磁心はコイルの巻付けが不均等であり、コイルの張力が変動するので、DCRがあまり一定ではない。直流-直流コンバータ及びVRMにおいては一般にDCRが一定であることが要求される。プレス工程において加えられる高圧力のために、これまでアモルファス粉末材料を用いて成形磁心を製造することは不可能であった。
【0005】
電子部品実装の進歩によって、微小構造を有するパワーインダクタを製造する傾向になっている。したがって、モデム電子デバイスに収められるように、磁心構造はさらに起伏の小さい輪郭を持たなければならない。モデム電子デバイスの一部は細かったり非常に薄い輪郭を持ったりする場合がある。起伏の小さい輪郭を有するインダクタを製造すると、これまで製造者は多くの困難に遭遇したので、製造工程はコスト高になった。
【0006】
例えば、要素がどんどん小さくなると、要素が手巻きであるという性質ゆえに困難が生じる。このような手巻き要素は製品自体に品質のバラツキをもたらす。別の困難は、成形磁心が非常に脆弱で、製造工程全体において磁心に破砕を生じやすい点である。別の困難は、ドラム磁心とシールド磁心、ER形磁心とI形磁心、及びU形磁心とI形磁心を含めて(これに限定されない)2つの別個の磁心の間の間隙のふれが生じるためにインダクタンスが一定ではないことである。さらなる困難は、巻付け工程における不均等な巻付け及び張力によってDCRが一定でないことである。上記の困難は、微小構造を有するインダクタを製造するとき遭遇する多くの困難の一部の例に過ぎない。
【0007】
他の要素と同様インダクタの製造工程は、競争の激しい電子部品製造業においてコストを削減する方法として精査されてきた。製造される要素が低コストの大量生産要素である場合、製造コストの削減は特に望ましい。大量生産要素においては、製造コストのどのような削減も当然重要である。製造に使用される1つの材料は別の材料より高いコストであるかも知れない。しかし、製造工程における製品の信頼性及び一貫性は、よりコストの低い材料を用いて製造された同じ製品の信頼性及び一貫性より高いので、よりコスト高の材料を使用することによって全体的製造コストは低くなる。このように、実際に製造された製品が廃棄されることなくより多量に販売される可能性がある。さらに、要素の製造に使用される1つの材料が別の材料よりコスト高であるが、労働力の節約が材料コストの増大を相殺して余りある可能性もある。これらの例は製造コストを削減するための多くの方法の一部に過ぎない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に回路基板に使用されるとき、要素のサイズを実質的に増大させることなくまた過度な空間を占めることなく、下記の改良点の1つ以上を可能にできる磁心と巻線の構成を有する磁石要素を提供することが望ましくなっている。すなわち、より柔軟な形状因子、より丈夫な構成、より高い出力及びエネルギー密度、より高い効率、より広い作動周波数範囲、より広い作動温度範囲、より高い飽和磁束密度、より効果的な透磁性、及びより厳密なインダクタンス及びDCR公差である。また、低コストの製造を可能にし、より一定の電気的及び機械的特性を得られる磁心と巻線の構成を有する磁石要素を提供することも望ましくなっている。さらに、大きな生産ロット規模に対してDCRを厳密に管理する磁石要素を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
磁石要素及び磁石要素を製造する方法について説明する。磁石要素はインダクタまたはトランスを含むが、これに限定されない。この方法は、アモルファス粉末材料から製造された少なくとも1つの成形磁心を用意するステップと、少なくとも1つの巻線の少なくとも一部を少なくとも1つの成形磁心に結合するステップと、少なくとも1つの成形磁心を少なくとも1つの巻線の少なくとも一部と一緒にプレスするステップと、を含む。磁石要素は、アモルファス粉末材料から製造された少なくとも1つの成形磁心と、少なくともその一部が少なくとも1つの成形磁心に結合された少なくとも1つの巻線とを含み、前記少なくとも1つの成形磁心は前記少なくとも1つの巻線の少なくとも一部にプレスされる。巻線を予形成、半予形成または非予形成とすることができ、クリップまたはコイルを含むが、これに限定されない。アモルファス粉末材料を、鉄を主原料とするアモルファス粉末材料またはナノアモルファス粉末材料とすることができる。
【0010】
いくつかの形態によれば、2つの成形磁心はその間に配置される巻線によって結合される。この形態においては、成形磁心の一方はプレスされ、巻線はプレスされた成形磁心に結合される。他方の成形磁心は巻線及びプレスされた成形磁心に結合されて、再びプレスされて、磁石要素を形成する。アモルファス粉末材料またはナノアモルファス粉末材料から成形磁心を製造できる。
【0011】
別の典型的形態によれば、アモルファス粉末材料は少なくとも1つの巻線の周りに結合される。この形態においては、アモルファス粉末材料及び少なくとも1つの巻線は一緒にプレスされて磁石要素を形成する。この形態において、磁石要素は成形磁心を有する。この形態によれば、磁石要素は単一の成形磁心及び単一の巻線を持つか、または単一の構造内に複数の成形磁心を備え、成形磁心は各々対応する巻線を有する。または、成形磁心をナノアモルファス粉末材料から製造できる。
【0012】
本発明の以上の及びその他の形態、目的、特徴及び利点は、図面付きの典型的実施形態の以下の詳細な説明を考慮することによって当業者には明らかになるだろう。この実施形態は現在考え得る本発明の最良の実施様式を含む。
【0013】
本発明の以上の及びその他の特徴及び形態は、添付図面に関連して以下の本発明の典型的実施形態の説明を参照することによって理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】典型的な実施形態による、製造工程の複数の段階におけるER−I形磁心を有するパワーインダクタの斜視図を示す。
【
図2】典型的な実施形態による、製造工程の複数の段階におけるU−I形磁心を有するパワーインダクタの斜視図を示す。
【
図3A】典型的な実施形態による対称形U形磁心の斜視図を示す。
【
図3B】典型的な実施形態による非対称形U形磁心の斜視図を示す。
【
図4】典型的な実施形態によるビーズ形磁心を有するパワーインダクタの斜視図を示す。
【
図5】典型的な実施形態による、単一構造として形成された複数のU形磁心を有するパワーインダクタの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜5を参照すると、磁石要素またはデバイスの様々な典型的な実施形態のいくつかの図が示される。典型的な実施形態において、デバイスはインダクタであるが、下記の本発明の利点は他のタイプのデバイスにも利益をもたらすことができる。下記の材料及び技法は、起伏が小さい輪郭のインダクタの製造に特に有益であると考えられるが、インダクタは本発明の利点が認められる電気要素の1つのタイプに過ぎない。したがって、本明細書における説明は単なる例示であり、本発明の利点が、他のサイズ及びタイプのインダクタ、並びにトランスを含めて(これに限定されない)他の電子要素にまで及ぶものと想定する。したがって、本発明の概念の実施は本明細書において記述され図に示される典型的実施形態に限定されない。さらに、図は正確に比例拡大縮小されたものではなく、各種の要素の厚み及びその他のサイズは明確化のために誇張されている。
【0016】
図1は、典型的な実施形態による、製造工程の複数の段階におけるER−I形磁心を有するインダクタの斜視図を示す。この実施形態において、パワーインダクタ100はER形磁心110、予形成されたコイル130及びI形磁心150を備える。
【0017】
ER形磁心110は概略的に正方形または長方形の形状を有し、ベース112、2つの側壁114、115、2つの端壁120、121、レセプタクル124及び中心突起物またはポスト126を有する。2つの側壁114、115はベース112の長手方向の全長に伸び、外面116及び内面117を有し、内面117は中心突起物126に近接する。2つの側壁114、115の外面116はほぼ平面であるのに対して、2つの側壁の内面117は凹面である。2つの端壁120、121は、それぞれ2つの端壁120、121の各々に間隙122、123が形成されるように、ベース112の各側壁の114、115の端部からベース112の幅の一部に伸びる。2つの側壁114、115が相互の鏡像になるように、この間隙122、123を実質的に2つの端壁120、121の各々の中央に形成できる。レセプタクル124は2つの側壁114、115及び2つの端壁120、121によって形成される。中心突起物126をER形磁心110のレセプタクル124の中心に配置し、ER形磁心110のベース112から上向きに伸ばすことができる。中心突起物126は2つの側壁114、115及び2つの端壁120、121の高さとほぼ同じ高さまで伸びるか、またはその高さは2つの側壁114、115及び2つの端壁120、121の高さより小さい。このようにして、中心突起物126は予形成コイル130の内周132の中へ伸びて、予形成コイル130をER形磁心110に対して固定された事前に定められた中心位置に保持する。ER形磁心はこの実施形態においては対称形磁心構造を持つものとして説明されているが、ER形磁心は、典型的な実施形態の範囲及び思想から逸脱することなく、非対称形磁心構造を持つことができる。
【0018】
予形成されたコイル130は、1つまたはそれ以上の巻きを有するコイル及び2つの端子134、136またはリードを有する。端子は相互から180度の角度で予形成コイル130から伸びる。2つの端子134、136は、予形成コイル130から外向きに伸び、その後上向きに伸び、その後予形成コイル130に向かって内向きに戻る。それによって、各々U形を形成する。予形成コイル130は予形成コイル130の内周132を画定する。中心突起物126が予形成コイル130の内周132の中に伸びるように、予形成コイル130の構成は、中心突起物126を介して予形成コイル130をER形磁心110に結合するように設計される。予形成コイル130は銅から製造され、ニッケル及びスズでメッキされる。予形成コイルは銅から作られ、ニッケル及びスズメッキを施されるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、金メッキ及びはんだ付けを含めて(これに限定されない)他の適切な導電性材料を予形成コイル130及び(または)2つの端子134、136の製造に利用できる。さらに、予形成コイル130はこの実施形態において使用できる1つのタイプの巻線として示されているが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、他のタイプの巻線を利用できる。さらに、この実施形態は予形成コイル130を利用するが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、半予形成巻線及び非予形成巻線も使用できる。さらに、端子134、136は特定の構成で記述されているが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、別の構成を端子に使用できる。さらに、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、予形成コイル130の形状を円形、正方形、長方形またはその他の形状にすることができる。予形成コイル130または巻線の形状に合わせて2つの側壁114、115及び2つの端壁120、121の内面を構成できる。コイル130が複数の巻きを持つ場合、巻きの間の絶縁が必要な場合がある。絶縁をコーティングまたは巻きの間に配置できる他のタイプの絶縁材とすることができる。
【0019】
I形磁心150は概略的に正方形または長方形であり、実質的にER形磁心110のフットプリントに一致する。I形磁心150は、2つの対向する端部152、154を有し、各端部152、154はそれぞれ端子134、136の端部を収容する凹部153、155を有する。凹部153、155は、端子134、136の端部の幅と比較してほぼ同じまたは僅かに大きい幅を有する。
【0020】
典型的な実施形態において、ER形磁心110及びI形磁心150は、両方ともアモルファス粉末磁心材料から製造される。いくつかの実施形態によれば、アモルファス粉末磁心材料は、鉄を主原料とするアモルファス粉末磁心材料である。鉄を主原料とするアモルファス粉末磁心材料の一例は約80%の鉄と20%の他の成分を含む。別の実施形態によれば、アモルファス粉末磁心材料は、コバルトを主原料とするアモルファス粉末磁心材料である。コバルトを主原料とするアモルファス粉末磁心材料の一例は約75%のコバルトと25%の他の成分を含む。さらに別の実施形態によれば、アモルファス粉末磁心材料はナノアモルファス粉末磁心材料である。
【0021】
この材料は、分散間隙構造を備え、結合材料は、製造された鉄を主原料とするアモルファス粉末材料内において間隙として作用する。典型的な材料は韓国ソウルのAmosenseによって製造され、製品番号APHxx(先進的粉末磁心)として販売される。ここで、xxは材料の有効透磁率を表す。例えば、材料の有効透磁率が60である場合、部品番号はAPH60である。この材料は高電流パワーインダクタ用に使用できる。さらに、この材料は、インダクタ100の異常な加熱を生じることなく、一般に約1MHzから約2MHzの範囲の高い作動周波数で使用できる。この材料は、このように高い周波数範囲に使用できるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、もっと低い及び高い周波数に使用できる。アモルファス粉末磁心材料は、より高い飽和磁束密度、より低いヒステリシス磁心損失(hysteresis core loss)、より広い作動周波数範囲、より広い作動温度範囲、より良い熱放散及びより高い有効透磁率を与えることができる。さらに、この材料はより低い損失の分散間隙材料を与えることができ、それによって出力及びエネルギー密度を最大化することができる。一般に、成形磁心の有効透磁率はプレス密度の問題のせいであまり高くはない。しかし、成形磁心にこの材料を使うことによって、以前よりずっと高い有効透磁率を得ることができる。また、ナノアモルファス粉末材料は、鉄を主原料とするアモルファス粉末材料の透磁率に比べて最高3倍の透磁率を可能にする。
【0022】
図1に示すように、ER形磁心110及びI形磁心150はアモルファス粉末材料からプレス成形されて、ソリッド成形磁心を形成する。ER形磁心110をプレスすると、前述のように予形成コイル130はER形磁心110に結合される。予形成コイル130の端子134、136は2つの端壁120、121の間隙122、123を貫通して伸びる。次に、I形磁心150は、端子134、136の端部がそれぞれI形磁心150の凹部153、155内部で結合されるように、ER形磁心110及び予形成コイル130に結合される。ER形磁心110、予形成コイル130及びI形磁心150はその後一緒にプレス成形されて、ER−I形インダクタ100を形成する。I形磁心150は2つの対向する端部152、154に形成される凹部153、155を持つものとして図示されるが、I形磁心の凹部は、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく省略できる。また、I形磁心150は対称形として図示されるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、下に説明するように、ミス防止手段(mistake proofing;ポカよけ)を有するI形磁心を含めて非対称形のI形磁心を使用できる。
【0023】
図2は、典型的な実施形態による製造工程の複数の段階におけるU−I形磁心を有するパワーインダクタの斜視図を示す。この実施形態において、パワーインダクタ200は、U形磁心210、予形成クリップ230及びI形磁心250を備える。本明細書において使用される場合、U形磁心210は2つの側面212、214及び2つの端面216、218を有し、2つの側面212、214は巻線またはクリップ230の方向に対して平行であり、2つの端面216、218は巻線またはクリップ230の方向に直交する。さらに、I形磁心250は、2つの側面252、254及び2つの端面256、260を有し、2つの側面252、254は巻線またはクリップ230の方向に対して平行であり、2つの端面256、260は巻線またはクリップ230の方向に直交する。この実施形態によれば、I磁心250はポカよけ式I形磁心250になるように修正されている。ポカよけ式I形磁心250は、ポカよけ式I形磁心250の底部251の一方の側面252においてそれぞれ2つの平行の端面256、260から除去部257、261を有し、ポカよけ式I形磁心250の対向する側面254においてそれぞれ同じ2つの平行する端面256、260から非除去部258、262を有する。
【0024】
予形成クリップ230は2つの端子234、236またはリードを有する。除去部257、261に予形成クリップ230を配置しかつ予形成クリップ230がそれ以上動かなくなるまで予形成クリップ230を非除去部258、262へ向けてスライドさせることによって、端子をポカよけ式I形磁心250の周りに結合できる。予形成クリップ230は、製造工程においてメッキの屈曲及び割れが大幅に減少するので、非予形成クリップに比べてより良好なDCR制御を可能にする。ポカよけ式I形磁心250は、U形磁心210をポカよけ式I磁心250に迅速に、容易にかつ正確に結合できるように、予形成クリップ230を適切に位置決めできるようにする。
図2に示すように、ポカよけ式I形磁心250の底部251のみがポカよけを行う。この実施形態においてはポカよけ式I形磁心250の底部251のみがポカよけを行うが、典型的な実施形態の範囲及び思想から逸脱することなく、単独でまたは他の面と組合せで別の面がポカよけを行うことができる。例えば、
図2に示すようにI形磁心250の底部251だけでなく、I形磁心の対向する端面256、260のみにまたは対向する端面256、260及び底部251にポカよけを配置できる。さらに、別の実施形態によればポカよけなしにI形磁心250を形成することができる。
【0025】
予形成クリップ230は銅から製造され、ニッケル及びスズでメッキされる。予形成クリップ230は銅から作られニッケル及びスズメッキを施されるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、金メッキ及びはんだ付けを含めて(これに限定されない)他の適切な導電性材料用を予形成クリップ230及び(または)2つの端子234、236の製造に利用できる。さらに、この実施形態においては予形成クリップ230が使用されるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、クリップ230を部分的に予形成するかまたは予形成しなくてもよい。さらに、この実施形態においては予形成クリップ230が示されているが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく任意の形態の巻線を使用できる。
【0026】
ポカよけ式I形磁心250の除去部257、261の寸法は、本発明の範囲及び思想から逸脱することなくそれぞれ
図3A及び
図3Bに関連して説明する対称形U形磁心または非対称形U形磁心を利用できるように定められる。U形磁心210の寸法は、ポカよけ式I形磁心250の幅と実質的に同じ幅及びポカよけ式I形磁心250の長さと実質的に同じ長さを持つように定められる。U形磁心210の寸法は上記のように図示されているが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく寸法を変更できる。
【0027】
図3Aは、典型的な実施形態による対称形U形磁心の斜視図を示す。対称形U形磁心300は1つの面310及びその反対面320を有し、1つの面310は実質的に平面であり、反対面320は第一脚322、第二脚324及び第一脚322と第二脚324との間に形成されるクリップ溝326を有する。対称形U形磁心300において、第一脚322の幅は第二脚324の幅と実質的に等しい。対称形U形磁心300はI形磁心に結合され、予形成クリップ230の一部はクリップ溝326内部に配置される。特定の典型的な実施形態によれば、予形成クリップ230の端子234、236はI形磁心250の底部251に結合される。しかし、別の典型的な実施形態においては、予形成クリップ230の端子234、236をU形磁心300の1つの面310に結合できる。
【0028】
図3Bは、典型的な実施形態による非対称形U形磁心の斜視図を示す。非対称形U形磁心350は1つの面360及びその反対面370を有し、1つの面は実質的に平面であり、反対面370は第一脚372、第二脚374及び第一脚372と第二脚374との間に形成されるクリップ溝376を有する。非対称形U形磁心350において、第一脚372の幅は第二脚374の幅と実質的に等しくない。この非対称形U磁心350はI形磁心250に結合され、予形成クリップ230の一部はクリップ溝376内部に配置される。特定の典型的な実施形態によれば、予形成クリップ230の端子234、236はI形磁心250の底部251に結合される。しかし、別の実施形態において、予形成クリップ230の端子234、236をU形磁心350の1つの面に結合できる。非対称形U形磁心350を使用する1つの理由は、磁気経路全体でより均等の磁束密度分布を与えることである。
【0029】
典型的な実施形態において、U形磁心210及びI形磁心250は両方ともアモルファス粉末磁心材料から製造される。これはER形磁心110及びI形磁心150に関連して上に説明したのと同じ材料である。いくつかの実施形態によれば、アモルファス粉末磁心材料は、鉄を主原料とするアモルファス粉末磁心材料である。さらに、この磁心材料にナノアモルファス粉末材料を使用できる。
図2に示すように、予形成クリップ230はI形磁心250に結合され、U形磁心210は、予形成クリップ230がU形磁心210のクリップ溝内に配置されるようにI形磁心250及び予形成クリップ230に結合される。U形磁心210は、U形磁心310として示される対称形でもU形磁心350として示される非対称形でもよい。次にU形磁心210、予形成クリップ230及びI形磁心250を一緒にプレス成形して、UI形インダクタ200を形成する。プレス成形は、予形成クリップ230の周りに磁心210、250を型成形(form mould)することによって、概略的に予形成クリップ230と磁心210、250との間に在る物理的間隙を除去する。
【0030】
図4は、典型的な実施形態によるビーズ形磁心(bead core)を有するパワーインダクタの斜視図を示す。この実施形態において、パワーインダクタ400はビーズ形磁心410及び半予形成クリップ430を備える。本明細書において使用される場合、ビーズ形磁心410は2つの側面412、414及び2つの端面416、418を有し、2つの側面412、414は巻線またはクリップ430に対して平行であり、2つの端面416、418は巻線またはクリップ430に直交する。
【0031】
典型的な実施形態において、ビーズ形磁心410は、ER形磁心110及びI形磁心150に関連して上で説明したのと同じ材料であるアモルファス粉末磁心材料から製造される。いくつかの実施形態によれば、アモルファス粉末磁心材料は鉄を主原料とするアモルファス粉末磁心材料である。さらに、この磁心材料としてナノアモルファス粉末材料も使用できる。
【0032】
半予形成クリップ430は、対向する2つの端面416、418に2つの端子またはリード434、436を備えており、ビーズ形磁心410内部中央に半予形成クリップ430の一部を通過させ、2つの端子434、436をビーズ形磁心410の2つの端面416、418の周りに巻き付けることによって、半予形成クリップをビーズ形磁心410に結合できる。半予形成クリップ430は、製造工程においてメッキ部の曲げ及び割れが大幅に減少するので、非予形成クリップと比べてより良好なDCR制御が得られる。
【0033】
半予形成クリップ430は銅から製造されて、ニッケル及びスズでメッキされる。半予形成クリップ430は銅で作られニッケル及びスズのメッキを施されるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、金メッキ及びはんだ付けを含めて(これに限定されない)他の適切な導電性材料を半予形成クリップ430の製造に利用できる。さらに、この実施形態においては半予形成クリップ430が使用されるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなくクリップ430を予形成しなくてもよい。さらに、この実施形態においては半予形成クリップ430が示されているが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく任意の形態の巻線を使用できる。
【0034】
図4に示すように、半予形成クリップ430は、ビーズ形磁心410内部に半予形成クリップ430の一部を通過させ、2つの端子434、436をビーズ形磁心410の2つの端面416、418の周りに巻き付けることによって、ビーズ形磁心410に結合される。いくつかの実施形態において、ビーズ形磁心410の底部450の1つの側面412に除去部440及びビーズ形磁心410の反対側414に非除去部442を持つようにビーズ形磁心410を変更できる。端子434、436が除去部442内部に位置するように半予形成クリップ430の2つの端子434、436をビーズ形磁心410の底部450に配置できる。ビーズ形磁心は除去部と非除去部を持つように図示されているが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、除去部を省略するようにビーズ形磁心を形成することができる。
【0035】
典型的な実施形態によれば、まずアモルファス粉末磁心材料をシートに形成し、その後半予形成クリップ430の周りにこれを包むまたは巻き付けることができる。半予形成クリップ430の周りにアモルファス粉末磁心材料を巻いたら、アモルファス粉末磁心材料と半予形成クリップ430を高圧でプレスすることによって、パワーインダクタ400を形成できる。プレス成形は、半予形成クリップ430の周りにビーズ形磁心410を型成形することによって、概略的に半予形成クリップ430とビーズ形磁心410との間に在る物理的間隙を除去する。
【0036】
別の典型的な実施形態によれば、アモルファス粉末磁心材料及び半予形成クリップ430は、アモルファス粉末磁心材料が半予形成クリップ430の少なくとも一部を取り囲むように、型(図示せず)内部に配置される。その後、アモルファス粉末磁心材料と半予形成クリップ430を高圧でプレスすることによって、パワーインダクタを形成できる。プレス成形は、ビーズ形磁心410を半予形成クリップ430の周りに型成形することによって、概略的に半予形成クリップ430とビーズ形磁心410との間に在る物理的間隙を除去する。
【0037】
さらに、上記のインダクタを形成するために別の方法を使用できる。第一の別の方法において、アモルファス粉末磁心材料を高圧でプレスし、その後巻線をビーズ形磁心に結合し、さらにその後ビーズ形磁心と追加のアモルファス粉末磁心材料の少なくとも一部との間に巻線が配置されるようにビーズ形磁心に追加のアモルファス粉末磁心材料を加えることによって、ビーズ形磁心を形成できる。その後、ビーズ形磁心、巻線及び追加のアモルファス粉末磁心材料を一緒に高圧でプレスして、この実施形態において説明されるパワーインダクタを形成する。第二の別の方法において、アモルファス粉末磁心材料を高圧でプレスし、その後2つの別個の成形磁心の間に巻線を配置し、その後追加のアモルファス粉末磁心材料を加えることによって、2つの別個の成形磁心を形成できる。その後2つの別個の成形磁心、巻線及び追加のアモルファス粉末材料を一緒に高圧でプレスして、この実施態様において説明されるパワーインダクタを形成する。第三の別の実施形態において、射出成形を使用してアモルファス粉末磁心材料及び巻線を一緒に成形できる。この実施形態においてはビーズ形磁心について説明するが、典型的な実施形態の範囲及び思想から逸脱することなく他の成形磁心を利用できる。
【0038】
図5は、典型的な実施形態による単一構造として形成された複数のU形磁心を有するパワーインダクタの斜視図を示す。この実施形態において、パワーインダクタ500は、単一構造505として形成された4つのU形磁心510、515、521、525及び4つのクリップ530、532、534、536を備える。各クリップ530、532、534、536はそれぞれU形磁心510、515、520、525の1つに結合され、各クリップ530、532、534、536は予形成されない。本明細書において使用される場合、インダクタ500は2つの側面502、504及び2つの端面506、508を有し、2つの側面502、504は巻線またはクリップ530、532、534、536に対して平行であり、2つの端面506、508は巻線またはクリップ530、532、534、536に直交する。4つのU形磁心510、515、520、525及び4つのクリップ530、532、534、536が単一の構造505を形成するように図示されるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、もっと多数または少数のU形磁心とこれに対応する数のクリップを使用して単一の構造を形成できる。
【0039】
典型的な実施形態において、磁心材料は鉄を主原料とするアモルファス粉末磁心材料から製造される。これは、ER形磁心110及びI形磁心150に関連して上で説明したのと同じ材料である。さらに、この磁心材料としてナノアモルファス粉末材料も使用できる。
【0040】
各クリップ530、532、534、536は対向する端面に2つの端子またはリード540(図示せず)、542を有する。U形磁心510、515、520、525の各々の内部中心にクリップ530、532、534、536の一部を通過させ、インダクタ500の2つの端面506、508の周りに各クリップ530、532、534、536の2つの端子540(図示せず)、542を巻き付けることによって、各クリップをU形磁心510、515、520、525の各々に結合できる。
【0041】
クリップ530、532、534、536は銅から製造されて、ニッケル及びスズでメッキされる。クリップ530、532、534、536は銅から作られてニッケル及びスズのメッキを施されるが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、金メッキ及びはんだ付けを含めて(これに限定されない)他の適切な導電性材料をクリップの製造に利用できる。また、この実施形態においてはクリップ530、532、534、536が示されているが、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく他の形態の巻線を使用できる。
【0042】
図5に示すように、クリップ530、532、534、536は、U形磁心510、515、520、525の各々の内部にクリップ530、532、534、536の各々の一部を通過させ、インダクタ500の2つの端面506、508の周りに各予形成クリップ530、532、534、536の2つの端子540(図示せず)、542を巻き付けることによって、U形磁心510、515、520、525に結合される。
【0043】
典型的な実施形態によれば、まず、アモルファス粉末磁心材料をシートに形成して、その後クリップ530、532、534、536の周りにこれを巻き付けることができる。クリップ530、532、534、536の周りにアモルファス粉末磁心材料を巻き付けたら、アモルファス粉末磁心材料とクリップ530、532、534、536を高圧でプレスすることによって、単一構造505として形成された複数のU形磁心510、515、520、525を有するU形インダクタ500を形成することができる。プレス成形は、クリップ530、532、534、536の周りに磁心510、515、520、525を型成形することによって、概略的にクリップ530、532、534、536と磁心510、515、520、525との間に在る物理的間隙を除去する。
【0044】
別の典型的な実施形態によれば、アモルファス粉末磁心材料がクリップ530、532、534、536の少なくとも一部を取り囲むように、アモルファス粉末磁心材料及びクリップ530、532、534、536を型(図示せず)内部に配置する。その後、アモルファス粉末磁心材料とクリップ530、532、534、536を高圧でプレスすることによって、単一構造505として形成された複数のU形磁心510、515、520、525を有するU形インダクタ500を形成できる。プレス成形は、クリップ530、532、534、536の周りに磁心510、515、520、525を型成形することによって、概略的にクリップ530、532、534、536と磁心510、515、520、525との間に在る物理的間隙を除去する。
【0045】
さらに、上記のインダクタを形成するために別の方法を使用できる。第一の別の方法において、アモルファス粉末磁心材料を高圧でプレスし、その後複数の巻線を複数のU形磁心の各々に結合し、さらにその後複数の巻線が複数のU形磁心と追加のアモルファス粉末磁心材料の少なくとも一部との間に配置されるように複数のU形磁心に追加のアモルファス粉末磁心材料を加えることによって、複数のU形磁心を一緒に形成できる。その後、複数のU形磁心、複数の巻線及び追加のアモルファス粉末磁心材料を一緒に高圧でプレスして、この実施形態において説明されるパワーインダクタを形成する。第二の別の方法において、アモルファス粉末磁心材料を高圧でプレスし、その後2つの別個の成形磁心の間に複数の巻線を配置し、その後追加のアモルファス粉末磁心材料を加えることによって、2つの別個の成形磁心を形成できる。別個の各成形磁心は一緒に結合された複数の成形磁心を有する。その後、2つの別個の成形磁心、複数の巻線及び追加のアモルファス粉末材料を一緒に高圧でプレスして、この実施態様において説明されるパワーインダクタを形成する。第三の別の実施形態において、射出成形を使用して、アモルファス粉末磁心材料と複数の巻線を一緒に成形できる。この実施形態においては複数のU形磁心について説明するが、典型的な実施形態の範囲及び思想から逸脱することなく他の形状の磁心を利用できる。
【0046】
さらに、基板(図示せず)上の回路接続に基づいてまた用途に応じて、複数のクリップ530、532、534、536を相互に並列にまたは直列に接続できる。さらに、多相例えば3相及び4相の電流に対処するようにこれらのクリップ530、532、534、536を設計できる。
【0047】
いくつかの実施形態を開示したが、本発明は、他の実施形態の教示に基づいて1つの実施形態に加えられる修正を含むものと想定される。
【0048】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されているが、これらの説明は限定的意味を成すことを意図していない。開示された実施形態の様々な修正及び本発明の別の実施形態は、本発明の説明を参照すれば当業者には明白になる。本発明の目的を実現する目的で修正するためまたは他の構造を設計するための土台として開示された概念及び特定の実施形態を容易に利用できることが、当業者には分かるはずである。また、このような同等の構成は特許請求の範囲に示される本発明の思想及び範囲から逸脱しないことも、当業者には分かるはずである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の範囲に属する修正または実施形態を包含するものと想定される。
(付記1)軟磁性のアモルファス粉末材料から製造された第一成形磁心と、
軟磁性のアモルファス粉末材料から製造された第二成形磁心と、
第一リードと、第二リードと、前記第一リードと前記第二リードとの間にある巻線部とを含むよう予め形成される予形成された電導性の巻線クリップであって、前記巻線クリップの前記巻線部と前記第一リード及び第二リードとは前記第一成形磁心及び第二成形磁心の何れか一方の周りにより曲げられることなく且つ前記第一リード及び第二リードを形作るのではなく、前記巻線クリップの前記巻線部は前記第一成形磁心と第二成形磁心との間を延び、前記第一リード及び第二リードは前記第一成形磁心及び前記第二成形磁心の外側まで延びる、予形成された電導性の巻線クリップと、を備え、
前記第一成形磁心と前記第二成形磁心と前記巻線クリップとの接面が互いに係合する面においてプレスされ、それにより、前記巻線部と、前記第一成形磁心及び前記第二成形磁心の前記軟磁性のアモルファス粉末材料、すなわち前記第一成形磁心及び前記第二成形磁心の対向面との間の如何なる分離を取り除き、
前記第一成形磁心及び第二成形磁心の対向面の間に物理的な間隔がなく、
前記軟磁性のアモルファス粉末材料がナノアモルファス粉末材料である、ことを特徴とする、電磁石要素。
(付記2)
前記軟磁性のナノアモルファス粉末材料が鉄を主原料とするナノアモルファス粉末材料であることを特徴とする、付記1に記載の電磁石要素。
(付記3)
軟磁性のアモルファス粉末材料から製造された第一成形磁心であって、上面と底面とを有する第一成形磁心と、
軟磁性のアモルファス粉末材料から製造された第二成形磁心であって、上面と底面とを有する第二成形磁心と、
第一リードと、第二リードと、前記第一リードと前記第二リードとの間にある巻線部とを備える予形成された電導性の巻線クリップであって、前記巻線クリップの前記巻線部と前記第一リード及び前記第二リードとが前記第一成形磁心の周りで曲げられることなく、前記巻線クリップの前記巻線部が前記第一成形磁心の前記上面と前記第二成形磁心の前記底面との間を延び、前記第一リードと前記第二リードとが前記第一成形磁心の底面で延びるよう予め完全に形成される、電導性巻線クリップと、を備え、
前記第一成形磁心の前記上面と、前記第二成形磁心の前記底面とが、互いに係合する面でプレスされ、前記巻線クリップと係合する面でプレスされ、それにより、前記第一成形磁心及び前記第二成形磁心の軟磁性のアモルファス粉末材料で前記巻線部を完全に取り囲み、前記軟磁性のアモルファス粉末材料と前記巻線部の如何なる部分との間に間隔がなく、それにより、前記第一成形磁心の前記上面と前記第二成形磁心の前記底面との間に間隔がなくなり、
前記第一成形磁心及び第二成形磁心のうち少なくとも一方は、軟磁性のナノアモルファス粉末材料から形成される、ことを特徴とする電磁石要素。
(付記4)
前記第一成形磁心と前記第二成形磁心とのうち少なくとも一方は、鉄を主原料とするナノアモルファス粉末材料から形成されることを特徴とする、付記3に記載の電磁石要素。